JP2000044503A - 水素化ビスフェノールa異性体組成物 - Google Patents

水素化ビスフェノールa異性体組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】若干の加熱により、容易に溶融するか、又は、
流動状態となって液体として扱うことができる水素化ビ
スフェノールAを提供する 【解決手段】水素化ビスフェノールAのトランス−トラ
ンス異性体(T−T)、トランス−シス異性体(T−
C)及びシス−シス異性体(C−C)を含み、好ましく
はT−T含量が、上記三異性体合計量に対して、33重
量%以下であり、固体状態で加熱した場合に、流動状態
へと変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が
70℃以下である水素化ビスフェノールA異性体組成
物、及び100〜150℃で流動状態にあり、T−T含
量が上記三異性体合計量に対して33重量%以下の水素
化ビスフェノールA異性体組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低い加熱温度で固
体状態から流動状態となる水素化ビスフェノールA及び
その製造法に関する。特に、水素化ビスフェノールAの
トランス−トランス異性体の含有量が特定量であり、固
体状態から流動状態となる温度が大幅に低下した水素化
ビスフェノールA、即ち、水素化ビスフェノールAの異
性体組成物ないし混合物、及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】水素化ビスフェノールAは、脂環式二価
アルコールの範疇に属する化合物であり、ビスフェノー
ルA、即ち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
プロパンの二つのベンゼン核を核水素化することにより
得られる。本明細書において、「水素化ビスフェノール
A」は、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシ
ル)プロパンを指す。
【0003】水素化ビスフェノールAは、不飽和ポリエ
ステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エ
ポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂の原料及び改質剤と
して、これらの樹脂に耐熱性、耐候性又は耐湿性等を付
与する原料として有用な化合物である。
【0004】現在知られている水素化ビスフェノールA
は、融点170〜190℃の固体である。この化合物
は、融点が高いことに起因して、溶融工程における溶融
速度が遅く、生産性が良くなかった。
【0005】更に、このような溶解性の低い固体の製品
を、各種化合物の製造原料として工業的に取扱う場合、
溶解槽の設置やホッパー、スクリューコンベアなどの付
帯設備の設置及び維持が必要であり、しかも、粉末状固
体であるが故に粉塵爆発の防止策や粉塵発生による作業
環境悪化の防止策などが必要である。最近の化学プラン
トの自動化により、工程監視が容易で、装置トラブルが
少ない液状原料が求められている。そこで、若干の昇温
操作により固体状態から流動状態へと変化し、工業的に
液体として取り扱え、操作が容易な水素化ビスフェノー
ルAが望まれている。
【0006】また、従来のビスフェノールAは、上記樹
脂の原料として共用するグリコール類などに溶解する工
程において溶解速度が遅く、グリコール類との相溶性の
点でも必ずしも満足できない面があった。
【0007】水素化ビスフェノールAには、式(1)、
(2)及び(3)
【0008】
【化1】
【0009】で表されるトランス−トランス異性体(T
−T)、シス−トランス異性体(C−T)、シス−シス
異性体(C−C)の3種類の立体異性体があり、各々の
融点はトランス−トランス異性体が194.1℃、シス
−トランス異性体が168.3℃、シス−シス異性体が
176.5℃である(日本化学雑誌 90巻6号(19
69)第534−537頁)。
【0010】特開昭53−119855号には、ルテニ
ウム触媒及びイソブタノール又はイソプロパノールの存
在下、140〜160℃でビスフェノールAを接触水素
化することにより、上記トランス−トランス異性体体の
含有量をニッケル触媒に比較して、70%に減ずること
ができることが開示されており、該公報の実施例によれ
ば、反応温度155℃で、トランス−トランス異性体含
有量が35.8%の水素化ビスフェノールAの結晶を得
ている。しかし、その結晶の融点は、170〜172℃
である旨記載されており、比較的低温で固体状態から流
動状態へと変化する水素化ビスフェノールAとは言えな
いものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、水素化ビス
フェノールA、特に、若干の加熱により容易に溶融する
か、又は、若干の加熱により流動状態となって、液体と
して扱うことができる水素化ビスフェノールA及びその
製造法を提供することを目的とする。また、本発明は、
グリコール類との相溶性の良い水素化ビスフェノールA
を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる現
状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結
果、融点が170℃以上である水素化ビスフェノールA
異性体混合物の結晶であっても、それを溶融し、該溶融
物を特定の冷却条件で冷却して固体にした場合に、得ら
れる固体が流動状態へと変化する温度が、当該結晶の融
点に比し、大幅に低いものとなり、70℃以下の低い温
度で固体状態から流動状態へと変化することを見いだし
た。
【0013】特に、上記式(1)のトランス−トランス
異性体の含有量が、トランス−トランス異性体、トラン
ス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量に対し
て、33重量%以下の異性体混合物は、そのような流動
状態となる温度が低い固体を容易に形成する混合物であ
り、若干の加熱により液体として扱え、しかも、グリコ
ール類との相溶性にも優れていることをを見いだし、本
発明を完成するに至った。
【0014】即ち、本発明は、水素化ビスフェノールA
のトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及
びシス−シス異性体を含み、固体状態で加熱した場合に
流動状態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる
温度が70℃以下であることを特徴とする水素化ビスフ
ェノールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA
異性体混合物を提供するものである。
【0015】特に、本発明は、水素化ビスフェノールA
のトランス−トランス異性体、トランス−シス異性体及
びシス−シス異性体を含み、これら異性体の合計量に対
して、該トランス−トランス異性体が33重量%以下の
量で存在しており、固体状態で加熱した場合に、流動状
態へ変化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が
70℃以下である水素化ビスフェノールA異性体組成物
ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物を提供する
ものである。
【0016】本明細書において、水素化ビスフェノール
A異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混
合物を「固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変化し
終わり、固体状態が認められなくなる温度」は、融点測
定器(商品名「微量融点測定器MP−J3」、柳本製作
所(株)社製)を用い、固体状態の水素化ビスフェノール
A異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混
合物のサンプルを昇温速度1℃/分にて加熱し、水素化
ビスフェノールAサンプル固体が流動状態となり、もは
や固体状態が存在しなくなるに至る温度である。以下、
本明細書では、簡便のため、該温度を、単に「流動化温
度」ということがある。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の水素化ビスフェノ
ールA異性体組成物ないし混合物、その製造法、及びそ
の有用性について、詳しく説明する。
【0018】水素化ビスフェノールA異性体組成物 本発明に係る水素化ビスフェノールA異性体組成物は、
前記式(1)、(2)及び(3)で表されるトランス−
トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス
異性体を含むものであって、その流動化温度が70℃以
下、好ましくは60℃以下であることを特徴とする。
【0019】本発明の水素化ビスフェノールA異性体組
成物は、その流動化温度が70℃以下である限り、当該
組成物を構成する異性体混合物の組成は特に限定されな
い。
【0020】しかし、本発明の水素化ビスフェノールA
異性体組成物は、そのトランス−トランス異性体の割合
が、トランス−トランス異性体、トランス−シス異性体
及びシス−シス異性体の合計量(以下「三異性体合計
量」という)に対して、33重量%以下である場合、低
い流動化温度を有する固体を容易に形成し、若干の加熱
により液体として扱えるので好ましい。その場合には、
その流動化温度は通常70℃以下、特に60℃以下にな
り、しかも、プロピレングリコールやネオペンチルグリ
コールなどの脂肪族グリコール類との相溶性に優れてい
る。
【0021】また、トランス−トランス異性体の割合
が、三異性体合計量に対して、33重量%を超える場合
であっても、上記と同様に低い流動化温度を有する固体
が得られ、その溶融工程が効率よく行えるので、好まし
い。
【0022】本発明の水素化ビスフェノールA異性体組
成物の流動化温度については、基本的には、70℃以下
であるが、その組成ないし製造法によっては、最も低い
場合で流動化温度は55℃程度となる。好ましくは、本
発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物ないし組成
物の流動化温度は、55〜60℃の範囲にある。
【0023】本発明の上記水素化ビスフェノールA異性
体組成物ないし水素化ビスフェノールAの異性体混合物
がこのような低い流動化温度を示すことは、極めて予想
外のことであった。即ち、上記の如く、式(1)、
(2)及び(3)の個々の異性体の融点はトランス−ト
ランス異性体が194.1℃、シス−トランス異性体が
168.3℃、シス−シス異性体が176.5℃といず
れも高融点である。また、前記特開昭53−11985
5号においては、トランス−トランス異性体含有量が3
5.8%の水素化ビスフェノールAの結晶の融点は17
0〜172℃である旨記載されており、やはり高融点で
ある。
【0024】ところが、本発明者らは、水素化ビスフェ
ノールA異性体混合物を溶融状態又は流動状態から急冷
して固体とすることにより、流動化温度が低いものとな
ることを見出したものである。特に、該異性体混合物中
のトランス−トランス異性体含有量が三異性体合計量に
対して33重量%以下の場合は、流動化温度が70℃以
下の水素化ビスフェノールA異性体混合物が極めて容易
に得られ、従来公知の水素化ビスフェノールA結晶の融
点に比し、著しく低い温度で固体状態から流動状態へと
変化する現象を見いだした。かかる著しく低い温度で流
動状態となる現象は、上記個々の異性体の融点や特開昭
53−119855号に記載の水素化ビスフェノールA
の結晶の高い融点からは、予想もできないものであっ
た。
【0025】このように本発明の水素化ビスフェノール
A異性体混合物が、その結晶の融点に比し、著しく低い
温度で流動状態となる理由は、必ずしも明確ではない。
しかし、詳細は未だ完全には解明されていないものの、
その理由の一つとしては、本発明の異性体混合物がガラ
ス状態にあり、そのガラス転移温度が低いために、若干
の加熱により、容易に固体状態から流動状態へ移行する
ためと推察される。従って、おそらく、本発明者らは、
本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物が、融解
現象とは異なるメカニズムに基づいて、固体状態から流
動状態へと変化する性質を有することを見出したものと
思われる。
【0026】例えば、トランス−トランス異性体の含有
量が50重量%であり、その融点が178〜185℃で
ある水素化ビスフェノールA異性体混合物の結晶を溶融
し、得られる溶融物を急冷して固体を得たところ、得ら
れた固体の流動化温度は、64℃であった。また、トラ
ンス−トランス異性体の含有量が前記特開昭53−11
9855号の実施例と同様の36重量%である水素化ビ
スフェノールA異性体混合物を、イソブタノールに溶解
し、溶媒を回収留去する際に得られた結晶は、融点が1
35〜143℃であったが、他方、同じくトランス−ト
ランス異性体の含有量が36重量%の水素化ビスフェノ
ールA異性体混合物を溶融し、得られた融溶物を急冷し
て得た固体は、流動化温度が64℃であった。
【0027】本発明においては、特に、そのトランス−
トランス異性体の含有量が、三異性体合計量に対して、
33重量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混
合物は、これを溶融して得られる溶融物を急冷して得ら
れる固体が、若干の加熱により液体として扱える好まし
い混合物であることが判明した。しかも、トランス−ト
ランス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重
量%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物
は、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールな
どの脂肪族グリコール類との相溶性に優れている。
【0028】本発明の水素化ビスフェノールA異性体混
合物ないし組成物にあっては、上記トランス−トランス
異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以
下、特に15〜33重量%であることが好ましいが、上
記のように70℃以下の流動化温度を示す限り、他の異
性体の比率は特に限定されず、混合物中にどのような比
率で存在していてもよい。
【0029】しかし、一般には、本発明の水素化ビスフ
ェノールAの三異性体合計量に対して、各異性体が次の
割合、即ち (a)トランス−トランス異性体が15〜33重量%、
特に15〜28重量% (b)トランス−シス異性体が40〜75重量%、特に
40〜65重量% (c)シス−シス異性体が10〜45重量%、特に20
〜45重量% の割合で存在することが好ましい。
【0030】上記本発明に係る水素化ビスフェノールA
異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合
物は、常温では固体であるが、従来の水素化ビスフェノ
ールAに比較して、70℃以下という低温で流動化する
ため、工業的に取り扱う際に、若干の昇温操作により液
体として取り扱うことができ、操作性がよいという利点
がある。これにより、水素化ビスフェノールAグリシジ
ルエーテル、水素化ビスフェノールAジアクリレート、
水素化ビスフェノールAのポリカーボネートなどの誘導
体製造において、無溶剤で反応を行なうか又は反応溶媒
を低減することが可能となる。
【0031】上記のように、本発明の水素化ビスフェノ
ールA異性体混合物は70℃以下の温度で固体状態から
流動状態へと変化するものであるが、その組成によって
は、例えば、70〜150℃程度の温度に保持すること
により、結晶を析出してしまう場合がある。例えば、ト
ランス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対
して、33重量%を超える場合は、一般に、70〜15
0℃程度の温度に5分間〜1時間程度保持することによ
り、結晶を析出してしまう。
【0032】しかし、本発明のトランス−トランス異性
体の含有量が、三異性体合計量に対して、33重量%以
下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、一般
に100〜150℃、好ましくは100〜120℃の温
度範囲に保持すると、長期間流動状態を維持し、結晶を
析出することもないので、上記温度で液体のまま貯蔵、
運搬及び使用することが可能である。
【0033】よって、本発明は、このように、若干の加
熱、例えば100〜150℃の温度に加熱することによ
り流動状態を保持しており、トランス−トランス異性体
の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下であ
る水素化ビスフェノールA異性体混合物ないし水素化ビ
スフェノールA異性体組成物を提供するものでもある。
【0034】更に、本発明の水素化ビスフェノールA異
性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物
を、プロピレングリコールやネオペンチルグリコールな
どの脂肪族グリコール類に溶解させる際には、従来の水
素化ビスフェノールAに比較して、溶解速度が大きくな
った。特に、トランス−トランス異性体の含有量が三異
性体合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフ
ェノールA異性体混合物は、プロピレングリコールやネ
オペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類への溶
解速度が高く、しかも、該グリコール類との相溶性に優
れているため、不飽和ポリエステル樹脂の製造コストを
低減させることができ、工業的により有用なものであ
る。
【0035】水素化ビスフェノールA異性体混合物の製
造法 以下に、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物
ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物の製造法に
ついて説明する。
【0036】本発明の流動化温度が70℃以下の水素化
ビスフェノールA異性体組成物は、基本的には、(i)原
料水素化ビスフェノールA異性体混合物を加熱して流動
状態とするか又は溶融することにより流動化物又は溶融
物を得る工程、及び、(ii)得られた流動化物又は溶融物
を急冷して固体を得る工程を包含する方法により得られ
る。
【0037】加熱により溶融又は流動化するための条件
及び急冷条件は、原料水素化ビスフェノールA異性体混
合物中のトランス−トランス異性体の割合が、トランス
−トランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シ
ス異性体の合計量に対して、33重量%を超える場合と
33重量%以下である場合とで異なる。
【0038】即ち、本発明では、水素化ビスフェノール
Aの異性体混合物を、上記トランス−トランス異性体の
割合が三異性体合計量に対して33重量%を超える場合
は、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物を、18
0〜220℃に加熱して溶融し、次いで、溶融物を例え
ば20〜50℃までに0.1〜10分間で急冷して固体
にし、上記トランス−トランス異性体の割合が三異性体
合計量に対して33重量%以下の場合は、原料水素化ビ
スフェノールA異性体混合物を、180〜220℃、好
ましくは100〜150℃に加熱して流動化し、次い
で、流動化した原料を例えば0〜50℃までに0.1〜
30分間で急冷して固体にするものである。
【0039】(I)トランス−トランス異性体含量が、
三異性体合計量の33重量%を超える場合 まず、原料水素化ビスフェノールA異性体混合物のトラ
ンス−トランス異性体の割合が、三異性体合計量に対し
て、33重量%を超える場合について説明する。
【0040】この場合、原料水素化ビスフェノールA異
性体混合物を、例えば、180〜220℃に加熱して溶
融し、溶融物を20〜50℃まで急冷すると、無色透明
の固体を得ることができる。急冷しない場合、結晶の析
出により白濁した固体の水素化ビスフェノールA異性体
混合物が生成し、本発明の低い流動化温度を有する水素
化ビスフェノールA異性体混合物とはならない。
【0041】原料である水素化ビスフェノールA異性体
混合物は、トランス−トランス異性体の割合が、三異性
体合計量に対して、33重量%を超えておれば、特に限
定されず、その組成もどのようなものであっても良い。
例えば、現在市販されている水素化ビスフェノールAを
原料として使用することもできる。また、従来公知の方
法、例えば、前記特開昭53−119855号に記載の
ように、ルテニウム触媒を用いてビスフェノールAを水
素化する方法等により得られる水素化ビスフェノールA
異性体混合物の結晶を、原料異性体混合物として使用す
ることもできる。また、原料として使用する水素化ビス
フェノールA異性体混合物は、結晶形態でなくても良
く、更には、任意の水素化ビスフェノールA異性体混合
物を2種以上混合したものであっても良い。
【0042】上記原料水素化ビスフェノールA異性体混
合物を溶融する方法も特に限定されない。例えば、原料
水素化ビスフェノールA異性体混合物を、そのまま加熱
して溶融する方法が採用できる。加熱温度も、原料固体
が溶融する温度であれば特に限定されないが、一般には
180〜220℃程度とすることが推奨される。
【0043】また、原料の水素化ビスフェノールA異性
体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物に
は、その製造時に副生する2−シクロヘキシル−2−
(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の不純物
がしばしば混入している。そのような場合、本発明で
は、原料異性体混合物を溶融し、得られる溶融物からこ
れら不純物を減圧下での蒸留トッピング等により除去
し、実質的に水素化ビスフェノールA異性体のみからな
る混合物とすることもできる。
【0044】しかし、該不純物を含んだままでも原料と
して使用でき、その溶融物を急冷して得られる水素化ビ
スフェノールA異性体組成物は、更に低い流動化温度を
有する。この場合、不純物、特に2−シクロヘキシル−
2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンは、水
素化ビスフェノールAのトランス−トランス異性体、ト
ランス−シス異性体及びシス−シス異性体の合計量10
0重量部に対して、通常8重量部以下程度、好ましくは
0.1〜6重量部程度、より好ましくは0.1〜2重量
部程度の量で存在させることができる。急冷の条件とし
ては、広い範囲の急冷条件を採用できるが、一般には、
例えば180〜220℃で溶融状態にある原料水素化ビ
スフェノールA異性体混合物(上記不純物を含んでいて
も良い)を、20〜50℃の温度まで、0.1〜10分
間程度、好ましくは0.1〜5分間程度で急冷すること
が推奨される。
【0045】実験室的には、溶融状態にある水素化ビス
フェノールA異性体混合物を、0〜30℃程度の温度の
金属製容器に注ぎ入れることにより、急冷を行うことが
できる。また、工業的には、溶融水素化ビスフェノール
A異性体混合物の溶融槽に、公知のフレーカーを接続し
た装置により急冷を行うことができる。フレーカーとし
ては、ドラム型、ベルト型の何れもが使用できる。この
方法に限らず、所望の低い流動化温度を有する固体が得
られる限り、溶融物の冷却条件及び冷却方法は問わな
い。
【0046】急冷により得られた固体は、そのままで使
用することも可能であるが、必要ならば、粉砕、分級等
の処理を施しても良い。
【0047】この急冷を行う方法により得られる本発明
の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素化ビ
スフェノールA異性体混合物は、使用した原料水素化ビ
スフェノールA異性体混合物と同じ組成であるが、上記
溶融工程及び急冷工程により、流動化温度が原料の結晶
の融点よりもかなり低いものとなる。こうして得られる
トランス−トランス異性体が三異性体合計量に対して3
3重量%を超える本発明の水素化ビスフェノールA異性
体組成物の流動化温度は、70℃以下であり、メルター
で溶融する際、低い温度から固体が流動化して加熱面に
接触し、熱伝導が順調に行われる。従って、結晶の形態
にある従来品に比較して、加熱が効率的に行われ溶融に
必要な時間が短くなり、生産性が向上する等の点で工業
的に有用である。
【0048】(II)トランス−トランス異性体含量が、三
異性体合計量の33重量%以下の場合 トランス−トランス異性体含量が三異性体合計量に対し
て33重量%以下の場合も、基本的には、トランス−ト
ランス異性体の割合が三異性体合計量に対して、33重
量%以下である原料水素化ビスフェノールA異性体混合
物を加熱により流動化させ、これを急冷して固体にする
方法により得られる。
【0049】トランス−トランス異性体の割合が、三異
性体合計量に対して、33重量%以下である原料水素化
ビスフェノールA異性体混合物は、後述する方法により
得ることができる。
【0050】こうして得られる水素化ビスフェノールA
異性体混合物は、例えば、180〜220℃に加熱して
流動状態としても良いが、それよりも低い温度である1
00〜150℃程度の温度に加熱するだけで、流動状態
となるので、この流動状態から0〜50℃、好ましくは
20〜40℃の温度に、例えば、0.1〜30分間、好
ましくは0.1〜10分間で冷却することにより、本発
明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし混合物
が、無色透明の固体として得られる。
【0051】冷却の具体的方法は上記(I)の場合と同
様であり、金属製容器に注ぎ入れる実験室的方法やフレ
ーカーを使用する工業的方法等が採用できる。
【0052】また、このトランス−トランス異性体の含
有量が当該異性体混合物に対して33重量%以下である
混合物は、既述のように、加熱下で結晶を析出すること
がないので、上記加熱により流動状態とした後、そのま
ま加熱を続けて、例えば100〜200℃、好ましくは
100〜150℃、より好ましくは100〜120℃の
温度に保持することにより、流動状態を維持することも
できる。また、上記と同様に、原料の水素化ビスフェノ
ールA異性体組成物ないし水素化ビスフェノールA異性
体混合物が、2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキ
シシクロヘキシル)プロパン等の不純物を含んでいる場
合、原料異性体混合物を溶融し、得られる溶融物からこ
れら不純物を減圧下での蒸留トッピング等により除去
し、実質的に水素化ビスフェノールA異性体のみからな
る混合物とすることもできるが、該不純物を含んだまま
でも原料として使用でき、その溶融物を急冷して得られ
る水素化ビスフェノールA異性体組成物は、更に低い流
動化温度を有する。この場合、不純物、特に2−シクロ
ヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロ
パンは、水素化ビスフェノールAのトランス−トランス
異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異性体の
合計量100重量部に対して、通常8重量部以下程度、
好ましくは0.1〜6重量部程度、より好ましくは0.
1〜2重量部程度の量で存在させることができる。次
に、トランス−トランス異性体の含有量が、三異性体合
計量に対して、33重量%以下である本発明の水素化ビ
スフェノールA異性体混合物の製造方法について説明す
る。
【0053】該異性体混合物のトランス−トランス異性
体含有量を三異性体合計量に対して33重量%以下に調
整する方法としては、公知の晶析、蒸留、混合などの何
れの方法であっても使用できるが、比較的容易に目的物
を製造できる方法は以下の三方法である。
【0054】(a)ビスフェノールAを特定の溶媒中
で、ルテニウム触媒を使用し、特定の温度条件下に接触
水素化する方法 (b)トランス−トランス異性体含有量が三異性体合計
量に対して33重量%を越える水素化ビスフェノールA
異性体混合物を、メタノール、エタノール、イソプロパ
ノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン
等のケトン、酢酸エチル等のエステル、クロロホルム等
のハロゲン化炭化水素等の溶媒に、好ましくは加熱下
に、溶解し、得られる溶液から再結晶法によりトランス
−トランス異性体を除去する方法 (c)上記の方法(a)又は(b)によって得たトラン
ス−トランス異性体含有量が低い混合物と該トランス−
トランス異性体含有量が三異性体合計量に対して33重
量%を越える混合物とを混合して、得られる混合物にお
いて、トランス−トランス異性体の割合を、三異性体合
計量に対して33重量%以下に調整する方法。
【0055】上記方法のうちでも、特に、(a)のルテ
ニウム触媒による接触水素化法は工業的に有利な方法で
ある。以下、これらの方法について説明すると共に、本
発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物の製造法に
ついても説明する。
【0056】方法(a) 本発明のトランス−トランス異性体の含有量が三異性体
合計量に対して33重量%以下である水素化ビスフェノ
ールA異性体混合物を、接触水素化により製造するに
は、ルテニウム触媒の存在下及び溶媒としてのグリコー
ル若しくはグリコールエーテル又は飽和脂肪族一級アル
コールの存在下に、溶媒がグリコール若しくはグリコー
ルエーテルの場合は反応温度80〜180℃で、溶媒が
飽和脂肪族一価アルコールの場合は反応温度80〜13
0℃で、ビスフェノールAを接触水素化することにより
得られる。
【0057】ここで使用できるルテニウム触媒として
は、公知のものでよく、ビスフェノールAのベンゼン環
の水素化の触媒活性を有するルテニウム化合物又は金属
ルテニウムが使用できる。例えば、かかるルテニウム化
合物として、塩化ルテニウム、ルテニウム酸カリウム、
ルテニウム酸ナトリウム、ルテニウム酸ルビジウム、ル
テニウム酸アンモニウムなどのルテニウム酸塩を使用
し、該ルテニウム酸塩を、例えば、珪藻土、軽石、活性
炭、シリカゲル、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チ
タンなどの担体に担持させ、次いで、必要ならば、水素
気流中で常法に従い活性化処理することにより、所望の
ルテニウム触媒が容易に得られる。また、金属ルテニウ
ム、酸化ルテニウム、水酸化ルテニウムなどを、上記の
ような担体に担持し又は担持することなくそのまま用い
ることもできる。いずれの場合も、上記ルテニウム化合
物又は金属ルテニウムの担持量は特に限定されないが、
上記ルテニウム化合物を、触媒の全体重量に対して、ル
テニウム金属として、0.1〜10重量%程度の量で上
記担体に担持させるのが好ましい。
【0058】一般に、固定床反応を行う場合は、ルテニ
ウム化合物をルテニウム金属として触媒の全体重量に対
して0.1〜2重量%の量で担体に担持させてなるペレ
ット又は粒状の形態の触媒を使用することが好ましく、
懸濁反応を行う場合、ルテニウム化合物をルテニウム金
属として触媒の全体重量に対して2〜10%重量の量で
担体に担持させてなる粉末形態の触媒を使用することが
好ましい。
【0059】また、使用するルテニウム触媒は市販のも
のであってもよい。かかる市販のルテニウム触媒とし
て、エヌ・イー・ケムキャット社、ジョンソン・マッセ
ー社、日産ガードラー社の5%Ruカーボン粉末、5%
Ruカーボン粉末含水品、5%Ruアルミナ粉末、酸化
ルテニウム、ルテニウムブラック、0.5%Ruカーボ
ン粒、0.5%Ruアルミナペレットを例示することが
できる。
【0060】ルテニウム触媒の使用量は、水素圧力によ
り変化するが、懸濁反応の場合、原料ビスフェノールA
重量に対して、ルテニウム金属として0.01〜1重量
%、特に、0.05〜0.5重量%とするのが、反応速
度と触媒コストの観点から好ましい。
【0061】この製造方法で使用する溶媒は、原料及び
生成物と反応せず、自らも水素化されない不活性なもの
であり、生成物を溶解することができる有機溶媒であれ
ば、各種のものを使用できる。しかし、特に好ましい反
応溶媒はグリコール及びグリコールエーテルから選ばれ
た少なくとも1種の溶媒、及び飽和脂肪族一級アルコー
ルである。
【0062】グリコールとしては、一般式 HO−(AO)m−H (4) [式中、Aは炭素数1〜5の直鎖又は分枝のアルキレン
基を示し、mは1〜4の整数を示す。但し、Aがネオペ
ンチレン基の場合、mは1を示す。]で表されるものが
例示できる。また、グリコールエーテルとしては、一般
式 R1O−(CH2CH2O)n−H (5) [式中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n
は1〜4の整数を示す。]で表されるものが使用でき
る。
【0063】そのうちでも、上記一般式(4)で表され
るグリコールがより好ましい。グリコールのうちでも、
特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ト
リエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3
ーブタンジオール、1,4ーブタンジオール、ネオペン
チルグリコールを望ましいものとして例示することがで
きる。
【0064】これらの中で、プロピレングリコールは最
も反応速度が速く、溶媒コストが安価であり、且つ、主
な用途である不飽和ポリエステル樹脂やウレタン樹脂の
原料として共用するグリコールであること、及び、溶媒
を留去して高純度水素化ビスフェノールAを得る場合に
も留去しやすいことから、最も好ましい反応溶媒はプロ
ピレングリコールである。
【0065】また、溶媒としては、飽和脂肪族一級アル
コールも使用でき、特に炭素数1〜8の直鎖の飽和一級
アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プ
ロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−
ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール等
及び炭素数4〜8の分岐の飽和脂肪族一級アルコール、
例えばイソブタノール、イソオクタノール等を例示でき
る。これらの中で、n−ブタノールが反応時の蒸気圧が
低く反応に有利であって、反応後の除去が容易であると
ころから好ましい溶媒である。
【0066】上記一般式(4)で表されるグリコール及
び一般式(5)で表されるグリコールエーテルからなる
群から選ばれる少なくとも1種を使用する場合も、上記
飽和脂肪族一級アルコールを使用する場合も、該溶媒の
使用量は任意の範囲で選択できるが、工業的には、原料
ビスフェノールA/溶媒=2/8〜8/2、特に、4/
6〜7/3の重量比とするのが生産性を考慮した場合に
好ましい範囲である。
【0067】接触水素化反応は、バッチ方式、連続式の
何れもに適用できる。バッチ式懸濁反応方式、連続式流
動床方式、固定床連続方式においても適用される。
【0068】反応は、溶媒として上記一般式(4)で表
されるグリコール及び一般式(5)で表されるグリコー
ルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を使
用する場合は、通常、80〜180℃、好ましくは80
〜130℃、より好ましくは90〜120℃程度の温度
で行われ、溶媒として上記一級アルコールを使用する場
合は、通常、80℃〜130℃、好ましくは90〜12
0℃で行われる。一般に、反応温度が高温であると反応
速度は大きいが、反応選択性が低下し、核水素化副生成
物である2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシ
クロヘキシル)プロパン、4−イソプロピルシクロヘキ
サノール、シクロヘキサノール等が生成し易くなる。
【0069】反応水素圧力は特に限定されないが、1〜
250kg/cm2Gを例示できる。高圧であるほど、
反応速度が大きく、生産性が良好であり、核水素化副生
成物の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシク
ロヘキシル)プロパン等の発生量が少ないため、好まし
い。好ましい反応水素圧力は10〜200kg/cm2
Gである。
【0070】反応時間は反応条件により異なる。一般に
は、水素圧力、反応温度、触媒量等を調整して、例え
ば、懸濁バッチ方式では、反応時間が1〜12時間とな
るように、また、連続固定床方式の場合には、空塔線速
度が0.5〜2(時間-1)となるようにするのが好まし
い。
【0071】上記の条件下で水素化反応を行なって得ら
れる反応混合物から、目的とする本発明の水素化ビスフ
ェノールA異性体混合物を単離するには、慣用されてい
る精製処理手段を採用することができる。例えば、反応
混合物から、ルテニウム触媒を濾過等の手段により除去
し、得られる反応粗物から溶媒及び副生した2−シクロ
ヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロ
パン、4−イソプロピルシクロヘキサノール、シクロヘ
キサノール等の低沸点不純物を、減圧留去、例えば圧力
1〜5mmHg程度、温度170〜250℃程度で減圧
留去することにより、前記トランス−トランス異性体、
シス−トランス異性体及びシス−シス異性体の混合物か
らなり、トランス−トランス異性体の含有量が三異性体
合計量に対して33重量%以下である混合物を高純度で
得ることができる。しかし、既述のように、2−シクロ
ヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロ
パン等は、完全に除去しなくても良く、若干残留させる
ことにより流動化温度を、より低くすることもできる。
【0072】上記不純物を完全に又は不完全に留去した
時点では、残留する本発明の水素化ビスフェノールA異
性体混合物は、流動状態ないし溶融状態にあり、これを
急冷することにより、低い流動化温度を有する無色透明
の固体になる。この場合、急冷条件は、一般には、例え
ば100〜150℃程度の温度で流動状態にある状態か
ら0〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度まで、例
えば、0.1〜30分間、好ましくは0.1〜10分間
で冷却することが推奨される。よって、トランス−トラ
ンス異性体含量が三異性体合計量に対して33重量%を
超える混合物の溶融物に比べて、流動化物の温度を低く
設定でき、また、冷却に要する時間を長くすることがで
き、工業的に有利である。
【0073】本実施形態においては、流動化物の温度を
低く設定できるため、次のような利点がある。(1)急冷
装置の熱負担が少ない。高温物を急冷する場合は、大量
の熱をごく短時間で除去する必要があり、そのため、処
理できる対象物の量が少なくなり、生産性が低下する。
しかし、本実施形態では、上記流動化の温度を低く設定
できるので、比較的大量の流動化物を急冷でき、生産性
が向上する。(2)また、水素化ビスフェノールAの溶融
物は空気に接触して酸化劣化する。精製工程は、不活性
ガス下で行うが、急冷装置では高温で空気と接触する。
よって、急冷装置に供給する流動化物の温度が低い本実
施形態は、得られる製品の品質の観点からも好ましい。
【0074】急冷の具体的方法は上記(I)の場合と同
様であり、例えば、金属製容器に注ぎ入れる実験室的方
法やフレーカーを使用する工業的方法等が採用できる。
【0075】また、このトランス−トランス異性体の含
有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である混
合物は、既述のように、加熱下で結晶を析出することが
ないので、上記不純物を留去した後、そのまま加熱を続
けて、例えば100〜200℃、好ましくは100〜1
50℃の温度に保持することにより、流動状態を維持す
ることができる。
【0076】方法(b) また、上記方法(b)は、トランス−トランス異性体が
最も容易に結晶化し易い性質を有することを見出し完成
された方法であり、例えば原料水素化ビスフェノールA
異性体混合物を上記メタノール、エタノール、イソプロ
パノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケト
ン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、クロロホルム
等のハロゲン化炭化水素等の溶媒に溶解し、溶液を冷却
することにより結晶を析出させると、得られる結晶は大
部分がトランス−トランス異性体であるため、相対的
に、母液中ではシス−シス異性体及びシス−トランス異
性体の割合が増大し、トランス−トランス異性体の割合
が減少する。
【0077】よって、上記再結晶条件を適宜選択するこ
とにより、この母液中のトランス−トランス異性体の割
合を三異性体合計量に対して33重量%以下とすること
ができ、こうして得られた母液から溶媒及び必要に応じ
て不純物を減圧下に留去することにより、目的とするト
ランス−トランス異性体の割合が三異性体合計量に対し
て33重量%以下の水素化ビスフェノールA異性体混合
物を得ることができる。
【0078】減圧留去の条件及び急冷して固体とする際
の条件としては、上記方法(a)において記載した条件
が使用できる。
【0079】また、方法(a)に記載のように、減圧留
去完了の時点で流動状態にある本発明のトランス−トラ
ンス異性体の含有量が三異性体合計量に対して33重量
%以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、
そのまま若干加熱して流動状態を持続させることも可能
である。
【0080】方法(c) 方法(c)は、(i)上記の方法(a)又は(b)によっ
て得たトランス−トランス異性体含有量が低い混合物と
(ii)該トランス−トランス異性体含有量が三異性体合計
量に対して33重量%を越える混合物とを均一混合し
て、得られる最終混合物において、トランス−トランス
異性体の割合を、三異性体合計量に対して33重量%以
下に調整する方法である。
【0081】上記均一混合は、例えば、上記(i)と(ii)
とを溶融状態ないし流動状態において、撹拌しながら均
一となるまで混合することにより、行なうことができる
が、その他の方法であっても、均一混合ができる限り採
用することができる。
【0082】こうして得られた均一混合物を、上記方法
(a)と同様に、例えば100〜150℃程度の温度で
流動状態にある状態から0〜50℃、好ましくは20〜
40℃の温度まで、例えば、0.1〜30分間、好まし
くは0.1〜10分間で急冷することが推奨される。急
冷の具体的方法は上記(I)の場合と同様であり、例え
ば、金属製容器に注ぎ入れる実験室的方法やフレーカー
を使用する工業的方法等が採用できる。
【0083】また、このトランス−トランス異性体の含
有量が三異性体合計量に対して33重量%以下である水
素化ビスフェノールA異性体混合物は、既述のように、
加熱下で結晶を析出することがないので、上記溶融状態
ないし流動状態で均一混合した後、そのまま加熱を続け
て、例えば100〜200℃、好ましくは100〜15
0℃の温度に保持することにより、流動状態を維持する
こともできる。
【0084】上記(II)の方法(a)〜(c)により得
られるトランス−トランス異性体の割合が三異性体合計
量に対して、33重量%以下であり、流動化温度が70
℃以下である水素化ビスフェノールA異性体混合物は、
工業的に取り扱う際に、若干の昇温操作により液体とし
て、取り扱うことが出来るという利点がある。
【0085】本発明の水素化ビスフェノールA異性体混
合物は従来から水素化ビスフェノールAが使用されてい
た各種の用途に使用することができる。
【0086】例えば、不飽和ポリエステル樹脂原料、ウ
レタン樹脂原料、飽和ポリエステル原料、ポリカーボネ
ート原料、エポキシ樹脂原料として使用できる。
【0087】また、誘導体として、ポリエステルポリオ
ール、アクリル酸ジエステル、メタクリル酸ジエステ
ル、ジグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加物、
プロピレンオキシド付加物、亜燐酸エステルなどの原料
として使用できる。
【0088】上記の用途のうちでも、不飽和ポリエステ
ル樹脂の製造、ポリエステルポリオールの製造及びウレ
タン樹脂の製造の用途を具体的に説明する。(A)不飽和ポリエステル樹脂の製造 当該不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、本発明の水素
化ビスフェノールAとグリコールとジカルボン酸とから
不飽和ポリエステルを製造し、これにモノマー成分を添
加し、得られる混合物を、ラジカル発生剤を触媒とする
架橋重合に供して不飽和ポリエステル樹脂となすもので
ある。
【0089】上記グリコールとしては、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、
ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、
1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、
1,10−デカンジオール、ビスフェノールAエチレン
オキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド
付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリ
スリトールジアリルエーテル等を例示できる。
【0090】上記ジカルボン酸成分としては、無水マレ
イン酸、フマル酸、イタコン酸、無水テトラヒドロフタ
ル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水エンドメ
チレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、無水テト
ラブロムフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレ
フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキ
サヒドロフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸
等を例示できる。
【0091】上記モノマー成分として、スチレン、ビニ
ルトルエン、メタクリル酸メチル、ジアリルフタレート
との混合物を製造し、過酸化物やアゾビス化合物等のラ
ジカル発生触媒により架橋重合して不飽和ポリエステル
樹脂とする。
【0092】また、上記不飽和ポリエステル樹脂は、エ
ポキシ樹脂変性、イソシアナート変性、ジシクロペンタ
ジエン変性、、アクリル変性EVA変性、ゴム変性を行
なうことができる。
【0093】エポキシ樹脂としては、汎用のビスフェノ
ールAジグリシジルエーテルなどが使用される。イソシ
アナート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシア
ナート、トリレンジイソシアナート、水添ジフェニルメ
タンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、
1,3−メチレンシクロヘキサンジイソシアネートなど
が使用できる。ゴム変性としては、ブタジエンゴム、イ
ソプレンゴム、ネオプレンゴム、ブタジエン−アクリロ
ニトリルゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム、
スチレン・イソプレン・スチレンゴムなどのゴム類など
を使用し、必要な変性が可能である。
【0094】これらの不飽和ポリエステル樹脂は、シー
トモールドコンパウンド(SMC)、バルクモールドコ
ンパウンド(BMC)として有用であり、大理石調樹脂
としてバスタブやキッチンウォール、テーブルのトップ
コート、自動車外板、紫外線透過性樹脂、電子レンジ用
食器、塗料などに使用され、特に、大理石調のバスタブ
用途に有用である。
【0095】(B)ポリエステルポリオール 本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物と共用す
るグリコール成分として、エチレングリコール、プロピ
レングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、1、3−ブタン
ジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサン
ジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカン
ジオール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、
ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物などがあ
る。
【0096】ジカルボン酸成分として無水フタル酸、イ
ソフタル酸、テレフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル
酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、
コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等がある。
【0097】これらのポリエステルポリオールは、ウレ
タン樹脂鎖長剤、エポキシ樹脂粉体塗料原料、アクリル
樹脂原料に使用される。
【0098】(C)ウレタン樹脂 本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物及び/又
は本発明の水素化ビスフェノールA異性体混合物から得
ることができるポリエステルポリオール、及び必要に応
じてグリコールを含有する混合物を鎖長剤として、公知
のジイシソアナート化合物と反応させて、ウレタン樹脂
を製造する。
【0099】かかるウレタン樹脂は、高Tg熱可塑性ポ
リウレタン樹脂、無黄変性ポリウレタン塗料、発泡用樹
脂等に使用される。
【0100】
【発明の効果】本発明の水素化ビスフェノールA異性体
組成物ないし水素化ビスフェノールA異性体混合物は、
若干の加熱により流動化するので、操作性がよく、工業
的に有利である。
【0101】これにより、水素化ビスフェノールAの誘
導体の製造において、反応溶媒を不要とするか反応溶媒
の使用量を減少させるプロセスが可能となる。即ち、水
素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルの製造にお
いて、エピクロルヒドリンを添加する工程において、好
ましい反応温度100℃において液体とする為に、従
来、キシレンなどの反応溶媒を用いていた。しかし、本
発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ないし水素
化ビスフェノールA異性体混合物は、当該温度において
液状であり、これを原料として使用すると、無溶剤反応
が可能となって、生産性が向上する。
【0102】また、本発明の水素化ビスフェノールA異
性体混合物は、不飽和ポリエステルやポリエステルポリ
オールの製造において、仕込時から均一液体であるの
で、反応して得られる分子鎖中の当該水素化ビスフェノ
ールAの偏りがない。
【0103】さらに、従来からの水素化ビスフェノール
Aの用途である不飽和ポリエステル樹脂やウレタン樹脂
の中間原料であるポリエステルポリオールの製造におい
て、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物ない
し水素化ビスフェノールA異性体混合物は共用するプロ
ピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂肪
族グリコール類に対して、溶解速度が大きく、生産性が
向上する。
【0104】特に、本発明のトランス−トランス異性体
の含有量が三異性体合計量に対して33重量%以下であ
る水素化ビスフェノールA異性体混合物の場合には、プ
ロピレングリコールやネオペンチルグリコールなどの脂
肪族グリコール類との相溶性に優れている。この為、本
発明のトランス−トランス異性体の含有量が当該異性体
混合物に対して33重量%以下である水素化ビスフェノ
ールA異性体混合物、及び、該水素化ビスフェノールA
異性体混合物に更にプロピレングリコールやネオペンチ
ルグリコールを含有させた混合物を、特別な装置を付帯
することなく、パイプ輸送やローリー搬送することが可
能となり、工業的に極めて有利なものである。
【0105】また、特に、トランス−トランス異性体の
含有量が三異性体合計量の33重量%以下である水素化
ビスフェノールA異性体混合物は、若干の加熱により流
動状態を保持するのみならず、若干加熱して流動状態の
まま長期保存しても結晶の析出が実質的に無いので、パ
イプ輸送やローリー搬送が容易に行える等の点で有利で
ある。
【0106】更に、高反応性物質であるイソシアネート
や酸クロリド等の低温で反応させることが一般となって
いる化合物との反応に使用できる。
【0107】
【実施例】以下、実施例及び比較例を掲げ、本発明を詳
しく説明する。実施例及び比較例において、得られた異
性体混合物の流動化温度及び融点、各異性体の含有量並
びにPG曇点は、以下のようにして測定した。
【0108】(1)流動化温度及び融点 融点測定器(商品名「微量融点測定器MP−J3」、柳
本製作所(株)社製)を用い、昇温速度1℃/分にて水素
化ビスフェノールA異性体混合物サンプルを加熱し、目
視にて、水素化ビスフェノールAサンプル固体が完全に
流動状態となり固体状態が存在しなくなるに至る温度を
測定し、この温度を流動化温度として記録した。
【0109】また、融解するサンプルについても、上記
と同様に、サンプル固体が完全に融解する温度を測定
し、これを融点として記録した。
【0110】(2)各異性体の含有量 ガスクロマトグラフィー(以下「GLC」と略す)によ
り、分析した。
【0111】(3)PG曇点 水素化ビスフェノールA異性体混合物とプロピレングリ
コールとを160℃で加熱溶解して、50重量%のプロ
ピレングリコール溶液を調製し、溶解後、毎分1℃で室
温まで冷却し、溶液が曇り始めた温度を測定した。この
温度が低いほど、水素化ビスフェノールA異性体混合物
とグリコールとの相溶性が良好であることを示す。
【0112】実施例1 500mlの電磁攪拌機付きオートクレーブに、ビスフェ
ノールA100g、プロピレングリコール100g、5
%Ruアルミナ触媒(粉末状、商品名「ER−50」、
エヌ・イー・ケムキャット社製)4gを仕込み、撹拌し
ながら、水素圧力100kg/cm2G、反応温度11
0℃で水素化を行った。反応時間2時間で水素吸収は見
られなくなり、さらに、110℃で攪拌を続け、0.5
時間熟成反応を行った。
【0113】反応混合物中のルテニウム触媒を濾別し、
GLCで分析した結果、未反応のビスフェノールAは存
在していなかった。
【0114】この反応粗物を、窒素雰囲気中で、温度1
70℃、圧力2mmHgで蒸留トッピングして、溶媒及
び2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロヘ
キシル)プロパン等の不純物を留去した。
【0115】留去完了後、得られた流動化物(温度:約
140℃)を、ステンレス製のバット(温度:20℃)
に注いで急冷し、本発明の水素化ビスフェノールA異性
体組成物(即ち、水素化ビスフェノールA異性体混合
物)の透明な固体101gを得た。
【0116】この水素化ビスフェノールA異性体組成物
は、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−
トランス異性体及びトランス−トランス異性体から実質
上なっており、これら三異性体合計量に対して、シス−
シス異性体25重量%、シス−トランス異性体50重量
%、トランス−トランス異性体25重量%であった。
【0117】また、本組成物中の2−シクロヘキシル−
2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンの含量
は、三異性体合計量100重量部に対して、0.1重量
部であった。また、本組成物の流動化特性については、
加熱により、55℃でサンプル固体が変形を始め、流動
化温度は58℃であった。また、このもののPG曇点は
室温以下であった。
【0118】また、上記透明固体を140℃に加熱して
流動化させて得た流動化物50gを空気オーブン中11
0℃で1週間保持した。結晶化は認められず、流動化物
は、均一な流動状態を保っていた。
【0119】実施例2 3リットルフラスコに、水素化ビスフェノールA異性体
混合物(シス−シス異性体 8重量%、シス−トランス
異性体40重量%、トランス−トランス異性体52重量
%)100g及びクロロホルム1000gを入れ、加熱
還流させて溶解し、冷却して、白色固体を析出させ、析
出固体を濾別除去した。
【0120】こうして得たクロロホルム溶液(濾液)
を、窒素雰囲気中で、常圧下加熱して大部分のクロロホ
ルムを留去し、さらに、温度170℃、圧力2mmHg
で蒸留トッピングして、溶媒及び2−シクロヘキシル−
2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の不
純物を留去した。
【0121】得られた溶融物(温度:200℃)を、ス
テンレス製のバット(温度:20℃)に注いで急冷し
て、本発明の水素化ビスフェノールA異性体組成物(即
ち、水素化ビスフェノールA異性体混合物)の透明な固
体60gを得た。
【0122】この水素化ビスフェノールA異性体組成物
は、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−
トランス異性体及びトランス−トランス異性体から実質
上なっており、これら三異性体合計量に対して、シス−
シス異性体12重量%、シス−トランス異性体56重量
%、トランス−トランス異性体32重量%であった。
【0123】また、本組成物中の2−シクロヘキシル−
2−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンの含量
は、三異性体合計量100重量部に対して、0.1重量
部であった。また、本組成物の流動化特性については、
加熱により、58℃でサンプル固体が変形を始め、流動
化温度は64℃であった。また、このもののPG曇点は
33℃であった。
【0124】実施例3 実施例2で使用した原料水素化ビスフェノールA異性体
混合物100gを200℃に加熱して溶融し、さらに、
窒素雰囲気中で、温度200℃、圧力2mmHgで蒸留
トッピングして、2−シクロヘキシル−2−(4−ヒド
ロキシシクロヘキシル)プロパン等不純物を留去した。
【0125】この溶融物(温度:200℃)を、ステン
レス製のバット(温度:20℃)に注いで急冷して、本
発明の水素化ビスフェノールAの透明な固体90gを得
た。
【0126】この水素化ビスフェノールAは、GLC分
析したところ、シス−シス異性体、シス−トランス異性
体及びトランス−トランス異性体から実質上なってお
り、これら三異性体合計量に対して、シス−シス異性体
8重量%、シス−トランス異性体40重量%、トランス
−トランス異性体52重量%であった。また、本組成物
中の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒドロキシシクロ
ヘキシル)プロパンの含量は、三異性体合計量100重
量部に対して、0.1重量部であった。
【0127】また、本組成物の流動化特性については、
加熱により、58℃でサンプル固体が変形を始め、流動
化温度は64℃であった。このもののPG曇点は95℃
であった。
【0128】実施例4 反応溶媒として、プロピレングリコール100gに代え
て、n−ブタノール100gを使用した以外は実施例1
と同様な操作を行い、 水素化ビスフェノールA異性体
組成物100g(モル収率95%)を透明な固体として
得た。反応時間4時間で水素吸収が見られなくなり、こ
のものの反応粗物のGLC分析において、未反応ビスフ
ェノールAは存在していなかった。
【0129】この水素化ビスフェノールA異性体組成物
は、GLC分析したところ、シス−シス異性体、シス−
トランス異性体、トランス−トランス異性体から実質的
になっており、これら三異性体合計量に対して、シス−
シス異性体25重量%、シス−トランス異性体50重量
%、トランス−トランス異性体25重量%であった。ま
た、本組成物中の2−シクロヘキシル−2−(4−ヒド
ロキシシクロヘキシル)プロパンの含量は、三異性体合
計量100重量部に対して、0.1重量部であった。ま
た、本組成物の流動化特性については、加熱により、5
5℃でサンプル固体が変形を始め、流動化温度は58℃
であった。また、このもののPG曇点は室温以下であっ
た。
【0130】また、上記透明固体を140℃に加熱して
流動化させて得た流動化物50gを、空気オーブン中1
10℃で1週間保持した。結晶化は認められず、流動化
物は、均一な流動状態を保っていた。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素化ビスフェノールAのトランス−ト
    ランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異
    性体を含み、固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変
    化し終わり、固体状態が認められなくなる温度が70℃
    以下であることを特徴とする水素化ビスフェノールA異
    性体組成物。
  2. 【請求項2】 水素化ビスフェノールAのトランス−ト
    ランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異
    性体を含み、これら異性体の合計量に対して、該トラン
    ス−トランス異性体が33重量%以下の量で存在してお
    り、固体状態で加熱した場合に、流動状態へ変化し終わ
    り、固体状態が認められなくなる温度が70℃以下であ
    る水素化ビスフェノールA異性体組成物。
  3. 【請求項3】 水素化ビスフェノールAのトランス−ト
    ランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異
    性体を含み、これら異性体の合計量に対して、 (a)トランス−トランス異性体が15〜33重量% (b)トランス−シス異性体が40〜75重量% (c)シス−シス異性体が10〜45重量% の量で存在することを特徴とする請求項2に記載の水素
    化ビスフェノールA異性体組成物。
  4. 【請求項4】 水素化ビスフェノールAのトランス−ト
    ランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異
    性体を含み、これら異性体の合計量に対して、該トラン
    ス−トランス異性体が33重量%以下の量で存在してお
    り、100〜150℃で流動状態にある水素化ビスフェ
    ノールA異性体組成物。
  5. 【請求項5】 水素化ビスフェノールAのトランス−ト
    ランス異性体、トランス−シス異性体及びシス−シス異
    性体を含み、これら異性体の合計量に対して、 (a)トランス−トランス異性体が15〜33重量% (b)トランス−シス異性体が40〜75重量% (c)シス−シス異性体が10〜45重量% の量で存在しており、100〜150℃で流動状態にあ
    る水素化ビスフェノールA異性体組成物。
  6. 【請求項6】 (i)水素化ビスフェノールAの異性体混
    合物を加熱して流動化又は溶融して流動物又は溶融物と
    する工程、及び(ii)該流動化物又は溶融物を急冷して固
    体にする工程を包含する請求項1に記載の水素化ビスフ
    ェノールA異性体組成物の製造方法。
  7. 【請求項7】(i)一般式 HO−(AO)m−H (4) [式中、Aは炭素数1〜5の直鎖又は分枝のアルキレン
    基を示し、mは1〜4の整数を示す。但し、Aがネオペ
    ンチレン基の場合、mは1を示す。]で表されるグリコ
    ール及び一般式 R1O−(CH2CH2O)n−H (5) [式中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n
    は1〜4の整数を示す。]で表されるグリコールエーテ
    ルからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒中、ル
    テニウム触媒の存在下に、反応温度80〜180℃の温
    度でビスフェノールAを接触水素化して流動状態にある
    水素化ビスフェノールA異性体混合物を得る工程、及び
    (ii)得られた流動状態にある水素化ビスフェノールA異
    性体混合物を急冷して固体にする工程を包含する請求項
    2又は3に記載の水素化ビスフェノールA異性体組成物
    の製造法。
  8. 【請求項8】 溶媒が、プロピレングリコールである請
    求項7に記載の製造法。
  9. 【請求項9】 (i)飽和脂肪族一級アルコール中で、ル
    テニウム触媒の存在下に、反応温度80〜130℃の温
    度でビスフェノールAを接触水素化して流動状態にある
    水素化ビスフェノールA異性体混合物を得る工程、及び
    (ii)得られた流動状態にある水素化ビスフェノールA異
    性体混合物を急冷して固体とする工程を包含する請求項
    2又は3に記載の水素化ビスフェノールA異性体組成物
    の製造法。
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