明 細 書
植物培養細胞で糖欠乏により働くプロモーターの有用タンパク質の分泌 生産への適用
技術分野
[0001] 本発明は、糖欠乏により発現が誘導される新規プロモーターおよびそれを利用する 生産方法に関する。
背景技術
[0002] 有用タンパク質 (例えば、インターフェロン)を遺伝子組換え技術によって大量生産 する試みは大腸菌などを用いて 20年以上前からなされてきた。しかし、多くのタンパ ク質が、糖鎖付加という翻訳後修飾を活性に必須とするため、その生産には真核細 胞の利用が望まれる。
[0003] ヒト由来の有用タンパク質(例えば、インターフェロン等の治療用タンパク質)の植物 培養細胞による分泌生産には、以下のような利点がある:
1.植物細胞は真核細胞なので、哺乳動物と同様のタンパク質のプロセッシングお よび翻訳後修飾が起こる;
2.動物細胞を用いた場合に懸念されるウィルス(HIVなど)およびプリオン (BSE) の汚染の心配が無い;
3.植物の培地は、糖および無機塩から構成されており、安価な生産が可能である; ならびに
4.分泌生産をおこなう場合、 目的タンパク質は培地に分泌されるため、回収および 精製が比較的容易である;
5.遺伝子組換え植物を野外栽培することによる生産方法とは異なり、食糧作物へ の目的タンパク質の混入もなぐ環境へ遺伝子が流出するリスクもない。
[0004] 以上の点から、植物細胞による有用タンパク質の分泌生産は有効であると考えられ るが、収益性を考慮した場合、 目的タンパク質の生産性とともに精製コストの抑制が 重要なファクタ一となる。従って、 目的タンパク質を特異的に培地に分泌させる制御 方法が望まれている。
[0005] 植物はこのように、有用タンパク質の生産に多くの利点を有し、従来からその利用 が試みられている。植物で外来有用タンパク質を大量生産させる試みは 10年来なさ れてきたが、多くの場合、研究の力点は遺伝子の発現レベルの向上に注がれてきた 。しかし、遺伝子の高発現は必ずしもタンパク質の高蓄積に結びつかず、実用化に 至らないケースが多い。真核生物ではタンパク質の合成は複数の場で起こり、その蓄 積場所も様々である。また、イネなどの作物において栄養価の高いタンパク質を生産 し、食品の価値を向上させる試みもなされている力 この場合も目的タンパク質が高 蓄積しないという問題がある。そのため、企業あるいは公的研究機関の多くが様々な シーズを有しているにもかかわらず、植物による有用タンパク質生産は殆どの場合、 実用化、産業化に至ってない。
[0006] 例えば、培養細胞を用いた外来タンパク質の生産に関しては、例えば、 Terashim a M.ら、 Appl. Microbiol. Biotechnol., 52, 1999, 516— 523 (非特許文献 1
)は、イネ培養細胞を用いてヒト α _アンチトリプシン (AAT)の分泌生産をおこなって おり、乾燥細胞重量 lgあたり 24mgの生産を可能としている。しかし、これは非常に 効率の良いケースであり、タンパク質によっては殆ど生産が認められないケースもあ ると報告している。
[0007] 日本国外では、主として米国で植物を用いた有用タンパク質の生産研究が活発で ある。米国では、遺伝子組換え植物の野外栽培が認められやすいことから、必ずしも 培養細胞を用いず、組換え植物を用いた生産が行われている。 ProdiGene社(米国 テキサス州)はすでに組換えトウモロコシにより生産した β—ダルクロニダーゼおよび アビジンを検査用試薬として販売している。 Ventria Bioscience社(米国カリフオル ユア州)は AATを遺伝子組換えイネにより生産し、 2004年までに臨床応用への承 認を取得しょうとしている。
[0008] しかし、 日本国内では、このような遺伝子組換え植物の野外栽培がほとんど認めら れていないので、できる限り、培養細胞を用いて外来有用タンパク質を生産すること が好ましい。
[0009] これらのことから、遺伝子組換え植物において外来有用タンパク質を安定かつ大量 に生産する方法を確立することが望まれてレ、る。
[0010] 糖欠乏応答遺伝子に関しては、非特許文献 2に、 —グノレコシダーゼ(din2と表記 される)が暗所で誘導されること、 din遺伝子の糖抑制発現はへキソキナーゼによるへ キソースのリン酸化を通して媒介されること、および暗所で植物は容易に糖欠乏状態 に陥ることが記載されている。しかし、この文献は、単に /3 _ダルコシダーゼの発現の 糖欠乏誘導性を記載するのみであり、この遺伝子のプロモーターを有用タンパク質 の発現に利用することを開示も示唆もしない。
[0011] 特許文献 1には、 ひ—アミラーゼの合成およびそれらの mRNAレベルが糖の欠乏 によって大いに誘導されることおよびひ—アミラーゼ由来のベクターと所望の遺伝子 産物をコードする遺伝子を含むベクターを用いて被子植物宿主細胞において遺伝 子産物を生産するための方法が記載されている。しかし、この文献では、イネのひ— アミラーゼのプロモーターを用いてイネにおいて発現が可能であることしか確認して おらず、他の植物において発現が可能であるかは不明である。
[0012] 特許文献 2および 3には、イネの α—アミラーゼをコードする遺伝子のプロモーター が糖欠乏応答性であること、 α—アミラーゼをコードする遺伝子のプロモーターに連 結したヒト α 1—アンチトリプシン (ΑΑΤ)を含む形質転換イネ細胞を最初は健常な細 胞増殖を維持する培地で維持し、その後、スクロースを含まない ΑΑΤ培地に交換す るまたは希釈することが記載されている。しかし、特許文献 2および 3には、一般的な 説明において、イネ科の植物を用い得ることが記載されている力 実施例においては 、イネの α—アミラーゼをコードする遺伝子のプロモーターを用いてイネにおいて発現 が可能であることしか確認しておらず、他の植物において発現が可能であるか否か は不明である。
特許文献 1 :米国特許第 5, 712, 112号公報 (第 5欄、第 9欄、第 10欄、第 51欄) 特許文献 2 :米国特許第 6, 048, 973号公報 (第 1欄、第 9欄一第 12欄、第 51欄) 特許文献 3:国際公開 W098Z42853号パンフレット(第 1頁)
非特許文献 l : Terashima M.ら、 Appl. Microbiol. Biotechnol. , 52, 1999,
516-523
特許文献 2 : Fujiki、 F.ら、 Plant Physiol. Vol. 124、 2000、 pp. 1139-1147 (第 1139頁要約、本文第 1段落、第 1140頁表 I)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0013] 本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、植物細胞において容易に制 御可能なプロモーターおよびこのプロモーターを用いてタンパク質を安定かつ大量 に生産する方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0014] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シロイヌナズ ナの分泌型 /3—キシロシダーゼ遺伝子、 /3—ガラタトシダーゼ遺伝子および /3—ダル クロニダーゼ遺伝子のプロモーター力 S、培養細胞において糖欠乏により顕著に誘導 されることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。特に、これらの糖欠乏誘 導性プロモーターとシグナルペプチドとを異種遺伝子配列に連結すれば、この異種 遺伝子配列によってコードされる産物の細胞外分泌が効率的に行われることを見出 した。
[0015] (1)糖欠乏誘導性プロモーター配列と、該糖欠乏誘導性プロモーター配列に作動 可能に連結された異種遺伝子配列とを含む、核酸分子。
[0016] (2)上記糖欠乏誘導性プロモーター配列が、 ガラクトシダーゼをコードする遺伝 子のプロモーター配列、 βーキシロシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列 および ダルコシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群より選 択される、上記項目(1)に記載の核酸分子。
[0017] (3)上記糖欠乏誘導性プロモーター配列が、
(a)配列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位または配列番号 5 の 1位一 2058位に示されるヌクレオチド配列;
(b) (a)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付カ卩を含むヌクレオチド配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有す るヌクレオチド配列;
(c) (a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、 かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;
(d) (a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド
配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;なら びに
(e) (a)一 (d)のいずれかのヌクレオチド配列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性 プロモーター活性を有するヌクレオチド配列
からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の糖欠乏誘導性発現を促進する活性を有する、上記項目(1)に記載の核酸分 子。
[0018] (4)さらにシグナルペプチドコード配列を含む、上記項目(1)に記載の核酸分子。
[0019] (5)上記シグナルペプチドコード配列が、 β—ガラタトシダーゼのシグナルペプチド コード配歹 lj、 β—キシロシダーゼのシグナルペプチドコード配列および β—ダルコシダ ーゼのシグナルペプチドコード配列からなる群より選択される、上記項目(4)に記載 の核酸分子。
[0020] (6)上記シグナルペプチドコード配列が、
(i)配列番号 2の 1位一 27位、配列番号 4の 1位一 28位または配列番号 6の 1位一 28位に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii) (i)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付加を含むヌクレオチド配列であって、細胞外分泌活性を有するペプチドをコー ドするヌクレオチド配列;
(iii) (i)または(ii)のヌクレオチド配歹 ijとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし 、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配歹 1J ;ならびに
(iv) (i)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列 からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の産物の細胞外分泌がもたらされる、上記項目(4)に記載の核酸分子。
[0021] (7)上記異種遺伝子配列が、サイト力インまたはホルモンの遺伝子配列である、上
記項目(1)に記載の核酸分子。
[0022] (8)上記異種遺伝子配列が、植物中で発現された場合に目的の機能を有するタン パク質をコードする、上記項目(1)に記載の核酸分子。
[0023] (9)上記異種遺伝子配列が、インターフェロン、抗体、ヒトひ—アンチトリプシンまた は緑色蛍光タンパク質の遺伝子配列である、上記項目(1)に記載の核酸分子。
[0024] (10)上記異種遺伝子配列が、マーカー遺伝子配列である、上記項目(1)に記載 の核酸分子。
[0025] (11)調節エレメントをさらに含む、上記項目(1)に記載の核酸分子。
[0026] (12)上記調節エレメントが、イントロン、ターミネータ一およびェンハンサ一からなる 群より選択される少なくとも 1つのエレメントを含む、上記項目(11)に記載の核酸分 子。
[0027] (13)ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列と、該プロモータ 一配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列とを含む、核酸分子。
[0028] (14)上記プロモーター配列が、 一ガラクトシダーゼをコードする遺伝子のプロモ 一ター配列、 βーキシロシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列および β - グノレコシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群より選択される、 上記項目(13)に記載の核酸分子。
[0029] (15)上記プロモーター配列が、
(a)配列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位または配列番号 5 の 1位一 2058位に示されるヌクレオチド配列;
(b) (a)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付カ卩を含むヌクレオチド配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有す るヌクレオチド配列;
(c) (a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、 かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;
(d) (a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;なら びに
(e) (a)一 (d)のいずれかのヌクレオチド配列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性 プロモーター活性を有するヌクレオチド配列
からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の糖欠乏誘導性発現を促進する活性を有する、上記項目(13)に記載の核酸 分子。
[0030] (16)さらにシグナルペプチドコード配列を含む、上記項目(13)に記載の核酸分子
[0031] (17)上記シグナルペプチドコード配列が、 β—ガラタトシダーゼのシグナルぺプチ ドコード酉己歹 IJ、 β—キシロシダーゼのシグナルペプチドコード配列および β—ダルコシ ダーゼのシグナルペプチドコード配列からなる群より選択される、上記項目(16)に記 載の核酸分子。
[0032] (18)上記シグナルペプチドコード配列が、
(i)配列番号 2の 1位一 27位、配列番号 4の 1位一 28位または配列番号 6の 1位一 28位に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii) (i)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付加を含むヌクレオチド配列であって、細胞外分泌活性を有するペプチドをコー ドするヌクレオチド配列;
(iii) (i)または(ii)のヌクレオチド配歹 ijとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし 、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配歹 1J ;ならびに
(iv) (i)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列 からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の産物の細胞外分泌がもたらされる、上記項目(16)に記載の核酸分子。
[0033] (19)上記異種遺伝子配列が、サイト力インまたはホルモンの遺伝子配列である、上 記項目(13)に記載の核酸分子。
[0034] (20)上記異種遺伝子配列が、植物中で発現された場合に目的の機能を有するタ ンパク質をコードする、上記項目(13)に記載の核酸分子。
[0035] (21)上記異種遺伝子配列が、インターフェロン、抗体、ヒト α -アンチトリプシンまた は緑色蛍光タンパク質の遺伝子配列である、上記項目(13)に記載の核酸分子。
[0036] (22)上記異種遺伝子配列が、マーカー遺伝子配列である、上記項目(13)に記載 の核酸分子。
[0037] (23)調節エレメントをさらに含む、上記項目(13)に記載の核酸分子。
[0038] (24)上記調節エレメントが、イントロン、ターミネータ一およびェンハンサ一からなる 群より選択される少なくとも 1つのエレメントを含む、上記項目(23)に記載の核酸分 子。
[0039] (25)代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列と、 該プロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列とを含む、核酸分子。
[0040] (26)上記代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列 、 ガラクトシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列、 キシロシダー ゼをコードする遺伝子のプロモーター配列および ;3—ダルコシダーゼをコードする遺 伝子の口モーター配列からなる群より選択される、上記項目(25)に記載の核酸分子
[0041] (27)上記代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列 が、
(a)配列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位または配列番号 5 の 1位一 2058位に示されるヌクレオチド配列;
(b) (a)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付カ卩を含むヌクレオチド配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有す るヌクレオチド配列;
(c) (a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、 かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;
(d) (a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;なら
びに
(e) (a)一 (d)のいずれかのヌクレオチド配列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性 プロモーター活性を有するヌクレオチド配列
からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の糖欠乏誘導性発現を促進する活性を有する、上記項目(25)に記載の核酸 分子。
[0042] (28)さらにシグナルペプチドコード配列を含む、上記項目(25)に記載の核酸分子
[0043] (29)上記シグナルペプチドコード配列が、 β—ガラタトシダーゼのシグナルぺプチ ドコード酉己歹 IJ、 β—キシロシダーゼのシグナルペプチドコード配列および β—ダルコシ ダーゼのシグナルペプチドコード配列からなる群より選択される、上記項目(28)に記 載の核酸分子。
[0044] (30)上記シグナルペプチドコード配列が、
(i)配列番号 2の 1位一 27位、配列番号 4の 1位一 28位または配列番号 6の 1位一 28位に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii) (i)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付加を含むヌクレオチド配列であって、細胞外分泌活性を有するペプチドをコー ドするヌクレオチド配列;
(iii) (i)または(ii)のヌクレオチド配歹 ijとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし 、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配歹 1J ;ならびに
(iv) (i)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列 からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の産物の細胞外分泌がもたらされる、上記項目(28)に記載の核酸分子。
[0045] (31)上記異種遺伝子配列が、サイト力インまたはホルモンの遺伝子配列である、上
記項目(25)に記載の核酸分子。
[0046] (32)上記異種遺伝子配列が、植物中で発現された場合に目的の機能を有するタ ンパク質をコードする、上記項目(25)に記載の核酸分子。
[0047] (33)上記異種遺伝子配列が、インターフェロン、抗体、ヒトひ—アンチトリプシンまた は緑色蛍光タンパク質の遺伝子配列である、上記項目(25)に記載の核酸分子。
[0048] (34)上記異種遺伝子配列が、マーカー遺伝子配列である、上記項目(25)に記載 の核酸分子。
[0049] (35)調節エレメントをさらに含む、上記項目(25)に記載の核酸分子。
[0050] (36)上記調節エレメントが、イントロン、ターミネータ一およびェンハンサ一からなる 群より選択される少なくとも 1つのエレメントを含む、上記項目(35)に記載の核酸分 子。
[0051] (37)プロモーター配列と、該プロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝 子配列とを含む、核酸分子であって、該プロモーター配列は、
(a)配列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位または配列番号 5 の 1位一 2058位に示されるヌクレオチド配列;
(b) (a)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付カ卩を含むヌクレオチド配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有す るヌクレオチド配列;
(c) (a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、 かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;
(d) (a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列;なら びに
(e) (a)一 (d)のいずれかのヌクレオチド配列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性 プロモーター活性を有するヌクレオチド配列
からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の発現を促進する活性を有する、核酸分子。
[0052] (38)さらにシグナルペプチドコード配列を含む、上記項目(37)に記載の核酸分子
[0053] (39)上記シグナルペプチドコード配列が、 β一ガラクトシダーゼのシグナルぺプチ ドコード酉己歹 lj、 β—キシロシダーゼのシグナルペプチドコード配列および β—ダルコシ ダーゼのシグナルペプチドコード配列からなる群より選択される、上記項目(38)に記 載の核酸分子。
[0054] (40)上記シグナルペプチドコード配列が、
(i)配列番号 2の 1位一 27位、配列番号 4の 1位一 28位または配列番号 6の 1位一 28位に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii) (i)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付加を含むヌクレオチド配列であって、細胞外分泌活性を有するペプチドをコー ドするヌクレオチド配列;
(iii) (i)または(ii)のヌクレオチド配歹 ijとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし 、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配歹 1J ;ならびに
(iv) (i)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列 からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の産物の細胞外分泌がもたらされる、上記項目(38)に記載の核酸分子。
[0055] (41)上記異種遺伝子配列が、サイト力インまたはホルモンの遺伝子配列である、上 記項目(37)に記載の核酸分子。
[0056] (42)上記異種遺伝子配列が、植物中で発現された場合に目的の機能を有するタ ンパク質をコードする、上記項目(37)に記載の核酸分子。
[0057] (43)上記異種遺伝子配列が、インターフェロン、抗体、ヒトひ—アンチトリプシンまた は緑色蛍光タンパク質の遺伝子配列である、上記項目(37)に記載の核酸分子。
[0058] (44)上記異種遺伝子配列が、マーカー遺伝子配列である、上記項目(37)に記載 の核酸分子。
[0059] (45)調節エレメントをさらに含む、上記項目(37)に記載の核酸分子。
[0060] (46)上記調節エレメントが、イントロン、ターミネータ一およびェンハンサーからなる 群より選択される少なくとも 1つのエレメントを含む、上記項目(45)に記載の核酸分 子。
[0061] (47)糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子の プロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列力 なる群力 選択される少なくとも 1つのプロモーター配列と、 該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列 とを含む、ベクター。
[0062] (48)糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子の プロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列力 なる群力 選択される少なくとも 1つのプロモーター配列と、 該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列 とを含む、植物細胞。
[0063] (49)双子葉植物細胞である、上記項目(48)に記載の植物細胞。
[0064] (50)培養細胞である、上記項目(48)に記載の植物細胞。
[0065] (51) 1週間で 50倍以上増殖し得る細胞である、上記項目(50)に記載の植物細胞
[0066] (52)タンパク質の生産方法であって、該方法は、以下の工程:
糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモー ター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター配列と、
該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された該タンパク質コード配列 とを含む核酸分子を、細胞に導入して、形質転換細胞を得る工程;
該形質転換細胞を糖の非存在下で培養して、該タンパク質を分泌させる工程;およ び
該タンパク質を回収する工程
を包含する、方法。
[0067] (53)上記細胞が、植物細胞である、上記項目(52)に記載の方法。
[0068] (54)上記細胞が、双子葉植物細胞である、上記項目(52)に記載の方法。
[0069] (55)上記細胞が、培養細胞である、上記項目(52)に記載の方法。
[0070] (56)上記細胞が、 1週間で 50倍以上増殖し得る細胞である、上記項目(55)に記 載の方法。
[0071] (57)上記核酸分子が、さらにシグナルペプチドコード配列を含む、上記項目(52) に記載の方法。
[0072] (58)上記シグナルペプチドコード配列が、 β—ガラタトシダーゼのシグナルぺプチ ドコード酉己歹 IJ、 β—キシロシダーゼのシグナルペプチドコード配列および β—ダルコシ ダーゼのシグナルペプチドコード配列からなる群より選択される、上記項目(57)に記 載の方法。
[0073] (59)上記シグナルペプチドコード配列が、
(i)配列番号 2の 1位一 27位、配列番号 4の 1位一 28位または配列番号 6の 1位一 28位に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii) (i)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失ま たは付加を含むヌクレオチド配列であって、細胞外分泌活性を有するペプチドをコー ドするヌクレオチド配列;
(iii) (i)または(ii)のヌクレオチド配歹 ijとストリンジェントな条件下でハイブリダィズし 、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配歹 1J ;ならびに
(iv) (i)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド 配列であって、かつ細胞外分泌活性を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列 からなる群より選択され、
該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺 伝子の産物の細胞外分泌がもたらされる、上記項目(57)に記載の方法。
[0074] (60)上記タンパク質が、サイト力インまたはホルモンである、上記項目(52)に記載 の方法。
[0075] (61)上記タンパク質が、植物中で発現された場合に目的の機能を有するタンパク
質である、上記項目(52)に記載の方法。
[0076] (62)上記タンパク質が、インターフェロン、抗体、ヒト α—アンチトリプシンまたは緑 色蛍光タンパク質である、上記項目(52)に記載の方法。
[0077] (63)上記糖が、代謝可能な解糖系糖または代謝されると該解糖系糖になり得る糖 である、上記項目(52)に記載の方法。
[0078] (64)上記糖が、グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロースおよびキシロー スからなる群より選択される、上記項目(52)に記載の方法。
[0079] (65)タンパク質の生産方法であって、該方法は、以下の工程:
糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモー ター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター配列と、
該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された該タンパク質コード配列 とを含む核酸分子を、細胞に導入して、形質転換細胞を得る工程;
該形質転換細胞を糖の存在下で培養する工程;
該形質転換細胞を糖の非存在下で培養して、該タンパク質を分泌させる工程;およ び
該タンパク質を回収する工程
を包含する、方法。
[0080] (66)上記項目(52)に記載の方法によって得られるタンパク質。
[0081] (67)異種遺伝子の糖欠乏誘導性発現のための、上記項目(1)に記載の核酸分子 の使用。
発明の効果
[0082] 本発明により、糖欠乏を制御することによって容易に発現を制御し得る、発現系が 提供される。
[0083] 分泌型 β ガラクトシダーゼ(Gal)をコードする遺伝子のプロモーター配歹 lj、 β—キ シロシダーゼ(Xyl)をコードする遺伝子のプロモーター配列および β ダルコシダー ゼ (Glc)をコードする遺伝子のプロモーター配列は、糖が存在することによって発現 が抑制され、そして糖欠乏によって発現が顕著に誘導されるので、このプロモーター
配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列を含む細胞を糖存在下で培養し、そ して細胞がある程度増殖した時点で培地の糖濃度を下げることによって、異種遺伝 子配列の発現を効率的に誘導し得る。
[0084] 本発明では特に、本発明の核酸分子にシグナルペプチドコード配列をさらに含むと
、異種遺伝子配列によってコードされる産物のより効率的な発現をもたらし得る。
[0085] 本発明を用いることにより、生産性が低いことから開発研究が進展してなレ、インター フエロン、抗体、ワクチンなどの医薬品の植物細胞による生産に関連する産業の活性 化が期待できる。
図面の簡単な説明
[0086] [図 1]図 laは、約 13, 000個のシロイヌナズナ遺伝子について、糖欠乏によるシグナ ル強度の比の変化を示すグラフである。横軸は、 2%スクロース存在下でのシグナル 強度を示し、そして縦軸は、スクロース非存在下でのシグナル強度を示す。図 lbは、 最初にスクリーニングによって得られた 184個のシロイヌナズナ遺伝子について、糖 欠乏によるシグナル強度の比の変化を示すグラフである。横軸は、 1%スクロース存 在下でのシグナル強度を示し、そして縦軸は、スクロース非存在下でのシグナル強度 を示す。
[図 2]図 2は、サブアレイで同定された 9個の遺伝子について RNAゲルプロット分析を 示す写真である。
[図 3]図 3aは、離脱葉にスクロースを供給した場合の、スクロースまたはグルコースの レベルを示すグラフである。各時間において、左側の白棒はスクロース供給条件下で の結果を示し、真ん中の黒棒はスクロース欠乏条件下での結果を示し、そして左端 の白棒は 72時間後に再度スクロースを供給した場合の結果を示す。それぞれ、エラ 一バーも同時に示す。図 3bは、離脱葉中の、誘導された 12個の遺伝子の転写産物 蓄積の時間経過を示す RNAゲルプロット分析を示す写真である。
[図 4]図 4aは、植物全体を遮光した場合の、ロゼット葉における可溶性糖の量を示す グラフを示す。 白棒はスクロースの量を示し、そして黒棒はグノレコースの量を示す。そ れぞれ、エラーバーも同時に示す。図 4bは、植物全体を遮光した場合の、 AtSUG 遺伝子の転写産物を示す RNAゲルプロットの写真である。
[図 5]図 5aは、離脱したロゼット葉の黄化の様子を上の写真に、そして離脱葉中の可 溶性糖の量を下のグラフに示す。 白棒はスクロースの量を示し、そして黒棒はダルコ 一スの量を示す。それぞれ、エラーバーも同時に示す。図 5bは、離脱したロゼット葉 中の AtSUG遺伝子の転写産物を示す RNAゲルプロットの写真である。
[図 6]図 6は、離脱葉からスクロースを 48時間欠乏させ、次いで糖またはアナログを 2 4時間にわたって供給した場合の、 AtSUGの転写産物を示す RNAゲルプロットの 写真である。それぞれ、以下を添加した場合の結果を示す:レーン 1、無処理;レーン 2、糖飢餓(48時間);レーン 3、スクロース(24時間);レーン 4、グルコース(24時間) ;レーン 5、 2—デォキシグルコース(24時間);レーン 6、 3_0_メチルグルコース。
[図 7]図 7は、スクロースの存在および非存在による AtSUGの転写産物を示す RNA ゲルプロットの写真である。
[図 8]図 8は、 β -ガラタトシダーゼ(Galとも記載する)および β -キシ口キダーゼ (Xyl とも記載する)のファミリーの系統樹を示す模式図である。
[図 9]図 9は、スクロース非存在下またはスクロースを 1%含む条件でシロイヌナズナを 成長させた場合の Gal— 1、 Gal— 2、 Gal— 3、 Gal_5および Gal_6、ならびに Xyl— 1、 Xyl— 2および Xyl— 3の RNA量を示す RNAゲルプロットの写真である。
[図 10]図 10は、スクロース非存在下またはスクロースを 1%含む条件でシロイヌナズ ナを成長させた場合の Gal— 1、 Xyl— 1および Glc— 1の RNA量を示す RNAゲルブロ ットの写真である。
[図 11]図 11は、 Gal— 1の遺伝子産物(724アミノ酸)、 Xyl— 1の遺伝子産物(774アミ ノ酸)および Glc— 1の遺伝子産物(577アミノ酸)の構造を比較する模式図である。 園 12]図 12は、培養細胞を利用することの利点を示す模式図である。
[図 13]図 13は、スクロース非存在下またはスクロースを 1%含む条件で培養シロイヌ ナズナ細胞を増殖させた場合の Gal— 1、 Xyl— 1および Glc_lの RNA量を示す RN Aゲルプロットの写真である。
[図 14]図 14は、スクロース非存在下またはスクロースを 1%含む条件で培養シロイヌ ナズナ細胞を増殖させた場合の Gal— 1、 Xyl— 1および Glc— 1の酵素活性を示すダラ フである。
[図 15]図 15は、植物細胞内での糖飢餓による調節の模式図である。
[図 16]図 16は、炭素源として種々の糖を添加した場合の Gal— 1、 Xyl_lおよび Glc—
1の RNA量を示す RNAゲルプロットの写真である。
[図 17a]図 17aは、植物導入用構築物の構築法の一部を示す模式図である。
[図 17b]図 17bは、植物導入用構築物の構築法の一部を示す模式図である。
[図 17c]図 17cは、植物導入用構築物の構築法の一部を示す模式図である。
[図 18]図 18は、 BY— 2細胞において、糖欠乏によって GFPの分泌が誘導されること を示す図である。グラフは、形質転換 BY— 2細胞の増殖を示す。グラフ中の挿入図は
、ウェスタンブロッテイングの結果を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0087] 以下、本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、本明細書において使 用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられる ことが理解されるべきである。
[0088] (1.核酸分子)
1つの実施形態では、本発明の核酸分子は、糖欠乏誘導性プロモーター配列と、 該糖欠乏誘導性プロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列とを含 む。
[0089] 別の実施形態では、本発明の核酸分子はまた、ェキソ型糖分解酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列と、該プロモーター配列に作動可能に連結された異種遺 伝子配列とを含む。
[0090] 別の実施形態では、本発明の核酸分子はまた、代謝可能な糖を分解し得る酵素を コードする遺伝子のプロモーター配列と、該プロモーター配列に作動可能に連結さ れた異種遺伝子配列とを含む。
[0091] 本発明の核酸分子は特に、シグナルペプチドコード配列を含むことが好ましい。シ グナルペプチドコード配列を含むことにより、異種遺伝子配列によってコードされる産 物の細胞外分泌がより効率よく行われる。
[0092] 本明細書において、用語「核酸分子」はまた、核酸、オリゴヌクレオチド、およびポリ ヌクレオチドと互換可能に使用される。核酸分子の例としては、 cDNA、 mRNA、ゲ
ノム DNAなどが挙げられる。本明細書では、核酸および核酸分子は、その核酸およ び核酸分子がタンパク質をコードするときなどは、用語「遺伝子」の概念に含まれる。 ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体」および「スプライス 改変体」を包含する。スプライス変異体とスプライス改変体とは同義である。同様に、 核酸によりコードされる特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコー ドされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は 、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物 は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプラ イスされる場合がある。スプライス変異体の産生機構は変化するが、ェキソンのオルタ ナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリぺ プチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態 のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
本明細書において、糖欠乏誘導性プロモーター配列とは、糖の欠乏によって発現 が誘導されるプロモーター配列をレ、う。糖欠乏誘導性プロモーター配列の例としては 、 β一ガラクトシダーゼ(Gal)をコードする遺伝子のプロモーター配歹 lj、 βーキシロシ ダーゼ(Xyl)をコードする遺伝子のプロモーター配列および β—ダルコシダーゼ(G1 c)をコードする遺伝子のプロモーター配歹 U、ならびに表 1に列挙される糖応答性遺 伝子のプロモーター配列が挙げられる。これらのプロモーター配列は、表 1に記載の 遺伝子 IDの遺伝子をかずさ DNA研究所から入手し、この遺伝子を 5 '末端または 3 ' 末端から少しずつ欠失させて欠失配列を得て、この欠失配列が糖欠乏誘導性プロモ 一ター活性を有するか否かを確認することにより、容易に決定され得る。この欠失配 列が糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するか否かは、例えば、この欠失配列をレ ポーター配列と連結し、ベクターと連結し、このベクターを適切な宿主細胞に導入し、 レポーター配列の発現が見られるか否力、を確認することによって決定され得る。本明 細書中で用いられ得る j3 -ガラクトシダーゼは、好ましくは Gal_lである。本明細書中 で用いられ得る j3—キシロシダーゼの例としては、 Xyl— 1または Xyl_3が挙げられる 力 好ましくは Xyl— 1である。本明細書中で用いられ得る j3—グノレコシダーゼは、好ま しくは Glc— 1である。糖欠乏誘導性プロモーター配列はこれらに限定されず、(b)こ
れらのプロモーター配列のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチド の置換、欠失または付カ卩を含むヌクレオチド配列であって、糖欠乏誘導性プロモータ 一活性を有するヌクレオチド配歹 IJ ; (c) (a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズし、かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌク レオチド配歹 IJ ; (d) (a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有する ヌクレオチド配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチ ド配歹 IJ ;ならびに(e) (a)一 (d)のいずれかのヌクレオチド配列の短縮配列であって、 糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列であってもよい。短縮配列 は、全長未満の配列であって、かつ、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有する最低 限の長さ以上であればよい。短縮配列の最低限の長さは、もとのプロモーター配列を 5'末端または 3'末端力 少しずつ欠失させて短縮配列を得て、この短縮配列が糖 欠乏誘導性プロモーター活性を有するか否かを確認することにより、容易に決定され 得る。短縮配列の長さは、例えば、約 20ヌクレオチド以上全長未満であり得る。短縮 配列の長さは、好ましくは約 30ヌクレオチド以上、約 40ヌクレオチド以上、約 50ヌク レオチド以上、約 60ヌクレオチド以上、約 70ヌクレオチド以上、約 80ヌクレオチド以 上、または約 90ヌクレオチド以上であり得る。短縮配列の長さは、好ましくは約 1200 ヌクレオチド以下、より好ましくは約 1100ヌクレオチド以下、約 1000ヌクレオチド以下 、約 900ヌクレオチド以下、約 800ヌクレオチド、約 700ヌクレオチド以下、約 600ヌク レオチド以下、約 500ヌクレオチド以下、約 400ヌクレオチド以下、約 300ヌクレオチ ド以下、約 200ヌクレオチド以下、または約 100ヌクレオチド以下であり得る。
[0094] 本明細書中で「糖欠乏誘導性プロモーター活性を有する」とは、糖存在条件下での 発現量と比較して、糖欠乏条件下での発現量を多くさせる効果を有することをいう。こ の効果は好ましくは、糖濃度が約 15mM以下のときの発現量力 糖が約 50mM以上 存在する場合の発現量よりも多ぐより好ましくは糖が約 50mM以上存在する場合の 発現量の 2倍以上、 3倍以上、 4倍以上、 5倍以上、 10倍以上、 50倍以上、 100倍以 上であり得る。もちろん、糖欠乏誘導性プロモーター活性は、糖存在条件下で発現さ せず、糖欠乏条件下で発現させる効果を有する場合を含む。
[0095] 本明細書中では、「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始点を決定し、また転写
頻度を直接的に調節する DNA上の領域をいい、 RNAポリメラーゼが結合して転写 を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域 の第 1ェキソンの上流約 2kbp以内の領域であることが多いので、 DNA解析用ソフト ウェアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ 一領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動す るが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流に もあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一ェキソン翻訳開始点から上流 約 2kbp以内に存在する。本明細書中で「プロモーター配列」とは、プロモーター活性 を有する配列を意味する。プロモーター活性とは、 DNA力 RNAを転写させる活性 をいう。したがって、「プロモーター配歹 I とは、その下流(3'側)に DNAを連結して細 胞に導入した場合にその DNAに対応する RNAを合成できる配列をいう。
[0096] 上記の Gal_l、 Xyl_lおよび Glu_lの各遺伝子のプロモーターは、周知のように、 コード領域の上流配列から取得することができる。プロモーター領域の特定は、当該 分野で周知の方法に基づいて実施され得る。簡単に述べると、プロモーター領域の 候補配列およびレポーター遺伝子 (例えば、 GUS遺伝子)を作動可能に連結した発 現カセットを構築する。構築した発現カセットを用いて適切な植物細胞を形質転換し 、形質転換細胞を植物に再生する。形質転換植物におけるレポーター遺伝子の発 現を、適切な検出系(例えば、色素染色)を利用して検出する。検出結果に基づいて 、プロモーター領域およびその発現特性を確認し得る。
[0097] 本発明で用いられる糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型分解酵素をコード する遺伝子のプロモーター配歹 1Jまたは代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列のうちの連続する少なくとも 50個(好ましくは少なくとも 60 個、より好ましくは少なくとも 80個、さらにより好ましくは少なくとも 100個、さらにより好 ましくは少なくとも 150個)のヌクレオチド配列を含む核酸分子は、これらのプロモータ 一配列と同一または類似の活性を有し得る。そのような活性は、ベータダルク口ニダ ーゼ(GUS)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、または GFPの遺伝子をレポーター遺 伝子として使うアツセィ、生化学的あるいは細胞組織学的な検定により確認すること ができる。そのようなアツセィは、当該分野における周知慣用技術に属することから(
Maligaら, Methods in Plant Molecular Biology : A laboratory course. Cold Spring Harbor Laboratory Press " 995) Jefferson, Plant Molec. Biol. Reporter 5 : 387 (1987) ;〇wら, Science 234 : 856 (1986) ; Sheenら, Plant J. 8 : 777—784 (1995) )、当業者は何ら困難を伴わずに、本発明の配列の 連続する少なくとも 10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子が、本発明で用いられる 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型分解酵素をコードする遺伝子のプロモー ター配列または代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 配列と同一または類似のあるいは実質的に同等以上の活性を有することを確認する こと力 Sできる。本明細書では、上記アツセィにおいて、検出誤差範囲内で同じプロモ 一ター活性を有することが判定されたときに実質的に同等以上のプロモーター活性 を有するという。
[0098] 本発明で用いられるプロモーター配列の長さは、通常 10ヌクレオチド以上であるが 、好ましくは、 20ヌクレオチド以上、 30ヌクレオチド以上、 40ヌクレオチド以上、 50ヌ クレオチド以上、 60ヌクレオチド以上、 70ヌクレオチド以上、 80ヌクレオチド以上、 90 ヌクレオチド以上、 100ヌクレオチド以上、 150ヌクレオチド以上、 200ヌクレオチド以 上、 300ヌクレオチド以上の長さであり得る。
[0099] 本発明で用いられるプロモーター配列は、従来のプロモーター配列(例えば、ミニ マムプロモーター(35Sプロモーター由来の約 80塩基対からなるプロモーター(Hatt onら, Plant J. , 7: 859— 876 (1995) ; Rousterら, Plant J. , 15 : 435-440 ( 1998) ;Washidaら, Plant Mol. Biol. , 40 : 1—12 (1999) )など)につなげて禾 lj 用すること力 Sできる。この場合、従来組織特異性を示さないまたは弱い特異性を示す 、あるいは別の特異性を示すプロモーター配列であっても、本発明で用いられるプロ モーター配列またはその断片を付加することまたはそれにより置換することによって、 糖欠乏誘導性を有するプロモーター配列を作製することができる(Hattonら, Plant J. , 7 : 859— 876 (1995) ; Rousterら, Plant J. , 15 : 435-440 (1998); Was hidaら, Plant Mol. Biol. , 40 : 1—12 (1999) )。
[0100] 糖欠乏誘導性プロモーターは、好ましくは糖濃度が約 15mM以下のとき、より好ま しくは約 10mMのとき、さらに好ましくは約 5mM以下のとき、最も好ましくは糖が存在
しない場合に発現が誘導されるプロモーターをいう。本明細書中では、「発現が誘導 される」とは、発現量が増加することおよび糖存在条件下では全く発現しないが糖欠 乏条件下では発現されることの両者を含む意味である。
[0101] 本明細書中では、糖欠乏誘導性プロモーターに作用する糖は、好ましくは、代謝可 能な糖である。 「代謝可能な糖」とは、植物細胞によって取り込まれて分解された場合 に、その少なくとも一部が解糖系に入って代謝され得る糖をいう。代謝可能な糖は、 植物によって代謝され得る糖と交換可能に使用され得る。代謝可能な糖の例として は、糖の最初のリン酸化を介して解糖系によって ATPを生産し得る、単糖および二 糖が挙げられる。単糖の例としては、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトー ス、マルトースおよびァラビノースが挙げられる。二糖の例としては、スクロースが挙げ られる。他のリン酸化され得る糖もまた代謝可能な糖であり得る。マンニトールおよび ソルビトールは最初のリン酸化を介して ATPを生産できず、解糖系に入ることもでき ないので、通常本発明の糖には該当しない。ただし、代謝可能な糖は、本発明が対 象とする生物によって変動し、以下に説明するような方法によって、その生物にとって 特定の糖が代謝可能な糖であることが確認される場合、そのような糖もまた代謝可能 な糖の範囲内にある。
[0102] 代謝可能な糖は、当該分野で周知である。ある特定の糖が代謝可能な糖であるか 否かは、その糖を唯一の炭素源として目的の植物細胞を 1週間ないし 4週間培養し た場合に、その植物細胞の数が増加するか否かを調べ、植物細胞の数が増加したら 、その糖は代謝可能な糖であると決定され得る。植物細胞の数が増加するとは、培養 開始前の細胞数を 100%としたときに、 1週間ないし 4週間培養した後の植物細胞の 数力 好ましくは約 150%以上、より好ましくは約 200%以上、さらに好ましくは約 25 0°/o以上、さらに好ましくは約 300%以上、さらに好ましくは約 400%以上、さらに好 ましくは約 500%以上増加することをいう。
[0103] 本明細書にぉレ、て遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その 遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは 、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態にな ることをいう力 S、転写されて mRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。
より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたもので あり得る。
[0104] 従って、本明細書にぉレ、て遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の 「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が 有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少 を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「 増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が 有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加 を含む。
[0105] 本明細書において使用される用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、および「ペプチド 」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう 。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよぐ環状であってもよレ、。アミノ酸 は、天然のものであっても非天然のものであってもよぐ改変されたアミノ酸であっても よレ、。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この 用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような 改変としては、例えば、ジスルフイド結合形成、グリコシル化、脂質化、ァセチル化、リ ン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この 定義にはまた、例えば、アミノ酸の 1または 2以上のアナログを含むポリペプチド (例え ば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ぺプトイド)および当 該分野にぉレ、て公知の他の改変が包含される。
[0106] 一般に、特定のポリペプチド配列のうちのあるアミノ酸は、そのポリペプチドが有す る生物学的活性の明らかな低下または消失なしに、他のアミノ酸に置換され得る。あ るポリペプチドの生物学的活性を規定するのは、ポリペプチドの相互作用能力およ び性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がそのポリペプチドのアミノ酸配列にお いて、またはそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のレベルにおいて行われ 得、置換後もなお、もとの性質を維持するポリペプチドが生じ得る。従って、生物学的 活性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたポリぺプ チドまたはこのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するヌクレオチドにおい
て行われ得る。
[0107] 本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたは核 酸分子)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性 が包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵 素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応 するレセプターへの結合を包含する。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場 合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制など を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測 定すること力 Sできる。ある因子がプロモーターである場合、その生物学的活性は、標 的となる遺伝子の転写がそのプロモーターに特異的な刺激によって変動(好ましくは 上昇)することを確認することができる。そのような確認は、当該分野において周知の 分子生物学的手法を用いて行うことができる。
[0108] 本明細書中では一般に、ポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換、付カロ、欠 失または修飾を行うことができる。アミノ酸の置換とは、 1つのアミノ酸を別の 1つのアミ ノ酸に置き換えることをいう。アミノ酸の付加とは、もとのアミノ酸配列中のどこかの位 置に、 1つ以上、例えば、 1一 10個、好ましくは 1一 5個、より好ましくは 1一 3個のアミ ノ酸を挿入することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのアミノ酸配列から 1つ以上、例え ば、 1一 10個、好ましくは 1一 5個、より好ましくは 1一 3個のアミノ酸を除去することを いう。アミノ酸修飾の例としては、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、ァ ルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、ァシル化(例えば、ァセチル化)などが挙 げられる力 S、これらに限定されなレ、。置換または付加されるアミノ酸は、天然のァミノ 酸であってもよぐ非天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログであってもよレ、。天然のァ ミノ酸が好ましい。
[0109] 全長ヌクレオチドから一部のヌクレオチドが欠失したヌクレオチドおよび全長ポリべ プチドから一部のアミノ酸が欠失したポリペプチドは、フラグメントとも呼ばれる。本明 細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さが n)に対して、 1一 n— 1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを いう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、そ
の長さの下限としては、ポリペプチドの場合、 3、 4、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15、 20、 25 、 30、 40、 50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない 整数で表される長さ(例えば、 11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌ クレオチドの場合、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15、 20、 25、 30、 40、 50、 75、 100および それ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここに具体的に列挙していない整数で表される 長さ(例えば、 11など)もまた、下限として適切であり得る。
[0110] ポリペプチドは、そのポリペプチド特有の生物学的活性を有する、ポリペプチドアナ ログであってもよレ、。特にそのポリペプチドが酵素である場合、ポリペプチドは、酵素 アナログであってもよい。本明細書において使用される用語「酵素アナログ」とは、天 然の酵素とは異なる化合物である力 天然の酵素と少なくとも 1つの化学的機能また は生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、酵素アナログには、もとの天然 の酵素に対して、 1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含 まれる。酵素アナログは、その機能(例えば、 α -ホスホリラーゼ活性または耐熱性) 、もとの天然の酵素の機能と実質的に同様またはそれよりも良好であるように、この ような付加または置換がされている。そのような酵素アナログは、当該分野において 周知の技術を用いて作製することができる。したがって、酵素アナログは、アミノ酸ァ ナログを含むポリマーであり得る。本明細書において「酵素」は、特に言及しない限り 、この酵素アナログを包含する。
[0111] 本明細書において、「アミノ酸」は、天然のアミノ酸であっても、非天然アミノ酸であ つても、誘導体アミノ酸であっても、アミノ酸アナログであってもよレ、。天然のアミノ酸が 好ましい。
[0112] 用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸の L一異性体を意味する。天然のァミノ 酸は、グリシン、ァラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチォニン、トレオニ ン、フエ二ルァラニン、チロシン、トリプトファン、システィン、プロリン、ヒスチジン、ァス パラギン酸、ァスパラギン、グノレタミン酸、グノレタミン、 7—カルボキシグルタミン酸、ァ ノレギニン、オル二チン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全 てのアミノ酸は L体であるが、 D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にあ る。
[0113] 用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を 意味する。非天然アミノ酸の例として、ノノレロイシン、パラ—ニトロフエ二ルァラニン、ホ モフエ二ルァラニン、パラ—フルオロフェニルァラニン、 3—ァミノ— 2_ベンジルプロピオ ン酸、ホモアルギニンの D体または L体および D—フエ二ルァラニンが挙げられる。
[0114] 「誘導体アミノ酸」とは、アミノ酸を誘導体化することによって得られるアミノ酸をいう。
[0115] 「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および Zまたは機能に 類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、ェチォニン、カナバニン、 2 —メチルグルタミンなどが挙げられる。
[0116] アミノ酸は、その一般に公知の 3文字記号か、または IUPAC—IUB Biochemical
Nomenclature Commissionにより推奨される 1文字記号のいずれかにより、本 明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた 1文字コー ドにより言及され得る。
[0117] 目的の改変に加えて、天然のポリペプチドのアミノ酸配列に対して 1もしくは数個ま たはそれを超える複数のアミノ酸の置換、付加または欠失による改変を含む改変ポリ ペプチドは、本発明の範囲内にある。そのような 1もしくは数個またはそれを超えるァ ミノ酸の置換、付加または欠失を含む改変ポリペプチドは、 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laborator y Press " 989)、 Currerrt Protocols in Molecular Biology, Supplement 1一 38, JohnWiley & Sons (1987— 1997)、 Nucleic Acids Research, 10 , 6487 (1982)、 Proc. Natl. Acad. Sci. , USA, 79, 6409 (1982)、 Gene, 34 , 315 (1985)、 Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、 Proc. Natl. Ac ad. Sci USA, 82, 488 (1985)、 Pro Natl. Acad. Sci., USA, 81 , 5662 (1 984)、 Science, 224, 1431 (1984)、 PCT WO85/00817 (1985)、 Nature, 316, 601 (1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
[0118] 目的のポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、周知技術である部位特 異的変異誘発法により実施することができる。部位特異的変異誘発の手法は、当該 分野では周知である。例えば、 Nucl. Acid Research, Vol. 10, pp. 6487-650 0 (1982)を参照のこと。
[0119] 本明細書において、生物学的活性を有する特定のポリペプチドに関して用いられ るとき「1もしくは数個またはそれを超える複数のアミノ酸の置換、付加または欠失」ま たは「少なくとも 1つのアミノ酸の置換、付加または欠失」とは、この特定のポリべプチ ドが有する生物学的活性のうちの少なくとも 1つの活性が喪失しなレ、、好ましくはその 活性が基準となるもの(例えば、天然のその特定のポリペプチド)と同等以上となるよ うな程度の数の置換、付加または欠失をいう。当業者は、所望の性質を有する改変 ポリペプチドを容易に選択することができる。
[0120] このようにして作製された特定の改変ポリペプチドは、改変前のポリペプチドのアミ ノ酸配列に対して、好ましくは約 40%、より好ましくは約 45%、より好ましくは約 50% 、より好ましくは約 55%、より好ましくは約 60%、より好ましくは約 65%、より好ましくは 約 70ο/ο、より好ましく fま約 750/0、より好ましく ίま約 80ο/ο、より好ましく ίま糸勺 850/0、より 好ましくは約 90%、より好ましくは約 95%、そして最も好ましくは約 99%の同一性を 有する。
[0121] 上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。ポリぺプ チドの生物学的機能に関するアミノ酸の疎水性指数の重要性は、一般に当該分野 で認められている(Kyte. Jおよび Doolittle, R. F. J. Mol. Biol. 157 (1) : 105—1 32, 1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したポリペプチドの二次構造に寄与し、 次いでそのポリペプチドと他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、 DNA、抗体、 抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性 質に基づく疎水性指数を割り当てられる。各アミノ酸に割り当てられた疎水性指数は 以下の通りである:イソロイシン( + 4· 5) ;バリン( + 4· 2) ;ロイシン( + 3· 8) ;フエ二 ルァラニン( + 2. 8);システィン/シスチン( + 2. 5);メチォニン( + 1. 9);ァラニン( + 1. 8);グリシン(—0. 4);スレオニン(—0. 7);セリン(—0. 8);トリプトファン(—0. 9) ;チロシン(_1. 3);プロリン(_1. 6);ヒスチジン(_3. 2);グルタミン酸(_3. 5);グル タミン (_3. 5);ァスパラギン酸 (_3. 5);ァスパラギン (_3. 5);リジン (_3. 9);およ びアルギニン(_4. 5) )。
[0122] あるポリペプチド中のあるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により 置換して、そして依然としてこのポリペプチドと同様の生物学的機能を有するポリぺプ
チド(例えば、酵素活性が等価なポリペプチド)を生じさせ得ることが当該分野で周知 である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が ± 2以内であることが好ましく 、 ± 1以内であることがより好ましぐそして ± 0. 5以内であることがさらにより好ましい 。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において 理解される。
[0123] 本明細書においては、タンパク質の設計および性質の検討の際には、親水性指数 もまた考慮され得る。米国特許第 4, 554, 101号に記載されるように、以下の親水性 指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン( + 3. 0);リジン( + 3. 0);ァ スパラギン酸( + 3. 0± 1);グルタミン酸( + 3. 0± 1);セリン( + 0. 3) ;ァスパラギン ( + 0. 2);グルタミン( + 0. 2);グリシン(0);スレオニン(—0. 4);プロリン(—0. 5 ± 1 );ァラニン(—0. 5);ヒスチジン (—0. 5);システィン (—1. 0);メチォニン (—1. 3);バ リン(一1. 5);ロイシン(一1. 8);ィソロイシン(一1. 8);チロシン(一2. 3);フエニノレアラ ニン (一 2· 5);およびトリプトファン (一 3· 4)。あるポリペプチド中のあるアミノ酸力 こ のアミノ酸と同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的活性を与え得る別の アミノ酸に置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指 数が ± 2以内であることが好ましぐ ± 1以内であることがより好ましぐそして ± 0· 5 以内であることがさらにより好ましい。
[0124] 本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換さ れるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似してレ、る 置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、土 2以内のもの同士、好ましくは ± 1以内のもの同士、より好ましくは ± 0. 5以内のもの 同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業 者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;ダル タミン酸およびァスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびァスパラギン ;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定され ない。
[0125] 本発明の糖欠乏誘導性プロモーター配列は、好ましくは、 j3—ガラクトシダーゼ(Ga 1)をコードする遺伝子のプロモーター配歹 IJ、 β—キシロシダーゼ(Xyl)をコードする遺
伝子のプロモーター配列および β ダルコシダーゼ(Glc)をコードする遺伝子のプロ モーター配列からなる群より選択され、より好ましくは β ガラクトシダーゼをコードす る遺伝子のプロモーター配列または βーキシロシダーゼをコードする遺伝子のプロモ 一ター配列である。本発明の糖欠乏誘導性プロモーター配列は、好ましくは、(a)配 列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位または配列番号 5の 1位 一 2058位に示されるヌクレオチド配歹 1J ; (b) (a)のヌクレオチド配列と比較して、 1もし くは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、糖 欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配歹' J; (c) (a)または (b)のヌクレ ォチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、かつ糖欠乏誘導性プロモ 一ター活性を有するヌクレオチド配歹 IJ ; (d) (a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモーター 活性を有するヌクレオチド配列;ならびに(e) (a)一 (d)のレ、ずれかのヌクレオチド配 列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列 からなる群より選択され、該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配列が 連結されると、該異種遺伝子の糖欠乏誘導性発現を促進する活性を有する。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「 核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリ マーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオ チド」を含む。 「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌク レオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌク レオチドもしくはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌタレ ォチドとして具体的には、例えば、 2,一 O—メチルーリボヌクレオチド、オリゴヌクレオチ ド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチォエート結合に変換された誘導体オリゴヌ クレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合が N3 ' _P5,ホスホロアミデ ート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリ ン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のゥラシルが C—5プロピニルゥラシルで置換された誘導体オリゴ ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のゥラシルが C—5チアゾールゥラシルで置換され
た誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンが C_5プロピニルシトシ ンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフエノキ サジン修飾シトシン(phenoxazine—modif ied cytosine)で置換された誘導体オリ ゴヌクレオチド、 DNA中のリボースが 2,_0_プロピルリボースで置換された誘導体ォ リゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが 2,_メトキシェトキシリボース で置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示され なければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に 改変された改変体 (例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが意 図される。具体的には、縮重コドン置換体は、 1もしくは数個、またはより多数の選択 されたほたは、すべての)コドンの 3番目の位置が混合塩基および Zまたはデォキシ イノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、 Nucle ic Acid Res. 19 : 5081 (1991) ; Ohtsukaら、 J. Biol. Chem. 260 : 2605-260 8 (1985); Rossoliniら、 Mol. Cell. Probes 8 : 91—98 (1994) )。
本明細書において、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列の「置換、欠失または 付加」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もし くはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物力 置き換わること、取り除か れることまたは付け加わることをいう。このような置換、欠失または付加の技術は、当 該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技 術などが挙げられる。置換、欠失または付加は、 1つ以上であれば任意の数でよぐ そのような数は、その置換、欠失または付加を有する改変体において目的とする機 能 (例えば、糖欠乏誘導性プロモーターの糖欠乏誘導性およびプロモーター活性、 異種遺伝子配列の場合、所望のタンパク質活性など)が保持される限り、多くすること ができる。例えば、そのような数は、 1または数個であり得、そして好ましくは、全体の 長さの 20%以内、 10%以内、または 100個以下、 50個以下、 25個以下などであり 得る。本発明で用いられる糖欠乏誘導性プロモーター配列は、糖欠乏誘導性プロモ 一ター活性を保持する限り、任意の長さであり得る。このような配列は、例えば、もと のプロモーター配列のヌクレオチド配列を 5 '側または 3 '側力、ら少しずつ欠失させ、 糖欠乏誘導プロモーター活性を保持しているかを確認することにより、容易に決定さ
れ得る。このようなプロモーター配列を短縮させる方法は、当業者に周知であり、容 易に実施され得る。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの 物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改 変体、付加改変体、欠失改変体、短縮 (truncated)改変体、対立遺伝子変異体、グ リコシル化改変体、脂質化改変体、複合分子による改変体などが挙げられる。好まし くは、改変体は、改変のもととなる物質 (例えば、酵素)の特性 (例えば、生物学的特 性)を少なくとも 1つ、より好ましくは複数保持している。などが挙げられる。対立遺伝 子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう 。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある 改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同 一または非常に類似性の高い配歹 ljを有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有す る力 まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ (ho molog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベル で、相同性 (好ましくは、 60%以上の相同性、より好ましくは、 80%以上、 85%以上、 90%以上、 95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する 方法は、当該分野で周知である。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子 (orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来 する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを 例にとると、ヒトおよびマウスの αヘモグロビン遺伝子はオルソログである力 ヒトの α ヘモグロビン遺伝子および βヘモグロビン遺伝子はパラログ (遺伝子重複で生じた遺 伝子)である。また、システィンプロテアーゼインヒビターである、ヒトのシスタチン Αと、 イネのオリザシスタチンとを比較すると、標的となるプロテアーゼとの相互作用に重要 と考えられる 3箇所の短いアミノ酸モチーフが保存されているだけで、他の部分のアミ ノ酸の共通性は非常に低レ、。しかし、両者はともにシスタチン遺伝子スーパーファミリ 一に属し、共通祖先遺伝子を持つとされていることから、単に全体的なアミノ酸の相 同性に限らず、局所的に高い相同性を持つアミノ酸配列が共通して存在する場合も 、オノレソログたり得る。このように、オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様
の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明において用いられる糖欠乏誘 導性プロモーター、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモー タ一のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
「保存的(に改変された)改変体」は、ポリペプチド配列およびヌクレオチド配列の両 方に適用される。特定のヌクレオチド配列に関して、保存的に改変された改変体とは 、同一のまたは本質的に同一のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列をレ、う 。アンチセンスコード配列のように、ヌクレオチド配列がポリペプチド配列をコードしな い場合には、保存的に改変された改変体とは、本質的に同一な配列をいう。遺伝コ 一ドの縮重のため、多数の機能的に同一なヌクレオチド配列が任意の所定のポリべ プチドをコードする。例えば、コドン GCA、 GCC、 GCG、および GCT (GCU)はすべ て、アミノ酸ァラニンをコードする。したがって、ァラニンがコドンにより特定される全て の位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなぐ記載された対 応するコドンの任意のものに変更され得る。このようなヌクレオチド配列の変動は、保 存的に改変された変異の 1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリべプチ ドをコードする本明細書中のすべてのヌクレオチド配列はまた、そのヌクレオチド配列 の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、ヌクレオチド配列 中の各コドン(通常メチォニンのための唯一のコドンである ATG (AUG)、および通 常トリブトファンのための唯一のコドンである TGGを除く)力 機能的に同一な分子を 産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードす るヌクレオチド配列の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれ る。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるァ ミノ酸であるシスティンの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改 変法としては、制限酵素などによる切断、 DNAポリメラーゼ、 Klenowフラグメント、 D NAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用 いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法; Mark Zoller and Mic hael Smith, Methods in Enzymology, 100, 468— 500 (1983) )力 S挙げられ るが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うことも できる。
[0130] シグナルペプチドコード配列および異種遺伝子配列は、導入される生物におけるコ ドンの使用頻度にあわせて変更され得る。コドン使用頻度は、その生物において高 度に発現される遺伝子での使用頻度を反映する。例えば、大腸菌において発現させ ることを意図する場合、公開されたコドン使用頻度表(例えば、 Sharpら, Nucleic Acids Research 16 第 17号, 8207頁(1988) )に従って大募菌での発現のた めに最適にすることができる。
[0131] 本明細書にぉレ、てヌクレオチド配列ほたはポリペプチド酉己列)の「同一性」とは、 2 以上のヌクレオチド配列ほたはポリペプチド酉己列)の間で同一のヌクレオチド(ポリべ プチド配列を比較する場合はアミノ酸)の出現する程度をいう。同一性は一般に、 2 以上のヌクレオチド配列ほたはポリペプチド酸配歹 IJ)の全長を比較して、付加または 欠失を含み得る最適な様式で整列(ァライン)されたこれら 2以上の配列を比較するこ とによって決定される。同一性パーセントは、ヌクレオチド(ポリペプチド配列を比較す る場合はアミノ酸)がこの 2以上の配列間で同一である位置の数を決定し、比較した 位置の総数で同一の位置の数を除算し、そしてこれら 2つの配列間の同一性パーセ ントを得るために、得られた結果に 100を掛けることによって算出される。 2以上の遺 伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間で DNA配列が、代表的には少 なくとも 50%同一である場合、好ましくは少なくとも 70%同一である場合、より好ましく は少ヽなくとも 80%、 90%、 95%、 96%、 97%、 98%または 99%同一である場合、そ れらの遺伝子は同一性を有する。
[0132] 本明細書にぉレ、て、ヌクレオチド配列ほたはポリペプチド配歹 1J)の「類似性」とは、 上記同一性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、 2以上のヌ クレオチド配列(またはポリペプチド配歹 1J)の、互いに対する同一性の程度をいう。従 つて、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性と は異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
[0133] 同一性0 /0は例えば、 NCBIの BLAST 2. 2. 9 (2004. 5. 12発行)を用レヽて決定 すること力 Sできる。本明細書における同一性の値は通常は上記 BLASTを用レ、、デフ オルトの条件でァラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高 い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価さ
れる場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
[0134] 2以上のヌクレオチド配列の同一性または類似性の程度に関しては、配列の直接 比較以外にも、ストリンジェントな条件下でのハイブリダィゼーシヨンを調べることによ つて確認され得る。
[0135] 本明細書中で使用する用語「ストリンジェントな条件」とは、特異的な配列にはハイ ブリダィズするが、非特異的な配列にはハイブリダィズしない条件をいう。ストリンジェ ントな条件の設定は、当業者に周知であり、例えば、 Moleculer Cloning (Sambro okら、前出)に記載される。具体的には、例えば、コロニーあるいはプラーク由来の D NAを固定化したフィルターを用いて、 50%ホノレムアミド、 5 X SSC (750mM NaCl 、 75mM クェン酸三ナトリウム)、 50mM リン酸ナトリウム(pH7. 6)、 5 Xデンハル ト溶液(0. 2% BSA、 0. 2% Ficoll 400および 0. 2%ポリビニノレピロリドン)、 10 %硫酸デキストラン、および 20 μ gZml変性剪断サケ*** DNAを含む溶液中での 65°Cで 6時間ないし 24時間ハイブリダィゼーシヨンを行った後、 0. 1— 2倍濃度の S SC (saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度の SSC溶液の組成は、 150mM 塩 ィ匕ナトリウム、 15mM クェン酸ナトリウムである)を用い、 65°C条件下でフィルターを 洗浄するという条件を用いることにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。
[0136] 本明細書において、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列 とは、ェキソ型糖分解酵素遺伝子が有するプロモーター配列をいう。
[0137] 本明細書において、「ェキソ型糖分解酵素」とは、糖鎖の末端部分に作用して、末 端の糖残基を逐次遊離する酵素をいう。ェキソ型糖分解酵素の例としては、以下が 挙げられるがこれらに限定されなレ、: i3—ガラクトシダーゼ、 ーキシロシダーゼ、 β— ダルコシダーゼ、 ひ—キシロシダーゼおよび /3—フコシダーゼ。本発明では、このよう な酵素をコードするヌクレオチド配列の上流のヌクレオチド配列であって、 目的の生 物においてプロモーターの活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列で あ使用すること力 Sでさる。
[0138] 本発明のェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列は、好ましく は、 j3—ガラクトシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列、 β—キシロシダー ゼをコードする遺伝子のプロモーター配列および /3—ダルコシダーゼをコードする遺
伝子のプロモーター配列からなる群より選択され、より好ましくは β一ガラクトシダーゼ をコードする遺伝子のプロモーター配歹 IJ、 βーキシロシダーゼをコードする遺伝子の プロモーター配列である。本発明の糖欠乏誘導性プロモーター配列は、好ましくは、 (a)配列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位または配列番号 5 の 1位一 2058位に示されるヌクレオチド酉己列; (b) (a)のヌクレオチド配列と比較して 、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であ つて、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配歹 (c) (a)または (b) のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、かつ糖欠乏誘導性 プロモーター活性を有するヌクレオチド配歹 (d) (a)のヌクレオチド配列に対して少 なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつ糖欠乏誘導性プロモ 一ター活性を有するヌクレオチド配列;ならびに(e) (a)一 (d)のレ、ずれかのヌクレオ チド配列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチ ド配列からなる群より選択され、該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異種遺伝子配 列が連結されると、該異種遺伝子の糖欠乏誘導性発現を促進する活性を有する。
[0139] 本明細書において、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモ 一ター配列とは、代謝可能な糖を加水分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモ 一ター配列をいう。本明細書において、「代謝可能な糖を分解し得る酵素」とは、上 記のような、代謝可能な糖を分解し得る酵素である。このような酵素の例としては、以 下が挙げられるがこれらに限定されない: _ガラクトシダーゼ、 _キシロシダーゼ、 _ダルコシダーゼ、 ひーキシロシダーゼおよび _フコシダーゼ。本発明では、この ような酵素をコードするヌクレオチド配列の上流のヌクレオチド配列であって、 目的の 生物においてプロモーターの活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列 であ使用すること力 Sできる。
[0140] 本発明の代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列 は、好ましくは、 j3 _ガラクトシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列、 β—キ シロシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列および β—ダルコシダーゼをコ ードする遺伝子のプロモーター配列からなる群より選択され、より好ましくは β一ガラク トシダーゼをコードする遺伝子のプロモーター配列または β—キシロシダーゼをコード
する遺伝子のプロモーター配列である。本発明の糖欠乏誘導性プロモーター配列は
、好ましくは、 (a)配列番号 1の 643位一 1799位、配列番号 3の 1位一 1763位また は配列番号 5の 1位一 2058位に示されるヌクレオチド配歹 IJ ; (b) (a)のヌクレオチド配 歹 IJと比較して、 1もしくは数個のヌクレオチドの置換、欠失または付加を含むヌクレオ チド配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配歹' J; (c) ( a)または(b)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、かつ 糖欠乏誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配歹 IJ ; (d) (a)のヌクレオチド配 列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつ糖欠乏 誘導性プロモーター活性を有するヌクレオチド配列ならびに(e) (a)一 (d)のいずれ かのヌクレオチド配列の短縮配列であって、糖欠乏誘導性プロモーター活性を有す るヌクレオチド配列からなる群より選択され、該ヌクレオチド配列に作動可能に上記異 種遺伝子配列が連結されると、該異種遺伝子の糖欠乏誘導性発現を促進する活性 を有する。
[0141] 本発明で糖欠乏誘導性プロモーター、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子の プロモーター配歹 ljまたは代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列に加えて、他のプロモーターを併用してもよレ、。このような用いられ得る 他のプロモーターの例としては、 CaMV35Sプロモーター、ノパリンシンターゼプロモ 一ター、ュビキチンプロモーターなど、およびそれらの改変プロモーターが挙げられ るがこれらに限定されない。本発明では、 目的の生物においてプロモーターの活性 を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列でも使用することができる。このよう な他のプロモーターは、部位特異的プロモーターであっても、時期特異的プロモータ 一であっても、構成的プロモーターであっても、ストレスほたは刺激)応答性プロモー ターであっても、ストレスほたは刺激)誘導性プロモーターであっても、ストレスほた は刺激)減少性プロモーターであってもよレ、。構成的プロモーターの例としては、 Ca MV35Sプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーターおよびュビキチンプロモータ 一が挙げられる。特異的プロモーターの例としては、組織特異的プロモーターおよび 器官特異的プロモーターが挙げられる。
[0142] 本発明において、糖欠乏誘導性プロモーター、ェキソ型糖分解酵素をコードする
遺伝子のプロモーター配列または代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝 子のプロモーター配列に連結される異種遺伝子配列は、連結されるプロモーター配 列に対して異種のヌクレオチド配列であれば、任意のヌクレオチド配列であり得る。異 種遺伝子配列は、例えば、タンパク質コード配歹 ij、アンチセンスコード配歹 ij、リボザィ ムコード配列、解析を目的とするヌクレオチド配列などであり得る。異種遺伝子配列 は好ましくは、タンパク質コード配列またはアンチセンスコード配列であり得る。異種 遺伝子配列は、天然に存在するヌクレオチド配列であってもよぐ天然に存在するヌ クレオチド配列を改変したものであってもよぐ人工的に合成した遺伝子であってもよ ぐそれらの複合体 (例えば、融合体)であってもよい。
[0143] 本明細書中では「作動可能に連結される(た)」とは、所望のヌクレオチド配列(例え ば、異種遺伝子配列)が、発現 (すなわち、作動)をもたらす転写調節配列 (例えば、 プロモーター、ターミネータ一、ェンハンサーなど)または翻訳調節配列(例えば、ィ ントロン、スプライスドナー、スプライスァクセプターなど)の制御下に配置されることを いう。例えば、プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その 遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必 要はない。
[0144] 人工的に合成したヌクレオチド配列を作製するための DNA合成技術および核酸 化学については、例えば、 Gait, M. J. (1985) . Oligonucleotide Synthesis : A Practical Approach, IRLPress ; Gait, M. J. (1990) . Oligonucleotide Sy nthesis : A Practical Approach, IRL Press ; Eckstein, F. (1991) . Oligon ucleotides and Analogues : A Practical Approac, IRL Press ; Adams, R . L. etal. (1992) . The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman &Hall ; Shabarova, Z. et al. (1994) . Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G. M. et al. (1996) . Nucleic Aci ds in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G. T. (1996) . Bioconjugate Techniques, Academic Pressなど ίこ目己載され ており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
[0145] 本明細書中の異種遺伝子配列は、 目的の生物において発現し得るものであれば、
どのようなものでもよレ、。例えば、特定の植物において発現させることを目的とするの であれば、その特定の植物にぉレ、て発現し得るのであればょレ、。
1つの実施形態において、異種遺伝子配列は、タンパク質コード配列である。タン パク質コード配列は、大量に発現されることが意図される有用なタンパク質をコードす るものであれば、どのようなものでもよぐそのようなものもまた、本発明の範囲内に含 まれる。タンパク質コード配列の例としては、例えば、以下が挙げられるがこれらに限 定されなレ、:医薬活性のあるペプチド(例えば、サイト力イン類 (インターフェロン類、ィ ンターロイキン類、ケモカイン類、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM—CS F)、マクロファージコロニー刺激因子(M—CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G—CS F)、 multi-CSF (IL-3)、エリスロポエチン(EP〇)、白血病抑制因子(LIF)、 c-kit リガンド(SCF)のような造血因子、腫瘍壊死因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、 上皮増殖因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF)、肝実質細胞増殖因子 (HGF )、血管内皮増殖因子 (VEGF)など);ホルモン類 (インスリン、成長ホルモン、甲状 腺ホルモンなど));ワクチン抗原;抗原 (例えば、ヒト抗体 (好ましくは完全ヒト抗体)、ヒ ト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、 Fabフラグメント、 F (ab' )フラグ メント、 Fab発現ライブラリーによって産生されたフラグメント、抗イディォタイプ (抗 Id) 抗体、ェピトープ結合フラグメント);血液製剤;農業生産上有用なペプチド (例えば、 抗菌タンパク質);生理作用または薬理作用を持つ 2次代謝産物を合成する様々な 酵素および加水分解酵素;酵素反応を調節するインヒビター;血圧効果作用を持つと されるダイズグリシニン;あるいは消化管内で酵素分解を受けることで生理活性ぺプ チドが切り出されるようにデザインされた人工タンパク質。また栄養学的に意義のある 物質としては、カゼイン、マメ類のアルブミンおよびグロブリン、ビタミン類の合成酵素 、糖合成酵素、脂質合成酵素などがあげられるがそれらに限定されない。さらに様々 な加ェ食品の原料としてカ卩ェ特性に関与するタンパク質として、例えばコムギグルテ ニン (製パン)、ダイズグロブリン群(豆腐)、ミルクカゼイン群(チーズ)などが挙げられ る。食品の嗜好性または機能性を強化するタンパク質 (例えば、シクロデキストリン、 オリゴ糖、 Ύァミノ酢酸などの特殊な糖またはアミノ酸類の合成酵素群、外観を良くす る色素合成酵素、および味覚成分合成に関与するタンパク質群)、あるいは、消化管
内で酵素消化を受けることによって生理作用をもつペプチド (例えば血圧効果作用を もつ、アンジォテンシン変換酵素阻害ペプチドなど)が切り出されるようにデザインさ れた人工タンパク質などが挙げられるがこれらに限定されなレ、。異種遺伝子配列は、 好ましくは、サイト力インまたはホルモンの遺伝子配列である。異種遺伝子配列は、よ り好ましくは、植物中で発現された場合に目的の機能を有するタンパク質をコードす る。本明細書中で、「植物中で発現された場合に目的の機能を有するタンパク質」と は、植物中で発現された遺伝子産物が、動物中、植物中またはインビト口において、 目的とする機能を果たすことをいう。例えば、植物中で発現された遺伝子産物の糖鎖 修飾が、動物において発現された場合と同じであるカ またはインビトロで、もしくは 動物に投与された場合に、 目的とする機能を果たすこと、または有害な作用を発揮し ないことをいう。 目的とする機能とは、そのタンパク質が、従来の方法で製造された場 合に発揮される機能をいう。例えば、異種遺伝子配列が、抗体をコードする場合、こ の抗体は、動物中に投与した場合に防御抗体として (すなわち、治療薬または予防 薬として)機能してもよぐあるいは、インビト口で特異的な抗原に結合してもよい(すな わち、診断薬として機能してもよい)。異種遺伝子配列は、さらに好ましくは、インター フエロン(α、 ;3または γ )、抗体、ヒト α—アンチトリプシン (ΑΑΤ)または緑色蛍光タ ンパク質 (GFP)の遺伝子配列であり、さらに好ましくは抗体または緑色蛍光タンパク 質であり、最も好ましくは緑色蛍光タンパク質である。
[0147] 1つの実施形態において、異種遺伝子配列は、マーカー遺伝子であり得る。マーカ 一遺伝子とは、選択遺伝子と同義であり、その選択マーカーがコードする産物の発 現によつて、選択マーカーが存在する細胞と存在しない細胞とを識別することができ る、ヌクレオチドをいう。
[0148] 1つの実施形態において、異種遺伝子配列は、アンチセンスコード配列であり得る 。アンチセンスコード配列は、発現を抑制または阻止することが意図される特定の遺 伝子のアンチセンス配列をコードし、かつ、アンチセンス活性を有するものであれば、 どのようなものでもよぐそのようなものもまた、本発明の範囲内に含まれる。アンチセ ンス配列とは、コード配列(センス配列ともいう)に相補的な配列をいう。
[0149] 本明細書において「アンチセンス活性」とは、標的となる遺伝子の発現を特異的に
抑制または減少させることができる活性をいう。より具体的には細胞内に導入したある ヌクレオチド配列に依存して、その配列と相補的なヌクレオチド配列領域をもつ遺伝 子の mRNA量を特異的に低下させることで、タンパク発現量を減少させ得る活性を いう。手法としては、標的となる遺伝子からつくられる mRNAに相補的な RNA分子を 直接的に細胞に導入する方法と、細胞内に目的遺伝子と相補的な RNAを発現させ 得る構築ベクターを導入する方法に大別される。植物においては、後者が一般的で ある。
[0150] アンチセンス活性は、通常、発現を抑制または阻止することが意図される遺伝子の コード配列と相補的な、少なくとも約 8ヌクレオチド長のヌクレオチド配列によって達成 される。アンチセンスコード配列は、好ましくは少なくとも約 9ヌクレオチド長であり、よ り好ましく約 10ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約 11ヌクレオチド長であり、さら に好ましくは約 12ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約 13ヌクレオチド長であり、 さらに好ましくは約 14ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約 15ヌクレオチド長であ り、さらに好ましくは約 20ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約 25ヌクレオチド長 であり、さらに好ましくは約 30ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは約 40ヌクレオチ ド長であり、さらに好ましくは約 50ヌクレオチド長であり得る。好ましくは、 目的とする 遺伝子のコード配列と相補的な配列は、アンチセンスコード配列中にとびとびに存在 するのではなぐ連続して存在する。
[0151] 本明細書において、ヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の長さは、それぞれ ヌクレオチドまたはアミノ酸の個数で表すことができる力 上述の個数は絶対的なもの ではなぐ同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数 の上下数個(または例えば上下 10%)のものも含むことが意図される。そのような意 図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。 しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理 角军されるべきである。
[0152] アンチセンスコード配列は、発現を抑制または阻止することが意図される遺伝子の アンチセンス鎖(コード鎖の相補鎖)の配列に対して、好ましくは少なくとも約 70%同 一な、より好ましくは少なくとも約 80%同一な、さらに好ましくは約 90%同一な、そし
て最も好ましくは約 95%同一なヌクレオチド配列を含む。アンチセンスコード配列は 、 目的とする遺伝子の核酸配列の 5 '末端の配列に対して相補的であることが好まし レ、。上述のようなアンチセンスコード配列に対して、 1つまたは数個あるいは 1つ以上 のヌクレオチドの置換、付カ卩および/または欠失を有するものもまた、アンチセンスコ ード配列に含まれる。本明細書において、「アンチセンス活性」には、遺伝子の発現 量の減少が含まれるがそれらに限定されない。
一般的なアンチセンス技術については、教科書に記載されている(Murray, J AH eds. , Antisense RNA and DNA, Wiley-Liss Inc, 1992)。さらに最新の 研究で RNA干渉(RNA interference ;RNAi)と呼ばれる現象が明らかになり、ァ ンチセンス技術の発展をもたらした。 RNAiは、標的遺伝子に相同な配列をもつ短い 長さの 2本鎖 RNA (20ベース程度)を細胞内に導入すると、その RNA配列に相同な 標的遺伝子の mRNAが特異的に分解されて発現レベルが低下する現象である。当 初線虫において発見されたこの現象は、植物を含めて生物に普遍的な現象であるこ とがわかってきている。アンチセンス技術で標的遺伝子の発現が抑制される分子レべ ルのメカニズムは、この RNAiと同様のプロセスを経ることが解明された。従来のアン チセンス技術では、標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的である 1つの DNA配列 を適切なプロモーターに連結して、その制御下に人工 mRNAを発現させるような発 現ベクターを構築して、細胞内に導入することが行われた。 RNAiを利用した最近の アンチセンス技術においては、細胞内に 2本鎖 RNAを構成できるようにデザインされ た発現ベクターが用いられる場合が多い。 RNAiを利用したアンチセンス技術では、 アンチセンスコード配列の基本構造は、ある標的遺伝子に相補的な 1種の DNA配列 をプロモーター下に 1つを連結し、それと同じ物をさらに逆向きにもう 1つ連結してつく られる。この基本構造を有するアンチセンスコード配列から転写された 1本鎖の mRN Aでは、逆向きにつながれた 1種類のヌクレオチド配列部分が相補的な関係にあるた め、この相補的な部分が対合してヘアピン様の 2次構造を持つ 2本鎖 RNA状態をと り、これが RNAiのメカニズムに従って標的遺伝子の mRNA分解を引き起こすわけで ある。植物においてはシロイヌナズナで用いられた例が報告されている(Smith, N. A.ら, Nature 407. 319—320, 2000)。また RNAi全般 (こつレヽて fま、最近の糸忿説
にまとめられている(森田と吉田、蛋白質 '核酸'酵素 47、 1939— 1945、 2002)。こ れらの文献に記載された内容は、本明細書おいてその全体を参考として援用する。
[0154] 本明細書において「RNAi」とは、 RNA interferenceの略称で、二本鎖 RNA (ds RNAともいう)のような RNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同な mRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用 レ、られる技術をいう。本明細書において RNAiはまた、場合によっては、 RNAiを引き 起こす因子と同義に用いられ得る。
[0155] 本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、 RNAiを引き起こすことができる ような任意の因子をレ、う。本明細書にぉレ、て「遺伝子」に対して「RNAiを弓 Iき起こす 因子」とは、その遺伝子に関する RNAiを引き起こし、 RNAiがもたらす効果 (例えば 、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのような RNAiを引き起こ す因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約 70% の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダィズする配列を含 む、少なくとも 10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含む RNAまたはその改変体を構成 できるようにデザインされた発現ベクターが挙げられるがそれに限定されない。
[0156] 異種遺伝子配列としては、天然に存在するタンパク質コード配列、天然に存在する アンチセンスコード配歹 IJ、天然に存在するリボザィムコード配列などのいずれかと同 一性のある配列が使用され得る。そのような同一性を有するヌクレオチド配列としては 、例えば、 Blastのデフォルトパラメータを用いて比較した場合に、比較対照のヌクレ 才チド酉己歹 1Jに対して、少ヽなくとち約 30%、約 35%、約 40%、約 45%、約 50%、約 55 %、約 60%、約 65%、約 70%、約 75%、約 80%、約 85%、約 90%、約 95%、約 9 9%の同一性または類似性を有するヌクレオチド配歹 1J、または比較対照のヌクレオチ ド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約 30%、約 35%、約 40 %、約 45%、約 50%、約 55%、約 60%、約 65%、約 70%、約 75%、約 80%、約 8 5%、約 90%、約 95%、約 99%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列をコー ドするヌクレオチド配列が挙げられるがそれらに限定されない。
[0157] 異種遺伝子配列は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコー ドする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードす
る遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター 配列に対して異種の配列である。異種遺伝子配列は好ましくは、シグナル配列コード 配列に対しても異種である。 2つの配列に関して「異種」とは、これらの 2つの配列が、 異なる遺伝子に由来する力 または異なる種に由来することをいう。異種との用語は 、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモー ター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター配列と異種遺伝子 配列との関係、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝 子のプロモーター配列力 なる群力 選択される少なくとも 1つのプロモーター配列と 他の調節配列との間の関係、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素 をコードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコ ードする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモ 一ター配列とシグナルコード配列との関係、本発明で用いられるプロモーター配列以 外の複数の調節配列間の関係、調節配列と異種遺伝子配列との関係との関係など に適用される。例えば、シロイヌナズナの糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型 糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得 る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1 つのプロモーター配列は、シロイヌナズナのァクチン遺伝子に対して異種である。同 様に、シロイヌナズナの糖欠乏誘導性プロモーター配歹 lj、ェキソ型糖分解酵素をコ ードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコード する遺伝子のプロモーター配列からなる群力、ら選択される少なくとも 1つのプロモータ 一配列は、ヒトのインターフェロン遺伝子に対して異種である。異種遺伝子配列が異 種生物に由来する場合、外来遺伝子とも呼ばれる。この場合において、「外来遺伝 子」とは、ある生物において、その生物には天然には存在しない遺伝子をいう。
本発明の核酸は、糖欠乏誘導性プロモーター、ェキソ型糖分解酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列または代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝 子のプロモーター配列に加えて、さらにシグナルペプチドコード配列を含み得る。
[0159] 本明細書中では、「シグナルペプチドコード配歹 lj」とは、シグナルペプチドをコード するヌクレオチド配列をいう。本明細書中では、「シグナルペプチド」とは、主に疎水 性アミノ酸残基を含む、新生ポリペプチド鎖の小胞体膜への付着および膜通過に役 立つアミノ酸配列をいう。シグナルペプチドの長さは、好ましくは、約 10 約 50であり 、より好ましくは約 13—約 40であり、より好ましくは約 15 約 30である。特定のァミノ 酸配列中にシグナルペプチドが含まれるか否かは、当該分野で周知の方法に従つ て決定され得るが、好ましくは、 Kyte. Jおよび Doolittle, R. F. J. Mol. Biol. 157 (1) : 105-132, 1982に記載の方法に従って疎水性指数の分析を行レ、、 N末端の 約 10アミノ酸一約 50アミノ酸が疎水性である場合、この疎水性アミノ酸部分は、シグ ナルペプチドペプチドであると判断され得る。シグナルペプチドは、シグナルぺプチ ダーゼによって分解され得る配列を有することが好ましい。
[0160] シグナルペプチドコード配列は、そのシグナルペプチドに結合してレ、るポリペプチド の細胞外への分泌をもたらすシグナルペプチドをコードするのであれば、任意のヌク レオチド配列であり得る。シグナルペプチドコード配列の例としては、 β ガラクトシダ 一ゼのシグナ/レペプチドコード配列、 βーキシロシダーゼのシグナノレペプチドコード 配列および β ダルコシダーゼのシグナルペプチドコード配列が挙げられる。シグナ ルペプチドコード配列は、糖欠乏誘導性プロモーター、ェキソ型糖分解酵素をコード する遺伝子のプロモーター配歹 1Jまたは代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列に対して同種であっても、異種であってもよい。
[0161] シグナルペプチドコード配列は好ましくは、 (i)配列番号 2の 1位一 27位、配列番号
4の 1位一 28位または配列番号 6の 1位一 28位に示されるアミノ酸配列をコードする ヌクレオチド配歹 1J ; (ii) (i)のヌクレオチド配列と比較して、 1もしくは数個のヌクレオチ ドの置換、欠失または付加を含むヌクレオチド配列であって、細胞外分泌活性を有 するペプチドをコードするヌクレオチド酉己列; (iii) (i)または(ii)のヌクレオチド配列と ストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、かつ細胞外分泌活性を有するペプチド をコードするヌクレオチド配列;ならびに(iv) (i)のヌクレオチド配列に対して少なくとも 70%の同一性を有するヌクレオチド配列であって、かつ細胞外分泌活性を有するぺ プチドをコードするヌクレオチド配列からなる群より選択され、該ヌクレオチド配列に作
動可能に上記異種遺伝子配列が連結されると、該異種遺伝子の産物の細胞外分泌 力あたらされる。
[0162] 本発明の核酸は、糖欠乏誘導性プロモーター、ェキソ型糖分解酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列または代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝 子のプロモーター配列に加えて、さらに調節エレメントを含み得る。本明細書中では 、「調節エレメント」とは、コード配列の発現に直接的または間接的に影響を与えるェ レメントをいう。調節エレメントの例としては、例えば、プロモーター、イントロン、ターミ ネーター、ェンハンサー、サイレンサー、転写終止配列、翻訳終止配列、転写起点、 イントロン配列などが挙げられるがそれらに限定されない。調節エレメントは好ましく は、プロモーター、イントロン、ターミネータ一およびェンハンサ一からなる群より選択 される少なくとも 1つのエレメントを含み得る。
[0163] 本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特 定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レべ ルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発 現してもよぐそれ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発 現するとは、ある部位にぉレ、てのみ発現することをレ、う。
[0164] 本明細書において、遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異 性」とは、生物(例えば、植物)の部位 (例えば、植物の場合、プロテインボディー、根 、茎、幹、葉、花、種子、胚乳、胚芽、胚、果実など)におけるその遺伝子の発現の特 異性をいう。 「時期特異性」とは、生物(例えば、植物)の発達段階 (例えば、植物であ れば生長段階 (例えば、プロテインボディの形成の特定の時期、発芽後の芽生えの 日数))に応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。そのような特異性は、適切なプロ モーターを選択することによって、所望の生物に導入することができる。
[0165] 本明細書にぉレ、て、プロモーターの発現が「構成的」であるとは、生物のすべての 組織において、その生物の生長の幼若期または成熟期のいずれにあってもほぼ一 定の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノ 一ザンブロット分析したとき、例えば、任意の時点で (例えば、 2点以上 (例えば、植物 の場合、発芽 5日目および 15日目))の同一または対応する部位のいずれにおいて
も発現がみられるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモ 一ターは、通常の生育環境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えら れる。
[0166] プロモーターの発現が「ストレスほたは刺激)応答性」であるとは、少なくとも 1つの ストレスほたは刺激)が生物体に与えられたとき、その発現量が変化する性質をレ、う 。特に、発現量が増加する性質を「ストレス (または刺激)誘導性」といい、発現量が減 少する性質を「ストレス(または刺激)減少性」とレ、う。 「ストレスほたは刺激)減少性」 の発現は、正常時において、発現が見られることを前提としているので、「構成的」な 発現と重複する概念である。これらの性質は、生物の任意の部分から RNAを抽出し てノーザンプロット分析で発現量を分析することまたは発現されたポリペプチドをゥェ スタンプロットにより定量することにより決定することができる。ストレスほたは刺激)誘 導性のプロモーターを選択マーカーおよび異種遺伝子配列とともに組み込んだベタ ターで形質転換された生物(例えば、植物または植物の部分(特定の細胞、組織など ) )は、そのプロモーターの誘導活性をもつ刺激因子を用いることにより、ある条件下 でのみ選択マーカーおよび異種遺伝子配列の発現を行うことができる。
[0167] 本明細書中では、「イントロン」とは、任意の 2つのェキソンの間に存在するヌクレオ チド配列であって、 RNAに転写される力 成熟後の RNAには見られないヌクレオチ ド配列をいう。イントロンは、存在することによって、ポリペプチドの発現量を増大させ る作用を有する場合がある。イントロンは、任意の生物由来のイントロンであり得る力 好ましくは、選択マーカーが導入されるべき生物由来のイントロンである。本発明で は、 目的の生物においてイントロンの活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチ ド配列でも使用することができる。
[0168] 本明細書中では、「ェキソン」とは、 RNAに転写され、かつポリペプチドへと翻訳さ れるヌクレオチド配列をレ、う。
[0169] 本明細書中では、「ターミネータ一」とは、タンパク質コード領域の下流に位置し、ヌ クレオチド配列が mRNAに転写される際の転写の終結、ポリ A配列の付加に関与す る配列である。ターミネータ一は、 mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影 響を及ぼすことが知られている。ターミネータ一は、任意の生物由来のターミネータ
一であり得る力 好ましくは、選択マーカーが導入されるべき生物由来のターミネータ 一である。本発明で用いられ得るターミネータ一の例としては、 CaMV35Sターミネ 一ター、ノパリンシンターゼのターミネータ一(Tnos)、タバコ PRla遺伝子のターミネ 一ター、 Tmlターミネータ一、 lOKDaプロラミンターミネータ一など、およびそれらの 改変ターミネータ一が挙げられるが、これらに限定されなレ、。本発明では、 目的の生 物においてターミネータ一の活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列で あ使用すること力 Sでさる。
[0170] 本明細書において使用される「ェンハンサー」は、 目的遺伝子の発現効率を高める ために用いられ得る。そのようなェンハンサ一は当該分野において周知である。ェン ハンサ一は複数個用いられ得る力 S1個用いられてもよいし、用いなくともよい。ェンハ ンサ一は、任意の生物由来のェンハンサーであり得る力 好ましくは、選択マーカー が導入されるべき生物由来のェンハンサーである。本発明では、 目的の生物におい てェンハンサ一の活性を示すものであれば、どのようなヌクレオチド配列でも使用す ること力 Sできる。植物において使用する場合、ェンハンサーとしては、例えば、 CaMV 35Sプロモーター内の上流側の配列を含むェンハンサー領域が好ましい。
[0171] 本明細書において「サイレンサー」とは、遺伝子発現を抑制し静止する機能を有す る配列をいう。本発明では、サイレンサーとしてはその機能を有する限り、どのようなも のを用いてもよぐサイレンサーを用いなくてもよい。
[0172] 調節配列は、好ましくは、プロモーターおよび異種遺伝子配列と作動可能に連結さ れる。本明細書中では「作動可能に連結される(た)」とは、所望のヌクレオチド配列が 、発現 (すなわち、作動)をもたらす転写調節配列(例えば、プロモーター、ターミネ一 ター、サイレンサー、ェンノヽンサ一など)または翻訳調節配列(例えば、イントロン、ス プライスドナー、スプライスァクセプターなど)の制御下に配置されることをいう。例え ば、プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子の すぐ上流にプロモーターが配置される力 必ずしも隣接して配置される必要はない。
[0173] プロモーターおよび異種遺伝子配列を、上記調節配列に作動可能に連結するた めに、プロモーターおよび異種遺伝子配列を加工すべき場合がある。例えば、プロ モーターとコード領域との間が長すぎて転写効率の低下が予想される場合、またはリ
ボゾーム結合部位と翻訳開始コドンとの間隔が適切でない場合などである。加工の 手段としては、制限酵素による消化、 Bal31、 ExoIIIなどのェキソヌクレアーゼによる 消化、あるいは Ml 3などの一本鎖 DNAまたは PCRを使用した部位特異的変異誘 発の導入が挙げられる。
[0174] 本発明の核酸分子は、単離されたヌクレオチドであることが好ましい。本明細書中 では「単離された」ヌクレオチドとは、そのヌクレオチドが、天然に存在する生物体の 細胞内の他の生物学的因子 (例えば、ヌクレオチド以外の因子および目的とするヌク レオチド以外のヌクレオチド)から実質的に分離または精製されたものをいう。 「単離さ れた」ヌクレオチドには、標準的な精製方法によって精製されたヌクレオチドが含まれ る。したがって、単離されたヌクレオチドは、化学的に合成したヌクレオチドを包含す る。また、標準的な精製方法によって精製した後に、他の物質と混合したヌクレオチド および緩衝液中に溶解したヌクレオチドなども、本明細書でいう単離されたヌクレオ チドに該当する。
[0175] 本明細書において「精製された」ヌクレオチドとは、そのヌクレオチドに天然に随伴 する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製されたヌ クレオチドにおけるそのヌクレオチドの純度は、そのヌクレオチドが通常存在する状態 よりも高レヽ(すなわち濃縮されてレ、る)。
[0176] 本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよレ、。 「誘導 体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは 異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレ ォチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導 体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチォエート、ホスホ ノレアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、 2—0—メチルリボヌタレ ォチド、ペプチド一核酸 (PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
[0177] 本発明の核酸分子は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコ ードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコード する遺伝子のプロモーター配列からなる群力、ら選択される少なくとも 1つのプロモータ 一配列が、糖欠乏誘導性を有し、そして必要なプロモーター活性を有する限り、上述
のようにそのヌクレオチド配列の一部が欠失していても、一部が他のヌクレオチドによ り置換されていてもよぐまたは他のヌクレオチド配列が一部挿入されていてもよい。 あるいは、 5'末端および/または 3'末端に他の核酸が結合していてもよい。また、天 然の糖欠乏誘導性プロモーター配歹 IJ、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプ 口モーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモ 一ター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター配列を含む核酸 分子とストリンジェントな条件下でハイブリダィズし、天然の糖欠乏誘導性プロモータ 一配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可 能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選 択される少なくとも 1つのプロモーター配列と実質的に同一の機能を有するヌクレオ チド配列でもよレ、。このようなヌクレオチド配列は、当該分野において公知であり、本 発明において利用することができる。
[0178] このような核酸分子は、周知の PCR法を利用して調製することができ、化学的に合 成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変異誘発法、ハイブリダィ ゼーシヨン法などを組み合わせてもよレ、。
[0179] (2.ベクター)
本発明のベクターは、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコ ードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコード する遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモータ 一配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配 歹 IJとを含む。
[0180] 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 配列、作動可能に連結された、異種遺伝子配列などについては、上記の 1に記載し たとおりである。
[0181] 本明細書にぉレ、て「ベクター」とは、異種遺伝子配列を目的の細胞へと移入させる ことができる核酸分子をいう。そのようなベクターとしては、 目的の細胞において自律 複製が可能である力、、または目的の細胞の染色体中への組込みが可能で、かつ改
変された塩基配列の転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示さ れる。 目的の細胞は、植物細胞および植物個体等の宿主細胞であり得る。本明細書 において、ベクターはプラスミド、発現ベクター、組換えベクターなどであり得る。
[0182] 本明細書において使用される「発現ベクター」とは、糖欠乏誘導性プロモーター配 歹 IJ、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な 糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択され る少なくとも 1つのプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列を目 的の細胞中で発現し得るベクターをいう。発現ベクターは、糖欠乏誘導性プロモータ 一配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可 能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選 択される少なくとも 1つのプロモーター配列および異種遺伝子配列に加えて、その発 現を調節するェンノヽンサ一のような種々の調節エレメント、および必要に応じて、 目 的の細胞中での複製および組換え体の選択に必要な因子 (例えば、複製起点(ori) 、および薬剤抵抗性遺伝子のような選択マーカー)を含む。発現ベクター中では、改 変された塩基配列は、転写および翻訳されるように作動可能に連結されている。調節 エレメントとしては、プロモーター、ターミネータ一およびェンハンサ一が挙げられる。 調節エレメントの定義は、上記の通りである。また、発現された酵素を細胞外へ分泌 させることが意図される場合は、分泌シグナルペプチドをコードする塩基配列力 改 変された塩基配列の上流に正しいリーディングフレームで結合される。特定の生物( 例えば、細菌)に導入するために使用される発現ベクターのタイプ、その発現べクタ 一中で使用される調節エレメントおよび他の因子の種類力 目的の細胞に応じて変 わり得ることは、当業者に周知の事項である。
[0183] 本明細書においてベクターの例としては、遺伝子実験に用いられる一般的な細菌( 代表的なものとして大腸菌 K12株由来の大腸菌株)で複製可能かつ単離精製可能 なベクターがあげられる。これは、 目的の生物(例えば、植物)に導入する目的の核 酸分子を構築するために必要である。具体的には、例えば大腸菌の PBR322プラス ミド、 pUC18、 pUC19、 pBluescript, pGEM— T、 pGEM— T Easyといった巿販 の構築プラスミドがある。エレクト口ポレーシヨン法、ポリエチレングリコール法、パーテ
ィクルガン法といった直接的に遺伝子断片を植物細胞に導入して形質転換する場合 には、このような市販されている一般的なプラスミドを用いて、導入する遺伝子の構築 を行えばよい。また、ベクターの特殊な例として、ァグロバタテリゥムを介した遺伝子 導入法を用いて植物細胞を形質転換する場合は、大腸菌とァグロバタテリゥム双方 の複製開始点、および植物に導入され得る境界領域を示す T一 DNA由来の境界配 列(Left borderおよび Right Border)に相当するヌクレオチド配列を有する「バ イナリーベクター」と呼ばれるプラスミドを用いる必要がある。例えば pBIlOl (Clonte ch社より市販)、 pBIN (Bevan, N. , Nucleic Acid Research 12, 8711-872 1 , 1984)、 pBINPlus (van Engelen, FAら, Tranegenic Research 4, 288- 290、 1995)、 pTNまたは pTH (Fukuoka Hら, Plant Cell Reports 19, 200 0) , pPZP (Hajdukiewicz Pら, Plant Molecular Biology 25, 989—994, 1 994)などが挙げられるがそれらに限定されなレ、。このほか、植物に利用され得るベタ ターとしては、タバコモザイクウィルスベクターも例示される力 このタイプのベクター は目的遺伝子を植物染色体に導入するわけではないので、遺伝子導入した植物を 種子により増殖させる必要がない場合に用途が限定されるが、本発明に使用され得 る。
[0184] 発現ベクターは、発現カセットの中に、本発明の選択マーカーを含み得る。 「発現 カセット」とは、ある発現すべきヌクレオチド配列(例えば、構造遺伝子)と、その発現 を調節するプロモーター配列、 mRNA転写を終結させるターミネータ一配列および 必要に応じて他の種々の調節エレメントとを、 目的の細胞中でその発現すべきヌクレ ォチド配列が作動し得る状態で連結してある、人工構築遺伝子の 1単位を示す。発 現カセットの代表例としては、 目的の細胞のうちの形質転換された細胞のみを選択す るための選択マーカー(例えばハイグロマイシン抵抗性遺伝子)発現カセット、および 宿主細胞内に発現させたい有用タンパク質コード配列の発現カセットが挙げられる。 準備するべき発現カセットの種類、構造および数については、生物、宿主細胞およ び目的に応じて使い分けられるべきであり、その組み合わせは当業者には周知であ る。
[0185] 「発現ベクター」は、上記の「発現カセット」を 1つ以上含み得る「ベクター」としても定
義され得る。 目的の細胞に導入をすべき発現カセットごとに別々のベクター上に配置 してもょレ、し、 1つのベクター上に全ての発現カセットを連結してもよレ、。例えば、本発 明において、選択マーカーコード配列がさらに用いられる場合、糖欠乏誘導性プロ モーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列および 代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群 力、ら選択される少なくとも 1つのプロモーター配列およびそのプロモーター配列に作 動可能に連結された遺伝子遺伝子配列を含む発現カセットと、選択マーカーコード 配列を含む発現カセットとは、同じ発現ベクター上に存在しても別の発現ベクター上 に存在してもよレ、。同じ発現ベクター上に存在することが好ましい。より好ましくは、糖 欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロモー ター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 酉己列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター配列およびそのプロモ 一ター配列に作動可能に連結された遺伝子遺伝子配列を含む発現カセットと、選択 マーカーコード配列を含む発現カセットとは、同じ発現カセット中に含まれる。本発明 においては、植物用の発現ベクターとして、バイナリーベクタータイプの発現ベクター を用い得る。
[0186] (3.植物細胞)
本発明の植物細胞は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコ ードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコード する遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモータ 一配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配 歹 IJとを含む。
[0187] 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 配列、作動可能に連結された、異種遺伝子配列などについては、上記の 1に記載し たとおりである。
[0188] 本発明で用いられる植物細胞は、どの植物由来の細胞(例えば、単子葉植物、双 子葉植物など)でもよい。
[0189] 植物細胞としては、好ましくは、顕花植物(単子葉または双子葉)由来の細胞が用 いられ、より好ましくは双子葉植物細胞が用いられ、より好ましくはイネ科、ナス科、ゥ リ科、アブラナ科、セリ科、バラ科、マメ科、ムラサキ科の植物由来の細胞が用いられ る。さらに好ましくは、コムギ、トウモロコシ、イネ、ォォムギ、ソルガム、タバコ、ピーマ ン、ナス、メロン、トマト、イチゴ、サツマィモ、シロイヌナズナ、アブラナ、キャベツ、ネ ギ、ブロッコリ一、ダイズ、アルフアルファ、アマ、ニンジン、キゥリ、柑橘類、ハクサイ、 レタス、モモ、ジャガイモ、ムラサキ、ォゥレン、ポプラおよびリンゴ由来の細胞が用い られる。さらにより好ましくはタバコまたはシロイヌナズナ由来の細胞が用いられる。最 も好ましくは、シロイヌナズナ由来の細胞が用いられる。
[0190] 植物細胞は、植物体の一部、器官、組織、培養細胞などであり得る。培養細胞であ ることが好ましい。植物を用いてタンパク質の高生産を目指す場合、タンパク質の抽 出工程および精製過程を大幅に省略できることから、培養細胞を用いて培養液中に 目的タンパク質を分泌させることが特に好ましい。植物細胞は好ましくは、増殖速度 が速い培養細胞である。増殖速度が速いとは、その培養細胞を任意の培養条件下 で 1週間培養した場合に、培養開始時の細胞数の好ましくは約 10倍以上、より好まし くは約 20倍以上、さらに好ましくは約 30倍以上、さらに好ましくは約 40倍以上、さら に好ましくは約 50倍以上、さらに好ましくは約 60倍以上、さらに好ましくは約 70倍以 上、さらに好ましくは約 80倍以上、特に好ましくは約 90倍以上、最も好ましくは約 10 0倍以上細胞数に増殖し得ることをレ、う。
[0191] このような増殖速度の速い培養細胞の例としては、 1週間で 50倍以上増殖し得る細 胞(例えば、タバコ BY— 2細胞)が挙げられるがこれに限定されない。タバコ BY— 2糸田 月包は、もともと、 Nicotiana tabacum L. cv. Bright Yellow 2の月丕車由に誘導し たカルス力 確立された株であり、増殖のためにオーキシンを必要とする。 BY— 2細 胞と同様の性状を有する培養細胞は、 Kato, A.ら、 "Fermentation Technolog y Today" , 1972, pp. 689—695に記載の方法に従って作製され得る;東京大学 大学院新領域創成科学研究科の馳澤盛一郎先生より分与され得る。タバコ BY2糸田 胞は、植物の培養細胞としては異例に速い増殖速度(一週間で約 100倍)を持ち、 均一な細胞集団であり、形質転換も容易であるという利点を持つ。 BY— 2細胞と同様
に、迅速に増殖し得る細胞集団は、上記 Katoらの文献に記載の方法に従って、 0. 2mg/lの 2, 4—ジクロロフエノキシ酢酸、 0. 4mg/lチアミン塩酸塩および 30g/lス クロースを含む RM— 1964培地(Linsmaierおよび Skoog、 Physiol. Plant. 18, 1 965, p. 100)でタバコの胚軸力 カルスを誘導し、このカルスを同じ培地でさらに培 養することによって入手され得る。シロイヌナズナ由来の培養細胞についても、 1週間 で 50倍以上増殖し得る細胞が公知である。シロイヌナズナ由来の培養細胞を用いる ことが最も好ましい。シロイヌナズナはゲノムサイズが小さぐ遺伝情報が全て解明さ れており、細胞生理学的な基礎的知見が豊富であり、誘導生産に利用し得るプロモ 一ターなどのツールに関する情報も充実しており、遺伝子操作が容易であり、かつ様 々な改変を行レ、得るからである。
[0192] 本発明の細胞は、これらの細胞を用いて、当該分野で周知の形質転換方法を用い て作出され得る。あるいは、本発明の細胞は、当該分野で周知の形質転換方法に従 つて作出された細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配すること によって得た子孫から得られる細胞であり得る。
[0193] 細胞、組織、器官または個体の形質転換法は、当該分野で周知である。そのような 技術は、本発明において引用した文献などに十分記載されている。核酸分子の生物 細胞への導入は、一過的であっても恒常的であってもよい。一過性または恒常性の 遺伝子導入の技術はそれぞれ当該分野にぉレ、て周知である。本発明におレ、て用い られる細胞を分化させて形質転換植物を作出する技術もまた当該分野において周 知であり、そのような技術は、本発明において引用した文献などに十分記載されてい ることが理解される。形質転換植物から種子を得る技術もまた、当該分野において周 知であり、そのような技術は、本発明において引用した文献などに記載されている。
[0194] 「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または 一部をいう。形質転換体としては、植物細胞が例示される。形質転換体は、その対象 に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細 書においてそれらの形態をすベて包含するが、特定の文脈において特定の形態を 指し得る。
[0195] 好ましい実施形態において、本発明の植物体には、本発明の核酸分子は、両側の
染色体に導入され得るが、一対のみに導入されたものもまた有用であり得る。
[0196] 核酸分子と、 目的細胞とを、該核酸分子による形質転換が生じ得る条件下に配置 する方法としては、植物細胞に DNAを導入する方法であれば、本明細書において 他の場所で詳述したように、いずれも用いることができ、例えば、ァグロバタテリゥム法 (Agrobacterium) (特開昭 59— 140885、特開昭 60— 70080、 WO94/00977) , エレクト口ポレーシヨン法(特開昭 60—251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用 レ、る方法(特許第 2606856、特許第 2517813)等が例示される。これらの方法のう ち、物理的手法の例としては、ポリエチレングリコール法(PEG法)、電子穿孔(エレク トロポレーシヨン)法、マイクロインジヱクシヨン法、パーティクルガン法が挙げられる。こ れらの方法は、単子葉、双子葉の両植物体に適用できる点で有用性が高い。しかし 、ポリエチレングリコール法とエレクト口ポレーシヨン法では、細胞壁が障害となるため 、プロトプラストを用いなければならない上、導入された遺伝子の植物細胞の染色体 DNAへの組込み頻度が低いことが問題である。また、プロトプラストを用いずに、力 ノレスゃ組織を用いたマイクロインジェクション法では、針の太さや組織の固定等に関 して困難が多い。組織を用いたパーティクルガン法でも、変異がキメラの形で出現し てくる等の問題がある。また、これら物理的手法では、一般に、導入された外来遺伝 子が核ゲノムに不完全な状態で多コピーの遺伝子として組込まれやすレ、。外来遺伝 子が多コピー導入されると、その遺伝子が不活化されやすレ、ことが知られてレ、る。
[0197] 他方、生物を利用して単離遺伝子を導入する方法には、ァグロバタテリゥム法、ウイ ノレスべクタ一法、および近年開発されている、花粉をベクターとして用いる方法があ る。これらの方法は、プロトプラストを用いず植物のカルス、組織または植物体を用い て遺伝子導入を行うため、培養が長期間に及ぶことがなぐまたソマクローナル変異 等の障害を受けにくいという長所を有している。これらのうち花粉をベクターとして用 いる方法は、まだ実験例も少なぐ植物の形質転換法としては未知数の部分が多い。 ウィルスベクター法は、ウィルスに感染した植物体全体に導入すべき遺伝子が広が るという利点はあるものの、各細胞内で増幅されて発現されるだけで、次世代に伝え られるという保証がないという点、および長い DNA断片を導入できないという点に問 題がある。ァグロバタテリゥム法は、約 20kbp以上の DNAを大きな再編成なしに染色
体に導入できること、導入される遺伝子のコピー数が、数コピーと少ないこと、および 再現性が高いこと等、多くの利点がある。イネ科植物等の単子葉植物にとってァグロ バタテリゥムは宿主範囲外であるため、イネ科植物への外来遺伝子導入は、従来は、 先に述べたような物理的手法により行われてきた。し力 ながら、近年、単子葉植物 でもイネ等、培養系が確立されている植物においては、ァグロバタテリゥム法が適用 されるようになつており、むしろ現在ではァグロバタテリゥム法が好んで用いられてい る。
[0198] ァグロバタテリゥム法による外来遺伝子の導入では、 Tiプラスミド Vir領域に植物が 合成するァセトシリンゴン等の低分子フヱノールイ匕合物が作用すると、 Tiプラスミドか ら T一 DNA領域が切り出され、幾つかの過程を経て植物細胞の核染色体 DNAに組 み込まれる。双子葉植物では、植物自身がそのようなフヱノール化合物の合成機構 を備えているため、リーフディスク法等により容易に外来遺伝子を導入することができ 、再現性も高レ、。これに対し、単子葉植物では、そのようなフエノールイ匕合物を植物 自身が合成しないため、ァグロバタテリゥムによる形質転換植物の作出は困難であつ た。しかし、ァグロバタテリゥムの感染時にァセトシリンゴンを添加することで、単子葉 植物への外来遺伝子導入も現在では可能となっている。
[0199] 本発明を植物において利用する場合、植物細胞への植物発現ベクターの導入に は、当業者に周知の方法、例えば、ァグロバタテリゥムを介する方法および直接細胞 に導入する方法、が用いられ得る。ァグロバタテリゥムを介する方法としては、例えば 、 Nagelらの方法(Nagelら(1990)、 Microbiol. Lett. , 67, 325)が用いられ得る 。この方法は、まず、例えば植物に適切な発現ベクターでエレクト口ポレーシヨンによ つてァグロバタテリゥムを形質転換し、次いで、形質転換されたァグロバクテリゥムを G elvinら (Gelvinら編 (1994)、 Plant Molecular Biology Manual (Kluwer Ac ademic Press Publishers) )に記載の方法で植物細胞に導入する方法である。 植物発現ベクターを直接細胞に導入する方法としては、エレクト口ポレーシヨン法(Sh imamotoら(1989)、 Nature, 338 : 274— 276 ;および Rhodesら(1989)、 Scienc e、 240 : 204—207を参照のこと)、パーティクルガン法(Christouら(1991)、 BioZ Technology 9: 957—962を参照のこと)ならびにポリエチレングリコール(PEG)法
(Dattaら(1990)、 Bio/Technology 8 : 736—740を参照のこと)が挙げられる。 これらの方法は、当該分野において周知であり、形質転換する植物に適した方法が 、当業者により適宜選択され得る。
[0200] 本発明において、形質転換体では、 目的とする核酸分子(導入遺伝子)は、染色体 に導入されていても導入されていなくてもよい。好ましくは、 目的とする核酸分子(導 入遺伝子)は、染色体に導入されており、より好ましくは、 2つの染色体の両方に導入 されている。
[0201] 形質転換処理をする際には、必要により、選択マーカー遺伝子が使用される。選択 マーカーとその選択マーカーに適切な選択因子(例えば、抗生物質、色素など)とを 組合せて用いることにより、形質転換処理が施された細胞の中から、本発明の核酸 分子が導入された細胞をより効率よく選択することができる。しかし、この工程は、本 発明において必ずしも必須というわけではなレ、。このような選択方法は、導入された 核酸分子が有する選択マーカーの特性によって変動し、例えば、抗生物質 (例えば 、ハイグロマイシン、カナマイシンなど)に対する耐性遺伝子が選択マーカーとして導 入された場合は、その特定の抗生物質を用いて目的の細胞を選択することができる 。あるいは、選択マーカーとして標識遺伝子(例えば、グリーン蛍光遺伝子など)を用 いれば、そのような標識を目安に目的の細胞を選択することができる。あるいは、外 来遺伝子そのものが表現型に識別可能な差異を生じさせる場合は、そのような差異 を目安に遺伝子導入細胞を選択してもよい。そのような識別可能な差異としては、例 えば、色素の発現の有無などがあるがそれに限定されなレ、。
[0202] 次いで、このようにして得られた、形質転換細胞は、当該分野で周知の方法により、 植物組織、植物器官および Zまたは植物体に再分化され得る。
[0203] 植物細胞、植物組織および植物体の培養、分化および再生のためには、当該分野 で公知の手法および培地が用いられる。このような培地には、例えば、 Murashige- Skoog (MS)培地、 GaMborg B5 (B)培地、 White培地、 Nitsch & Nitsch (Ni tsch)培地などが含まれる力 これらに限定されるわけではなレ、。これらの培地は、通 常、植物生長調節物質 (植物ホルモン)などが適当量添加されて用レ、られる。
[0204] 本明細書において、植物の場合、その植物を「再分化」するとは、個体の一部分か
ら個体全体が復元される現象を意味する。例えば、再分化により、細胞 (葉、根など) のような組織片から器官または植物体が形成される。
[0205] 形質転換体を植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのよ うな方法としては、 Rogersら, Methods in Enzymology 118 : 627-640 (1986 ); Tabata¾, Plant Cell Physiol. , 28 : 73-82 (1987) ; Shaw, Plant Molec ular Biology : A practical approach. IRL press (1988) ; Shimamotoら, Na ture 338 : 274 (1989); Maliga¾, Methods in Plant Molecular Biology : A laboratory course. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1995) ¾ どに記載されるものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、当業者は、上記 周知方法を目的とする形質転換植物に応じて適宜使用して、再分化させることがで きる。このようにして得られた形質転換植物には、 目的の遺伝子が導入されており、 そのような遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ゥヱスタンプロット分析のような本明細 書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
[0206] さらに、得られた形質転換植物体から種子が取得され得る。導入した遺伝子の発現 は、ノーザンプロット法または PCR法により、検出し得る。必要に応じて、遺伝子産物 たるタンパク質の発現を、例えば、ウェスタンプロット法により確認し得る。
[0207] 本発明は、植物において特に有用であることが示されている力 他の生物において も利用することができる。本発明において使用される分子生物学技術は、当該分野 において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、 Ausubel F. A.ら編(1 988)、し urrent Protocols m Molecular Biology、 Wiley、 New York;、 NY ; Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第 2 片 JXおよびその第 3片反, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、別冊実験医学「遺伝子導入 &発現解析実験法」羊土社、 1997など に記載される。
[0208] (4.組織)
本発明の組織は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコード する遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列力 なる群力 選択される少なくとも 1つのプロモーター
配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列と を含む。
[0209] 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 配列、作動可能に連結された、異種遺伝子配列などについては、上記の 1に記載し たとおりである。
[0210] 本明細書において、生物の「組織」とは、細胞の集団であって、その集団において 一定の同様の作用を有するものをいう。従って、組織は、器官の一部であり得る。器 官内では、同じ働きを有する細胞を有することが多いが、微妙に異なる働きを有する ものが混在することもあることから、本明細書において組織は、一定の特性を共有す る限り、種々の細胞を混在して有していてもよい。通常「組織」は、同じ起源を有する が、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および Zまたは形態を有す るのであれば、組織と呼ばれ得る。通常、組織は、器官の一部を構成する。植物では 、構成細胞の発達段階によって***組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の 種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、レ、ろいろな分類が行われている。
[0211] 本発明の組織は、以下の「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された細胞 を用いて、当該分野で公知の方法に従って組織分化させることによって入手され得 る。あるいは、本発明の組織は、「8.形質転換細胞の作出方法」に従って作出された 細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子 孫から得られる組織であり得る。
[0212] (5.器官)
本発明の器官は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコード する遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする 遺伝子のプロモーター配列力 なる群力 選択される少なくとも 1つのプロモーター 配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列と を含む。
[0213] 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター
配列、作動可能に連結された、異種遺伝子配列などについては、上記の 1に記載し たとおりである。
[0214] 本明細書において、「器官」とは、 1つ独立した形態をもち、 1種以上の組織が組み 合わさって特定の機能を営む構造体を形成したものをいう。植物では、カルス、根、 茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実、胚乳などが挙げられるがそれらに限定されな レ、。
[0215] 本発明が対象とする器官はどのような器官でもよぐまた本発明が対象とする組織 または細胞は、生物のどの器官に由来するものでもよい。一般に多細胞生物(例え ば、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多 数の細胞からなる。
[0216] 本発明の器官は、当該分野で周知の形質転換方法に従って作出された細胞を用 いて、当該分野で公知の方法に従って組織分化させ、そして器官を形成させることに よって入手され得る。あるいは、本発明の器官は、当該分野で公知の形質転換細胞 の作出方法に従って作出された細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体 を交配することによって得た子孫から得られる器官であり得る。
[0217] (6.生物体)
本発明の生物体は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコー ドする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードす る遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモーター 配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された異種遺伝子配列と を含む。
[0218] 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 配列、作動可能に連結された、異種遺伝子配列などについては、上記の 1に記載し たとおりである。
[0219] 本明細書において「生物体」(または、植物の場合「植物体」)とは、当該分野にお ける最も広義に用いられ、生命現象を営むものほたは植物)をレ、い、代表的には、 細胞構造、増殖(自己再生産)、成長、調節性、物質代謝、修復能力など種々の特
性を有し、通常、核酸のつかさどる遺伝と、タンパク質のつ力さどる代謝の関与する 増殖を基本的な属性として有する。生物には、原核生物、真核生物 (植物、動物など )などが包含される。好ましくは、本発明では、生物は、植物であり得る。本明細書で は、好ましくは、そのような植物体は稔性であり得る。より好ましくは、そのような植物 体は、種子を生産し得る。
[0220] 本発明の生物体は、当該分野で周知の形質転換方法に従って作出された細胞を 用いて、当該分野で公知の方法に従って再分化させることによって入手され得る。あ るいは、本発明の生物体は、当該分野で周知の形質転換方法に従って作出された 細胞を再分化させ、形質転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子 孫から得られる生物体であり得る。
[0221] 本明細書において用いられる「植物」とは、植物界に属する生物の総称であり、クロ ロフィノレ、力、たい細胞壁、豊富な永続性の胚的組織の存在、および運動する能力が ない生物により特徴付けられる。代表的には、植物とは、細胞壁の形成'クロロフィル による同化作用をもつ顕花植物をいう。植物は、単子葉植物および双子葉植物のい ずれも含む。好ましい植物としては、例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、ォォムギ、ソ ルガムなどのイネ科に属する単子葉植物が挙げられる。植物は、食用作物または薬 用植物であることが好ましい。好ましい植物の他の例としては、タバコ、ピーマン、ナ ス、メロン、トマト、イチゴ、サッマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリ一、ニンジン、キゥリ
、柑橘類、ハクサイ、レタス、モモ、ジャガイモ、ムラサキ、ォゥレンおよびリンゴが挙げ られる。より好ましくは、植物は、タバコ、イネ、トマト、イチゴ、ムラサキまたはォゥレン であり得る。好ましい植物は作物に限られず、花、樹木、芝生、雑草なども含まれる。 特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種 子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げ られる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
[0222] イネ科の植物の例としては、〇ryza、 Hordenum, Secale、 Scccharum, Echino chloa、または Zeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、ォォムギ、ライムギ、ヒェ 、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
[0223] 異種ヌクレオチド配列を含む植物は、天然では発現しない遺伝子産物を発現し得
る。
[0224] 好ましい実施形態において、本発明の生物体には、本発明の核酸分子は、両側の 染色体に導入され得るが、一対のみに導入されたものもまた有用であり得る。
[0225] (7.タンパク質の生産方法)
本発明のタンパク質の生産方法は、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖 分解酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る 酵素をコードする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つ のプロモーター配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された該 タンパク質コード配列とを含む核酸分子を、細胞に導入して、形質転換細胞を得るェ 程;該形質転換細胞を糖の非存在下で培養して、該タンパク質を分泌させる工程;お よび該タンパク質を回収する工程を包含する。
[0226] 糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素をコードする遺伝子のプロ モーター配列、代謝可能な糖を分解し得る酵素をコードする遺伝子のプロモーター 配列、作動可能に連結された、異種遺伝子配列などについては、上記の 1に記載し たとおりである。
[0227] 本発明の方法ではまず、糖欠乏誘導性プロモーター配列、ェキソ型糖分解酵素を コードする遺伝子のプロモーター配列および代謝可能な糖を分解し得る酵素をコー ドする遺伝子のプロモーター配列からなる群から選択される少なくとも 1つのプロモー ター配列と、該選択されたプロモーター配列に作動可能に連結された該タンパク質コ ード配列とを含む核酸分子を、細胞に導入して、形質転換細胞を得る。
[0228] 本発明の生産方法で用いられる細胞は、植物細胞、細菌細胞および動物細胞のう ちの任意の細胞であり得る力 好ましくは植物細胞である。
[0229] 植物細胞としては、好ましくは、顕花植物(単子葉または双子葉)由来の細胞が用 いられ、より好ましくは双子葉植物細胞が用いられ、より好ましくはイネ科、ナス科、ゥ リ科、アブラナ科、セリ科、バラ科、マメ科、ムラサキ科の植物由来の細胞が用いられ る。さらに好ましくは、コムギ、トウモロコシ、イネ、ォォムギ、ソルガム、タバコ、ピーマ ン、ナス、メロン、トマト、イチゴ、サツマィモ、アブラナ、キャベツ、ネギ、ブロッコリ一、 ダイズ、アルファルファ、アマ、ニンジン、キゥリ、柑橘類、ハクサイ、レタス、モモ、ジャ
ガイモ、ムラサキ、ォゥレン、ポプラおよびリンゴ由来の細胞が用いられる。最も好まし くはタバコ由来の細胞が用いられる。
[0230] 植物細胞は、植物体の一部、器官、組織、培養細胞などであり得る。培養細胞であ ることが好ましい。植物細胞は好ましくは、増殖速度が速い培養細胞である。増殖速 度が速いとは、その培養細胞を任意の培養条件下で 1週間培養した場合に、培養開 始時の細胞数の好ましくは約 10倍以上、より好ましくは約 20倍以上、さらに好ましく は約 30倍以上、さらに好ましくは約 40倍以上、さらに好ましくは約 50倍以上、さらに 好ましくは約 60倍以上、さらに好ましくは約 70倍以上、さらに好ましくは約 80倍以上 、特に好ましくは約 90倍以上、最も好ましくは約 100倍以上細胞数に増殖し得ること をいう。
[0231] このような増殖速度の速い培養細胞の例としては、タバコ BY— 2細胞が挙げられる 力これに限定されない。シロイヌナズナ由来の培養細胞でも、増殖速度が速い細胞 株が樹立されており、公知である。このような細胞株の例としては、 James A. H. M urray博士, Institute oi Biotechnology, University of Cambridge, Te nnis Court Road, Cambridge CB2 1QT, United Kingdom力 s樹立した 細胞株が挙げられる。もちろん、増殖速度が速い細胞株は、シロイヌナズナ植物体を 培養して培養細胞を増殖させ、増殖した細胞から増殖速度の速レ、細胞を繰り返し選 択することによつても入手され得る。これらの細胞については上記のとおりである。
[0232] 本発明の細胞は、これらの細胞を用いて、上記「3.細胞」に記載のように、当該分 野で周知の形質転換方法を用いて形質転換され得る。あるいは、この形質転換細胞 は、当該分野で周知の形質転換方法に従って作出された細胞を再分化させ、形質 転換個体を得て、その個体を交配することによって得た子孫から得られる細胞であり 得る。
[0233] 細胞を形質転換するために用いられる核酸分子は、さらにシグナルペプチドコード 配列を含み得る。シグナルペプチドコード配列については、上記の 1に記載したとお りである。
[0234] 次いで、この形質転換細胞は、そのまま、糖の非存在下で培養して、該タンパク質 を分泌させてもよい。あるいは、この形質転換細胞を、まず、糖の存在下で増殖させ
てから、糖の非存在下に移して培養してもよい。
[0235] 本明細書中で用いられる「糖」は、任意の糖であり得るが、好ましくは代謝可能な解 糖系糖または代謝されるとこの解糖系糖になり得る糖である。解糖系糖とは、代謝可 能な糖をいう。代謝可能な糖は、上記「1.核酸分子」に記載のとおりである。代謝可 能な糖は好ましくは、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース、スクロース、 マルトースおよびァラビノースであり、より好ましくはスクロースである。スクロースは、 他の単糖と比較して、安価でかつ入手が容易であるからである。
[0236] 形質転換体を培養するときの糖の濃度は、当該分野で公知の方法によって容易に 決定され得る。 目的の細胞に適切な培地組成は、当該分野で公知である。培地は、 液体であっても固体であってもよいが、液体であることが好ましい。液体培地中で振 盪培養することが好ましい。液体中で振盪培養すると、細胞の増殖が早いからである
[0237] 形質転換細胞を糖の非存在下で培養する前に、形質転換細胞を糖の存在下で培 養する場合、この条件での糖の濃度は、好ましくは約 10mM以上であり、より好ましく は約 15mM以上であり、さらに好ましくは約 20mM以上である。糖濃度に特に上限 はないが、必要に応じて約特に下限はなレ、が、必要に応じて約 200mM以下、約 15 OmM以下、約 lOOmM以下または約 90mM以下の濃度とすることができる。糖の存 在下で形質転換細胞を培養すると、糖欠乏応答性プロモーターは応答せず、その細 胞が通常有する通常の代謝が生じる。糖の存在下では、形質転換細胞は、好ましく は、迅速に増殖する。
[0238] 形質転換細胞を糖の存在下で培養した後、糖の非存在下に移すことは、例えば、 ある特定の濃度の糖の存在下で形質転換細胞を培養し始め、ある期間にわたって培 養することによって、この形質転換細胞の増殖により、培地中から糖が消費されること によって移されてもよい。しかし、好ましくは、形質転換細胞をある期間にわたって糖 の存在下で培養した後、当該分野で公知の方法に従って形質転換細胞を回収し、 そして糖を含まない新たな培地にこの形質転換細胞を置くことによって達成され得る 。細胞を液体培地中で培養した場合、例えば、その細胞を通過させない適切なメッシ ュサイズのメッシュ(例えば、 20 z mメッシュ)を通すことによって回収することが好まし
レ、。メッシュは、任意の素材から製造され得る。例えば、ナイロンメッシュが用いられ得 る。培養細胞はまた、 1 , OOOg X 5分間の遠心分離によって回収することも可能であ る。細胞を固体培地上で培養した場合、細胞の塊を、ピンセットなどで摘まんで新た な培地上に置き換え得る。
[0239] 「糖の非存在下」とは、主に、糖が実質的に存在しない条件をいう。糖が実質的に 存在しない条件とは、糖欠乏応答性プロモーターが発現を促進する条件をいう。糖 が実質的に存在しない条件下での糖の濃度は、好ましくは焼く 15mM未満であり、よ り好ましくは約 10mM未満であり、さらに好ましくは約 5mM未満であり、なお好ましく は約 3mM未満であり、なおさらに好ましくは約 ImM未満であり、特に好ましくは約 0 . ImM未満である。糖が実質的に存在しない条件は、糖が全く存在しない条件を包 含する。
[0240] 適切な濃度の糖を含む培地の調製方法は、当業者に周知である。
[0241] 糖の非存在下で形質転換細胞を培養すると、形質転換細胞内の糖欠乏誘導性プ 口モーターが応答し、この糖欠乏誘導性プロモーターに作動可能に連結された異種 遺伝子配列の発現が生じる。さらに、この異種遺伝子配列にシグナルペプチドコード 配列が、作動可能に連結されていると、この異種遺伝子配列によってコードされる遺 伝子産物の分泌がもたらされる。
[0242] 次いで、分泌されたタンパク質は、回収される。タンパク質は、当該分野で周知の方 法を用いて回収され得る。
[0243] タンパク質の分離技術は当該分野において周知であり、タンパク質を分離すること ができる技術であれば、どのような技術を用いてもよい。本発明の形質転換細胞の培 養物から、タンパク質コード配列によってコードされるタンパク質 (例えば、有用タンパ ク質)を単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常のタンパク質の 単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明の 形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を 遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶 媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジェチルアミノエチ ノレ(DEAE)—セファロース、 DIAION HPA—75 (三菱化学)等レジンを用いた陰ィ
オン交換クロマトグラフィー法、 S— Sepharose FF (Pharmacia)等のレジンを用レヽ た陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フエ二ルセファロース等の レジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、ァフィニテ ィークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動 法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
[0244] 本明細書にぉレ、て「単離された」ポリペプチドとは、そのポリペプチドが天然に存在 する生物体の細胞内の他の生物学的因子 (例えば、ポリペプチド以外の因子および 目的とするポリペプチド以外のポリペプチドなど)から実質的に分離または精製され たものをいう。 「単離された」ポリペプチドには、標準的な精製方法によって精製され たポリペプチドが含まれる。したがって、単離されたポリペプチドは、化学的に合成し たポリペプチドを包含する。また、標準的な精製方法によって精製した後に、他の物 質と混合したポリペプチドおよび緩衝液中に溶解したポリペプチドなども、本明細書 でいう単離されたポリペプチドに該当する。
[0245] 本明細書にぉレ、て「精製された」ポリペプチドとは、そのポリペプチドに天然に随伴 する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製されたポ リペプチドにおけるそのポリペプチドの純度は、そのポリペプチドが通常存在する状 態よりも高レヽ (すなわち濃縮されてレ、る)。
[0246] 目的のタンパク質が本発明の形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合に は、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した 後に、超音波破碎機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等 により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することに より得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈 澱法、ジェチルァミノェチル(DEAE)—セファロース(Sepharose)、 DIAION HP A— 75 (三菱化学)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、 S— Sepharo se FF (Pharmacia)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチル セファロース、フエ二ルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、 分子篩を用いたゲルろ過法、ァフィ二ティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシ ング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品
を得ること力 Sできる。
[0247] 目的のタンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回 収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法によりその タンパク質を回収後、そのタンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。こ の可溶化液を、タンパク質変性剤を含まなレ、か、あるいはタンパク質が変性しない程 度にタンパク質変性剤濃度が希薄な溶液になるように希釈あるいは透析し、 目的のタ ンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標 品を得ることができる。また、細胞内の特定のオルガネラ、例えば、プロテインボディ に蓄積され得る場合には、そのオルガネラを分離後、 目的のタンパク質を精製するこ とあできる。
[0248] 通常のタンパク質の精製方法 (J. Evan. Sadlerら: Methods in Enzymology, 83, 458)に準じて精製できる。例えば、 目的のタン質を他のタンパク質との融合タン パク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたァフィ二ティー クロマトグラフィーを利用して精製することもできる [山 J 11彰夫,実験医学 (Experime ntal Medicine) , 13, 469-474 (1995) ] 0例えば、 Loweらの方法(Larsenら, P roc. Natl. Acad. Sci. , USA, 86, 8227 (1989)、 Kukowska—Latallo JF、 G enes Dev. , 4, 1288 (1990) )に記載の方法に準じて、 目的のタンパク質をプロテ イン Aとの融合タンパク質として生産し、ィムノグロブリン Gを用いるァフィ二ティーク口 マトグラフィ一により精製することができる。
[0249] 例えば、 目的のタンパク質と精製用のタグ(例えば、 Hisタグ(例えば、 6つの His残 基力 なる 6 X Hisタグ)、 HAタグ、プロテイン A、 IgGドメイン、またはマルトース結合 タンパク質)とを融合し、 目的のタンパク質と精製用のタグとの間に、例えばプロテア ーゼによる切断部位を付加するように設計した融合タンパク質を生産すれば、精製 用のタグに対するァフィ二ティークロマトグラフィーを用いて融合タンパク質を精製し、 その後、例えばプロテアーゼを用いて目的のタンパク質を融合タンパク質から切断す ることによって、 目的のタンパク質の精製を容易に行うことができる。
[0250] 例えば、 6 X Hisタグを用いる場合、融合タンパク質を発現する細胞を遠心分離 (例 えば、約 6000 X gで 20分間)によって収集し、細胞ペレットを、カオトロピック剤であ
る 6Mグァニジン HC1中に、 4°Cで 3— 4時間攪拌することによって可溶化させる。次 いで、細胞細片を遠心分離によって取り除き、そしてポリペプチドを含む上清を、ニッ ケルー二トリ口三酢酸(「Ni_NTA」)ァフィ二ティー樹脂カラム(QIAGEN, Inc.前出 より入手可能)にロードする。 6 X Hisタグを有するタンパク質は、 Ni— NTA樹脂に高 レ、親和性で結合し、そして単純な 1工程手順で精製され得る(詳細には、 The QIA expressionist (1995) QIAGEN, Inc. ,前出を参照のこと)。手短に言えば、上清 を、 6Μグァニジン一 HC1、 pH8のカラムにローデイングし、カラムを、最初に 10容量 の 6Mグァニジン— HC1、 pH8で洗浄し、次いで 10容量の 6Mグァニジン— HC1、 pH 6で洗浄し、最後にポリペプチドを、 6Mグァニジン一 HC1、 pH5で溶出する。次いで、 精製したタンパク質を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)または 50mM 酢酸ナトリウ ム、 pH6の緩衝液および 200mM NaClに対して透析することにより再生させる。あ るいは、タンパク質は Ni— NTAカラムに固定化している間に、首尾よく再折畳みされ 得る。推奨条件は以下の通りである:プロテアーゼインヒビターを含む、 500mM Na Cl、 20%グリセローノレ、 20mM Tris/HCl pH7. 4中の 6M— 1M尿素の直線勾 配を使用する再生。再生は 1. 5時間以上の時間をかけて行うことが好ましい。再生 後、タンパク質を 250mMイミダゾールの添加によって溶出させる。イミダゾールを、 P BSまたは 50mM酢酸ナトリウム pH6の緩衝液および 200mM NaClに対する最 終の透析工程によって除去する。このようにして、精製したタンパク質が得られる。
[0251] また、 目的のタンパク質を FLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗 FLA G抗体を用いるァフィ二ティークロマトグラフィーにより精製することができる(Larsen ら, Proc. Natl. Acad. Sci. , USA, 86, 8227 (1989) , Kukowska-Latallo J F、 Genes Dev. , 4, 1288 (1990) )。
[0252] さらに、 目的のポリペプチド自身に対する抗体を用いたァフィ二ティーク口マトグラフ ィ一で精製することもできる。本発明のタンパク質は、公知の方法 ϋ. Biomolecular NMR, 6, 129—134、 Science, 242, 1162—1164、』. Biochem. , 110, 166 —168 (1991) ]に準じて、 in vitro転写'翻訳系を用いて生産することができる。
[0253] 本発明は、本発明の方法によって生産された、 目的のヌクレオチドの翻訳産物を含 む組成物を提供する。そのような組成物が含む翻訳産物は、使用される目的のヌクレ
ォチドに応じて変動する力 好ましくはタンパク質であり得る。
[0254] 以下に、本発明の好ましい実施形態である実施例に基づいて本発明を説明するが 、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記 発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなぐ特許請求の範囲に よってのみ限定される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、 その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細 書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
実施例
[0255] (実施例 1:糖欠乏応答性遺伝子の単離)
(実施例 1の概略)
糖応答性遺伝子を同定するために、シロイヌナズナ cDNAマクロアレイを、スクロー スの存在下または非存在下で培養した芽生えから調製したプローブとハイブリダィズ した。最初のスクリーニングによって、影響を受ける 36個の cDNAが同定された。こ れらの cDNAのうちの 12個を、糖欠乏条件下で誘導されると同定した。これらのうち の 9個は、既知の糖応答に関して新規であった。コードされるタンパク質の特性に基 づいて、これらを、アミノ酸代謝、糖質代謝および未知に関与する 3つの群に分類し た。続いて、これらの発現プロファイルと糖レベルとの間の相関を、植物を用いて分 析した。離脱葉を 36時間にわたるスクロース欠乏に供した場合、グルコースの顕著な 減少が生じたが、スクロースの減少は生じず、そして付随して、 12個全ての遺伝子が 誘導された。しかし、これらの転写産物は、サンプルにスクロースを再供給したところ、 7時間以内に迅速に低下した。誘導および抑制の同様のパターンが、植物体全体の 喑所処理によって観察されたが、成熟葉の自然老化の間には観察されなかった。グ ルコースアナログを用いた阻害分析は、これらの遺伝子のうちの 9個が、へキソキナ ーゼシグナル伝達経路に関連し得ることを示した。本観察は、植物が、糖欠乏の間、 物質の再利用に関与する 1セットの遺伝子を活性化することおよびこれらの遺伝子が 、機能的に多様であるにもかかわらず、同時にそして協調して調節されることを示唆 する。
[0256] この方法および結果の詳細を以下に記載する。
[0257] ( 1. 1 材料および方法)
( 1. 1. 1 植物材料および成長条件)
シロイヌナズナ(ェコタイプ Columbia)を、 2%スクロース(w/v)を含む 0· 5 X MS 液体培地(Murashigeおよび Skoog基本塩、 pH5. 8)中で、 16時間明期 /8時間 喑期の光周期で 21°Cで成長させた。播種 3週間後、芽生えを、スクロース非含有培 地に移植することによって糖を欠乏させ、そして喑所にて 79時間までさらに培養した 。スクロース非含有培地での 72時間の培養後、芽生えを、 2%スクロース (wZv)を 補充した培地に 7時間にわたって移植することによって、芽生えにスクロースを再度 供給した。
[0258] ( 1. 1. 2 cDNAマクロアレイの調製)
シロイヌナズナ cDNAマクロアレイは、かずさ DNA研究所から供給された。フィルタ 一(8 X I 2cm)は、 4つの異なる組織 (地上部器官、花芽、根および緑色の長角果) から調製された約 13, 000個の PCR増幅 cDNAフラグメントを含んでいた。アンプリ コン作製およびアレイ作製を、 Asamizuら、 DNA Research 7, 2000, pp. 175— 180および Sasakiら、 DNA Research 8, 2001 , pp. 153— 161に記載されると おりに行った。
[0259] ( 1. 1. 3 RNA抽出およびマクロアレイハイブリダィゼーシヨン)
総 RNAを、 AGPC (酸性グァニジ二ゥム一フエノーノレークロロホルム)法(Suzukiら、 Plant Cell and Environment 24、 2001、 pp. 1 177— 1 188)を用いて芽生え から単離した。ポリ(A) +RNAを、 PolyATract mRNA Isolation System (Pro mega)を用レ、て、 600 /i gの総 RNA力ら精製した。 12 μ 1溶 ί夜中の 0· 3 /i gのポリ(A ) +RNAおよび 1 μ gのオリゴ(dT)を、 70。Cで 10分間変性させ、そして氷上で 3分間 冷却し、そして 28 μ 1の総容積(3 μ 1の緩衝液、 3 μ 1の 25mM MgCl、 1. 5 μ 1の
2
各 10mMの dNTP、 1 μ 1(7)0. 1Μ DTT、 6 μ 1の [ひ—33 P] dCTPおよび 1. 5 μ 1の 逆転写酵素)で、 37°Cで 90分間逆転写に供した。得られた33 P標識 cDNAプローブ 、 Quant G—50 Microカフム、 Amersham Pharmacia Biotech) (こよって 精製した。 10 μ ΐのオリゴ(dA)を補充した Church—リン酸緩衝液(pH7. 2) (0. 5M Na HP〇、 ImM EDTAおよび 7% SDS)中での 65。Cで 1時間にわたるプレハ
イブリダィゼーシヨン後、マイクロアレイフィルターを、 65°Cで 16— 20時間にわたる、 10mlの総容積でのプローブを用いたハイブリダィゼーシヨンに供した。フィルターを 、それぞれ 65°Cで 30分間にわたって、 0. 1% SDSを含む 2 X SSCで 1回洗浄し、 そして 0. 1 % SDSを含む 0. 5 X SSC中で 2回洗浄した。各マイクロアレイフィルタ 一を、処理した植物材料および未処理の植物材料から調製した33 P標識 cDNAプロ ーブでの代替ハイブリダィゼーシヨンのために順次用いた。
[0260] (1. 1. 4 データ分析)
フィルターを、 BAS 5000を用いてスキャンし、そしてシグナル強度を、ノ ックグラ ゥン卜 し引きして、 Array Vision (Amersham Pharmacia Biotech)によつ て分析した。ノ ックグラウンドよりも低い値を示すスポットを、さらなる分析から除外した 。異なるハイブリダィゼーシヨン間の比較を改善するために、定量したシグナル強度 を、フィルターあたりの積分値に関して標準化した。誘導または抑制された糖応答遺 伝子を、未処理レベルの 3倍を超えるかまたは未処理レベルの 0. 3倍を下回るという 基準を用いて同定した。
[0261] (1. 1. 5 サブアレイ作製、ハイブリダィゼーシヨンおよびデータ分析)
最初のアレイスクリーニングによって同定された遺伝子間で矛盾したクローンを排除 するために、 184個の遺伝子および 8個のコントロールを用いてサブアレイを構築し、 これらの隣接する重複する遺伝子は、合計 384個のエレメントの cDNAサブアレイを 生じる(Gene—Lab Co. Ltd. )。 cDNAマクロアレイ分析のために用いたプロトコル に従って、ハイブリダィゼーシヨンを行った。ハイブリダィゼーシヨンシグナルの再現性 を、三連の実験の平均値から評価した。
[0262] (1. 1. 6 RNAゲルプロット分析)
総 RNAを、 Suzukiら、 Plant Cell and Environment 24、 2001、 pp. 1177 —1188に記載されるとおりに総芽生えまたは離脱葉組織から抽出した。 10 μ gの各 RNAサンプルを、 1. 2%ホルムアルデヒド—ァガロースゲル電気泳動によってサイズ 分画し、ナイロンメンブレンにトランスファーし、そして UV照射によって架橋した。この メンブレンを、 42。Cで 16時間にわたるハイブリダィゼーシヨンに供し、 0. 1 %
SDSを含む 0. 5 X SSC中で 65°Cで 2回洗浄し、そして Suzukiら、 Plant Cell a
nd Environment 24、 2001、 pp. 1177—1188に記載されるとおりに Χϋフィノレ ムに接触させた。
[0263] (1. 1. 7 可溶性の糖の決定)
可溶性の糖を、 4mLの 80% (vZv)エタノールおよび lmLの 50%エタノールで順 次抽出した。 2つの層をプールし、そして 80°Cにて 30分間インキュベートした。溶液 を 9, OOOrpmで 10分間遠心分離し、そして上清を Speed Vac Concentrator中 で乾燥した。乾燥した残渣を、 400 μ 1の 80%エタノール中に再懸濁し、 400 μ 1のク ロロホルムと混合し、そして 7, 500rpmで 10分間遠心分離した。上清を、酵素法(Si gma Diagnostics Glucose試薬, USA)によって可溶性の糖について分析した。
[0264] (1. 2 結果)
(1. 2. 1 糖応答性遺伝子の同定)
約 13. 000個のシロイヌナズナ遺伝子についての cDNAマクロアレイを用いて、本 発明者らは、糖の欠乏に応答して転写産物レベルが変化した cDNAをスクリーニン グした。プローブの cDNAを、 79時間の糖欠乏に供した水耕栽培芽生え、または 72 時間のスクロース欠乏後にスクロースを豊富に含む培地に 7時間にわたって戻した後 の水耕栽培芽生えから調製した。ハイブリダィゼーシヨンを、各サンプルについて二 連で行って、高い再現性を得た。 Array Visionでのスケーリング後、シグナル強度 を正規化して、 2つのプローブの間の強度の比を算出した。最初のスクリーニングに よって、シグナルの比が 3倍を超えて変化した力、または 0. 3倍未満で変化した 184 個の遺伝子が得られた(図 la)。続いて、二連のサブアレイ(各々 192遺伝子を含む) を調製した。このうち、 184個が最初に同定された遺伝子であり、そして 8個がポジテ イブコントロール遺伝子であった。常に喑所で 1。/0スクロースの非存在下または存在 下で培養した、播種後 3週間目の芽生えから調製したプローブでのサブアレイのディ ファレンシャルハイブリダィゼーシヨンによって、 73個の遺伝子の転写産物レベルが コントロールと比較して 1. 5倍の増加または減少を示すことを示した(図 lb)。
[0265] (1. 2. 2 転写産物の蓄積)
1。/0スクロースを含む培養培地で成長させた芽生えを、スクロースを含まない新鮮な 培地に移植し、そして 12時間、 36時間および 79時間にわたってインキュベートし、
そしてサブアレイで同定された 73個の遺伝子について RNAゲルプロット分析を行つ た(図 2)。糖の欠乏によって誘導された 9個の遺伝子の発現パターンを、 RNAブロッ トハイブリダィゼーシヨンによって分析した(図 2)。 9個全ての遺伝子について、 RNA ゲルプロットアツセィデータは、サブアレイプロファイルと一貫しており、そして本発明 者らは、これらのアレイについての定量的結果に妥当性があると結論し、そしてこの 単離し 7こ遺 1Z5子 、 AtSUG (Arabidopsis thaliana sugar up— regulated) 1— 9と命名した。
[0266] (1. 2. 3 離脱葉の応答)
播種後 25日目の植物から脱離した展開した葉のサンプノレにスクロースを供給した ところ、スクロースおよびグノレコースのレベルが比較的一定に維持されることが見出さ れた(図 3a)。対照的に、サンプルからスクロースを欠乏させると、スクロースのレべノレ は徐々に低下し、そしてグノレコースのレベルは迅速に低下した(図 3a)。特に、グノレコ ースは、 79時間後には、開始レベルの 10%未満まで減少した(図 3a)。サンプルか らスクロースを 72時間にわたって欠乏させ、次いで 7時間にわたって 30mMスクロー スを供給した場合、スクロースおよびグノレコースは両方とも、糖が供給されたサンプル におけるレベルと等しいレベルを示した(図 3a)。
[0267] 転写産物の蓄積プロファイルを、 RNAブロットハイブリダィゼーシヨンによって糖結 合に応答することが同定された 73個の遺伝子について、脱離葉サンプルを用いて調 ベ 7こ
場合、 12個の遺伝子が誘導された。次いで、誘導された 12個の遺伝子の転写産物 蓄積の時間経過を、スクロースが供給された脱離葉およびスクロースが欠乏した脱離 葉において調べた(図 3b)。これらの転写産物は全て、スクロースを供給したサンプ ルにおいて存在しな力、つた力 これらは、スクロースが欠乏したら迅速に蓄積した。顕 著なことに、スクロース誘導性転写産物は、スクロースを再供給してから 7時間以内に 減少した(図 3b)。これらのパターンは、一般に共有されているようである力 2つ(At SUG4および AtSUGlO)は、レ、くらかの相違を示した。コードされるタンパク質の推 定機能に基づいて、誘導された 12個の遺伝子を、 3つの群 (アミノ酸代謝、糖質代謝 および未知)に分類した (表 1)。
[0268] [表 1]
表 1.糖応答性遗伝子の機能分類
遺伝子 フ ヒレド 遺伝子 ID 説明 推定機能
AtSUGl 11.72 At3g30775
AtSUG2 4.44 At3g47340
AISUG3 6.24 At2gl3360 アミノ酸代謝
AtSUG4 2.66 At5g07440
AtSUG6 2.27 At5g56870 β~ガラク トシダ一ゼ ―
AtSUG7 7.7 At5g49360 ~キジロシダーゼ
糖質代謝 AtSUG8 3.55 At5g20250 種子同化タンパク質
AtSUG9 3.70 At3g57520 同化タンパク質ホモログ 一
AtSUGl 0 2.49 At4g20260 鋤胞内膜結合タンパク質 ―
AtSUGl 1 10.32 At5g48180 ミロシナ一ゼ結合タンパク S様タンパク質 未知 AtSUGl 2 2.07 At2g33830 推定オーキシン調節タンパク質 一
(1. 2. 4 喑所の影響)
植物全体を遮光した場合、ロゼット葉におけるスクロース含量およびグルコース含 量は両方とも、 3日後、最初のレベルの 25%まで有意に減少した(図 4a)。この低下 は、グルコースに関して、スクロースよりも明確であり、 1日の処置後に 70%の減少を 示した(図 4a)。脱離葉における全ての AtSUGの転写産物は、喑所へ移して 1日以 内に非常に誘導され、そしてこのレベルは、 3日間まで維持された(図 4b)。
[0270] (1. 2. 5 老化の影響)
脱離葉は、老化することが公知であり、 目に見えて黄化する(図 5a)。脱離したロゼ ット葉(これを老化させた)を用いて、糖含量の変動および AtSUGの転写レベルを調 ベた。実験系を、 Columbiaェコタイプで設定した。この実験系では、ロゼット葉は、 発芽約 25日後に充分に広がり、そして花序および花は、 35日目に現れる。 50日目 に、ロゼット葉は、クロロフィルを失レ、、そして 70日目の植物は、成熟して老化状態に 到達する。スクロースおよびグルコース(これは、 25日目まで蓄積した)は、その次の 10日間の間に迅速に減少した(図 5a)。し力し、これらの両方の糖の量は、その後増 加し、 70日目には 25日目とほぼ同じレベルに到達した。これは、蓄積した澱粉また は細胞化合物の分解を示し得る(図 5a)。
[0271] 驚くべきことに、 AtSUGの応答は、変動性であった(図 5b)。全ての転写産物が誘 導されたわけではなぐ次いで 50日目より後に誘導が明確になることを初めて示す。 AtSUG3および AtSUG5の転写産物は、 25日目に非老化葉において存在し、そし て老化期間の間、比較的一定のレベルで持続した(図 5b)。これらの結果は、 AtSU Gの発現系が、喑所および糖の欠乏によって誘導される人工老化と、加齢に関連す る天然の老化とは異なることを示唆する。
[0272] (1. 2. 6 グルコースアナログの影響)
へキソキナーゼによってリン酸化される力 その後、グルコース一 6_リン酸には代謝 されなレ、、 2—デォキシグルコースの影響は、へキソキナーゼシグナル伝達経路の関 与を示すと考えられる。 3_〇_メチルグルコースは、へキソキナーゼの基質ではなく、 そしてその影響は、へキソキナーゼ依存性シグナル伝達を示す。離脱葉からスクロー スを 48時間欠乏させ、次いで糖またはアナログを 24時間にわたって供給した場合、 全ての AtSUGは、欠乏によって最初に抑制解除された(図 6)。スクロースおよびグ ルコースの再供給は、これらの発現を抑制した力 S、後者は、レ、くつかの遺伝子に関し ては有効であるには不充分であった。 2—デォキシグルコースもまた、大多数の AtS UGの発現を抑制した力 全てを抑制したわけではなぐ AtSUG5、 AtSUG7およ び AtSUGlOを抑制しなかった。 3— O メチルグルコースは、 AtSUGに対して何の 影響も示さな力 た。これらの結果は、 12個の AtSUGのうちの 9個力 おそらぐへ キソキナーゼシグナル伝達経路の制御下にあり、一方、 3個は明らかに独立している ことを指摘する。
[0273] (実施例 2 : ガラクトシダーゼ、 ーキシロシダーゼおよび ダルコシダーゼの、 植物体での糖欠乏応答性発現の確認)
実施例 1で単離した AtSUGlから 12の、スクロース存在下およびスクロース非存在 下での発現を、スクロース存在下の条件ではスクロースを 1 %含む条件で成長させた こと以外は上記 1. 2. 2に記載と同様の方法で、 RNAゲルプロット分析によって調べ た。結果を図 7に示す。この結果、 AtSUG6および AtSUG7が、糖欠乏に特に敏感 に応答して、顕著に誘導されることがわかった。それゆえ、 AtSUG6および AtSUG 7の配列を、 DNAシークェンサ一(モデル 373、 PE Biosystems, Foster City,
CA)を用いて配列決定した。決定された配列を他の配列との相同性について検索し た結果、 AtSUG6は、 β一ガラクトシダーゼをコードし、そして AtSUG7は β—キシ口 シダーゼをコードすることがわ力 た。
[0274] 得られた配列を用いて、 日本 DNAデータバンクの Webサイト(http : www. ddbj. nig. ac. jp/Welcome-j. html)の ClustalWとレ、う解析ソフトで配列分析を行うこ とによって、 /3 -ガラタトシダーゼ(Galとも記載する)および β -キシ口キダーゼ (Xylと も記載する)のファミリーの系統樹を作成した。結果を図 8に示す。 j3—ガラクトシダー ゼファミリーには、 Gal_l Gal_6が存在する。 /3—キシロシダーゼファミリーには、 X yl_l— Xyl— 3が存在する。
[0275] これらの類似の遺伝子の発現パターンを見るために、 Gal— 1一 Ga卜 6および Xyl— 1一 Xyl— 3のスクロース存在下およびスクロース非存在下での発現を、プローブとし てそれぞれの遺伝子を用いることおよびスクロース存在下の条件ではスクロースを 1 %含む条件で成長させたこと以外は、上記 1. 2. 2に記載と同様の方法で、 RNAゲ ルブロット分析によって調べた。結果を図 9に示す。この結果、 Gal— 1および Xyl— 1 、糖欠乏に敏感に応答し、糖欠乏によって顕著に発現が誘導されることがわかった 。 Xyl— 3は、糖欠乏によって発現が促進された。
[0276] これらの糖分解関連遺伝子が糖欠乏に敏感に応答することから、他の糖分解関連 遺伝子も同様に応答するのではないかと考え、 —ダルコシダーゼ(Glc— 1)につい てプローブとして Glc_lを用いることおよびスクロース存在下の条件ではスクロースを 1 %含む条件で成長させたこと以外は、上記 1. 2. 2に記載と同様の方法で、 RNA ゲルプロット分析によって調べた。結果を図 10に示す。この結果、 β—ダルコシダー ゼもまた、糖欠乏に応答して発現が顕著に誘導されることがわかった。
[0277] Gal— 1の遺伝子産物(724アミノ酸)、 Xyl_lの遺伝子産物(774アミノ酸)および G lc-1の遺伝子産物(531アミノ酸)の構造を比較したところ、いずれも、 N末端にシグ ナルペプチドを有することがわかった(図 11)。それゆえ、これらの遺伝子産物は、細 胞外へ分泌されると予想される。また、これらは全て糖鎖付加シグナルを持ち、糖タ ンパク質であると考えられた。他の部分についてはこれらの 3つの遺伝子産物間での 相同性は低かった。
(実施例 3 : ーガラクトシダーゼ、 ーキシロシダーゼおよび ーダルコシダーゼの、 培養細胞での糖欠乏応答性発現の確認)
培養細胞は、容易に糖源を調整し得、かつ細胞壁タンパク質が培養液中に分泌さ れるという特徴を有する(図 12を参照)。 j3—ガラクトシダーゼ、 j3—キシロシダーゼぉ よび /3—ダルコシダーゼの発現が培養細胞中でも同様に糖欠乏によって誘導される のであれば、これらの遺伝子の有するプロモーターを用いて糖欠乏誘導性発現系を 構築することが可能である。そこで、シロイヌナズナ(ェコタイプ Columbia)を、 2%ス クロース(wZv)を含む 0. 5 X MS液体培地(MurashigeぉょびSkoog基本塩、 pH 5. 8)中で、 16時間明期 Z8時間喑期の光周期で 21°Cで成長させた。播種 1週間後 のシロイヌナズナの胚軸の部分を切り出し、この部分を、 3%スクロースおよび lmg/ L 2, 4—ジクロロフエノキシ酢酸、 1 X B5ビタミン(0. 4mg/L ミオイノシトール、 0. 004mg/L ニコチンアミド、 0. 004mg/L ピリドキシン HC1、 0. 04mg/L チア ミン HC1)および 0. 8%ァガロースを含む 1 X MS固形培地上にのせて喑所で 21°C で 1ヶ月間にわたって培養することによってカルスを誘導した。 1力月後、誘導された カルスを、ァガロースを含まなレ、 3%スクロースおよび lmg/L 2, 4—ジクロロフエノ キシ酢酸、 1 X B5ビタミン(0. 4mg/L ミオイノシトール、 0. 004mg/L ニコチン アミド、 0. 004mg/L ピリドキシン HC1、 0. 04mg/L チアミン HC1)を含む 1 X M S培地に植えて、暗黒下で 21でで 1 OOrpmで振盪しながら 1週間にわたつて懸濁培 養した。 1週間の懸濁培養後、このシロイヌナズナ培養細胞を、 0、 10、 30または 90 mMのスクロースおよび lmg/L 2, 4—ジクロロフエノキシ酢酸、 1 X B5ビタミン(0. 4mg/L ミオイノシトール、 0. 004mg/L ニコチンアミド、 0. 004mg/L ピリドキ シン HC1、 0. 04mg/L チアミン HC1)を含む 1 X MS培地中で 21°Cで 36時間にわ たって継代培養した。継代培養開始時 (0時間)、継代培養 12時間後、 24時間後お よび 36時間後に培養細胞の一部を取り出し、この細胞中での Gal— 1、 Xyl— 1および Glc— 1の発現を、各遺伝子についてプローブとしてそれぞれの遺伝子を用いること 以外は、上記 1. 2. 2に記載と同様の方法で、 RNAゲルプロット分析によって調べた 。結果を図 13に示す。この結果、 Gal— 1、 Xyl_lおよび Glc_lが、培養細胞中でも 糖欠乏による顕著に mRNA発現が誘導され、そしてスクロースが存在するとこれらの
遺伝子の mRNAの発現はほぼ完全に抑制されることがわかった。
[0279] 培養液中の Gal— 1、 Xyl— 1および Glc— 1の実際の酵素活性も同様に糖欠乏誘導 性で増加するか否かを決定するために、 3%スクロースおよび lmg/L 2, 4—ジクロ 口フエノキシ酢酸、 1 X B5ヒ、、タミン(0. 4mg/L ミ才イノシトーノレ、 0. 004mg/:L 二 コチンアミド、 0. 004mg/L ピリドキシン HC1、 0. 04mg/L チアミン HC1)を含む 1 X MS培地で前培養し、次いで、培養細胞を、 3%スクロースを含むかまたはスクロ ースを含まない同じ培地に移植して継代培養した後、 10時間後、 20時間後、 30時 間後または 40時間後に培養上清を 0. 1ml採取し、人工基質 (それぞれ、メチルゥン ベリフエロン— Gal、メチルゥンベリフエロン— Xylおよびメチルゥンベリフエロン— Glu) を用レ、、 365nmの励起波長および 455nmの吸収波長で蛍光顕微鏡を用いて、この 上清中の遊離した 4ーメチルゥンベリフヱロン(4—MU)の蛍光を測定することによって 、この上清中の β一ガラクトシダーゼ活性、 β—キシロシダーゼ活性および β—ダルコ シダーゼ活性を測定した。結果を図 14に示す。この結果、 一ガラクトシダーゼ、 β— キシロシダーゼおよび _ダルコシダーゼのいずれも、糖欠乏によって、タンパク質レ ベルで発現が顕著に誘導されて培養液中に分泌されることが確認された。
[0280] これらの結果から、糖欠乏(糖飢餓)時には、糖飢餓によって細胞壁分解酵素遺伝 子の発現が誘導され、細胞壁分解酵素が分泌され、この細胞壁分解酵素によって細 胞壁に存在する糖鎖が分解されて、ガラクトース、キシロース、グノレコースといった単 糖が遊離され、この遊離した糖を植物が炭素源として利用していると考えられる(図 1 5)。つまり、植物は光合成阻害などにより、糖飢餓状態に陥ると細胞壁多糖を分解し 、エネルギー源として利用すると考えられる。
[0281] Gal— 1、 Xyl— 1および Glc— 1が、どのような糖によって糖欠乏誘導性発現の制御を 受けているかを確認するために、上記のシロイヌナズナ培養細胞を、 3。/0スクロース および lmg/L 2, 4—ジクロロフエノキシ酢酸、 1 X B5ビタミン(0. 4mgZL ミオイ ノシトーノレ、 0. 004mg/L ニコチンアミド、 0. 004mg/L ピリドキシン HC1、 0. 0 4mg/L チアミン HC1)を含む I X MS培地で前培養し、次いで、 3%スクロースの 代わりにそれぞれ、炭素源としてスクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、 キシロース、マンノース、マンニトール、またはグルコースアナログである 2—デォキシ
—グルコース(2_d_gluc)もしくは 3_〇一メチルグルコース(3_oM_gluc)を 3%含む 同じ培地中で、暗黒下で 21°Cで 24時間培養した。 24時間培養後、培養細胞を採取 し、 mRNAを単離し、 RNAゲルプロット分析によって調べた。結果を図 16に示す。こ の結果、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトースおよびキシロースとレ、う代 謝可能な糖によって Gal— 1、 Xyl_lおよび Glc_lの mRNA発現は抑制され、一方、 2—デォキシ—グルコース、マンノース、 3_0_メチルグルコースおよびマンニトールと レ、う植物によって代謝されなレ、 (解糖系に入らなレ、)糖によっては、 Gal— 1、 Xyl— 1お よび Glc_lの mRNA発現が抑制されないことがわかった。このこと力ら、 Gal— 1、 Xyl _1および Glc_lの mRNA発現は、代謝可能な糖の存在の有無によって制御されて レ、ることがわかった(図 15)。これにより、糖による発現制御は、解糖系以降の物質に より制御されていると予想される。
[0282] (実施例 4 :タバコ BY— 2細胞における β一ガラクトシダーゼプロモーターまたは β - キシロシダーゼプロモーターによる異種遺伝子配列の発現)
目的タンパク質の遺伝子の発現量および発現させるタイミングを制御することは、効 率的なタンパク質生産を目指す場合に重要なファクターである。また、培養細胞の増 殖性もタンパク質の高生産のためには重要である。例えば、タバコ BY— 2細胞(Kato , A. ら、 Fermentation Technology Today 、 1972、 pp. 689— 695に 己載の 方法に従って作製され得る;東京大学大学院新領域創成科学研究科の馳澤盛一郎 先生より分与され得る)は、 1週間で約 100倍に増殖する、非常に増殖の速い培養細 胞株である。このような増殖の速い培養細胞を用いれば、糖欠乏誘導性プロモータ 一を用いた有用タンパク質生産がより効率的に行われると考えられる。そこで、シロイ ヌナズナから単離した糖欠乏誘導性遺伝子のプロモーターが、異種植物であるタバ コにおレ、ても糖欠乏誘導性に発現可能であるか否かを調べた。
[0283] (4. 1 j3 _ガラクトシダーゼ遺伝子のプロモーターに異種遺伝子配列を連結した 構築物の作製)
プロモーターおよびシグナルペプチドとして β一ガラクトシダーゼ(Gal— 1)遺伝子( MIPの ID #: At5g56870)由来の 1418bpのプロモーター(Ga卜 P)および 27ァミノ 酸配列のシグナルペプチド(SP)コード配列を含む領域(Gal_P_SP)を用レ、、異種
遺伝子配列として GFPコード配列を用いる。 Gal— 1のプロモーター領域としては、 G a卜 1の開始コドンより 1418bp上流の DNA配列を用いた。もちろん、当業者に公知 のように、プロモーター配列としてこれほど長い領域が必須というわけではなぐより短 レ、配歹' Jを用レ、ても同様の結果が獲得され得る。
[0284] 詳細には、シロイヌナズナ(ェコタイプ:コロンビア)のゲノム DNAを、臭化セチルトリ メチルアンモニゥム沈殿法(Murrayおよび Thompson, Nucleic Acids Res 8、 1980、 pp. 4321-4325) (こよって調製した。調製されたゲノム DNAをテンプレート とし、プライマー 1 (Gaト P— Hind) (AAGCTTATATGGACTAGCTAGACGTA AGC;配列番号 7)およびプライマー 2 (Gal-SP-Bam) (GGATCCATAAGAGA CTGATGCTTTTACTATACAAC ;配列番号 8)を用い、タカラバイオのパイ口べ ストポリメラーゼを用いて PCRを行うことによって、 /3 _ガラクトシダーゼのプロモータ 一配列およびその後ろのシグナルペプチドコード配列(Gal_P_SP)を増幅した。プ ライマー 1は、 Hindlll配列と galプロモーターの上流の配列と力 なる配列を有する 。プライマー 2は、 galのシグナルペプチドの推定切断部位から 5アミノ酸下流のァミノ 酸までと BamHI部位の配列とからなる配列を有する。このときの PCR反応条件は、 反応条件は添付の使用説明書に則っており、以下のとおりであった:
94°Cで 30秒間、 55°Cで 30秒間、 72°Cで 1分間を 1サイクルとして、 30サイクノレ行 つた後、 72°Cで 5分間の PCR反応条件。
[0285] PCR産物の増幅を電気泳動で確認した後、増幅された DNAフラグメント 1を、 pGE M— T (登録商標) Easyベクター(Promegaより入手)に連結し、 Ε· coliにクローニン グした。クローニングされた塩基配列の決定をおこない、 目的の DNA断片がクローン 化されていることを確認した。この E. coliを大量培養した後、この E. coliからべクタ 一を抽出し、抽出されたベクターを制限酵素 Hindlllおよび BamHIで切断し、電気 泳動し、ゲルから回収して精製することにより、 j3—ガラクトシダーゼをコードする遺伝 子のプロモーター配列およびその後ろのシグナルペプチドコード配列を含む DNAフ ラグメント 1 (Gal_P— SP; Gaト P— Gal_SPとも記載する)を得た(図 17aを参照のこと
) o
[0286] 一方、 pBI121 (Clontechより入手)を制限酵素 EcoRIおよび Hindlllで切断して、
CaMV 35Sプロモーター、 GUS遺伝子および Nosターミネータ一を有さないベクタ 一フラグメント 2を得た。また、 CaMV35S_sGFP (S65T) _N〇S3 ' (福田裕穂、西 村幹夫、中村研三監修、「植物の細胞を観る 実験プロトコール 遺伝子発現から細 胞内構造'機能まで」、秀潤社、 1997、 pp. 196-199に記載される;丹羽康夫氏より 分与された)を制限酵素 EcoRIおよび Hindlllで切断し、電気泳動し、ゲルから回収 して精製することによって、 CaMV35Sプロモーター、 sGFP遺伝子および NOSター ミネーターを含むフラグメント 2を得た。ベクターフラグメント 2とフラグメント 2とを連結し て、カナマイシン抵抗性遺伝子の下流に CaMV35Sプロモーター、 sGFP遺伝子お よび NOSターミネータ一を含むベクター 4を得た。このベクターを E. coli中にクロー ユングし、この E. coliを大量培養した後、この E. coliからベクター 4を抽出し、抽出さ れたベクター 4を Hindlllおよび BamHIで切断して、カナマイシン抵抗性遺伝子の 下流にプロモーター揷入用部位、 sGFP遺伝子および NOSターミネータ一を含むベ クタ一フラグメント 5を得た(図 17bを参照のこと)。
[0287] 次いで、上記で調製した DNAフラグメント 1とベクターフラグメント 5とを連結して、力 ナマイシン抵抗性遺伝子の下流に Galプロモーター、 Galシグナルペプチドコード配 歹 IJ、 Galの成熟ポリペプチド配列の最初の 5アミノ酸をコードする配歹 IJ、 GFP遺伝子 配列および Nosターミネータ一配列が連結されたプラスミド 6 (植物導入用構築物; p BI-Gal-P-SP-GFP)を得た。
[0288] (4. 2 形質転換 BY2細胞の確立)
この植物導入用構築物(pBI— Gal— P-SP— GFP)を、福田裕穂、西村幹夫、中村 研三監修、「植物の細胞を観る 実験プロトコール 遺伝子発現から細胞内構造'機 能まで」、秀潤社、 1997、 pp. 125— 129に記載のァグロバタテリゥム法に従って Agr obacterium tumefaciens (EHA105株)に導入し、 pBI_Gal_P_SP_GFPが導 入された Agrobacterium tumefaciensをタバコ培養細胞 BY—2株に感染させ、感 染後の BY—2細胞を、 200 μ gZmLカナマイシンおよび 500 μ g/mLカルべニシリ ンを含む BY— 2固形培地 (福田裕穂、西村幹夫、中村研三監修、「植物の細胞を観 る 実験プロトコール 遺伝子発現から細胞内構造 *機能まで」、秀潤社、 1997、 pp . 187— 191に記載)で選択して、形質転換 BY - 2細胞を得た。得られた形質転換 B
Y— 2細胞をカナマイシン存在下(50mg/L)で 3%スクロースを含む液体 BY— 2培地 (福田裕穂、西村幹夫、中村研三監修、「植物の細胞を観る 実験プロトコール 遺 伝子発現から細胞内構造'機能まで」、秀潤社、 1997、 pp. 187— 191に記載)中で 27°Cで振盪しながら液体培養した。 1週間ごとに、 0. 5mlの細胞を 50mlの新しい培 地に継代培養して、細胞株を維持した。継代培養に用いた培地中のスクロース濃度 は 3%であり、糖は充分に存在していた。
[0289] (4. 3 GFPの分泌誘導および分泌の確認)
この形質転換 BY— 2細胞を、継代 4日目に、ナイロンメッシュを通して培地を除去す ることによって取り出した。取り出された形質転換 BY— 2細胞を、スクロースを含まな レ、こと以外は組成が同じである液体 BY-2培地に移し、 27°Cで振盪培養した。スクロ ースを含まない培地に移植してから 3日目および 4日目の培地からタンパク質を抽出 し、 SDS—P AGEによりタンパク質を分画した。その後、 GFPに特異的な抗体である 、抗 GFP抗体(ロシュ'ダイァグノスティック社)を用い、中村研三ら監修、秀潤社、細 胞工学別冊、「植物のタンパク質実験プロトコール 遺伝子と組織から迫るタンパク質 の機能と構造」、 164— 172頁に記載の方法に従ってウェスタンブロッテイングをおこ なった。結果を図 18に示す。本実施例においては、形質転換 BY— 2細胞の増殖を、 600nmでの光学密度(OD )によって測定した。図 18のグラフにおいては、 OD
600 600 を縦軸に示し、スクロース含有培地での継代時点を 0日目とした培養日数を横軸に 示す。スクロース含有培地での培養を続けた場合、細胞は 7日目まで増殖し続けた。 培養 4日目にスクロースを含まない培地に継代した場合、細胞はほとんど増殖しなか つたが、 GFPタンパク質を分泌した。図 18のグラフ中の挿入図は、ウェスタンブロッテ イングによる、 GFPタンパク質の検出を示す。スクロースを含まない培地に移植してか ら 3日目の培地から検出された GFPタンパク質を左側の矢印で示す。スクロースを含 まない培地に移植してから 4日目の培地から検出された GFPタンパク質を右側の矢 印で示す。この結果、糖欠乏により培地に GFPタンパク質が分泌され、分泌された G FPは培地中で蓄積されることが確認された。
[0290] それゆえ、シロイヌナズナとは異種であるタバコ細胞においても、 Gal— 1が糖欠乏 性で誘導され、そして GFPが培養液中に分泌されることがわかる。このことから、糖欠
乏誘導性プロモーターおよびシグナルペプチド配列を用いることによって、異種遺伝 子配列を制御可能に、効率的に発現させ、分泌させ得ることがわかる。
[0291] (実施例 5 ーキシロシダーゼ遺伝子のプロモーターによる異種遺伝子配列の発 現)
分泌型 β—キシロシダーゼ遺伝子のプロモーターを単離し、レポーター遺伝子とし て /3—グルクロニダーゼ(GUS)に連結したベクターを作製した。このベクターを、上 記 3. 1と同様にして、 Agrobacterium媒介形質転換法によって、上記で作製したシ ロイヌナズナ培養細胞および横浜国立大学平塚和之教授から分与されたタバコ BY 一 2培養細胞に導入した。
[0292] その結果、 GUSタンパク質は本来の /3—キシロシダーゼ同様、糖欠乏により顕著に 誘導された。つまり、 —キシロシダーゼプロモーターを用いることにより、 目的タンパ ク質を植物培養細胞において糖欠乏により発現誘導させることが可能であった。
[0293] この発現系を用いることで、効率的な有用タンパク質の植物細胞での分泌生産が 可能となる。
[0294] (実施例 6:シロイヌナズナ β一ガラクトシダーゼプロモーター(Gal— Ρ)およびシグナ ルペプチド(SP)の制御により、シロイヌナズナ細胞の細胞外 (培地)に GFPを分泌さ せる実験)
上記実施例 4で作製した構築物 (植物導入用構築物; pBI - Gal - P - SP - GFP)を 、秀潤社、細胞工学別冊、「モデル植物の実験プロトコール」、 109— 113ページ)に 従って、シロイヌナズナ植物体に導入して、形質転換シロイヌナズナ種子を得た。こ の種子を発芽させ、成長させ、充分に成長した形質転換植物体力 葉を切り取り、水 (糖欠乏条件)または 1 %スクロース水溶液 (糖存在条件)に浮かべ、喑所に一晩置い た。この葉を磨り潰してタンパク質を抽出し、実施例 4と同様にウェスタンブロッテイン グを行った。その結果、水に浮かべた葉についてのみ、 GFP遺伝子の発現および G FPタンパク質の蓄積が確認された。このこと力、ら、この形質転換シロイヌナズナ植物 の葉では、 GFP遺伝子の発現および GFPタンパク質の蓄積が糖欠乏特異的に起こ ることが確認された。
[0295] (実施例 7:シロイヌナズナ β一ガラクトシダーゼプロモーター(Gal— Ρ)およびシグナ
ルペプチド(SP)の制御により、シロイヌナズナ細胞の細胞外 (培地)にマウス抗体を 分泌させる実験)
GFP遺伝子の代わりにマウス抗体遺伝子を用いること以外は実施例 4と同様にして 、マウス抗体用発現構築物を作製する。この発現構築物を、実施例 6と同様にしてシ ロイヌナズナ培養細胞に導入して、形質転換シロイヌナズナ細胞を得る。実施例 4と 同様にゥヱスタンプロッテイングにより確認することにより、この形質転換シロイヌナズ ナ細胞では、マウス抗体遺伝子の発現およびタンパク質の蓄積が糖欠乏特異的に 起こること力確認される。また、培地中に発現されたマウス抗体を精製し、抗体特異 性試験を行うことにより、発現されたマウス抗体が抗体として機能することを確認し得 る。
[0296] (実施例 8:シロイヌナズナ β一ガラクトシダーゼプロモーター(Gal— Ρ)およびシグナ ルペプチド(SP)の制御により、シロイヌナズナ細胞の細胞外(培地)にインターフエ口 ンを分泌させる実験)
GFP遺伝子の代わりにインターフェロン α遺伝子を用いること以外は実施例 4と同 様にして、インターフェロン α用発現構築物を作製する。この発現構築物を、実施例 6と同様にしてシロイヌナズナ培養細胞に導入して、形質転換シロイヌナズナ細胞を 得る。実施例 4と同様にウェスタンブロッテイングにより確認することにより、この形質転 換シロイヌナズナ細胞では、インターフェロン α遺伝子の発現およびタンパク質の蓄 積が糖欠乏特異的に起こることが確認される。また、培地中に発現されたインターフ ェロン αを精製し、マウスに投与することにより、植物中で発現されたタンパク質 (イン ターフェロンひ)が目的の機能を有することを確認し得る。
[0297] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ
とが理解される。
産業上の利用可能性
[0298] 本発明により、糖欠乏を制御することによって容易に発現を制御し得る、発現系が 提供される。
[0299] 本発明を用いることにより、生産性が低いことから開発研究が進展してなレ、インター フエロン、抗体、ワクチンなどの医薬品の植物細胞による生産に関連する産業の活性 化が期待できる。
[0300] (配列表の説明)
配列番号 1:シロイヌナズナの β一ガラクトシダーゼをコードするヌクレオチド配列(プ 口モーター領域およびシグナルコード領域を含む);
配列番号 2:シロイヌナズナの β一ガラクトシダーゼのアミノ酸配列;
配列番号 3:シロイヌナズナの βーキシロシダーゼをコードするヌクレオチド配列(プ 口モーター領域およびシグナルコード領域を含む);
配列番号 4:シロイヌナズナの βーキシロシダーゼのアミノ酸配列;
配列番号 5:シロイヌナズナの β一ダルコシダーゼをコードするヌクレオチド配列(プ 口モーター領域およびシグナルコード領域を含む);
配列番号 6:シロイヌナズナの β—ダルコシダーゼのアミノ酸配列;
配列番号 7:プライマー 1のヌクレオチド配列;
配列番号 8:プライマー 2のヌクレオチド配列。