JPWO2015194455A1 - 高耐久性銀ミラー - Google Patents

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Abstract

増反射アルミミラーよりも反射率が高く、プロジェクターなどの光学製品に求められる耐久性に加えて、長期間にわたって熱と光に曝される集光ミラーや、自動車用の反射光学系としても使用可能な高反射率高耐久性ミラーが求められていた。本発明によると、基材上に第一層として酸化物膜を、第二層として面心立方型の結晶構造を有する金属から選んだ金属の膜を、第三層として銀膜を、第四層として3〜12nmの厚みのITO膜を、第五層として保護膜を、この順に形成することにより、高反射率で高耐久性の銀ミラーを得ることができる。基材としては、ガラスやSiなどを用いることができる。SiO/SiO2からなる下地層を形成することにより、樹脂基材を用いた高耐久性銀ミラーを得ることができる。所定の熱処理により、優れた耐熱性を有した高反射率・高耐久性の銀ミラーを得ることができる。

Description

本出願に係る発明は、カメラ、コピー機、プロジェクターなどの光学製品の反射光学系のみならず、集光型太陽電池用集光ミラー及び自動車のヘッドアップディスプレイ(HUD)など車載用の反射光学系を有する装置においても使用可能な耐久性を有する銀(Ag)ミラーに関し、特に、高い反射率と厳しい使用環境にも耐える優れた耐久性を兼ね備えた高耐久性銀ミラーに関する。
反射率の高い反射ミラーとしては、可視光線の広い領域で高反射率を示すアルミ(Al)ミラーが一般的である。Alミラーはガラスや樹脂の基板上にAl膜をコーティングしたもので、可視光線領域での平均反射率は90%程度である。さらに反射率を高くしたい場合には、Al膜の上に反射率を高めるための干渉膜、すなわち増反射膜を形成する。増反射膜を設けたAlミラーの平均反射率は95%程度に達する。なお、ここで、平均反射率とは、可視光線の420〜680nmの波長における反射率の単純平均反射率として用いる。以降も同じ意味で用いる。
Agミラーは、上記従来のAl膜に代えてAg膜を形成したミラーであって、Alミラーに比べて、可視光線の広い領域でさらに高い反射率を有し、平均反射率は93%程度に達する。そして、Ag膜の上に増反射膜を形成した場合には、平均反射率を97%以上まで高めることができる。
特開2000−241612号公報 特開2003−4919号公報 特許4307921号公報 特開2007−147667号公報 特開2010−19875号公報 特開2012−47856号公報
「銀薄膜の耐食性に及ぼす合金元素添加効果」、神戸製鋼技報 VOL.52, No.2, Sept. 2002 「アジア環境に対応した混合ガス腐食試験方法の開発」、SONY、第7回電子デバイスの信頼性シンポジウム、7S-8,November.1997
プロジェクターなどの反射光学系を有する装置では、光路を変えるために多数の反射ミラーが用いられる。そして、何度も反射を繰り返す反射光学系では、最終的に目的の光学素子に到達する光の量は、反射ミラーの反射率と反射回数に応じて、指数関数的に減少する。したがって、反射光学系において多数の反射ミラーを用いる必要がある場合は、反射ミラーの反射率を高反射率に保つことは、光量を増大し明るさを確保する上で、極めて重要な課題となっている。
高反射率ミラーとして最も普及している増反射Alミラーは、保護膜としても機能する増反射膜によって反射率を高めた場合でも、平均反射率は高々95%程度が達成されるに過ぎず、さらに高い反射率が要求される用途に対しては、対応できないという課題がある。
高い反射率を有することに加えて耐久性が高いことも重要である。これら反射ミラーは絶えず強い光を受け、光吸収によって高温に曝されることになるからである。そして、光や熱を受ける場合であっても、長期間にわたって高い反射率を維持することが要求されるからである。さらに、近年普及しつつある集光型太陽電池において太陽光を光電変換素子に集光するための光学系で用いられる凸面ミラーや、自動車用のヘッドアップディスプレイ等の車載用に使用される凹面ミラーにあっては、長期間にわたって屋外や屋外と同等の環境下に曝されることになることから、従来の投射プロジェクター用途と比較して、さらに長期間の耐久性や、市街地を想定した腐食性ガスに対する耐久性、海岸付近での使用を想定した塩害に対する耐久性を有することも要求されている。
一方、前記したようにAgミラーは可視光線の広い領域でAlミラーよりも高い反射率を有し、保護層としても機能する増反射層を設けた場合には、平均反射率は97%以上に達する。しかしながら、Ag膜はAl膜に比べて耐久性が低く腐食しやすいことから、高耐久性が要求される用途に適していないという課題がある。
Ag膜の耐久性が低いのは、基板との密着力が不足しているときに、膜が剥がれたり、傷ついたりするためである。また、熱や紫外線を受けた場合には、Ag原子が動きやすく大きな粒を形成するよう凝集し、膜が不均一になり、反射率が低下することも知られている。劣化の程度は、長期間にわたって高温や紫外線に曝された場合に顕著となる。集光型太陽電池用集光ミラーは、まさにこのような環境に曝されるのである。
金属全般の塩害や腐食は、基本的には電解質や反応性ガスによる金属のイオン化と化学反応(酸化など)によるものと考えることができる。従って、Agミラーについても、電解質を金属まで到達させないこと、そして腐食性雰囲気に曝されないことが重要である。そのためには、金属膜に対する強力な保護膜の存在が重要であるが、従来のAgミラーの構成では保護機能が十分ではなかったと考えられる。環境中に亜硫酸ガス、硫化水素ガス及び塩素ガスのような腐食性ガスが存在する場合には、これら腐食性ガスが保護膜を透過し、Ag原子と結びついて、AgSやAgClとなって黒化し、反射が損なわれてしまうものと考えられる。
このような熱的及び環境的要因のため、Agミラーを作製した直後には97%程度という高い平均反射率を達成していたとしても、種々の耐久性試験の後、すなわち長期間の使用の後には反射率が低下し、初期性能を維持していない場合が多いのである。このような熱的及び環境的要因は、決して特異なものではなく、海岸地域に設置される集光型太陽電池や市街地を走行する自動車が、絶えず曝されるものなのである。
このような課題を解決するために、Agミラーを高耐久性化する技術が提案されてきている。例えば、非特許文献1には、Agを合金化することにより耐久性を向上させる手段が開示されている。しかし、同時に、Agの合金化によって反射率が低下しやすいことも記載されている。
特許文献1には、樹脂基板上に形成するAg膜の密着性を高めるため、まず一酸化珪素膜(SiO膜)からなる下地層を形成し、さらにSiO膜とAg膜の間に、中間層として金属膜(例えばCu膜)を介在させることによって、樹脂基板との密着力を向上させ、耐湿性や耐久性に優れたAgミラーを得る技術が開示されている。しかしながら、特許文献1は樹脂基板とAg膜の密着性を改善したものであるが、Ag膜の表面側の保護膜としては、増反射膜が保護膜を兼ねるだけであって、Ag膜の表面側からの水分、電解質及び腐食性ガスに対する耐久性等についてはなんら言及されておらず、例えば太陽電池用や自動車用の厳しい要求スペックを満たすかどうかについてはなんら記載がない。
特許文献2は、基板とAg膜との間の密着力を向上させるため、酸化アルミ膜(Al膜)からなる下地層を形成するものである。さらに、Ag膜の上にもAl膜と酸化チタン膜(TiO膜)を形成し、耐腐食性を改善することも開示されている。しかしながら、特許文献2は、少ない層数で密着性と耐久性の改善を目的としたものであって、テープ剥離性が改善されたことは記載されているが、やはりAg膜の表面側からの水分、電解質及び腐食性ガスに対する耐久性については言及されておらず、太陽電池用や自動車用の厳しい要求スペックを満たすかどうかについてはなんら記載がない。
特許文献3は、樹脂基板上に反射膜を形成した反射鏡において、樹脂基板と反射膜の間にAlよりなる下地膜を形成し、さらに、反射膜の上に含フッ素珪素化合物を有する撥水膜を形成して、樹脂基板側及び膜表面側からの水分や電解質の浸入を防止することによって反射膜の腐食を防止して、優れた反射特性と耐久性をバランスよく確保することが記載されている。しかしながら、特許文献3で開示された技術は、97%以上の反射率と耐久性を両立させたと記載されているが、Ag膜上にAg膜の酸化や腐食に対する保護膜が形成されていないことから、太陽電池用の高温試験や自動車用に要求される電解質や腐食性ガスに対する耐久性を満たすかどうかは不明である。
特許文献4は、特許文献2に記載されたAl下地層を用い、その上に特許文献1に記載された中間層としてニッケルクロム合金膜(Ni−Cr合金膜)を用い、Ag膜の上に腐食を防止するためAl膜と酸化珪素膜(SiO膜)からなる上部バッファ層を形成し、さらに反射率を高めるためにTiO膜からなる増反射膜を形成したものである。しかしながら、特許文献4で開示された技術は、ヒートサイクル試験、高温高湿試験、高温暴露試験及び塩水噴霧試験の後においても、99%以上という高い反射率を保持したと記載されているが、Ag膜上にAg膜の熱、酸化及び腐食に対する保護膜(酸化防止膜)が形成されていないことから、太陽電池用の高温試験や自動車用に要求される腐食性ガスに対する耐久性を満たすかどうかは不明である。
特許文献5は、基板上に下地層、Ag層、複数の層からなる保護層を順に積層して形成した反射膜において、保護層を構成する複数の層のうちで、Ag層に接する層を、酸素を含まないSi層とすることで、酸化防止効果及び耐湿性を向上させるものである。Si層を用いることにより、安定した高反射率が得られるとしている。しかしながら、特許文献5には、酸化防止効果と耐湿性の改善のため、Ag膜の直上にSi保護膜を形成する技術が開示されているが、高温放置試験と高温高湿放置試験だけが実施されただけであって、太陽電池用の高温試験や腐食性ガスに対する耐久性など自動車用として用いる場合に要求される長期間の耐久性を満たしているかどうかは不明である。
特許文献6は、樹脂基材の上にAgを含む反射層を形成する場合、該反射層を透過して樹脂基材を劣化させるUV光をカットするために、反射層と樹脂基材の間にITO層を形成したことを特徴とする反射板を開示している。その中で、長期耐候性、ガスバリヤ性と透明性を両立させるため、7〜15nm程度の膜厚のITO層を該反射層の上にも形成する構成を開示している。しかしながら、特許文献6は、照明器具用反射板に関するもので、本発明とは技術分野や用途が異なる。そのため、光学機器や光学装置の反射ミラーとは膜構成も異なり、下地膜や保護膜としてメラミン樹脂塗膜が用いられたものである点でも異なる。また、Ag膜をITO膜で挟むことによって、所定の強度での水銀ランプの長時間照射には耐えるが、その他の耐久性試験、特に自動車用に求められる耐久性試験に耐えるかどうかは不明である。
なお、高屈折率の透明膜と低屈折率の透明膜を交互に多数層積層した誘電体多層膜ミラーも、光の干渉作用によって高い反射率を達成できるが、AlミラーやAgミラーに比べて、高い反射率を得ることのできる波長域が狭く、また、高い反射率を達成するために必要な膜の層数がはるかに多く、結果としてコストが非常に高くなることから、特別な用途を除き普及していない。
本出願に係る発明の目的は、純銀(Ag)ミラーの有する高い反射率と、AlミラーやAg合金ミラーに劣ることのない優れた耐久性を併せ持つ高耐久性銀ミラーを提供することにあり、この種のミラーの従来の主たる用途であったプロジェクターなどの光学製品に使用される場合に要求される耐久性を満たすだけでなく、長期間にわたって熱と光に曝される集光型太陽光発電用集光ミラーや、市街地において屋外に近い環境に長期間曝されるような自動車用の反射光学系を含む製品にも使用可能なレベルにまで耐久性を高めたAgミラーを提供することにある。
より具体的には、長期間に亘って熱や紫外線を受けた場合でも、Ag原子が凝集せずに、膜の均一性が保たれ、反射率が低下しない高耐久性銀ミラーを提供するものであり、また、環境中に亜硫酸ガス、硫化水素ガス、酸化窒素ガス、塩素ガスのような腐食性ガスが存在する場合であっても、これらのガスがAg原子と結びついて、AgSやAgCl等となって黒化し反射が損なわれることのない高耐久性銀ミラーを実現するものである。
上記従来の課題を解決するものとして本発明は、基材上に、第一層として酸化物膜が、第二層として面心立方型の結晶構造を有する金属から選ばれた金属の膜が、第三層として銀膜が、第四層として厚さ3〜12nmのITO膜が、第五層として保護膜が、この順に形成されていることを特徴とする高耐久性銀ミラーである。
本発明の高耐久性銀ミラーは、それぞれが優れた機能を発揮するところの、前記第一層から第五層の膜からなる基本膜構成を有する。本発明において用いることのできる基材として、発明者らが鋭意研究を継続したところ、ガラス基材はもちろんのこと、Si基板のような半導体基材、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)のような樹脂基材、あるいは真鍮のような金属基材を用いても、前記第一層〜第五層からなる基本膜構成を有する銀ミラーは、高い反射率と優れた耐久性を有することを見出した。
本発明において、特に摩耗に対する耐久性(耐摩耗性)が要求される場合には、前記第五層である保護層の上に、耐摩耗膜として、酸化珪素(SiO)膜、フッ化マグネシウム(MgF)膜又はこれら2層の膜を形成することが望ましい。ここでSiO膜という表記は、SiO膜からSiO膜の間の酸化度を有する膜という意味であるが、光吸収による反射率の低下を防止するためには、SiO膜であることが望ましい。耐摩耗膜としてのSiO膜と、MgF膜又はMgF/SiO2層膜を比較すると、MgF/SiO2層膜が最も優れた耐摩耗性を示す。
本発明において、従来にない高い耐久性を達成するため、ガラス基板上に前記第一から第五の層を形成された後、又は前記第五層の上に前記耐摩耗膜が形成された後、400〜500℃の温度範囲で30〜90分の間、熱処理を行なうことが好ましい。このような温度範囲での熱処理に耐える基材はガラス基材、半導体基材あるいは金属基材を挙げることができる。一方、樹脂基材はこのような温度に保つと劣化してしまうことから、前記熱処理を行うことができない。なお、400〜500℃と記載する場合は、400℃以上500℃以下という意味であり、30〜90分と記載する場合も、30分以上90分以下という意味である。以後も同じ意味で使用する。
本発明は、種々の基材上に前記第一から第五の層が形成された膜構成を基本構造とする。そして、基材としてガラス基材、シリコン(Si)基板に代表される半導体基材あるいは金属基材を用いると、これら基材は光や熱の作用を受けてもほとんど変質せず、腐食に強く、ガスを発生して膜を劣化させることもないという点でさらに耐久性に優れたものとなる。
本発明において、第一層である酸化物膜は、基材と銀(Ag)膜との間の密着力を確保するための下地層として働く。基材上に直接、高反射層であるAg膜を形成しても、磨耗などによってすぐに基材から剥がれてしまうが、酸化物膜を形成しておくと密着性が向上する。酸化物膜からなる下地層は、基材側から拡散してくる酸素ガスをトラップして、Ag膜の酸化を防止する働きもする。従って、酸化物膜が完全に化学量論組成である必要はなく、酸素欠乏状態にある組成であってもよい。酸素欠乏状態にある酸化物膜は光吸収性を示すことが多いが、本発明において第一層はAg膜の下側(基材側)に形成されることからAg膜の反射率を低下させることはないので、問題とならない。
第一層として酸化物膜を形成するのは、酸化物膜が、同じく酸化物であるガラス基材との密着性がよいからであるが、本発明においては、ガラス基材以外の半導体基材や金属基材の場合であっても、第一層として酸化物膜を形成しておく。このことは、半導体基材や金属基材であっても、これら基材の表面には、薄い酸化膜が形成されていることと関係しているものと考えられる。
酸化物膜の種類としては、蒸着法やスパッタ法で成膜できる種々の酸化物膜を利用することができるが、酸化アルミ膜(Al膜)、酸化珪素膜(SiO膜)又は酸化チタン膜(TiO膜)のうちのいずれかであることが望ましい。これらの酸化物膜は成膜が容易であって、残留応力が小さく、ガラス基板との密着性に優れているからである。これらの酸化物膜も、必ずしも化学両論組成である必要はない。例えば、酸化アルミ膜の組成は、化学量論的にはAlであるが、本発明においては、必ずしもAlである必要はなく、やや酸素が欠乏した状態の組成(Al3−Xと記載される場合が多い)であってもよい。
酸化物膜として、Al膜、SiO膜又はTiO膜を用いると、本発明の高耐久性銀ミラーの種々の耐久性を高めることができる。さらに、耐熱性を高めるにはAl膜が最も優れている。
基材とAg膜の間に形成してAg膜の密着性を向上させる膜は、従来40〜200nm程度の膜厚で形成されていたが、本発明における第一層の酸化物膜は、それより薄い膜厚で十分であって、具体的には10nm〜60nm程度の膜厚で形成すればよい。もちろん、60nm以上の膜厚で形成しても性能上の問題が生じることはないが、膜応力が発生しやすくなる点に注意が必要である。逆に10nm以下の厚みでは、ガラス基板側からの腐食ガスをトラップする性能が不十分となるおそれがある。
本発明の第二層の金属の膜は、基材及び第一層の酸化物膜とAg膜との密着性を高めるための中間層である。金属の膜は一般に延性に富むことから変形しやすく、引張り応力や剪断応力などのAg膜を剥がそうとする力を弱めることができる。また、酸素原子と親和性のあることから、基材側からの水分等の拡散によるAg膜の酸化を防止する効果を有する。本発明においては、結晶構造が面心立方型の金属から選んだ金属の膜を用いることが重要である。これは、該金属の膜の上層に形成されるAg膜の結晶構造が面心立方型であるからである。Ag膜と同じ面心立方型の結晶構造を有する金属の膜を中間層として用いることによって、Ag膜の結晶性を高め、ひいては反射率を高めることができる。
面心立方型の結晶構造を有する金属としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)などを挙げることができるが、本発明において用いる金属の膜としては、Al膜、Cu膜又はNi膜のいずれかであることが望ましい。これらの金属は比較的安価で、成膜が容易であり、かつ格子定数もAgの格子定数と比較的近似していることから、Ag膜の結晶化を促進することが期待されるからである。
本発明の第二層の金属の膜として、Al膜、Cu膜又はNi膜を用いると、Ag膜の結晶化を促進し、耐久性を向上させることができる。さらに、耐熱性を高めるにはNi膜が最も優れている。
前記金属の膜の厚みは10〜60nm程度であれば十分である。特許文献1は樹脂基材に対するもので、100〜200nmもの厚みのCu膜が中間層として使われているが、本発明ではもっと薄い金属の膜で十分である。特許文献3では、第一層としてAl膜を20〜60nmの厚みで形成し、その上にNi−Cr合金層を20〜60nmの厚みで形成しているが、本発明においては、それよりやや薄い金属の膜を用いることができる。金属の膜をさらに厚くしても、酸化防止効果や結晶化促進効果が高まるわけではなく、膜応力が高くなる点やコストの点で不利なだけであって好ましくない。逆に10nm以下まで薄くすると、引張り応力や剪断断力を緩和する効果が弱まり、また結晶性が低下することから、Ag膜の結晶化促進効果もなくなってしまうおそれがある。
第三層は、高反射膜としてのAg膜である。Ag膜は紫外線領域に近づくにつれて反射率が低下するものの、可視光線の広い領域でAl膜より高い反射率を有し、反射膜として好適である。本発明においてAg膜は、100〜200nm程度の厚みで形成するのが望ましい。100nmより薄いと反射率が不十分になる。特に短波長側の反射率が低下する傾向があり、例えば波長380nmでは、Ag膜厚が50nmのときは100nmの場合に比べて約1%低下する。逆に200nmより厚くしても反射率や耐久性はほとんど変化しない。成膜材料としての銀は高価であるので、コストの点から、反射率や耐久性を満足する範囲内であれば、可能な限り薄くすることが望ましい。
本発明において第三層のAg膜は、実質的に銀(Ag)以外の成分を含まない純銀からなることが望ましい。Ag膜中に、Agの精製によっても除去しきれないレベルの不純物が混入することは致し方ないが、高い反射率を達成するためには、実質的にAg以外の成分を含まない純銀からなることが望ましいからである。非特許文献1の記載によると、パラジウム(Pd)やニオビウム(Nb)のような金属を銀に加えることによって耐久性の向上が期待されるが、一部の例外を除き、反射率の低下を免れない。この点から、本発明においては、高反射性を得るために、成膜用Ag材料として、3Nグレード(99.9%以上)以上のAg原料を用いることが望ましい。本発明は、純銀の有する高い反射率を維持しながら、銀の合金化によって耐久性を向上させるのではなく、膜構成全体の作用によって耐久性を向上させることを特徴とするものである。
第四層であるITO膜は、本発明の膜構成の中で、Ag膜が劣化するのを防止して、高い反射率と優れた耐久性を達成するための劣化防止層とでも言うべき膜で、きわめて重要である。薄いITO膜をAg膜の直上に形成しておくことによって、第五層として保護膜を形成する際にAg膜が酸化等により劣化することを防止することができる。発明者らは、Ag膜の劣化を防止するために、Ag膜の直上に形成する層としてどのような膜材料が最適であるかについて鋭意研究の結果、ITO膜以外では高い反射率と優れた耐久性の両方を満足できるものは見出せなかった。ITO膜に代えてNi、Nb、Tiなどの非常に薄い金属膜を用いた場合は、Ag膜の酸化防止としてはある程度の効果は有していたが、高い反射率を維持するためには、1nm以下という非常に薄い膜厚で形成する必要があり、膜厚の制御が難しく、耐久性や反射率が安定しなかった。
前記ITO膜の膜厚としては、3〜12nmの範囲、すなわち3nm以上12nm以下であることが望ましい。ITO層の膜厚がこの範囲を外れると、高い反射率と優れた耐久性を両立させることのできる効果が著しく低下する。すなわち、厚みが3nm未満の場合や12nmを超えた場合には、成膜直後から、あるいは耐久性試験によって、反射率が低下する。ITO膜が、Ag膜に対して優れた保護効果を示す作用は、明確ではないが、酸素や腐食性ガスを吸収、吸着又は結合し、Ag膜の酸化や腐食を防止するためと考えることができる。なお、ITOは、酸化インジウムに酸化スズがドープされた酸化物であるが、酸化スズの割合として5〜20wt%の範囲で、同等の効果が得られた。
第五層は保護膜であって、ITO膜によるAg膜の劣化防止効果を補強するものである。膜の表面側からAg膜に向かって、水分や腐食性ガスが拡散していくのを防止する層として働くものである。保護膜は単層膜であってもよいが、多層膜として形成するのが望ましい。これは、単層の厚い膜を形成した場合、膜が柱状構造を取りやすく、柱と柱の間に隙間が形成されて、水分や腐食性ガスがAg膜に向かって拡散していく経路になるからである。多層構造とすることによって、柱状構造の発達が阻害されることから、保護膜としての機能が向上する。また、多層膜の各層の屈折率と厚みを適切に選択することにより、反射率を増大させる増反射膜として機能させることもできる。なお、多層膜の各層をさらに緻密化して保護膜の機能を高めるためには、プラズマアシストやイオンアシストを利用した真空蒸着で成膜することが効果的である。
増反射効果が得られる保護膜の膜材料、膜構成及び膜厚の組合せは数多くあるが、いずれかの層の膜厚が極端に厚く、いずれかの層の膜厚が極端に薄い構成は避けるのが望ましい。極端に厚い膜厚は、膜厚方向にいわゆる柱状構造の結晶成長が発達しやすく、柱状構造と柱状構造の間が疎な構造となり、水分や腐食性ガスに対するバリヤー性能が低下するからである。極端に薄い層は、バリヤー性能が低下する。
保護膜の例としては、28nmの厚みの酸化アルミ膜と26nmの厚みの酸化珪素膜及び44nmの厚みの酸化チタン膜をこの順に所定の厚みで形成した3層膜を例示することができる。この構成により、第三層であるAg膜に対する表面側からの水分や腐食性ガスのアタックを防止して、ITO層の効果を補助し、かつ光学干渉作用により反射率を増大させる効果が得られる。これらの膜は、Ag膜の下方側(ガラス基板側)に形成される第一層や第二層の膜とは異なり、反射率に直接的に影響する。すなわち、これらの膜が透明ではなく光吸収がある場合には、その分だけ反射率が低下することになる。光吸収を無くすために、これらの膜は可能な限りその化学量論組成に近いAl膜、SiO膜及びTiO膜であることが望ましい。なお、増反射効果を高めるためには、層の数を増やして干渉効果を高めることも考えられるが、層の数をさらに2層以上重ねて5層以上からなる増反射膜としても、増反射効果はそれほど向上せず、逆に膜応力が高くなって膜剥がれを引き起こすおそれがある。
本発明においては、基材として、円錐面又は放物面の形状を有する基材を用いることもできる。これら基材は平板ではないので、凹部からなる円錐内側面や放物内面や凸部からなる円錐外側面や放物外面に、高耐久性銀ミラーを構成する多層膜が形成されることになる。この場合、凹部や凸部の位置によって、形成される各層の厚さや構造が均一でなくなるおそれが高い。特に、第三層の銀膜と第四層のITO膜の上の保護膜として、光干渉作用を生じる多層膜が形成された場合、干渉作用によって反射率が低くなったり、干渉色を呈したりして、好ましくない。そこで、このような平板でない基材を用いる場合には、第五層の保護膜としては、SiO単層膜を用いるのが望ましい。このような実施態様においても、本発明は、高い反射率と優れた耐久性を両立させることができる。
本発明においては、基材上に前記第一層の酸化物膜から前記第五層の保護膜を形成した後、400〜500℃の温度範囲で、30〜90分の時間、熱処理することが好ましい。ここで熱処理とは、その温度範囲に保持することをいう。熱処理によって、膜構造を緻密化させることができ、さらに耐久性を高めることができるからである。熱処理後は常温雰囲気に取り出し、そのまま自然冷却すればよい。Ag膜を含む多層膜をこのような高温で熱処理すると、従来はAg原子が熱マイグレーションにより移動して凝集し大きな結晶粒を形成し、結果として膜が不均一になり、反射率と耐久性の低下を引き起こすことが多かった。極端なケースでは、粒成長したAg膜が上下にある層を突き破って成長し露出するといった現象も発生する。しかしながら、本発明の膜構成においては、このような熱処理を行なっても、Ag膜の凝集が抑制されることがわかった。
本発明において、ガラス基材、半導体基材あるいは金属基材のように前記熱処理に耐えることの基材を用いる場合であって、特に優れた耐熱性が要求される用途に対しては、前記熱処理を行うことが望ましい。
前記条件で熱処理を行なうことによって、Ag膜が凝集することなく耐久性を高めることができるという効果が、本発明の膜構成のいずれの作用に基づくものであるか解明できてはいないが、次のよう考えることができる。すなわち、第一には、熱処理によって第二層である金属の膜及び第三層であるAg膜の結晶性がいずれも向上し、構造の秩序性(結晶性)が高まっていることが考えられる。結晶性が高まることによってAg原子のマイグレーションが抑制されることが期待できる。第二には、第二層である金属膜及び第四層であるITO膜とAg膜の密着性が高いことにより、Ag原子の熱マイグレーションが抑制され、Ag膜が粒状構造を形成することなく緻密化しているためと考えることができる。第三には、熱処理の間にAg膜表面でITO膜中に含まれるSn原子とAg原子とが原子層オーダーの非常に薄いAg−Sn合金を形成し、反射率を低下させることなく、耐久性を向上させるという作用も考えられる。
さらに前記熱処理は、第二層から第四層までの膜の緻密化等に効果があるばかりでなく、第一層及び保護膜である第五層の膜の緻密化にも効果を及ぼしていることが期待できる。なお、熱処理条件が前記した温度範囲を外れると、Ag膜等の緻密化が十分でないか、逆にAg膜の酸化を引き起こしてしまうので好ましくない。また、前記した時間の範囲を外れて熱処理した場合にも、同様の不具合が生じてしまう。
本発明において、基材として、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂に代表される樹脂基材を用いることもできる。しかしながら、樹脂基材の場合は、基材と膜の間の密着力を高めるために、基材表面に下地層としてSiO膜/SiO膜からなる2層下地層を形成しておく必要がある。そして、前記第一層の酸化物膜としてAl膜を用いるのが好適である。樹脂基材表面に下地層としてSiO膜/SiO膜を形成すると、樹脂基材表面をガラス基材表面と同等の表面にする効果があると考えられる。なお、基材として、樹脂基材を用いる場合は、樹脂基材が400〜500℃という高温に耐えることができないことから、前記した熱処理を行うことはできない。
本発明の高耐久性銀ミラーにおいては、前記したように、第五層の保護膜の上に、さらに耐摩耗膜としてSiO膜、MgF膜又はMgF/SiO2層膜を形成すると、耐摩耗性を大幅に向上させることができる。この場合、耐摩耗膜は10〜20nm程度の厚さで形成するのが望ましい。これら耐摩耗膜は増反射効果をもたせるためではなく、耐摩耗性を向上させるために形成するからである。耐摩耗膜としてSiO膜、MgF膜又はMgF/SiO2層膜が適しているのは、これらの膜が結晶構造を取りにくく、表面が平滑であることから磨耗に対して強く、傷が付きにくいためである。また、これらの膜は屈折率が低く、たとえスクラッチ傷がついても目立ちにくいという点からも好適である。これら耐磨耗膜を形成した場合、前記した400〜500℃の温度範囲での30〜90分の熱処理は、これら耐摩耗膜を形成した後に行なうのが望ましい。これら耐磨耗膜も緻密化されるからである。
本発明において、前記第五層の保護膜の上に、あるいは該保護膜の上に形成された耐摩耗膜の上に、最表面層としてフッ素有機化合物等からなる撥水撥油膜を形成することもできる。撥水撥油膜は、表面の汚れ防止膜として機能することに加え、水分をはじく作用がある。従って、特に塩水に曝される環境下において、塩水をはじくことによって優れたバリヤー性を発揮する。撥水撥油膜自体は無色透明であり膜厚も数nm程度でよいことから、光干渉には影響せず光学的特性が変化することはない。
なお、本発明において、前記熱処理を行う場合には、該撥水撥油膜は、熱処理の後に形成しなければならない。熱処理の前に形成すると、熱処理によって撥水撥油膜が分解して、消失してしまうからである。
本発明の高耐久性銀ミラーは、前記熱処理を行った場合には、非常に厳しい耐熱性試験に耐えることができる。集光型太陽光発電モジュールに用いられる集光ミラーには、300℃という高温で2,000時間保持するという耐熱性試験の後であっても、可視光線領域における平均反射率が97%以上であることが要求されるが、前記熱処理を行った本発明の高耐久性銀ミラーは、この要件をクリアすることができる。このような耐熱性試験に合格できる耐久性を有することにより、長期間に亘って太陽光の直射に曝される高耐久性銀ミラーとして用いることができる。このような耐熱性も、膜構成全体の作用と熱処理によって耐久性を向上させた結果と考えることができる。
本発明の高耐久性銀ミラーは、濃度の高い塩水浸漬試験(30℃、15%塩水に24時間浸漬)や塩水噴霧試験に耐えることができ、試験後においても97%以上の平均反射率を維持できる。塩水浸漬試験や塩水噴霧試験は、海岸地域に設置される太陽光発電システムや、海岸地域を走行する自動車に使われる部品に要求される試験項目の一つであって、高度な耐腐食性能を有していることを評価するための試験である。本発明の高耐久性銀ミラーが、高濃度の塩水浸漬試験や塩水噴霧試験に耐えることができるのは、ITO膜の効果、所定の熱処理の効果、下地膜の効果及び保護膜の効果などの複合的なものと考えることができる。
また、本発明の高耐久性銀ミラーは、JIS H8502に規定される耐腐食性ガス試験の後であっても、可視光線領域における平均反射率が97%以上を有する。この耐腐食性ガス試験は、濃度10ppmの硫化水素(HS)ガスを用い、40℃90%RHという環境下に24時間曝すという厳しい試験であるが、本発明の高耐久性銀ミラーは、これをクリアすることができる。このような耐久性を有することにより、市街地における屋外と同等の環境下で長期間にわたって使用される車載用の高耐久性銀ミラーとして用いることができる。同様に、非特許文献2に記載されている高温多湿の東南アジア地域での5年間の暴露に相当するとされた混合腐食性ガス試験の後においても、97%以上の平均反射率を維持することができる。このような腐食性ガスに対する耐久性も、膜構成全体の作用と熱処理によって耐久性を向上させた結果と考えることができる。
以上のように、本発明で開示した膜構成とすることによって、可視光線の広い領域で高い反射率と優れた耐久性を両立できる高耐久性銀ミラーとすることができる。光反射層である第三層のAg膜を、実質的に不純物を含まない純銀とすることで、高反射率の実現に寄与する。
膜形成後に400〜500℃の温度範囲で30−90分の間、熱処理することにより、可視光線の広い領域で高い反射率と耐熱性を含む優れた耐久性を両立できる高耐久性銀ミラーとすることができる。そして、これらの作用が組み合わされることにより、集光型太陽光発電用の厳しい耐熱試験や、海岸地域を想定した高濃度の塩水浸漬試験や塩水噴霧試験や、市街地での長期間使用を想定した車載用の光学製品に要求される耐腐食性ガス試験においても、可視光線領域における平均反射率が97%以上を維持できる高耐久性銀ミラーとして用いることができる。
なお、本発明の高耐久性銀ミラーは、JIS D0205に規定される自動車部品の促進耐候性試験(耐光)であるサンシャインカーボンアーク灯式耐候試験機(83℃の環境で、6.8mW/cmのカーボンアーク灯を1,080時間照射しながら水を噴霧する試験)の後においても、97%以上の平均反射率が維持できることが確認された。
本発明によって、従来技術では達成することができなかった優れた耐久性を有した銀ミラーを実現できる。種々の耐久性試験後においても可視光線の広い領域における平均反射率として97%以上を実現することができる。液晶プロジェクターの内部に用いられる反射鏡に要求される耐久性をクリアすることはもちろん、集光型太陽光発電用集光ミラーに求められる耐熱試験や耐塩水浸漬試験及び塩水噴霧試験、自動車部品として用いる場合に要求される耐腐食性ガス試験や耐塩水浸漬試験及び塩水噴霧試験の後においても、97%以上の反射率を維持する高耐久性銀ミラーとすることができる。その結果、集光型太陽光発電用集光ミラーや自動車用のヘッドアップディスプレイに用いられる凹面ミラーとして利用できるし、さらに厳しい環境下でも用いることのできる銀ミラーとして幅広い用途が期待できる。
本発明の高耐久性銀ミラーの膜構成の一例を示す図である。 本発明の高耐久性銀ミラーの膜構成の一例において、ITO膜の厚みと平均反射率の関係を示す図である。 本発明に用いることのできる傾斜表面を有する基材の一例を示す図である。 平面形状ではない基材の、蒸着装置の基板ドームへの配置を示す図である。
特にことわりのない限り、基本膜構成は、ガラス基板/Al/Ni/Ag/ITO/Al/SiO/TiO(以後、本発明の基本膜構成と呼ぶ)からなる7層構成である。これらの膜は、真空蒸着装置(昭和真空製 品番SGC26WA)を用いて形成した。プラズマアシスト装置としては、日本電子製 品番BS80020CPPSを用いた。
(実施例1〜8)
ガラス基板を温水洗浄した後、真空蒸着装置にセットし、真空度0.9mPaまで排気した。そして、反応ガスである酸素を用いてガラス基板の表面をプラズマ洗浄し、ついで、真空度(背圧)を3mPaに調整した。第一層の酸化物膜(例えば、Al膜)の成膜では、酸素ガスを導入して、表1に記載した条件で成膜した。第二層以降も同様に表1に記載した条件で成膜することで、ガラス基板上に、No.1〜No.8までの膜を順番に形成した。表1中、成膜方式の欄の「VD」は、通常の真空蒸着という意味であり、電子銃を用いて蒸着材料を蒸発させて成膜した。「PAD」はプラズマアシスト装置を用いた蒸着を意味し、蒸着材料のイオン化を促進するプラズマ銃を補助的に用いている。その際のプラズマアシスト電流を、PA電流として記載した。なお、4層目であるITO膜の成膜はアルゴンガス雰囲気下で行い、Ni及びAgの成膜はいずれのガスも導入せず、これら以外の材料の成膜は、酸素ガス雰囲気中で行った。酸素ガス雰囲気で成膜した場合はOガス流量を、アルゴンガス雰囲気で成膜した場合はArガス流量を記載し、成膜時の圧力を制御した場合は、その圧力を記載している。成膜終了後、真空蒸着装置から取り出し、450℃に温度制御した炉の中に入れて、60分間の熱処理を行った。
表1に示した成膜条件を用いて、実施例として作成した7つの試料(実施例1〜実施例7)の膜構成を表2に示す。実施例1〜4では、ITO膜の膜厚を3〜10nmまで4段階に変えたもので、他の層の膜厚はすべて同じにした。実施例5及び6は、第一層の膜として、実施例1〜4で用いたAl膜に代えて、それぞれSiO膜又はTiO膜としたものである。その場合、SiO膜及びTiO膜の成膜条件は、表1中の第一層のAl膜の成膜条件に準じた。実施例7は、第二層としてNi膜に代えてCu膜を用いた構成である。
(比較例1〜比較例8)
実施例と対比して評価するために作製した比較例の膜構成を表3に示した。比較例1は、第一層としての酸化物膜を用いないで、ガラス基板上に直接Ni膜を形成した膜構成である。比較例2及び比較例3は、本発明における第四層のITO膜を用いていない膜構成である。比較例4及び比較例5では、本発明における第四層のITO膜に代えてNi膜又はCu膜を形成した例であって、その膜厚は約1nmである。比較例6は、本発明における第二層の金属の膜としてCr膜を用いた膜構成である。比較例7は特許文献2で開示された膜構成であり、比較例8は特許文献4で開示された膜構成である。なお、比較例8の作製においては、特許文献4に記載されている通り、第二層の金属の膜としては、Crを15wt%含有したNi−Cr合金を蒸着材料として用い、Ni膜の成膜条件に準じた条件でNi−Cr膜を成膜した。
本発明において重要な役割を果たすITO膜厚と平均反射率の関係を調べた結果を図2に示す。ここでは、基本膜構成として実施例1〜実施例4と同じ膜構成を用いて、ITOの膜厚を3nm〜15nmまで変化させ、その後、450℃で60分間熱処理した後の反射率を測定したものである。図中、折れ線グラフが2本あるのは、2セットの実験を行った結果であって、どちらも同じ傾向であった。この結果から、97%以上の平均反射率を達成するためには、ITO膜の膜厚としては12nm以下でなければならないことが判明した。
実施例および比較例の膜構成に対して、表4に示す各種耐久性試験を実施した。JISH8504に規定されているテープ剥離による密着性試験、太陽電池メーカーから要求される耐熱試験、太陽電池メーカー及び自動車部品メーカーから要求されている恒温恒湿試験及び塩水浸漬試験、自動車部品メーカーから要求されている腐食試験などである。塩水浸漬試験としては一般的な条件の塩水試験Aの他、一部から要求されているより厳しい条件の塩水試験Bも実施した。腐食試験は、JIS H8502に準じた腐食試験Aに加えて、非特許文献2に記載されている実暴露に対応した腐食試験Bも実施した。
これら試験結果を、実施例については表5に、比較例については表6に整理して示した。表5及び表6の試験Aの結果欄における○印は、密着性試験で膜剥離が発生しなかったことを示している。×印は、膜が剥がれたことを示している。その他の注釈は、表6の欄外に示している。
以上より、本発明の実施例1では、実施したすべての試験後において、97%以上の平均反射率を示し、優れた耐久性と高い反射率を有することがわかった。実施例2、3、4は、実施例1と比べて第4層のITO膜の膜厚が異なるだけであって、ITO膜厚が実施例1よりも厚いことから、実施例1と同様にすべての試験をクリアするものと考えられる。念のため実施した密着性試験においても膜が剥がれることはなく、塩水試験A及び塩水試験Bの後も、97%以上の高い反射率を維持していることが確認された。実施例5及び実施例6は、実施例1〜4における下地層であるAl膜に代えてSiO膜又はTiO膜を用いた構成あるが、これら酸化物膜を第一層として用いた場合であっても、試験A、試験D及び試験Eの結果、実施例1〜4と同等の耐久性を有していることがわかった。実施例7は、実施例1〜4における第二層の金属の膜でNi膜に代えてCu膜を用いた構成であるが、同様に優れた耐久性を示すことが確認された。但し、実施例5、6及び7では、試験B(耐熱試験)の後にのみ、3〜6%程度の反射率の低下が観察された。このことから、耐熱性の観点からは、第一層の酸化物膜としてはAl膜が優れており、第二層の金属膜としてはNi膜が優れていることが判明した。
比較例についての試験結果から次のことが明らかになった。比較例1は、ガラス基板上にAl膜が形成されていない例であるが、密着性に乏しく、密着性試験で剥離が発生した。比較例2及び比較例3は、本発明におけるITO膜が形成されていない例であるが、耐熱試験によって膜表面が劣化し、白い粒や黒い粒が多数発生していることが観察され、また、膜の変色も観察されている。比較例4及び比較例5は、本発明におけるITO膜の代わりに厚さ1nmのNi膜又はCu膜が形成された例であるが、これほど薄い膜厚であっても、平均反射率が97%以下であったため、耐久性試験は実施しなかった。比較例6は、実施例1〜4における第二層の金属の膜としてNi膜に代えてCr膜を用いた構成であるが、熱処理によって反射率が93.3%まで低下したので、耐久性試験は実施しなかった。前記したように面心立方型の結晶構造を有するNi及びCuを第二層の金属の膜として使用した実施例1〜実施例8では優れた耐久性を示したが、体心立方構造型の結晶構造を有するCrを第二層の金属の膜として使用した場合は、熱処理によって反射率が低下することが明らかになった。比較例7は特許文献2に開示された膜構成の銀ミラーであって、膜厚の厚いAl膜を下地膜として用いるものであるが、腐食試験Bに対しては、高い反射率を維持できるものの、耐熱試験によって短時間のうちに膜が劣化し、一部膜が剥離することがわかった。比較例8は特許文献4に開示された膜構成の銀ミラーであって、本発明の膜構成と比べて、ITO膜が形成されておらず、第二層の金属の膜としてはNi−Cr合金膜が形成され、その他の膜の膜厚はそれぞれ本発明よりやや厚く形成されたものである。各種試験の結果、塩水試験A、腐食試験Bに対しては、高い反射率を維持できるものの、塩水試験Bの後の反射率低下が大きく、97%の反射率を維持できないこと、及び耐熱試験後に反射率低下がやや大きく、97%を下回ることがわかった。
半導体や樹脂を基材とした場合の本発明の高耐久性銀ミラーの環境耐久性、耐候性、耐摩耗性などを評価するため、表4に記載した各種試験以外に、表7に記載した各種耐久性試験を実施した。試験L及び試験Mは、光学コーティングに係る試験方法として制定されたISO9211シリーズに準じて、新たに制定されたJIS B7080:2015に基づいた試験である。試験Mで用いる指定の砂消しゴムは、当該規格中に記載されている通り、ゴムと研磨剤の均一な混合物である。
(実施例8、9、10及び比較例9、10)
耐腐食性に加えて、特に優れた耐摩耗性が要求される用途に適した膜構成を有する高耐久性銀ミラーを作成し、試験A、試験K、試験L及び試験Mを実施して評価した。実施例及び比較例として評価した膜構成を表8に示した。ガラス基板上の7層目までは本発明の基本膜構成であって、実施例8、9、10及び比較例9,10とも同じである。実施例8では、第7層のTiO膜の上に、耐摩耗膜として厚さ120nmのMgF膜を形成している。実施例9では、MgF2膜の上に厚さ20nmのSiO膜を形成したものである。実施例10は、該SiO膜の上に、厚さ3nmの撥水撥油膜を形成したものである。一方、比較例9は、第7層のTiO膜の上に、厚さ25nmのMgF膜を形成している。また、比較例10は、耐摩耗膜として厚さ20nmのSiO膜を形成し、その上に厚さ3nmの撥水撥油膜を形成したものである。
各層の成膜条件は、表1に記載した通りである。表1に記載していないMgF膜の成膜条件は、MgFを蒸着源として用いて、蒸着チャンバー内の圧力(背圧)が0.9mPa以下になるまで真空引きした後、電子ビームを用いて蒸着を行った。また、撥水撥油膜としては、フッ素含有有機ケイ素化合物を含浸させた市販の蒸着用ペレット(例:キャノンオプトロン社製サーフクリア)を蒸着源として用いて、同じく電子ビーム法で蒸着した。
表8に示した実施例及び比較例について、塩水噴霧試験(試験K)、塩水試験後のテープ引きはがしテスト(試験A)環境耐久性試験(試験L)及び耐摩耗試験(試験M)を実施した。それら結果を表9に示した。塩水噴霧試験では、試験後に反射率が1.0%以上低下したものはなく、実施例及び比較例とも優れた耐腐食性を有していた。また、塩水噴霧試験後に、テープ引きはがしテストを行った結果、いずれのサンプルについても、膜の剥離は観察されず、優れた密着性を有していた。次に、環境耐久性試験においても、試験前後の反射率変化は1%未満であって、優れた耐腐食性を有していた。耐摩耗試験については、実施例8、9及び10では、摩耗試験の後に光を照射して観察しても、摩耗傷に起因する光の透過は観察されなかったのに対して、比較例9及び10では、薄い光の筋が観察された。すなわち、比較例9及び10では、摩耗試験によって銀膜が摩耗して、光が透過してしまうものと考えられる。以上より、耐摩耗膜としてMgF膜を用いることにより、砂消しゴム試験に合格するレベルの優れた耐摩耗性を付与できることがわかった。但し、MgF単層膜を耐摩耗膜とする場合、膜厚が薄いと、砂消しゴム試験に合格できないことがわかった(比較例9)。
(実施例11、12)
半導体であるSi基材上に本発明の高耐久性銀ミラーを作成し、耐久性を評価した。評価した膜構成を表10に示した。第7層までは、本発明の基本膜構成である。実施例11では、第7層の上に、耐摩耗膜として厚さ20nmのSiO膜が形成されている。実施例12では、SiO膜の上に厚さ3nmの撥水撥油膜が形成されている。これら2つの実施例について、塩水噴霧試験(試験K)を実施した結果を表11に示した。塩水噴霧試験後の反射率低下は1%未満であって、本発明の高耐久性銀ミラーは、Si基板上であっても優れた耐久性を有していることがわかった。
(実施例13〜16及び比較例11〜16)
樹脂基材を用いて本発明の高耐久性銀ミラーを作成し、各種耐久性を評価した。樹脂基材としては、厚さ2mmのシクロオレフィンポリマー(日本ゼノン株式会社製ZEONOR(登録商標)、以後COPと略す)を用いた。評価した実施例及び比較例の膜構成と評価結果を、それぞれ表12及び表13に示した。
COP基材上の高耐久性銀ミラーに関する各種耐久性の評価結果から、次の事項が明らかになった。実施例13〜16では、本発明の基本膜構成であるAl/Ni/Ag/ITO/Al/SiO/TiOがこの順に形成されているが、第1層のAl膜を形成する前に、COP基材上に先にSiO/SiO下地膜がこの順に形成されている。すなわち、ガラス基材やSi基材上の膜構成とは異なり、COP基材に対しては第1層として最初にAl膜を形成するのではなく、第一の下地膜として厚さ5nm程度の一酸化珪素(SiO)膜を形成し、その上に第二の下地膜として厚さ150〜300nm程度の二酸化珪素(SiO)膜を形成し、次いでAl膜を形成することが必須である。このようにSiO膜/SiO膜の2層からなる下地膜を形成しておくことで、樹脂基材を用いても高い反射率と優れた耐久性を有する高耐久性銀ミラーとすることができるのである。なお、表中の○印は膜の腐食や剥離がなかったことを示し、×印は試験後に膜の腐食や剥離が観察されたことを示している。
前記2層からなる下地膜を形成しておくことにより、下地膜の上に形成するAl膜は、厚さ5nm程度でよいことがわかった。また、Ag膜の下に形成するNi膜の厚みも薄くできることが判明した。なお、実施例13、15及び16は、耐摩耗膜として厚さ20nmのSiO膜を形成したものであり、実施例14は、SiO膜の上にさらに撥水撥油膜を形成したものである。
2層構成の下地膜を形成しない場合、COP基材上のAgミラーの耐久性は不十分なものとなってしまう。比較例11は、下地膜として厚さ100nmのSiO単層膜が形成されたものであり、比較例12は、下地膜として厚さ100nmのSiO単層膜が形成されたものであり、比較例14は下地膜を形成せずCOP基材上に直接Al膜を形成したものであるが、いずれの例も、耐湿試験(試験P)によってCOP基材表面に異常が発生し、その上に形成された膜が剥離してしまうか、大幅に反射率が低下することがわかった。比較例13は2層構成の下地膜が形成されているものの、その上にAl膜が形成されていない場合であって、耐湿試験でCOP基材表面に異常が発生し、テープ引きはがし試験(試験A)によっても、膜の剥離が観察された。比較例15及び16では、2層構成の下地膜を形成し、その上にAl膜が形成された膜構成であるが、第二の下地膜であるSiO膜の厚さが50nm以下と薄いため、基材側からのAg膜の腐食を十分に防止することができないこと、及び膜応力を十分に緩和できないことから、膜剥離も観察された。
実施例13について、温度−40℃で1時間保持し、その後急激に85℃まで加熱し1時間保持するサイクルを456回繰り返すという厳しいサーマルショック試験を実施したところ、95.8%であった初期反射率が94.5%までしか低下しなかったことから、COP基材上の本発明の高耐久性銀ミラーは、優れた耐サーマルショック性を有していることもわかった。
平板形状ではない基材上に高耐久性銀ミラーを作成し、耐久性を評価した。真鍮(Cu−Zn合金)を加工した基材20は、頂点Bに向かって、直方体の底面から円錐を削り取ったものである。図3は断面図であって、底面上のA及びCとBのなす角ABCはθである。本実施例では、θ=50°の真鍮基材を作成し、高耐久性銀ミラー膜を、斜面ABCに形成した。すなわち、この真鍮基材20では、ABCからなる傾斜した円錐斜面に膜が形成されることになる。
蒸着装置の中でコーティングを施す基材をセットする基材ホルダー(基板ドームと呼ばれることが多い。)は、球面であって、球面の円周方向や直径方向に多数の基材を並べて、成膜が行われる。そして、該基材が平面の場合、基材ホルダーの球面上のどの位置に基材をセットしても、基材平面上に形成される膜の厚みはほぼ同じになる。ところが、基材が平板形状でない場合は、基材ホルダーのどの位置にどの方向に向けて基材をセットするかによって、基材上のコーティングの厚みが異なってしまう。そして、多層膜を形成する場合には、各層の膜の厚み差が積み重なることによって、設計通りの光学特性(例えば反射率)を得ることが難しくなるのである。
図4に示したように、基板ホルダー上の4か所に、垂直面から25°傾けてガラス基板を配置し、表14に示した実施例17と表2に示した実施例1の高耐久性銀ミラーを成膜した。実施例17と実施例1と対比すると、実施例17では、保護膜が厚さ20nmのSiO単層膜であるのに対して、実施例1では、Al/SiO/TiOからなる3層保護膜と耐摩耗膜としてのSiO膜が形成されている。また、実施例17ではAg膜の厚みが500nmと厚く形成されている。
図4に示した4か所の位置に配置した実施例17及び実施例1の高耐久性銀ミラーについて平均反射率を測定した結果を表15に示す。実施例1では、基板ホルダー上の位置と方向によって反射率が大きく変動するのに対して、銀膜の厚みを厚くしてSiO2単層の保護膜とした実施例17では、基板ホルダー上の位置と方向によらず高い反射率が実現されることがわかった。
次に、図3に示した真鍮基材を用いて、その円錐斜面に形成した3種類の膜構成を表16に、それら膜構成について実施した恒温恒湿試験結果を表17に示した。比較例17は、実施例18と比べてITO膜が成膜されていない膜構成であり、比較例18は、銀膜の上にITO膜も保護膜も成膜されていない膜構成である。
実施例18は、ITO膜の上の保護層として厚さ20nmのSiO膜を形成したものであって、保護膜による増反射効果が得られず、またITO膜による光吸収のため、平均反射率は約95%に留まるものの、恒温恒湿試験(試験C)を、1,000時間を超えて実施しても、反射率が低下しないことがわかった。一方、ITO膜を形成せずにAg膜の上にSiO2膜を形成した比較例17や、Ag膜の上に保護膜を形成していない比較例18では、初期の反射率は高いものの、恒温恒湿試験による反射率低下が大きいことが判明した。
実施例1の高耐久性銀ミラーについて、JIS B7753に規定された試験装置(スガ試験機株式会社製)を用い、サンシャインカーボンウェザーメーター試験(試験I:促進耐候性試験)を実施した。試験条件は、ブラックパネル温度を83℃として、カーボンアークを60分間照射中、12分間は水を噴霧し、これを1,080時間にわたって繰り返し実施した。試験結果を表18に示した。
この結果、実施例1の高耐久性銀ミラーは、促進耐候性試験によっても反射率低下を起こさず、優れた耐候性を有していることがわかった。
1・・・・高耐久性銀ミラー
10・・・ガラス基板
11・・・第一層(Al膜)
12・・・第二層(Ni膜)
13・・・第三層(Ag膜)
14・・・第四層(ITO膜)
15・・・第五層(保護膜)
16・・・耐摩耗層(SiO膜)
20・・・真鍮基材
151・・Al膜(保護膜の第一層)
152・・SiO膜(保護膜の第二層)
153・・TiO2膜(保護膜の第三層)

Claims (13)

  1. 基材上に、第一層として酸化物膜が、第二層として面心立方型の結晶構造を有する金属から選んだ金属の膜が、第三層として銀膜が、第四層として厚さ3〜12nmのITO膜が、第五層として保護膜が、この順に形成されていることを特徴とする高耐久性銀ミラー。
  2. 前記第五層の保護膜の上に、耐摩耗膜として酸化珪素膜、フッ化マグネシウム膜又はこれら2層の膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高耐久性銀ミラー。
  3. 前記第五層の保護膜が形成された後又は保護膜の上に前記耐摩耗膜が形成された後、400〜500℃の温度範囲で30〜90分の間、熱処理されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高耐久性銀ミラー。
  4. 前記基材がガラス基材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の高耐久性銀ミラー。
  5. 前記基材が、半導体基材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の高耐久性銀ミラー。
  6. 前記基材が樹脂基材であって、前記第一層の酸化物膜が形成される前に、SiO/SiOの2層からなる下地層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高耐久性銀ミラー。
  7. 前記基材が、円錐面又は放物面の形状を有する基材であって、該円錐面又は該放物面上に前記第五層として形成される保護層がSiO単層膜であることを特徴とする請求項1に記載の高耐久性銀ミラー。
  8. 前記第三層の銀膜が、実質的に銀(Ag)以外の成分を含まない純銀からなることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の高耐久性銀ミラー。
  9. 前記第一層の酸化物膜が、酸化アルミ膜、酸化珪素膜又は酸化チタン膜から選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項8に記載の高耐久性銀ミラー。
  10. 前記第一層の酸化物膜が、酸化アルミであることを特徴とする請求項1乃至請求項8に記載の高耐久性銀ミラー。
  11. 前記第二層の、結晶構造が面心立方型である金属から選ばれた金属の膜が、Ni膜、Cu膜又はAl膜のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項10に記載の高耐久性銀ミラー。
  12. 前記第二層の結晶構造が面心立方型である金属から選ばれた金属の膜が、Ni膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項10に記載の高耐久性銀ミラー。
  13. 最表面層として撥水撥油膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12に記載の高耐久性銀ミラー。
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