JP4141014B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、点火プラグの火花放電後に流れるイオン電流を検出するイオン電流検出回路を備えた内燃機関用点火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関の失火やノッキングの他、内燃機関の各種運転状態(空燃比,空燃比のリーン限界,排気再循環量の限界等)を検出するために、内燃機関の点火プラグの火花放電後に、点火プラグの電極近傍に存在するイオンによって流れるイオン電流を利用する技術が知られている。
【0003】
即ち、内燃機関のシリンダ内では、点火プラグによる火花放電後の燃焼(火炎伝播)時にイオンが発生し、このイオンの発生量に応じて点火プラグの電極間の抵抗値が変化する。そして、イオンの発生量は、内燃機関の燃焼状態、ひいては内燃機関の運転状態に応じて様々に異なる。このため、点火プラグへの点火用高電圧印加後(つまり点火プラグの火花放電後)に、点火プラグに対して外部から電圧を印加し、それによって流れるイオン電流を検出することにより、点火プラグの電極間の抵抗値の変化(つまり運転状態の変化)を検出することができるのである。
【0004】
このようなイオン電流検出回路は、例えば、特開平4−191465号公報等に開示されているように、点火コイルの一次巻線に流れる電流を、一次巻線に直列接続されたパワートランジスタによりオン・オフ制御する、いわゆるフルトランジスタ型の点火回路に適用されている。
【0005】
そして、フルトランジスタ型の点火回路では、図8に示すように、点火タイミングtsの前の時点tpでパワートランジスタをオン状態にして点火コイルの一次巻線に電流を流し、その後、点火タイミングtsにて、パワートランジスタをターンオフし、このターンオフ時に一次巻線の電流が遮断されることにより生じる磁束の急激な変化によって、点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を誘起させ、この点火用高電圧を点火プラグに印加している。
【0006】
この場合、点火プラグでの火花放電は、電極間を絶縁破壊する容量放電に続いて、誘導放電(アーク放電ともいう)が発生し、この誘導放電を含む火花放電の放電持続時間τは、シリンダ内での燃焼状態と、点火コイルのインダクタンス分とにより決まる。
【0007】
なお、エンジン始動時やアイドリング時などの低回転,軽負荷時での着火性を確保するには、放電持続時間τを長く(2〜3ms程度)する必要があり、この放電持続時間τが確保されるような大きさに点火コイルのインダクタンスは設定されている。
【0008】
そして、イオン電流の検出は、運転状態から想定される燃焼状態と、コイルのインダクタンス分の大きさとに基づいて放電持続時間の推定値Taを算出し、点火タイミングtsからこの推定値Taが経過した時点tdにて行うのであるが、装置毎の燃焼状態(例えば点火タイミングから実際に着火するまでの時間)やインダクタンス分のばらつき等も考慮して、通常、算出値に安全係数を乗じることにより、実際の放電持続時間τよりかなり長めに推定値Taが設定されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、火花放電後の燃焼時に発生したイオンは、着火後わずかな時間の間しか存在しないため、高回転,重負荷時など着火性が良くなる条件にある場合には、点火タイミング後すぐに着火するため、イオンの存在期間(図中B,C期間を参照)と放電持続時間とが重なり合ってしまい、イオン電流を検出できなかったり、検出できたとしても検出レベルが極めて小さく検出精度が劣化してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するために、イオン電流を確実かつ精度よく検出できる内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、内燃機関の気筒に装着された点火プラグに点火用高電圧を印加して、該点火プラグに火花放電を起こさせる点火手段と、該点火手段の動作を制御する点火制御手段と、該点火制御手段が前記点火手段を動作させた後に、前記点火用高電圧とは逆極性の検出用高電圧を前記点火プラグに印加して、前記点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出するイオン電流検出手段とを備えた内燃機関用点火装置において、前記点火手段は、電源に接続され放電用のエネルギーを蓄積するコンデンサと、一次巻線が前記コンデンサ,二次巻線が前記点火プラグと共にそれぞれ閉ループを形成するよう接続された点火コイルと、前記コンデンサと前記一次巻線とを接続する電流経路を、各着火タイミングにおいて予め設定された放電間隔で予め設定された放電期間中繰り返し断続するスイッチング手段とを備え、前記点火制御手段は、内燃機関の運転状態に応じて放電期間を設定し、前記イオン電流検出手段は、前記点火制御手段にて設定される放電期間の終了後からTDCに達するまでの期間内に前記イオン電流を検出することを特徴とする。
【0012】
このように構成された本発明の内燃機関用点火装置においては、点火制御手段が運転状態に応じて(例えば、着火性の悪い低回転,軽負荷であるほど長く、逆に着火性の良い高回転,重負荷であるほど短くなるように)放電期間を設定する。この放電期間の間、スイッチング手段は、コンデンサと一次巻線とを接続する電流経路を、各着火タイミングにおいて予め設定された放電間隔で予め設定された放電期間中繰り返し断続する。なお、スイッチング手段により電流経路が遮断状態にある時には、電源によって充電されることにより、コンデンサには放電用のエネルギーが蓄積され、一方、電流経路が接続状態に切り替わると、コンデンサに蓄積されたエネルギーが放電されることにより、一次巻線に瞬間的に大電流が流れ、二次巻線に点火用高電圧が発生する。
【0013】
つまり、点火制御手段が設定する放電期間の間、点火プラグでは放電間隔毎に火花放電が繰り返され、いわゆる多重放電が行われることになる。
そして、この多重放電の終了後に、イオン電流検出回路が、点火用高電圧とは逆極性の検出用高電圧を点火プラグに印加して、この時、点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出する。
【0014】
このように本発明では、点火回路として、点火コイルの一次巻線に接続されたコンデンサを充放電することにより二次巻線に点火用高電圧を発生させる、いわゆる容量放電(CDI)方式で多重放電を行うもの用いており、しかも、その多重放電の放電期間を運転状態に応じて制御するようにされている。
【0015】
なお、コンデンサにエネルギーを一旦蓄積してから放電することにより一瞬の間だけ電流を流すCDI方式では、一次巻線に一定期間の間電流を流し続けなけばならないフルトランジスタ方式と比較して、点火コイルの一次巻線への印加電圧を高く設定(通常、数100V)することができ、その分、二次巻線の巻数を少なくして、二次巻線のインダクタンス(ひいては点火コイルの出力インピーダンス)を小さくすることができる。
【0016】
そして、二次巻線のインダクタンスが小さい場合、火花放電は、誘導放電に進むことなく容量放電だけで終了するため、放電期間内に多重放電される各火花放電の放電持続時間はいずれも短い。
その結果、フルトランジスタ型の点火回路を用いた場合のように誘導放電の持続時間の間待機することなく、放電期間の終了直後にイオン電流の検出を行うことができ、しかも、放電期間は、運転状態に応じて必要最小限の長さに適宜設定できるため、着火性のよい高回転,重負荷時でも、放電期間がイオンの存在期間と重なり合ってしまうことがない。
【0017】
従って、本発明の内燃機関用点火装置によれば、イオン電流を確実かつ感度よく検出することができ、ひいては検出したイオン電流に基づいて行う各種制御を精度よく行わせることができる。
また、本発明の内燃機関用点火装置では、二次巻線のインダクタンスが小さいので、1回の火花放電における放電持続時間が短いだけでなく、二次巻線に誘起される点火用高電圧の立ち上がりも早く、従って、点火プラグの電極間への電圧印加時間が短い。このため、点火プラグの絶縁体表面に付着したカーボンが、電圧印加時に電極間に生じる電界によって移動,整列して電極間の絶縁抵抗の低下を引き起こすいわゆる汚損が発生しにくい。
【0018】
しかも、点火プラグの絶縁抵抗に対して二次巻線の出力インピーダンスを十分に小さくすることができるため、汚損等により点火プラグの電極間の絶縁抵抗が多少低下したとしても、点火プラグへの印加電圧が大きく低下してしまうことがなく、火花放電を確実に行うことができ、汚損に強い点火装置を構成することができる。
【0019】
更に、本発明の内燃機関用点火装置によれば、着火性のよい高回転、重負荷時には、放電期間を短くして放電回数を減らすことができるため、点火プラグの電極が無駄に消耗されることを防止することができる。
【0020】
ところで、火花放電後に、火花放電しない程度の電圧を点火プラグに印加した場合、図7に示すように、火花放電が行われた直後からクランク上死点(TDC)に達するまでの間に、プラグ周りの混合気の燃焼によるイオン乖離に基づく電流(第1のピーク)P1が検出される他、その後、燃焼圧がピークとなるのとほぼ同時期に、燃焼圧の増大やガス温の上昇に伴う生成物の熱電離に基づく電流(第2のピーク)P2が検出され、しかも、低回転,低負荷時には、第2のピークP2は現れないか、又は非常に小さいことが知られている。
【0021】
これに対して、本発明の内燃機関用点火装置によれば、放電期間の終了後からTDCに達するまでの期間内にイオン電流を検出しているため、低回転,軽負荷時から高回転,重負荷時まで、全運転域で確実にイオン電流を検出することが可能となる。
特に、イオン電流検出手段は、請求項2に記載のように、イオン電流を、TDC前に生じる第1のピークで検出することが望ましい。
【0022】
なお、請求項3記載のように、放電期間は、放電期間は、着火が十分に生じる程度には長く、一方でイオン電流の検出が可能となる程度に短く設定されている必要がある。
ところで、点火手段にて多重放電を行うのは、CDI方式のように火花放電の放電持続時間が短い場合、火花放電にて燃焼室内で形成される火炎核が小さく、火炎核が成長することができずに失火となりやすいため、火花放電を繰り返して火炎核を多数形成することにより、各火炎核の相互作用で周囲に奪われる熱量を少なくし、火炎核が成長し易い条件を作り出して、着火性を向上させているのである。
【0023】
つまり、多重放電における火花放電の放電間隔を変化させると、火炎核が相互作用する度合いも変化して、着火性に影響を与えることが予想される。
そこで、多重放電する際に、放電間隔を様々に設定して着火性がどのように変化するのかを調べるために、運転限界空燃比(A/Fu)を測定する試験を行ったところ、図5,6に示すような結果が得られた。
【0024】
ここで、運転限界空燃比(A/Fu)とは、一定条件下で駆動しているエンジンの空燃比(A/F)を除々に高く(即ち、リーン側に)してゆき、失火によって生じる燃焼圧の変動率が10%を越える状態となったときの空燃比のことである。
【0025】
また、試験には、自動車用の直列6気筒2000ccエンジンを用い、第1の試験(図5参照)では、回転数2000rpm,吸気管内負圧−350mmHgの条件下で、多重放電の継続時間Tt(=Tm×N)が2msとなるように火花放電の放電間隔Tm及び放電回数Nを変化させ、また、第2の試験(図6参照)では、回転数2000rpm,吸気管内負圧−100mmHgの条件下で、多重放電の継続時間Ttが1msとなるように火花放電の放電間隔Tm及び放電回数Nを変化させた。
【0026】
更に、評価の基準とするため、従来のフルトランジスタ型の点火装置における運転限界空燃比(A/Fu)も測定した。この場合、火花放電は1回のみであり、エンジンの運転条件を調整することにより、火花放電の放電持続時間τが、第1の試験の基準ではτ=2ms,第2の試験の基準ではτ=1msとなるように設定した。
【0027】
図5に示す第1の試験、即ち着火性が悪く放電期間を長く(ここでは2ms)する必要がある低負荷(吸気管内負圧−350mmHg)の場合も、また、図6に示す第2の試験、即ち着火性が良く放電期間を短く(ここでは1ms)できる高負荷(吸気管内負圧−100mmHg)の場合も、いずれの場合でも、放電間隔Tmが100μs以下であれば、フルトランジスタ型の点火回路を用いた従来装置と同程度の運転限界空燃比A/Fuが得られ、放電間隔Tmが300μs以下であれば、ほぼA/Fu≧20となり、実用上十分に使用し得ることがわかった。
【0028】
従って、請求項4記載のように、放電間隔を規定するスイッチング手段の断続間隔は、300μs以下に設定されていることが望ましい。更には、スイッチング手段の断続間隔(即ち、放電間隔)は100μ以下に設定されていることがより望ましく、この場合、従来装置と比べて、運転限界空燃比(A/Fu),ひいては着火性を低下させることなく、上述のイオン電流を確実かつ高感度にて検出できるという効果を得ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された内燃機関用点火装置の概略構成図である。
図1に示すように、本実施例の内燃機関用点火装置は、内燃機関の各気筒毎に設けられた点火プラグ10を、点火信号IGに従って火花放電させる点火回路2と、点火回路2に電源供給するバッテリBTと、混合気の燃焼により点火プラグ10の電極近傍に発生するイオンによって流れるイオン電流を、検出信号Sdに従って検出するイオン電流検出回路4と、点火回路2に点火信号IGを出力すると共に、イオン電流検出回路4に検出信号Sd及び後述する接地信号Sgを出力する内燃機関制御用の電子制御装置(以下、ECUという)6と、イオン電流検出回路4の出力VioをAD変換してECU6の入力に適した信号Dioとする検出回路8とを備えている。
【0030】
なお、ECU6以外の構成は、内燃機関の各気筒毎に設けられるものであるが、図1では、図面を見やすくするために1気筒分のみを表している。
そして、点火回路2は、点火プラグ10に点火用高電圧を印加する点火コイル12を備えており、この点火コイル12の一次巻線L1には、コンデンサ14が直列に接続されている。また、この直列接続されたコンデンサ14及び一次巻線L1には、バッテリBTの電圧を昇圧してコンデンサ14の充電用電圧(本実施例では300〜400V程度)を生成する昇圧回路15と、アノードがコンデンサ14側端に、カソードが一次巻線L1側端に接続されたサイリスタ16とが接続されている。更に、サイリスタ16のゲートには、ECU6からの点火信号IGに従って、サイリスタ16をターンオンさせるトリガー信号TGを出力するタイマ回路18が接続されている。
【0031】
なお、点火コイル12の二次巻線L2は、一端が点火プラグ10の中心電極に接続され、他端がイオン電流検出回路4に接続されており、点火プラグ10の外側電極は接地されている。
また、二次巻線L2のインダクタンスをL[H]、二次巻線L2や配線の浮遊容量,点火プラグ10の負荷容量等を含む二次側回路の実効負荷容量をC[F]とした場合に、点火コイル12の二次側回路は次の(1)式を満たすように設定されている。
【0032】
L・C≦250×10-12[sec2] (1)
このように構成された点火回路2では、サイリスタ16がオフ状態にある時に、昇圧回路15が生成する充電電圧によりコンデンサ14が充電される。このようにコンデンサ14が充電された状態で、タイマ回路18からのトリガー信号TGにより、サイリスタ16がターンオンすると、コンデンサ14の充電電荷が放電され、コンデンサ14,サイリスタ16,点火コイル12の一次巻線L1が形成する閉ループに瞬時的に大電流が流れる。これにより、点火コイル12の二次巻線L2に点火用高電圧(本実施例では、30〜40kV)が発生し、この点火用高電圧が点火プラグ10の中心電極に印加され、点火プラグ10が火花放電することになる。
【0033】
なお、火花放電時に点火プラグ10の中心電極が負極性となるようにされており、従って、この火花放電によって流れる火花放電電流Ispは、点火プラグ10から二次巻線L2に向けて流れる。
また、タイマ回路18は、図2に示すように、点火信号IGがHighレベルである期間Ttの間、トリガー信号TGを放電間隔Tm(本実施例では100μs)にて繰り返し出力するように構成されており、従って、この間、点火プラグ10では放電間隔Tmにて繰り返し火花放電が行われ、いわゆる多重放電が行われることになる。つまり、トリガー信号TGは、多重放電を開始する点火タイミングts、及び多重放電を継続させる時間(以下、多重放電継続時間という)Ttを規定するものである。
【0034】
次に、イオン電流検出回路4は、一端が接地された抵抗20と、この抵抗20に並列接続されカソードが接地されたダイオード22と、抵抗20及びダイオード22の接地側とは反対側に直列接続されたコンデンサ24とを備えており、抵抗20の両端電圧Vioが検出回路8に入力されるように接続されている。また、これらコンデンサ24,抵抗20,ダイオード22が点火コイル12の二次巻線L2及び点火プラグ10と共に形成する閉ループにおいて、コンデンサ24と点火コイル12の二次巻線L2との間には、火花放電電流Ispの流れる方向を順方向とする充電用ダイオード28が直列接続され、この充電用ダイオード28の両端を、ECU6からの検出信号Sdに従って短絡する放電用スイッチ30が、充電用ダイオード28と並列に接続されている。
【0035】
更に、イオン電流検出回路4には、これらコンデンサ24,抵抗20,ダイオード22,充電用ダイオード28,放電用スイッチ30からなる回路と並列に、カソードが点火コイル12の二次巻線L2との接続端に接続され、アノードが接地されたツェナーダイオード26と、二次巻線L2との接続端にコレクタが接続されると共にエミッタが接地され、ECU6からベースに入力される接地信号Sgに従って、二次巻線L2との接続端を接地するトランジスタ32とが設けられている。
【0036】
このように構成されたイオン電流検出回路4では、放電用スイッチ30が開放されている時に、点火コイル12の二次巻線L2との接続端から接地端に向けてのみ電流を流すことが可能となる。つまり、点火プラグ10の火花放電によって流れる火花放電電流Ispは、充電用ダイオード28,コンデンサ24,ダイオード22を通過する閉ループを流れ、同時にツェナーダイオード26にツェナー電圧Vzを発生させる方向に流れる。このため、コンデンサ24は、火花放電電流Ispによって、ツェナーダイオード26のツェナー電圧Vzから充電用ダイオード28及びダイオード22の各順方向電圧Vfだけ小さい電圧Vc(=Vz−2×Vf)で充電されることになる。
【0037】
一方、放電用スイッチ30が閉じられ、充電用ダイオード28の両端が短絡された時には、抵抗20,コンデンサ24,放電用スイッチ30を通過する閉ループを、接地端側から二次巻線L2との接続端側に向けて電流を流すことが可能となり、抵抗20の両端電圧Vdは、この閉ループを流れる検出電流Idの大きさに応じたものとなる。
【0038】
この時、点火プラグ10への印加電圧Vpは、コンデンサ24の充電電圧Vcから抵抗20での電圧降下分だけ差し引いたもの(Vp=Vc−Rd×Id;但し、Rdは抵抗20の抵抗値)となる。なお、この印加電圧Vpは、点火プラグ10が火花放電しない程度(例えば約1kV)とする必要があり、即ち、ツェナーダイオード26のツェナー電圧Vzは、この印加電圧Vpに基づいて設定する必要がある。
【0039】
また、接地信号Sgによってトランジスタ32が導通し、二次巻線L2との接続端が接地されると、点火プラグ10の電極に残存する電荷が放電される。
次に、ECU6が実行するメイン処理について説明する。
なお、ECU6は、内燃機関の点火時期,燃料噴射量,アイドル回転数等を総合的に制御するためのものであり、以下に説明するメイン処理以外に、内燃機関の吸気管圧力(又は吸入空気量),エンジン回転速度,冷却水温など各種運転状態を検出する運転状態検出処理等を行っている。
【0040】
図3に示すように、本処理が起動されると、まずS110では、別途実行される運転状態検出処理にて検出された運転状態を読み込み、続くS120では、S110にて読み込んだ運転状態に従って、多重放電を開始する点火タイミングts、及び多重放電継続時間Ttを設定する。
【0041】
なお、これら点火タイミングts及び多重放電継続時間Ttは、運転状態を表すパラメータとの関係を規定する計算式に基づいて算出してもよいし、予め実験的に求めた結果をテーブルにしてROM等に記憶しておき、このテーブルから運転状態を表すパラメータを参照値として読み込むことで設定してもよい。そして、概略的には、吸入空気量等に基づいて推定される負荷が高いほど、またエンジン回転数が高いほど、点火タイミングtsが進角し、また多重放電継続時間Ttが短くなるように設定される。但し、点火タイミングts及び多重放電継続時間Ttは、クランク角度に換算した値で設定される。
【0042】
続くS130では、図示しないクランク角センサからの検出結果に基づいて、S120にて設定された点火タイミングtsであるか否かを判断し、否定判定された場合は同ステップを繰り返し実行することで待機する。そして、点火タイミングtsとなり肯定判定された場合は、S140に移行して、点火信号IGをオン(High)レベルに設定することにより、タイマ回路18に、トリガー信号TGの出力を開始させる。
【0043】
続くS150では、先のS130にて点火タイミングtsとなった後、先のS120にて設定された多重放電継続時間Ttが経過したか否かを判断し、否定判定された場合は同ステップを繰り返し実行することで待機する。そして、多重放電継続時間Ttが経過し、肯定判定されると、S160に移行して、点火信号IGをオフ(Low) レベルに設定することにより、タイマ回路18に、トリガー信号TGの出力を停止させる。
【0044】
続くS170では、点火信号IGがオフレベルにされた後、予め設定された待機時間Twが経過したか否かを判断し、否定判定された場合は同ステップを繰り返し実行することで待機する。そして、待機時間Twが経過して肯定判定されると、S180に移行する。
【0045】
なお、待機時間Twは、点火信号IGをLow レベルとすると同時にサイリスタ16がターンオンした場合を想定して、点火プラグ10での火花放電後に点火コイル12の二次側回路に発生する電圧減衰振動が十分に収束し、しかも、クランク上死点(TDC)を越えることがないような長さに設定される。但し、ここでは待機時間Twを固定値としているが、点火タイミングtsや多重放電継続時間Ttと同様に、運転状態に応じて可変設定するようにしてもよい。
【0046】
そして、S180では、予め決められた検出期間の間だけ、検出信号SdをHighレベルとすることにより放電用スイッチ30を作動させて充電用ダイオード28の両端を短絡する。この検出期間は、イオン電流Iioが正常に流れた場合に、コンデンサ24の電荷がすべて放電されるような長さに設定することが望ましい。
【0047】
続くS190では、検出期間(検出信号SdがHighレベル)の間に、抵抗20の両端電圧VioをAD変換してなる検出値Dioを検出回路8から読み込む。
そして、検出期間が終了すると、S200にて、接地信号Sgを出力してトランジスタ32を導通させ、点火プラグ10に残存する電荷を放電させた後、本処理を終了する。
【0048】
即ち、図4に示すように、本実施例においては、点火タイミングtsにて点火信号IGがオンレベルに切り替わり(S130,140)、トリガー信号TGの出力が開始されると、以後、多重放電継続時間Ttの間、トリガー信号TGに従って、サイリスタ16がターンオンすることにより、点火コイル12を介して点火用高電圧が点火プラグ10の中心電極に印加され、点火プラグ10では、放電間隔Tm毎に火花放電が行われる。
【0049】
この火花放電時に点火コイル12の二次側回路に流れる火花放電電流Ispは、ツェナーダイオード26にツェナー電圧Vzを発生させると共に、充電用ダイオード28を介してコンデンサ24に供給されコンデンサ24を充電する。
また、この時、点火コイル12の一次側回路では、コンデンサ14の放電電流がゼロになり、サイリスタ16が自動的にターンオフすると、次の火花放電までの間に、昇圧回路15が生成する充電電圧によってコンデンサ14は速やかに充電される。
【0050】
そして、点火タイミングts後、多重放電継続時間Ttが経過して点火信号IGがオフレベルに切り替わることにより(S150,S160)トリガー信号TGの出力が停止される。更にその後、待機時間Twが経過して検出信号SdがHighレベルに切り替わり(S170,S180)、放電用スイッチ30が作動して充電用ダイオード28の両端が短絡されると、以後、検出信号SdがHighレベルに保持される検出期間Tdの間、コンデンサ24の放電により点火プラグ10の電極間に検出用高電圧が印加され、点火プラグ10の電極間のイオン量に応じたイオン電流Iioが流れる。
【0051】
この検出期間Tdの間に、イオン電流Iioが抵抗20を流れることにより生じる抵抗20の両端電圧Vioを検出回路8がAD変換し、その変換結果をイオン電流検出値DioとしてECU6が読み込む(S190)。
なお、ECU6に読み込まれたイオン電流検出値Dioは、例えば、内燃機関の失火やノッキングの発生を判定するためや、内燃機関の各種運転状態(空燃比,空燃比のリーン限界,排気再循環量の限界等)を判定するため等に用いられる。
【0052】
その後、検出期間Tdが終了して、接地信号Sgが出力されると(S200)、トランジスタ32によって、イオン電流検出回路4の二次巻線L2との接続端が接地され、例えば失火等、十分なイオン電流Iioが流れないことにより、点火プラグ10の電極に残存してしまった電荷が確実に放電される。
【0053】
以上説明したように、本実施例の内燃機関用点火装置においては、点火回路2が、1回の火花放電における放電持続時間の短いCDI方式により多重放電を行うように構成され、しかも、その多重放電継続時間Tt(換言すれば、火花放電の回数)を、内燃機関の運転状態に応じて、着火性の悪い低回転,軽負荷であるほど長く(多く)、逆に高回転,重負荷であるほど短く(少なく)設定するようにされている。
【0054】
従って、本実施例の内燃機関用点火装置によれば、運転状態に応じて必要最小限の長さに設定される多重放電継続時間Ttの経過後に、速やかにイオン電流の検出を行うことができるため、常に放電持続時間の長い火花放電が行われる従来のフルトランジスタ型の点火回路を備えた従来装置とは異なり、特に着火性のよい高回転,重負荷時に火花放電の放電期間とイオンの存在期間とが重なり合ってしまうようなことがなく、イオン電流を確実かつ感度よく検出することができ、ひいては検出したイオン電流に基づいて行う各種制御を精度よく実行させることができる。
【0055】
しかも、本実施例の内燃機関用点火装置によれば、多重放電の放電間隔Tmが100μsに設定されているので、フルトランジスタ型の点火回路を備えた従来装置と同等の着火性を保持することができる。
なお、本実施例において、点火回路2が点火手段、イオン電流検出回路4及びS170〜S200がイオン電流検出手段、S110〜S160が点火制御手段、サイリスタ16がスイッチング素子、タイマ回路18がスイッチング手段に相当する。
【0056】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することができる。
例えば、上記実施例では、タイマ回路18は、点火信号IGがオンレベルの間だけトリガー信号TGを出力するように構成されているが、点火信号IGの代わりに出力すべきトリガー信号TGの数をタイマ回路18に供給し、タイマ回路18では、その数だけトリガー信号TGを出力するように構成してもよい。
【0057】
また、上記実施例では、放電間隔Tmを100μsとしたが、この放電間隔Tmは300μs以下、且つ、昇圧回路15からの充電電圧による充電を完了するのに要する時間以上に設定されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の内燃機関用点火装置の全体構成を表す回路図である。
【図2】 点火回路の動作を表すタイミング図である。
【図3】 ECUが実行する処理の内容を表すフローチャートである。
【図4】 実施例の点火装置全体の動作を表すタイミング図である。
【図5】 運転限界空燃比を測定した結果を表すグラフである。
【図6】 運転限界空燃比を測定した結果を表すグラフである。
【図7】 イオン電流の検出タイミングを説明するための波形図である。
【図8】 従来装置の問題点を表す説明図である。
【符号の説明】
2…点火回路 4…イオン電流検出回路 8…検出回路
10…点火プラグ 12…点火コイル 14…コンデンサ
15…昇圧回路 16…サイリスタ 18…タイマ回路
20…抵抗 22…ダイオード 24…コンデンサ
26…ツェナーダイオード 28…充電用ダイオード
30…放電用スイッチ 32…トランジスタ
BT…バッテリ L1…一次巻線 L2…二次巻線
Claims (4)
- 内燃機関の気筒に装着された点火プラグに点火用高電圧を印加して、該点火プラグに火花放電を起こさせる点火手段と、
該点火手段の動作を制御する点火制御手段と、
該点火制御手段が前記点火手段を動作させた後に、前記点火用高電圧とは逆極性の検出用高電圧を前記点火プラグに印加して、前記点火プラグの電極間を流れるイオン電流を検出するイオン電流検出手段と
を備えた内燃機関用点火装置において、
前記点火手段は、
電源に接続され放電用のエネルギーを蓄積するコンデンサと、
一次巻線が前記コンデンサ,二次巻線が前記点火プラグと共にそれぞれ閉ループを形成するよう接続された点火コイルと、
前記コンデンサと前記一次巻線とを接続する電流経路を、各着火タイミングにおいて予め設定された放電間隔で予め設定された放電期間中繰り返し断続するスイッチング手段と
を備え、
前記点火制御手段は、内燃機関の運転状態に応じて放電期間を設定し、
前記イオン電流検出手段は、前記点火制御手段にて設定される放電期間の終了後からTDCに達するまでの期間内に前記イオン電流を検出することを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 前記イオン電流検出手段は、前記イオン電流を、TDC前に生じる第1のピークで検出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関用点火装置。
- 前記放電期間は、着火が十分に生じる程度には長く、一方で前記イオン電流の検出が可能となる程度に短く設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の内燃機関用点火装置。
- 前記放電間隔を規定する前記スイッチング手段の断続間隔は、300μs以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか記載の内燃機関用点火装置。
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