JPWO2019172136A1 - 複層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、優れた透明性および接着性を有すると共に、導電性にも優れる複層フィルムの提供を目的とする。本発明の複層フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた易接着層とを備える複層フィルムであって、前記易接着層は、酸構造含有ポリウレタンと、前記酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物の硬化物からなる。

Description

本発明は、複層フィルムおよびその製造方法に関するものである。
液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等の各種画像表示装置には、様々な光学フィルムが用いられる。このような光学フィルムは、例えば偏光子、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防眩層、防汚層などの他の様々な機能を有する任意の部材に貼り合わせて使用される。そのため、このような光学フィルムは、これらの部材に良好に接着することが求められる。
このような要求に対し、単独で、または接着剤の下地として用いることで、優れた接着性を発現しうる層(以下、「易接着層」という。)を、光学フィルムの表面に設ける手法が従来から使用されている。例えば、特許文献1では、基材フィルム上に所定の組成物を硬化して得られる易接着層を設けてなる複層フィルムが提案されている。そして、特許文献1によれば、上述した複層フィルムは、貼り合わせ対象の部材に良好に接着することができる。
国際公開第2015/098750号
しかしながら、上記従来の複層フィルムには、特に易接着フィルム側に粉塵等が付着するのを抑制して取り扱い性を確保すべく、導電性を高めることが求められていた。
すなわち、上記従来の複層フィルムには、光学フィルムとして求められる透明性、および貼り合わせ対象の部材に対する接着性を確保しつつ、導電性を高めるという点において、更なる改善の余地があった。
そこで、本発明は、優れた透明性および接着性を有すると共に、導電性にも優れる複層フィルム、並びに当該複層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者は、基材フィルム上に易接着層を備える複層フィルムの作製に際し、所定の成分を含むポリウレタン組成物を硬化させることで易接着層を形成すれば、得られる複層フィルムの透明性、接着性、および導電性をバランス良く高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複層フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた易接着層とを備える複層フィルムであって、前記易接着層は、酸構造含有ポリウレタンと、前記酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物の硬化物からなることを特徴とする。上述したとおり、酸構造含有ポリウレタンと、酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物を硬化させてなる易接着層を基材フィルム上に備える複層フィルムは、優れた透明性および接着性が確保されており、また導電性にも優れる。
なお、本発明において、有機塩基が「不揮発性」であるとは、当該有機塩基が1atm、100℃未満の条件下で気化しないことを意味する。
そして、本発明において、カーボンナノチューブが含む単層カーボンナノチューブの「割合」は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ100本のうちの単層カーボンナノチューブの数を数えることで得られる。
ここで、本発明の複層フィルムは、前記酸構造含有ポリウレタンの引っ張り弾性率が、1000N/mm2以上5000N/mm2以下であることが好ましい。引っ張り弾性率が上述の範囲内である酸構造含有ポリウレタンを用いて易接着層を形成すれば、易接着層を備える複層フィルムの接着性を更に向上させると共に、易接着層の破損を防止することができる。
なお、本発明において、酸構造含有ポリウレタンの「引っ張り弾性率」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
そして、本発明の複層フィルムは、前記基材フィルムが、脂環式構造含有重合体とアクリル系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。重合体成分として脂環式構造含有重合体および/またはアクリル系重合体を含む基材フィルムを用いれば、複層フィルムの優れた透明性を十分に確保しつつ、低吸湿性、寸法安定性、および軽量性を高めることができる。
また、本発明の複層フィルムは、前記架橋剤が、エポキシ系架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としてエポキシ系架橋剤を用いれば、酸構造含有ポリウレタンを含むポリウレタン組成物を良好に硬化させて、複層フィルムの接着性を更に向上させることができる。
ここで、本発明の複層フィルムは、前記ポリウレタン組成物が、前記酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり、0.1質量部以上5.0質量部以下の前記カーボンナノチューブを含むことが好ましい。上述した範囲内の量でカーボンナノチューブを含むポリウレタン組成物を用いて易接着層を形成すれば、複層フィルムの透明性を更に高めると共に、導電性を一層向上させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複層フィルムの製造方法は、基材フィルム上に、酸構造含有ポリウレタンと、前記酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物を供給する工程と、前記基材フィルム上に供給された前記ポリウレタン組成物を硬化させる工程と、を含むことを特徴とする。上述した工程を経て基材フィルム上に易接着層を形成すれば、優れた透明性および接着性が確保されており、また導電性にも優れる複層フィルムが得られる。
ここで、本発明の複層フィルムの製造方法は、前記基材フィルム上に前記ポリウレタン組成物を供給する工程に先んじて、前記酸構造含有ポリウレタン、前記不揮発性の有機塩基、および水を含む水分散体と、前記カーボンナノチューブ、分散剤、および水を含む水分散液と、前記架橋剤とを混合して前記ポリウレタン組成物を調製する工程を含むことが好ましい。上述の工程を経て調製されるポリウレタン組成物を用いて易接着層を形成すれば、カーボンナノチューブの凝集を抑制して、易接着層を備える複層フィルムの透明性および導電性を更に向上させることができる。
そして、本発明の複層フィルムの製造方法は、前記分散剤が、アニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。分散剤としてアニオン性界面活性剤を用いれば、カーボンナノチューブの凝集を更に抑制して、易接着層を備える複層フィルムの透明性および導電性をより一層向上させることができる。
本発明によれば、優れた透明性および接着性を有すると共に、導電性にも優れる複層フィルム、並びに当該複層フィルムの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の複層フィルムは、特に限定されないが、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの光学フィルムとして用いることができる。また、本発明の複層フィルムは、本発明の複層フィルムの製造方法を用いて製造することができる。そして、本発明の複層フィルムは、例えば、任意の部材と張り合わせて積層体として各種用途に用いることができる。
(複層フィルム)
本発明の複層フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面または両面に設けられた易接着層とを備える。なお、易接着層は、通常、基材フィルムの表面に、他の層を介することなく直接設けられる(即ち、易接着層は、通常、基材フィルムに隣接して設けられる)。また、本発明のフィルムは、基材フィルムと易接着層以外の層(その他の層)を備えていてもよい。
そして本発明の複層フィルムの易接着層は、酸構造含有ポリウレタンと、酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物を硬化してなる硬化物であることを特徴とする。
本発明の複層フィルムは、上述した所定の成分を含有するポリウレタン組成物を硬化することにより易接着層を形成しているため、優れた透明性および接着性を有すると共に、導電性にも優れる。
<基材フィルム>
基材フィルムとしては、特に限定されないが、樹脂からなるフィルム(樹脂フィルム)を用いることができる。ここで、基材フィルムを構成する樹脂は、重合体成分を含み、任意に重合体成分以外の成分(任意の成分)を含み得る。
<<重合体成分>>
基材フィルムを構成する樹脂中に含まれる重合体成分としては、特に限定されないが、基材フィルムを備える複層フィルムの優れた透明性を十分に確保しつつ、低吸湿性、寸法安定性、および軽量性を高める観点から、脂環式構造含有重合体、アクリル系重合体が好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。なお、重合体成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[脂環式構造含有重合体]
脂環式構造含有重合体は、脂環式構造を有する繰り返し単位を含む重合体である。そして、脂環式構造含有重合体としては、主鎖に脂環式構造を有する重合体、および、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いることもできるが、基材フィルムを備える複層フィルムに優れた機械強度および耐熱性を発揮させる観点からは、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。なお、脂環式構造含有重合体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
―脂環式構造―
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、複層フィルムに優れた機械強度および耐熱性を発揮させる観点から、シクロアルカン構造およびシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造がより好ましい。
ここで、脂環式構造を構成する炭素原子の数は、一つの脂環式構造当たり、4個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、30個以下であることが好ましく、20個以下であることが好ましく、15個以下であることが更に好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子の数が上述した範囲内であれば、基材フィルムの成形性を確保しつつ、基材フィルムを備える複層フィルムに優れた機械強度および耐熱性を発揮させることができる。
また、脂環式構造含有重合体中における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、脂環式構造含有重合体を構成する全繰り返し単位を100質量%として、50質量%超であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%以下である。脂環式構造含有重合体中における脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が50質量%超であれば、基材フィルムを備える複層フィルムの透明性を高めつつ、耐熱性を向上させることができる。
―脂環式構造含有重合体の具体例―
具体的な脂環式構造含有重合体としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体を挙げることができる。これらの中でも、基材フィルムの成形性を確保しつつ、基材フィルムを備える複層フィルムに優れた透明性を発揮させる観点から、ノルボルネン系重合体が好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;を挙げることができる。これらの中でも、基材フィルムの成形性を確保しつつ、基材フィルムを備える複層フィルムに優れた透明性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、および軽量性を付与する観点から、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物、およびノルボルネン構造を有する単量体と任意の単量体との開環共重合体の水素化物が好ましい。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、これらの化合物が環に有する置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基を挙げることができる。極性基としては、ヘテロ原子、およびヘテロ原子を含む基が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子が挙げられる。またヘテロ原子を含む基としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基(カルボン酸無水物基)、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
上述したノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合または付加共重合可能な任意の単量体としては、特に限定されず、例えば国際公開第2015/098750号に挙げられたものを用いることができる。
また、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、特に限定されず、例えば国際公開第2015/098750号に挙げられたものを用いることができる。
―脂環式構造含有重合体の調製方法―
脂環式構造含有重合体の調製方法は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、ノルボルネン構造を有する重合体は、少なくとも上述したノルボルネン構造を有する単量体を含む単量体組成物を、開環重合又は付加重合し、任意に水素化を行うことにより調製することができる。
[アクリル系重合体]
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位と(メタ)アクリル酸誘導体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。アクリル系重合体は、任意に、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体以外の単量体(その他の単量体)に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
―(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体―
ここで、(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸またはメタクリル酸が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。そして、(メタ)アクリル酸エステルとしては、単官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどのメタクリル酸エステル類;を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロキシプロピルメタクリレート、テトラエチレンジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートを挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
そして、アクリル系重合体中における(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の割合は、アクリル系重合体を構成する全繰り返し単位を100質量%として、50質量%超であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%以下である。
―その他の単量体―
その他の単量体としては特に限定されず、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸誘導体と共重合可能な任意の単量体を用いることができる。例えば、その他の単量体としては、特開第2015−024511号公報に記載された、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、シアン化ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン単量体を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
―アクリル系重合体の調製方法―
アクリル系重合体の調製方法は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、多官能の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含むアクリル系重合体は、多官能の(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体組成物を、公知の光重合開始剤を用いて付加重合することにより調製することができる。
<<任意の成分>>
基材フィルムを構成する樹脂が、上述した重合体成分以外に任意に含み得る成分としては、例えば、着色剤、可塑剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、基材フィルムを構成する樹脂中に含まれる上述した重合体成分以外の成分は、0質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
<<基材フィルムの構造>>
基材フィルムは、一層のみで構成される単層構造のフィルムであってもよいし、二層以上で構成される複層構造のフィルムであってもよい。また、基材フィルムが複層構造を有する場合は、各層の形成に用いられる樹脂は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
<<基材フィルムの性状>>
ここで、基材フィルムの全光線透過率は、複層フィルムに良好な透明性を発揮させる観点から、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
また、基材フィルムのヘイズは、複層フィルムに良好な透明性を発揮させる観点から、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、基材フィルムの「全光線透過率」および「ヘイズ」は、本明細書の実施例に記載する複層フィルムの「全光線透過率」および「ヘイズ」と同様にして測定することができる。
そして、基材フィルムの厚みは、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
<<基材フィルムの製造方法>>
基材フィルムの製造方法は特に限定されず、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などの公知の手法を用いることができる。さらに、基材フィルムは、延伸処理を施されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。
また、基材フィルムと後述する易接着層とを良好に密着させるため、基材フィルムの表面に改質処理を施すことが好ましい。基材フィルムに対する表面改質処理としては、例えば、エネルギー線照射処理および薬品処理が挙げられる。
エネルギー線照射処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理などが挙げられる。これらの中でも処理効率の点等から、コロナ放電処理およびプラズマ処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。
また、薬品処理としては、ケン化処理や、酸化剤水溶液(例えば、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸)中に浸漬し、その後、水で洗浄する処理などが挙げられる。
<易接着層>
易接着層は、所定のポリウレタン組成物の硬化物からなる層である。所定のポリウレタン組成物の硬化物からなる易接着層を上述した基材フィルム上に形成して複層フィルムとすることで、得られる複層フィルムの優れた透明性および接着性を確保しながら、導電性を向上させることができる。
<<ポリウレタン組成物>>
ポリウレタン組成物は、上述した通り、酸構造含有ポリウレタン、酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤、不揮発性の有機塩基、および50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ、を少なくとも含む。また、ポリウレタン組成物は、水などの溶媒を含んでいてもよい。更には、ポリウレタン組成物は、酸構造含有ポリウレタン、架橋剤、有機塩基、カーボンナノチューブ、および溶媒以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。
[酸構造含有ポリウレタン]
酸構造含有ポリウレタンは、主鎖にウレタン結合(−NHCOO−)を有すると共に、主鎖および/または側鎖に酸構造を含有する重合体である。
ここで、酸構造含有ポリウレタンが含有する酸構造としては、例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)などの酸性基を挙げることができ、カルボキシル基が好ましい。なお、酸構造含有ポリウレタンは、1種の酸構造を有していてもよく、2種以上の酸構造を任意の比率で有していてもよい。
上述した酸構造を含有するポリウレタンは、溶媒として水を含むポリウレタン組成物中で、酸構造含有ポリウレタンの分散を補助し得る界面活性剤の量が少なくても(またはポリウレタン組成物が界面活性剤を含まなくとも)、当該組成物中で粒子状となり良好に分散することができる。このように、水中で、界面活性剤が無くとも酸構造含有ポリウレタン粒子が分散安定化しうることを、酸構造含有ポリウレタンが「自己乳化型」であるという。
そして、上述した酸構造を含有するポリウレタンを用いることで、易接着層を備える複層フィルムの耐水性の改善が期待されると共に、界面活性剤の量を低減可能となるため、結果として、得られる複層フィルムの接着性を更に高めつつ、透明性を一層向上させることができる。
そして、例えば、酸構造としてカルボキシル基を含有するポリウレタン(カルボキシル基含有ポリウレタン)としては、(i)1分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物、(ii)1分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物、並びに、(iii)1分子内に2つ以上の水酸基およびカルボキシル基を有する化合物を反応させて得られる重合体を用いることができる。
―(i)1分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物―
(i)1分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、国際公開第2015/098750号に記載の、公知のポリオールを用いることができる。なお、(i)1分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。そして、(i)1分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを好ましく用いることができる。
ここで、ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸又はその無水物と、ポリオール(ポリエステルポリオールを除く)とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。
ポリエステルポリオールの調製に用いうる多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;トリメリット酸等のトリカルボン酸が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルポリオールの調製に用いうるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
そして、ポリエステルポリオールの具体例としては、エチレングリコールとアジピン酸との縮合物、1,4−ブタンジオールとアジピンとの縮合物、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との縮合物、1,6−ヘキサンジオールと、プロピレングリコールと、アジピン酸との縮合物が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールには、グリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンジオールも含まれる。
ポリエーテルポリオールとしては、「ポリエステルポリオールの調製に用いうるポリオール」として上述したポリオールのアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(テトラヒドロフランなど)との開環共重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、1,4−ブタンジオール共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。ポリエーテルポリオールの更なる具体例としては、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール等が挙げられる。
―(ii)1分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物―
(ii)1分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。なお、(ii)1分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数1以上12以下の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数4以上18以下の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
―(iii)1分子内に2つ以上の水酸基およびカルボキシル基を有する化合物―
(iii)1分子内に2つ以上の水酸基およびカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ジメチロールアルカン酸が挙げられる。なお、(iii)1分子内に2つ以上の水酸基およびカルボキシル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸が挙げられる。
―酸構造含有ポリウレタンの調製方法―
酸構造含有ポリウレタンの調製方法は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、上述した(i)の化合物、(ii)の化合物、および(iii)の化合物を、公知の手法により重縮合することにより調製することができる。
なお、酸構造含有ポリウレタンには、後述する架橋剤との反応性を良好にすべく、上述した酸構造以外の極性基(アミノ基、エポキシ基など)を公知の方法で導入してもよい。
―酸構造含有ポリウレタンの性状―
上述のようにして得られる酸構造含有ポリウレタンは、引っ張り弾性率が1000N/mm2以上であることが好ましく、1200N/mm2以上であることがより好ましく、1400N/mm2以上であることが更に好ましく、5000N/mm2以下であることが好ましく、4000N/mm2以下であることがより好ましく、3000N/mm2以下であることが更に好ましい。酸構造含有ポリウレタンの引っ張り弾性率が1000N/mm2以上であれば、易接着層を備える複層フィルムの接着性を更に向上させることができる。一方、酸構造含有ポリウレタンの引っ張り弾性率が5000N/mm2以下であれば、易接着層の破損を防止することができる。
また、酸構造含有ポリウレタンの酸価は、20mgKOH/g以上であることが好ましく、25mgKOH/g以上であることがより好ましく、250mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸構造含有ポリウレタンの酸価が20mgKOH/g以上であれば、酸構造含有ポリウレタンの水中での分散性を十分に確保することができる。一方、酸構造含有ポリウレタンの酸価が250mgKOH/g以下であれば、易接着層を備える複層フィルムの耐水性を向上させることができる。
なお、本発明において、酸構造含有ポリウレタンの「酸価」は、JIS K 0070:1992に準じて測定することができる。
ここで、酸構造含有ポリウレタンは、ポリウレタン組成物中において、後述する不揮発性の有機塩基によって中和されていることが好ましい。すなわち、ポリウレタン組成物は、不揮発性の有機塩基によって中和された酸構造含有ポリウレタンを含むことが好ましい。酸構造含有ポリウレタンの酸構造が有機塩基によって中和されていれば、複層フィルムの接着性を更に高めることができる。加えて、複層フィルムが、高温下に曝された後であっても、その透明性を十分に発揮することができる。
また、酸構造含有ポリウレタンは、ポリウレタン組成物中で任意の状態で存在することができ、例えば溶媒中で粒子状となり分散していても良く、溶媒中に溶解していてもよいが、溶媒中で粒子状となり分散していることが好ましい。酸構造含有ポリウレタン粒子が溶媒中に分散している場合、酸構造含有ポリウレタン粒子の平均粒子径は、易接着層を備える複層フィルムの透明性を更に向上させる観点から、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましい。
なお、本発明において、「平均粒子径」としては、レーザー回折法によって粒子径分布を測定し、測定された粒子径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を採用する。
[架橋剤]
架橋剤は、上述した酸構造含有ポリウレタンを架橋することにより、ポリウレタン組成物を硬化させうるものであれば特に限定されない。架橋剤により酸構造含有ポリウレタンを架橋させることで、得られる易接着層を備える複層フィルムの機械強度、接着性および耐湿熱性を向上させることができる。そして、架橋剤は、通常、酸構造含有ポリウレタンが有する反応性の基(上述した酸性基や、合成反応の際に消費されず未反応で残存した水酸基など)と反応して、架橋構造を形成する。
ここで、架橋剤としては、酸構造含有ポリウレタンが有する反応性の基と反応して結合を形成可能な官能基を1分子内に2つ以上有する化合物を用いることができる。そして、架橋剤としては、酸構造含有ポリウレタンが有するカルボキシル基又はその無水物基と反応して結合を形成可能な官能基を1分子内に2つ以上有する化合物を用いることが好ましい。
「酸構造含有ポリウレタンが有するカルボキシル基又はその無水物基と反応して結合を形成可能な官能基」としては、例えば、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基が挙げられる。なお、架橋剤は、これらの官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上を有していてもよい。そして、これらの官能基の中でも、易接着層を備える複層フィルムの接着性を更に向上させる観点から、エポキシ基が好ましい。
また、架橋剤としては、特に限定されないが、エポキシ系架橋剤(1分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物)、カルボジイミド系架橋剤(1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を有する化合物)、オキサゾリン系架橋剤(1分子内に2つ以上のオキサゾリン基を有する化合物)、イソシアネート系架橋剤(1分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物)を挙げることができる。なお、架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ここで、上述したエポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤としては、国際公開第2015/098750号で、「エポキシ化合物」、「カルボジイミド化合物」、「オキサゾリン化合物」、「イソシアネート化合物」として挙げられたものをそれぞれ用いることができる。そして、これらの架橋剤の中でも、易接着層を備える複層フィルムの接着性を更に向上させる観点から、エポキシ系架橋剤が好ましい。
―エポキシ系架橋剤―
エポキシ系架橋剤の好適な例としては、ポリオール類とエピクロルヒドリンのエーテル化反応により得られる化合物、ジカルボン酸とエピクロルヒドリンのエステル化反応により得られる化合物が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の調製に用いられるポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン(グリセロール)、ポリグリセリン(ポリグリセロール)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ系架橋剤の調製に用いられるジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、ポリオール類とエピクロルヒドリンの反応の際には、通常、ポリオール類1モルに対し、エピクロルヒドリンを2モル反応させる。また、ジカルボン酸とエピクロルヒドリンの反応の際には、通常、ジカルボン酸1モルに対し、エピクロルヒドリンを2モル反応させる。
より具体的にエポキシ系架橋剤の例を挙げると、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類およびトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
また、エポキシ系架橋剤の好適な例を市販品で挙げると、ナガセケムテックス社製の「デナコール(登録商標)シリーズ」(デナコールEX−313、EX−521,EX−614B、EX−313、EX−810)等が挙げられる。
なお、エポキシ系架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
―架橋剤の配合量―
ここで、ポリウレタン組成物は、酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり、架橋剤を1質量部以上含むことが好ましく、3質量部以上含むことがより好ましく、7質量部以上含むことが更に好ましく、10質量部以上含むことが特に好ましく、200質量部以下含むことが好ましく、100質量部以下含むことがより好ましく、60質量部以下含むことが更に好ましく、30質量部以下含むことが特に好ましい。ポリウレタン組成物中の架橋剤の配合量が上述した範囲内であれば、架橋反応を良好に進行させて、易接着層を備える複層フィルムの接着性を更に高めると共に、機械強度を向上させることができる。
[不揮発性の有機塩基]
不揮発性の有機塩基は、酸構造含有ポリウレタンの酸構造を中和する中和剤として機能する成分である。そして、有機塩基は、酸構造含有ポリウレタンの酸構造を中和することで、易接着層を備える複層フィルムの接着性向上に寄与し得る。
―融点および沸点―
不揮発性の有機塩基は、上述した通り1atm、100℃の条件下で気化しない有機塩基である。換言すると、不揮発性の有機塩基は、融点は100℃未満であるが沸点が100℃以上の有機塩基、または、融点が100℃以上の有機塩基であると言える。不揮発性の有機塩基を用いず、例えは沸点が100℃未満の有機塩基を用いると、易接着層を備える複層フィルムの接着層を十分に向上させることができない。
ここで、有機塩基の融点は、例えば、110℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることが更に好ましい。なお、有機塩基の融点は、特に限定されないが、通常250℃以下である。
また、有機塩基の沸点は、例えば、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。なお、有機塩基の沸点の上限値は特に限定されないが、通常300℃以下である。
―不揮発性の有機塩基の具体例―
ここで、不揮発性の有機塩基としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、亜鉛アンモニウム錯体、銅アンモニウム錯体、銀アンモニウム錯体、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、キノリン、ピコリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−N−ジエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−アミノエチル)−2−エチルイミダゾール、2−アミノイミダゾールサルフェート、2−(2−アミノエチル)−ベンゾイミダゾール、ピラゾール、5−アミノピラゾール、1−メチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−5−アミノピラゾール、1,3−ジメチル−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−3−メチル−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−メチル−4−アシノ−5−アミノピラゾール、1−イソプロピル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、3−メチル−4−クロロ−5−アミノピラゾール、1−ベンジル−4−クロロ−5−アミノピラゾールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
そしてこれらの中でも、易接着層を備える複層フィルムの接着層を更に向上させる観点から、アジピン酸ジヒドラジドなどの不揮発性のアミン化合物が好ましい。
―有機塩基の配合量―
ここで、ポリウレタン組成物は、酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり、不揮発性の有機塩基を0.5質量部以上含むことが好ましく、1質量部以上含むことがより好ましく、2質量部以上含むことが更に好ましく、30質量部以下含むことが好ましく、20質量部以下含むことがより好ましく、10質量部以下含むことが更に好ましい。ポリウレタン組成物中の不揮発性の有機塩基の配合量が、酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり0.5質量部以上であれば、易接着層を備える複層フィルムの接着性を更に向上させることができ、30質量部以下であれば、複層フィルムをポリビニルアルコール製の偏光子に接着して用いた場合、当該偏光子の色抜けを防止することができる。
[カーボンナノチューブ]
カーボンナノチューブは、主として易接着層を備える複層フィルムの導電性向上に寄与し得る成分である。
―単層カーボンナノチューブの割合―
ここで、カーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブが存在する。これらの中でも、本発明においては、単層カーボンナノチューブを用いることが必須である。単層カーボンナノチューブを用いることで、分散体の分散粒子サイズを小さくすることができ、易接着層を備える複層フィルムの透明性を確保することができる。
そして、本発明においてポリウレタン組成物中に含まれるカーボンナノチューブは、50%以上100%の割合で単層カーボンナノチューブを含有することが必要であり、70%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有することが好ましく、80%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有することがより好ましく、85%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有することが更に好ましく、90%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有することが特に好ましい。単層カーボンナノチューブの割合が50%未満であるカーボンナノチューブを用いると、易接着層を備える複層フィルムの導電性が確保できないのみならず、透明性も低下する。
―比表面積―
ここで、カーボンナノチューブは、比表面積が600m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、1000m2/g以上であることが更に好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。カーボンナノチューブの比表面積が600m2/g以上であれば、多層カーボンナノチューブやアモルファスカーボン、金属不純物が少ないので、易接着層を備える複層フィルムの透明性を更に向上させることができる。一方、カーボンナノチューブの比表面積が2500m2/g以下であれば、カーボンナノチューブの構造欠陥が少ないので、易接着層を備える複層フィルムの導電性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
―平均直径(AV)および直径分布(3σ)―
また、カーボンナノチューブは、平均直径(Av)に対する直径分布(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.40以上であることが更に好ましく、0.50以上であることが特に好ましく、0.60未満であることが好ましい。カーボンナノチューブの3σ/Avが上述の範囲内であれば、易接着層を備える複層フィルムの導電性を更に向上させることができる。
そして、カーボンナノチューブの平均直径(Av)は、易接着層を備える複層フィルムの導電性を更に向上させる観点から、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
なお、本発明において、「直径分布(3σ)」とは、カーボンナノチューブの直径の標本標準偏差(σ)に3を乗じたものを指す。そして、本発明において、「カーボンナノチューブの平均直径(Av)」、「カーボンナノチューブの直径の標本標準偏差(σ)」および「カーボンナノチューブの平均長さ」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡での観察下、無作為に選択したカーボンナノチューブ100本の直径(外径)および長さを測定して求めることができる。
また、カーボンナノチューブの平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、カーボンナノチューブの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたカーボンナノチューブを複数種組み合わせることにより調整してもよい。
―G/D比―
本発明に用いるカーボンナノチューブのG/D比、すなわち、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比としては、10以下であることが好ましく、4以下であることが好ましい。G/D比が10以下であることによってカーボンナノチューブの構造欠陥が多く、屈曲点が増えるので、カーボンナノチューブの束構造をほぐして分散粒子サイズを小さくすることができ、粗大粒子による欠陥量(はじきムラ)を低減することが可能である。
なお、G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm-1付近)とDバンド(1350cm-1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。なお、G/D比の下限は、特に限定されないが、1.0以上であることが好ましい。G/D比が1.0以上であれば、易接着層を備える複層フィルムの導電性を十分に確保することができる。
―カーボンナノチューブの調製方法―
なお、上述した性状を有するカーボンナノチューブは、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりカーボンナノチューブを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)を用いることができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
―カーボンナノチューブの配合量―
ここで、ポリウレタン組成物は、酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり、カーボンナノチューブを0.1質量部以上含むことが好ましく、0.4質量部以上含むことがより好ましく、0.8質量部以上含むことが更に好ましく、1.1質量部以上含むことが一層好ましく、1.2質量部以上含むことが特に好ましく、5.0質量部以下含むことが好ましく、3.4質量部以下含むことがより好ましく、3.0質量部以下含むことが特に好ましい。ポリウレタン組成物中のカーボンナノチューブの配合量が、酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり0.1質量部以上であれば、易接着層を備える複層フィルムの導電性を更に向上させることができ、5.0質量部以下であれば、易接着層を備える複層フィルムの透明性を一層高めることができる。
[溶媒]
ポリウレタン組成物が含み得る溶媒としては、特に限定されないが、水と、水溶性の溶媒を好ましく挙げることができる。ここで水溶性の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。中でも、溶媒としては、水を用いることが好ましい。また、溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタン組成物に含まれる溶媒の量は、例えばポリウレタン組成物の粘度が塗布に適した範囲となるよう、適宜調整することができる。ポリウレタン組成物が溶媒を含む場合、ポリウレタン組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。ポリウレタン組成物の固形分濃度が上述した範囲内であれば、ポリウレタン組成物の取り扱い性および塗布性を確保することができる。
[その他の成分]
ポリウレタン組成物が、上述した酸構造含有ポリウレタン、架橋剤、有機塩基、カーボンナノチューブ、および溶媒以外に含み得る成分としては、分散剤、硬化促進剤、硬化助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、ポリウレタン組成物中に含まれる分散剤は、例えば、ポリウレタン組成物の調製に先んじてカーボンナノチューブの分散液を調製する際に用いるものであり、具体的には「複層フィルムの製造方法」で後述する界面活性剤や多糖類が挙げられる。
[ポリウレタン組成物の調製方法]
ポリウレタン組成物の調製方法は、特に限定されず、上述した各成分を混合することで得ることができるが、「複層フィルムの製造方法」で後述する方法で調製することが好ましい。
<<易接着層の性状>>
上述したポリウレタン組成物を、例えば、後述する本発明の「複層フィルムの製造方法」で記載する方法で硬化して、易接着層が得ることができる。ここで、ポリウレタン組成物の硬化物である易接着層には、ポリウレタン組成物に含まれていた成分に由来する成分が含まれる。例えば、本発明の一態様では、易接着層は、少なくとも、架橋剤により架橋された酸構造含有ポリウレタンと、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含む。
ここで、易接着層の厚み(複層フィルムが両面に易接着層を備える場合は、それぞれの易接着層の厚み)は、0.005μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが更に好ましく、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。易接着層の厚みが上述した範囲内であれば、易接着層を基材フィルムに十分に密着させつつ、易接着層を備える複層フィルムの反りを抑制することができる。
<その他の層>
本発明の複層フィルムが上述した基材フィルムと易接着層以外に備えうる層としては、例えば、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルムが挙げられる。本発明の複層フィルムは、これらその他の層を、通常、易接着層が備えられた面とは反対側の面に備える。
(複層フィルムの製造方法)
そして、上述したポリウレタン組成物を硬化させる本発明の製造方法により、易接着層を備える複層フィルムを製造することができる。具体的に、本発明の複層フィルムの製造方法は、上述した基材フィルム上に、上述したポリウレタン組成物を供給する工程(供給工程)と、基材フィルム上に供給された前記ポリウレタン組成物を硬化させる工程(硬化工程)とを備える。そして、本発明の複層フィルムは、供給工程よりも前に、酸構造含有ポリウレタン、不揮発性の有機塩基、および水を含む水分散体(酸構造含有ポリウレタンの水分散体)と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ、分散剤、および水を含む水分散液(カーボンナノチューブの水分散液)と、酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤とを混合してポリウレタン組成物を調整する工程(組成物調製工程)を含むことが好ましい。また、本発明の複層フィルムの製造方法は、上述した組成物調製工程、供給工程および硬化工程以外の工程(その他の工程)を含んでいてもよい。
<組成物調製工程>
供給工程において基材フィルム上に供給するポリウレタン組成物は、酸構造含有ポリウレタンの水分散体と、カーボンナノチューブの水分散液を別個に調製し、これらをあわせて調製することが好ましい。このようにしてポリウレタン組成物を調製することで、カーボンナノチューブの凝集を抑制して、易接着層を備える複層フィルムの透明性を更に向上させることができる。加えて、カーボンナノチューブの凝集が抑制されることで、易接着層中で網目状の導電パスが良好に形成され、導電性を更に高めることもできる。
なお、酸構造含有ポリウレタンの水分散体およびカーボンナノチューブの水分散液は、何れも公知の方法で調製することができる。
カーボンナノチューブの水分散液に含まれうる分散剤としては、例えば、カーボンナノチューブの分散を補助し得る公知の分散剤を用いることができ、例えば界面活性剤および多糖類が挙げられる。これらの中でも、易接着層を備える複層フィルムの透明性および導電性をより一層向上させる観点からは、界面活性剤がより好ましく、アニオン性界面活性剤が更に好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウムなどを用いることができる。
なお、分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
そして、カーボンナノチューブの水分散液は、カーボンナノチューブ100質量部当たり、分散剤を10質量部以上含むことが好ましく、100質量部以上含むことがより好ましく、1500質量部以下含むことが好ましく、1000質量部以下含むことがより好ましく、500質量部以下含むことが更に好ましく、300質量部以下含むことが特に好ましい。水分散液中の分散剤の配合量が、カーボンナノチューブ100質量部当たり10質量部以上であれば、カーボンナノチューブの凝集を十分に抑制して易接着層を備える複層フィルムの透明性および導電性を十分に高めることができ、1500質量部以下であれば、複層フィルムの導電性を十分に確保することができる。
<供給工程>
基材フィルム上にポリウレタン組成物を供給する方法は、特に限定されないが、塗布法を用いることが好ましい。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
<硬化工程>
基材フィルム上のポリウレタン組成物を硬化する方法は、特に限定されない。例えば、ポリウレタン組成物が溶媒を含む場合は、酸構造含有ポリウレタンを架橋剤で架橋しつつ、溶媒の除去が可能な条件で加熱することが好ましい。加熱条件は特に限定されないが、例えば加熱温度は70℃以上90℃以下、加熱時間は1分以上30分以下とすることができる。
<その他の工程>
本発明の複層フィルムの製造方法は、上述した硬化工程を経て得られる易接着層の表面に、親水化表面処理を施す工程を含んでもよい。親水化表面処理を行うことにより、易接着層を備える複層フィルムの接着性を十分に向上させることができる。親水化表面処理としては、例えば国際公開第2015/098750号に記載されたコロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理が挙げられる。
また、本発明の複層フィルムの製造方法は、基材フィルムの易接着層を備える面とは反対側の面に、上述したその他の層を設ける工程を含んでもよい。
(積層体)
上述した本発明の複層フィルムは、他の部材と貼り合わせ、複層フィルムと他の部材とを備える積層体として用いることができる。以下に、本発明の複層フィルムを偏光子と貼り合わせ、偏光板として用いた場合を例に挙げ説明する。
<偏光板>
偏光板は、偏光子と、本発明の複層フィルムとを備える。そして、偏光子と本発明の複層フィルムは、例えば、偏光子と複層フィルムが、複層フィルムの易接着層のみを介して直接接着していてもよいし、偏光子と複層フィルムが、易接着層および接着剤からなる層(接着剤層)を介して接着していてもよい。また、偏光板は、偏光子の一方の面に複層フィルムを備えていてもよく、両面に複層フィルムを備えていてもよい。
<<偏光子>>
偏光子としては、特に限定されず、公知の偏光子を用いることができる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。ポリビニルアルコールを含む偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素または二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造してもよいし、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素または二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造してもよい。
また、偏光子として、例えば、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光子を用いてもよい。
偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。また、偏光子の厚みは、好ましくは5μm以上80μm以下である。
<<接着剤層>>
上述した通り、複層フィルムは、易接着層のみを介して偏光子と接着していてもよいが、易接着層と接着剤層を介して偏光子と接着していてもよい。この場合、複層フィルムの易接着層は、接着剤層の下地として機能する。接着剤層を形成するための接着剤は、特に限定されず、例えば国際公開第2015/098750号に記載される公知の接着剤を用いることができる。
接着剤層の厚みは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることが好ましく、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
<<偏光板の製造方法>>
複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる方法に制限は無い。例えば、偏光子の一方の面に接着剤を塗布して接着剤層を形成した後、ロールラミネーターを用いて、偏光子と複層フィルムとを、偏光子の接着剤層と複層フィルムの易接着層とが接するように貼り合せ、乾燥又は紫外線等の光の照射を行う方法が好ましい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、本発明において、酸構造含有ポリウレタンの引っ張り弾性率、並びに、複層フィルムの透明性、導電性、および接着性は、以下の基準で評価した。
<引っ張り弾性率>
酸構造含有ポリウレタンの水分散体をガラス容器に流し込み、室温で24時間放置した。24時間放置後の水分散体を50℃で3時間、および120℃で20分間乾燥させて、厚みが100μmのポリウレタンシートを得た。
得られたポリウレタンのシートを、JIS K7162に従いダンベル型に打ち抜いて、試験片を得た。この試験片について、引張り試験器(インストロンジャパン社製「引っ張り試験機5564」)を用いて引張り速度5mm/分で引っ張り試験を行い、得られたSSカーブの傾きから引っ張り弾性率を測定した。
<透明性>
日本電色工業社製「濁度計NDH−300A」を用い、JIS K7361−1:1997およびJIS K7136:2000に準拠して、複層フィルムの全光線透過率およびヘイズを測定した。全光線透過率の値が大きい程、またヘイズの値が小さい程、複層フィルムが透明性に優れることを示す。
<導電性>
高抵抗抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ハイレスタ(登録商標)−UX MCP−HT800」)を用いて、複層フィルムの易接着層側の任意の3箇所における表面抵抗(Ω/□)を測定し、これらの平均値を当該複層フィルムの表面抵抗とした。表面抵抗の値が小さい程、複層フィルムが導電性に優れることを示す。
<接着性(湿熱後カッター剥離試験)>
各実施例および比較例で製造した複層フィルムの易接着層の表面と、製造例3で製造した偏光子の片面とを、製造例4で製造した接着剤を用いてロールラミネーターで貼り合わせた。さらに、偏光子のもう片面に、保護フィルム(コニカミノルタ社製トリアセチルセルロースフィルム、商品名「KC4UYW」、厚み:40μm)を、製造例4で製造した接着剤を用いて貼り合せることにより、偏光板を製造した。
次いで、この偏光板の複層フィルムの易接着層とは反対側の面とガラス基板とを、粘着シート(日東電工社製「LUCIACS CS9621T」)を介して貼り合わせて、サンプルを作製した。
得られたサンプルを60℃90%RHの恒温恒湿槽中で200時間静置した。次いで、恒温恒湿槽から取り出したサンプルの端部および表面からカッターにて切り込みを入れた。そして、サンプルの偏光板を引っ張って、剥離を試みた。複層フィルムとガラス基板との間で剥離が生じた場合は、易接着層および接着剤は十分な接着強度を有しており、接着性を「良」と評価した。また、偏光子と複層フィルムとの間で剥離が起きた場合は、易接着層および接着剤の接着強度が不十分であり、接着性を「不良」と評価した。
(製造例1:基材フィルムの作製)
重合体成分として脂環式構造含有重合体を含む樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR(登録商標)1430」、ガラス転移温度:135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した。乾燥後の樹脂を、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を用い、溶融樹脂温度:270℃、Tダイの幅:500mmの成形条件で押出し成形した。次いで、得られた成形体に、コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力300W、電極長240mm、ワーク電極間3.0mm、搬送速度4m/minの条件でコロナ放電処理を実施して、基材フィルム(厚み:100μmm、長さ:1000m)とした。
(製造例2:カーボンナノチューブの合成)
前述したスーパーグロース法を用いて、カーボンナノチューブ(SGCNT)を得た。具体的には次の条件において、SGCNTを成長させた。
原料化合物としての炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
雰囲気(キャリアガス):ヘリウム、水素混合ガス;供給速度1000sccm
触媒賦活物質:水蒸気添加量;300ppm
触媒層:鉄薄膜(厚み1nm)
基板:シリコンウェハー
得られたSGCNTは、BET比表面積が1,050m2/g、G/D比が3.0であり、ラマン分光光度計での測定において、単層カーボンナノチューブに特長的な100〜300cm-1の低周波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に100本のSGCNTを観察した結果、単層カーボンナノチューブの割合が90%、平均直径(Av)が3.3nm、直径分布(3σ)が1.9nm、3σ/Avが0.58であった。
(製造例3:偏光子の作製)
厚み80μmのポリビニルアルコールフィルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、4%のホウ酸水溶液および2%のヨウ化カリウム水溶液中で5倍まで延伸した後、50℃で4分間乾燥させて偏光子を得た。
(製造例4:接着剤の準備)
ゴーセファイマー(登録商標)Z410(日本合成化学工業(株)製、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール)を、水を加えて固形分3%に希釈し、接着剤とした。
(実施例1)
<酸構造含有ポリウレタンの水分散体の準備>
酸構造含有ポリウレタンの水分散体として、ポリエーテル系ポリウレタンの水分散体(第一工業製薬社製「スーパーフレックス(登録商標)870」)を準備した。
<カーボンナノチューブの水分散液の調製>
1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液90mLに、製造例2のSGCNTを90mg加え、ジェットミル(常光社製「JN−20」)を用いて20回処理して、SGCNTを0.1%含む水分散液を得た。なお、得られた水分散液は、SGCNT100部当たり1000部のドデシル硫酸ナトリウムを含んでいた。
<ポリウレタン組成物の調製>
上述した酸構造含有ポリウレタンの水分散体7.0gに、不揮発性の有機塩基としてのアジピン酸ジヒドラジド(融点:180℃)0.04g(酸構造含有ポリウレタン100部当たりアジピン酸ジヒドラジド2部)と、エポキシ系架橋剤としてのグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「デナコール EX−313」)0.3g(酸構造含有ポリウレタン100部当たりグリセロールポリグリシジルエーテル15部)と、上述したカーボンナノチューブの水分散液34g(酸構造含有ポリウレタン100部当たりカーボンナノチューブ1.7部)と、水39gとを加えてポリウレタン組成物を調製した。
<複層フィルムの作製>
製造例1の基材フィルムの片面に、バーコーターを用いて上述のポリウレタン組成物を塗布した。80℃で10分間乾燥させて、基材フィルム上のポリウレタン組成物を硬化して、基材フィルム上に易接着層を備える複層フィルムを得た。得られた複層フィルムを用いて、透明性、導電性および接着性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2〜4)
ポリウレタン組成物の調製に際し、カーボンナノチューブの水分散液の使用量を、酸構造含有ポリウレタン100部当たりのカーボンナノチューブの量がそれぞれ1.1部(実施例2)、0.57部(実施例3)、3.4部(実施例4)となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、酸構造含有ポリウレタンの水分散体、カーボンナノチューブの水分散液、ポリウレタン組成物、および複層フィルムを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
酸構造含有ポリウレタンの水分散体に替えて、酸構造を含有しないポリウレタン(第一工業製薬社製「スーパーフレックスE−2000」)の水分散体を使用した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタン組成物を調製した。しかしながら、ポリウレタンの水分散体とカーボンナノチューブの分散液を混合した時点で沈殿が発生し、基材フィルム上に塗布することができなかった。
(比較例2)
酸構造含有ポリウレタンの水分散体の調製に際し、アジピン酸ジヒドラジドに替えてトリエチルアミン(沸点:89℃)0.04g(酸構造含有ポリウレタン100部に対しトリエチルアミン2部)使用した以外は、実施例1と同様にして、酸構造含有ポリウレタンの水分散体、カーボンナノチューブの水分散液、ポリウレタン組成物、複層フィルム、および偏光板を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
カーボンナノチューブの水分散液の調製に際し、製造例2のSGCNTに替えて多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製「NC7000」、BET比表面積:260m2/g、G/D比:0.6、単層カーボンナノチューブの割合:0%、平均直径(Av):9.3nm、直径分布(3σ):2.6nm、3σ/Av:0.28)を使用した以外は、実施例1と同様にして、酸構造含有ポリウレタンの水分散体、カーボンナノチューブの水分散液、ポリウレタン組成物、複層フィルム、および偏光板を作製し、各種評価を行った。表面抵抗(導電性)については、高抵抗抵抗率計の測定上限を超えたため測定することができなかった。導電性以外の結果を表1に示す。
以下の表1中、
「ADH」は、アジピン酸ジヒドラジドを示し、
「TEA」は、トリエチルアミンを示し
「CNT」は、カーボンナノチューブを示し、
「EX−313」は、ナガセケムテックス社製「デナコールEX−313」を示し「脂環式」は、脂環式構造含有重合体を示す。
Figure 2019172136
表1より、酸構造含有ポリウレタンと、酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、単層カーボンナノチューブの割合が50%以上であるカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物を用いて、基材フィルム上に易接着層を形成した実施例1〜4では、透明性および導電性に優れる複層フィルムを得ることができ、また、当該複層フィルムを用いた偏光板において、複層フィルムと偏光子が良好に接着可能であることが分かる。
また、酸構造含有ポリウレタンに替えて、酸構造を含有しないポリウレタンを用いた比較例1では、上述した通り沈殿が生じポリウレタン組成物を基材フィルム上に塗布することができなかった。
更に、不揮発性の有機塩基に替えて、沸点100℃未満の有機塩基を用いた比較例2では、複層フィルムと偏光子を良好に接着できないことが分かる。
そして、単層カーボンナノチューブの割合が50%以上であるカーボンナノチューブに替えて、同割合が50%未満であるカーボンナノチューブ用いた比較例3では、得られる複層フィルムの透明性および導電性が低下することが分かる。
本発明によれば、優れた透明性および接着性を有すると共に、導電性にも優れる複層フィルム、並びに当該複層フィルムの製造方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた易接着層とを備える複層フィルムであって、
    前記易接着層は、酸構造含有ポリウレタンと、前記酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物の硬化物からなる、複層フィルム。
  2. 前記酸構造含有ポリウレタンの引っ張り弾性率が、1000N/mm2以上5000N/mm2以下である、請求項1に記載の複層フィルム。
  3. 前記基材フィルムが、脂環式構造含有重合体とアクリル系重合体の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の複層フィルム。
  4. 前記架橋剤が、エポキシ系架橋剤を含む、請求項1〜3の何れかに記載の複層フィルム。
  5. 前記ポリウレタン組成物が、前記酸構造含有ポリウレタン100質量部当たり、0.1質量部以上5.0質量部以下の前記カーボンナノチューブを含む、請求項1〜4の何れかに記載の複層フィルム。
  6. 基材フィルム上に、酸構造含有ポリウレタンと、前記酸構造含有ポリウレタンを架橋させうる架橋剤と、不揮発性の有機塩基と、50%以上の割合で単層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブとを含むポリウレタン組成物を供給する工程と、
    前記基材フィルム上に供給された前記ポリウレタン組成物を硬化させる工程と、
    を含む、複層フィルムの製造方法。
  7. 前記基材フィルム上に前記ポリウレタン組成物を供給する工程に先んじて、
    前記酸構造含有ポリウレタン、前記不揮発性の有機塩基、および水を含む水分散体と、前記カーボンナノチューブ、分散剤、および水を含む水分散液と、前記架橋剤とを混合して前記ポリウレタン組成物を調製する工程を含む、請求項6に記載の複層フィルムの製造方法。
  8. 前記分散剤が、アニオン性界面活性剤を含む、請求項7に記載の複層フィルムの製造方法。
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