JP6606317B1 - 表面処理銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2には、高耐熱性樹脂との密着性に優れる銅箔が開示されているが、尖った形状の粗化粒子がエッチングの際に溶け残りやすく(根残り)、微細配線加工性が不十分となるおそれがあった。
さらに、本発明の他の態様に係るプリント配線板は、上記他の態様に係る銅張積層板を備えることを要旨とする。
さらに、微細配線加工性に寄与する因子を調査する中で、銅箔の粗化粒子の頂上近傍部分における曲率の算術平均(粗化面の頂点曲率算術平均)Sscの影響が強いことを見出した。具体的には、頂点曲率算術平均Sscが0.7μm-1以上3.8μm-1以下であるときにエッチングファクターが増加する。頂点曲率算術平均Sscは、様々な山構造の平均サミット曲率であり、下記式で表される。下記式において、z(x,y)はx,y座標における高さ方向の座標であり、Nは粗化粒子の頂点個数である。
また、本実施形態に係る表面処理銅箔においては、粗化面のRpm(粗さ曲線の最大山高さの10点平均)は0.5μm以上3.5μm以下としてもよい。粗化面のRpmが0.5μm未満であると、樹脂製基板との密着性が低下するという不都合が生じるおそれがある。一方、粗化面のRpmが3.5μmを超えると、エッチングファクターが低下するという不都合が生じるおそれがある。
常態における引張強度が400MPa以上780MPa以下であると、表面処理銅箔のハンドリング性とエッチング性が良好である。220℃で2時間加熱後に常温で測定した引張強度が300MPa以上である場合は、エッチング性が良好である。
(1)電解銅箔の製造方法について
電解銅箔は、例えば図1に示すような電解析出装置を用いて製造することができる。図1の電解析出装置は、白金族元素又はその酸化物を被覆したチタンからなる不溶性アノード104と、不溶性アノード104に対向して設けられたチタン製のカソードドラム102と、カソードドラム102を研磨してカソードドラム102の表面に生じる酸化膜を除去するバフ103と、を備えている。
<粗化処理>
樹脂製基板との密着性を向上させる目的で、電解銅箔の表面に粗化処理を施して粗化面とするが、一般的に、密着性の高い粗化処理だとエッチング時に根残りが生じやすく、エッチングファクターが低下しやすいことが知られている。本発明者らが鋭意検討した結果、粗化粒子の頂点をわずかに溶解させることで頂点の曲がり具合の強さが低減し(粗化面の頂点曲率算術平均Sscが低下し)、エッチング時に根残りしにくくなりエッチングファクターが向上することを見出した。
粗化粒子の頂点を溶解させる方法は特に限定されるものではないが、適度な逆電流を用いたパルスメッキにより溶解させる方法や、粗化処理の後に銅箔を硫酸銅水溶液に浸漬し優先的に先端を溶解させる方法があげられる。
本実施形態に係る表面処理銅箔においては、粗化処理により形成した粗化面の上に、さらにニッケル層、亜鉛層をこの順で形成してもよい。
亜鉛層は、表面処理銅箔と樹脂製基板を熱圧着したときに、表面処理銅箔と樹脂製基板との反応による樹脂製基板の劣化や表面処理銅箔の表面酸化が生じることを防止して、表面処理銅箔と樹脂製基板との密着性を高める働きをする。また、ニッケル層は、表面処理銅箔と樹脂製基板を熱圧着したときに、亜鉛層の亜鉛が表面処理銅箔中へ熱拡散することを防止する。すなわち、ニッケル層は、亜鉛層の上記機能を有効に発揮させるための亜鉛層の下地層としての働きをする。
また、亜鉛層の上にさらにクロメート処理を行うと、表面処理銅箔の表面に酸化防止層が形成されることとなるので好ましい。適用するクロメート処理としては、公知の方法を用いることができ、例えば、特開昭60−86894号公報に開示されている方法をあげることができる。クロム量に換算して0.01〜0.3mg/dm2程度のクロム酸化物とその水和物などを付着させることにより、表面処理銅箔に優れた酸化防止機能を付与することができる。
クロメート処理した表面に対し、さらにシランカップリング剤を用いた表面処理(シラン処理)を行ってもよい。シランカップリング剤を用いた表面処理により、表面処理銅箔の表面(樹脂製基板との接合側の表面)に接着剤との親和力の強い官能基が付与されるので、表面処理銅箔と樹脂製基板との密着性は一層向上し、表面処理銅箔の防錆性や吸湿耐熱性もさらに向上する。
まず、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる電気絶縁性の樹脂製基板の一方又は両方の表面に、表面処理銅箔を重ねて置く。その際には、表面処理銅箔の粗化面を樹脂製基板に対向させる。そして、重ねられた樹脂製基板及び表面処理銅箔を加熱しながら、積層方向の圧力を加えて、樹脂製基板及び表面処理銅箔を接合すると、キャリア付き又はキャリア無しの銅張積層板が得られる。本実施形態に係る表面処理銅箔は、常態及び加熱後の引張強度が高いため、キャリア無しでも十分対応することができる。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(A)電解銅箔の製造
図1に示す電解析出装置を用い、硫酸−硫酸銅水溶液を電解液として、以下のような操作により電解銅箔を製造した。すなわち、アノードと、アノードに対向して設けられたカソードドラムとの間に電解液を供給し、電解液に空気をバブリングしつつ、カソードドラムを一定速度で回転させながらアノードとカソードドラムとの間に直流電流を通電することにより、カソードドラムの表面上に銅を析出させた。そして、析出した銅をカソードドラムの表面から引き剥がし、連続的に巻き取ることにより、電解銅箔を製造した。
次に、表面を粗化面とする粗化処理を電解銅箔のS面又はM面(表2を参照)に施して、表面処理銅箔を製造した。具体的には、電解銅箔の表面に微細な銅粒子を電析する電気メッキ(パルスメッキ)を粗化処理として施すことにより、銅粒子によって微細な凹凸が形成された粗化面とした。電気メッキに用いるメッキ液は、銅、硫酸、モリブデン、ニッケルを含有しており、銅濃度、硫酸濃度、モリブデン濃度、ニッケル濃度は、表2に示す通りである。
さらに、実施例11、12については、得られた表面処理銅箔をさらに硫酸銅浴(硫酸銅水溶液)に浸漬することにより、電解銅箔の表面に形成された微細な凸部の頂点を溶解し丸くして、粗化面の頂点曲率算術平均Sscを調整した。硫酸銅浴の銅濃度、硫酸濃度、浸漬時間は、表2に示す通りである。
次に、表面処理銅箔の粗化面に対して下記に示すNiメッキ条件で電解メッキすることにより、ニッケル層(Niの付着量0.06mg/dm2)を形成した。ニッケルメッキに用いるメッキ液は、硫酸ニッケル、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)、ホウ酸(H3BO3)を含有しており、ニッケル濃度は5.0g/L、過硫酸アンモニウム濃度は40.0g/L、ホウ酸濃度は28.5g/Lである。また、メッキ液の温度は28.5℃、pHは3.8であり、電流密度は1.5A/dm2、メッキ処理時間は1秒間〜2分間である。
さらに、ニッケル層の上に下記に示すZnメッキ条件で電解メッキすることにより、亜鉛層(Znの付着量0.05mg/dm2)を形成した。亜鉛メッキに用いるメッキ液は、硫酸亜鉛七水和物、水酸化ナトリウムを含有しており、亜鉛濃度は1〜30g/L、水酸化ナトリウム濃度は10〜300g/Lである。また、メッキ液の温度は5〜60℃であり、電流密度は0.1〜10A/dm2、メッキ処理時間は1秒間〜2分間である。
さらに、亜鉛層の上に下記に示すCrメッキ条件で電解メッキすることにより、クロメート処理層(Crの付着量0.02mg/dm2)を形成した。クロムメッキに用いるメッキ液は、無水クロム酸(CrO3)を含有しており、クロム濃度は2.5g/Lである。また、メッキ液の温度は15〜45℃、pHは2.5であり、電流密度は0.5A/dm2、メッキ処理時間は1秒間〜2分間である。
さらに、下記に示す処理を行い、クロメート処理層の上にシランカップリング剤層を形成した。すなわち、シランカップリング剤水溶液にメタノール又はエタノールを添加し、所定のpHに調整して、処理液を得た。この処理液を表面処理銅箔のクロメート処理層に塗布し、所定の時間保持してから温風で乾燥させることにより、シランカップリング剤層を形成した。
上記のようにして、実施例1〜14及び比較例1〜5の表面処理銅箔をそれぞれ製造した。これらの表面処理銅箔の箔厚は、表3に記載の通りである。得られた各表面処理銅箔について、各種評価を行った。
上記のようにして得られた実施例1〜14及び比較例1〜5の表面処理銅箔を、幅12.7mm、長さ130mmの短冊状に切り出し、引張試験片とした。IPC−TM−650に準拠する方法により、常態における引張試験片の引張強度を測定した。測定装置としてはインストロン社の1122型引張試験機を用い、測定温度は常温とした。
また、引張試験片を220℃で2時間加熱した後に、常温まで自然冷却した。このような熱履歴を付与した引張試験片について、常態における引張強度と同様にして引張強度を測定した。結果を表3に示す。
サブトラクティブ工法により、実施例1〜14及び比較例1〜5の表面処理銅箔上に、L&Sが30/30μmのレジストパターンを形成した。そして、エッチングを行って配線パターンを形成した。レジストとしてはドライレジストフィルムを使用し、エッチング液としては塩化銅と塩酸を含有する混合液を使用した。そして、得られた配線パターンのエッチングファクター(Ef)を測定した。エッチングファクターとは、銅箔の箔厚をH、形成された配線パターンのボトム幅をB、形成された配線パターンのトップ幅をTとするときに、次式で示される値である。
Ef=2H/(B−T)
本実施例及び比較例では、エッチングファクターが2.5以上であるものは良品とし、2.5未満であるものは不良品とした。
銅箔の粗化面に樹脂製基板を接合し、測定用サンプルを作製した。樹脂製基板としては、市販のポリフェニレンエーテル系樹脂(パナソニック株式会社製の超低伝送損失多層基板材料 MEGTRON6)を用い、接合時の硬化温度は210℃とし、硬化時間は2時間とした。
本実施例及び比較例では、密着性が0.4kN/m以上である場合を良品とし、0.4kN/m未満である場合を不良品とした。
実施例1〜14及び比較例1〜5の表面処理銅箔を、一辺200mmの正方形状に切り出し、基板FR4に加圧接合して、銅張積層板を作製した。接合の条件は、温度170℃、圧力1.5MPa、加圧時間1時間である。各表面処理銅箔についてそれぞれ30枚の銅張積層板を作製して、銅箔のシワを目視で確認し、銅箔にシワが生じていた銅張積層板の数(シワ不良数)をカウントした。このシワ不良数により、表面処理銅箔のハンドリング性を評価した。シワ不良数が3枚以下であった場合は合格、4枚以上であった場合は不合格とした。結果を表3に示す。
BRUKER社の3次元白色光干渉型顕微鏡Wyko ContourGT−Kを用いて、実施例1〜14及び比較例1〜5の表面処理銅箔の粗化面の表面形状を測定し、形状解析を行って、頂点曲率算術平均Ssc及びRpmを求めた。形状解析は、ハイレゾCCDカメラを使用してVSI測定方式で行った。条件は、光源が白色光、測定倍率が10倍、測定範囲が477μm×357.8μm、Lateral Samplingが0.38μm、speedが1、Backscanが10μm、Lengthが10μm、Thresholdが3%とし、Terms Removal(Cylinder and Tilt)、Data Restore(Method:legacy、iterations 5)、Statistic Filter(Filter Size:3、Filter Type:Median)のフィルタ処理をした後にデータ処理を行なった。結果を表3に示す。
株式会社TSLソリューションズのEBSD(Electron Back Scatter Diffraction)カメラHikari/DC5.2/A5.2及び日本電子株式会社(JEOL)の走査電子顕微鏡JSM−7001FAを用い、倍率5000倍、ビームステップ0.05の条件で、表面処理銅箔の粗化面の結晶粒を測定した。EBSDによる結晶粒の測定では、方位差15°以上の結晶粒界とし、結晶粒界で囲まれた領域を結晶粒とした。
EBSD(電子線後方散乱回折法)のGRAIN SIZEのデータを基に、前述した結晶粒の割合R1、R2、R3を算出した。結果を表3に示す。
比較例2は、実施例3と比較してバブリング流量が小さいため、結晶粒の個数の割合R2、R3が大きくなり、L&Sを細くすることができなかった。
比較例4は、実施例1と比較して、粗化処理のパルス電流で逆電流をかけておらず粗化粒子の溶解がないため、エッチングファクターが低下した。
比較例5は、粗化処理の電流が大きいため、粗化粒子が粗大になることでエッチング時に根残りし易くなり、エッチングファクターが低下した。
102 カソードドラム
104 不溶性アノード
105 電解液
Claims (6)
- 粗化処理による粗化面を表面に有する表面処理銅箔であって、
箔厚が10μm以下であり、
前記粗化面の頂点曲率算術平均Sscが0.7μm-1以上3.8μm-1以下であり、
200℃で2時間加熱後に電子線後方散乱回折法により断面を解析した場合に、結晶粒径が0.5μm以上の結晶粒のうち、結晶粒径が0.5μm以上1.0μm未満の結晶粒の個数の割合R1が0.51以上0.97以下であり、結晶粒径が1.0μm以上3.0μm未満の結晶粒の個数の割合R2が0.03以上0.42以下であり、結晶粒径が3.0μm以上の結晶粒の個数の割合R3が0.07以下である表面処理銅箔。 - 前記粗化面の頂点曲率算術平均Sscが1.0μm-1以上2.5μm-1以下であり、
前記割合R1が0.59以上0.96以下であり、前記割合R2が0.04以上0.41以下であり、前記割合R3が0である請求項1に記載の表面処理銅箔。 - 前記粗化面のRpmが0.5μm以上3.5μm以下である請求項1又は請求項2に記載の表面処理銅箔。
- 常態における引張強度が400MPa以上780MPa以下であり、220℃で2時間加熱後に常温で測定した引張強度が300MPa以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理銅箔と、該表面処理銅箔の粗化面に積層された樹脂製基板と、を備える銅張積層板。
- 請求項5に記載の銅張積層板を備えるプリント配線板。
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