明 細 書
外方の皮膜層を有し且つ釉生成用の釉薬原料と、 焼成された釉を着色できる着色 料とを封入してある球形力プセルおよびその利用
技術分野
本発明は、 陶磁器およびその他の耐熱性基体の表面で焼成時に有色の装飾模様 を作ることのできる用途を有して且つ外方の継目なし(シームレス) (seamless) の皮膜層をもっと共に釉生成用の釉薬原料と焼成時に釉を着色できる着色料を封 入した 2層または多層構造の球形カプセルである新規製品に関する。 また、 本発 明は、 そのような球形カプセルを使用することによって有色の装飾模様をもつ陶 磁器を製造する方法ならびに陶磁器を含めて耐熱性基体の表面に装飾模様を作る 装飾方法を包含する。
背景技術
陶磁器製造にあたって、 それの表面を被覆するガラス質薄膜層である釉 (Glaze) を施すことは周知である。
釉は、 釉薬とも、 日本の陶磁器技術分野で言われている。 釉は、 陶磁器の表面 に融着された釉層 (Glaze coating) を意味するのが普通であるが、 釉または釉薬 とは、 釉を焼成時に生成するのに使用できる釉薬原料 (glaze-producing raw materials; を意味することもめる ( 「Encyclopedia of Pottery and PorcelainJ, 1800〜1960, 140~141頁、 Ε· Cameron著、 Facts On File Publications社発行; および大西政太郞著 「陶芸の釉薬」 新版、 2003頁 10月 10日、 第 3刷発行、 理 工学社) 。
釉の種類は多種多様である力 無色透明な基本釉 (base glaze)の代表例には、 石灰釉 (limestone glaze) 、 ナトリウム: ¾石釉 (sodium feldspathic glaze) 、 カリウム長石釉 (potassium feldspathic glaze) 、 灰釉 (ash glaze) が知られる ( rThe Japanese Pottery Handbook] 68頁、 P.Simpsonら著;講談社インタ 一ナショナル社、 1979年 5月発行、 および前記の 「陶芸の釉薬」 大西著、 なら びに 「工業大事典」 第 17巻、 470〜473頁、 平凡社、 1962年 5月発行) 。 また、無機質着色料を無色の基本釉に配合して作られる有色の釉は周知である。 そのような有色の釉に配合される無機質着色料としては、 各種の金属物質または
各種の金属化合物が使用できることが周知である(前記の「陶芸の釉薬」大西著、 および前記の 「工業大事典」第 3巻、 358〜360頁、 「顔料」 の項、平凡社、 1960 年 2月発行) 。
着色料を配合された釉の代表例には、 着色料として酸化第二銅を含むトルコ青 釉 (Blue Turquoise glaze) 、 着色料として酸化第二鉄を含む黒天目釉 (Black Tenmoku glaze)、着色料として酸化第二鉄を含む油滴天目釉(Oil spot Tenmoku glaze) 、 着色料として比較的多量の酸化第二鉄を含む銀油滴天目釉 (Silver oil spot Tenmoku glaze) およびその他の多種多様な釉が周知である (前記の 「陶芸 の釉薬」新版、 64〜278頁、大西著;および前記の「Encyclopedia of Pottery and Porcelain] 1800〜: I960、 E.Cameron著、 326頁、 ならびに 「A Guide To The Pottery and Porcelain of The Far East, m The Department of Ceramics and Etlmography」 ,: British Musium., 1924年発行、 20〜: L33頁、 参照) 。
釉層をもつ陶磁器の製造に当っては、 陶土または磁土製の成形品、 例えば皿状 の成形品を作り、 それを乾燥し、 その後に素焼きし、 得られた素焼き成形品 (biscuit-fired body) に、 釉生成用の釉薬原料の泥漿 (含水スラリーまたはスリ ップ) を、 浸し掛け、 流し掛け、 塗り掛け、 吹き抜けする湿式法、 あるいは、 微 粒状の釉薬原料をふりかける乾式法によって施釉し、 次いで乾燥し、 そのように 乾燥された施釉ずみの素焼き成形品を窯に入れて窯の中で燃焼火炎および (また は) 高温の燃焼ガスによって、 または電気的加熱によつて施釉温度で焼成するこ とが通常である。
さらに、 陶磁器の表面に、 有色の装飾模様を筆または印刷により画いて施着す ることが多い。 素焼き素地に、 下釉用の着色料で装飾模様を画き、 さらにその上 力 ら低火度の透明釉の生成用の釉薬原料の泥漿を浸し掛けし、 自然乾燥し、 さら に 1000°C以下の温度で焼成し、得られた焼成品の表面上に上絵具で装飾模様を画 き、 そして再び焼成することからなる方法によって、 陶磁器に装飾模様を施すこ とは慣用的なことである。
陶磁器に装飾模様を画くのに用いられる上絵具として、 各種の無機着色料を含 む各種の絵具が周知である。 例えば金液 (gold luster liquor) (水金ともいう) (油溶性の金ィ匕合物を主成分とする油性製剤)が知られる「原色陶器大辞典」 101
〜102頁、 114〜: L16頁、 279〜280頁、昭和 48年 6月 19日、 3版発行、淡交社)。 さらに、 陶磁器に装飾の絵付けをする新しい方法としては、 着色料と釉薬もし くは釉薬の原材料と結着剤樹脂と帯電制御剤とから主としてなる微粒子.(粒度は 5〜30 μ程度) から構成されたトナーを用いて、 静電気潜像現像方式で転写シー ト上に画像を形成し、 転写シート上の画像を陶磁器素焼き成形品の表面の所定位 置に転写させ、 次いで、 その転写された画像を焼き付けることから成る、 陶磁器 の絵付け方法が提案された (特開平 8— 11496号公報)。
また、 施釉された陶磁器素焼き成形品を焼成するに当って、 窯変 (yo-hen) と いう現象が起ることが知られる (前記の 「原色陶器大辞典」 986〜987頁、 およ び前記の 「陶芸の釉薬」 278〜279頁)。 窯変とは、 焼成中に陶磁器の釉が炉内の 雰囲気などの影響下で、 予期されない色や斑紋などを生成することを指す。 窯変 (yo-hen) (直訳的な英訳では "kiln-changes" という) は、 釉が英語で言 われる "hares-fur" effectを示すことを意味するものである ( Japanese Pottery Information Center] のホームページのィンターネットウェブサイト
「http:〃 www.e-yakimono.net/guide/htnil/tenrnoku.litml」 よひ 「Tenmoku Kogo Intercense Box J のインターネットウェブサイト
I http://www.fareastasianart.com/stores/japanesepottery/items/27496/item27 496」ならびに BRITISH MUSEUM発行の前記 ΓΑ GUIDE TO THE POTTERY & PORCELAIN OF THE FAR EAST, IN THE DEPAETMENT OF
CERAMICS AND ETHNOGRAPHYJ の 25〜27頁、 参照)。 窯変の現象が起る 事由は未知なことが多い。 窯変を起こすには、 酸化鉄または酸化銅、 その他の金 属化合物を含む釉薬の使用、 焼成窯の焼成温度の調整、 窯内の酸化性雰囲気の調 整、 還元性雰囲気の調整、 窯の冷却速度の調整などの多岐にわたる条件を巧く組 み合わせて焼成を行うことが必要であると言われている。 けれども、 従来既知の 釉薬の調合や、 施釉法を利用するだけでは、 窯変を釉に確実に作出する手段が未 だ得られていない。
施釉された陶磁器表面に有色の装飾模様を作る装飾方法は、 古来から種々な方 法が用いられてきているが、 従来用いられる装飾方法の多くは、 かなり煩雑であ つて、 時間をとる方法である。 従来知られる装飾方法に比べて、 施釉された陶磁
器表面に有色の装飾模様を作るための、 より簡便な新しい方法ないし手段を提供 することが以前から要望されている。
なお、 他方で、 医薬品、 化粧品、 食品を継目なしの、 所謂、 シームレスの外方 の皮膜層をもつ球形カプセル中に封入することが知られている。 またそのように 医薬品、 化粧品、 食品を封入するのに用いられて従来知られるシームレスの皮膜 層付き球形カプセルは、 中央の芯部層と、 芯部層を包被する外方の固体状のシー ムレスな皮膜層とを有する 2層構造の球形力プセル、 もしくは中央の芯部層と、 芯部層を包被する 1枚のまたは複数枚の中間層と、 中間層を最も外方から包被す る固体状のシームレスな皮膜層とからなる少なくとも 3層をもつ複合多層構造の 球形力プセルでありうる (例えば、 米国特許第 4,695,466号 (1987年 9月 22日 刊行)、 日本特許出願公告平 3—33338号 (1991年 5月 16日刊行)、 日本特許出 願公告平 4一 31732号 (1992年 5月 27日刊行)、 日本特許第 2806564号 (1998 年 7月 24日刊行)、 日本特許出願公開、 特開 2000— 4844号(2000年 1月 11日 公開)、日本特許出願公開、特開平 11一 79964号、その対応の米国特許第 6,426,089 号 (2003年 7月 30日刊行) および日本特許第 3313124号 (2002年 5月 31日 刊行) の各明細書、 参照)。
例えば、 直立の内方ノズル管と、 これを同軸的に且つ同心的に包囲する直立の 外方ノズル管とから成る 2重管ノズルを使用し、 製造されるべき 2層構造の球形 カプセルの芯部層として封入されるべき第 1の液体状原料または固体粒子 (芯材 物質) を、 内方ノズル管に封入して内方ノズルの下端ノズル孔から下向きに押出 し、 そして該カプセルの外方の皮膜層を形成するのに用いられて皮膜形成能のあ るゲルィ匕性物質を含む第 2の液体状原料 (皮膜材物質の原料を含む溶液) を、 外 方ノズル管の上部に入れ、 そして内方ノズル管の外壁と外方ノズル管の内壁との 間に形成されたチヤネル中を通液させ、外方ノズルの下端ノズル孔から押出させ、 このことによって第 1の液体状原料または固体粒子が内層をなし且つ第 2の液体 状原料が外層をなす 2層構造である 1本の液流を作り、 2重管ノズルのノズル孔 の出口から出る該液流が先端の所で自然にくびれて丸レ、液面を次々に形成させ、 そして落下する 2層構造の丸い液滴を生成させ、 そしてそれらの 2層構造の液滴 を、 液滴の外層中の皮膜材物質の原料を化学的にゲルィ匕できるゲル化剤の水溶液
の液浴中に次々に滴下させ、 該ゲル化剤水溶液中で前記の丸 、液滴の外層をゲル 化させ、 これでゲル化された固体状物質よりなる皮膜層をもち且つその皮膜層内 に内包された第 1の液体状原料または固体粒子 (芯材物質) よりなる内層をもつ ところの 2層構造で継目なし (シームレス) の球形カプセルを形成させ、 さらに それら球形カプセルを回収することから成る、 2層構造の球形カプセルを製造す る方法が知られている (例えば、 前記の日本特開 2000—4844号公報および米国 特許第 4,695,466号明細書とその第 3図、 参照)。
また、 2層構造の球形カプセルの皮膜層を形成する材料の原料としてアルギン 酸ナトリゥム塩あるいはその他のゲル化性物質を含む水溶液を使用することも知 られる(前記の米国特許第 6,426,089号明細書および日本特許第 3313124号明細 書、 特にその 2頁、 参照)。
発明の開示
陶磁器の焼成に当って、 陶磁器表面上に様々な多色に着色した装飾模様をもつ 釉層を形成できる簡便な方法は、 未だ開発されていない。
また、 陶磁器の製造に当って、 従来知られた窯変を示す釉層をもつ陶磁器を簡 便な手段で、 しかも確実に製造できる手段は、 陶磁器製造の分野で未だ開発され ていない。
本発明の第 1の目的は、 陶磁器を含めて耐熱性基体の表面の上に、 目にざん新 で美しい単色または多色の装飾模様または装飾効果を、 小島状斑点の形の有色な 釉層の多数の組合わせにより生成できる性能をもっと共に、所望される場合には、 美しい窯変を示す小島状斑点の形で生成される有色の釉層の多数の組合わせによ り、 美しい窯変を示す斑紋を地釉層に生成できる性能を有する球形力プセルであ つて、 球形カプセルの囲りを継目無しに包囲する多孔質固体状のシームレスな皮 膜層と、 該皮膜層で包被された中央の芯部層と、 所望に応じて設ける中間層とを 有して、 しかも該カプセルの内部には、 無色の基本釉を生成できる釉薬原料の微 粒子、 および無色の基本釉を焼成時に着色できる無機質着色料を封入、 含有して いる 2層または多層の構造の球形カプセルを、 新規な工業的製品として提供する ことにある。
本発明の第 2の目的は、 無色の基本釉を生成できる前記の釉薬原料の微粒子お
よび前記の無機質着色料を封入、 含有する前記の球形力プセルの複数個を用いな がら、 目にざん新で美しい単色または多色の装飾模様または装飾効果、 もしくは 窯変効果をもつ斑紋を表面に有する陶磁器を製造する新規な方法を提供すること にあ ο。
さらに、 本発明の第 3の目的は、 前記した球形カプセルの複数個を用いて、 陶 磁器またはその他の耐熱性基体の表面上に有色の装飾模様または装飾効果を作り 出すことから成る、 新しい装飾方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、 本明細書に示す後記の説明から明らかであろう。 本発明者らは、 陶磁器の釉層に窯変を作出できる技術ならびに陶磁器の釉層の 新しい上絵付け技術を開発するために、 釉薬の新しい調合と新しい施釉法、 なら びに釉と着色料との新しレ、配合について色々の研究を行つた。 それらの研究の一 つの結果として、 球形カプセルの囲りを継目なしに包囲するシームレスな皮膜層 で包被される球形カプセルの中に、 従来知られる無色で透明な基本釉 (base glaze) を生成できる釉薬原料と、そのような基本釉を焼成時に着色できる既知の 無機質着色料とをそれらの色々な組合わせの仕様で封入、 含有させてなる球形力 プセルを新しい工業的製品として製造することの着想を、 本発明者らは得た。 この着想に基づいて、本発明者らは、下記の第 1回の実験を行った。すなわち、 この第 1回の実験では、 銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の微粉末状混合物の 市販品を入手してから、 この微粉末状混合物を水と 60: 40の重量比でよく混合 して釉薬原料を含む泥漿 (スラリーまたはスリップの形である) を作り、 この泥 漿をアルギン酸ナトリゥムの 5重量%を含むゾル状水溶液と 1 : 1の重量比で混 合してスラリー状混合物 (a) を調製した。 このスラリー状混合物 (a) を、 出口 孔径 1.44mmのノズノレ孔をもつ 1本の直立ノズル管を通して下向きに押出した。 押出された液流は、 その下端で自然にくびれて次々に丸い液滴を形成した (例え ば、前記の米国特許第 4,695,446号明細書の添付図面の第 4図、参照)。 このよう に形成された丸い液滴をアルギン酸ナトリゥムのゲル化剤として働く塩ィ匕カルシ ゥムの 2重量%を含む水溶液よりなる液浴中に室温で次々に滴下させた。 この液 浴中で約 5分間保持すると、 液浴に導入されたそれぞれの液滴について液滴の表 面層に Caイオンが浸透し、 アルギン酸ナトリゥムと反応するのでそれぞれの液
滴の表面では、 アルギン酸カルシウムのゲル状硬ィ匕物を含む皮膜層が形成される ことを認めた。 その結果、 ゲル状の表面皮膜層で包被された継目なしの球形カブ セル粒子の多数が前記の液浴内で滴下された前記の丸い液滴の各々から形成され た。 このように形成された多数の球形力プセル粒子を前記の液浴から取出した。 それら球形カプセル微粒子の 1個を中央でナイフにより切断すると、 球形カブ セル粒子の表面層は、 アルギン酸 Caのゲル状硬化物よりなる皮膜であるが、 こ のゲル状物質の皮膜で包被された芯部層は前記のスラリー状混合物 (a) の液体 のままであることが観察された。このように取出された球形力プセル粒子を 20°C の乾燥空気流中で力プセル粒子の芯部を含めて、 粒子全体が固化するまで十分に 乾燥させた。 これによつて、 それぞれ約 1.0mmの粒径をもつ乾燥した球形カブ セル粒子の多数が収得できた (後記の実施例 2、 (a)、 (i) の記载、 参照)。
これら乾燥し固化した 2層構造の球形カプセル粒子の各個では、 それの表面の シームレスな皮膜層は、 銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、 アルギン 酸カルシウムの硬化物との固体状混合物から構成されており、 しかも水分の蒸発 で生じた多くの細孔を有する多孔質な構造をもつが、 該表面皮膜層で包被された 固体状の芯部層が酸ィ匕第二鉄を着色料として含む銀油滴天目釉の生成用の釉薬原 料とアルギン酸ナトリウム (有機結合剤として作用する物質) との固体状混合物 よりなることが認められた。
他方、 陶土製の素焼きタイル板に市販の乳白色釉の泥漿を浸し掛けし、 自然乾 燥した。 このように施釉、 乾燥されたタイル板表面に、 前記で得られた乾燥、 固 化した 2層構造の球形力プセル粒子 (銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の固体状 混合物よりなる芯部層を有する球形カプセル)の数個を、スターチ糊で貼り付け、 さらに自然乾燥させた。このように前記の球形力プセルを結着されたタイル板を、 電気キルンに入れて徐々に加熱し、 後記の実施例 2、 (b)に記載されると同様な 要領で最高 1235°Cの焼成温度で酸ィヒ性雰囲気下に焼成した。このように焼成され たタイノレ板は、 その板の全面に乳白釉の地釉層をもち、 そして、 その地釉層の上 には、 結着した球形力プセルの各個の熔解で生成された小島状斑点の形の釉層の 複数が地釉層からやや***した状態で形成されたことが認められた。 しかも、 そ れらの小島状の斑点の形の釉層の各々の表面は、 銀油滴天目釉の示す銀色の色相
をもつことが認められて、 顕微鏡下では鉄結晶の出現が観察できた。 従って、 こ のように得られた焼成タイル板では、 乳白釉の地釉層の上に、 銀油滴天目釉より なる小島状斑点の組合わせで形成される銀色の装飾模様が作成されたことが認め られた。
さらに下記の第 2回の実験を本発明者は行った。 すなわち、 その第 2回の実験 では、第 1回の実験で用いた銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の市販品に代えて、 トルコ青釉を生成できる釉薬原料の微粉末状混合物の市販品を入手し、 この微粉 末状混合物を水と 60: 40の重量比で混合して泥漿を作り、 この泥漿に対してァ ルギン酸ナトリウムの 5重量%水溶液 (ゾル状) を後記の実施例 3、 (a) と同様 に、 1 : 1の重量比でよく混合して、 スラリー状混合物 (b) を調製した。 このス ラリー状混合物 (b) を、前記の第 1回の実験と同様にして、出口孔径 1.44mmの ノズル孔をもつ 1本の直立ノズル管を通して下向きに押出した。 ノズル孔から押 出された液流は、 その下端で自然にくびれて次々に丸レ、液滴を形成した。 このよ うに形成されて上記のスラリ一状混合物 (b) (トルコ青釉の生成用の釉薬原料を 含む) よりなる丸い液滴を、 塩化カルシウムの 2重量%zK溶液よりなる液浴中に 次々に滴下し、 液浴内に滴下された液滴を室温で約 5分間保持した。 このように して、上記のスラリ一状混合物 (b) の丸レ、液滴から生成されたところの、 ゲル状 の物質よりなる表面皮膜層で包被された球形カプセル粒子の多数が前記の液浴内 で形成された。 液浴から取出された球形カプセル粒子を、 前記の第 1回の実験と 同様にして粒子全体を乾燥により固化させた。 このように得られた全体が固化し た乾燥カプセル粒子を用いて、 それ以降の各工程は、 前記の第 1回実験と全く同 じ手順で行って実験を続けた。
その結果、 最終的に得られた焼成タイル板は、 乳白釉の地釉層をもち、 そして その地釉層の上には、 用いた球形力プセルの各個の熔融で生成された小島状斑点 の形の釉層の複数が形成されていた。 それら小島状斑点の形の釉層の表面はトル コ青釉に特有の青緑色を呈しており、 各斑点の釉層中に銅結晶が出現したことが 観察された。 こうして得た焼成タイル板では、 乳白釉の地釉層の上に、 トルコ青 釉ょりなる小島状斑点の組み合わせで形成される青緑色の装飾模様が作成された ことが認められた。
さらに行った第 3回の実験では、 例えば米国特許第 4,695,466号明細書の添付 図面の第 1図に示された多層カプセル製造装置に設けられた二重管ノズルと同様 な構造をもつ二重管ノズルを用意した。この二重管ノズルの内方ノズル管内には、 陶磁器の上絵付け絵具として知られる金液の市販品を装入し、 内方ノズル管のノ ズル孔から金液を下向きに押出した。 また、 同時に、 前記の第 2回実験で調製し たスラリ一状混合物(b) (トルコ青釉の生成用の釉薬原料とアルギン酸ナトリウ ム水溶液との混合物からなるスラリー) を、 外方ノズル管内壁と内方ノズル管の 外壁との間に形成された空室内に装入し、 後記の実施例 1、 (a) に記載された同 じ要領で、二重管ノズルの下方ノズル孔からスラリー状混合物 (b) を下向きに押 出した。 後記の実施例 1、 (a)に記載されたと同様にして、 前記の下方ノズル孔 から押出された 1本の液流は、 その下端で自然にくびれて丸レ、液滴を次々に形成 した (例えば、米国特許第 4,695,466号の添付図面の第 4図、参照)。 このように 形成された丸い液滴は、 その内層が金液からなり、 そしてその外層が前記のスラ リ一状混合物 (b) よりなる 2層構造を有した。
このような 2層構造の丸い液滴を、 塩化カルシウムの 2重量%水溶液よりなる 液浴中に次々に、 実施例 1、 (a) と同様にして滴下した。 その液浴内に液滴を 5 分間保持すると、 各々の液滴から 2層構造の球形力プセル粒子が形成された。 こ れら 2層構造の球形力プセルを液浴から取出して、 前記の第 1回実験と同様にし て乾燥空気流の中で十分に乾燥して、 球形カプセルの皮膜層を固化させた。 得ら れた 2層構造の球形力プセルの芯部層は前記の金液からなり、 そしてその皮膜層 は、 継目なし (シームレス) であって、 またトルコ青釉の生成用の釉薬原料とァ ルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物からなり、 しかも多孔質な構造を もつことが認められた。
このようにして得られた乾燥した 2層構造の球形カプセルを用いて、 それ以後 の各工程は、前記の第 1回実験と全く同じ手順で行って実験を続けた。その結果、 最終的に得られた焼成タイル板は、 乳白釉の地釉層の上に、 用いた 2重構造の球 形カプセルの各個の熔融で生成された小島状の斑点の形の釉層の複数を有してい た。 それらの各々の小島状斑点の釉層の表面は、 後記の実施例 1、 (b)に記載さ れると同様にして、 同心的な 2重円状の有色の縞模様を示し、 それの外縁縞部が
青色を呈し、 また内方の縞部が紫色を帯びた金色を呈した。 従って、 得られた焼 成タイル板では、 乳白釉の地釉層の上に、 前記の同心的な 2重円の有色の縞模様 をもつ小島状斑点が生成されており、 それら斑点の組合せで形成された美し 、装 飾模様が作成されたことが認められた。
さらに行った第 4回の実験では、 例えば米国特許第 4,695,466号の第 1図に示 された三重管ノズ と同様な構造をもつ三重管ノズルを用意した。 そして、 後記 の実施例 6、 (a)、 (i)、 お)、 (iii)に記載されると同じ手順で、 3層構造の球形力 プセルを製造し、 また実施例 6、 (b)に記載されると同様にして、 該 3層構造の 球形カプセルを用いて絵付け陶器皿を作製した。 その結果、 焼成された陶器皿で は、 乳白釉の地釉層の上に、 赤色の外縁部分と黄色の内方部分とをもつほぼ同心 的な 2重円の縞模様をもつ小島状斑点の形の釉層の複数が該球形力プセルの各々 の熔融により生成されており、 そして焼成タイル板は前記の斑点の組合わせで構 成された美しい装飾模様を表わすことが認められた。
前記のように、 1本のノズル管を具えた球形力プセル製造装置を利用して、 芯 部層と皮膜層とのみを有する単純な 2層構造で継目のない (シームレス) 球形力 プセルを製造する既知の技術、 ならびに 2重管ノズル、 3重管ノズルまたは 4重 管ノズルを具えて利用する 3層またはそれ以上の多層構造のシームレスの球形力 プセルの製造装置を利用して、 多層構造で継目のない球形カプセルを製造する既 知の技術を応用し、 またそれと共に、 製造すべき球形カプセルに封入される基本 釉の生成用の釉薬原料の色々な種類と、 配合されるべき無機質着色科の色々な種 類と、 力プセル皮膜層の形成に用いる皮膜形成能のある物質の色々な種類とを各 様な組合せで用いて、 球形力プセルの作製を試みる一連の多数の実験を行った。 これらの一連の実験の結果として、 各種の基本釉の生成用の釉薬原料と、 基本釉 を着色できる各種の着色料とを封入してあり、 そして芯部層と皮膜層とを有する 2層構造で継目のない (シームレス) 球形力プセル、 もしくは芯部層と、 芯部層 を包被する 1つまたは複数の中間層と、 中間層を最も外方から包被する皮膜層と を有する多層構造で継目のない (シームレス) 球形カプセルの各種各様な製品を 製造することに成功した。
その結果、 上記のような 2層または多層構造の球形カプセルの内層の芯部を構
成する芯材物質と、 カプセルの最も外側に設けられる皮膜層を構成する皮膜材物 質と、 芯部の内層と該皮膜層との間に所望ならば設けることもできる単数または 複数の中間層を形成する構成物質とのうちの少なくとも一つは、 窯変を起す作用 をもつ着色料として有効である金属物質 ·金属化合物を所望ならば任意に含有で きると共に、 しかも該内層の芯材物質と、 中間層をなす構成材の物質と、 皮膜層 をなす皮膜材物質とのうちで少なくとも 1つが基本釉の生成用の釉薬原料と釉の 着色用の着色料とをそれぞれ別々に、 もしくは該釉薬原料と、 釉の着色用の着色 料とを同時に一緒に含有するようにして、 該釉薬原料と、 釉を着色できる着色料 とが封入された 2層構造、 3層構造またはそれ以上の多層構造のシームレスな球 形カプセルを製造できることを、 本発明者らは知見した。
前記のようにして製造された 2層またはそれ以上の多層構造のカプセルは、 こ れらカプセルの複数個を陶磁器の素焼き成形品の施釉品または未施釉品の表面に、 適当な装飾模様を画くように好みの配置で点在して配列するように熱分解性有機 質接着剤、 例えばスターチ糊剤で貼り付け、 その後に、 それらカプセルを結着し て有する素焼き成形品を窯内に入れて徐々に加熱し、そして 1000°C以上の仕上げ 焼成温度で酸ィ匕性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成する場合に、 各個のカプセ ルが熔解し、 カプセル中の有機物質が焼失し、 またカプセル内の釉薬原料と釉用 の着色料とが一緒になつて熔融して有色の釉層を生成するが、 この釉層の生成に 当ってカプセル中に含まれた物質成分が種々な化学的変化、 物理的変化を受ける ことになること、 またその結果、 仕上げ焼成品の表面に美しい着色した小島状斑 点の形態の釉層を作出できることが今回、知見された。上記の諸知見に基づいて、 本発明は完成されたのである。
従って、 第 1の本発明においては球形カプセルの芯部をなす内層と、 該芯部を 外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された球形カプセルであるか、 あるいは球形カプセルの芯部をなす最内層と、 該球形カプセルを最も外方から包 被するシームレスな皮膜層と、 該芯部をなす最内層と該皮膜層との間に介在して 設けてある単数または複数の中間層とから構成された多層の複合構造の球形カブ セルであって、 該皮膜層を形成する皮膜材物質は、 皮膜形成能のある熱分解性有 機物質からなる 、 または該皮膜形成能のある熱分解性有機物質と後記の釉薬原
料および (または) 後記の着色料との固体状混合物からなるものであり、 さらに 該芯部を形成する芯材物質と、 該皮膜層を形成する皮膜材物質と、 該中間層を形 成する材料物質とのうちの少くとも一つは、 焼成時に透明な釉層を生成できる基 本釉の生成用の釉薬原料を含有しており、 また該芯部を形成する前記の芯材物質 と、 該皮膜材物質と、 該中間層を形成する前記の材料物質とのうちの少くとも一 つは、 焼成時に生成される透明な釉を着色できる無機着色料を含有しており、 し かも該芯材物質と、 該皮膜材物質と、 該中間層を形成する前記の材料物質とのう ちの少くとも一つは、 透明な釉を生成できる前記の基本釉の生成用の釉薬原料と 一緒に焼成するときに、 窯変効果を示す小点、 斑点または斑紋状の模様を、 生成 される釉層に形成できる着色料として有効であることのできる金属物質および (または) 金属化合物を含有する力 もしくは前記の金属物質または金属化合物 は該芯部、 中間層および皮膜層をそれぞれ形成する物質の何れにも全く含有され なくともよいものであり、 しかも該芯材物質と、 該中間層を形成する前記の材料 物質との一方または両方は、 熱分解性の有機質結合剤をさらに任意に含有できる ことを特徴とする、 焼成された時に透明な釉層を生成できる透明な基本釉の生成 用の釉薬原料と、 透明な基本釉を着色できる着色料とを含有、 封入する球形カブ セルが提供される。
第 1の本発明のカプセルは、 球形カプセルの芯部をなす内層と、 該内層を外方 から包被するシームレスな皮膜層とから構成された継目なしの球形力プセルの形 であることができる。 また、 第 1の本発明の球形カプセルは、 球形カプセルの芯 部をなす最内層と、 該芯部を包被する 1つ、 2つまたは 3つの中間層と、 中間層 を最も外方から包被するシームレスな皮膜層とから構成された多層な複合構造で 継目なしの球形カプセルの形であることもできる。
第 1の本発明による^隆目なし (シームレス) の球形カプセルにおいて、 カブセ ルの皮膜層を形成する皮膜材物質、 またこれのための原料は、 皮膜形成能のある 熱分解性有機物質であり、 好ましくは、 ゼラチンのようなタンパク質、 あるいは ぺクチン、 メトキシぺクチン、 アルギン酸のような多糖類であるが、 普通には、 ゲル化剤で処理されるとゲル状にゲルィ匕できる性質をもつ有機物質であることが できる。 またはそのようなゲル化性の有機物質を含むことができる。 前記のタン
パク質または多糖類の硬化物がカプセル皮膜層に含まれる主要成分であるか、 も しくはそれだけでカプセル皮膜層を形成する。 前記のタンパク質と多糖類は、 そ れぞれ単独に、 あるいは 2種以上混合して使用できる。 カプセル皮膜層は、 その 中に着色料を配合することもできる。
一般的には、 前記の皮膜形成能のある有機物質は、 米国特許第 4,695,466号明 細書に記載されるフィルム形成性物質 (film-forming substance) や、 日本特許 第 3313124号明細書 2頁に示される皮膜剤物質を用いうる。アルギン酸ナトリゥ ム水溶液を皮膜材物質の原料として用い、 これを塩化カルシウム水溶液と接触さ せ、 Caイオンと反応してィォン架橋することで生成されるアルギン酸カルシゥ ムのゲル状硬化物を含む皮膜材原料物質から生成された固体状の皮膜層を球形力 プセルに設けるのが好適である。
本発明の球形力プセルにおいて、 力プセルの皮膜層を形成する前記の皮膜材物 質中にある皮膜形成能のある熱分解性有機物質がアルギン酸カルシゥムの硬化物、 ぺクチンまたはメトキシぺクチンの硬化物、 ゼラチン硬化物または力ゼィン硬ィ匕 物のような多糖類またはタンパク質であり、 しかも該皮膜層は多数の細孔を含有 して多孔質の構造をもつ固体層で形成されてあることが好ましい。
本発明の球形カプセルの中央の芯部層を形成する芯材物質は、 液状、 半固体状 または固体状でよい。 この芯材物質は陶芸用の各種の着色料 (着色剤の微粒子、 あるいは油性または水性スラリー状にした着色剤微粒子の分散液の形である) だ けから成ることもでき、 または該着色料と他の成分との混合物であることができ る。 例えば、 前記の金液 (水金とも言われて、 融剤を含むのが普通である) それ だけで芯材物質を形成できる。 芯材物質の中に、 それの主要成分として、 上記の ゲル化できる皮膜形成性タンパク質または多糖類よりなる有機質結合剤を配合す ることもできる。 また芯材物質の中に窯変を作出するのに有効であると従来知ら れる既知の着色料を配合することも可能である。
本発明の球形カプセルの芯部層と皮膜層との間には、 所望ならば、 単数または 相重なる複数の中間層を介在するように設けることもできる。 この中間層を形成 する材料物質は、 基本釉を焼成時に着色できる着色料と、 基本釉の生成用の釉薬 原料の微粒子と、 熱分解性の有機質結合剤との固体状混合物から成るカゝ、 あるい
は前記の着色料と有機質結合剤との固体状混合物から成ることができる。 中間層 を形成する材料物質のための原料を含む溶液中に前記のゲル化性のタンパク質ま たは多糖類のような有機質結合剤を配合されてあることができる。また、例えば、 中間層は金液の乾燥残渣生成物のみからなることができ、 そしてその中には窯変 を起し得る着色科として有効である金コロイド粒子、 金イオンが含有されること ができる。
本発明の球形力プセル中に設けられた芯部層、 中間層および皮膜層のうちの何 れかの一つの層を形成する構成材物質は、 基本釉生成用の釉薬原料の微粒子を含 有できる。 その基本釉は既知の釉薬であることができる。 その市販品の釉薬原料 の微粉末または水性スラリー (漿液すなわちスリップ) を用いて、 本発明の球形 カプセルを作製することのできる。 自作の釉薬原料であってもよい。 各種の基本 釉の生成用の釉薬原料の各種の市販品をそれぞれ単独に、 または数種組合わせて 調合して、 球形カプセルの製造に際して使用できる。
本発明の球形力プセルで使用できるところの、 透明な釉層を焼成時に生成でき る基本釉の生成用の釉薬原料は、 透明な石灰釉を生成するのに用いられる既知の 釉薬原料であるか、 あるいは透明なナトリゥム長石釉または透明な力リゥム長石 釉を生成するのに用いられる既知の釉薬原料である力、 あるいは透明な灰釉を生 成するのに用いられる既知の釉薬原料であることができる。
前記の透明な石灰釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、 カリ長石と石 灰石と珪石と力オリンを含有する微粒子状の材料 (0から成るか、 もしくは力リ 長石と陶石と石灰石とカオリンとを含有する微粒子状の材料 (ϋ) より成るカゝ、も しくはカリ長石と石灰石と炭酸パリゥムと珪石と力オリンとを含有する微粒子状 の材料 (iii)より成るものである。 また、 前記の透明なナトリゥム長石釉を生成 できる基本釉の生成用の釉薬原料は、 ナトリゥム長石と炭酸パリゥムと石灰石と 珪石と炭酸リチウムとを含有する微粒子状材料からなるものである。 また、 前記 の透明な力リゥム長石釉を生成できる基本釉の生成用の釉薬原料は、 カリ長石と 石灰石と珪石とカオリンとドロマイ卜と炭酸バリウムと酸化亜鉛とを含有する微 粒子状の材料から成るものである。 さらに、 前記の透明な灰釉を生成できる基本 釉の生成用の釉薬原料は、 長石または陶石と木灰とを含有する微粒子状材料から
成るものである。
前記の透明な石灰釉を形成できる釉薬原料の調合の代表例は、 37-40重量部の カリ長石微粉末と、 15〜17重量部の石灰石微粉末と、 34〜35重量部の珪石微粉 末と 10〜34重量部の力オリン ·コロイド状粒子とを混合し、 得られた混合物を 微粉砕して得られた微粒子状の材料(0であるか、 もしくは 16〜: L9重量部の力 リ長石微粉末と 67〜69重量部の陶石微粉末と 16〜18重量部の石灰石微粉末と、 4〜6重量部のカオリン'コロイド状粒子を混合し、得られた混合物を微粉砕して 得られた微粒子状の材料 (ii) であるか、 もしくは 39〜41重量部の力リ長石微粉 末と 9〜 11重量部の石灰石微粉末と 15重量部の炭酸バリウム微粉末と 24〜26 重量部の珪石微粉末と、を 9〜: 11重量部の力オリン'コロイド状粒子とを混合し、 得られた混合物を微粉砕して得られた微粒子状の材料 (iii) である。
そしてまた、 前記の透明なナトリゥム長石釉で形成できる原料の調合の代表例 は 39〜41重量部のナトリゥム長石微粉末と、 17〜19重量部の炭酸パリゥム微粉 末と、 10〜12重量部の石灰石微粉末と、 26〜28重量部の珪石微粉末と 4〜5重 量部の炭酸リチウム (鉱化剤として作用するもの) とを混合し、 その混合物を微 粉末に粉砕して得られた微粒子状材料である(前記の大西著「陶芸の釉薬」新版、 41〜230頁、 参照)。
本発明の球形カプセルの芯部層、 中間層および皮膜層のいずれか一つは、 窯変 を起す作用をもつことが従来知られる着色料、 例えば金物質、 銀物質、 鉄物質、 銅物質のような金属物質、 あるいはこれら金属の酸ィ匕物または塩ィ匕物を所望なら ば含有でき、 また、 そのような着色料とは別個に、 またはそれに追加的に、 基本 釉を着色できる従来既知の各種の普通な着色料、例えば酸化第二鉄、四三酸化鉄、 酸化銅、 酸ィ匕コバルトのような金属酸化物、 あるいは炭酸鉄、 炭酸銅のような炭 酸金属塩、 酢酸銅のような酢酸金属塩、 もしくは金塩、 銀塩を含有できる。 従って、 本発明の球形カプセル中に用いることのできるところの、 基本釉の生 成用の前記釉薬原料と一緒に焼成された時に、 生成される釉層を、 着色できる無 機着色料は、 酸化第二銅、 酸化第二鉄 (ベンガラ)、 酸化クロム、 酸化マンガン、 酸化コバルト、 酸ィ匕ニッケル、 酸ィ匕ウラニウム、 酸ィ匕セリウム、 酸化チタンまた は酸化ネオジゥムであることもできる金属酸化物の形の既知の無機着色料である
力、 金属炭酸塩の形の既知の無機着色料であるか、 または金属のケィ酸塩、 クロ ム酸塩の形の、 もしくは金属の硫化物またはセレン化物の形の既知の無機着色料 であるか、 または生成される釉層の中に分散した状態で着色をできる金属金、 金 属銀、 金属カドミウム、 金属クロムまたは金属セレンの形の既知の無機着色料で あることができる。
さらに、 本発明の球形カプセルを構成する芯部層、 中間層、 皮膜層をそれぞれ 形成する物質の何れかに任意に配合できるところの着色料であって、 窯変効果を 示す小点、 斑点または斑紋状の模様を、 生成される釉層に生成できる着色料とし て有効であることのできる前記に記載の金属物質または金属化合物は、 陶磁器用 の上絵具または下絵具で顔料として用いられる既知のテルペン油可溶性の金ィ匕合 物、 特に樹脂酸の金塩、 金コロイド、 銀、 銀コロイド、 酸化第二鉄 (ベンガラ)、 炭酸第二鉄、 酸化第二銅または炭酸第二銅である力、 あるいはこれら物質の 2種 またはそれ以上から成るものであることができる。
また、 前記の着色料は、 後記の実施例 4、 (a)、 (i) および(b) にあげられた各 種の色をもつ顔料の市販品であることができる。
一般的には、カプセル中に配合された釉薬原料の総重量に基づいて、 0.1重量% ないし 20重量。/。の量の着色料を配合し、 それによつて釉層を着色できる。 釉の 種類によって、 着色料の種類によって、 また釉を着色しようと望む色相の種類に よって、 着色料の配合量を適当に調整することは、 当業者の裁量によるところで ある (前記の大西著 「陶芸の釉薬」 新版、 64〜70頁、 参照)。 例えば青磁釉は、 着色料として 1〜2重量%の量の酸化第二鉄で着色でき、 黒天目釉または油滴天 目釉は 8〜10重量%の量の酸化第二鉄で着色でき、 また銀油滴天目釉は、 8〜13 重量%の量の酸化第二鉄と、 :!〜 3重量%の量の炭酸マンガン(着色補助剤) の配 合で着色できる。
本発明の球形カプセルでは、 カプセルにおける芯部の芯材物質中に、 または力 プセルの中間層を形成する材料物質の中に任意に配合することもできる熱分解性 の有機質結合剤は、 前記した皮膜形成能のある熱分解性有機物質、 好ましくはァ ルギン酸カルシウムの硬化物である力、 あるいは有機結合剤としてのアルギン酸 ナトリゥムであることができる。
本発明による芯部とシームレスな皮膜層をもつ球形力プセルの芯部をなす内層 は、 透明な基本釉、 好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料と、 この基本釉を着色 できる少くとも 1つの無機着色料と、 有機結合剤、 好ましくはアルギン酸ナトリ ゥム、 あるいは皮膜形成能のある熱分解性有機物質、 好ましくはアルギン酸カル シゥムの硬化物との固体状混合物から形成されており、 しかも該カプセルの皮膜 層は該基本釉の生成用の釉薬原料と該着色料と該皮膜形成能のある熱分解性有機 物質、 好ましくはアルギン酸カルシウムとの固体状混合物からなるか、 もしくは 前記の皮膜形成能のある熱分解性有機物質からなる多孔質構造の固体層で形成さ れてあることができる。
本発明の球形力プセルの好ましレ、第 1の実施態様によると、 多層な複合構造を もつ球形カプセルの芯部をなす最内層は、 透明な基本釉、 好ましくは石灰釉の生 成用の釉薬原料と、 該基本釉を着色できる少くとも 1つの無機着色料と、 皮膜形 成能のある熱分解性有機物質、 好ましくはアルギン酸カルシゥムの硬化物との固 体状混合物から形成されてあり、 また該芯部を包被する 1つのまたはそれ以上の 中間層は、 芯部に含有された無機着色料で発色される色とは異なる色を発色でき る別種の無機着色料と、 該基本釉の生成用の釉薬原料と、 前記の皮膜形成能のあ る熱分解性有機物質、 好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合 物から形成されており、 さらに該中間層を最も外方から包被する皮膜層は、 該皮 膜形成能のある熱分解性有機物質、 好ましくはアルギン酸カルシウムの硬ィ匕物か らなる力、 もしくは該皮膜形成能のある熱分解性有機物質、 好ましくはアルギン 酸カルシウムと無機着色料との固体状混合物からなる多孔質構造の固体層で形成 されているところの、 多層な複合構造をもつ球形カプセルが提供される (後記の 実施例 2および実施例 4〜実施例 7、 参照)。
なお、 本発明においては、 球形カプセルを構成する芯部層、 中間層、 皮膜層を それぞれ形成する物質のうちで、 釉薬原料を含有する層を形成する物質は、 融剤 を追加的に含有することもできる。
本発明の球形力プセルの好ましい第 2の実施態様によると、 球形力プセルの芯 部をなす内層と、 該内層を包被するシームレスな皮膜層とのみから構成された球 形カプセルであり、 しかも該芯部の芯材物質は、 窯変効果をもつ小点、 斑点また
は斑紋状の模様を、 生成される釉層に形成できる無機着色料として有効であるこ とのできる前記の金属物質および金属化合物でありうるテルペン油可溶性の金化 合物および金コロイド状微粒子、 ならびに融剤を含有する市販の金液で形成され ている力、 もしくは、 該芯材物質は、 金属化合物の形の無機着色料と透明な基本 釉、 好ましくは石灰釉の生成用の釉薬原料および (または) 皮膜形成能のある熱 分解性有機物質、 好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物とを含む固体状また は半固体状の混合物、 もしくは追加的に少量の水も含む液状の混合物で形成され てあり、 しかも該皮膜層を形成する皮膜材物質は、 無機着色料、 好ましくはトル コ青釉に含まれる着色料として知られる酸ィ匕第二銅と、 透明な基本釉、 好ましく はナトリゥム長石釉の生成用の釉薬原料と、皮膜形成能のある熟分解性有機物質、 好ましくはアルギン酸カルシウムの硬化物との固体状混合物からなり、 しかも多 孔質構造をもつ固体層であるところの球形力プセルが提供される。
本発明の球形力プセルでは、 力プセルの全体の立体形態は完全な球形からやや 変形されており、 力プセル表面には局部的に小さいくびれ部または小さレ、突起部 をもつことができるものであり、 あるいは球形カプセルは全体としては長円球ま たは涙滴形に近い形態を有することのできるものである。 また皮膜層の構成材物 質の分量は、 カプセル 1個の総重量に基いて 5〜15重量%の範囲であることがで さる。
本発明の球形カプセルの平均粒径は 0. 1mm ないし 8ran の範囲、 好ましくは 0.5mn!〜 3mm の範囲であることができる。 また所望ならば、 その平均粒径は 0.1mmより小さくすることもでき、 また 8mmより大きくすることができる。 力 プセルに配合された釉薬原料の分量は、力プセルの 1個の総重量に基いて 80〜95 重量%の範囲であることができ、また着色料の分量は 5〜15重量%の範囲である ことができる。
次に、 第 1の本発明の球形カプセルを製造するための幾つかの方法を説明する 力 この方法は前記の米国特許と日本特許に示されたシームレスの球形カプセル の製造方法に準ずるものである。
力プセルの芯部を形成する芯材物質が液体であり且つこれを固体状の皮膜層で 包被する場合の 2層構造の球形カプセルを製造する方法の概要を、 以下に説明す
る。
添付図面の第 3図に図解的に示された縦断面をもち斜視図で表される装置構造 をもつ 2重管ノズルを具えた力プセル製造装置を用意する。 この装置の内方ノズ ル管(4) の上方からその内方ノズル管の内腔(7) 中に、カプセルの芯部層を形成 する芯材物質の液状原料を装入する。 内方ノズル管(4) の先端部(5) を通って、 内方ノズル管のノズル孔 (6) からその芯材物質の液状原料を下向きに押出させ る。
また、 それと同時に、 カプセル製造装置に設けた皮膜層の形成用の液状原料の 供給室 (1') 内にカプセル皮膜層を形成するべき皮膜材物質のゲル化性の液状原 料を装填しておく。外方ノズル管(1) の内壁と内方ノズル管の外壁との間に形成 された中間チャネル (8) を通して皮膜材物質の液状原料を押送する。 なお、 内方 ノズル管のノズル孔(6) の開口位置は外方ノズル管のノズル孔(3) の開口位置 よりも上下方向で高レ、ところにあるように段差をつけるのがよい。 外方ノズル管 (1) の先細部(2) の先端で、外方ノズル管のノズル孔 (3) の周壁と、 内方ノズル 管のノズル孔(6) の間に形成された環状スリットを通して、前記の皮膜材物質の 液状原料を流出させると、内方ノズル管のノズル孔 (6) 力 ^出た液よりなる液流 の周囲を、 上記の皮膜材物質の液状原料が皮膜の形で包囲して、 内外 2層の構造 をもつ液流 1本が外方ノズルのノズル孔のノズル孔 (3) の出口に近い場所で形 成される。 そして、 その内外 2層の液流がやや流下すると、 液流が自然に細くく びれて次々に液滴になる現象が起きる (米国特許第 4,695,466号の第 4図または 日本特許第 3313124号の第 1図、 参照)。 その結果として、 芯材物質の原料より なる丸い内層 (芯部) と、 これを包被する上記の皮膜材物質の液状原料液の皮膜 層とから構成された 2層構造の丸い液滴の複数個が外方ノズル管 (3) の出口か ら出た液流の先端の所で次々と形成される。
内方ノズル管のノズル孔 (6) の孔径を例えば 0.72mm に調整し且つ外方ノズ ル管のノズル孔 (3) の孔径を例えば 1.43mmに調整し、しかも芯材物質の液状原 料流出度と前記の皮膜材物質の液状原料の流出速度とをそれぞれ適宜に加減する。 こうすると、 前記の 2層構造の丸い液滴の 1個あたりの、 その 2層構造の液滴の 内層 (芯材物質の液状原料よりなる層) の重量と、 皮膜層 (皮膜材物質の液体原
料よりなる層) の重量との平均比率がほぼ一定に保持できながら、 前記の 2層構 造の丸い液滴の多くが次々と継続的に形成される。 これらの丸い液滴の直径と大 きさは、 各個ではそれぞれ多少、 変動するけれどもほぼ同じである。
前記のように次々に形成された 2層構造の複数の丸!/、液滴を、 皮膜材物質の液 状原料をゲルィヒできるゲル化剤の水溶液内に次々に滴下させる。 滴下した液滴を 前記のゲル化剤水溶液よりなる液浴内に約 5〜: L0分間保持すると、各々の液滴の 皮膜層に含まれた皮膜形成能のあるゲル化物質がゲル化し、 そして硬化する。 こ のようにして、 丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が前記の液浴内で形 成される。
これら多数の丸いカプセル状粒子をゲル化剤水溶液の液浴から分離し、 さらに 室温で水洗する。 その後に、 水洗された丸いカプセル状粒子を乾燥空気流の中で 乾燥する。力プセル状粒子の皮膜層が固化するまで十分に乾燥を行う (後記の実施 例 1、 (a)参照)。
固化した皮膜層をもつ乾燥した丸いカプセル状粒子は、上記の条件では 1.5mm 〜2.0mmの範囲の直径を有し、 内層 (芯部層) と、 これを包囲する皮膜層とから 'なる 2層構造の球形力プセルである。 この球形力プセルの部分断面図と力プセル の半分の外形を斜視図で表わす図解図は、後記の実施例 1で得られたカプセルを、 図示する第 1図と同様である。 この球形カプセ は内層すなわち芯部層 (1) と皮 膜層 (2) とを有する。
次に、 固体状芯材物質からなる芯部層と皮膜層を有する球形カプセルを製造す る方法を概略的に説明する。 先づ、 固体状芯材物質よりなる球形微粒子を予め作 製し、 これを前記の第 3図に図示した 2重管ノズル付き力プセル製造装置の内方 ノズノレ管に装入し、 内方ノズル管のノズル孔から球形微粒子を次々に押出す (後 記の実施例 1、 (a)、 (i)〜(v)参照、 ならびに米国特許第 4,695,466号の第 3図、 参照)。 それと同時に、 外方ノズル管に皮膜材物質のゲル化性液状原料を装入し、 流下させ、そして外方ノズノレ管のノズル孔(3) の出口の所から押出した皮膜材物 質の液状原料により、内方ノズルのノズル孔(6) から次々に押出された固体状微 粒子表面を被覆させる。 このようにして、 皮膜材物質の液状原科よりなる被覆層 を設けられた固体微粒子を形成する。 それ以降は、 前述した液体状の芯材物質よ
りなる内層を有する球形カプセルの製造法の後半工程と同様に処理すると、 固体 状芯材物質よりなる芯部層と皮膜材物質よりなる固体状皮膜層とを有する 2層構 造の球形カプセルを製造できる。
なお、 固体状の芯部層と皮膜層とを有する 2層の球形カプセルは、 前記した第 1回の実験におけると同様にして、 1本のノズル管を利用しても製造できる (後 記の実施例 2、 (a)、 (i)、 参照)。
さらに、 固体状芯材物質からなる芯部層と、 中間層と、 皮膜層とを有する多層 構造カプセルを製造する方法を説明する。
先づ、 固体状芯材物質よりなる球状微粒子を予め作製し、 このような微粒子の 全表面に、 中間層を形成する材料物質の液状原料をスプレー法、 ドブ漬け法また はその他の適当な被覆法で施着し、 カプセル中間層を形成する構成材物質の原料 よりなる表面被覆をもつ各々の微粒子を形成する。 このように得た微粒子を乾燥 し、 そして乾燥された被覆層をもつ微粒子を製造する。 次に、 このような被覆層 をもつ固体微粒子を第 3図に示した 2重管ノズル付き力プセル製造装置の内方ノ ズル管に装入し、 それ以降の工程は、 前記した固体状芯材物質よりなる芯部層を もつ球形力プセルの製造法と同様な要領で加工する。 このようにすると、 所望の 多層構造の球形カプセルを製造できる (後記の実施例 2、 (a)参照)。
さらにまた、 芯部層と中間層と皮膜層とをもつ多層構造力プセルを製造する方 法を説明する。
すなわち、第 3図に図示された二重管ノズル管付き力プセル製造装置において、 内方ノズル管と外方ノズル管とからなる 2重管ノズルに代えて、 同軸的に設けら れた内方ノズル管、 中間ノズル管および外方ノズル管よりなる 3重管ノズルを備 えたカプセル製造装置を用意する (米国特許第 4,695,466号の第 1図 ならびに 本願の添付図面の第 5図、 参照)。 内方ノズル管内 (4) には、 芯材物質の液状原 料を装入し、 中間ノズル管中には、 ゲルィ匕できる液状の中間層構成材物質を装入 し、 外方ノズル管 (1) 中には、 皮膜材物質のゲルィ匕性の液状原料を装入する。 そ れ以降は、 前記のカプセル製造法と同様な要領で実施すると、 所望の多層構造の 球形力プセルを製造できる。
第 1の本発明の球形カプセルを用いて、 装飾模様を有する陶磁器を製造するに
は、 陶土製または磁土製の成形品の素焼き品の施釉した表面または未施釉の表面 に、 本発明の球形カプセルの複数個を点描画風の装飾模様を画きうる所望の好み の配置にて点在するように配列し、 熱分解性の接着剤で貼り付ける。 そのような 接着剤は、 スターチ糊が適する。 球形カプセルを結着して有する施釉または未施 釉の素焼き品は、 その後に窯内に入れて徐々に加熱し、 陶磁器の製造で使用され る焼成条件下に仕上げ焼成する。 市販の電気キルンも使用でき、 使用した釉薬原 料の種類、 使用した着色料の種類、 また着色料で発色させるべき色相の型に応じ て酸化性雰囲気または還元性雰囲気下に、 あるいはこれらの雰囲気の組合せの下 に、 1200〜1300°Cの焼成温度で常法で焼成することができる。
従って、 第 2の本発明においては、 前記に記載された第 1の本発明の球形カブ セルの多数個を、 陶磁器の素焼き成形品の施釉表面または未施釉表面に、 それら の力プセルで好みどおりの点描画風の装飾模様を画く位置に並べて点在するよう に配置させ、 そして熱分解性有機質接着剤でそれら力プセルを該施釉または未施 釉表面に結着させ、 その後に、 それらカプセルを結着している素焼き成形品を、 徐々に加熱し、 力プセルの中の釉薬原料を熔融して施釉のできる焼成温度で酸化 性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成する力 あるいは酸化性雰囲気下に次いで 還元性雰囲気下で焼成し、 その焼成中に前記の結着したカプセルを熔解させると 共に、 カプセル中の有機物質成分と該接着剤を焼散させ、 得られた焼成品の表面 上で前記力プセルの各個の熔解で生じた有色の小島状の釉層を形成し、 それら有 色の小島状釉層の組合わせで構成される有色の装飾模様を作出し、 その後に、 焼 成品を徐冷し、 さらに焼成品を室温にまで冷却することから成る、 多数の有色の 小島状釉層により、 それら小島状釉層の組合わせで構成される装飾模様を施釉表 面に有する陶磁器の製造方法が提供される。
焼成は陶磁器の製造で慣用される方法で行われる。 焼成に当って、 電気キルン を用いる場合に、 酸化性雰囲気は高温の空気により作ることができる。 また還元 性雰囲気は、 電気キルン中にガスパーナ一を設け、 ガス状炭化水素を含む燃料ガ スの不完全燃焼が起る条件で酸素分が不足して且つ一酸化炭素などを含む燃焼ガ スを発生させることにより作ることができる。
さらに、 上記した陶土製または磁土製の成形品の素焼き素地の代りに、 耐熱性
の基体、 例えば鉄、 鉄合金製の基体、 あるいは耐熱ガラス製の基体を用い、 この 耐熱性基体の表面に、 第 1の本発明の球形カプセルを好みの装飾模様を面く配列 で接着し、 さらに陶磁器の製造の場合と同じ要領で焼成することができる。 この ように焼成すると、 耐熱性基体の表面上で、 球形カプセルの各個の焙融で生成さ れた多数の小島状斑点の形の有色の釉層を形成できる。 そのように形成された前 記の多数の有色の小島状釉層は、 それらの組合わせにより、 一種の装飾模様を作 出できることが認められた。
従って、 第 3の本発明においては、 第 1の本発明で記載された球形カプセルの 多数個を、それらカプセルに含まれる着色料の種類が相異なる組合わせで用意し、 それらの各個の力プセルに含有された着色料が焼成後に発色する色彩を想定しな がら、 単一の色彩または相異なる色彩をもつ点描画風の絵模様を好み通りに画く ことのできるカプセルの組合せになる仕様で、 同一の種類のまたは相異なる種類 の着色料を含有する種々の球形カプセルの複数個を選択し、 そのように選択され た種々の球形カプセルの複数個を、 耐熱性基体の表面、 特に、 陶磁器の施釉表面 または未施釉表面、 もしくは耐熱性ガラス成形品の表面、 エナメル被覆表面、 鉄 または鉄合金製の成形品の表面、 銅または銅合金製の成形品の表面、 アルミニゥ ムまたはアルミニゥム合金製の成形品の表面、 またはその他の耐熱性材料製の基 体の表面の上に、 それらカプセルにより点描画風の装飾模様を画く要領で並べて 配置させ、 しかもこのようにカプセルを並べる配置に当たっては、 配置された複 数個の力プセルの焼成後に各個の力プセルの熔解から生成されて基体表面に形成 されるところの多数の有色の小島状釉層の示す各種の色彩が、 それら小島状釉層 の組合わせで構成される好みの点描画風の装飾的模様を画いて作出できるように 配慮を行い、 上記のように装飾模様を画くように配置された多数の前記力プセル を基体表面に熱分解性の有機質接着剤で結着させ、 結着されたカプセルを表面に 有する基体を、 カプセル含有の釉薬原料を熔融させて施釉のできる焼成温度で酸 化性雰囲気または還元性雰囲気下に焼成するカゝ、 あるいは酸化性雰囲気下に次い で還元性雰囲気で焼成し、 前記の結着したカプセルを熔解させ、 カプセル中の有 機物質成分と該接着剤を焼散させ、 得られた焼成品の表面上で該カプセルの各個 の熔解で生じた有色の小島状釉層の多数を形成させ、 そしてそれら多数の有色の
小島状釉層の組合わせで構成される点描画風の装飾模様を焼成品表面に作出し、 その後に焼成品を徐冷し、 さらに該焼成品を室温に冷却することから成る、 該基 体表面上に生成された有色の小島状釉層の多数の組合わせで構成される有色の装 飾模様を耐熱性基体の表面に作出する装飾方法が提供される。
第 3の本発明の方法においても、 その焼成工程は陶磁器の製造法で慣用される 方法に準じて実施できる。
図面の簡単な説明
第 1図は、 後記の実施例 1で製造された球形カプセルの部分横断面図を示すと 共に、 該カプセルの半分の部分の外形を図解的に示す斜視図である
第 2図は、 後記の実施例 2で製造された多層構造の球形カプセルの中央横断面 の図解図である。
第 3図は、 本発明による球形カプセルの製造に利用できる 2重管ノズルを備え たカプセル製造装置の部分縦断面図と装置の半分の部分の外形を図解的に示す斜 視図である。
第 4図は、 後記の実施例 4、 (d) で陶土製丸皿の素焼き表面に、 本発明の球形 カプセルの複数個を、 点描画風の山岳と雲とを含む風景を画くように結着した時 の様子を写した図解図である。
第 5図は、 本発明の球形カプセルの製造に利用できる 3重管ノズルを備えた力 プセル製造装置の縦断面を示す図解図である。
第 6図は、 後記の実施例 6で製造された本発明の球形カプセルの部分破断面と カプセル外形とを図解的に示す斜視図である。
発明を実施するための最良の形態
以下に、 本発明を実施例を参照して具体的に説明するが、 本発明はこれら実施 例に限定されるものではない。
実施例 1
(a) 陶磁器の上絵付け絵具用の着色料を含む金液よりなる芯部と、釉の着色用 の着色料、 釉薬原料および皮膜材物質の固体状混合物よりなる皮膜層とを有する 球形力プセルの調製
陶磁器用絵付け上絵具として常用される市販の金液を用意した。 この金液 (7
金ともいう) は着色料の主要成分としての油溶性金ィ匕合物および金コロイドを含 有し、また融剤およびテレビン油を含有する粘稠な油状製剤であり、ノリタケ (株) 製の商品名、 金液 N-9として市販される金液である。 また、 陶磁器用釉薬として 知られたトルコ青釉層を形成できるトルコ青釉の生成用釉薬原料の泥漿 (スリッ プ) の市販品 ((株) 釉陶の市販品) (以下では、 該泥漿を単にトルコ青釉の生成 の釉薬原料の泥漿と言う) を用意した。 このトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥 漿 (スリップ) は、 着色料としての酸化第二銅の微粒子とナトリゥム長石釉生成 用の釉薬原料の微粒子と水とを含むスラリー状混合物であり、 該混合物が約 40 重量%の水分を有するものである。
このトルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿の 1重量部を、 アルギン酸ナトリウ ム (釉薬原料の微粒子成分に対する結合剤としても働くと共に、 有機質皮膜材の 原料としても働く) の 5重量%水溶液 (ゾル状) の 1重量部と良く混合して、 ス ラリ一状の混合物 Aを調製した。
添付図面の第 3図に図解的にカプセル製造装置の中央縦断面と装置全体の半分 の外形を示す斜視図解図で表される装置構造をもっところの、 2重管ノズノレを備 えたカプセル製造装置を用意した。 この装置に設けた横断面の円形な内方ノズル 管(4) の上方からその内方ノズル管の内腔 (7) 中に、 前記の金液を装入した。 内方ノズノレ管 (4) の先細部(5) を通って、 内方ノズルのノズル孔(6) から金液 を下向きに押出させた。
また、 それと同時に、 該カプセル製造装置に設けられた円筒状周壁(Γ) をも つカプセル皮膜層の形成物質の液状原料用の供給室( ) 内に供給管(9) を経て 前記のスラリー混合物 A (すなわち、 トルコ青釉の生成用の釉薬原料の泥漿とァ ルギン酸ナトリゥム水溶液との 1: 1重量比のスラリ一状混合物) を装填した。 そして、 横断面の円形な外方ノズル管 (1) と内方ノズル管 (4) との間に形成さ れた中間チャネル(8) を通して該スラリー状混合物 Aを下向きに押出した。外方 ノズルの外方ノズル孔 (3) の出口の位置は、 内方ノズル管 (4) のノズル孔 (6) 出口の下方に在るようにする。
外方ノズル管 (1) の先細部 (2) の先端付近で、 外方ノズル管のノズル孔 (3) をとり卷く周壁と、 内方ノズル管のノズル孔 (6) をとり巻く周壁との間に形成
された環状スリットを通して、 前記のスラリー状混合物 Aを押出させた。 このよ うにすると、 内方ノズルのノズル孔(6) から出た金液の液流の側方表面を、上記 のスラリ一状混合物 Aが皮膜の形で包囲するようになり、 内外 2層の構造の液流 1本がノズル孔 (3) 出口の下方の所で形成された。 しかもその液流が流下するに つれて、 液流が自然に細くくびれて多くの丸い液滴になる現象が起きた。 その結 果として、 金液よりなる丸い内層 (芯層) と、 内層を包囲、 被覆する上記スラリ 一状混合物 Aの皮膜層とから構成された 2層構造の丸い液滴の各々が外方ノズル 管のノズル孔(3)から押出された液流の先端の所で次々と形成された。
内方ノズル管のノズル孔(6) の孔径を 0.72mmに調整し、また外方ノズル管の ノズル孔(3) の孔径を 1.43mmに調整し、しかも金液の押出速度と前記のスラリ 一状混合物 Aの押出速度とをそれぞれ適宜に加減した。 こうすると、 前記の 2層 構造の丸い液滴の 1個あたりに、 その 2層構造の液滴の内層 (金液から形成され る芯部) の重量と皮膜層 (スラリー状混合物 Aからなる層) の重量との平均比率 がほぼ 25 75であるところの、 前記の 2層構造の丸い液滴が継続的に形成され た。 これら形成された多数の丸い液滴の直径と大きさは各個の液滴についてそれ ぞれ多少とも変動するけれども、 ほぼ同じであることが認められた。
前記のように継続的に形成された多くの 2層構造の丸い液滴を、 室温で塩化力 ルシゥムの 2.0重量%水溶液よりなる液浴の内に次々に滴下させた。 滴下した 各々の液滴を前記の塩化カルシウム水溶液の液浴内に 5分間保持すると、 各々の 液滴の皮膜層に含まれたアルギン酸ナトリゥムは皮膜層に浸透したカルシウムィ オンと反応してカルシウムイオンで架橋され、 ゲル状に硬ィ匕した。 こうして金液 層を包被する丈夫な皮膜層をもつ丸い力プセル状粒子の多数が形成された。 これら多数の丸い力プセル状粒子を塩ィ匕カルシウム水溶液液浴から分離し、 さ らに室温で水洗した。 その後に、 水洗された丸い力プセル状粒子を力プセル皮膜 層が乾燥固体層になるまで 20°Cの乾燥空気流の中で乾燥した。
乾燥した丸いカプセル状粒子は、 1.5mn!〜 2.0mm の範囲の直径を有し、 また 内層 (芯部) と、 これを包被する固体状の皮膜層とからなる球形構造のカプセル である。 その各カプセルの内層は、 釉層を着色できる着色料として作用する金コ 口ィドぉよびその他の金属化合物成分を含む金液からなり、しかもその皮膜層は、
トルコ青釉の生成用の釉薬原料の微粒子と酸化第二銅 (着色料) の微粒子とアル ギン酸カルシウムのゲルの固化物との固体状混合物から成る。 この皮膜層は、 水 分の蒸発で生じた細孔を含む多孔質の構造をもち、 また、 固体微粒子の形の分散 相と、 分散相を包囲して結合させる分散媒の形のアルギン酸カルシゥムの硬化物 とからなる分散体(dispersion) の形態のものであった。この球形力プセルの部分 横断面と力プセル半分の部分の外形とを図解的に示す斜視図を第 1図に示す。 こ の第 1図で、該球形カプセルは金液よりなる芯部 (1) と、 これを包被する皮膜層 (2) とを有することが認められる。
(b) 地釉層の上に有色の装飾模様を有した陶器の製造
陶土製の素焼き皿品の素地表面に、 黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原 料の泥漿 (スリップ) の市販品を浸し掛け (dipping) し、 そして自然に乾燥し た。 このように施釉された素焼き皿品の乾燥表面に、 5弁の花の輪郭をもつ好み の点描画風の模様を画くような点線に沿う位置にて、 実施例 1、 (a) で得た球形 カプセルの乾燥品の約 100個を配列させて、花模様を多数描写した。また、別に、 上記の素焼き皿品の施釉面の別の場所において、 円形の輪郭の中に、 該球形カブ セルの数十個を散在させて且つ円形の内の一部領域では力プセルが密集した状態 で配置した。 なお、 これらカプセルの配置に先立ち、 カプセルを置く位置に、 接 着剤として市販のスプレー用スターチ糊を吹き付ける前処理を行っておいた。 その後、球形力プセルを前記の如く配置された素焼き皿品の施釉表面の上から、 再び市販のスプレー用スターチ糊を有機質接着剤として吹きつけ、 さらに自然乾 燥して球形カプセルを素焼き皿品の施釉面に結着させた。 このようにして前記の 球形カプセルを結着して有する素焼き皿品を、電気キルン(日本電産シンポ(株) の製品) 内に入れて徐々に加熱し、 さらに最高 1235°Cの施釉温度にて、空気より なる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の表面は、これに融着した黒天目釉の地釉層(base glaze coating) をもち、 またこの地釉層の上に、 前記の花弁の輪郭を画くように配列さ れた球形カプセルの^ ·個の熔融により生じた小島状斑点 (spots) の形の釉層の 各々が地釉層からやや***した形に生成された。 しかもそれら多数の斑点の集ま りの組合せで構成される全体の画像は、 花弁の点描模様を画く風に生成されてい
た。 さらに、 上記の円形の輪郭の中に前記の如く配置された数十個の球形カプセ ルは、 それらの球形カプセルの各個の熔融によりやや***した小島状の斑点
(spots) の形態の釉層の各々を生成したが、 それら小島状の斑点の若干数は、相 互に連合した状態になり、サイズがやや大きいいくつかの斑紋 (specks) の形態 の釉層を形成していた。
球形力プセルの熔融により生じたやや***した前記の小島状の斑点の形の釉層 の各個は、 その上表面では、 同心円状の 2重円の着色の縞模様を示し、 各個の斑 点の外縁縞部が青緑色を呈し、 また内方の縞部が紫色を帯びた金色を呈した。 そ の内方縞部を顕微鏡下で見ると、 金結晶が出現しており、 またその外縁の縞部を 顕微鏡下で見ると、 銅結晶が出現していることが観察された。 各個の球形カプセ ルの熔融により生じたやや***した小島状の斑点の釉層は、 それら斑点を総体的 に見ると、 独特で微妙に美しい種々な色相をもっとともに、 窯変効果も示す装飾 模様を陶器皿の全面に融着した黒色の地釉の上に作り出していることが認められ た。
(c) 窯変効果を示す装飾模様を有した陶土製タイル板の製造
黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿 (スリップ) の市販品を陶 土製の素焼きタイル板の素地表面に浸し掛けし、 その後に該タイル板を自然乾燥 した。その乾燥表面にスプレー用スターチ糊を吹きつけ、その上に実施例 1、 (a) で作った球形力プセルの多数を、 装飾模様を画くように配置して結着した。 このようにカプセルを結着された素焼きタイノレ板を、 電気キルン(日本電産シ ンポ (株) の製造) 内に入れて、 徐々に加熱し、 空気よりなる酸化性雰囲気下に 1000〜1200°Cで焼成し、 その後に最高 1250°Cの焼成温度にて、 還元性雰囲気下 に焼成した。 その還元性雰囲気は、 電気キルン中に設けたガスパーナ一から出る 燃料ガスの不完全燃焼によって作り出した。 燃料ガスの不完全燃焼成分である一 酸化炭素や炭ィ匕水素が、 該カプセルに含まれた金属酸化物中の酸素と化学反応し て、 結果的に、 酸素分の少ない金属酸化物、 あるいは酸素分のない金属に転ィ匕さ れる。
その焼成されたタイル板の表面は、 これに融着した黒天目釉の地釉層をもち、 またこの黒い地釉層の上には、 各個のカプセルの熔融で生成されたところの窯変
効果を示した小点(dots) を含み且つ青、 紫、 黄、 赤の様々な色調を有した小島 状の斑点と斑紋よりなる装飾模様が生成していることが認められた。
実施例 2
(a) 石灰釉の生成用の釉薬原料、 酸化第二鉄 (着色料) および有機質結合剤と してのアルギン酸 Naの固体状混合物よりなる芯部と、 該釉薬原料と着色料とァ ルギン酸カルシゥムよりなる固体状混合物で形成された第 1の中間層と、 金液乾 燥残渣生成物よりなる第 2の中間層と、 アルギン酸カルシウムの硬ィヒ物の皮膜材 よりなる固体状皮膜層とを有する多層な複合構造の球形カプセルの調製
(0 銀油滴天目釉を生成できる釉薬原料の混合物であって、 石灰釉の生成用 の釉薬原料と酸化第二鉄(着色料) と酸化マンガン (着色補助剤)との混合物の泥 漿市販品 ( (株) 釉陶の製品;以下では該泥漿を単に銀油滴天目釉の生成用の釉 薬原料の泥漿と言う) を用意した。 この市販の泥漿 (スリップ) は、 基本の石灰 釉の生成用の釉薬原料の微粒子と、 この釉薬原料微粒子の総重量に基づいて 12 重量0 /0の着色料としての酸化第二鉄の微粒子と 2 %の量の二酸化マンガン (着色 補助剤) の微粒子と水とを含むスラリ一状混合物であり、 約 40重量%の水分を 有するものである。
この銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の市販泥漿 (スリップ) の 1重量部を、 アルギン酸ナトリウム (有機質結合剤として、 また皮膜材物質の形成用の原料と して働く) の 5重量0 /0水溶液 (ゾル状) の 1重量部と良く混合して、 スラリー状 の混合物 Bを調製した。
このスラリ一状混合物 Bを、 ノズル孔の出口径 1.44mmの 1本のノズル管を通 して室瘟で塩化カルシウムの 2.0重量%水溶液よりなる液浴中に滴下する。 この 液浴内において、 それぞれの液滴から、 アルギン酸カルシウムのゲル状の硬ィ匕物 と該泥漿の固体成分の微粒子との混合物よりなる表面皮膜層をもち且つ該スラリ 一状混合物 Bからなる芯部をもつ球形構造のカプセル粒子が多数、 形成された。 これら球形構造の力プセル粒子を塩化カルシゥム水溶液の液浴から分離して、 水洗し、さらにその水洗したカプセル粒子を 20°Cの乾燥空気流の中で十分に乾燥 した。この乾燥は、力プセル粒子の全体 (芯部も含めて)が固化するまで行った。 このように乾燥された丸い力プセル粒子は、それぞれ約 1.0mmの粒径を有した。
これらの乾燥したカプセル粒子の内部構造を見ると、 各個のカプセル粒子は、 石 灰釉生成用の釉薬原料の固体微粒子と酸化第二鉄の微粒子と二酸化マンガンの微 粒子とアルギン酸ナトリウム (有機結合剤) と数%の水との混合物 (分散体の形 態のもの) よりなるほぼ固体状の芯部と、 アルギン酸カルシウムのゲルの固化物 よりなる多孔質な固体状の皮膜層とから実質的に構成された。
(ii) このようにして得た前記の乾燥した丸い力プセル粒子の 30重量部を、 実施例、 (a) で用いた金液の 1重量部の中にドブ漬けして、 カプセル粒子表面に 金液を被覆した。 金液よりなる表面被覆をもつ丸いカプセル粒子は、.次に、 これ らを 50°Cの乾燥空気流の中で乾燥して粒子全体を固化させた。こうして得られた 乾燥している丸いカプセル粒子の各個は、 前記の分散体型の固体状混合物よりな る芯部 (最内層) をもち、 芯部を包被する中間層であってアルギン酸カルシウム の固化物と前記の釉薬泥漿の固体成分の微粒子との固体状混合物よりなる第 1の 中間層をもち、 また第 1の中間層を包被する金液の乾燥残渣生成物 (着色料とし て作用する金コロイド粒子と金イオンおよび各種の成分を含有する) よりなる薄 V、皮膜層を有する計 3層の複合構造をもつ球形力プセルの形のものである。
(iii) 実施例 1に用いられて且つ第 3図に示された装置構造をもつ 2重管ノ ズル付きの力プセル製造装置と同様な構造の力プセル製造装置を用意した。但し、 ここで用いた装置は、 それの内方ノズル管 (4) のノズル孔(6) の出口孔径が約 1.2mm に調整され、 また外方ノズル管 (1) のノズル孔 (3) の出口孔径が約 1.5mmであるように調整した。
そのような構造のカプセル製造装置の内方ノズル (4) の内腔に前記の (ii) で 得た乾燥した丸いカプセル粒子 (すなわち、 金液の乾燥残渣生成物よりなる薄い 表面皮膜層を有する計 3層構造の球形カプセル粒子) を装入し、 さらに内方ノズ ルのノズル孔 (6) を通してそれらカプセル粒子を次々に下向きに押出した。他方、 それと同時に内方ノズルのノズノレ管 (4) と外方ノズル管 (1) との間に形成され たチヤネノレ (8) を通して、 カプセルの皮膜層形成用の原料であるアルギン酸ナ トリウムの 5重量0 /0水溶液 (ゾル)を押出させた。 内方ノズル管のノズル孔の周壁 と外方ノズル管のノズル孔の周壁との間に形成された環状スリットを通して、 前 記のアルギン酸ナトリウム水溶液 (ゾル) が押出される。 なお、 前記の (ii) で
得られた計 3層の複合カプセルのがノズル孔 (6) から押出されるカプセルの重 量と、 前記の環状スリットを通して押出されるアルギン酸ナトリゥム水溶液の重 量との比率がほぼ 60: 40になるように、 アルギン酸ナトリゥム水溶液の押出速 度を調整した。
内方ノズル管(4) の出口孔から出た前記カプセル粒子の各々は、チャネル(8) 下方の前記の環形スリットを通って押出されたアルギン酸ナトリゥム水溶液によ り包囲されて、 外方ノズル管のノズル孔 (3) の出口の下方のところでアルギン 酸ナトリウム水溶液の液流の内部に取り込まれた状態になり、そのままの状態で、 該ノズル孔 (3) から次々に出るようになった。 こうして、 前記の乾燥した丸い 力プセル粒子上に該アルギン酸ナトリウム水溶液 (ゾル) の皮膜層が形成される に至った。その結果、前記の分散体型の固体状混合物からなる芯部(最内層) と、 芯部を包被するアルギン酸カルシゥムのゲルの固化物と釉薬の固体成分微粒子と の混合物よりなる第 1の中間層と、 その上を包被する金液の乾燥残渣生成物 (金 コロイド粒子、 等を含む) よりなる薄い第 2の中間層と、 しかもその上を包被す る最も外の表面層として、 アルギン酸ナトリウム水溶液 (ゾル) よりなる皮膜層 とから構成しているところの 4層の複合構造の丸いカプセル粒子 (全体としては 液滴の形のもの) が外方ノズル管のノズル孔 (3) の出口から押出された液流の 先端の所で次々と形成されることになり、 そして次々に落下した。
(iv) 上記のように落下した複合構造の丸いカプセル粒子 (前記の液滴の形 の)を、次々に室温で塩ィ匕カルシウムの 2.0重量%水溶液の液浴内に滴下させた。 該液浴内において、 落下した前記の複合構造の丸いカプセル粒子よりなる前記 の液滴を塩化カルシゥム水溶液液浴内に約 5分間保持した。 このようにすると、 それらカプセル粒子よりなる液滴の皮膜層に含まれたアルギン酸ナトリゥムは、 皮膜層に浸透してきたカルシウムイオンと反応してゲノレになり、 これで生成した アルギン酸カルシウムがゲル状の硬化物に変化した。 こうして、 カプセル内容物 を完全に包被する丈夫な皮膜層をもつ多層な複合構造の球形力プセル状粒子の多 数が形成された。
次に、 これら多数の複合構造の球形力プセル状粒子を塩化力ルシゥム水溶液液 浴から分離し、 さらに室温で水洗した。 その後に、 水洗された球形カプセル状粒
子を 20°Cの乾燥空気流の中でその粒子の皮膜層が固体になるまで乾燥した。
(V) こうして得られた乾燥した多層な複合構造の球形カプセルは、各々が直 径 l.Omn!〜 1.5rmnの範囲の直径を有した。また各々の球形力プセルは最内層(芯 部) と、 これを包被する 2つの中間層と、 最も外方から包被する皮膜層とからな る多層な複合構造の球形カプセルであって、 その各々のカプセルの芯部すなわち 最内層が前記の分散物型の固体状混合物からなり、 しかも該芯部を最初に包被す る第 1の中間層がアルギン酸カルシゥムの硬化物と釉薬原料の固体微粒子と着色 料との固体状混合物からなり、 この第 1の中間層を包被する第 2の中間薄層が金 コロイドを含む金液乾燥残渣生成物よりなり且つ最も外方から包被する皮膜層が アルギン酸カルシウムの硬ィ匕物からなる多孔質の固体層であるところの複合した 多層構造のカプセルであった。 このような多層な複合構造カプセルの中央横断面 を図解的に表す図面を第 2図に示す。該カプセルは芯部(1)、第 1の中間層(3)、 第 2の中間層 (3,) よび皮膜層 (2) を有するものであることが認められる。
(b) 地釉層の上に有色の装飾模様を有した陶器の製造
陶土製の素焼き皿品の素地表面に、 黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原 料の泥漿 (スリップ) の市販品を浸し掛け (dipping) し、 そして自然乾燥した。 このように施釉された素焼き皿品の施釉内面の乾燥表面に、 5弁の花の輪郭をも つ好みの点描画風の模様を画くような点線に沿った位置にて、実施例 2、 (a)、 (v) で得た球形力プセルの乾燥品の約 100個を配列させ、 これによつて点描された花 模様の多数を作った。 また、 別に、 上記の素焼き皿品の施釉内面の別の場所にお いて、 円形の輪郭の中に、 該球形カプセルの数十個を散在させて、 且つその円形 の内の一部領域ではカプセルが密集した状態で配置した。 なお、 カプセルを前記 のように配置するに先立ち、 カプセルの置かれる位置にスターチ糊を予じめ吹き つける前処理を行った。
その後再び、 球形力プセルを前記の如く配置されて有した素焼き皿品の施釉内 面の上から、 市販のスプレー用スターチ糊を有機質接着剤として吹きつけ、 さら に自然乾燥して球形カプセルを素焼き皿品の施釉内面に結着させた。 このように して前記の球形カプセルを結着して有する素焼き皿品を、 電気キルン(日本電産 シンポ (株) の製品) 内に入れて、徐々に加熱して、 そして最高 1235°Cの施釉温
度にて、 空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成した。
その焼成された陶器皿の内面は、これに融着した黒天目釉の地釉層(base glaze coating) をもち、 また、 この地釉層の上に、 前記の花弁の輪郭を画くように配列 された球形カプセルの各個の熔融により生じた小島状斑点(spots)の形の釉層の 各々が、 地釉層からやや***した形に生成された。 それら斑点の集まりの組合わ せで構成される全体の画像は、 花弁の模様を画く風に生成されていた。 さらに、 上記の円形の輪郭の中に前記の如く配置された数十個の球形カプセルは、 それら の球形カプセルの各個の熔融を起こすことにより、 やや***した小島状の斑点
(spots) の形態の釉層をそれぞれ生成した。 また、それら小島状の斑点の若干数 は、 相互に連合した状態になり、 サイズがやや大きいいくつかの斑紋 (specks) の形態の釉層を形成していた。
球形力プセルの熔融により生じたやや***した小島状の斑点の形の釉層の各個 は、 その上表面では、 同心円状の 2重円の着色した縞模様を示し、 各個の斑点の 外縁部が青色を呈し、 また内方の縞部が紫色を帯びた銀色を呈した。 その外方縞 部を顕微鏡下で見ると、 金結晶が出現しており、 またその内方の縞部を顕微鏡下 で見ると、 鉄結晶が出現していることが観察された。 各個の球形カプセルの熔融 によりそれぞれ生じたやや***した小島状の斑点の形の釉層の組合わせで構成さ れた全体の画像は、 総体的に見ると、 独特で微妙に美しい種々な色相をもっと共 に窯変効果を示す装飾模様を、 陶器皿の融着した黒天目釉の地釉層上で作り出し ていることが認められた。
(c) 窯変効果を示す装飾模様を有した陶土製タイル板の製造
黒天目釉を生成するのに使用される釉薬原料の泥漿 (スリップ) の市販品を、 陶土製の素焼きタイル板の素地表面に浸し掛けし、 その後に該タイル板を自然乾 燥した。その乾燥した表面にスプレー用スターチ糊を吹きつけ、さらにその上に、 実施例 2、 (a) で作った球形力プセルの多数を装飾模様を画くように配置して結 着させた。
このようにカプセルを結着された素焼きタイル板を、 電気キルン(日本電産シ ンポ (株) の製品) 内に入れて徐々に加熱し、 そして 1000〜1200°Cで空気より なる酸化性雰囲気下に焼成し、 また実施例 1、 (c) と同様な仕方で還元性雰囲気
下に 1250°Cの温度で焼成した。
その焼成されたタイル板の表面は、 これに融着した黒天目釉の地釉層をもち、 またこの黒い地釉層の上には、 各個のカプセルの熔融で生成されたところの、 窯 変効果を示した小点 (dots) を含み且つ黄、 青、 紫、 赤の様々な色調を有した小 島状の斑点と斑紋よりなる装飾模様が生成していることが認められた。
実施例 3
(a) 実施例 2、 (a)、 (i) で用いた銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料の泥漿 (ス リップ) の 1重量部の代りに、 実施例 1、 (a) で用いたトルコ青釉の生成用の釉 薬原料の泥漿 (スリップ) の 1重量部を使用して、 実施例 2、 (a)、 (i)〜(iv) に記 載されたカプセル製造法の手順に従って、 多層な複合構造の球形カプセルの多数 個を製造した。 その (iv)工程での乾燥段階後に得られた複合構造の球形カプセ ルの芯部は、 トルコ青釉の生成用のナトリウム長石釉の釉薬原料の微粒子と酸化 第二銅の微粒子とアルギン酸ナトリウム (結合剤として働く) との固体状混合物 から実質的に構成される。 その球形カプセルの該芯部を包囲する第 1の中間層は アルギン酸カルシゥムの硬化物と、 該釉薬原料の微粒子と酸化第二銅微粒子との 固体状混合物から形成され、 第 2の中間層は金液の乾燥残渣生成物(金コロイド 粒子と金イオン、 等を含有する) より構成され、 またこの第 2の中間層を最も外 方から包被する皮膜層は、 アルギン酸カルシウムの硬ィ匕物よりなる多孔質構造の 固体層で構成されるものであった。
得られた多層な複合構造の球形カプセルは 1.0〜1.5mmの粒子を有した。
(b) 実施例 2、 (a)、 (V)で得た複合構造の球形力プセルの代りに、 上記の実施 例 3、(a) で得た複合構造の球形カプセルを使用すること以外は、実施例 2、 (b) に 記載された方法と同じ要領にて、 黒天目釉を地釉として施釉された陶器皿素焼き 品の内面に前記の球形カプセルを結着させ、 次いで同じ要領で焼成を行った。 得られた焼成した陶器皿の施釉面は、 黒天目釉の地釉層をもち、 その地釉層の 上に、 前記の花弁の輪郭を画くように配列された球形カプセルの各個の熔融によ り生じた小島状の斑点 (spots) の形の釉層の各々が下地釉層からやや***した形 に生成された。 しかもそれら斑点状の釉層の集まり組み合せで構成される全体の 画像は、花弁の模様を画く風に生成されていた。 さらに、上記の実施例 2、 (b) に
示されたように、 陶器皿の施釉内面の一つの領域において、 円形の輪郭の中に散 在して、 あるいは密集して配置された数十個の球形カプセルは、 それらの球形力 プセルの各個の熔融により、やや***した小島状の斑点 (spots) の形態の釉層を それぞれ生成したが、 それら小島状の斑点の若千数は、 相互に連合した状態にな り、 サイズの大きないくつかの斑紋 (specks) の形態の釉層を形成していた。 球形カプセルの各個の熔融により生じたやや***した小島状の形の斑点の釉層 の各個は、 その上表面では、 同心円状の 2重円の着色した縞模様を示し、 各個の 斑点の内方の縞部が青緑色を呈し、 また外縁の縞部が金色を呈した。 その外縁縞 部を顕微鏡下で見ると、 金結晶が出現しており、 またその内方の縞部を顕微鏡下 で見ると、 銅結晶が出現していることが観察された。 各個の球形カプセルの熔融 によりそれぞれ生じたやや***した小島状の斑点の形の釉層の組み合わせで構成 される全体の画像は、 総体的に見ると、 独特で微妙に美しい種々な色相をもっと 共に窯変効果を示す装飾模様を、 陶器皿に融着した黒天目釉の黒い地釉層上で作 り出していることが認められた。
実施例 4
(a) 陶磁器の上絵付け絵具用の着色料と無色の石灰釉の生成用の釉薬原料と アルギン酸ナトリウム (有機質結合剤) との固体状混合物よりなる芯部、 および アルギン酸カルシウムの皮膜材物質よりなる皮膜層を有する球形カプセルの調製 ■ (i) 陶磁器の上絵付け絵具の顔料として知られる明色黄色顔料の市販品 (日 陶産業 (株) の製品) を用意した。 この市販の明色黄色顔料の主成分は、 ジリコ ニゥムシリケート ZrSiO4とプラセォジゥムシリケート PrSi04との均質な混合物 の微粉末よりなる。 また、 陶磁器用の基本釉として知られるほとんど無色で透明 な石灰釉層を生成できる石灰釉の生成用の釉薬原料の泥漿 (スリップ) の市販品 ( (株)釉陶の製品) を用意した。 ここで用意された石灰釉生成用の釉薬原料の市 販品の泥漿 (スリップ) は、 カリ長石の微粒子、 炭酸カルシウムの微粒子、 ろう 石 (Al203' 4Si02' H20) の微粒子、 カオリンのコロイド状粒子、 およびリチウム 長石 Li20 · AI2O3 · 8S1O2である融剤 (フラックス) の微粒子よりなる微粉末状 の混合物に水を加えて、 さらに湿式微粉碎することにより得られた市販製品であ り、 約 40重量%の水分を有した。
前記の市販の明色黄色顔料の微粉末と、前記の釉薬原料泥漿(石灰釉生成用の) とカルポキシメチルセルロース 'ナトリゥム塩 (結合剤) の 5重量%τΚ溶液とを 1 : 29 : 10の重量比で良く混合し、それによりスラリ一状の混合物 Εを調製した。 また、 製造すべき球形カプセルの皮膜層を形成する皮膜材物質の原料として用 いられるアルギン酸ナトリウムの 5重量0/ οτΚ溶液 (ゾル状の液体) を調製した。 さらに、 前記の実施例 1、 (a)の工程で使用されて且つ第 3図に図解的に示さ れた装置構造を有する 2重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。 但し、 ここで用いる装置では、 内方ノズル管(4) のノズル孔(6) の出口内径を
0.77mmに調整し、 また外方ノズル管(1) のノズル孔(3) の出口内径を
1.94mmに調整してある。
(ii) 前記の 2重管ノズル付きの力プセル製造装置の内方ノズル管(4)の上 方から、その内方ノズル管の内腔(7) 中に前記のスラリー状混合物 Eを装入した。 内方ノズル管(4) の先端部(5) を通って、 内方ノズル管の内方ノズル孔(6)か らスラリ一状混合物 Eを下向きに押出した。
また、 それに先立ち、 カプセル製造装置に設けてある、 球形カプセル皮膜層の 形成物質の液状原料用の供給室(1,) 内に前記のアルギン酸ナトリウムの 5重 量%水溶液 (ゾル状) を装填しておいた。 外方ノズル管 (1) と内方ノズル管との 間に形成された中間チャネル (8) を通して該アルギン酸ナトリゥム水溶液を押 出したが、 この押出しは、 内方ノズル管(4) を通るスラリー状混合物 Eの押出し と同時に行った。
外方ノズルの外方ノズル孔出口の位置は内方ノズル管のノズル孔出口の下方に 在るようにしてあり、 そして外方ノズル管(1)の先細部(2) の先端の所で、 外方 ノズル管のノズル孔 (3) の周壁と内方ノズル管のノズル孔(6) との周壁との間 に形成された環状スリットを通して、 前記のアルギン酸ナトリゥム水溶液を押出 させた。 こうすると、 内方ノズル管のノズル孔(6) から出たスラリー状混合物 E よりなる液流の表面周囲を、 上記のアルギン酸ナトリゥム水溶液が皮膜の形で包 囲して内外 2層の液流 1本がノズル孔出口の下方の所で形成した。 しかもその液 流がやや流下すると、 自然にくびれて次々と液滴になる現象が実施例 1、 (a) の 場合と同様に起きた。
その結果として、 スラリー状混合物 Eよりなる丸い内層と、 これを包被する上 記アルギン酸ナトリウム水溶液の皮膜層とから構成された 2層構造の丸い液滴が 外方ノズル管 (1) のノズル孔 (3) から押出された液流の先端で次々と形成され た。 前記のスラリ一状混合物 Eの押出速度とアルギン酸ナトリゥム水溶液の押出 速度とをそれぞれ適宜にコントロールした。 こうすると、 前記の 2層構造の丸い 液滴の 1個あたりに、その 2層構造の液滴の内層(スラリ一状混合物 Eよりなる) の重量と皮膜層 (ァノレギン酸ナトリゥム水溶液よりなる) の重量との平均比率が ほぼ 40: 60であるところの、 前記の 2重構造の丸い液滴が次々と継続的に形成 された。 しかしながら、 これらの丸い液滴の直径と、 大きさは各個の液滴につい てそれぞれ多少変動するけれども、 ほぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された 2層構造の丸い液滴を、 室温で塩化力 ルシゥムの 2.0重量%水溶液よりなる液浴内に次々に滴下させた。 滴下した液滴 を前記の塩化カルシウム水溶液の液浴内に約 5分間保持すると、 液滴の皮膜層に おけるアルギン酸ナトリゥムはカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲ ル状に硬化した。 こうして、 スラリー状混合物 Eの芯部を包被する丈夫な皮膜を もつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。
これら多数の丸い力プセル状粒子を塩化カルシゥム水溶液の液浴から分離し、 さらに室温で水洗した。 その後に、 水洗された丸いカプセル状粒子を、 20°Cの乾 燥空気流の中でカプセル粒子の芯部のスラリ一状混合物 Eが固化されるまで、 乾 燥した。
このようにして得られた乾燥した丸い力プセル状粒子は、 1.5mn!〜 2.0mmの 範囲の直径を有し、 また内層 (芯部) と、 これを包被する皮膜層とからなる球形 構造のカプセルである。 その各カプセルの内層は、 陶芸用絵具の一種の黄色顔料 と石灰釉生成用の釉薬顔料と前記の有機結合剤としてのアルギン酸ナトリウムと の固体状混合物からなり、 カプセル皮膜層はアルギン酸カルシウムの硬ィヒ物より なる多孔質の固体状物質よりなるものであった。 このカプセルの横断面構造は、 第 1図に示される実施例 1、 (a)の球形カプセルのものと同様であり、 カプセル は内層 (1) と皮膜層 (2) とを有する。 これらの球形カプセルでは、皮膜層を通し て芯部に含まれた黄色顔料の黄色が僅かにすけて見えた。
(b) 明色黄色顔料とは異なる色をもつ顔料と、石灰釉の生成用の釉薬原料とァ ルギン酸ナトリウムとの固体状混合物よりなる芯部、 および皮膜材物質としてァ ルギン酸カルシウムの硬化物よりなる皮膜層を有する球形カプセルの調製 上記の実施例 4、 (a)、 (i)の工程で用いられた前記の市販の明色黄色顔料 (日 陶産業 (株) の製品) に代えて、 市販のローズピンク色の顔料 (ジルコニウムシ リケート中に、力ドミゥム粒子を分散した分散物を主成分とする)、'市販の緑青色 顔料 (ジノレコニゥムシリケ一トとパナジゥムシリケ一トとの均質な混合物を主成 分とする)、 市販の紺青色顔料 (コパルトアルミネート (Co)Al204と亜鉛アルミ ネート (Ζη)Α1204との均質な混合物を主成分とする)、 市販のヒヮ色顔料 (ジルコ 二ゥム、 バナジウムおよびプラセォジゥム Prのシリケ一ト複合物を主成分とす る )、 市販の緑色顔料 (アルミニゥムとクロムとの混成酸化物(Al, Cr)2O3を主成 分とする)、市販のチョコレート色顔料(亜鉛、鉄およびクロムの混成酸ィ匕物(Zn, Fe)(Fe,Cr)204を主成分とする)、 市販の金茶色顔料 (亜鉛、 鉄およびクロム含量 が小さいもの) を主成分とする)、 市販のピンク色顔料 (化学組成 CaO' SnO2' Si02' CrO3をもつ物質を主成分とする)、 市販のピーコック色顔料 (クロム酸コ バルト CoCr204を主成分とする)、 市販の黒色原料 (コバルト、 鉄およびクロム の混成酸化物(Co, Fe)(Fe,Cr)204を主成分とする)、 または市販の白色顔料 (ィ匕 学組成 Sn02-Si02-B203-Na20-CaOをもつ物質を主成分とする) または別の市販 の白色顔料 (ジルコニウム'シリケートを主成分とする)、 あるいはえんじ赤顔料 (酸ィ匕マンガンまたはカドミウム赤色顔料を主成分とする) を使用して、 上記の 実施例 4、 (a)、 (i)〜(iii) の工程を実施した。
このようにして、 球形カプセルの芯部中にそれぞれ 11種の色の顔料を配合し ているので、それぞれ 11色の色を発現できる 11種の球形力プセルが製造できた。
(c) 多色の装飾模様を地釉層上に有する陶器の製造
市販の乳白色釉の生成用釉薬原料の泥漿 (スリップ) を、 陶土製の素焼き皿に 浸し掛けし、 その後に、 自然乾燥した。 このように乳白釉を施釉された素焼き皿 の内面において、 5弁の花の輪郭の中に、 上記実施例 4、 (a)、 (b)で得た各種の 色を発色できる各種の球形カプセルを好みに応じた色の組み合わせで適当な個所 に配列した。 なお、 それらカプセルの配列に先立ち、 施釉面でカプセルの置かれ
る位置にスターチ糊を吹きつけて置いた。 それら各種の球形力プセルの配列は、 好みの点描画を画くような絵付け模様を作るように調整した。
その後に再び、 球形カプセルを配置された素焼き皿品の施釉内面の上から、 市 販のスプレー用スターチのりを有機質接着剤として吹きつけて、 球形力プセルを 素焼き皿品の施釉内面に結着させた。 このようにして前記の球形カプセルを結着 して有する素焼き皿を、電気キルン(日本電産シンポ(株)の製品) 内に入れて、 徐々に加熱して最高 1235°Cの施釉温度にて、空気よりなる酸化性雰囲気下に焼成 した。
その焼成された陶器皿の内面は、 これに融着した乳白色の釉地の釉層をもち、 またこの地釉層の上に、 前記の花弁の輪郭を画くように配列された各種の球形力 プセルの各個の熔融により生じたいろいろな色相をもつ小島状斑点の形の釉層の 各々が生成され、しかも乳白色地釉層からやや***した小島の形態で生成された。 しかもそれら斑点の集まりの組合せで構成された全体の画像が花弁の模様を画い て生成されていた。
その結果、 焼き上がった陶器皿の表面には、 乳白釉の地釉層上に多彩で色鮮ゃ カな点描画的に画かれた花弁の絵付け模様が作出できた。
(d) 山岳と雲と樹を含む風景を点描画風に描写した装飾模様をトルコ青釉地 釉層上に有する磁器皿の製造
( 磁土製の素焼き丸皿に実施例 1、 (a)で用いたトルコ青釉生成用の釉薬 原料のスリ ップを浸し掛けして、 自然乾燥した。 このように施釉された皿の乾燥 表面の皿内面の中央に、 富士山を形ちどる輪郭の中に、 実施例 4、 (b)で作った えんじ赤顔料を含有した小型の球形カプセル (a) と、えんじ赤顔料を含有した大 型の球形カプセル(a,) の多数を点描画の形で配列した。その富士山の下方にやや 離れて、 横に流れる一つの薄い雲層を画く輪郭の中に、 実施例 4、 (b)で作った ピンク色顔料を含む球形カプセル (b) の多数を互いに近接した形で配列した。上 記の雲層の下方に、 また、 横に流れる別の雲層を画く輪郭の中に、 実施例 4、 (b) で作った白色顔料を含むカプセル(c) の多数を互いに近接した形で配列した。 な お、 それの下方には、緑色顔料を含む大型のカプセル(d) を波線に沿って配列さ せた。 それらカプセルの配列される位置には、 スターチ糊を予じめて吹き付けて
置く前処理を行い、 配列されたカプセルが皿表面に貼りつくように準備する前処 理をした。 皿表面にそれらカプセルの配列をした後に、 皿を自然乾燥した。 そのように山岳と雲と樹を含む風景を点描画風に且つ抽象画的に画くように配 列された各種の色の力プセルが結着された皿の正面における球形力プセルの配列 の様子と外観の様子を図解的に描写する図解図を添付図面の第 4図に示す。
(ii) 前記のようにして各種の色の顔料を含むそれぞれの力プセルを結着し て有する素焼き丸皿を、 電気キルンに入れて、 実施例 4、 (c)に記載されたと同 じ要領で焼成した。
上記のように焼成された丸皿の上面は、 皿面の上方の領域がトルコ青釉の青色 地釉層をもち、 皿面の中央の領域に夕焼けの富士山を点描画風に画くように配列 されたカプセル(a)および(a,)の熔融で生じたえんじ赤色の釉層の集まりをも ち、 その皿面の下方の領域には、 ピンク色の雲層を画くように配列されたカプセ ル(c) の熔融で生じた白色の釉層と、波線に沿って並べたカプセル(d) の熔融で 生じた緑色の丸い釉層の列とを有するものである。 得られた丸皿焼成品は、 美し い風景を点描画風に画く各種の色の装飾模様を有して、 美観を呈した。
実施例 5
(a) 青色顔料、黄色顔料または赤色顔料を含む低火度フリット釉の微粉末とァ ルギン酸ナトリゥムとの固体状混合物よりなるカプセル芯部を有し且つアルギン 酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形カプセル の調製
(i) ガラス工芸に用いられる、 青色顔料を含む低火度フリット釉の市販され る青色の微粉末(a) (三徳工業 (株) の製品) と、 黄色顔料を含む低火度フリツト 釉の市販される黄色の微粉末(b) (三徳工業 (株) の製品) と、 赤色顔料を含む低 火度フリツト釉の市販される赤色の微粉末(c) (三徳工業 (株) の製品) とを用 意した。
前記の各種の色をもつフリット釉の市販される青色の微粉末(a)、 フリツト釉 の市販される黄色の微粉末(b)、およびフリット釉の市販される赤色の微粉末(c) のそれぞれを、 アルギン酸ナトリウムの 5重量0 /0水溶液 (ゾル状) と 1 : 1の重 量比で良く混合し、 これによつて、 青色のスラリー状混合物 Fと、 黄色のスラリ
—状混合物 Gと、 青色のスラリー状混合物 Hとを調製した。
さらに、 前記の実施例 1、 (a)の工程で用いられて且つ第 3図に図解的に示さ れた装置構造を有する 2重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。 但し、 ここで用いる装置では、内方ノズル管 (4) のノズル孔(6) の出口内径を 0.80mm に調整し、 また外方ノズル管 (1) のノズル孔 (3) の出口内径を 2.10mmに調整 してある。
(ii) 上記のカプセル製造装置の内方ノズル管(4)の内腔(7)中に、 上記の 3色のスラリー状混合物 F、 Gまたは Hを装入した。
また、該装置に設けたカプセル皮膜形成物質の液状原料のための供給室( ) に、 アルギン酸ナトリウムの 5重量%水溶液 (ゾル状) を装入した。
実施例 4、(a)、(ii) に記載されたと同じ要領で有色のスラリー状混合物 F、 G、 または Hを内方ノズル管 (4)のノズル孔 (6)から下向きに押出し、 またアルギン 酸ナトリウム水溶液を、 外方ノズル管のノズル孔 (3) と内方ノズル管のノズノレ 孔 (6) との間にある環状スリットを通して押出した。
実施例 4、 (a)、 (ii) に記載されたと同じ要領で 2重構造の丸い液滴が次々に形 成された。 形成されたそれら丸い液滴の内層 (有色のスラリー状混合物 F、 Gま たは Hからなる内層) と、 皮膜層 (アルギン酸ナトリウム水溶液からなる外層) との間の平均的な重量比率がほぼ 45: 55であるように調整が行われた。
(iii) それらの丸い液滴を、 実施例 4、 (a)、 (iii)に記載と同じ要領で、 塩ィ匕 カルシウムの 2.0重量%水溶液の液浴中に次々に滴下、 導入した。
アルギン酸カルシウムのゲル状硬ィ匕物よりなる皮膜をもつ丸いカプセル粒子が 多数形成されたので、 これらの力プセル状粒子を塩ィ匕カルシゥム水溶液の液浴か ら取出し、 さらに室温で水洗した。水洗された力プセル状粒子を 20°Cの乾燥空気 流の中で十分に乾燥して、 カプセルの全体が固化するまで乾燥した。 これによつ て、乾燥した球形カプセルの多数が収得でき、これらカプセルは 1.7mm〜2.4mm の範囲の直径を有した。
上記の諸工程で製造された球形カプセルは、青色のフリット釉微粉末(a) とァ ルギン酸ナトリゥムとの固体状混合物 F'からなる芯部を有して且つアルギン酸 カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形力プセル
(i) と、 黄色のフリット釉微粉末 (b) とアルギン酸ナトリウムとの固体状混合 物 G'からなる芯部を有してアルギン酸カルシウムの硬化物よりなる多孔質構造 の固体状皮膜層を有する球形カプセル (ii) と、 赤色のフリット釉微粉末 (c) と アルギン酸ナトリゥムとの固体状混合物 H'からなる芯部を有して且つアルギン 酸カルシウムの硬化物からなる多孔質構造の固体状皮膜層を有する球形力プセル
(iii) との 3種類である。
(b) 多色の装飾模様を表面に作成された耐熱ガラス成形品の製造
耐熱性のパリゥムガラス製の円筒状ガラスコップの側面において、 上記の実施 例 5、 (a)で得た青色、 黄色、 赤色の球形カプセル(i), (ii),(iii)を、 好みの色の 組合せで用いて好みの模様を画くように配列させた。 カプセルの配列に先立ち、 カプセルが置かれる位置にスターチのりを吹きつけて置く前処理した。 カプセル 配列後は再び市販のスプレー用スターチのりを吹きつけ、 乾燥してカプセルを接 着させた。
それらカプセルを接着された上記のガラスコップを電気キルン内で徐々に加熱 して最高 850°Cの温度で酸ィヒ性雰囲気下に焼成した。
焼成後に、 該ガラススコップの側面を見ると、 接着した球形力プセルの各個の 溶着により生成された青色の小島状斑点と、 黄色の小島状斑点と、 赤色の小島状 斑点とがガラス表面からやや***した状態で形成されていた。 しかも、 それぞれ の小島状斑点は立体感を示し、 それら斑点の組合せで作られる全体の画像を見る と、 美しい装飾模様を作り出していることが認められた。
実施例 6
(a) 陶磁器絵付け下絵具用のカナリァ黄色顔料と石灰釉生成用の釉薬原料と アルギン酸カルシウム (有機質結合剤として働く) との固体状混合物よりなる芯 部と、 下絵具用のえんじ赤色顔料と石灰釉生成用の釉薬原料とアルギン酸カルシ ゥムとの混合物よりなる中間層と、 有機質の皮膜材物質 (アルギン酸カルシウム の硬化物で形成される) よりなる皮膜層とを有する多層な複合構造の球形カプセ ルの調製
(i) 陶磁器用の下絵具として知られるカナリア黄色顔料の微粉末市販品と、 えんじ赤色顔料の微粉末市販品 (いずれも日本電産シンポ (株) の製品) を用意
した。 また、実施例 4、 (a)、 (i) で用いた石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(スリッ プ) の市販品 ((株) 釉陶の製品) を用意した。 この釉薬原料は約 40重量%の水 分を有したものである。
用意したカナリア黄色顔料 (微粉末) と、 石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿 (ス リップ) と、 アルギン酸ナトリウムの 2重量0 /。水溶液とを、 1 : 9 : 5の重量比で 良く混合して、 スラリー状混合物 Jを調製した。
また、用意したえんじ赤顔料(微粉末) と、石灰釉生成用の釉薬原料の泥漿(ス リップ) と、 アルギン酸ナトリゥムの 2重量。 /。水溶液とを、 3: 7: 20の重量比で 良く混合して、 スラリー状混合物 Kを調製した。
また別に、 添付図面の第 5図に示された装置の縦断面の図解図で表される装置 構造をもつ 3重管ノズル付きの力プセル製造装置を用意した。 この 3重管ノズル 付きカプセル製造装置は、 実施例 1〜 4に用いて第 3図に示された 2重管ノズル 付きのカプセル製造装置における外方ノズル (1) の回りに、 横断面の円形な第 3の外方ノズル (10) を同軸的に追カ卩して設けてある以外は、 第 3図に示された 装置と概ね同様な構造を有する。
(ii) 第 5図に示された 3重管ノズル付きの力プセル製造装置の内方ノズル 管(4)の内腔(7)へ上記のスラリー状混合物 J (黄色顔料を含む) を装入して、 内方ノズル管 (4) の先細部 (5) を通して先端のノズル孔 (6) から混合物 Jを 下向きに押出した。
また、 内方ノズル管 (4) を包囲して同心円的に設けられた中間ノズノレ管 (1) と、 内方ノズル管 (4) との間に形成された液状原料のための供給室 (Γ) 中に、 供給管 (9) を経て上記のスラリー状混合物 Kを装入しておき、 そして中間ノズ ル管 (1) の先細部 (2) と、 内方ノズル管 (4) との間に形成されたチャネル部 (8) を経て、 該混合物 K (えんじ赤顔料を含む) を中間ノズル管 (1) の先端の ノズル孔 (3) から下向きに押出した。
さらに、 外方ノズル管 (10) と中間ノズル管 (1) との間に形成されたところ の、 液状の原料のための環形の供給室 (13) の中に、 供給管 (15) を経てアルギ ン酸ナトリウム(力プセルの皮膜層形成用の皮膜材物質のための原料)の 5重量% 水溶液 (ゾル状) を装入しておき、 そして中間ノズル管 (1) の先細部 (2) と外
方ノズル管 (10) の先細部 (11) との間に形成されたチャネル (14) を通って、 アルギン酸ナトリウム 5重量0 /0水溶液を外方ノズル管先細部 (11) の下端のノズ ル孔 (12) から下向きに押出した。
このようにすると、 ノズル孔 (12) から押出された 1本の液流は、 横断面が円 形の中央層と、 これを包囲する横断面が環形の中間層と、 中間層を包囲する外方 層とをもち、同心円的な 3層の断面構造を有した。この 1本の液流の該中央層は、 黄色顔料を含む上記のスラリ一状混合物 Jカゝらなり、 該中間層はえんじ赤顔料を 含む上記のスラリ一状混合物 Kからなり、 また該外方層は前記のアルギン酸ナト リゥム水溶液からなる。
ノズノレ孔 (12) から押出された上記の液流は、 その下端で自然に細くくびれて 次々に丸い 3層構造の液滴を形成する。
内方ノズル管のノズル孔 (6) の出口内径を 0.72mmに調整し、 中間ノズル管 のノズル孔 (3) の出口内径を 1.94mmに調整し、 外方ノズル管のノズル孔 (12) の出口内径を 3.0mmに調整し、 しかも、 前記のスラリー状混合物 Jおよび混合 物 Kの流出速度とアルギン酸ナトリゥム水溶液の流出速度をそれぞれに適宜にコ ントローノレした。
こうすると、 前記の 3層構造の丸い液滴の 1個あたりに、 その 3層構造の液滴 の最内層(混合物 Jよりなる)の重量と、中間層(混合物 Kよりなる)の重量と、 皮膜層 (アルギン酸ナトリゥム水溶液よりなる) の重量との平均比率がほぼ 25: 35: 40であるところの前記の 3層構造の丸い液滴が次々と連続的に形成された。 これらの丸い液滴の直径と大きさは各個ではそれぞれ多少変動するけれども、 ほ ぼ同じであることが認められた。
(iii) 前記のように次々に形成された 3層構造の丸い液滴を室温で塩化カル シゥムの 2.0重量%水溶液内に次々に滴下させた。 滴下した液滴を前記の塩化力 ルシゥム水溶液内に約 15分間保持すると、 液滴の皮膜層のおけるアルギン酸ナ トリゥムは浸透してきたカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に 硬化したので、丈夫な皮膜をもつ丸い力プセル状粒子の多数が形成された。また、 液滴の最内層と中間層に含まれたアルギン酸ナトリゥムの大部分も、 最内層と中 間層に浸透してきた Caイオンとの反応でアルギン酸カルシウムのゲル状物に変
化した。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩ィ匕カルシウム水溶液から分離し、 さらに 室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を 20°Cの乾燥空気流 中で乾燥した。 この乾燥は、 各個のカプセル状粒子に含まれた付着水分が実質的 に無くなって、 カプセル状粒子の芯部を含めて、 粒子全体が固体化するまで行つ た。
乾燥した丸いカプセル状粒子を、 2.0〜2.5mmの範囲の直径を有し、 また芯部 と、 これを包囲する中間層、 またそれを包囲する皮膜層とからなる 3層構造の球 形カプセルである。 その球形カプセルの芯部をなす最内層が石灰釉生成用の釉薬 原料と下絵具のカナリア黄色の顔料と、 アルギン酸カルシウムの硬ィ匕物との混合 物である分散体 (dispersion) の形態の固体状物質からなる。 また、 その中間層 も石灰釉生成用の釉薬原料と下絵具のえんじ赤色顔料成分と、 アルギン酸カルシ ゥムの硬化物との混合物である分散体 (dispersion) の形態の固体状物質からな り、 そして皮膜層はアルギン酸カルシゥムの硬化物からなる多孔質構造の固体層 であった。
この 3層構造の球形力プセルの外観を斜視図で表わす図解図を添付図面の第 6 図に示す。 このカプセルの一部分の横断面が斜視図としても第 6図に示される。 各個のカプセノレは芯部 (1) と中間層 (3) と皮膜層 (2) とを有する。
(b) 上記(a) で製造された 3層構造カプセルを用いての絵付け陶磁器の製造 陶土製の素焼き皿に市販の乳白釉用の釉薬原料のスリップを浸し掛けした。 こ のように施釉した後に自然乾燥した。 素焼き皿の施釉された内側表面の適当な個 所に、 3重丸の輪郭をもつ好みの点描画風の模様を画く配置で、実施例 6、(a) で 製造した球形カプセル ( 3層構造の球形カプセル乾燥品) を配列させた。 そのよ うにカプセルを配列するに先立ち、 カプセルが置かれる位置にスターチ糊を吹き つけて置く前処理をした。 その後再び、 そして市販のスプレー澱粉のりを吹き付 け、 乾燥して力プセルを素焼き皿の施釉面に結着した。 このように球形力プセル を結着した素焼き皿施釉品を電気キルン (日本電産シンポ (株) 製) 内で徐々に 加熱し、 そして最高 1235°Cの施釉温度にて酸化性雰囲気下に焼成した。
その結果、 焼き上がった陶器皿の内側表面は乳白釉の地釉層をもち、 その地釉
層の上に、 内方部が黄色で外縁が赤色のほぼ同心円状の 2重円の縞模様をもつ小 島状の斑点の形の釉層を各々のカプセルから作出できた。 その 2重円 (外径 3 mm) の縞模様をもつ小島状釉層よりなる点描画風の装飾模様で陶磁器を絵付け することは、エツジングその他の絵付け技法ではまねできない独特の技法である。 実施例 7
(a) 石灰釉生成用の釉薬原料と酸化第二鉄 (着色料) と酸化マンガン (着色補 助剤) とアルギン酸カルシウム (結合剤) との固体状混合物よりなる芯部と、 金 液乾燥残渣固体生成物よりなる中間層と、 アルギン酸カルシゥムの硬化物よりな る多孔質な固体状皮膜層とを有する 3層構造の球形力プセルの製造
(i) 実施例 2、 (a)、 (i) で用いたものと同様な銀油滴天目釉を生成できる釉 薬原料の泥漿 (スリップ) の市販品 ((株) 釉陶の製品) を用意した。 この釉薬原 料泥漿は、 石灰釉生成用の釉薬原料の微粒子と、 酸化第二鉄の微粒子と、 酸化マ ンガンの微粒子と水とを含むスラリ一状混合物である。 この銀油滴天目釉生成用 の釉薬原料の泥漿を、 アルギン酸ナトリウムの 10重量%7溶液と 2: 1の重量比 で混合して、 スラリー状混合物 Mを調製した。
また、 金液市販品として、 実施例 1で用いた商品名 「金液 N-9J の金液 (ノリ タケ (株) の製品) を用意し、 これをテレビン油と 1 : 1 の重量比で混合して、 油状の混合物 Lを調製した。
また、 アルギン酸ナトリゥムの 5重量 °/。の水溶液中に、 該水溶液の重量に基づ いて 0.1%の量の酸化コバルト微粉末、 0.1%の量の酸化マンガン微粉末および 0.05%の量の酸化ニッケル微粉末を混合して、 懸濁液状の混合物 Oを調製した。 別に、 実施例 6、 (a) で用いたと同様な装置であり、 第 5図に図解された装置 構造をもつ 3重管ノズル付きのカプセル製造装置を用意した。 但し、 この場合に は、 内方ノズル管 (4) のノズル孔 (6) の出口内径を 0.72mmに調整し、 中間ノ ズノレ管(1) のノズル孑し(3) の出口内径を 1.94mmに調整し、外方ノズル管(10) のノズル孔 (12) の出口内径を 3.0mmに調整した。
(ii) 前記のスラリ一状混合物 M (銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料を含む) を内方ノズル管のノズル孔(6) から押出し、 スラリ一状混合物 L (金液を含む) を前記の装置の中間ノズル管 (1) のノズル孔 (3) カゝら押出し、 また前記の混合
物 Oを、 中間ノズル管のノズル孔 (3) の周壁と外方ノズル管の先細部 (11) 内 壁との間でノズル孔 (12) 近くに形成されたところの環状スリットを通して下向 きに押出した。なお、それぞれの混合物 M、 L、 Oの押出速度を相互に調整した。 実施例 6、 (a)、 (ii) に記載されたと同じ方式にて、 横断面が同心円状の 3層構 造の流液 1本が外方ノズル孔 (12) の下方の所で形成された。 また、 この液流は その下端で自然に細くくびれて 3層構造の丸い液滴を次々と生成した。
こうすると、 前記の 3層構造の丸い液滴の 1個あたりに、 その 3層構造の液滴 の最内層 (混合物 M) の重量と、 中間層 (混合物 L) の重量と皮膜層 (アルギン 酸ナトリゥム水溶液を含む混合物 O) の重量との平均比率がほぼ 30: 40: 30で あるところの前記の 3層構造の丸い液滴が形成された。 これらの丸い液滴の直径 と大きさは各個ではそれぞれ多少変動するけれども、 ほぼ同じであることが認め られた。
(iii) 前記のように次々に形成された 3層構造の丸い液滴を室温で塩化カル シゥムの 2.0重量%7溶液内に次々に滴下させた。 滴下した液滴を前記の塩化力 ルシゥム水溶液内に約 15分間保持すると、 液滴の皮膜層におけるアルギン酸ナ トリゥムはカルシウムイオンと反応してイオン架橋によりゲル状に硬化したので、 丈夫な皮膜をもつ丸いカプセル状粒子の多数が形成された。 また、 粒子の最内層 中のアルギン酸ナトリゥムも大部分が侵透してきたカルシウムイオンと反応して ゲル化した。
これら多数の丸いカプセル状粒子を塩ィ匕カルシウム水溶液から分離し、 さらに 室温で水洗した。その後に、水洗された丸いカプセル状粒子を 20°Cの乾燥空気流 の中で乾燥した。 これらの力プセル状粒子の各個中に含まれた付着水分のすべて を除去されるまで、 すなわちカプセル状粒子の芯部を含めて、 粒子全体が固化す るまで乾燥を行った。
このように乾燥した丸いカプセル状粒子を、 2.5〜3.0mmの範囲の直径を有し、 また最内層と、 これを包囲する中間層、 またそれを包囲する皮膜層とからなる 3 層構造の球形カプセルである。
これら球形カプセルの各個は、 銀油滴天目釉の生成用の釉薬原料と着色料とし ての各種の金属化合物とアルギン酸カルシウム (結合剤として働く) との固体状
混合物よりなる芯部と、金液の乾燥残渣固体生成物よりなる中間層と、コバルト、 マンガン、 ニッケルの各酸化物 (鉄質表面への密着性増強剤として働くと共に、 着色科としても働く) の微粒子を分散粒子として内部に含むアルギン酸カルシゥ ムの硬化物よりなる多孔質構造の固体状皮膜層とを有する 3層構造を示した。 そ の球形カプセルの 3層構造は、 実施例 6で作製されて第 6図に示されたカプセル の 3層構造と同様である。
(b) 上記の (a) で製造された 3層構造の球形カプセルを用いての絵付け鉄製 皿の製造
鉄製皿の表面の適当な個所に、 好みの点描的な模様を作る配置で、 実施例 7、 (a) で調製した 3層構造の球形カプセル乾燥品を配列した。 カプセルを配列する に先立ち、 カプセルが置かれる位置にスプレー用スターチ糊を予じめ吹きつける 前処理をした。 そして自然乾燥し、 再び上から市販のスプレーのりを吹きつけ、 乾燥させ、 カプセルを鉄皿に結着した。
その鉄皿を電気窯 (日本電産シンポ (株) 製) 内で徐々に加熱して、 そして最 大温度 1250°Cで酸ィヒ性雰囲気下に焼成した。その結果、焼き上がった鉄製皿の表 面には、 銀色と金色を混交して呈する窯変効果を示す銀油滴天目釉の斑点と斑紋 状の釉層が各個のカプセルの熔融で生成するので、 有色の美しい装飾模様が作出 できた。 その窯変効果を示す模様は、 鉄器表面上において、 美しい独特、 微妙な 色相を呈し、 その模様の中に明色の金結晶、 鉄結晶が出現していたことが顕微鏡 下に観察できた。
産業上の利用可能性
本発明によって提供されて、 基本釉生成用の釉薬原料と、 釉の着色用の着色料 とを封入されてある 2層または多層の球形カプセルは、 該カプセルの複数を陶磁 器の素焼き品の施釉または未施釉表面の上に配列して、 熱分解性接着剤により接 着し、 しかも接着されたカプセルを以つて点描画風の装飾模様を画く要領で複数 の力プセルの配列を行レ、、 それら力プセルが配列して結着された陶磁器素焼き品 を常法で焼成すると、 各カプセルの熔融により生成された有色の小島状釉層の組 合わせで構成される装飾模様を陶磁器焼成品上に作出できる。 従って本発明によ る球形カプセルは、 装飾模様をもつ陶磁器の製造に利用できる。 また、 陶磁器の
代りに、 別の耐熱性基体の表面に装飾模様を作るのにも、 本発明のカプセルは利 用できる。