JPWO2019163962A1 - 電解銅箔、並びに該電解銅箔を用いたリチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、銅張積層板及びプリント配線板 - Google Patents
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Abstract
Description
このような銅箔を用いたリチウムイオン二次電池の負極は、銅箔の表面に、負極活物質層としてカーボン粒子等を塗布し、乾燥し、さらにプレスすることで、形成される。
このようなプリント配線板の製造では、銅箔と、絶縁基板とを熱圧着する際のプレスにより、銅箔にシワが発生する問題があった。
そのため、プリント配線板用途においても、製造時にシワが発生し難い銅箔の開発が求められていた。
[1] 電解銅箔をその幅方向の一方端から他方端まで100mm間隔で裁断して得た各裁断銅箔を用いて測定した引張強度が、下記要件(I)から(III)を満たす、電解銅箔。
・要件(I):常態における前記各裁断銅箔の引張強度の平均値が400MPa以上650MPa以下である。
・要件(II):常態における前記各裁断銅箔の引張強度の分散σ2が18[MPa]2以下である。
・要件(III):150℃で1時間熱処理された後の状態における前記各裁断銅箔の引張強度の平均値が350MPa以上である。
[2] 幅方向寸法が600mm以上である、上記[1]に記載の電解銅箔。
[3] 前記各裁断銅箔の常態における伸びの平均値が5.3%以上である、上記[1]又は[2]に記載の電解銅箔。
[4] 導電率が88%IACS以上である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の電解銅箔。
[5] 光沢面の展開面積比(Sdr)が12%以上27%以下である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の電解銅箔。
[6] リチウムイオン二次電池の負極集電体として用いる、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の電解銅箔。
[7] 上記[6]に記載の電解銅箔を用いた、リチウムイオン二次電池用負極。
[8] 上記[7]に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いた、リチウムイオン二次電池。
[9] 上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の電解銅箔の少なくとも一方の表面に粗化処理面を有し、
前記粗化処理面の展開面積比(Sdr)が20%以上200%以下である、電解銅箔。
[10] 上記[9]に記載の電解銅箔と、該電解銅箔の粗化処理面に積層された樹脂製基板と、を備える銅張積層板。
[11] 上記[10]に記載の銅張積層板を備えるプリント配線板。
・要件(I):常態における前記各裁断銅箔の引張強度の平均値が400MPa以上650MPa以下である。
・要件(II):常態における前記各裁断銅箔の引張強度の分散σ2が18[MPa]2以下である。
・要件(III):150℃で1時間熱処理された後の状態における前記各裁断銅箔の引張強度の平均値が350MPa以上である。
上記のような知見に基づき、プリント配線板に用いる銅箔についても、上記の様に幅方向の引張強度のバラつきを小さくすることにより、シワ不良が抑制され、プリント配線板の生産性を向上できることを見出した。
本発明の銅箔は、常態における各裁断銅箔の引張強度(Ts)の平均値が、400MPa以上650MPa以下であり、好ましくは400MPa以上600MPa以下であり、より好ましくは445MPa以上600MPa以下であり、さらに好ましくは450MPa以上600MPa以下である。上記範囲とすることにより、電池の生産性を向上でき、良好な電池特性を有する電池を製造できる。一方、常態における各裁断銅箔の引張強度の平均値が400MPa未満である場合には、電池の高容量化に伴う電極材による負荷の増大の影響に耐えられず、銅箔にシワが発生する傾向にある。また、常態における各裁断銅箔の引張強度の平均値が650MPaを超える場合には、銅箔の伸びが低下し、銅箔の箔切れが発生し易くなる傾向にある。
また、プリント配線板に用いる場合にも、銅箔の常態における引張強度が400MPa未満である場合には、薄箔シート品の搬送時にシワが発生することでハンドリング性が悪化する。また、銅箔の常態における引張強度が、650MPaを超える場合には、ドラムによる析出製造時に箔切れが発生し易くなり、生産性が悪化する。
本発明の銅箔は、常態における各裁断銅箔の引張強度(Ts)の分散σ2が、18[MPa]2以下であり、好ましくは14[MPa]2以下であり、より好ましくは11[MPa]2以下であり、さらに好ましくは10[MPa]2以下である。ここで、各裁断銅箔の引張強度の分散σ2は、銅箔の幅方向の引張強度のバラつきの指標であり、その値が大きいほど引張強度のバラつきが大きいことを意味する。本発明の銅箔は、常態における各裁断銅箔の引張強度の分散σ2が上記範囲であることにより、電極の製造工程において局所的なシワやたるみの発生を有効に防止できる。また、プリント配線板の製造工程においてもプレスによるシワの発生を有効に防止できる。一方、常態における各裁断銅箔の引張強度の分散σ2が18[MPa]2超である場合には、銅箔の幅方向の引張強度のバラつきが大きく、電極の製造工程において銅箔に負荷される応力が銅箔の幅方向にバラつくため、局所的なシワやたるみが発生し、電池の生産性が低下する傾向にある。また、プリント配線板の製造工程においても、プレスによるシワの発生が顕著になる傾向にある。なお、常態における各裁断銅箔の引張強度の分散σ2の下限は、例えば0[MPa]2であってもよい。
本発明の銅箔は、150℃で1時間熱処理された後の状態における各裁断銅箔の引張強度(Ts)の平均値が350MPa以上であり、好ましくは380MPa以上であり、より好ましくは400MPa以上である。上記範囲とすることにより、電池への加工時に十分な強度を維持でき、電池の充放電時の負荷への耐久性に優れ、電池のサイクル寿命が向上する。一方、150℃で1時間熱処理された後の状態における各裁断銅箔の引張強度の平均値が350MPa未満であると、電池への加工時に強度が低下し、また電池の充放電時には、負荷に耐えきれず銅箔の破断が発生し易くなり、電池のサイクル寿命の低下を招く傾向にある。なお、150℃で1時間熱処理された後の状態における各裁断銅箔の引張強度の平均値の上限は、加熱後においても適度な伸びを有する観点で、例えば550MPaであり、好ましくは450MPaであってもよい。
また、プリント配線板の製造においても、150℃で1時間熱処理された後の状態における各裁断銅箔の引張強度の平均値が350MPa以上の場合には、基板の積層工程で加熱した後も、結晶粒が細かく維持されるため、エッチング性が良好となる。一方、上記引張強度の平均値が350MPa未満である場合には、基板の積層工程で加熱した後に結晶粒が大きくなる傾向にあり、エッチングで銅粒子が溶け難くなる為、エッチング性が悪化する。
本発明の銅箔は、各裁断銅箔の常態における伸び(El)の平均値が、好ましくは5.3%以上であり、より好ましく6.0%以上であり、さらに好ましくは7.5%以上、より更に好ましくは9.0%以上である。上記範囲とすることにより、電池の充放電時に銅箔に負荷される応力に対する耐久性が向上する。なお、各裁断銅箔の常態における伸びの平均値の上限は、高強度の観点で、例えば13.0%であり、好ましくは11.0%であってもよい。
また、150℃で1時間熱処理された後の状態における各裁断銅箔の伸びの平均値についても、常態の場合と同様の範囲であることが好ましい。
なお、伸びは、本実施例に記載された評価条件の下で測定された値とする。
従来、銅箔の表面形状を表すパラメータとしては、十点平均粗さRzjisを用いるのが一般的であったが、十点平均粗さRzjisでは、表面の二次元断面形状に対する高さ方向の情報しか含まれておらず、正しい評価が行えていなかった。これに対し、展開面積比(Sdr)には、表面の三次元の情報が含まれるため、より適切な特性評価が可能となる。
また、本発明の銅箔は、粗面の展開面積比(Sdr)が、好ましくは92%以下であり、より好ましくは90%以下であり、さらに好ましくは80%以下であり、より更に好ましくは70%以下である。上記範囲とすることにより、電極製造時に活物質層の塗工が均一になされることで銅箔への応力負荷が均一に起こるためシワやたるみが減少し、生産性が向上する。また、上記範囲とすることにより、プリント配線板の製造工程においても、プレスによるシワの発生が抑制される。なお、粗面の展開面積比(Sdr)の下限は、例えば62%であってもよい。
ここで、光沢面及び粗化面の展開面積比(Sdr)は、本実施例に記載された評価条件の下で測定された値とする。
なお、光沢面(「S(シャイニー)面」ということもある)とは、電解銅箔の製箔時にカソードドラムに接していた側の面をいい、粗面(「M(マット)面」ということもある)とは、光沢面と反対側の面をいう。なお、本願明細書において、光沢面及び粗面と称する場合は、製箔後に表面処理を施していない未処理の銅箔表面を指し、光沢面及び粗面上に、粗化処理を施した、粗化処理面とは区別するものとする。
粗化処理面の展開面積比(Sdr)は、本実施例に記載された評価条件の下で測定された値とする。
本発明の銅箔は、導電率が、好ましくは88%IACS以上であり、より好ましくは90%IACS以上であり、さらに好ましくは91%IACS以上であり、より更に好ましくは92%IACS以上である。上記範囲とすることにより、電池を作製した際に負極電極の内部抵抗が低下し、電池のサイクル特性が向上する。また、上記範囲であれば、銅箔をプリント配線板として用いる場合にも好適である。
ここで、導電率は、本実施例に記載された評価条件の下で測定された値とする。
次に、本発明の電解銅箔の好ましい製造方法について説明する。
本発明の電解銅箔は、例えば、白金族元素又はその酸化物元素で被覆したチタンからなる不溶性アノードと該アノードに対向させて設けられたチタン製カソードドラムとの間に電解液を供給し、カソードドラムを一定速度で回転させながら、両極間に直流電流を通電することによりカソードドラム表面上に銅を析出させ、析出した銅をカソードドラム表面から引き剥がし、連続的に巻き取る方法により製造することができる。なお、このような製造を行う装置は一例である。
有機添加剤としては、例えば、チオ尿素(CH4N2S)又は水溶性チオ尿素誘導体(エチレンチオ尿素等)や、ニカワ、ゼラチン、ポリエチレングリコール、デンプン、セルロース系水溶性高分子(カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)等の高分子多糖類、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子化合物等を用いることができる。
また、無機添加剤としては、塩化物イオンの供給源としてNaClやHClの他、ごく微量の金属元素の供給源としてタングステン酸ナトリウムやタングステン酸アンモニウム等を用いることができる。
また、電解液の液温は40〜60℃、カソード電極面での平均電流密度は40〜60A/dm2に調節することが好ましい。
しかしながら、核発生と核成長の起こる割合は、電解液の濃度や、電流密度、液温、添加剤の種類とその濃度等の製造条件により変動する。殊に高強度化を目的とした条件の場合、核成長が支配的になることが多い。
添加剤が銅結晶粒に吸着し、また銅箔中に取り込まれることにより、銅箔の強度を高めることができるが、核成長が支配的であることは、すなわち添加剤の吸着点は疎らになり易いことを意味する。そういった条件で作製された高強度銅箔は、強度にバラつきが生じ易い。
具体的には、従来の製箔工程に加え、初期電着時においてのみPR(Periodic Reverse)パルス電解を使用することが好ましい。
しかし、初期電着時にPRパルス電解を用いることで、銅の結晶核発生時において銅の析出工程(正パルス通電時)と溶解工程(負パルス通電時)が繰り返される。析出工程で発生した銅の結晶核は、後の溶解工程によってその形状が小型化する。溶解工程の次の析出工程においては、小さくなった銅の結晶核上に加えて、さらにカソード基板上にも新たに銅の結晶核が発生する。それらの繰り返しによって、微細な核発生が得られ、初期電着層が微細化、平滑化する。その結果、添加剤の吸着点が均一に得られると考えられる。
正パルス電流密度Ion:20〜80A/dm2
正パルス通電時間ton:50〜200ミリ秒(ms)
負パルス電流密度Irev:−80〜−20A/dm2
負パルス通電時間trev:50〜200ミリ秒(ms)
パルス停止時間toff:50〜200ミリ秒(ms)
正パルス−負パルスの繰り返し回数:10〜30回
0.5≦|Q2/Q1|≦0.9 ・・・(i)
図1に示されるように、製造装置1は、カソードドラム11と、PRパルス用電極12と、アノード13と、浴槽14とで主に構成されている。PRパルス用電極12及びアノード13は、カソードドラム11に対向するように設けられ、その間に電解液20が供給される。カソードドラム11は、矢印11aの方向に一定速度で回転し、PRパルス用電極12及びアノード13との各両極間で、PRパルス及び直流電流のそれぞれが通電されることにより、カソードドラム11の表面に銅が析出する。カソードドラム11の表面に析出した銅は、最後に矢印30aの方向に引き剥がされ、銅箔30として製箔される。なお、製造装置1において、浴槽14の外側及び各種配管等は図示を省略しているが、電解液20は、浴槽14の外側から、矢印20aの方向に連続的に供給され、また、カソードドラム11と、PRパルス用電極12及びアノード13との間を通過した後の電解液20は、排出用の配管を通って浴槽14の外側に排出される。
銅箔の表面処理としては、例えば、クロメート処理、あるいはNi又はNi合金めっき、Co又はCo合金めっき、Zn又はZn合金めっき、Sn又はSn合金めっき、上記各種めっき層上にさらにクロメート処理を施したもの等の無機防錆処理、あるいは、ベンゾトリアゾール等の有機防錆処理、シランカップリング剤処理等が挙げられる。これらの表面処理は、防錆に加えて、例えばリチウムイオン二次電池の負極集電体として用いる場合には活物質との密着強度を高め、さらに電池の充放電サイクル効率の低下を防ぐ役割を果たす。これらの防錆処理は一般的に銅箔厚さに対してごく薄い厚さで処理される。そのため引張強度等にはほぼ影響が無い。
粗化処理は、基体となる銅箔(以下、単に「銅箔基体」ということがある。)の少なくとも一方の表面に対し、粗化めっき処理1及び粗化めっき処理2を順次施すことによって、行うことができる。粗化めっき処理1及び粗化めっき処理2の好ましい条件は、下記の通りである。なお、下記条件は好ましい一例であり、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて添加剤の種類や量、電解条件を適宜変更、調整することができる。
硫酸銅: 銅濃度として 18〜23g/L
(「銅金属として、18〜23g/Lに相当する量を含有する硫酸銅」を意味する。以下においても同様とする。)
硫酸: 96〜105g/L
硫酸コバルト(II)七水和物: コバルト濃度として 2.8〜4.2g/L
液温: 32〜40℃
電流密度: 32〜36A/dm2
時間: 1秒〜2分
硫酸銅: 銅濃度として 45〜55g/L
硫酸: 112〜121g/L
液温: 59〜64℃
電流密度: 6〜12A/dm2
時間: 1秒〜2分
本発明に係る銅箔は、リチウムイオン二次電池の負極集電体として用いることが好ましい。本発明に係る銅箔を用いることにより、電池製造時において、複数本のストライプ塗工を行ってもシワや破断、スリット端面の形状不良等が発生し難く、電池の生産性を向上できる。
このような本発明に係る銅箔を負極集電体として用いたリチウムイオン二次電池用負極は、高強度、高耐熱であるために、電池製造時、及び充放電時の耐久性が向上する。また、このような負極を用いたリチウムイオン二次電池は、製造時の歩留まりがよく、また電池特性(例えばサイクル特性)にも優れている。
本発明に係る銅箔は、銅張積層板及びこれを備えるプリント配線板として用いることもできる。本発明に係る銅箔を用いることにより、プリント配線板の製造時において、銅箔と、絶縁基板とを熱圧着する際のプレスによりシワが発生することを抑制でき、プリント配線板の生産性を向上できる。
図1に示すように、チタン製カソードドラム11(幅1200mm、径2100mm)と、該カソードドラム11に対向させて設けられたPRパルス用電極12及び不溶性アノード13との間に電解液20を供給し、カソードドラム11を一定速度で回転させながら、両極間にPRパルス及び直流電流を通電することにより、カソードドラム11の表面上に銅を析出させ、厚さ10μmの銅箔30を作製した。その後、銅箔30をカソードドラム11から引き剥がし、両端を切断して、ロール状に巻き取って、幅方向寸法1100mmの銅箔を得た。
また、表1に記載された添加剤の種類のうち、「チオ尿素」及び「エチレンチオ尿素」は、いずれも東京化成工業株式会社の製品を用いた。
比較例製造5では、両極間にPRパルスを通電せずにカソードドラム11の表面上に銅を析出させた以外は、製造例1と同様に銅箔30を得た。
比較製造例6では、両極間にPRパルスを通電せずにカソードドラム11の表面上に銅を析出させた以外は、製造例2と同様に銅箔30を得た。
[特性評価]
上記製造例及び比較製造例で作製した銅箔について、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りであり、特に断らない限り、各測定は室温にて行った。結果を表2に示す。
常態の銅箔としては、製造されたままの未加熱の状態の銅箔を使用した。
また、150℃で1時間熱処理した後の状態の銅箔は、常態の銅箔を、イナートガスオーブン(INH−21CD−S、光洋サーモシステム株式会社製)で、150℃で1時間加熱した後、室温まで冷却されたものを使用した。
それぞれの銅箔について、その幅方向の一方端から他方端まで100mm間隔で裁断し、各状態に対応する11枚の裁断銅箔(100mm×200mm、厚さ10μm)を得た。
引張試験は、常態と、150℃で1時間熱処理した後の状態との2種類の裁断銅箔を測定対象として、引張試験機(1122型、インストロン社製)用いて、IPC−TM−650の規定に従って行った。
まず、一の裁断銅箔の幅方向の一端(切断端部)から10mmの位置を始点として、幅方向寸法が0.5inchの試験片(0.5inch×6inch)を、幅方向に約5mm間隔で5本切り出した。得られた試験片を用いて、チャック間距離70mm、引張速度50mm/minの条件で、引張強度及び伸びを測定した。ここで、伸びは、試験片が破断した際の伸び率を指す。そして、得られた測定値(各々N=5)から算出した平均値を、該一の裁断銅箔の引張強度及び伸びとした。さらに、他の裁断銅箔10枚についても同様に、引張強度及び伸び率をそれぞれ求め、最後に、11枚の各裁断銅箔の引張強度及び伸び率(各々N=11)を各々平均して、引張強度の平均値及び伸びの平均値を求めた。
この測定を、常態と、150℃で1時間熱処理した後の状態との2種類の銅箔について、それぞれ行った。
なお、常態の銅箔については、11枚の各裁断銅箔の引張強度から、引張強度の分散σ2を求めた。
展開面積比(Sdr)の測定は、常態の裁断銅箔を測定対象として、白色光干渉型光学顕微鏡(Wyko ContourGT−K、BRUKER社製)を用いて表面形状の測定を行い、さらに形状解析することにより行った。形状解析はVSI測定方式でハイレゾリューションCCDカメラを使用し、光源は白色光、測定倍率が50倍、測定領域が96.1μm×72.1μm、LateralSamplingが0.075μm、speedが1、Backscanが10μm、Lengthが10μm、Thresholdが3%の条件により行い、TermsRemoval(Cylinderand Tilt)、DataRestore(Method:legacy、iterations 5)のフィルタ処理をしたあと、データ処理して行なった。具体的には次のように行った。
まず、一の裁断銅箔の中心部で、表面形状を測定し、形状解析して展開面積比(Sdr)を求めた。さらに、他の裁断銅箔10枚についても同様に展開面積比(Sdr)を測定し、最後に、11枚の各裁断銅箔の展開面積比(Sdr)の測定値(N=11)を平均して、その平均値を銅箔の展開面積比(Sdr)とした。結果を表2に示す。
導電率の測定は、常態の裁断銅箔を測定対象として、Agilent 4338B ミリオームメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて、JISH0505−1975の規定に従って行った。具体的には次のように行った。
一の裁断銅箔から試験片(0.5inch×6inch)を1本切り出し、該試験片を用い、端子間距離を100mmとして4端子法にて、導電率を3回測定した。得られた測定値(N=3)から算出した平均値を、該一の裁断銅箔の導電率とした。さらに、他の裁断銅箔10枚についても同様に導電率を求め、最後に、11枚の各裁断銅箔の導電率(N=11)を平均して、その平均値を銅箔の導電率とした。結果を表2に示す。
上記製造例及び比較製造例で作製した銅箔を負極集電体として用いて、リチウムイオン二次電池を作製し、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りであり、特に断らない限り、各測定は室温にて行った。結果を表2に示す。
まず、LiCoO2粉末と、黒鉛粉末と、ポリフッ化ビニリデン粉末とを、質量比で90:7:3の割合で混合し、これに溶剤としてN−メチルピロリドン及びエタノールを添加し、混練して、正極剤ペーストを調製した。
次に、得られた正極剤ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔上に均一に塗着した。正極剤ペーストを塗着したアルミニウム箔を、窒素雰囲気中で乾燥し、上記溶剤を揮散させ、次いでロール圧延を行って、全体の厚みが150μmであるシートを作製した。このシートを、巾43mm、長さ285mmに切断した後、その一端にアルミニウム箔のリード端子を超音波溶接で取り付け、正極とした。
負極集電体に用いる銅箔は、製造例及び比較製造例で作製した常態の銅箔である。
まず、銅箔を、幅方向寸法720mmとなるように、帯形状(帯形状の幅方向が銅箔の幅方向に平行)に裁断した。
次に、天然黒鉛粉末(平均粒径10μm)と、ポリフッ化ビニリデン粉末とを、質量比で90:10の割合で混合し、これに溶剤としてN−メチルピロリドン及びエタノールを添加し、混練して、負極剤ペーストを調製した。
次いで、得られた負極剤ペーストを、上記帯形状の銅箔上に、巾300mmで、該銅箔の長手方向に沿って二重ストライプ状に両面塗着した。負極剤ペーストを塗着した銅箔を、窒素雰囲気中で乾燥し、上記溶剤を揮散させ、次いでロール圧延を行って、全体の厚みが150μmになるよう圧縮形成した。その後、塗着部を巾43mm、長さ280mmに切断した。その一端にニッケル箔のリード端子を超音波溶接で取り付け、負極とした。
最後に、銅箔にシワ、切断部にバリ等の異常が見られるかどうかを目視で確認し、電池の生産性として評価した。銅箔にシワ又は破断が発生しない場合を「優(◎)」、銅箔に軽微なシワ又はバリのいずれかが発生しているが、実用上問題ないものを「良(○)」、シワ及びバリの少なくとも一方が発生し、後の電池特性の評価に影響が出ると予想されるものを「不可(×)」として評価した。
製造した正極と負極の間に、厚み25μmのポリプロピレン製のセパレータを挟んで全体を巻き、これを軟鋼表面にニッケルめっきした電池缶に収容して、負極のリード端子を缶底にスポット溶接した。ついで、絶縁材の上蓋を置き、ガスケットを挿入後、正極のリード端子とアルミニウム製安全弁とを超音波溶接して接続し、炭酸プロピレンと炭酸ジエチルと炭酸エチレンからなる非水電解液を電池缶の中に注入した。その後、前記安全弁に蓋を取り付け、外形14mm、高さ50mmの密閉構造型リチウムイオン二次電池を組み立てた。
組み立てた電池を、充電電流100mAで4.2Vになるまで充電し、放電電流100mAで2.4Vになるまで放電するサイクルを1サイクルとカウントする、充放電サイクル試験を行った。電池の放電容量が800mAhを割り込んだときのサイクル数を、サイクル寿命(サイクル特性)として、電池特性を評価した。結果を表2に示す。
サイクル寿命は、500回以上を「優(◎)」、300回以上500回未満を「良(○)」、300回未満を「不可(×)」として評価した。評価が「不可(×)」の銅箔は、本用途に適さない銅箔であることを示す。「良(○)」は適している銅箔であることを示し、中でも「優(◎)」はより電池特性が良好である銅箔であることを示す。
下記評価基準に基づき総合評価を行った。なお、本実施例では、総合評価でA及びBを合格レベルとした。
A(優):上記の生産性及び電池特性の両方が「優(◎)」評価である。
B(合格):上記の生産性及び電池特性の両方に「不可(×)」評価がなく、上記の生産性及び電池特性の少なくとも一方が「良(○)」評価である。
C(不合格):上記の生産性及び電池特性の少なくとも一方が「不可(×)」評価である。
[プリント配線板用途の評価]
上記製造例1〜10並びに比較製造例3、5及び6で作製した銅箔を銅箔基体とし、各銅箔の一方の表面に以下に示す条件で粗化処理及び表面処理を施し、表面処理銅箔(厚さ12μm)を得た。
得られた表面処理銅箔について、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りであり、特に断らない限り、各測定は室温にて行った。結果を表3に示す。
まず、銅箔基体に用いる銅箔は、上記製造例1〜10並びに比較製造例3、5及び6で作製した常態の銅箔(幅方向寸法1100mm)である。
次に、銅箔基体の表3に示す面に対し、下記に示す粗化めっき処理1及び粗化めっき処理2を順次行い、粗化処理層を形成した。
硫酸銅: 銅濃度として 21g/L
硫酸: 97g/L
硫酸コバルト(II)七水和物: コバルト濃度として 3.6g/L
液温: 36℃
電流密度: 32A/dm2
時間: 1〜30秒
硫酸銅: 銅濃度として 50g/L
硫酸: 120g/L
液温: 62℃
電流密度: 10A/dm2
時間: 1〜30秒
次に、粗化処理層を形成した銅箔の粗化処理面に対し、下記に示すニッケル層、亜鉛層、クロメート処理層、シランカップリング剤層を、順次形成した。
粗化処理層を形成した銅箔の粗化処理面に対し、下記に示すNiメッキ条件で電解メッキすることにより、ニッケル層(Niの付着量0.23mg/dm2)を形成した。ニッケルメッキに用いるメッキ液は、硫酸ニッケル、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)、ホウ酸(H3BO3)を含有しており、ニッケル濃度は5.3g/L、過硫酸アンモニウム濃度は28.0g/L、ホウ酸濃度は19.5g/Lである。また、メッキ液の温度は23.5℃、pHは3.9であり、電流密度は2.6A/dm2、メッキ処理時間は1〜30秒間である。
更に、ニッケル層の上に下記に示すZnメッキ条件で電解メッキすることにより、亜鉛層(Znの付着量0.05mg/dm2)を形成した。亜鉛メッキに用いるメッキ液は、硫酸亜鉛七水和物、水酸化ナトリウムを含有しており、亜鉛濃度は10g/L、水酸化ナトリウム濃度は29g/Lである。また、メッキ液の温度は30℃であり、電流密度は5A/dm2、メッキ処理時間は1〜30秒間である。
更に、亜鉛層の上に下記に示すCrメッキ条件で電解メッキすることにより、クロメート処理層(Crの付着量0.05mg/dm2)を形成した。クロムメッキに用いるメッキ液は、無水クロム酸(CrO3)を含有しており、クロム濃度は3.1g/Lである。また、メッキ液の温度は20℃、pHは2.1であり、電流密度は0.6A/dm2、メッキ処理時間は1〜30秒間である。
更に、下記に示す処理を行い、クロメート処理層の上にシランカップリング剤層を形成した。すなわち、シランカップリング剤水溶液にメタノール又はエタノールを添加し、所定のpHに調整して、処理液を得た。この処理液を表面処理銅箔のクロメート処理層に塗布し、所定の時間保持してから温風で乾燥させることにより、シランカップリング剤層を形成した。シランカップリング剤は、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803、信越化学工業株式会社製)を用い、濃度1.0%、pH4.0の条件で、シランカップリング剤水溶液を調液した。
上記で得られた表面処理銅箔の粗化処理面について、展開面積比(Sdr)の測定を行った。測定は、上記裁断銅箔に対する測定と同様にして行った。結果を表3に示す。
上記で得られた表面処理銅箔を、200mm×200mmの大きさに切断し、該表面処理銅箔の粗化処理面を、FR4系樹脂基材(EI−6765、住友ベークライト株式会社製、)に重ねて、170℃、面圧1.5MPaの条件で1時間、加熱、加圧接合し、銅張積層板を作製した。この方法で、30枚の銅張積層板を作製し、目視でシワの有無を確認した。
シワが確認された銅張積層板についてはシワ不良数1枚としてカウントした。また、シワ不良の評価は、シワ不良数が0〜1枚である場合は「優(◎)」、シワ不良数が2〜4枚である場合は「良(○)」、シワ不良数が5枚以上場合は「不可(×)」として評価した。シワ不良数と評価結果を表3に示す。
上記で得られた表面処理銅箔を、200mm×200mmの大きさに切断し、該表面処理銅箔の粗化処理面上に、サブトラクティブ工法により、L&Sが30/30μmのレジストパターンを形成した。そして、エッチングを行って配線パターンを形成した。レジストとしてはドライレジストフィルムを使用し、エッチング液としては塩化銅と塩酸を含有する混合液を使用した。そして、得られた配線パターンのエッチングファクター(Ef)を測定した。エッチングファクターとは、銅箔の箔厚(μm)をH、形成された配線パターンのボトム幅(μm)をB、形成された配線パターンのトップ幅(μm)をTとするときに、次式で示される値である。なお、銅箔の箔厚Hは表面処理銅箔の厚さとした。また、ボトム幅B及びトップ幅Tの各寸法は、ジャストエッチ位置(レジストの端部の位置と配線パターンのボトムの位置が揃う)となったときの配線パターンについて、マイクロスコープを用いて測定した。
Ef=2H/(B−T)
エッチングファクターの評価は、上記Efの値が3.5以上である場合は「優(◎)」、上記Efの値が2.6以上3.5未満である場合は「良(○)」、上記Efの値が2.6未満である場合は「不可(×)」として評価した。上記Efの値と評価結果を表3に示す。
なお、Efの値が小さい場合は、配線パターンにおける側壁の垂直性が崩れて、線幅が狭い微細な配線パターンを形成する場合に、隣接する配線パターンの間で銅箔の溶け残りが生じ、短絡する危険性や、断線に結び付く危険性がある。
上記で得られた表面処理銅箔を、200mm×200mmの大きさに切断し、該表面処理銅箔の粗化処理面を、FR4系樹脂基材(同上)に重ねて、170℃、面圧1.5MPaの条件で2時間、加熱、加圧接合し、銅張積層板を作製した。
作製した銅張積層板を測定用サンプルとして、銅箔をエッチング加工して幅1mmの回路配線を形成し、試験片を作成した。次に試験片の樹脂基材側を両面テープによりステンレス板に固定し、回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で引っ張って剥離し、剥離した際の剥離強度(kN/m)を測定した。剥離強度の測定は、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて行った。
密着性の評価は、上記剥離強度(kN/m)が0.6kN/m以上である場合は「良(○)」、記剥離強度(kN/m)が0.6kN/m未満である場合は「不可(×)」として評価した。評価結果を表3に示す。
下記評価基準に基づき総合評価を行った。なお、本実施例では、総合評価でA及びBを合格レベルとした。
A(優):上記のシワ不良及びエッチングファクターの両方が「優(◎)」評価であり、密着性が「良(○)」である。
B(合格):上記のシワ不良、エッチングファクター及び密着性のいずれにも「不可(×)」評価がなく、シワ不良及びエッチングファクターの少なくとも一方が「良(○)」評価である。
C(不合格):上記のシワ不良、エッチングファクター及び密着性の少なくとも1つが「不可(×)」評価である。
11 カソードドラム
11a ドラム回転方向
12 PRパルス用電極
13 アノード
14 浴槽
20 電解液
20a 電解液供給方向
30 銅箔
30a 引き剥がし方向
Claims (11)
- 電解銅箔をその幅方向の一方端から他方端まで100mm間隔で裁断して得た各裁断銅箔を用いて測定した引張強度が、下記要件(I)から(III)を満たす、電解銅箔。
・要件(I):常態における前記各裁断銅箔の引張強度の平均値が400MPa以上650MPa以下である。
・要件(II):常態における前記各裁断銅箔の引張強度の分散σ2が18[MPa]2以下である。
・要件(III):150℃で1時間熱処理された後の状態における前記各裁断銅箔の引張強度の平均値が350MPa以上である。 - 幅方向寸法が600mm以上である、請求項1に記載の電解銅箔。
- 前記各裁断銅箔の常態における伸びの平均値が5.3%以上である、請求項1又は2に記載の電解銅箔。
- 導電率が88%IACS以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解銅箔。
- 光沢面の展開面積比(Sdr)が12%以上27%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解銅箔。
- リチウムイオン二次電池の負極集電体として用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解銅箔。
- 請求項6に記載の電解銅箔を用いた、リチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いた、リチウムイオン二次電池。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解銅箔の少なくとも一方の表面に粗化処理面を有し、
前記粗化処理面の展開面積比(Sdr)が20%以上200%以下である、電解銅箔。 - 請求項9に記載の電解銅箔と、該電解銅箔の粗化処理面に積層された樹脂製基板と、を備える銅張積層板。
- 請求項10に記載の銅張積層板を備えるプリント配線板。
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