JP2017187454A - 薄膜層の厚みの測定方法、及び、複層フィルムの製造方法 - Google Patents

薄膜層の厚みの測定方法、及び、複層フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複層フィルムを搬送しながら、その複層フィルムに含まれる薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて精密に測定できる、薄膜層の厚みの測定方法を提供する。【解決手段】光検出部を複層フィルムから退かせて後退状態とし、且つ、リファレンス材を複層フィルムと光検出部との間に進入させる工程と、光照射部からリファレンス材へと光を照射し、リファレンス材で反射した光を光検出部で検出する工程と、光検出部を複層フィルムに近づかせて前進状態とし、且つ、リファレンス材を複層フィルムと光検出部との間から退避させる工程と、光照射部から複層フィルムへと光を照射し、複層フィルムで反射した光を光検出部で検出する工程と、光検出部で検出された、リファレンス材で反射した光、及び、複層フィルムで反射した光に基づいて、薄膜層の厚みを計算する工程と、を含む、薄膜層の厚みの測定方法。【選択図】図1

Description

本発明は、基材フィルム及び薄膜層を備える複層フィルムの前記薄膜層の厚みを、複層フィルムを搬送しながら測定する測定方法;並びに、薄膜層の厚みを測定しながら複層フィルムを製造する複層フィルムの製造方法;に関する。
基材フィルムと、この基材フィルム上に設けられた薄膜層とを備える複層フィルムにおいて、薄膜層の厚みを測定するために、干渉式の膜厚測定装置を用いることがある(特許文献1参照)。干渉式の膜厚測定装置を用いて薄膜層の厚みを精密に測定する場合、従来は、一般に、複層フィルムを静止した状態で、測定を行っていた。
特開2000−065536号公報
干渉式の膜厚測定装置では、通常、測定対象となる薄膜層の空気側表面での反射光と基材フィルム側表面での反射光との干渉を利用して、厚みを測定する。具体的には、複層フィルムの薄膜層に光を照射し、その反射光を検出する。検出された反射光は、薄膜層の空気側表面での反射光と基材フィルム側表面での反射光との干渉による、薄膜層の厚みに応じた特有の干渉光を含む。そこで、検出した反射光の情報に基づいて、薄膜層の厚みを求めることができる。
通常、複層フィルムを工業的に生産する際には、生産性を高める観点から、複層フィルムの製造は、長尺の基材フィルムを連続的に搬送しながら行う。そのため、薄膜層の厚みの測定は、複層フィルムを搬送しながら行うことが望ましい。そこで、本発明者は、複層フィルムを搬送しながら、当該複層フィルムに含まれる薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置で測定することを試みた。
ところが、複層フィルムを搬送しながら薄膜層を測定しようとする場合、測定精度が低下することがあった。なかでも、基材フィルムとの屈折率差が小さい薄膜層の厚みを精度良く測定することは、特に困難であった。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、複層フィルムを搬送しながら、その複層フィルムに含まれる薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて精密に測定できる、薄膜層の厚みの測定方法;並びに、複層フィルムを搬送しながら、干渉式の膜厚測定装置を用いて薄膜層の厚みを測定することを含む、複層フィルムの製造方法;を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、光の検出を行うための光検出部の厚み測定時の移動を、一方向のみに制限することにより、測定精度を高くできることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
〔1〕 基材フィルム及び前記基材フィルム上に設けられた薄膜層を備える複層フィルムの前記薄膜層の厚みを、前記複層フィルムを搬送しながら、干渉式の膜厚測定装置を用いて測定する測定方法であって、
前記膜厚測定装置が、光照射部、光検出部及びリファレンス材を備え、
前記光照射部が、前記複層フィルム及び前記リファレンス材へと光を照射しうるように設けられ、
前記光検出部が、前記複層フィルムに対して一方向に進退可能に設けられ、前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記光照射部から照射されて前記複層フィルムで反射した光を検出でき、且つ、前記複層フィルムから退いた後退状態において前記光照射部から照射されて前記リファレンス材で反射した光を検出でき、
前記リファレンス材が、前記光検出部が前記複層フィルムから退いた後退状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入でき、且つ、前記光検出部が前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避できるように設けられていて、
前記測定方法が、
前記光検出部を前記複層フィルムから退かせて後退状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入させる工程と、
前記光照射部から前記リファレンス材へと光を照射し、前記リファレンス材で反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
前記光検出部を前記複層フィルムに近づかせて前進状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避させる工程と、
前記光照射部から前記複層フィルムへと光を照射し、前記複層フィルムで反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
前記光検出部で検出された、前記リファレンス材で反射した光、及び、前記複層フィルムで反射した光に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算する工程と、を含む、薄膜層の厚みの測定方法。
〔2〕 前記光照射部及び前記光検出部が、同一部材として設けられている、〔1〕記載の薄膜層の厚みの測定方法。
〔3〕 前記基材フィルムと前記薄膜層との屈折率差が、0.1以下である、〔1〕又は〔2〕記載の薄膜層の厚みの測定方法。
〔4〕 基材フィルム及び前記基材フィルム上に形成された薄膜層を備える複層フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルムを搬送しながら、前記基材フィルム上に前記薄膜層を形成して、前記複層フィルムを得る工程と、
前記複層フィルムを搬送しながら、前記薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて測定する工程と、を含み、
前記膜厚測定装置が、光照射部、光検出部及びリファレンス材を備え、
前記光照射部が、前記複層フィルム及び前記リファレンス材へと光を照射しうるように設けられ、
前記光検出部が、前記複層フィルムに対して一方向に進退可能に設けられ、前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記光照射部から照射されて前記複層フィルムで反射した光を検出でき、且つ、前記複層フィルムから退いた後退状態において前記光照射部から照射されて前記リファレンス材で反射した光を検出でき、
前記リファレンス材が、前記光検出部が前記複層フィルムから退いた後退状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入でき、且つ、前記光検出部が前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避できるように設けられていて、
前記薄膜層の厚みを測定する工程が、
前記光検出部を前記複層フィルムから退かせて後退状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入させる工程と、
前記光照射部から前記リファレンス材へと光を照射し、前記リファレンス材で反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
前記光検出部を前記複層フィルムに近づかせて前進状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避させる工程と、
前記光照射部から前記複層フィルムへと光を照射し、前記複層フィルムで反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
前記光検出部で検出された、前記リファレンス材で反射した光、及び、前記複層フィルムで反射した光に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算する工程と、を含む、複層フィルムの製造方法。
〔5〕 前記光照射部及び前記光検出部が、同一部材として設けられている、〔4〕記載の複層フィルムの製造方法。
〔6〕 前記基材フィルムと前記薄膜層との屈折率差が、0.1以下である、〔4〕又は〔5〕記載の複層フィルムの製造方法。
さらに、本発明では、下記のような構成を採用してもよい。
〔7〕 前記薄膜層の厚みを計算する工程が、
前記リファレンス材で反射した光の分光強度、前記複層フィルムで反射した光の分光強度、及び、補正係数に基づいて計算される、前記複層フィルムの分光反射率に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算することを含み、
搬送状態の前記基材フィルムを用いて測定された前記基材フィルムの分光反射率と前記補正係数との積が、静止状態の前記基材フィルムを用いて測定された前記基材フィルムの分光反射率に等しい、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の薄膜層の厚みの測定方法。
〔8〕 前記薄膜層の厚みの測定を、フィルム幅方向の複数の測定位置で行い、
前記薄膜層の厚みを計算する工程が、
前記リファレンス材で反射した光の分光強度、前記複層フィルムで反射した光の分光強度、及び、補正係数に基づいて計算される、前記複層フィルムの分光反射率に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算することを含み、
搬送状態の前記基材フィルムを用いて測定された前記基材フィルムの分光反射率と前記補正係数との積が、いずれの測定位置においても、等しい、〔1〕〜〔3〕及び〔7〕のいずれか一項に記載の薄膜層の厚みの測定方法。
〔9〕 前記薄膜層の厚みを計算する工程が、
前記リファレンス材で反射した光の分光強度、前記複層フィルムで反射した光の分光強度、及び、補正係数に基づいて計算される、前記複層フィルムの分光反射率に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算することを含み、
搬送状態の前記基材フィルムを用いて測定された前記基材フィルムの分光反射率と前記補正係数との積が、静止状態の前記基材フィルムを用いて測定された前記基材フィルムの分光反射率に等しい、〔4〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
〔10〕 前記薄膜層の厚みの測定を、フィルム幅方向の複数の測定位置で行い、
前記薄膜層の厚みを計算する工程が、
前記リファレンス材で反射した光の分光強度、前記複層フィルムで反射した光の分光強度、及び、補正係数に基づいて計算される、前記複層フィルムの分光反射率に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算することを含み、
搬送状態の前記基材フィルムを用いて測定された前記基材フィルムの分光反射率と前記補正係数との積が、いずれの測定位置においても、等しい、〔4〕〜〔6〕及び〔9〕のいずれか一項に記載の複層フィルムの製造方法。
本発明によれば、複層フィルムを搬送しながら、その複層フィルムに含まれる薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて精密に測定できる、薄膜層の厚みの測定方法;並びに、複層フィルムを搬送しながら、干渉式の膜厚測定装置を用いて薄膜層の厚みを測定することを含む、複層フィルムの製造方法;を提供できる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置を用いて複層フィルムの薄膜層の厚みを測定する様子を模式的に示す正面図である。 図2は、本発明の第一実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置を用いて複層フィルムの薄膜層の厚みを測定する様子を模式的に示す正面図である。 図3は、本発明の第一実施形態に係る測定方法において、厚みを測定される薄膜層を備える複層フィルムの、模式的な断面図である。 図4は、本発明の第二実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置を用いて基材フィルムに応じた補正係数を計算する様子を模式的に示す正面図である。 図5は、本発明の第二実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置を用いて基材フィルムに応じた補正係数を計算する様子を模式的に示す正面図である。 図6は、本発明の第二実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置を用いて複層フィルムの薄膜層の厚みを測定する様子を模式的に示す正面図である。 図7は、本発明の第二実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置を用いて複層フィルムの薄膜層の厚みを測定する様子を模式的に示す正面図である。 図8は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための製造装置を模式的に示す正面図である。 図9は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための塗工装置及び掻取装置の周辺を拡大して模式的に示す正面図である。 図10は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための膜厚測定装置の周辺を拡大して模式的に示す平面図である。 図11は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための膜厚測定装置の周辺を拡大して模式的に示す平面図である。 図12は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための製造装置を模式的に示す正面図である。 図13は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための膜厚測定装置の周辺を拡大して模式的に示す平面図である。 図14は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いるための膜厚測定装置の周辺を拡大して模式的に示す平面図である。 図15は、本発明の実施例1において測定した、基材フィルムの静止状態の分光反射率R(λ)を示すグラフである。 図16は、本発明の実施例1において膜厚測定装置200Lを用いて測定した、基材フィルムの搬送状態の分光反射率R(λ)を示すグラフである。 図17は、本発明の実施例1において膜厚測定装置200Cを用いて測定した、基材フィルムの搬送状態の分光反射率R(λ)を示すグラフである。 図18は、本発明の実施例1において膜厚測定装置200Rを用いて測定した、基材フィルムの搬送状態の分光反射率R(λ)を示すグラフである。 図19は、本発明の実施例1において膜厚測定装置200Lを用いて計算された補正係数C(λ)を示すグラフである。 図20は、本発明の実施例1において膜厚測定装置200Cを用いて計算された補正係数C(λ)を示すグラフである。 図21は、本発明の実施例1において膜厚測定装置200Rを用いて計算された補正係数C(λ)を示すグラフである。
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「上流」及び「下流」とは、別に断らない限り、フィルム搬送方向の上流及び下流を示す。
以下の説明において、用語「溶媒」は、別に断らない限り、いわゆる溶媒だけでなく分散媒も含む
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する。
以下の説明において、粒子の平均粒子径とは、別に断らない限り、レーザー回折法によって粒子径分布を測定し、測定された粒子径分布において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を採用する。
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。別に断らない限り、前記のレターデーションの測定波長は550nmである。前記のレターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、別に断らない限り、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
以下の説明において、「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
[1.第一実施形態]
図1及び図2は、本発明の第一実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置100を用いて複層フィルム10の薄膜層の厚みを測定する様子を模式的に示す正面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る干渉式の膜厚測定装置100は、長尺の複層フィルム10が備える薄膜層の厚みを測定するための装置であって、光源装置110、分岐ファイバー120、センサユニット130、分光器140及び演算装置150を備える。
光源装置110は、所望の波長の光を発しうる装置であり、例えば、ハロゲンランプ、D2ランプ等の光源と、光の波長を調整するためのカットフィルタとを備えうる。光源装置110が発しうる光の波長は、薄膜層の厚みを測定できる範囲で適切に設定でき、例えば、230nm〜550nmでありうる。この光源装置110は、分岐ファイバー120によってセンサユニット130のファイバヘッド131へと接続されている。
分岐ファイバー120は、光源装置110、センサユニット130及び分光器140に接続された光伝送媒体である。この分岐ファイバー120は、光源装置110から発せられた光をセンサユニット130のファイバヘッド131へと送り、且つ、ファイバヘッド131で検出された光を分光器140へと送りうるように設けられている。
センサユニット130は、光照射部及び光検出部としてのファイバヘッド131;光検出部退避治具としてのヘッド支持アーム132;リファレンス材133;並びに、リファレンス材進入治具としてのリファレンス材支持アーム134;を備える。
ファイバヘッド131は、分岐ファイバー120に接続された投受光器であって、複層フィルム10及びリファレンス材133への光の照射、並びに、複層フィルム10及びリファレンス材133で反射した光の検出をしうるように設けられている。このファイバヘッド131は、測定対象である薄膜層を備える複層フィルム10に対して一方向に進退可能に設けられている。この際、ファイバヘッド131は、複層フィルム10の面内方向に平行でない一方向に移動することが好ましい。本実施形態では、ファイバヘッド131が、複層フィルム10の厚み方向に移動可能に設けられた例を示して説明する。前記のように複層フィルム10に対して進退可能であるので、ファイバヘッド131は、図1に示すように複層フィルム10から退いた後退状態と、図2に示すように複層フィルム10に近づいた前進状態とのいずれかの状態となりうる。
ここで、後退状態におけるファイバヘッド131と複層フィルム10との距離W1と、前進状態におけるファイバヘッド131と複層フィルムとの距離W2とについて説明する。
後退状態におけるファイバヘッド131と複層フィルム10との距離W1は、前進状態におけるファイバヘッド131と複層フィルムとの距離W2よりも長い距離に設定される。また、後退状態におけるファイバヘッド131と複層フィルム10との距離W1は、後退状態においてファイバヘッド131と複層フィルム10との間に進入したリファレンス材133が、複層フィルム10に接触しないように設定される。ただし、このような要件の範囲内で、後退状態におけるファイバヘッド131と複層フィルム10との距離W1は短いことが好ましく、例えば、310mmに設定しうる。
他方、前進状態におけるファイバヘッド131と複層フィルム10との距離W2は、通常、後退状態におけるファイバヘッド131とリファレンス材133との距離W3と同じに設定される。これにより、リファレンス測定時とサンプル測定時とので測定条件を同一にできるので、複層フィルム10の分光反射率を、正確に求めることが可能である。前記の距離W2及びW3は、例えば、10mmに設定しうる。
ファイバヘッド131は、当該ファイバヘッド131の位置に応じて、光の照射及び検出を行う対象を、複層フィルム10及びリファレンス材133の間で切り替えられるように設けらえている。具体的には、ファイバヘッド131は、図1に示す後退状態において、リファレンス材133へと光を照射でき、且つ、当該ファイバヘッド131から照射されてリファレンス材133で反射した光(以下、適宜「リファレンス材133での反射光」ということがある。)を検出できるように設けられている。また、ファイバヘッド131は、図2に示す前進状態において、複層フィルム10へと光を照射でき、且つ、当該ファイバヘッド131から照射されて複層フィルム10で反射した光(以下、適宜「複層フィルム10での反射光」ということがある。)を検出できるように設けられている。
さらに、ファイバヘッド131は、外光等のノイズの原因となる要素を排除するために、図示しない保護カバーに覆われていている。このような保護カバーとしては、例えば、黒色の円筒形状カバーを用いうる。また、通常、リファレンス材133は、保護カバーの外部に設けられる。
ヘッド支持アーム132は、ファイバヘッド131を移動可能に支持する支持具である。このヘッド支持アーム132は、図示しないアクチュエータの駆動によって、ファイバヘッド131を移動させられるように設けられている。そのため、センサユニット130は、ヘッド支持アーム132によって、複層フィルム10に近づいた前進状態と、複層フィルム10から退いた後退状態との間で、前記のファイバヘッド131の状態を切り替えうる構造を有している。
リファレンス材133は、複層フィルム10で反射した光の分光強度から、複層フィルム10の分光反射率を計算するために用いる情報を得るための部材である。リファレンス材133としては、分光反射率が既知の任意の部材を用いることができる。リファレンス材133としては、分光反射率が安定しているものが好ましく、特に、金属表面を備える部材が好ましい。本実施形態では、リファレンス材133として、アルミニウム板を用いた例を示して説明する。
このリファレンス材133は、ファイバヘッド131と複層フィルム10との間に進入可能に設けられている。具体的には、リファレンス材133は、図1に示すようにファイバヘッド131が複層フィルム10から退いた後退状態においてファイバヘッド131と複層フィルム10との間に進入でき、また、図2に示すようにファイバヘッド131が複層フィルム10に近づいた前進状態においてファイバヘッド131と複層フィルム10との間から退避できるように設けられている。本実施形態では、リファレンス材133が、ヘッド支持アーム132を中心にして回動可能に設けられ、この回動によって、ファイバヘッド131と複層フィルム10との間に進入及び退避が可能である例を示して説明する。
リファレンス材支持アーム134は、リファレンス材133を移動可能に支持する支持具である。このリファレンス材支持アーム134は、図示しないアクチュエータの駆動によって、リファレンス材133を移動させられるように設けられている。本実施形態にでは、リファレンス材支持アーム134は、ヘッド支持アーム132を中心にして回転可能に設けられていて、この回転により、リファレンス材133を回動させうる例を示して説明する。
前記のファイバヘッド131、ヘッド支持アーム132、リファレンス材133及びリファレンス材支持アーム134を含むセンサユニット130は、図示しないフレームに取り付けられている。この際、センサユニット130は、複層フィルム10の面内方向に移動可能に取り付けられている。これにより、複層フィルム10の長手方向及び幅方向において、膜厚測定装置100によって薄膜層の厚みを測定する位置を、任意に設定することができる。
分光器140は、ファイバヘッド131が検出した光を受け取りうるように、分岐ファイバー120に接続されている。また、分光器140は、ファイバヘッド131が検出した光を受け取り、当該光の波長毎の強度を測定することで、当該光の分光強度を測定しうるように設けられている。さらに、この分光器140は、測定した分光強度の情報を、演算装置150に送りうるように設けられている。
演算装置150は、分光器140から送られてきた分光強度の情報に基づいて、複層フィルム10の薄膜層の厚みを計算するための計算機である。演算装置150は、予め精密に測定された、リファレンス材133の分光反射率の情報;並びに、薄膜層の厚み毎の、複層フィルム10の分光反射率の情報のテーブル;を記憶している。これらの情報は、例えば、リファレンス材133及び複層フィルム10を静止した状態において測定することにより、得られうる。そして、演算装置150は、これら記憶している情報と、分光器140から送られてきた光(リファレンス材で反射した光、及び、複層フィルムで反射した光)の情報とに基づいて、複層フィルム10の薄膜層の厚みを計算しうるように設けられている。
本発明の第一実施形態に係る干渉式の膜厚測定装置100は、上述したように設けられている。以下、この膜厚測定装置100を用いた薄膜層の厚みの測定方法を、説明する。
図3は、本発明の第一実施形態に係る測定方法において、厚みを測定される薄膜層11を備える複層フィルム10の、模式的な断面図である。
図3に示すように、複層フィルム10は、基材フィルム12、及び、この基材フィルム12上に設けられた薄膜層11を備える。この薄膜層11の厚みTを測定する場合、図1に示すように、必要に応じて搬送ロール21〜24を用いて、複層フィルム10をフィルム長手方向に搬送させる。このように複層フィルム10を搬送しながら、薄膜層11側の面11U(図3参照)にファイバヘッド131から光を照射するために、複層フィルム10の表裏の向きは、薄膜層11側の面11Uがファイバヘッド131に向かい合うように設定する。
また、本実施形態に係る測定方法では、図1に示すように、ヘッド支持アーム132によってファイバヘッド131を複層フィルム10から所定距離だけ退かせて後退状態とし、且つ、リファレンス材支持アーム134によってリファレンス材133を複層フィルム10とファイバヘッド131との間に進入させるヘッド後退工程を行う。
その後、ファイバヘッド131からリファレンス材133へと光を照射し、リファレンス材133で反射した光をファイバヘッド131で検出するリファレンス測定工程を行う。具体的には、光源装置110において光を発生させ、この光を分岐ファイバー120を通じてファイバヘッド131へと伝送する。伝送された光は、ファイバヘッド131からリファレンス材133へと照射される。照射された光は、リファレンス材133で反射し、ファイバヘッド131に検出される。ファイバヘッド131で検出されたリファレンス材での反射光は、分岐ファイバー120を通じて分光器140へと送られる。分光器140は、送られてきた反射光の分光強度を測定する。そして、リファレンス材133での反射光の分光強度は、分光器140から演算装置150に送られ、演算装置150に記憶される。
その後、図2に示すように、ヘッド支持アーム132によってファイバヘッド131を複層フィルム10に所定距離(例えば、300mm)だけ近づかせて前進状態とし、且つ、リファレンス材支持アーム134によってリファレンス材133を複層フィルム10とファイバヘッド131との間から退避させるヘッド前進工程を行う。
その後、ファイバヘッド131から搬送状態の複層フィルム10へと光を照射し、複層フィルム10で反射した光をファイバヘッド131で検出するサンプル測定工程を行う。具体的には、リファレンス測定時と同様に、光源装置110において光を発生させ、この光を分岐ファイバー120を通じてファイバヘッド131へと伝送する。伝送された光は、ファイバヘッド131から複層フィルム10へと照射される。
図3に示すように、ファイバヘッド131から照射された光L1は、複層フィルム10で反射する。この際、反射した光には、薄膜層11の空気側表面11Uで反射した光L2、及び、薄膜層11の基材フィルム側表面11Dで反射した光L3が含まれる。空気側表面11Uで反射した光L2と、基材フィルム側表面11Dで反射した光L3との間には、薄膜層11の厚みTに応じた行路差があり、そのため、空気側表面11Uで反射した光L2と基材フィルム側表面11Dで反射した光L3とは、薄膜層11の厚みTに応じて干渉を生じうる。そのため、複層フィルム10で反射した光は、薄膜層11の厚みTに応じた干渉光を含んでいる。ここで、図3においては、光L1、L2及びL3の区別を容易にするため、光L1、L2及びL3がフィルム厚み方向に非平行に進行する様子を図示したが、通常、光L1、L2及びL3は、フィルム厚み方向に平行に進行する。
複層フィルム10で反射した光は、図2に示すように、ファイバヘッド131に検出される。ファイバヘッド131で検出された反射光は、リファレンス測定時と同様に、分岐ファイバー120を通じて分光器140へと送られる。分光器140は、送られてきた反射光の分光強度を測定する。そして、複層フィルム10での反射光の分光強度は、分光器140から演算装置150に送られる。
その後、演算装置150は、ファイバヘッド131で検出された、リファレンス材133で反射した光、及び、複層フィルム10で反射した光に基づいて、薄膜層11の厚みTを計算する演算工程を行う。より詳細には、この演算工程では、リファレンス材133で反射した光の分光強度I(λ)、及び、複層フィルム10で反射した光の分光強度I(λ)に基づいて計算される、複層フィルム10の分光反射率R(λ)に基づいて、薄膜層11の厚みTを計算する。具体的には、下記のようにして薄膜層11の厚みTを計算する。
演算装置150は、当該演算装置150が記憶していたリファレンス材133の分光反射率K(λ)、リファレンス測定工程で測定されたリファレンス材133での反射光の分光強度I(λ)、及び、サンプル測定工程で測定された複層フィルム10での反射光の分光強度I(λ)から、複層フィルム10の分光反射率R(λ)を計算する。具体的には、本実施形態に係る演算装置150は、下記の式(1)によって、複層フィルム10の分光反射率R(λ)を計算する。
R(λ)={I(λ)/I(λ)}×K(λ) (1)
ここで、上述したように、複層フィルム10での反射光は、薄膜層11の厚みTに応じた干渉光を含む。そのため、前記のように計算された複層フィルム10の分光反射率R(λ)を、横軸を波長λ、縦軸を反射率Rとしたグラフに表した時、その分光反射率R(λ)の波形は、薄膜層11の厚みTに応じた特有の波形を有する。以下、ファイバヘッド131で検出された複層フィルム10での反射光に基づいて計算された分光反射率R(λ)の波形を、適宜「実測波形」ということがある。
他方、演算装置150は、薄膜層の厚み毎の複層フィルム10の分光反射率の情報として、当該分光反射率の波形の情報をテーブルとして記憶している。以下、適宜、演算装置150に記憶されていた、薄膜層の厚み毎の、複層フィルム10の分光反射率の波形を、「基準波形」ということがある。
演算装置150は、当該演算装置150に記憶された基準波形の中から、フィッティングによって、実測波形に最も近い形状の基準波形を探す。ここで用いるフィッティング法としては、例えば、n_Cauchyモデル、nk_Cauchyモデル、nk−Cauchy_keモデル、Tauc_Lorentzモデル、Inv_Polynomialモデル、Forouhi_Bloomerモデル、EMA_mixモデル、AlxGaAsモデル等のモデルを適用したカーブフィッティング法を採用しうる。そして、演算装置150は、探された基準波形(実測波形に最も近い形状の基準波形)に対応した薄膜層の厚みを、測定対象である複層フィルム10が有する薄膜層11の厚みTとして求める。
こうして求められた薄膜層11の厚みTは、図示しない出力装置に送られ、この出力装置によって出力される。
本発明の第一実施形態に係る薄膜層11の厚みTの測定方法では、上述した手順により、搬送される複層フィルム10の薄膜層11の厚みTを、測定できる。この際、複層フィルム10の搬送速度は、単位時間あたりに測定できる面積を広くして効率的な測定を実現する観点から、好ましくは20m/分以上、より好ましくは30m/分以上である。複層フィルム10の搬送速度の上限は、測定精度を高くする観点から、好ましくは70m/分以下、より好ましくは60m/分以下である。
通常、リファレンス測定工程は、複層フィルム10の薄膜層11の厚みTの測定開始から早い時期に一回行えば十分である。よって、リファレンス測定工程を行った後には、上述した測定方法によれば、薄膜層11の厚みの測定を、継続的に行うことができる。例えば、巻回されてフィルムロールとなった複層フィルム10の薄膜層11の厚みTを測定する場合、巻き出し開始直後にリファレンス測定工程を行えば、それ以降に引き出される複層フィルムの薄膜層の厚みを、高い精度で継続的に測定できる。
また、本実施形態に係る測定方法では、リファレンス測定工程におけるファイバヘッド131の位置と、サンプル測定工程におけるファイバヘッド131の位置との間の移動を、複層フィルム10の厚み方向という一方向のみで行っている。このように一方向への移動しか行わないので、リファレンス測定工程における外部光等の外乱要因を、サンプル測定工程における外乱要因に近づけることができる。そのため、本実施形態に係る測定方法によれば、薄膜層11の厚みTを、精密に測定することが可能である。
さらに、本実施形態に係る測定方法では、ファイバヘッド131が一方向にしか移動しないので、分岐ファイバー120には大きな動きが生じない。そのため、分岐ファイバー120には、測定期間の全体を通して、大きな応力が加わらない。一般に、分岐ファイバー120は、石英ガラス等の脆い材料からなる芯材を有するが、本実施形態に係る測定方法では、前記のように分岐ファイバー120に大きな応力が加わらないので、分岐ファイバー120が破損し難く、測定装置の長寿命化が期待できる。
[2.第二実施形態]
複層フィルムに光を照射した場合、薄膜層だけでなく、基材フィルムにおいても、反射が生じうる。そのため、基材フィルムで反射した光に外乱要因が含まれていると、薄膜層の厚みの測定精度が低下する可能性がある。この外乱要因が常に一定であれば、この外乱要因の影響が常に生じる前提で、演算装置150に記憶された基準波形を設定することで、高精度の測定を行うことは可能である。しかし、前記の外乱要因は、通常は一定では無く、基材フィルムの種類、測定位置などの要素に応じて変化しうる。そこで、基材フィルムで反射した光に含まれる外乱要因を排除するために、予めファイバヘッドから搬送状態の基材フィルムへと照射され当該基材フィルムで反射した光を検出しておいた上で、演算工程において、リファレンス材で反射した光、及び、複層フィルムで反射した光に加えて、更に、前記の基材フィルムで反射した光にも基づいて、薄膜層の厚みを計算することが好ましい。以下、第二実施形態を示して説明する。また、以下に示す第二実施形態において、第一実施形態において説明した要素と同様の要素には、第一実施形態において用いたのと同様の符号を付して説明する。
図4及び図5は、本発明の第二実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置200を用いて基材フィルム12に応じた補正係数を計算する様子を模式的に示す正面図である。図4では、ファイバヘッド131を後退状態としたときの様子を示し、図5では、ファイバヘッド131を前進状態としたときの様子を示す。
図4及び図5に示すように、本発明の第二実施形態に係る干渉式の膜厚測定装置200は、光源装置110;分岐ファイバー120;ファイバヘッド131、ヘッド支持アーム132、リファレンス材133、及び、リファレンス材支持アーム134を備えるセンサユニット130;分光器140;並びに、演算装置250を備える。この膜厚測定装置200において、演算装置250以外の構成要素は、第一実施形態に係る膜厚測定装置100と同様に設けられている。
したがって、複層フィルム10の代わりに基材フィルム12を用いた場合、ファイバヘッド131は、基材フィルム12及びリファレンス材133へと光を照射しうるように設けられた光照射部として機能しうる。また、ファイバヘッド131は、基材フィルム12に対して一方向(本実施形態では、厚み方向)に進退可能に設けられ、基材フィルム12に近づいた前進状態においてファイバヘッド131から照射されて前記基材フィルム12で反射した光を検出でき、且つ、前記基材フィルム12から退いた後退状態において前記ファイバヘッド131から照射されてリファレンス材133で反射した光を検出できる光検出部として機能しうる。さらに、リファレンス材133は、ファイバヘッド131が基材フィルム12から退いた後退状態において基材フィルム12とファイバヘッド131との間に進入でき、且つ、ファイバヘッド131が基材フィルム12に近づいた前進状態において基材フィルム12とファイバヘッド131との間から退避できる。そのため、複層フィルム10の代わりに基材フィルム12を用いた場合、本実施形態に係る膜厚測定装置200は、搬送状態の複層フィルム10の分光反射率を測定したのと同様にして、搬送状態の基材フィルム12の分光反射率を測定できる構成を有している。
また、本実施形態に係る膜厚測定装置200の演算装置250は、リファレンス材133で反射した光、及び、複層フィルム10で反射した光だけでなく、基材フィルム12で反射した光にも基づいて、薄膜層11の厚みTを計算しうること以外は、第一実施形態で用いた演算装置150と同様に設けられている。具体的には、演算装置250は、予め精密に測定された、リファレンス材133の分光反射率の情報;薄膜層の厚み毎の、複層フィルム10の分光反射率の情報のテーブル;並びに、静止状態の基材フィルム12を用いて予め測定された基材フィルム12の分光反射率(以下、適宜「静止状態の分光反射率」ということがある。)の情報;を記憶している。そして、演算装置250は、これら記憶している情報と、分光器140から送られてきた光(リファレンス材で反射した光、複層フィルムで反射した光、及び、基材フィルム12で反射した光)の情報とに基づいて、複層フィルム10の薄膜層の厚みを計算しうるように設けられている。
本発明の第二実施形態に係る干渉式の膜厚測定装置200は、上述したように設けられている。以下、この膜厚測定装置200を用いた薄膜層の厚みの測定方法を、説明する。
本実施形態に係る測定方法では、複層フィルム10の薄膜層11の厚みTを測定する工程の前に、基材フィルム12で反射した光に含まれる外乱要因を排除するための補正係数を計算する係数計算工程を行う。
この係数計算工程では、図4に示すように、必要に応じて搬送ロール21〜24を用いて、基材フィルム12をフィルム長手方向に搬送させる。この際、薄膜層11が形成される予定の面12Dにファイバヘッド131から光を照射するために、基材フィルム12の表裏の向きは、薄膜層11が形成される予定の面12Dがファイバヘッド131に向かい合うように設定する。
そして、ファイバヘッド131を基材フィルム12から退かせて後退状態とし、且つ、リファレンス材133を基材フィルム12とファイバヘッド131との間に進入させる第一ヘッド後退工程を行う。その後、ファイバヘッド131からリファレンス材133へと光を照射し、リファレンス材133で反射した光をファイバヘッド131で検出する第一リファレンス測定工程を行う。ファイバヘッド131で検出されたリファレンス材での反射光の分光強度は、分光器140で測定される。そして、この分光強度の情報は、演算装置250に送られ、記憶される。
次いで、図5に示すように、ファイバヘッド131を基材フィルム12に近づかせて前進状態とし、且つ、リファレンス材133を基材フィルム12とファイバヘッド131との間から退避させる第一ヘッド前進工程を行う。その後、ファイバヘッド131から搬送状態の基材フィルム12へと光を照射し、基材フィルム12で反射した光をファイバヘッド131で検出する第一サンプル測定工程を行う。ファイバヘッド131で検出された基材フィルム12での反射光の分光強度は、分光器140で測定される。そして、この分光強度の情報は、演算装置250に送られる。
演算装置250は、ファイバヘッド131で検出された、リファレンス材133で反射した光、及び、基材フィルム12で反射した光に基づいて、補正係数を計算する補正係数演算工程を行う。この補正係数演算工程では、演算装置250は、まず、搬送状態の基材フィルム12の分光反射率を計算する。具体的には、演算装置250は、当該演算装置250が記憶していたリファレンス材133の分光反射率K(λ)、第一リファレンス測定工程で測定されたリファレンス材133での反射光の分光強度I10(λ)、及び、第一サンプル測定工程で測定された基材フィルム12での反射光の分光強度I11(λ)から、下記の式(2)によって、基材フィルム12の分光反射率R(λ)を計算する。こうして計算された基材フィルム12の分光反射率R(λ)を、以下、適宜「搬送状態の分光反射率R(λ)」ということがある。基材フィルム12の搬送状態の分光反射率R(λ)は、搬送状態の基材フィルム12を用いて測定された当該基材フィルム12の分光反射率である。
(λ)={I11(λ)/I10(λ)}×K(λ) (2)
その後、演算装置250は、基材フィルム12の搬送状態の分光反射率R(λ)と、演算装置250に記憶された静止状態の分光反射率R(λ)とを用いて、補正係数C(λ)を計算する。補正係数C(λ)は、基材フィルム12の搬送状態の分光反射率R(λ)に補正係数C(λ)を掛け算することによって得られる積R(λ)×C(λ)が、基材フィルム12の静止状態の分光反射率R(λ)に等しくなる係数であり、下記の式(3)で表される。
C(λ)=R(λ)/R(λ) (3)
このようにして計算された補正係数C(λ)は、演算部250に記憶される。
図6及び図7は、本発明の第二実施形態に係る測定方法において、干渉式の膜厚測定装置200を用いて複層フィルム10の薄膜層の厚みを測定する様子を模式的に示す正面図である。図6では、ファイバヘッド131を後退状態としたときの様子を示し、図7では、ファイバヘッド131を前進状態としたときの様子を示す。
本実施形態に係る測定方法では、係数計算工程によって補正係数C(λ)を計算した後で、図6及び図7に示すように、複層フィルム10の薄膜層11(図3参照)の厚みを測定する厚み測定工程を行う。
この厚み測定工程では、第一実施形態に係る測定方法と同様に、複層フィルム10を搬送しながら、第一実施形態に係るヘッド後退工程、リファレンス測定工程、ヘッド前進工程及びサンプル測定工程と、それぞれ同様の、第二ヘッド後退工程、第二リファレンス測定工程、第二ヘッド前進工程及び第二サンプル測定工程を行う。これにより、ファイバヘッド131で検出された、リファレンス材133での反射光の分光強度、及び、複層フィルム10での反射光の分光強度の情報が、演算装置250に送られる。
その後、演算装置250は、係数計算工程で計算した補正係数C(λ)を用いることにより、リファレンス材133で反射した光、及び、複層フィルム10で反射した光だけでなく、基材フィルム12で反射した光にも基づいて、薄膜層11の厚みTを計算する演算工程を行う。より詳細には、この演算工程では、リファレンス材133で反射した光の分光強度I(λ)、複層フィルム10で反射した光の分光強度I(λ)、及び、補正係数C(λ)に基づいて計算される、複層フィルム10の分光反射率R(λ)に基づいて、薄膜層11の厚みTを計算する。具体的には、下記のようにして薄膜層11の厚みTを計算する。
演算装置250は、当該演算装置250が記憶していたリファレンス材133の分光反射率K(λ)、第二リファレンス測定工程で測定されたリファレンス材133での反射光の分光強度I(λ)、第二サンプル測定工程で測定された複層フィルム10での反射光の分光強度I(λ)、及び、係数計算工程で計算された補正係数C(λ)から、複層フィルム10の分光反射率R(λ)を計算する。具体的には、本実施形態に係る演算装置250は、下記の式(4)によって、複層フィルム10の分光反射率R(λ)を計算する。
R(λ)={I(λ)/I(λ)}×K(λ)×C(λ) (4)
そして、演算装置250は、ファイバヘッド131で検出された反射光に基づいて計算された分光反射率R(λ)の実測波形に最も近い形状の基準波形を、演算装置250に記憶された基準波形の中から、フィッティングによって探す。そして、演算装置250は、探された基準波形(実測波形に最も近い形状の基準波形)に対応した薄膜層の厚みを、測定対象である複層フィルム10が有する薄膜層11の厚みTとして求める。
こうして求められた薄膜層11の厚みTは、図示しない出力装置に送られ、この出力装置によって出力される。
本発明の第二実施形態に係る薄膜層11の厚みTの測定方法では、上述した手順により、搬送される複層フィルム10の薄膜層11の厚みTを、継続的に測定できる。
本実施形態に係る測定方法では、第一実施形態に係る測定方法と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態に係る測定方法では、基材フィルム12で反射した光に含まれる外乱要因を排除できるので、効果的に誤差を小さくして、第一実施形態に係る測定方法よりも高い精度で薄膜層11の厚みTを測定することができる。
[3.第三実施形態]
上述した複層フィルムの薄膜層の厚みの測定方法は、複層フィルムの製造方法において実施しうる。このような複層フィルムの製造方法は、基材フィルムを搬送しながら、基材フィルム上に薄膜層を形成して、複層フィルムを得る層形成工程と、複層フィルムを搬送しながら、薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて測定する層測定工程と、を含む方法であって、層測定工程において、上述した測定方法によって薄膜層の厚みを測定する。
また、前記のような複層フィルムの製造方法において、薄膜層の厚みの測定は、一般に、フィルム幅方向の複数の測定位置で行われる。通常は、フィルム幅方向の両端部及び中央部という3箇所において、薄膜層の厚みを測定することが多い。
以下、このような複層フィルムの製造方法に係る第三実施形態を説明する。以下に示す第三実施形態において、第一実施形態及び第二実施形態において説明した要素と同様の要素には、第一実施形態及び第二実施形態において用いたのと同様の符号を付して説明する。
図8は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための製造装置300を模式的に示す正面図である。
図8に示すように、この製造装置300は、表面処理装置としてのコロナ処理機310、塗工装置320、掻取装置330、硬化処理装置としてのオーブン340、並びに、干渉式の膜厚測定装置200L、200C及び200Rを、フィルム搬送方向の上流からこの順に備える。本実施形態においては、製造装置300は、基材フィルム12及び複層フィルム10を、必要に応じて搬送ロール21〜27を用いて連続的に搬送しながら、複層フィルム10の製造を行いうるように設けられている。また、本実施形態においては、塗工液として、オーブン340内での加熱により溶媒が乾燥して硬化しうる液状組成物を用いた塗工法によって薄膜層を形成する例を示して説明する。ここで「液状組成物」との用語は、2種類以上の物質を含む材料だけでなく、1種類の物質のみからなる材料も含む。
コロナ処理機310は、連続走行する基材フィルム12の下面12Dに、表面処理としてコロナ放電処理を施しうるように設けられている。
図9は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための塗工装置320及び掻取装置330の周辺を拡大して模式的に示す正面図である。
塗工装置320は、コロナ処理機310の下流に設けられた装置であって、図9に示すように、基材フィルム12の下面12Dに塗工液30を塗工しうる第一ロールとしての塗工ロール321、及び、塗工ロール321に塗工液30を供給するための供給器322を備える。塗工ロール321は、矢印A321で示すように、基材フィルム12の搬送方向と同じ方向に回転しうるように設けられている。他方、供給器322には塗工液30が貯蔵されていて、この供給器322内の塗工液30に塗工ロール321の一部が漬かっている。そして、本実施形態に係る塗工装置320は、塗工ロール321が、周方向に回転することによって、供給器322に溜められた塗工液30を引き上げ、この塗工液30を基材フィルム12の下面12Dに塗工しうるように設けられている。
掻取装置330は、塗工装置320の下流に設けられた装置であって、基材フィルム12の下面12Dに塗工された塗工液30の一部を掻き取りうる第二ロールとしての掻き取りロール331、及び、掻き取りロール331が掻き取った塗工液30を回収しうる回収器332を備える。掻き取りロール331は、矢印A331で示すように、基材フィルム12の搬送方向とは反対方向に回転しうるように設けられている。そして、掻取装置330は、掻き取りロール331が周方向に回転することによって、基材フィルム12の下面12Dに塗工された余剰の塗工液30を掻き取り、回収器332に回収しうるように設けられている。
オーブン340は、図8に示すように、掻取装置330の下流に設けられた装置であって、当該オーブン340内の温度を適切な温度に調整しうるように設けられる。本実施形態では、オーブン340は、下面12Dに塗工液の層40(図9参照)を形成された基材フィルム12がこのオーブン340内を通過するときに、塗工液の層40を加熱して硬化させうるように設けられている。
図10及び図11は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための膜厚測定装置200L、200C及び200Rの周辺を拡大して模式的に示す平面図である。図10では、ファイバヘッド131を後退状態としたときの様子を示し、図11では、ファイバヘッド131を前進状態としたときの様子を示す。
図11に示すように、オーブン340の下流には、膜厚測定装置200L、200C及び200Rが、この順にフィルム幅方向において一端側から並んで、フィルム幅方向の両端部及び中央部において薄膜層11の厚みを測定できるように、設けられている。これらの膜厚測定装置200L、200C及び200Rとしては、第一実施形態又は第二実施形態で説明したのと同様の測定方法によって薄膜層11の厚みを測定できるものを用いうる。本実施形態では、膜厚測定装置200L、200C及び200Rとして、第二実施形態において用いた膜厚測定装置200と同様の装置を用いた例を示して説明する。
本発明の第三実施形態に係る製造装置300は、上述したように設けられている。以下、この製造装置300を用いた複層フィルム10の製造方法を、説明する。
図12は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための製造装置300を模式的に示す正面図である。ただし、図12では、補正係数C(λ)を計算する係数計算工程における製造装置300を示す。
本実施形態に係る複層フィルム10の製造方法では、補正係数C(λ)を計算する係数計算工程を行う。この係数計算工程では、図12に示すように、繰出しロール50から基材フィルム12を引き出し、その基材フィルム12を、膜厚測定装置200L、200C及び200Rへと搬送する。ただし、係数計算工程では、コロナ処理機310によるコロナ放電処理、塗工装置320による塗工液30の塗工、及び掻取装置330による塗工液の層40の掻き取りは、行わない。
図13及び図14は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルム10の製造方法に用いるための膜厚測定装置200L、200C及び200Rの周辺を拡大して模式的に示す平面図である。ただし、図13及び図14では、補正係数C(λ)を計算する係数計算工程における様子を示す。また、図13では、ファイバヘッド131を後退状態としたときの様子を示し、図14では、ファイバヘッド131を前進状態としたときの様子を示す。
図13及び図14に示すように、膜厚測定装置200L、200C及び200Rは、搬送されてきた基材フィルム12について、第二実施形態において説明したのと同様の手順により、補正係数C(λ)の計算を行う。具体的には、膜厚測定装置200L、200C及び200Rは、それぞれ、第二実施形態に係る測定方法の係数計算工程と同様に、第一ヘッド後退工程、第一リファレンス測定工程、第一ヘッド前進工程、第一サンプル測定工程、及び、補正係数演算工程を行って、補正係数C(λ)を計算する。この際、補正係数演算工程における補正係数C(λ)の計算では、通常、いずれの膜厚測定装置200L、200C及び200Rでも、基材フィルム12の静止状態の分光反射率R(λ)として、共通の分光反射率を用いる。そして、膜厚測定装置200L、200C及び200Rは、得られた補正係数C(λ)を、演算部250に記憶する。
本実施形態に係る複層フィルム10の製造方法では、係数計算工程によって補正係数C(λ)を計算した後で、図8に示すように、基材フィルム12を搬送しながら当該基材フィルム12上に薄膜層11を形成して複層フィルム10を得る層形成工程を行う。
この層形成工程では、繰出しロール50から引き出された基材フィルム12がコロナ処理機310に供給され、その下面12Dにコロナ放電処理を施す工程が行われる。コロナ放電処理により、基材フィルム12の下面12Dが改質されて、当該下面12Dに塗工液30が定着し易くなる。
その後、基材フィルム12は、塗工装置320へ送られる。塗工装置320に基材フィルム12が送られてくると、図9に示すように、塗工ロール321が、周方向に回転することによって、供給器322に溜められた塗工液30を引き上げ、この塗工液30を基材フィルム12の下面12Dに塗工する。これにより、基材フィルム12の下面12Dに、塗工液の層40を形成する工程が行われる。
塗工装置320によって塗工液30を塗工された基材フィルム12は、下面12Dに形成された塗工液の層40と共に、掻取装置330へ送られる。掻取装置330に基材フィルム12が送られてくると、掻き取りロール331が周方向に回転することによって、基材フィルム12の下面12Dに塗工された塗工液30の一部を掻き取る工程を行う。これにより、基材フィルム12の下面12Dに形成された塗工液の層40の厚みが所望の厚みに調整される。また、掻き取りロール331が塗工された塗工液30の一部を掻き取ることにより、塗工液の層40の厚みは均一になるので、塗工液の層40が平滑化される。掻取装置330によって塗工液の層40を平滑化された後、基材フィルム12は、その下面12Dに形成された塗工液の層40と共に、オーブン340へ送られる。また、掻き取られた塗工液30は、回収器332に移され、回収される。
図8に示すように、オーブン340に基材フィルム12が送られてくると、オーブン340内において基材フィルム12の下面12Dに形成された塗工液の層40を加熱し、硬化させる工程が行われる。塗工液の層40を硬化させることによって、基材フィルム12の下面12Dに塗工液30を硬化させた薄膜層11が形成されて、基材フィルム12及び薄膜層11を備える複層フィルム10が得られる。
こうして得られた複層フィルム10は、膜厚測定装置200L、200C及び200Rへと搬送される。図10及び図11に示すように、膜厚測定装置200L、200C及び200Rは、それぞれ、搬送されてきた複層フィルム10の薄膜層11の厚みを、第二実施形態において説明したのと同様の手順により、測定する。具体的には、膜厚測定装置200L、200C及び200Rは、第二実施形態に係る測定方法の厚み測定工程と同様に、第二ヘッド後退工程、第二リファレンス測定工程、第二ヘッド前進工程、第二サンプル測定工程、及び、演算工程を行って、薄膜層11の厚みTを測定する。こうして求められた薄膜層11の厚みTは、図示しない出力装置に送られ、この出力装置によって出力される。また、この出力装置からは、測定された厚みTが所定の範囲から外れた場合に、警告を出力させてもよい。
こうして薄膜層11の厚みTを測定された複層フィルム10は、図8に示すように、巻き取られてロール60として回収される。
本発明の第三実施形態に係る複層フィルム10の製造方法では、上述した手順により、薄膜層11の厚みTを継続的に測定しながら、複層フィルム10を製造できる。この際、複層フィルム10を搬送しながら薄膜層11の厚みTを高い精度で測定できるので、厚み測定のために複層フィルム10の製造を停止する必要が無く、そのため、製造効率を高めることができる。また、複層フィルム10を製造しながら薄膜層11の厚みTを測定できるので、歩留まりを向上させることが可能である。
また、本実施形態では、測定位置に応じて個別に補正係数C(λ)を求めて使用しているので、測定精度を向上させることができる。フィルム幅方向の複数の測定位置で測定を行う場合、フィルム幅方向の各測定位置における外乱が異なるため、膜厚測定装置200L、200C及び200Rで計算された補正係数C(λ)は、通常、異なる。例えば、静止状態で精密に測定された静止状態の分光反射率R(λ)がフィルム幅方向のどの位置でも同じである基材フィルム12を用いた場合でも、その基材フィルム12を搬送した状態では、フィルム幅方向の位置に応じて、搬送状態の分光反射率R(λ)が異なりうる。これに対し、本実施形態のように、測定位置に応じて個別に補正係数C(λ)を求めて使用すると、基材フィルム12の各測定位置において搬送状態の分光反射率R(λ)に補正係数C(λ)を掛け算して得られる積R(λ)×C(λ)は、いずれの測定位置でも、等しくなる(具体的には、前記の積R(λ)×C(λ)は、いずれの測定位置でも、静止状態の分光反射率R(λ)に等しくなる)。これは、フィルム幅方向の複数の測定位置において測定を行う場合に、測定位置が異なることによって生じる外乱要因を適切に排除できることを表す。したがって、前記の補正係数C(λ)により、測定位置の相違による誤差の発生を抑制できる。さらに、前記のような補正係数C(λ)は、静止状態の分光反射率R(λ)に基づいて求められた係数であるので、第二実施形態で説明したように、誤差の発生を効果的に抑制できる。したがって、本実施形態においては、測定精度を高めることが可能となっている。中でも、基材フィルム12と薄膜層11との屈折率差が小さい場合、及び、薄膜層11の厚みTが厚み測定に用いる光の波長より小さい場合には、一般に、測定誤差が特に大きくなり易いことから、前記のように測定位置に応じて個別に補正係数C(λ)を導入することは、高精度の測定を行う観点で特に有用である。
[4.変更例]
上述した実施形態は、更に変更して実施してもよい。
例えば、上述した第一実施形態〜第三実施形態では、ファイバヘッド131が複層フィルム10の厚み方向に移動可能に設けられた例を示したが、ファイバヘッド131の移動方法は、複層フィルム10の厚み方向に限定されない。例えば、ファイバヘッド131は、複層フィルム10の面内方向に平行でも垂直でもない傾斜方向に移動可能に設けられていてもよい。ただし、このように傾斜方向に移動可能に設けられている場合、複層フィルム10の面内方向における前進状態と後退状態との間でのファイバヘッド131の移動量は、100mm以下であることが好ましい。複層フィルム10の面内方向における移動量が小さいことにより、薄膜層11の厚みTの測定精度を高めることができる。
また、例えば、上述した第一実施形態〜第三実施形態では、光照射部及び光検出部としてファイバヘッド131という同一部材を用いたが、光照射部及び光検出部として異なる部材を用いてもよい。
さらに、例えば、上述した第二実施形態及び第三実施形態では、係数計算工程を行って補正係数C(λ)を計算して求めたが、予め補正係数C(λ)が判明している場合には、係数計算工程は省略してもよい。通常は、膜厚測定装置の位置の変更、及び、基材フィルムの種類の変更を行わない限り、補正係数C(λ)を変更しなくても、十分に高い精度が見込まれる。
また、第三実施形態での係数計算工程では、コロナ処理機310によるコロナ放電処理を行わなかったが、係数計算工程では、コロナ放電処理を行ってもよい。通常、コロナ放電処理を行うことによる補正係数C(λ)への影響は小さいことから、係数計算工程においてコロナ放電処理を行った場合でも行わなかった場合でも、薄膜層11の厚みTを高い精度で測定することが可能である。
また、第三実施形態において、基材フィルム12の下面12Dへの表面処理としては、コロナ放電処理以外の表面処理を行ってもよい。このような表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理等が挙げられる。エネルギー線照射処理としては、例えば、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、薬品処理としては、例えば、ケン化処理;重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸等の酸化剤水溶液中に基材フィルムを浸漬し、その後、水で洗浄する処理;が挙げられる。
さらに、第三実施形態において、塗工装置320は、塗工ロール321を用いたロールコート法以外の塗工法によって塗工液30を塗工しうるものでもよい。
また、第三実施形態において、硬化処理装置としては、塗工液30に応じて、オーブン340以外の装置を用いてもよい。例えば、塗工液30が紫外線等の光によって硬化しうるものである場合、硬化処理装置として、光照射装置を用いてもよい。また、例えば、塗工液30が常温環境における乾燥によって硬化しうるものである場合、硬化処理装置を設置しないで、基材フィルム12の搬送による自然乾燥によって塗工液の層40を硬化させてもよい。
さらに、第三実施形態において、複層フィルム10の製造方法は、上述した実施形態において説明した以外の工程を含んでいてもよい。例えば、複層フィルム10の製造方法は、オーブン340で塗工液の層40を硬化させて薄膜層11を形成した後で、この薄膜層11の面に表面処理を施す工程;塗工液30の塗工前に基材フィルム12を延伸する工程;塗工液の層40を硬化させて薄膜層11を形成した後で、得られた複層フィルム10を延伸する工程;薄膜層11上に更に任意の層を形成する工程;を含んでいてもよい。
[5.基材フィルム]
基材フィルムとしては、通常、樹脂製のフィルムを用いる。基材フィルムに含まれる樹脂としては、任意の重合体を含む樹脂を用いうる。中でも、樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、脂環式オレフィン樹脂が特に好ましい。脂環式オレフィン樹脂は、脂環式オレフィン重合体を含む樹脂であり、透明性、低吸湿性、寸法安定性および軽量性などの特性に優れ、光学フィルムに適している。
基材フィルムは、1層のみを含む単層構造のフィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。基材フィルムが複層構造を有する場合、基材フィルムが備える層のうち1層以上が脂環式オレフィン樹脂からなることが好ましい。
脂環式オレフィン重合体は、重合体の構造単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれを用いてもよい。また、脂環式オレフィン重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、更に好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。これにより、基材フィルムの機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、基材フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素添加物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
ノルボルネン重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合が可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが更に好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合が可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
単環の環状オレフィン重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィンモノマーの付加重合体を挙げることができる。
環状共役ジエン重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエンモノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエンモノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素添加物;などを挙げることができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素モノマーの重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素添加してなる水素添加物;ビニル脂環式炭化水素モノマー、またはビニル芳香族炭化水素モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素モノマーに対して共重合可能な任意のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素添加物;などを挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることができる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、更に好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平気分子量である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、複層フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、コストを抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、低分子量成分を減らすことができるので、緩和時間を長くできる。そのため、高温曝露時の緩和を抑制でき、基材フィルムの安定性を高めることができる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の光弾性係数Cの絶対値は、好ましくは10×10−12Pa−1以下、更に好ましくは7×10−12Pa−1以下、特に好ましくは4×10−12Pa−1以下である。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、「C=Δn/σ」で表される値である。重合体の光弾性係数を前記範囲に納めることにより、基材フィルムの面内レターデーションReのバラツキを小さくできる。
基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、基材フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションの経時変化を小さくすることができる。また、複層フィルムを備える偏光板及び画像表示装置の劣化を抑制でき、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。
飽和吸水率は、試験片を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。重合体の飽和吸水率は、例えば、重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。したがって、飽和吸水率をより低くする観点から、基材フィルムに含まれる樹脂に含まれる重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
基材フィルムに含まれる樹脂における重合体の割合は、一般的には50%〜100%、または70%〜100%である。特に、基材フィルムに含まれる樹脂として脂環式オレフィン樹脂を用いる場合、脂環式オレフィン樹脂に含まれる重合体の割合は、通常80%〜100%、好ましくは90%〜100%である。
基材フィルムに含まれる樹脂は、本発明の効果を著しく損なわない限り、重合体以外に任意の成分を含んでいてもよい。その任意の成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;酸化防止剤;滑剤;界面活性剤などの添加剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
基材フィルムに含まれる樹脂として脂環式オレフィン樹脂を用いる場合、その脂環式オレフィン樹脂は、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まない樹脂とは、粒子を全く含まない樹脂からの基材フィルムのヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは粒子を含みうる樹脂を意味する。脂環式オレフィン重合体は、多くの有機粒子及び無機粒子との親和性に欠ける傾向がある。そのため、粒子を含む脂環式オレフィン樹脂を延伸すると、空隙が発生しやすい。しかし、粒子の量を前記のように少なくすることで、延伸した場合の空隙の発生を抑制して、ヘイズが大きくなることを抑制できる。
基材フィルムに含まれる樹脂が含む添加剤の量は、複層フィルムが所望の特性を発現できる範囲で任意に設定しうる。
前述の通り、基材フィルムは、1層のみを備える単層構造のフィルムであってもよく、2層以上の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。基材フィルムを複層構造のフィルムとすることにより、複層フィルムを、様々な特性を有する光学フィルムとして用いることができる。
基材フィルムが2層以上の層を備える場合、1種類の層を2つ以上備えていてもよく、異なる2種類以上の層を備えていてもよい。また、基材フィルムには、上述した脂環式オレフィン樹脂以外の樹脂からなる層を設けてもよい。脂環式オレフィン樹脂以外からなる層としては、例えば、傷付抑制、反射抑制、帯電抑制、防眩、防汚などの機能を有する層が挙げられる。
基材フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、更に好ましくは90μm以下、特に好ましくは80μm以下である。基材フィルムの厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、塗工時の基材フィルムの破断を抑制することができる。また、基材フィルムの厚みを前記範囲の上限値以下にすることにより、乾燥後の複層フィルムの搬送を容易にすることができる。
基材フィルムの厚み変動は、長手方向及び幅方向にわたって、前記平均厚みの±3%以内であることが好ましい。厚み変動を前記範囲にすることにより、基材フィルムのレターデーションなどの光学特性のバラツキを小さくできる。
基材フィルムが含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、基材フィルムの面内レターデーション及び厚み方向のレターデーションの経時変化を小さくできる。さらには、複層フィルムを備える偏光板又は画像表示装置等の劣化を抑制できるので、長期的にディスプレイの表示を安定で良好に保つことができる。ここで、揮発性成分とは、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーによる分析によって定量しうる。
基材フィルムの製造方法に制限はない。基材フィルムは、例えば、当該基材フィルムを形成するための樹脂を任意のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶媒を使用しない溶融押出法が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられ、中でも生産性や厚み精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
基材フィルムが2層以上の層を備える場合、基材フィルムの製造方法に制限は無い。例えば、別々に製造したフィルム層を必要に応じて接着剤を用いて貼り合せて、基材フィルムを製造してもよい。接着剤は、貼り合わせるフィルム層を形成する樹脂の種類により適切なものを選択しうる。接着剤の例としては、アクリル接着剤;ウレタン接着剤;ポリエステル接着剤;ポリビニルアルコール接着剤;ポリオレフィン接着剤;変性ポリオレフィン接着剤;ポリビニルアルキルエーテル接着剤;ゴム接着剤;エチレン−酢酸ビニル接着剤;塩化ビニル−酢酸ビニル接着剤;SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)接着剤;SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)接着剤;エチレン−スチレン共重合体等のエチレン接着剤;エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル接着剤;などが挙げられる。接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。接着剤により形成される接着剤層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
接着剤を使用せずに2層以上の層を備える基材フィルムを製造する場合、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法などの共押出成形法;ドライラミネーションなどのフィルムラミネーション成形法;などを用いうる。また、例えば、あるフィルム層の表面に、別のフィルム層を構成する樹脂を含む溶液をコーティングするコーティング成形法を用いて、2層以上の層を備える基材フィルムを製造してもよい。
これらの中でも、製造効率の観点、及び、基材フィルム中に溶媒などの揮発性成分を残留させないという観点からは、共押出成形法が好ましい。共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が特に好ましい。さらに、共押出Tダイ法にはフィードブロック方式とマルチマニホールド方式が挙げられるが、各層の厚みのばらつきを少なくできる点からは、マルチマニホールド方式がさらに好ましい。
基材フィルムは、延伸処理を施されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。また、基材フィルムが2層以上の層を備える場合、予め延伸処理を施されたフィルム層を貼り合せて延伸フィルムを得てもよく、共押出等により得られた複層構造の延伸前フィルムに延伸処理を施して延伸フィルムを得てもよい。
延伸方法は特に制限されず、例えば、一軸延伸法、二軸延伸法のいずれを採用してもよい。延伸方法の例を挙げると、一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して長手方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて幅方向に一軸延伸する方法等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、固定するクリップの間隔を開いての長手方向の延伸と同時に、ガイドレールの広がり角度により幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用して長手方向に延伸した後、その両端部をクリップ把持してテンター延伸機を用いて幅方向に延伸する逐次二軸延伸法、などが挙げられる。さらに、例えば、幅方向又は長手方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して平行でもなく垂直でもない斜め方向に連続的に延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸に用いる装置として、例えば、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。延伸温度は、延伸されるフィルムに含まれる樹脂のガラス転移温度をTgとして、好ましくは(Tg−30℃)以上、更に好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、更に好ましくは(Tg+50℃)以下である。延伸倍率は、使用する基材フィルムの光学特性に応じて適宜選択しうる。具体的な延伸倍率は、好ましくは1.05倍以上、更に好ましくは1.1倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、更に好ましくは2.0倍以下である。
[6.薄膜層]
薄膜層は、上述した実施形態において厚みの測定対象となる層であり、基材フィルム上に形成されている。通常、薄膜層は、当該薄膜層と基材フィルムとの間に他の層を介することなく、直接に接している。
〔6.1.薄膜層の屈折率〕
薄膜層は、基材フィルムとの屈折率差が小さい層が好ましい。基材フィルムの屈折率と薄膜層の屈折率とが近い場合、干渉式の膜厚測定装置を用いた従来の測定方法では、誤差が大きくなり易かったので、複層フィルムを搬送しながら薄膜層の厚みを測定することは困難であった。これに対し、上述した実施形態に係る測定方法によれば、このように従来は測定困難であった厚みの高精度の測定が可能となる。基材フィルムと薄膜層との具体的な屈折率差は、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下である。また、基材フィルムと薄膜層との屈折率差の下限は、通常は、0.003以上である。薄膜層の屈折率は、通常は、基材フィルムの屈折率よりも大きいが、基材フィルムの屈折率よりも小さくても構わない。
〔6.2.薄膜層の厚み〕
薄膜層の厚みは、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、好ましくは120nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは80nm以下である。薄膜層が薄い場合、干渉式の膜厚測定装置を用いた従来の測定方法では、複層フィルムを搬送しながら薄膜層の厚みを測定することは困難であった。中でも、薄膜層の厚みが、厚みの測定に用いる光の波長よりも短い場合には、誤差が大きくなり易く、厚みの測定が特に困難であった。これに対し、上述した実施形態に係る測定補法によれば、このように従来は測定困難であった厚みの高精度の測定が可能となる。
〔6.3.薄膜層の形成方法〕
薄膜層としては、任意の形成方法によって形成された層を用いうる。中でも、第三実施形態で説明したように、塗工法によって形成された層が好ましい。塗工法では、基材フィルムに塗工液を塗工し、塗工された塗工液を必要に応じて硬化させて、薄膜層を形成しうる。
塗工液としては、製造される複層フィルムの用途に応じた薄膜層を形成しうる液状組成物を任意に用いうる。通常、薄膜層は、重合体を含む樹脂の層として形成される。したがって、塗工液としては、薄膜層に含まれる重合体又は当該重合体の前駆体である単量体、並びに、溶媒を含む溶液又は分散液を用いることが好ましい。
前記の重合体としては、例えば、ポリウレタンを用いうる。重合体としてポリウレタンを用いることにより、当該ポリウレタンを含む薄膜層が得られる。ポリウレタンを含む薄膜層を備える複層フィルムは、他の部材との接着性に優れる。
ポリウレタンとしては、例えば、(i)1分子中に平均2個以上の活性水素を含有する成分と、(ii)ポリイソシアネート成分とを反応させて得られるポリウレタンを用いうる。また、ポリウレタンとしては、例えば、前記(i)成分及び前記(ii)成分をイソシアネート基過剰の条件下で、反応に不活性で水との親和性の大きい有機溶媒中でウレタン化反応させてイソシアネート基含有プレポリマーとし、次いで、該プレポリマーを中和し、鎖延長剤を用いて鎖延長し、水を加えて分散体とすることによって製造されるポリウレタンを用いうる。イソシアネート基含有プレポリマーの鎖延長方法としては、イソシアネート基含有プレポリマーと鎖延長剤とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。この際、鎖延長剤としては、水、水溶性ポリアミン、グリコール類などを用いうる。
前記(i)成分としては、水酸基性の活性水素を有するものが好ましく、例えば1分子中に平均2個以上の水酸基を有する化合物が好ましい。(i)成分の具体例としては、下記の(1)ポリオール化合物、(2)ポリエーテルポリオール、(3)ポリエステルポリオール、(4)ポリエーテルエステルポリオール、及び(5)ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
(1)ポリオール化合物:
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
(2)ポリエーテルポリオール:
ポリエーテルポリオールとしては、前記の(1)ポリオール化合物のアルキレンオキシド付加物;アルキレンオキシドと環状エーテル(例えばテトラヒドロフランなど)との開環共重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、1,4−ブタンジオール共重合体;グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール等が挙げられる。
(3)ポリエステルポリオール:
ポリエステルポリオールとして、例えば、多価カルボン酸又はその無水物と前記(1)ポリオール化合物とを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものなどが挙げられる。ここで、多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;トリメリット酸等のトリカルボン酸が挙げられる。ポリエステルポリオールの具体例としては、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いは、グリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール、などが挙げられる。
(4)ポリエーテルエステルポリオール:
ポリエーテルエステルポリオールとして、例えば、エーテル基含有ポリオール(例えば、前記(2)ポリエーテルポリオール及びジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を、上記(3)で例示したような多価カルボン酸又はその無水物と混合してアルキレンオキシドを反応させてなるものなどが挙げられる。ポリエーテルエステルポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物などが挙げられる。
(5)ポリカーボネートポリオール:
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、一般式HO−R−(O−C(O)−O−R)−OH(ただし、式中、Rは炭素原子数1〜12の飽和脂肪酸ポリオール残基を示す。また、Xは分子の構造単位の数を示し、通常5〜50の整数である。)で示される化合物などが挙げられる。これらは、飽和脂肪族ポリオールと置換カーボネート(例えば、炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネートなど)とを、水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法;前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンとを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法;などにより得ることができる。
これらの(i)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記(i)成分と反応させる(ii)成分(即ち、ポリイソシアネート成分)としては、例えば、1分子中に平均2個以上のイソシアネート基を含有する化合物が挙げられる。この化合物は、脂肪族化合物でもよく、脂環式化合物でもよく、芳香族化合物でもよい。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数1〜12の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネート化合物としては、炭素原子数4〜18の脂環式ジイソシアネートが好ましく、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらの(ii)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記の(i)成分及び(ii)成分は、複層フィルムの用途に応じて適切なものを任意に選択して用いうる。中でも、(i)成分としては、加水分解し難い結合を有するものを用いることが好ましく、具体的には(2)ポリエーテルポリオール及び(5)ポリカーボネートポリオールが好ましく、中でも(2)ポリエーテルポリオールが特に好ましい。
また、これらのポリウレタンは、その分子構造に酸構造を含んでいてもよい。酸構造を含むポリウレタンは、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、水中に分散させることが可能であるので、薄膜層の耐水性の改善が期待される。これを自己乳化型といい、界面活性剤が無くても分子イオン性のみで水中にポリウレタンが粒子状に分散安定化しうることを意味する。また、酸構造を含むポリウレタンは、界面活性剤が不要又は少量で済むので、基材フィルムとの接着性に優れ、かつ高い透明性を維持できる。
酸構造としては、例えば、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)等の酸基などを挙げることができる。また、酸構造は、ポリウレタンにおいて側鎖に存在していてもよく、末端に存在していてもよい。酸構造は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
酸構造の量としては、塗工液における酸価として、好ましくは20mgKOH/g以上、更に好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは250mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下である。酸価を前記範囲の下限値以上にすることによりポリウレタンの水分散性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、薄膜層の耐水性を良好にできる。
ポリウレタンに酸構造を導入する方法としては、例えば、ジメチロールアルカン酸を、前記(2)から(4)に記載した(i)成分の一部もしくは全部と置き換えることによって、予めポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等にカルボキシル基を導入する方法が挙げられる。ここで用いられるジメチロールアルカン酸としては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。ジメチロールアルカン酸は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリウレタンが含む酸構造の一部又は全部は、不揮発性塩基によって中和されていてもよい。酸構造が中和されていることにより、複層フィルムは、高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持したり、他の部材と強い接着力で接着したりすることが可能である。また、酸構造を中和しても、界面活性剤を使用せずに、若しくは界面活性剤の量が少なくても、ポリウレタンを粒子状に水中で分散させることは可能である。
ポリウレタンが含む酸構造のうち、中和される酸構造の割合は、20%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。酸構造のうちの20%以上が中和されることにより、複層フィルムが高温下に曝された熱履歴を有しても、光学材料としての特性を維持したり、他の部材と強い接着力で接着したりすることが可能である。
ポリウレタンは、架橋剤との反応を可能にするため、極性基を含むことが好ましい。極性基としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホ基などが挙げられる。中でも、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基が好ましく、水酸基及びカルボキシル基が更に好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。ポリウレタン中の極性基の量は、好ましくは0.0001当量/1kg以上、更に好ましくは0.001当量/1kg以上であり、好ましくは1当量/1kg以下である。
ポリウレタンとしては、水系ウレタン樹脂として市販されているものを用いてもよい。水系ウレタン樹脂は、ポリウレタン及び水を含む組成物であり、通常、ポリウレタン及び必要に応じて含まれる任意の成分が水の中に分散している組成物である。水系ウレタン樹脂としては、例えば、ADEKA社製の「アデカボンタイター」シリーズ、三井化学社製の「オレスター」シリーズ、DIC社製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン(WLS201,WLS202など)」シリーズ、バイエル社製の「インプラニール」シリーズ、花王社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業社製の「サンプレン」シリーズ、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス」シリーズ、楠本化成社製の「NEOREZ(ネオレッズ)」シリーズ、ルーブリゾール社製の「Sancure」シリーズなどを用いることができる。また、ポリウレタンは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗工液が含みうる重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、特に好ましくは60℃以上であり、好ましくは150℃以下、更に好ましくは125℃以下、特に好ましくは100℃以下である。重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、製造工程においてオーブンから出た後にオーブン下流側の搬送ロールを汚染すること抑制できる。また、重合体のガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、複層フィルムのカールを抑制できる。
塗工液中における重合体の状態は任意であり、粒子状になって分散していてもよく、溶媒等に溶解していてもよい。例えば、重合体としてポリウレタンを用いる場合には、ポリウレタンは、粒子状となって分散していることが多い。この場合、ポリウレタンの粒子の平均粒子径は、複層フィルムの光学特性の観点から、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。
塗工液が含みうる溶媒としては、例えば、水又は水溶性の溶媒を用いる。水溶性の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。中でも、溶媒としては、水を用いることが好ましい。溶媒として水を用いた場合、塗工液は通常は重合体を含む樹脂の水分散体となる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶媒の量は、通常は、塗工液の固形分の濃度を所望の範囲に収められるように設定する。ここで、塗工液の固形分とは、塗工液の乾燥を経て残留する成分のことをいう。前記の所望の範囲は、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは7重量%以下、特に好ましくは6重量%以下である。これにより、塗工液の粘度を好適な範囲に調整できるので、塗工液の取り扱い性及び塗工性を良好にできる。
塗工液は、更に、任意の成分を含みうる。例えば、塗工液は、任意の成分として、架橋剤を含みうる。架橋剤は、重合体が有する反応性の基と反応して結合を形成することにより、重合体を架橋させうる。したがって、例えば、塗工液を基材フィルムに塗工した後で重合体を架橋させることにより、薄膜層と基材フィルムとの接着性、並びに、薄膜層の機械的強度及び耐湿熱性を向上させることができる。例えば重合体としてポリウレタンを用いた場合、通常は、架橋剤は、前記酸構造として含まれるカルボキシル基及びその無水物基、並びに、(i)成分と(ii)成分との反応後に未反応で残った水酸基などのような、極性基と反応して架橋構造を形成しうる。
架橋剤としては、例えば、塗工液が含む重合体が有する反応性の基と反応して結合を形成しうる官能基を、1分子内に2個以上有する化合物を用いうる。中でも、架橋剤としては、カルボキシル基又はその無水物基と反応しうる官能基を有する化合物が好ましい。
架橋剤の具体例を挙げると、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物を用いうる。中でも、エポキシ化合物としては、水に溶解性があるか、または水に分散してエマルジョン化しうるものが好ましい。エポキシ基が水に溶解性を有するか又はエマルジョン化しうるものであれば、塗工液が水系樹脂である場合に、その水系樹脂の塗工性を良好にできるので、薄膜層の製造を容易に行うことが可能となる。ここで、水系樹脂とは、重合体等の固形分を、水等の水系の溶媒に溶解又は分散した状態で含有する流体状の樹脂のことをいう。
エポキシ化合物の例を挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエーテル化によって得られるジエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類1モルと、エピクロルヒドリン2モル以上とのエーテル化によって得られるポリエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸1モルと、エピクロルヒドリン2モルとのエステル化によって得られるジエポキシ化合物;などが挙げられる。
より具体的にエポキシ化合物の例を挙げると、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類およびトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
また、エポキシ化合物の例を市販品で挙げると、ナガセケムテックス社製の「デナコール(デナコールEX−521,EX−614Bなど)」シリーズ等を挙げることができる。
エポキシ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物の量は、塗工液が含む重合体100重量部に対し、好ましくは5重量部以上、更に好ましくは7重量部以上、特に好ましくは10重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、更に好ましくは40重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。エポキシ化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、エポキシ化合物と重合体との反応が十分に進行するので、薄膜層の機械的強度を適切に向上させることができる。また、エポキシ化合物の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、未反応のエポキシ化合物の残留を少なくでき、薄膜層の機械的強度を適切に向上させることができる。
また、塗工液が含む重合体の極性基と当量になるエポキシ化合物の量に対し、塗工液が含むエポキシ化合物の量は、重量基準で、好ましくは0.2倍以上、更に好ましくは0.4倍以上、特に好ましくは0.6倍以上であり、好ましくは1.4倍以下、更に好ましくは1.2倍以下、特に好ましくは1.0倍以下である。ここで、重合体の極性基と当量になるエポキシ化合物の量とは、重合体の極性基の全量と過不足無く反応できるエポキシ化合物の理論量をいう。塗工液が含む重合体の極性基は、エポキシ化合物のエポキシ基と反応しうる。よって、塗工液が含むエポキシ化合物の量を前記範囲に収めることにより、極性基とエポキシ化合物との反応を適切な程度に進行させて、薄膜層の機械的強度を効果的に向上させることができる。
カルボジイミド化合物としては、1分子内にカルボジイミド基を2以上有する化合物を用いうる。このカルボジイミド化合物は、原料として有機モノイソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等の有機イソシアネートを用いて製造されうる。これらの有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が挙げられる。したがって、有機イソシアネートが有する有機基としては、芳香族及び脂肪族のいずれを用いてもよく、また、芳香族の有機基及び脂肪族の有機基を組み合わせて用いてもよい。中でも、反応性の観点から、脂肪族の有機基を有する有機イソシアネートが特に好ましい。通常、カルボジイミド化合物は、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。
有機イソシアネートの具体例を挙げると、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の有機ジイソシアネート;イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等の有機モノイソシアネートが挙げられる。
カルボジイミド化合物の例を市販品で挙げると、日清紡ケミカル社製の「カルボジライト(カルボジライトV−02、V−02−L2、SV−02、V−04、E−02など)」シリーズを市販品として入手可能である。
カルボジイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
カルボジイミド化合物の量は、塗工液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、更に好ましくは30重量部以下である。カルボジイミド化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、カルボジイミド化合物と重合体との反応が十分に進行するので、薄膜層の機械的強度を適切に向上させることができる。また、カルボジイミド化合物の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、未反応のカルボジイミド化合物の残留を少なくでき、薄膜層の機械的強度を適切に向上できる。
オキサゾリン化合物としては、下記式(I)で示されるオキサゾリン基を有する重合体を用いうる。下記式(I)において、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群より選ばれるいずれかを表す。
Figure 2017187454
このオキサゾリン化合物は、例えば、付加重合性オキサゾリンと、必要に応じて任意の不飽和単量体とを含む単量体成分を、公知の重合法により水性媒体中で溶液重合することにより製造しうる。付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、下記式(II)で示される化合物が挙げられる。下記式(II)において、R、R、R及びRは、式(I)における定義と同様である。また、Rは、付加重合性の不飽和結合を有する、非環状の有機基を表す。
Figure 2017187454
付加重合性オキサゾリンの具体例を挙げると、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的にも入手し易く好適である。
前記付加重合性オキサゾリンの量は、オキサゾリン化合物の製造に用いる全単量体成分100重量部に対して、好ましくは3重量部以上である。これにより、オキサゾリン化合物を含む塗工液を硬化させた場合に硬化を十分に進めることができ、耐久性及び耐水性に優れた薄膜層を得ることができる。
オキサゾリン化合物の製造に用いうる任意の不飽和単量体としては、付加重合性オキサゾリンと共重合可能であり、かつ、オキサゾリン基と反応しない任意の単量体を用いうる。このような任意の不飽和単量体は、上述した単量体から任意に選択して用いうる。
オキサゾリン化合物の例を市販品で挙げると、水溶性タイプでは、日本触媒社製のエポクロスWS−500及びWS−700が挙げられる。また、例えばエマルションタイプでは、日本触媒社製のエポクロスK−2010、K−2020及びK−2030が挙げられる。これらの中でも、塗工液が含む重合体との反応性の高い水溶性タイプが好ましい。
また、オキサゾリン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン化合物の量は、塗工液が含む重合体が有する極性基とオキサゾリン化合物が有するオキサゾリン基とのモル比(極性基のモル数/オキサゾリン基のモル数)が、所定の範囲に収まるように設定しうる。具体的には、前記のモル比が、100/20〜100/100となるように設定しうる。前記のモル比を前記範囲の下限値以上にすることにより、未反応の極性基が残ることを抑制できる。また、前記のモル比を前記範囲の上限値以下にすることにより、余剰のオキサゾリン基の発生を抑制して、親水基が過剰となることを抑制できる。
さらに、塗工液が含む重合体がカルボキシル基を有し、且つ、そのカルボキシル基が中和されている場合には、重合体とオキサゾリン化合物との反応において、オキサゾリン基とカルボン酸塩とが反応しにくい。そこで、中和に用いる不揮発性塩基の種類及び不揮発性の程度を調整することで、その反応性をコントロールすることができる。
イソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物を用いうる。これらのイソシアネート化合物は、脂肪族化合物でもよく、脂環式化合物でもよく、芳香族化合物でもよい。イソシアネート化合物の具体例としては、ポリウレタンの原料として説明した(ii)成分と同様の例が挙げられる。
前記の架橋剤の中でも、エポキシ化合物及びカルボジイミド化合物が好ましく、エポキシ化合物が特に好ましい。エポキシ化合物を架橋剤として用いると、薄膜層と基材フィルムとの接着性を特に大きく向上させることができる。また、カルボジイミド化合物を架橋剤として用いると、塗工液のポットライフを改善することができる。
塗工液は、任意の成分として、上述した架橋剤に組み合わせて、硬化促進剤を含みうる。例えば、架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、硬化促進剤としては、第3級アミン系化合物(4−位に3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する化合物を除く)、三弗化ホウ素錯化合物などが好適である。また、硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤の量は、塗工液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.03重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。
塗工液は、任意の成分として、上述した架橋剤に組み合わせて、硬化助剤を含みうる。硬化助剤の具体例を挙げると、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノール等のオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン等のビニル系硬化助剤;等が挙げられる。また、硬化助剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化助剤の量は、架橋剤100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、更に好ましくは10重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。
塗工液は、任意の成分として、不揮発性塩基を含みうる。不揮発性塩基としては、塗工液を基材フィルムに塗工した後に乾燥させる際の処理条件下(例えば80℃で1時間放置した場合)において、実質的に不揮発性である塩基が挙げられる。ここで実質的に不揮発性であるとは、通常、不揮発性塩基の減少分が80%以下であることをいう。このような不揮発性塩基は、ポリウレタン等の重合体が含む酸構造を中和する中和剤として機能しうる。
不揮発性塩基としては、無機塩基を用いてもよく、有機塩基を用いてよい。中でも、沸点100℃以上の有機塩基が好ましく、沸点100℃以上のアミン化合物が更に好ましく、沸点200℃以上のアミン化合物が特に好ましい。また、有機塩基は低分子化合物でもよく、重合体でもよい。
不揮発性塩基の例を挙げると、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。また、有機塩基としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ[(2−ヒドロキシ)−1−プロピル]アミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン水酸化カリウム、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシカルボン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタール酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、シクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イロプロパノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−N−ジエタノールアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、アミノ樹脂(例えば、1,3−ジメチル−4−クロロ−メラミン樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂等)などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
不揮発性塩基の量は、塗工液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、特に好ましくは2重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。不揮発性塩基の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な接着力を得ることができる。また、不揮発性塩基の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、ポリビニルアルコール製の偏光子の色抜けの防止ができる。
塗工液は、任意の成分として、粒子を含みうる。粒子としては、無機材料からなる無機粒子、有機材料からなる有機粒子、並びに、無機材料と有機材料とを組み合わせて含む複合粒子のいずれを用いてもよい。ただし、薄膜層の形成を容易に行う観点から、水分散性の粒子を用いることが好ましい。無機粒子の材料を挙げると、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物;炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム等が挙げられる。また、有機粒子の材料を挙げると、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの例示した粒子の材料の中でも、シリカが好ましい。シリカの粒子は、シワの発生を抑制する能力及び透明性に優れ、内部ヘイズを生じ難く、着色が無いため、複層フィルムの光学特性に与える影響が小さい。また、シリカは、塗工液中での分散性および分散安定性が良好である。シリカの粒子の中でも、非晶質コロイダルシリカ粒子が特に好ましい。
前記のようなシリカ粒子としては、市販品を用いてもよい。市販品の例を挙げると、日本触媒社製の、エポスターMX−050W(平均粒子径80nm)、シーホスターKE−W10(平均粒子径110nm)、エポスターMX−100W(平均粒子径150nm〜200nm);日産化学社製のスノーテックスMP−2040(平均粒子径150nm〜200nm)などが挙げられる。
塗工液が粒子を含む場合には、粒子の径を調整することにより、当該塗工液を用いて形成される薄膜層の表面に突起を形成することができる。このような突起を形成することにより、薄膜層の表面の滑り性を良好にできる。この際、粒子の径と突起の高さとの間には通常は相関があるので、粒子の径は、塗工液の層の表面に求められる滑り性に応じて設定しうる。
中でも、150nm未満の平均粒子径を有する粒子(S)と、150nm以上の平均粒子径を有する粒子(L)とを組み合わせて用いることが好ましい。
粒子(S)の平均粒子径は、好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上、特に好ましくは40nm以上であり、好ましくは150nm未満、更に好ましくは140nm以下、特に好ましくは130nm以下である。粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、薄膜層の表面に突起を安定して形成できるので、薄膜層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、粒子による薄膜層の内部ヘイズの増大を抑制できる。
粒子(S)の平均粒子径は、薄膜層の厚みに対して、好ましくは3倍以上、更に好ましくは4倍以上、特に好ましくは5倍以上であり、好ましくは10倍以下、更に好ましくは8倍以下、特に好ましくは7倍以下である。粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、薄膜層の表面に突起を安定して形成できるので、薄膜層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(S)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、粒子による薄膜層の内部ヘイズの増大を抑制できる。
粒子(S)の量は、塗工液が含む重合体100重量部に対し、好ましくは2重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは24重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは18重量部以下である。粒子(S)の量を前記の範囲に収めることにより、薄膜層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、薄膜層の表面の滑り性を高めることができる。
粒子(L)の平均粒子径は、好ましくは150nm以上、更に好ましくは160nm以上、特に好ましくは170nm以上であり、且つ、好ましくは250nm以下、更に好ましくは230nm以下、特に好ましくは200nm以下である。粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、薄膜層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、薄膜層の内部ヘイズを小さくできる。
粒子(L)の平均粒子径は、薄膜層の厚みに対して、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、特に好ましくは4倍以上であり、好ましくは10倍以下、より好ましくは8倍以下、特に好ましくは7倍以下である。粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、薄膜層の表面の滑り性を効果的に高めることができる。また、粒子(L)の平均粒子径を前記範囲の上限値以下にすることにより、薄膜層の内部ヘイズを小さくできる。
粒子(S)の平均粒子径と粒子(L)の平均粒子径との差は、好ましくは70nm以上、より好ましくは100nm以上、特に好ましくは120nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、特に好ましくは160nm以下である。粒子(S)の平均粒子径と粒子(L)の平均粒子径との差を前記範囲に収めることにより、薄膜層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、薄膜層の表面の滑り性を高めることができる。
粒子(L)の量は、塗工液が含む重合体100重量部に対し、好ましくは5重量部以上、更に好ましくは6重量部以上、特に好ましくは7重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、更に好ましくは18重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。粒子(L)の量を前記の範囲に収めることにより、薄膜層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、薄膜層の表面の滑り性を高めることができる。
粒子(L)の量と粒子(S)の量との差は、塗工液が含む重合体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、特に好ましくは2重量部以上であり、好ましくは25重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは15重量部以下である。粒子(L)の量と粒子(S)の量との差を前記の範囲に収めることにより、薄膜層の内部ヘイズの増大を抑制しながら、薄膜層の表面の滑り性を高めることができる。
塗工液は、任意の成分として、濡れ剤を含みうる。濡れ剤を用いることにより、塗工液を基材フィルムに塗工する際の塗工性を良好にできる。
濡れ剤としては、例えば、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。アセチレン系界面活性剤としては、例えば、エアープロダクツアンドケミカルズ社製サーフィノールシリーズ、ダイノールシリーズ等を用いることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、例えば、DIC社製メガファックシリーズ、ネオス社製フタージェントシリーズ、AGC社製サーフロンシリーズ等を用いることができる。濡れ剤としては、重ね塗り性の観点から、アセチレン系界面活性剤を用いることが好ましい。
また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
濡れ剤の量は、塗工液に含まれる固形分に対して、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量%以下である。濡れ剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な塗工性を得ることができる。また、濡れ剤の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、濡れ剤のブリードアウトを抑制でき、更には重ね塗り性を良好にできる。
さらに、塗工液は、任意の成分として、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを含みうる。
これらの任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
塗工液は、塗工に適した範囲の粘度を有することが好ましい。塗工液の具体的な粘度は、好ましくは30mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、特に好ましくは10mPa・s以下である。また、塗工液の粘度の下限に特段の制限は無いが、好ましくは3mPa・s以上である。ここで、前記の粘度は、音叉型振動式粘度計により25℃の条件下で測定した値である。この粘度は、例えば、溶媒の割合及び粒子の粒径などによって調整しうる。
塗工法を用いた薄膜層の形成方法は、上述した塗工液を基材フィルムに塗工する工程を含む。この際に用いる塗工方法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。中でも、グラビアコート法、ロールコート法及びダイコート法が好ましい。
基材フィルムに塗工液を塗工した後で、通常は、塗工によって形成された塗工液の層を硬化させる工程を行う。硬化は、例えば、乾燥によって塗工液に含まれる溶媒を除去したり、塗工液に含まれる重合体を架橋させたりすることにより、行いうる。乾燥方法は任意であり、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥など任意の方法で行いうる。また、架橋方法は任意であり、紫外線等の光の照射、加熱など任意の方法で行いうる。中でも、乾燥及び架橋を同時に進行させて工程数を減らす観点、及び、架橋反応等の反応を速やかに進行させる観点から、塗工液の層の硬化は加熱により行うことが好ましい。このような加熱を行う場合、通常は、溶媒の乾燥と重合体の架橋とが同時に進行する。
加熱により塗工液の層を硬化させる場合、加熱温度は、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。ここでTgとは、基材フィルムに含まれる樹脂のガラス転移温度を表す。加熱温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、乾燥及び架橋を速やかに進めることができるので、塗工液の層の硬化を効率的に進行させられる。また、加熱温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、基材フィルムの配向緩和を抑制できるので、加熱による基材フィルムの光学特性の変化を抑制できる。
[7.複層フィルムの物性]
光学フィルムとしての機能を安定して発揮させる観点から、複層フィルムの全光線透過率は高いことが好ましい。具体的には、複層フィルムの1mm厚換算での全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
複層フィルムの内部ヘイズは、小さいことが好ましい。具体的には、複層フィルムの内部ヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。ここで、複層フィルムの内部ヘイズは、下記の方法により測定しうる。
高さ55mm、幅36mm、光路長10mmの石英セルを用意する。この石英セル内に、シリコーンオイルを充填する。このシリコーンオイル中に複層フィルムを入れて、測定試料を得る。このように用意した測定試料を用いて、ヘイズメーターによって、複層フィルムの内部ヘイズを測定しうる。
複層フィルムは、面内方向又は厚み方向にレターデーションを有する位相差フィルムであってもよい。具体的なレターデーションの範囲は、複層フィルムの用途に応じて設定しうる。具体的な範囲を挙げると、通常は、面内レターデーションReで10nm〜500nm、厚み方向のレターデーションRthで−500nm〜500nmの範囲から適宜選択される。
複層フィルムは、面内レターデーションReのバラツキが、好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下、特に好ましくは2nm以下である。面内レターデーションReのバラツキを前記範囲にすることにより、複層フィルムを液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に、表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、面内レターデーションReのバラツキは、光入射角0°(入射光線とフィルムの表面とが直交する状態)の時の面内レターデーションReを、フィルムの幅方向に測定したときの、その面内レターデーションReの最大値と最小値との差である。
複層フィルムの残留揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、複層フィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthの経時変化を小さくすることができる。
複層フィルムの基材フィルム側の表面と、薄膜層側の表面との静摩擦係数は、小さいことが好ましい。前記の静摩擦係数は、好ましくは0.3〜0.5である。これにより、複層フィルムを巻き取ってフィルムロールとしたときに、巻き重ねられた複層フィルム同士の固着によるシワの発生を抑制できるので、フィルムロールの保存による欠陥の発生を抑制できる。前記のように小さい静摩擦係数は、塗工液が上述した粒子を含むことにより、実現できる。
複層フィルムの幅は、例えば1000mm〜3000mmとしうる。
[8.複層フィルムの用途]
複層フィルムは、光学フィルムとして使用しうる。複層フィルムの用途となる光学フィルムの例を挙げると、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどが挙げられる。中でも、複層フィルムは、位相差フィルム又は偏光板保護フィルムとして用いることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いることが特に好ましい。
偏光板は、通常、偏光子と偏光板保護フィルムとを備える。したがって、複層フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合には、通常、偏光子に複層フィルムを貼り合わせる。この際、通常は、複層フィルムの薄膜層側の面で、複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる。
複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる際、接着剤層を介することなく直接に複層フィルムと偏光子とを貼り合せてもよく、接着剤層を介して貼り合せてもよい。さらに、偏光子の一方の面だけに複層フィルムを貼り合せてもよく、両方の面に貼り合せてもよい。偏光子の一方の面だけに複層フィルムを貼り合わせる場合、偏光子の他方の面には、透明性の高い別のフィルムを貼り合せてもよい。
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造しうる。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって製造しうる。さらに、偏光子として、例えば、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光子を用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
偏光子と複層フィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明なものを用いうる。この接着剤としては、例えば、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、光硬化型接着剤、感圧性接着剤などが挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。また、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
複層フィルムと偏光子とを貼り合わせる方法に制限は無い。例えば、偏光子の一方の面に必要に応じて接着剤を塗工した後、ロールラミネーターを用いて偏光子と複層フィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥又は紫外線等の光の照射を行う方法が好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「%」、「ppm」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
[実施例1]
(1−1.塗工液の製造)
乾燥した状態での屈折率が1.56であるウレタンの水分散液(固形分濃度40%)を用意した。この分散液100部に対し、エポキシ化合物であるグリセロールポリグリシジルエーテル20部と、平均粒子径60nmのコロイダルシリカ粒子分散液(固形分濃度40%)8部と、非イオン系界面活性剤として4,7−ジヒドロキシ−2,4,7,9−テトラメチル−5−デシンのエチレンオキサイド付加物と、水とを配合して、固形分濃度5%の液状の水系樹脂を、塗工液として得た。ここで、非イオン系界面活性剤の量は、得られる塗工液に対して100ppmとなる量とした。この塗工液を100℃に加熱することで硬化させて、その硬化物の屈折率を測定したところ、1.57であった。この屈折率は、薄膜層の屈折率に相当する。
(1−2.基材フィルムの製造)
脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1430」;ガラス転移温度135℃、屈折率1.52)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥した。その後、65mm径のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式のフィルム溶融押出し成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅500mmの成形条件で、厚み100μm、長さ1000mの基材フィルムを製造した。この基材フィルムは、脂環式オレフィン樹脂からなる長尺の基材フィルムである。
(1−3.補正係数の計算)
基材フィルムの静止状態の分光反射率R(λ)を測定した。この測定の際、光源としては、ハロゲンランプ及びD2ランプを用いた。また、測定装置としては、オフライン測定器(大塚電子製「FE300F−UV」)を用いた。さらに、この測定は、外乱を排除するために、外光を遮断して実施した。前記のオフライン測定器には、多重反射を防止するために、アパーチャーが設置されている。そのため、オフライン測定では、補正係数を使用する必要はない。測定結果を、図15に示す。
第三実施形態で説明したように、光源装置110;分岐ファイバー120;ファイバヘッド131、ヘッド支持アーム132、リファレンス材133及びリファレンス材支持アーム134を備えるセンサユニット130;分光器140;並びに、演算装置250を備える、3台の干渉式の膜厚測定装置200L、200C及び200Rを用意した(図13参照)。この膜厚測定装置において、光源装置110には、光源としてハロゲンランプ及びD2ランプを備える装置を用いた。また、分岐ファイバー120、ファイバヘッド131及び分光器140としては、市販の分光器(大塚電子製「マルチチャンネル分光器MCPD−9800」)が備えるものを用いた。さらに、リファレンス材としては、アルミニウム板を用いた。このアルミニウム板の分光反射率K(λ)は、予め測定しておいた。
用意した膜厚測定装置200L、200C及び200Rを、図13に示すように、基材フィルム12の幅方向に等間隔に並んだ3ヶ所の測定位置において測定を行えるように、設置した。その後、基材フィルム12を搬送速度30m/分でフィルム長手方向に搬送しながら、前記の膜厚測定装置200L、200C及び200Rを用いて、第二実施形態及び第三実施形態で説明したように、第一ヘッド後退工程、第一リファレンス測定工程、第一ヘッド前進工程、第一サンプル測定工程、及び、補正係数演算工程を行って、補正係数C(λ)を計算した。この際、ファイバヘッド131の移動方向はフィルム厚み方向のみとし、前進状態と後退状態とを切り替える際のファイバヘッド131の移動量は100mmとした。膜厚測定装置200L、200C及び200Rによる分光反射率R(λ)の測定結果を、それぞれ、図16〜図18に示す。これらの図16〜図18には、参考として、基材フィルム12の静止状態の分光反射率R(λ)を、破線で示す。さらに、膜厚測定装置200L、200C及び200Rで得られた補正係数C(λ)を、それぞれ、図19〜図21に示す。
(1−4.複層フィルムの製造及び薄膜層の厚みの測定)
図8に示すように、コロナ処理機310、塗工装置320、掻取装置330、オーブン340、並びに、干渉式の膜厚測定装置200L、200C及び200Rを、フィルム搬送方向の上流からこの順に備える製造装置300を用意した。製造装置300を用いて、基材フィルム12を搬送速度30m/分でフィルム長手方向に連続的に搬送しながら、下記の手順により複層フィルム10を製造した。
基材フィルム12の下面12Dに、コロナ処理機310を用いてコロナ放電処理を施した。その後、図9に示すように、基材フィルム12を搬送しながら、その下面12Dに、塗工ロール321を備えた塗工装置320を用いて、塗工液30を塗工した。これにより、基材フィルム12の下面12Dに、塗工液の層40が形成された。
塗工液の層40を下面12Dに形成された基材フィルム12を、掻取装置330へと送った。そして、基材フィルム12の下面12Dに塗工された塗工液30の一部を掻取装置330の掻き取りロール331により掻き取って、乾燥後の薄膜層11の厚みTが50nmとなるように、塗工液の層40の厚みを調整した。
その後、図8に示すように、オーブン340によって、塗工液の層40を温度100℃で60秒間加熱した。この加熱により、塗工液の層40に含まれる溶媒の乾燥及びポリウレタンの架橋が進行して、塗工液の層40が硬化し、基材フィルム12の下面12Dに薄膜層11が形成された。これにより、基材フィルム12及び薄膜層11を備える複層フィルム10を得た。
得られた複層フィルム10を、更に下流に設置された膜厚測定装置200L、200C及び200Rへと搬送した。そして、複層フィルム10を搬送しながら、第二実施形態及び第三実施形態で説明したように、第二ヘッド後退工程、第二リファレンス測定工程、第二ヘッド前進工程、第二サンプル測定工程、及び、演算工程を行って、薄膜層11の厚みTを継続的に測定した。前記の厚みTの測定において、測定波長範囲は、230nm〜550nmとした。
複層フィルム10の長手方向において、始点から100m〜110mの巻き始め範囲、始点から500m〜510mの中間範囲、及び、始点から900m〜910mの巻き終わり範囲それぞれにおける、薄膜層11の厚みTの測定値の平均を、下記の表1に示す。
[参考例1]
実施例1で製造された複層フィルムを、実施例1で薄膜層の厚みTを測定した位置において切断した。巻き始め範囲、中間範囲及び巻き終わり範囲それぞれにおいて5箇所ずつ、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、薄膜層の厚みTを測定した。そして、複層フィルムの巻き始め範囲、中間範囲及び巻き終わり範囲それぞれにおいて、薄膜層の厚みTの平均値を計算した。結果を、表1に示す。
Figure 2017187454
[検討]
表1から分かるように、干渉式の膜厚測定装置を用いた実施例1で得られた測定値全体の平均は、48.8nmであり、他方、TEMを用いた参考例1で得られた測定値全体の平均値は、50.6nmである。このように、干渉式の膜厚測定装置を用いた実施例1での測定では、TEMを用いた参考例1での測定とほぼ等しい結果が得られている。以上の結果から、本発明の製造方法によれば、搬送される複層フィルムの薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて高精度で測定できることが確認された。
10 複層フィルム
11 薄膜層
12 基材フィルム
21〜27 搬送ロール
30 塗工液
40 塗工液の層
50 繰出しロール
60 ロール
100 干渉式の膜厚測定装置
110 光源装置
120 分岐ファイバー
130 センサユニット
131 ファイバヘッド
132 ヘッド支持アーム
133 リファレンス材
134 リファレンス材支持アーム
140 分光器
150 演算装置
200、200L、200C、200R 干渉式の膜厚測定装置
250 演算装置
300 複層フィルムの製造装置
310 コロナ処理機
320 塗工装置
321 塗工ロール
322 供給器
330 掻取装置
331 掻き取りロール
332 回収器
340 オーブン

Claims (6)

  1. 基材フィルム及び前記基材フィルム上に設けられた薄膜層を備える複層フィルムの前記薄膜層の厚みを、前記複層フィルムを搬送しながら、干渉式の膜厚測定装置を用いて測定する測定方法であって、
    前記膜厚測定装置が、光照射部、光検出部及びリファレンス材を備え、
    前記光照射部が、前記複層フィルム及び前記リファレンス材へと光を照射しうるように設けられ、
    前記光検出部が、前記複層フィルムに対して一方向に進退可能に設けられ、前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記光照射部から照射されて前記複層フィルムで反射した光を検出でき、且つ、前記複層フィルムから退いた後退状態において前記光照射部から照射されて前記リファレンス材で反射した光を検出でき、
    前記リファレンス材が、前記光検出部が前記複層フィルムから退いた後退状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入でき、且つ、前記光検出部が前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避できるように設けられていて、
    前記測定方法が、
    前記光検出部を前記複層フィルムから退かせて後退状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入させる工程と、
    前記光照射部から前記リファレンス材へと光を照射し、前記リファレンス材で反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
    前記光検出部を前記複層フィルムに近づかせて前進状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避させる工程と、
    前記光照射部から前記複層フィルムへと光を照射し、前記複層フィルムで反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
    前記光検出部で検出された、前記リファレンス材で反射した光、及び、前記複層フィルムで反射した光に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算する工程と、を含む、薄膜層の厚みの測定方法。
  2. 前記光照射部及び前記光検出部が、同一部材として設けられている、請求項1記載の薄膜層の厚みの測定方法。
  3. 前記基材フィルムと前記薄膜層との屈折率差が、0.1以下である、請求項1又は2記載の薄膜層の厚みの測定方法。
  4. 基材フィルム及び前記基材フィルム上に形成された薄膜層を備える複層フィルムの製造方法であって、
    前記基材フィルムを搬送しながら、前記基材フィルム上に前記薄膜層を形成して、前記複層フィルムを得る工程と、
    前記複層フィルムを搬送しながら、前記薄膜層の厚みを、干渉式の膜厚測定装置を用いて測定する工程と、を含み、
    前記膜厚測定装置が、光照射部、光検出部及びリファレンス材を備え、
    前記光照射部が、前記複層フィルム及び前記リファレンス材へと光を照射しうるように設けられ、
    前記光検出部が、前記複層フィルムに対して一方向に進退可能に設けられ、前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記光照射部から照射されて前記複層フィルムで反射した光を検出でき、且つ、前記複層フィルムから退いた後退状態において前記光照射部から照射されて前記リファレンス材で反射した光を検出でき、
    前記リファレンス材が、前記光検出部が前記複層フィルムから退いた後退状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入でき、且つ、前記光検出部が前記複層フィルムに近づいた前進状態において前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避できるように設けられていて、
    前記薄膜層の厚みを測定する工程が、
    前記光検出部を前記複層フィルムから退かせて後退状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間に進入させる工程と、
    前記光照射部から前記リファレンス材へと光を照射し、前記リファレンス材で反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
    前記光検出部を前記複層フィルムに近づかせて前進状態とし、且つ、前記リファレンス材を前記複層フィルムと前記光検出部との間から退避させる工程と、
    前記光照射部から前記複層フィルムへと光を照射し、前記複層フィルムで反射した光を前記光検出部で検出する工程と、
    前記光検出部で検出された、前記リファレンス材で反射した光、及び、前記複層フィルムで反射した光に基づいて、前記薄膜層の厚みを計算する工程と、を含む、複層フィルムの製造方法。
  5. 前記光照射部及び前記光検出部が、同一部材として設けられている、請求項4記載の複層フィルムの製造方法。
  6. 前記基材フィルムと前記薄膜層との屈折率差が、0.1以下である、請求項4又は5記載の複層フィルムの製造方法。
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