JPWO2013061561A1 - 環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物からの環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である反応混合物を加熱して反応させる工程1と、工程1に次いで、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに反応させる工程2と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。より詳しくは、少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒を含む反応混合物を加熱して反応させて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを簡便な方法で効率よく製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性、すなわちその構造に由来する特異性により、近年注目を集めている。具体的には、高機能材料用途や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての活用や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用などが期待されている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法としては、たとえばジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法が提案されている(たとえば特許文献1参照。)。この方法では環式ポリアリーレンスルフィドが高選択率で生成し、線状ポリアリーレンスルフィドはごく少量しか生成しないと推測され、確かに環式ポリアリーレンスルフィドが高収率で得られる。しかしながら、この方法では超希釈条件で反応を行うことが必須とされており、反応容器単位容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドはごくわずかであり、効率的に環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では課題の多い方法であった。また該方法の反応温度は室温近傍であるため、反応に数十時間の長時間が必要であり生産性に劣る方法であった。さらに該方法で副生する線状ポリアリーレンスルフィドは原料のジアリールジスルフィド由来のジスルフィド結合を含む分子量の低いものであり、熱安定性の低い実用価値の無いものであった。また、この方法で副生する線状ポリアリーレンスルフィドは、目的物である環式ポリアリーレンスルフィドと分子量が近いために、環式ポリアリーレンスルフィドと副生する線状ポリアリーレンスルフィドの分離が困難であり高純度な環式ポリアリーレンスルフィドを効率よく得ることは極めて困難であった。加えて、該方法では酸化重合の進行のために例えばジクロロジシアノベンゾキノンなど高価な酸化剤が原料のジアリールジスルフィドと等量必要であり、安価に環式ポリアリーレンスルフィドを得ることはできなかった。ジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する他の方法として、酸化重合を金属触媒の存在下で行い、酸化剤として酸素を利用する方法も提案されている。この方法では酸化剤が安価であるが、反応の制御が困難で多種多量の副生オリゴマーが生成し、また、反応に極めて長時間が必要など課題が多い。このように、ジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法は、いずれの場合でも純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを安価に効率良く得ることはできなかった。
環式ポリアリーレンスルフィドの他の製造方法として、4−ブロモチオフェノールの銅塩をキノリン中の超希釈条件下で加熱する方法が開示されている。この方法も前記特許文献1と同様に超希釈条件が必須であり、また反応に長時間が必要であり生産性の極めて低い方法であった。さらにこの方法では副生する臭化銅を生成物である環式ポリアリーレンスルフィドから分離することが困難であり、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは純度の低いものであった(例えば特許文献2参照。)。
汎用的な原料から収率良く環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法として、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を、スルフィド化剤のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中で反応させる方法が開示されている(例えば特許文献3参照。)。しかしこの方法では原料モノマーに対する環式ポリアリーレンスルフィドの収率が低く、多量の線状ポリアリーレンスルフィドが副生するため、改善が望まれていた。
環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得る方法として、1,4−ビス−(4’−ブロモフェニルチオ)ベンゼンなどのジハロゲン化芳香族化合物と硫化ナトリウムとをN−メチルピロリドン中で還流温度下に接触させる方法が開示されている(例えば非特許文献1参照。)。この方法では、反応混合物中のイオウ成分1モルに対する有機極性溶媒量が1.25リットル以上であるため環式ポリアリーレンスルフィドが得られると推測できる。しかしながらこの方法は、原料に線状ポリアリーレンスルフィドを用いていないためジハロゲン化芳香族化合物を多量に用いることが必要であり、また用いているジハロゲン化芳香族化合物が極めて特殊な化合物であるため、工業的な実現性に乏しい方法であり改善が望まれていた。
上記課題を解決する方法として、線状ポリアリーレンスルフィドとスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物を反応混合物中のイオウ成分1モルあたり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で加熱して反応させる方法が開示されている(例えば特許文献4参照。)。この方法では、線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いているため使用するモノマー量を低減でき、そのためモノマーに対する環式ポリアリーレンスルフィドの収率が向上し、工業的な実現性が期待できる方法である。しかしながらこの方法では、全ての反応原料、すなわち線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒を一括に仕込み反応させる方法しか検証がなされておらず、そのため本発明の特長であるジハロゲン化芳香族化合物の追加による環式ポリアリーレンスルフィドの収率生成率向上および不純物の低減については検証が行われていない。
ジハロゲン化芳香族化合物の追加を伴う、多段階での環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法として、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、有機極性溶媒、およびスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.9モル未満のジハロゲン化芳香族化合物を含む反応混合物を加熱する反応(A)を行い、ジハロゲン化芳香族化合物を追加し、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で加熱する反応(B)を行う方法が開示されている(例えば特許文献5。)。本方法では、反応(A)で生じた低分子量のプレポリマーを、反応(B)でジハロゲン化芳香族化合物を追加して環化することが特長である。本方法では、プレポリマーを効率よく生成させるために、反応(A)においては反応混合物中に実質的にジハロゲン化芳香族化合物が存在しないことが好ましく、実際、従来は、ジハロゲン化芳香族化合物を含まない方法しか検証がなされていなかった。また、プレポリマーを効率よく生成させるために、反応(A)における反応混合物中の有機極性溶媒は、イオウ成分1モル当たり1.25リットル未満であることが好ましく、実際、従来は、反応混合物中の有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1リットルである方法しか検証がなされていなかった。したがって、本発明のごとく、ジハロゲン化芳香族化合物を追加する前の反応混合物中にジハロゲン化芳香族化合物を積極的に共存させ、かつ、全反応工程を通して有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上の、より希薄な条件にて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する場合の収率に対する効果は未知であった。
ここで、前記の特許文献3及び4において環式ポリアリーレンスルフィドを回収するに当たっては、反応によって得られた反応混合物からまず有機極性溶媒の一部もしくは大部分を除去することで環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを主成分とする混合固体を回収した後に、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤と接触させて環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を調製し、次いで該溶液から溶解に用いた溶剤を除去することで環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法が開示されている。
また上記回収方法と類似した、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法としては、少なくとも線状のポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物を、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤と接触させて環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を調製し、次いで該溶液から環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法が開示されている(たとえば特許文献6参照。)。これらの方法では、確かに純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを得られるものの、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを得るためには、環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィド及び有機極性溶媒からなる反応混合物を製造する工程、反応混合物から有機極性溶媒を除去して環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む混合固体を製造する工程、混合固体を溶剤と接触させることで環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を得る工程、この溶液から溶剤を除去する工程が必須であり、非常に煩雑であると言える。
上記のごとき環式ポリアリーレンスルフィドを回収する際の課題、すなわち、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを効率よく且つ簡便な方法で回収する方法として、有機極性溶媒中で少なくともスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を接触させて反応させて得られる少なくとも線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドを含む反応混合物から環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法であって、反応混合物を有機極性溶媒の常圧における沸点以下の温度領域で固液分離することにより得られた濾液から有機極性溶媒を除去することを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法(たとえば特許文献7参照)や、少なくともポリアリーレンスルフィド、環式ポリアリーレンスルフィド及び有機極性溶媒を含む混合物から有機極性溶媒の一部を留去したのちに固液分離して環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法(たとえば特許文献8参照)が開示されている。これらの方法は、固液分離という簡易な方法で目的物である環式ポリアリーレンスルフィドを分離、回収しており、確かに上述の従来技術の課題を改善しようとする方法であるが、環式ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程において、本発明の特徴であるジハロゲン化芳香族化合物の追加と更なる反応を行っていないため、反応生成物を固液分離のプロセスにおいて長時間の分離時間を要するという課題が依然残っており、また、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの純度も不十分であり、改善が強く望まれていた。
特許第3200027号公報 米国特許第5869599号公報 特開2009−30012号公報 国際公開第2008/105438号 特開2011−068885号公報 特開2007−231255号公報 特開2009−149863号公報 特開2010−037550号公報 Bull. Acad. Sci., vol.39, p.763-766, 1990
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを簡便な方法で効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
1.少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、該反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の前記有機極性溶媒(c)を含む前記の反応混合物を加熱して反応させて、環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、
前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である前記反応混合物を加熱して、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程1と、
前記工程1に次いで、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに加熱して反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程2と、を含む環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
2.前記工程2に次いで、
前記反応生成物を、前記有機極性溶媒(c)の常圧における沸点以下の温度領域で固液分離することで、環式ポリアリーレンスルフィドと前記有機極性溶媒(c)とを含む濾液を得る工程3を行う第1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
3.前記工程1において、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.00モル未満である前記反応混合物を加熱する、第1項または第2項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
4.前記反応混合物は、さらに線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含む第1項から第3項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
5.前記反応混合物は、前記工程1の反応開始時点において前記線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含む第4項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
6.前記工程1において、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の70%以上が反応消費されるまで反応させた後に工程2を行う第1項から第5項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
7.前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たり0.2〜20.0モルの水を含む前記反応混合物を用いて、前記工程1を行う第1項から第6項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
8.前記工程1および前記工程2において、常圧における前記反応混合物の還流温度を越える温度で前記反応混合物を加熱する第1項から第7項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
9.前記工程1および前記工程2において、前記反応混合物を加熱する際の圧力がゲージ圧で0.05MPa以上である第1項から第8項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
10.前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)がジクロロベンゼンである第1項から第9項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
11.前記スルフィド化剤(a)がアルカリ金属硫化物である第1項から第10項のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
12.第4項または第5項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、前記反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の前記有機極性溶媒(c)を含む前記反応混合物を、
前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である前記反応混合物を加熱して、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程1と、
前記工程1に次いで、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに加熱して反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程2と、
を含む方法で加熱して反応させることにより得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを、前記線状ポリアリーレンスルフィド(d)として用いる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
13.第4項または第5項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(d)、スルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、前記反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の前記有機極性溶媒(c)を含む前記反応混合物を、
前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である前記反応混合物を加熱して、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程1と、
前記工程1に次いで、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに加熱して反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程2と、
を含む方法で加熱して反応させることにより得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを、前記線状ポリアリーレンスルフィド(d)として用いる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドを簡便な方法で効率よく製造する方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の実施の形態は、環式ポリアリーレンスルフィド(以下、環式PASと略すこともある)の製造方法に係るものである。
(1)スルフィド化剤
本発明の実施形態で用いられるスルフィド化剤とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるもの、およびアリーレンスルフィド結合に作用してアリーレンチオラートを生成するものであれば良く、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。これらのアルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物は、水和物、水性混合物、および無水物から選択される化合物の形で用いることができる。水和物または水性混合物が、入手のし易さ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状、液体状、水溶液状のいずれの形態で用いても差し障り無い。
本発明の実施形態においてスルフィド化剤の量は、脱水操作などによりジハロゲン化芳香族化合物との反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、および水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モル以上とすることができ、好ましくは1.00モル以上であり、更に好ましくは1.005モル以上である。また、1.50モル以下とすることができ、好ましくは1.25モル以下であり、更に好ましくは1.200モル以下である。スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、硫化水素1モルに対し2.0モル以上とすることができ、好ましくは2.01モル以上であり、更に好ましくは2.04モル以上である。また、3.0モル以下とすることができ、好ましくは2.50モル以下であり、更に好ましくは2.40モル以下である。
(2)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明の実施形態で使用されるジハロゲン化芳香族化合物とは、芳香環の二価基であるアリーレン基と、2つのハロゲノ基とを有する芳香族化合物である。ジハロゲン化芳香族化合物1モルは、アリーレン単位1モルとハロゲノ基2モルを有している。たとえば、アリーレン基としてベンゼン環の二価基であるフェニレン基を有すると共に2つのハロゲノ基を有する化合物として、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、および1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンを挙げることができる。さらに、ジハロゲン化芳香族化合物としては、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、および3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含む化合物を挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。また、環式PAS共重合体を得るために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
(3)線状ポリアリーレンスルフィド
本発明の実施形態における線状ポリアリーレンスルフィド(以下、線状PASと略する場合もある)とは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(L)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 2013061561
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、およびハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(M)〜式(P)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−であらわされる主要構成単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2013061561
また、本発明の実施形態における線状PASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、これらのブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状PASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2013061561
を80モル%以上、望ましくは90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、およびポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
本発明の実施形態の環状PASの製造方法においては、線状PASを原料として用いることができる。その場合に使用する線状PASの溶融粘度に特に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘度としては0.1〜1000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が例示でき、0.1〜500Pa・sの範囲が例示できる。また、線状PASの分子量にも特に制限は無く、一般的なPASを用いることが可能である。この様なPASの重量平均分子量は5,000以上とすることができ、7,500以上が好ましく、10,000以上がより好ましい。また、PASの重量平均分子量は1,000,000以下とすることができ、500,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。一般に重量平均分子量が低いほど有機極性溶媒への溶解性が高くなるため、反応に要する時間が短くできるという利点があるが、前述した範囲であれば本質的な問題なく使用が可能である。
このような線状PASの製造方法は特に限定はされず、いかなる製法によるものでも使用することが可能である。例えば特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報および特公昭63−3375号公報に代表される、少なくとも1個の核置換ハロゲンを含有する芳香族化合物またはチオフェンとアルカリ金属モノスルフィドとを、極性有機溶媒中で高められた温度において反応せしめる方法により線状PASを製造することができる。また、好ましくは例えば特開平05−163349号公報に代表される、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させることによって線状PASを得ることができる。またこれら方法により製造されたPASを用いた成形品や成形屑、あるいはこれら方法により製造されたPAS由来の廃プラスチックやオフスペック品なども幅広く線状PASとして使用することが可能である。
また、一般的に環式化合物の製造は、環式化合物の生成と線状化合物の生成の競争反応であるため、環式ポリアリーレンスルフィドの製造を目的とする方法においては、目的物の環式ポリアリーレンスルフィド以外に線状ポリアリーレンスルフィドが少なからず副生物として生成する。本発明の実施形態ではこの様な副生線状ポリアリーレンスルフィドも問題なく原料に用いることが可能である。例えば前述した特許文献3に代表される環式PASの製造方法、すなわち、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とをスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて加熱して反応させる製造方法により、得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いる方法は、特に好ましい方法といえる。また、前述した特許文献4に代表される環式PASの製造方法、すなわち、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、およびジハロゲン化芳香族化合物を反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて加熱して反応させる製造方法により、得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを原料に用いる方法も好ましい方法といえる。
さらに、少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(d)、スルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(c)を含む反応混合物を加熱して反応させて、環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である反応混合物を加熱して反応させ(工程1)、工程1に次いで、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに反応を行うことにより得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを用いることは、ことさら好ましい方法である。
従来、環式化合物、例えば環式ポリアリーレンスルフィドの製造において副生する線状化合物、すなわち低分子量の線状ポリアリーレンスルフィドは、利用価値の無いものとして廃棄されていた。従って環式化合物の製造においては、この副生線状化合物に起因する廃棄物量が多い、また原料モノマーに対する収率が低いという課題があった。本発明の実施形態ではこの副生線状ポリアリーレンスルフィドを原料として使用することが可能であり、このことは廃棄物量の著しい低減や原料モノマーに対する収率の飛躍的な向上を可能とするという観点で意義の大きいものである。
なお、線状ポリアリーレンスルフィドの形態に特に制限はなく、乾燥状態の粉末状、粉粒状、粒状、ペレット状でも良い。線状ポリアリーレンスルフィドは、反応溶媒である有機極性溶媒を含む状態で用いることも可能であり、また、本質的に反応を阻害しない第三成分を含む状態で用いることも可能である。この様な第三成分としては例えば無機フィラーやアルカリ金属ハロゲン化物が例示できる。ここで、アルカリ金属ハロゲン化物としては、アルカリ金属(すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウム)とハロゲン(すなわちフッ素、塩素、臭素、ヨウ素およびアスタチン)とから構成されるいかなる組み合わせのものをも含み、具体例としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、およびフッ化セシウムなどが例示できる。前述したスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物との反応によって生じるアルカリ金属ハロゲン化物が好ましく例示できる。一般的に入手が容易なスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の組み合わせから生じるアルカリ金属ハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが例示でき、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、および臭化カリウムが好ましいものとして例示でき、塩化ナトリウムがより好ましいものである。また、無機フィラーやアルカリ金属ハロゲン化物を含む樹脂組成物の形態の線状ポリアリーレンスルフィドを用いることも可能である。
本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法においては、上記のとおり線状PASが副生成物として生成する。本発明の実施形態において生成する線状PASの溶融粘度に特に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘度としては0.1〜1000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒)の範囲が例示でき、0.1〜500Pa・sの範囲が生成しやすい傾向にある範囲といえる。また、線状PASの分子量に特に制限はないが、一般的なPASの重量平均分子量としては1,000〜1,000,000が例示でき、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法で生成する線状PASは2,500〜500,000の範囲である傾向があり、5,000〜100,000の範囲である傾向が強い。一般に重量平均分子量が高いほど、線状のPASとしての特性が強く発現するため、後述する環式PASと線状PASの分離においては分離が行いやすくなる傾向があるが、前述した範囲であれば本質的な問題なく使用が可能である。
(4)有機極性溶媒
本発明の実施形態ではスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物との反応を行う際や、反応で得られた反応生成物の固液分離を行う際に有機極性溶媒を用いるが、この有機極性溶媒としては有機アミド溶媒が好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、およびN−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類や、N−メチル−ε−カプロラクタムおよびε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類や、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、およびヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。
本発明の実施形態において、少なくともスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒からなる反応混合物を反応させる際の有機極性溶媒の使用量は、反応混合物中のイオウ成分1モルに対し1.25リットル以上50リットル以下である。有機極性溶媒の使用量の好ましい下限としては1.5リットル以上であり、さらに好ましくは2リットル以上である。一方、好ましい上限としては20リットル以下であり、15リットル以下が更に好ましい。なお、ここでの溶媒使用量は常温常圧下における溶媒の体積を基準とする。イオウ成分1モル当たりの有機極性溶媒の使用量が1.25リットルより少ない場合、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の反応によって生成する環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が極めて低くなる一方で、環式ポリアリーレンスルフィドの生成に付随して副生する線状ポリアリーレンスルフィドの生成率が高まるため、単位原料当たりの環式ポリアリーレンスルフィドの生産性に劣る。なおここで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率とは、後で詳述する環式ポリアリーレンスルフィドの製造において、反応混合物の調製に用いたイオウ含有原料(スルフィド化剤および使用する場合には線状ポリアリーレンスルフィド)に含まれるイオウ成分の全てが環式ポリアリーレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリアリーレンスルフィドの生成量に対する、環式ポリアリーレンスルフィドの製造で実際に生成した環式ポリアリーレンスルフィド量の比率のことである。環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が100%であれば、用いたイオウ含有原料中のイオウ成分の全てが環式ポリアリーレンスルフィドに転化したことを意味する。
ここで環式ポリアリーレンスルフィドの生成率は、使用する有機極性溶媒の量が多いほど用いたイオウ含有原料をより効率よく目的物(環式ポリアリーレンスルフィド)に転化させるとの観点で好ましい。ただし、極めて高い生成率を達成するために環式ポリアリーレンスルフィドの製造に際して、使用する有機極性溶媒の使用量を極端に多くすると、反応容器の単位体積当たりの環式PASの生成量が低下する傾向に有り、また、反応に要する時間が長時間化する傾向がある。更に、環式ポリアリーレンスルフィドを単離回収する操作を行う場合には、有機極性溶媒使用量が多すぎると、反応生成物中の単位量当たりの環式ポリアリーレンスルフィド量が微量になるため、回収操作が困難となる。環式ポリアリーレンスルフィドの生成率と生産性を両立するとの観点で前記した有機極性溶媒の使用量範囲とする事が好ましい。
なお、一般的な環式化合物の製造における溶媒の使用量は極めて多い場合が多く、本発明の実施形態の好ましい使用量範囲では効率よく環式化合物を得られないことが多い。本発明の実施形態では一般的な環式化合物製造の場合と比べて、溶媒使用量が比較的少ない条件下、即ち前記した好ましい溶媒使用量上限値以下の場合でも、効率よく環式PASが得られる。この理由は現時点定かではないが、本発明の実施形態の方法では、反応混合物の還流温度を超えて反応を行うため、極めて反応効率が高く原料の消費速度が高いことが、環状化合物の生成に好適に作用しているものと推測している。ここで、反応混合物における有機極性溶媒の使用量とは、反応系内に導入した有機極性溶媒から、反応系外に除去された有機極性溶媒を差し引いた量である。
(5)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明の実施形態における環式ポリアリーレンスルフィドとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(Q)のごとき化合物が例示できる。
Figure 2013061561
ここでArとしては前記の式(A)〜式(L)などであらわされる単位を例示できるが、なかでも式(A)〜式(C)が好ましく、式(A)及び式(B)がより好ましく、式(A)が特に好ましい。
なお、環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(A)〜式(L)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2013061561
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
環式ポリアリーレンスルフィドの前記式(Q)中の繰り返し数mに特に制限はないが4〜50の混合物が好ましく、4〜30がより好ましく、4〜25が更に好ましい。後で述べる様に環式ポリアリーレンスルフィドを含有するポリアリーレンスルフィドプレポリマーを原料として高分子量のポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを原料として得られる高分子量のポリアリーレンスルフィドを、単にポリアリーレンスルフィドまたはPASとも呼ぶ)を製造する場合には、このポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱を、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーが溶融する温度で行うことが望ましく、これにより効率良くポリアリーレンスルフィドが得られることとなる。
ここで環式ポリアリーレンスルフィドの繰り返し数mが前記範囲の場合には、環式PASの溶融温度が275℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは255℃以下になる傾向がある。そのため、このような環式PASを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解温度もこれに応じて低温化する傾向がある。従って、環式PASのmの範囲が前述の範囲の場合には、ポリアリーレンスルフィドの製造に際し、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの加熱温度を低く設定することが可能となるため望ましい。なおここで環式PAS及びポリアリーレンスルフィドの融解温度とは、示唆走査熱量計にて、50℃で1分保持後に、走査速度20℃/分で360℃まで昇温した際に観察される吸熱ピークのピーク温度のことを示す。
また、本発明の実施形態における環式ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低く、融解に要する熱量も小さくなる傾向があるため好ましい。また、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドにおいて、環式ポリアリーレンスルフィドの総量に対する前記式(A)のm=6の環式PASの含有量は50重量%未満であることが好ましく、40重量%未満がより好ましく、30重量%未満がさらに好ましい([m=6の環式PAS(重量)]/[環式PAS混合物(重量)]×100(%))。ここで例えば特許文献特開平10−77408号公報には環式PASのArがパラフェニレンスルフィド単位であって繰り返し数mが6のシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)を得る方法が開示されているが、このm=6の環式PASは348℃に融解ピーク温度を有するとされ、このような環式PASを加工する際には極めて高い加工温度が必要となる。
従って、環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用いてポリアリーレンスルフィドを製造する場合において、加熱に必要な温度をより低い温度にしうるとの観点から本発明の実施形態の環式PASにおいては、特に前記式(A)のm=6の環式PASの含有量を先述の範囲とすることが好ましい。同様にポリアリーレンスルフィドの製造する場合における溶融加工温度をより低い温度にしうるとの観点から、本発明の実施形態では環式PASとして異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物を用いることが好ましいことは前述したとおりである。ここで、環式PAS混合物に含まれる環式PASのうち前記式(A)のmが4〜13の環式PASの総量を100重量%とした場合に、mが5〜8の環式PASをそれぞれ5重量%以上含む環式PAS混合物を用いることが好ましく、mが5〜8の環式PASをそれぞれ7重量%以上含む環式PAS混合物を用いることがより好ましい。このような組成比の環式PAS混合物は特に融解ピーク温度が低くなり、且つ融解熱量も小さくなる傾向にあり溶融温度の低下の観点で特に好ましい。
なおここで、環式PAS混合物における環式ポリアリーレンスルフィドの総量に対する繰り返し数mの異なる環式PASの各々の含有率は、環式PAS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際に環式PASに帰属される全ピーク面積に対する、所望するm数を有する環式PAS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
(6)環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法
本発明の実施形態では、少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物を加熱して反応させることによる環式ポリアリーレンスルフィドの製造において、以下の工程1及び工程2を含むことが特徴であり、これにより高純度の環式ポリアリーレンスルフィドを効率よく短時間に得ることが実現可能である。
工程1;反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である反応混合物を加熱して、反応混合物中のスルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程。
工程2;工程1に次いで、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程。
以下、工程1及び工程2について詳述する。
(7)環式ポリアリーレンスルフィドの製造;工程1
本発明の実施形態では、上記原料成分を含む反応混合物を工程1で用いるが、工程1では、反応混合物に含まれる少なくともスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とが反応することで目的物である環式ポリアリーレンスルフィドの生成が進行する。
また、工程1では反応混合物の原料成分としてスルフィド化剤(a)とジハロゲン化芳香族化合物(b)に加え、線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含んでいてもよい。この場合は、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物に加えて線状ポリアリーレンスルフィドも反応して、目的物である環式ポリアリーレンスルフィドの生成が進行する。ここで原料成分として仕込む線状ポリアリーレンスルフィド(d)は、工程1の反応開始時点で反応混合物に含まれていることが望ましく、それにより環式ポリアリーレンスルフィドの生成効率は向上する。ここで言う反応開始時点とは、反応混合物の加熱を開始する時点をさし、スルフィド化剤(a)およびジハロゲン化芳香族化合物(b)の実質的な反応消費が進行していない状態をいう。ここでの実質的な反応消費とは、環式PASと、前記の通り本発明の実施形態の方法で副生しやすい重量平均分子量が2,500〜500,000の範囲の線状PASとが、生成するのに十分なスルフィド化剤(a)とジハロゲン化芳香族化合物(b)の反応消費をいう。すなわち、スルフィド化剤(a)およびジハロゲン化芳香族化合物(b)が全く反応消費していない状態ではなく、加熱せずとも起こりうるようなごくわずかな量のスルフィド化剤(a)およびジハロゲン化芳香族化合物(b)の反応消費は進行していても構わない。したがって、線状ポリアリーレンスルフィド(d)は、工程1に先立って、原料成分であるスルフィド化剤(a)とジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)と混合されていることが望ましく、それらを混合する順番や方法に特に制限はない。
ここで、工程1で用いる反応混合物では、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を、0.80モル以上1.05モル未満としている。上記アリーレン単位の下限値は、0.82モルが好ましく、0.87モルがより好ましく、0.90モルが更に好ましく、0.92モルがよりいっそう好ましく、0.94モルが殊更好ましい。また、上記アリーレン単位の上限値は、1.002モルが好ましく、1.005モルがより好ましく、1.00モル未満がさらにこのましく、0.995モルがよりいっそう好ましく、0.990モルが殊更好ましい。
上記の下限値として、より低い下限値を選択するほど、本発明の実施形態の目的物である環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する傾向にある。また、より高い下限値を選択するほど、環式ポリアリーレンスルフィドの製造における不純物の生成量を低減できる傾向にある。特に0.94モル未満の下限値を選択した場合には環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が殊更に高まる傾向が強く、一方で0.94モル以上の下限値を選択した場合には不純物の生成を顕著に抑制できる傾向が強い。この理由は現時点において明確では無いが、工程1における反応により生成する反応中間体であって、工程1に引き続き行なう工程2で環式ポリアリーレンスルフィドもしくは不純物に転化しうる反応中間体の存在量が、上記の下限値の選択によって変化することが影響しているものと推測している。すなわち、上記の下限値としてより低い下限値を選択した場合には、この中間体の生成量が増大するため最終的に得られる環式ポリアリーレンスルフィドの生成量が増大する一方で不純物の生成量も多くなる傾向となると推測している。また一方で、より高い下限値を選択した場合には、この中間体の生成量が減少するため、最終的に得られる環式ポリアリーレンスルフィドの生成量が相対的に小さくなるのと同時に不純物の生成量も減少する傾向となると推測している。
ここで、反応混合物に含まれるアリーレン単位とは、原料として仕込んだスルフィド化剤(a)とジハロゲン化芳香族化合物(b)との反応が全く進行していない段階においては、アリーレン単位を含む原料がジハロゲン化芳香族化合物(b)のみの場合は、反応混合物に含まれるジハロゲン化芳香族化合物(b)に由来するアリーレン単位をさす。また、反応が進行した段階、もしくは原料に線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含む場合においては、反応混合物中に含まれるジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位と、反応混合物中に存在するアリーレンスルフィド化合物に由来するアリーレン単位の合計をさす。
なおここで、本発明の実施形態においてアリーレンスルフィド化合物は、スルフィド化剤(a)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および/または線状ポリアリーレンスルフィド(d)とが反応することにより生成する。したがって、反応の進行に伴い、消費したジハロゲン化芳香族化合物の量に相当するアリーレンスルフィド単位が新たに生成することとなる。すなわち、反応中に反応混合物に対してアリーレン含有成分が除去されたり追加されたりしない場合、反応が進行した段階であっても反応混合物中のアリーレン単位の量は仕込み段階と変わらないといえる。
また、反応混合物中のアリーレン単位の量は、ジハロゲン化芳香族に由来するアリーレン単位および反応系内に存在するアリーレンスルフィド化合物の量をそれぞれ定量して求めることも可能である。ここで反応混合物中のジハロゲン化芳香族化合物量は後述するガスクロマトグラフ法を用いる方法で求めることができる。また、反応混合物中のアリーレンスルフィド化合物の量は、反応混合物の一部を大過剰の水に分散させて水に不溶な成分を回収し、回収した成分を乾燥して得られる固形分の量を測定することにより求めることが可能である。
また、反応混合物に含まれるイオウ成分のモル量とは、反応混合物中に存在するイオウ原子のモル量と同義である。例えば反応混合物中にアルカリ金属硫化物が1モル存在し、イオウを含む他の成分が存在しない場合、反応混合物に含まれるイオウ成分は1モルに相当する。また、反応混合物中にアルカリ金属水硫化物が0.5モルとアリーレンスルフィド単位が0.5モル存在する場合、反応混合物に含まれるイオウ成分は1モルに相当する。
したがって、原料として仕込んだスルフィド化剤(a)およびジハロゲン化芳香族化合物(b)の反応が全く進行していない段階においては、イオウ原子を有する原料がスルフィド化剤(a)のみの場合は、反応混合物に含まれるイオウ成分のモル量とは、スルフィド化剤(a)に由来するイオウ成分のモル量をさす。また、反応が進行した段階、もしくは原料に線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含む場合においては、反応混合物に含まれるイオウ成分のモル量とは、反応混合物中に含まれるスルフィド化剤に由来するイオウ成分と、反応系内に存在するアリーレンスルフィド化合物に由来するイオウ成分の合計のモル量をさす。
ここで、前記の通り本発明の実施形態においてアリーレンスルフィド化合物は、スルフィド化剤(a)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および/または線状ポリアリーレンスルフィド(d)とが反応することにより生成するため、反応の進行においては、消費したスルフィド化剤の量に相当するアリーレンスルフィド単位が新たに生成することとなる。すなわち、反応中に反応混合物においてスルフィド化剤の除去や欠損や追加などがない場合、反応が進行した段階であっても反応混合物に含まれるイオウ成分の量は仕込み段階と変わらないといえる。
また、反応混合物中のイオウ成分の量は、スルフィド化剤に由来するイオウ成分量および反応系内に存在するアリーレンスルフィド化合物の量をそれぞれ定量して求めることも可能である。ここで反応混合物中のスルフィド化剤の量は後述するイオンクロマトグラフィー手法で求めることができる。また、反応混合物中のアリーレンスルフィド化合物の定量方法は前述の通りである。
反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位の比を、このような範囲、すなわち0.80モル以上1.05モル未満として工程1を行うことは、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの生成率および品質を高めるために極めて重要である。反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モルよりも少ない場合は、反応後に得られる反応生成物における環式ポリアリーレンスルフィドの生成率は低く留まり、かつ不純物成分となる低分子量化合物の含有量が増大する傾向にある。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モルよりも多い場合には、工程2を行うことによる環式ポリアリーレンスルフィドの生成率向上の効果が得られず、反応生成物における環式ポリアリーレンスルフィドの生成率は低く留まり、かつ不純物成分となる低分子量化合物の含有量が増大する傾向にある。したがって、上記の好ましい範囲以外では、反応後に得られる反応生成物における不純物成分量が増大し、このことは環式ポリアリーレンスルフィドを回収単離する場合においても、単離後の環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる不純物含有量の増大に直結するため、避ける必要がある。
ここで本発明の実施形態では、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.00モル未満といった、イオウ成分に対するアリーレン単位が不足する条件を好ましく設定することが可能である。従来、このような範囲では目的物が得られにくく、また後で詳述するように環式ポリアリーレンスルフィドの回収を行う際の固液分離を行う際の分離性が低下するといった課題があった。しかしながら本発明の実施形態では、工程1に引き続き工程2を行うことを特徴とするため、このような範囲で反応を行っても問題なく目的物が得られ、さらに環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上するといった効果があることを見出し、本発明の実施形態を完成させるに至った。また、イオウ成分に対するアリーレン単位が不足する上記条件では、後述する反応生成物から環式ポリアリーレンスルフィドを回収する固液分離において高い分離性を得ることが可能であり、このことも本発明の実施形態の特徴の一つといえる。本発明の実施形態において、工程1での反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を上記の好ましい範囲とすることは、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率がより向上する効果があることから好ましい方法である。
本発明の実施形態の工程1では、前記の通り反応混合物中の原料成分として線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含んでいてもよいが、この場合に反応混合物における線状ポリアリーレンスルフィド(d)の含有量は、反応混合物中の原料組成が上記の範囲にあれば特に制限はない。ただし、線状ポリアリーレンスルフィド(d)に由来するイオウ成分の量が、線状ポリアリーレンスルフィドに由来するイオウ成分とスルフィド化剤(b)に由来するイオウ成分の合計値、すなわち反応混合物中の全イオウ成分の量の過半となることが好ましい。すなわち、反応混合物中の全イオウ成分1モルに対する、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドのイオウ成分の比率の下限は、0.5モルが好ましく、0.6モルがより好ましく、0.7モルがさらに好ましい。また、上限は、0.99モルが好ましく、0.95モルがより好ましく、0.90モルがさらに好ましい。線状ポリアリーレンスルフィドの含有量を上記の好ましい範囲とすれば、工程1に次いで、後述の工程2を行った際に、用いたスルフィド化剤(a)に対する環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が高くなる傾向にある。また、線状ポリアリーレンスルフィド(d)として本発明の実施形態の方法で副生する線状ポリアリーレンスルフィドを使用した際には、経済的に効率的といえる。
工程1においては上記組成の反応混合物を加熱して反応を行う。この反応における温度は、常圧下における反応混合物の還流温度を越える温度が望ましい。この望ましい温度は反応に用いるスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは225℃以上とすることができる。また、350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは310℃以下、さらに好ましくは300℃以下とすることができる。この好ましい温度範囲ではスルフィド化剤(a)とジハロゲン化芳香族化合物(b)の実質の反応消費が速やかに進行して環式PASおよび線状PASが生成し、短時間で反応が進行する傾向にある。なおここで常圧とは、大気の標準状態近傍における圧力のことであり、大気の標準状態とは、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことである。また、還流温度とは、反応混合物の液体成分が沸騰と凝縮を繰り返している状態の温度である。本発明の実施形態では反応混合物を常圧下の還流温度を超えて加熱することが望ましいことを前述したが、反応混合物をこのような加熱状態にする方法としては、例えば反応混合物を、常圧を越える圧力下で反応させる方法や、反応混合物を密閉容器内で加熱する方法が例示できる。また、反応は一定温度で行なう1段階反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
工程1における反応時間は使用する原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。ここで、後述するように工程1に次いで工程2を行うにあたっては、工程1において反応混合物中のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物を十分に反応消費してから工程2を行うことが好ましいが、前述の好ましい反応時間とすることで、これら原料成分を十分に反応消費できる傾向にある。一方、反応時間に特に上限は無いが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
工程1における圧力に特に制限はなく、また圧力は、反応混合物を構成する原料、その組成、および反応温度等により変化するため一意的に規定することはできないが、好ましい圧力の下限としてゲージ圧で0.05MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上が例示できる。なお、本発明の実施形態の好ましい反応温度においては反応物の自圧による圧力上昇が発生するため、この様な反応温度における好ましい圧力の下限としてゲージ圧で0.25MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上を例示できる。また、好ましい圧力の上限としては、10MPa以下、より好ましくは5MPa以下が例示できる。この様な好ましい圧力範囲では、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物を接触させて反応させるのに要する時間が短くできる傾向にある。また、反応混合物を加熱する際の圧力を前記好ましい圧力範囲とするために、反応を開始する前や反応中など随意の段階で、好ましくは反応を開始する前に、後述する不活性ガスにより反応系内を加圧することも好ましい方法である。なお、ここでゲージ圧とは大気圧を基準とした相対圧力のことであり、絶対圧から大気圧を差し引いた圧力差と同意である。
また反応混合物には、前記必須成分以外に反応を著しく阻害しない第三成分や、反応を加速する効果を有する第三成分を加えることも可能である。反応を行う方法に特に制限は無いが、撹拌条件下で行なうことが好ましい。なお、ここで原料を仕込む際の温度に特に制限はなく、例えば室温近傍で原料を仕込んだ後に反応を行っても良いし、あらかじめ前述した反応に好ましい温度に温調した反応容器に原料を仕込んで反応を行うことも可能である。また反応を行っている反応系内に逐次的に原料を仕込んで連続的に反応を行うことも可能である。
また、スルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)、及び有機極性溶媒(c)、および線状ポリアリーレンスルフィド(d)としては、水を含むものを用いることも可能である。ただし、反応開始時点、すなわち反応混合物として仕込んだスルフィド化剤(a)およびジハロゲン化芳香族化合物(b)の実質的な反応消費が進行していない段階における水分量は、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり、0.2モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましく、0.6モル以上とすることがさらに好ましい。また、上記水分量は、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり、20.0モル以下とすることが好ましく、10.0モル以下とすることがより好ましく、8.0モル以下とすることがさらに好ましい。反応混合物を形成する線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、及びその他成分が水を含む場合で、反応混合物中の水分量が前記範囲を超える場合には、反応を開始する前や反応の途中において、反応系内の水分量を減じる操作を行い、水分量を前記範囲内にすることも可能であり、これにより短時間に効率よく反応が進行する傾向にある。また、反応混合物の水分量が前記好ましい範囲未満の場合は、前記水分量になるように水を添加することも好ましい方法である。
反応系内の水分量が前記好ましい範囲内(反応混合物中のイオウ成分1モル当たり0.2〜20.0モル)の場合、原料である線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族化合物の反応効率が高くなる傾向があり、短時間に効率よく環式ポリアリーレンスルフィドが得られる傾向にある。また、原料の反応効率が高いことは、本発明の実施形態の目的である環式ポリアリーレンスルフィドの生成反応と競争的に進行する副反応、すなわち不純物の生成反応を相対的に抑制する効果をもたらすと推測でき、好ましい水分量で反応を行なうことで不純物率が低く品質に優れる環式ポリアリーレンスルフィドが得られる傾向となる。
なおここで、ジハロゲン化芳香族化合物の反応消費率は、以下の式で算出した値である。ジハロゲン化芳香族化合物の残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
・ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
反応消費率(%)=[〔ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)−ジハロゲン化芳香族化合物の残存量(モル))/〔ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)−ジハロゲン化芳香族化合物の過剰量(モル)〕〕×100
・ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で不足に添加した場合
反応消費率(%)=[〔ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)−ジハロゲン化芳香族化合物の残存量(モル)〕/〔ジハロゲン化芳香族化合物の仕込み量(モル)〕]×100
(8)環式ポリアリーレンスルフィドの製造;工程2
工程2では工程1に次いで、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに反応を行うことで少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る。
工程2におけるジハロゲン化芳香族化合物の追加量は、工程1における反応混合物中のアリーレン単位と、新たに追加するジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位の総量が、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下の範囲となる追加量である。ここで、ジハロゲン化芳香族化合物の追加後の上記アリーレン単位の総量の下限は、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり1.05モルであり、1.06モルが好ましい。また、上限は1.50モルであり、1.30モルが好ましく、より好ましくは1.20モル、よりいっそう好ましくは1.15モル、更に好ましくは1.12モルである。上記アリーレン単位の総量をこのような範囲として工程2の反応を行うことで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上する傾向にあり、特に原料成分として線状ポリアリーレンスルフィドを用いた場合にはその傾向が顕著となる。さらに、従来技術で課題であった、後述する環式ポリアリーレンスルフィドの回収を行う際の、固液分離操作における分離性が著しく向上するのみならず、回収される環式ポリアリーレンスルフィドの品質が極めて高いといった優れた効果が得られる。これに対して、ジハロゲン化芳香族化合物の追加量が前記範囲を下回る場合には、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率の明らかな向上は認められず、環式ポリアリーレンスルフィドを回収するために固液分離を行う際の分離性が低下する。一方で前記範囲を超える場合には、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率も向上し、固液分離の際には高い分離性が得られる傾向にあるが、未反応のジハロゲン化芳香族化合物の残留量が増えることになり、このような残留物を回収するための設備が別途必要になり、操作が煩雑になる。また、回収に要するコストが増大するといったデメリットを生じることとなる。
上記のジハロゲン化芳香族化合物を追加する方法に特に制限はないが、例えば複数回にわたって断続的に行う方法、一定速度で連続的に行う方法など例示できる。なおここで、工程1の説明において詳述した様に、工程1で用いる反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位量を、イオウ成分に対してアリーレン単位が不足する条件に設定することは、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率を高めるとの観点で有効である。このような条件を採用した場合には、工程2でジハロゲン化芳香族化合物を追加する際に、追加を複数回にわたって断続的に行う方法、及び/または、一定速度で連続的に行う方法で行なうことが望ましい。特に、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が前記の好ましい範囲内で下限に近い場合ほど、工程2におけるジハロゲン化芳香族化合物の追加を複数回にわたって断続的に行う方法、及び/または、一定速度で連続的に行う方法で行なうことは、得られる環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる不純物成分を低減し、高純度な環式ポリアリーレンスルフィドを得るために有効である。さらには、このような添加方法を採用することで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率も更にいっそう高まる傾向にある。
なおここで、工程1をイオウ成分に対するアリーレン単位の量が不足する条件で行なった後に、ジハロゲン化芳香族化合物の追加を複数回にわたって断続的に行う場合には、まず一旦、反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の量が、1.00モル近傍になるようにジハロゲン化芳香族化合物を追加した後に、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位の量が工程2の所定の値になるようにさらに追加を行う方法が好ましい。このような方法で断続的な追加を行う場合には、特に不純物生成量を少なくしつつ、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率を向上することが可能になる。
反応系内にジハロゲン化芳香族化合物を添加する具体的な手法としては、所定量のジハロゲン化芳香族化合物を、耐圧添加ポットを介して反応系に導入する方法、あるいは、溶融状態のジハロゲン化芳香族化合物または有機極性溶媒を用いて溶液としたジハロゲン化芳香族化合物を、圧力ポンプにより反応系内に圧入する方法などが例示できる。
ここでジハロゲン化芳香族化合物の追加は、反応混合物中のスルフィド化剤(b)が十分に反応消費した後に実施することが望ましい。具体的には、ジハロゲン化芳香族化合物の追加は、下限としてスルフィド化剤の50%以上が反応消費するまで反応させた後に行っており、60%以上が反応消費するまで反応させた後に行うことが好ましく、70%以上が反応消費するまで反応させた後に行うことがより好ましく、80%以上が反応消費するまで反応させた後に行うことがさらに好ましく、90%以上が反応消費するまで反応させた後に行うことが殊更好ましい。このようにスルフィド化剤の反応消費を上記範囲まで進めた後にジハロゲン化芳香族化合物の添加を行うことは、不純物成分の生成を抑制し、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの品質、純度を向上させるために極めて重要である。スルフィド化剤の反応消費の程度が50%未満であると、反応後に得られる反応生成物における不純物成分量が増大する。、このような不純物成分量の増大は、環式ポリアリーレンスルフィドを回収単離する場合においても、単離後の環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる不純物含有量の増大に直結するため、避ける必要がある。
ここで本発明の実施形態の方法において、スルフィド化剤の反応消費率は、例えば、電気伝導度検出器や電気化学検出器を具備したイオンクロマトグラフィー手法を用いて、反応混合物中に残存するスルフィド化剤の量を定量することにより算出可能である。この場合は、スルフィド化剤の反応消費量(仕込んだスルフィド化剤の量から反応混合物中のスルフィド化剤の残存量を減じた値)の、仕込んだスルフィド化剤の量に対する比として、スルフィド化剤の反応消費率を算出することができる。イオンクロマトグラフィー手法を用いた具体的評価方法としては、試料中に過酸化水素水を添加して、試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に、電気伝導度検出器を用いた分析により、硫化物イオンの酸化によって生成する硫酸イオン量を算出する方法が例示できる。その硫酸イオン量からスルフィド化剤の残存量を定量し、上記スルフィド化剤の反応消費率を算出することが可能である。
工程2においてはジハロゲン化芳香族化合物を追加した後にさらに反応を行うが、この反応における温度や圧力や水分量など諸条件は前項(7)に記載した工程1における好ましい条件を採用することが可能である。
工程2における反応温度は、具体的には常圧下における反応混合物の還流温度を越える温度が望ましい。また、工程2では工程1で採用した温度よりも高い温度を採用することも可能であり、具体的には180℃以上とすることができ、より好ましくは220℃以上であり、さらに好ましくは225℃以上であり、よりいっそう好ましくは250℃以上であり、殊更好ましくは260℃以上とすることができる。また、工程2の温度は、320℃以下とすることができ、より好ましくは310℃以下であり、さらに好ましくは300℃以下とすることができる。この好ましい温度範囲では短時間で反応が進行する傾向にあるのみならず、工程1よりも高い温度を採用した場合には、不純物成分量も低減される傾向にある。
工程2における反応時間は使用する原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、すでに工程1において仕込んだスルフィド化剤の大部分が消費されているため、工程1における反応時間よりも短い時間でも十分な反応を進行させることが可能である。好ましい反応時間の下限としては0.1時間以上が例示でき、0.25時間以上がより好ましい。一方好ましい反応時間の上限としては、20時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは5時間以内、より好ましくは3時間以内も採用できる。
なお、工程1および工程2の反応においては、バッチ式および連続方法などの公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下が好ましい。
(9)反応生成物の固液分離;工程3
本発明の実施形態においては、前記した工程1と工程2を行うことで少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る。ここで通常は、工程1及び工程2で用いた有機極性溶媒も反応生成物に含まれる。
本発明の実施形態では、上記工程1および工程2に次いで工程3として、上記で得られた反応生成物を、有機極性溶媒の常圧における沸点以下の温度領域で固液分離することで、環式ポリアリーレンスルフィドと有機極性溶媒を含む濾液を得る工程を実施することが好ましい。反応生成物を用いてこの工程3を行なうことで、反応生成物における環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを簡便に分離することが可能である。
ここで反応生成物の固液分離を行う温度は、有機極性溶媒の常圧における沸点以下が望ましい。具体的な温度については有機溶極性媒の種類にもよるが、10℃以上とすることができ、15℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。また、200℃以下とすることができ、150℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。上記範囲では、環式ポリアリーレンスルフィドは有機極性溶媒に対する溶解性が高く、一方で反応生成物中に含まれる環式ポリアリーレンスルフィド以外の成分、中でも必然的に含まれる線状ポリアリーレンスルフィドは有機極性溶媒に溶けにくくなる傾向にあるため、このような温度領域で固液分離を行うことは、精度良く品質の高い環式ポリアリーレンスルフィドを濾液成分として得るために有効である。
また、固液分離を行なう方法は特に限定されず、フィルターを用いる濾過である加圧濾過や減圧濾過、固形分と溶液の比重差による分離である遠心分離や沈降分離、さらにこれらを組み合わせた方法などを採用可能である。より簡易な方法としては、フィルターを用いる加圧濾過や減圧濾過方式が好ましく採用可能である。濾過操作に用いるフィルターは、固液分離を行なう条件において安定であるものであれば良く、例えばワイヤーメッシュフィルター、焼結板、濾布、濾紙など一般に用いられる濾材を好適に用いることができる。
また、このフィルターの孔径は、固液分離操作に供するスラリーの粘度、圧力、温度、および反応生成物中の固形成分の粒子径などに依存して広範囲に調整しうる。特に、この固液分離操作において反応生成物から固形分として回収される線状ポリアリーレンスルフィドの粒子径、すなわち固液分離の対象となる反応生成物中に存在する固形分の粒子径に応じてメッシュ径または細孔径などのフィルター孔径を選定することは有効である。なお、固液分離の対象となる反応生成物中の固形分の平均粒子径(メディアン径)は、反応生成物の組成、温度、および濃度などにより広範囲に変化しうるが、本発明者らの知りうる限り、その平均粒子径は1〜200μmである傾向がある。従って、フィルターの好ましい平均孔径としては、0.1μm以上が例示でき、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、100μm以下が例示でき、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。上記範囲の平均孔径を有する濾材を用いることで、濾材を透過する線状ポリアリーレンスルフィドが減少する傾向にあり、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドが得られやすくなる傾向にある。
また、固液分離を行う際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の時間や温度などの条件によって環式ポリアリーレンスルフィドや有機極性溶剤、線状PASが酸化劣化するような場合は、非酸化性雰囲気下で行なうことが好ましい。なお、非酸化性雰囲気とは、気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも特に、経済性及び取り扱いの容易さの面からは、窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
固液分離に用いる濾過器の種別としては、ふるいや振動スクリーン、遠心分離機や沈降分離器、加圧濾過機や吸引濾過器などを例示できるが、これらに限定されるものではない。なお、前記の様に固液分離の好ましい雰囲気である非酸化性雰囲気下で実施するとの観点においては、固液分離操作時に非酸化性雰囲気を維持しやすい機構を有する濾過器を選択することが好ましい。たとえば、濾過器内を不活性ガスにより置換後に密閉した後に濾過操作を行うことが可能な濾過器や、不活性ガスを流しながら濾過操作を実施できる機構を具備する濾過器を用いることが例示できる。前記で例示した濾過器の中でも、遠心分離器、沈降分離器、および加圧濾過器は、このような機能を容易に付加可能であることから好ましい濾過器であるといえ、中でも機構が簡易であり経済性に優れるとの観点から加圧濾過器がより好ましい。
固液分離を行なう際の圧力に制限はないが、より短時間で固液分離を行うために、先に例示した加圧濾過器を用いて加圧条件下で固液分離を行うことも可能であり、具体的にはゲージ圧で2.0MPa以下を好ましい圧力範囲として例示でき、1.0MPa以下がより好ましく、0.8MPa以下が更に好ましく、0.5MPa以下がよりいっそう好ましい範囲として例示できる。一般に圧力が増大するに伴い、固液分離を行なう機器の耐圧性を高くする必要が生じ、そのような機器はそれを構成する各部位に高度なシール性を有するものが必要となり必然的に機器費が増大することになる。上記好ましい圧力範囲では一般に入手可能な固液分離器を使用できる。
なお本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法における特徴である工程1及び工程2を行うことで、得られる反応生成物を固液分離した際に極めて効率の良い固液分離が可能であり、固液分離性に優れた効果が得られることも、本発明の実施形態の大きな特長である。ここで固液分離性とは、一定量の反応生成物を固液分離した際に固液分離に要する時間で評価することが可能である。その具体的評価方法としては、たとえば密閉可能な加圧濾過装置に、所定の規格(孔径、材質)であって一定面積の濾材(フィルター)を設置し、ここに所定量の反応生成物を仕込み、一定条件(温度、圧力など)において、所定量の濾液を得るために要した時間を測定することで、重量/(面積・時間)を単位とする濾過速度で比較評価することが可能である。より具体的には、平均孔径10μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて、100℃、0.1MPaの条件下で反応生成物を濾過した際に、所定量の濾液を得るために要する時間を測定することで評価が可能である。従来の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法で得られる反応生成物は、このような固液分離性評価において、極めて濾過性・濾過速度面で劣るという課題があり、これは従来技術が本発明の実施形態での必須工程である工程1及び工程2を採用していないからである。ここで本発明の実施形態では濾過速度として、50kg/(m2・hr)以上といった極めて高い値が得られる傾向にあり、環式ポリアリーレンスルフィド製造の工程1及び2において前述してきた各種条件において好ましい数値範囲を選択することで、100kg/(m2・hr)以上の極めて高い値や、150kg/(m2・hr)に到達する著しく高い濾過速度を達成することも可能である。
また、反応生成物を固液分離するのに先立って、反応生成物に含まれる有機極性溶媒の一部を留去して反応生成物中の有機極性溶媒量を減じる操作を付加的に行うことも可能である。これにより固液分離操作の対象となる反応生成物量が減少するため、固液分離操作に要する時間が短縮できる傾向にある。
有機極性溶媒を留去する方法としては、反応生成物から有機極性溶媒を分離し反応生成物に含有される有機極性溶媒量を低減できれば、いずれの方法でも特に問題はない。好ましい方法としては、減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する方法、フラッシュ移送により溶媒を除去する方法などが例示でき、なかでも減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する方法が好ましい。また減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する際、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスをキャリアーガスとして用いても良い。
有機極性溶媒の留去を行う温度については、有機極性溶媒の種類や、反応生成物の組成によって多様化するため、一意的には決めることはできないが、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。また、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。
ここでの固液分離によれば、反応生成物に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの大部分を濾液成分として分離可能であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上を濾液成分として回収しうる。また、固液分離によって固形分として分離される線状ポリアリーレンスルフィドに環式ポリアリーレンスルフィドの一部が残留する場合には、固形分に対してフレッシュな有機極性溶媒を用いて洗浄することで、環式ポリアリーレンスルフィドの固形分への残留量を低減することも可能である。ここで用いる溶剤は環式ポリアリーレンスルフィドが溶解しうるものであれば良く、前述した工程1や工程2で用いた有機極性溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。
(10)環式ポリアリーレンスルフィドの分離
本発明の実施形態では、前記固液分離により得られた濾液成分から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することで、環式ポリアリーレンスルフィドを回収することが可能である。回収方法に特に制限は無く、例えば必要に応じて濾液中の有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、環式ポリアリーレンスルフィドに対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和する特性を有する溶剤と濾液とを、必要に応じて加熱下で接触させて、環式ポリアリーレンスルフィドを固体として回収する方法が例示できる。この様な特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、濾液の中の有機極性溶媒や濾液の中に含まれる副生物の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびヘキサノールに代表されるアルコール類や、アセトンに代表されるケトン類や、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示できる。入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。また、上記回収操作においては、濾液に対して水を加えることで濾液の中に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの50重量%以上を固形分として分離して回収する事が好ましい。
ここで、濾液における環式ポリアリーレンスルフィドの重量分率は一般に含有率が高いほど回収操作後に得られる環式ポリアリーレンスルフィドの収量が増大し、効率よく環式ポリアリーレンスルフィドを回収できる。この観点から、濾液における環式ポリアリーレンスルフィドの含有率は0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、2重量%以上がよりいっそう好ましく、5重量%以上がことさら好ましい。一方、濾液における環式ポリアリーレンスルフィドの含有率の上限は特に無いが、含有率が高すぎると不溶成分が生じる傾向となり、回収操作に不都合を生じることもある。この回収操作上の不都合としてはたとえば、好ましい操作である水を加える操作を行う前の濾液の性状(固形分を含むスラリー状の場合もある)が不均一になり、局所的な組成が異なり回収物の品質が低下するなどである。またこのような不都合が生じる傾向は用いる有機極性溶媒の特性や反応混合物調製時の条件などに依存するため、濾液における環式ポリアリーレンスルフィドの含有率の上限を定めることはできないが、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下の含有率が望ましい。
また、前記したごとき回収操作における不都合を回避して濾液における環式ポリアリーレンスルフィドの含有率をより高くするために、濾液を加熱することも可能である。この加熱温度は用いる有機極性溶媒の特性に応じて異なるため一意的に決めることはできないが、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。一方で、加熱温度の上限温度としては、使用する有機極性溶媒の常圧における沸点以下が好ましい。このような温度範囲内では、濾液の中の環式ポリアリーレンスルフィド含有量を高く保ちつつ安定した回収操作を行える傾向にあり好ましい。なお、この混合物を調製するにあたり、撹拌や震蕩等の操作を施すことも可能であり、より均一な濾液の状態を保つとの観点でも望ましい操作といえる。
本回収法においては、濾液に水を加えることで、有機極性溶媒に溶解している環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として析出させて回収することが好ましい。ここで濾液に水を加える方法に特に制限は無いが、水を加えたことで粗大な固形分が生成するような添加方法は避けるべきであり、好ましくは濾液を撹拌しながら水を滴下する方法が好ましい。水を加える温度に制限は無いが、温度が低いほど水を加えた際に粗大な固形分が生成する傾向が高まるため、このような操作上の不都合を回避し混合物の均一性を保つとの観点で50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。一方で水を加える温度の上限温度としては、使用する有機極性溶媒の常圧における沸点以下が好ましい。このような好ましい温度範囲で水を加える操作を行うことで、操作の観点及び設備の観点でより簡易な方法で回収操作を実施できる傾向にある。
また、上記で例示した環式PASを含む濾液に水を加えて環式PASを回収する方法は、環式PASを含む濾液から環式PASを回収方法として従来採用されてきた再沈法と比べて少量の溶媒の使用でも効率よく環式PASを回収することが可能であるため、環式PASと有機溶媒を含む濾液に加える水の重量を、大幅に削減することが可能である。具体的には、濾液に加える水の重量を、水を加えた後の有機極性溶媒と水の総量を基準とした水分率で50重量%以下にすることも可能であり、より好ましい条件では40重量%以下、さらに好ましい条件では35重量%以下の条件を設定することも可能となる。一方で、加える水の重量の下限に特に制限はないが、より効率よく環式PASを固形分として回収するためには、同じく5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。本発明の実施形態の好ましい方法においては、濾液の中に含まれる環式PASの50重量%以上を固形分として回収することが可能であるが、前記のような好ましい水の使用量の範囲では環式PASの80重量%以上を固形分として回収できる傾向にあり、より好ましくは90重量%以上を、さらに好ましくは95%以上を、よりいっそう好ましくは98重量%以上を回収することも可能である。
なおここで、濾液の中の水の量とは、固液分離を行う前の反応混合物中に含まれる水と、濾液に添加する水の量の総量のことであり、濾液に添加する水の量は反応混合物に含まれる水の量を考慮して決定する必要がある。
上記までの操作の実施により得られた環式PASと有機極性溶媒及び水を含む濾液混合物中には、濾液の中に含まれていた環式PASのうち50重量%以上が固形分として存在する傾向となる。従って公知の固液分離法を用いて環式PASを固体として回収することができ、固液分離法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。ここで環式PASの回収率をより高くするためには、濾液混合物を50℃未満の状態にしてから固液分離を行うことが好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下で行うことが好ましい。なお、このような好ましい温度としてから環式PASの回収を行うことは、環式PASの回収率を高める効果のみならず、より簡易な設備で環式PASの回収を行えるようになるとの観点でも好ましい条件といえる。なお、濾液混合物の温度の下限は特に無いが、温度が低下することで濾液混合物の粘度が高くなりすぎるような条件や、固化するような条件は避けることが望ましく、一般的には常温近傍とすることが最も望ましい。
このような固液分離を行うことで濾液混合物中に存在する環式PASの50重量%以上を固形分として単離・回収することができる傾向にある。このようにして分離した固形状の環式PASが濾液混合物中の液成分(母液)を含む場合には、固形状の環式PASを各種溶剤を用いて洗浄することで、母液を低減することも可能である。ここで固液状の環式PASの洗浄に用いる各種溶剤としては環式PASに対する溶解性が低い溶剤が望ましく、たとえば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびヘキサノールに代表されるアルコール類や、アセトンに代表されるケトン類や、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示できる。入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。このような溶剤を用いた洗浄を付加的に行うことで、固形状の環式PASが含有する母液量を低減できるのみならず、環式PASが含む溶剤に可溶な不純物を低減できるという効果もある。この洗浄方法としては、固形分ケークが堆積した分離フィルター上に溶剤を加えて固液分離する方法や、固形分ケークに溶剤を加えて撹拌することでスラリー化した後に再度固液分離する方法などが例示できる。また、前述の母液を含有、もしくは洗浄操作に用いた溶剤成分を含有する等、液成分を含む湿潤状態の環式PASに対して、たとえば一般的な乾燥処理を施してもよい。これにより、液成分を除去して、乾燥状態の環式PASを得ることも可能である。
なお環式PASの回収操作を行う際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。これにより環式PASを回収する際の環式PASの架橋反応や分解反応、酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できるのみならず、回収操作に用いる有機極性溶媒の酸化劣化等、好ましくない副反応を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは、回収操作の対象である各種成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
(11)本発明の実施形態で回収される環式PASの特性
かくして得られた環式PASは、通常、環式PASを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の実施形態の製造方法により得られる環式PASは、前記式(Q)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(Q)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜30,より好ましくは4〜25である。mがこの範囲の場合、後述するように環式PASを各種樹脂に配合して用いる際に、より低い温度でPASを溶融解させ得る傾向にあり、また、後で詳述するように環式PASを含むプレポリマーを高重合度体へ転化させる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環式であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に開環反応が起こりやすいためと推測している。また、mが単一の環式PASは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明の実施形態では環式PASは異なるmを有する混合物が得られやすく、これにより環式PASの融解温度が低いという特徴がある。このことは、環式PASを溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。
また、本発明の実施形態による環式PASは、アリーレンスルフィド単位からなる環式PASとは構造の異なる、低分子量の化合物(以下低分子量PASと称する場合もある)の含有量が極めて少ないという優れた特性を有する。このような低分子量の化合物は、その特性が、環式PASや十分な分子量を有する線状PASとは異なり、たとえば耐熱性に劣るため成形加工時など加熱した際にアウトガスの増大要因となる。また、低分子量の化合物は、環式PASを後述する高分子量体のプレポリマーとして活用する際に、高分子量化を阻害する成分として作用するなど悪影響を生じる。本発明の実施形態の環式PASの製造方法は、工程1と工程2を備えることで、このような低分子PASが著しく低減された高品質なPASを得ることが可能であるという優れた特長も有する。
ここで環式PASに不純物として含有される低分子量PAS含有量は、UV検出器とODSカラムを具備した高速液体クロマトグラフィーにより成分分割したピーク面積から算出することが可能である。このような手法により、低分子量PAS成分を含む環式PASの単離固体における低分子量PAS成分の重量分率を算出することができる。また、高速液体クロマトグラフィー分析で検出されたピーク面積を基準として、検出ピーク総面積を母数とした際の低分子量PASに帰属されるピーク(環式PASに帰属されるピーク以外のピークに該当)の総面積の割合、すなわちピーク面積比として低分子量PAS成分の含有率を算出することも可能である。
本発明の実施形態においては、環式PASに含まれる低分子量PAS含有量が極めて少ない高品質な環式PASが得られることは前述したとおりであるが、本発明の実施形態の好ましい製造法によれば、上記評価手法における低分子量PASの重量分率として7重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下の極めて高品質な環式PASを得ることが可能である。また、低分子化合物のピーク面積比で評価する場合、環式ポリフェニレンスルフィド以外に由来するピークの割合を不純物率と定義すると、本発明の実施形態の好ましい製法によれば、不純物率が9重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは4重量%以下の環式PASを得ることが可能である。
(12)本発明の実施形態で回収される環式PASを配合した樹脂組成物
本発明の実施形態で得られた環式PASを各種樹脂に配合して用いることも可能であり、このような環式PASを配合した樹脂組成物は、溶融加工時にすぐれた流動性を発現する傾向が強く、また滞留安定性にも優れる傾向にある。この様な特性、特に流動性の向上は、樹脂組成物を溶融加工する際の加熱温度が低くても溶融加工性に優れるという特徴を発現するため、射出成形品や繊維、フィルム等の押出成形品に加工する際の溶融加工性の向上をもたらす点で大きなメリットとなる。環式PASを配合した際にこの様な特性の向上が発現する理由は定かではないが、環式PASの構造の特異性、すなわち環状構造であるために通常の線状化合物と比較してコンパクトな構造をとりやすいため、マトリックスである各種樹脂との絡み合いが少なくなりやすいこと、各種樹脂に対して可塑剤として作用すること、またマトリックス樹脂どうしの絡み合い抑制にも奏効するためと推測している。
環式PASを各種樹脂に配合する際の配合量に特に制限は無いが、各種樹脂100重量部に対して本発明の実施形態の環式PASを、0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上配合することで、顕著な特性の向上を得ることが可能である。また、50重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下配合することで、顕著な特性の向上を得ることが可能である。
また、上記樹脂組成物には必要に応じて更に繊維状および/または非繊維状の充填材を配合することも可能である。その配合量は、前記各種樹脂100重量部に対して0.5重量部以上とすることができ、好ましくは1重量部以上である。また、400重量部以下とすることができ、好ましくは300重量部以下であり、より好ましくは200重量部以下であり、更に好ましくは100重量部以下である。充填材の配合量をこのような範囲とすることで、樹脂組成物において優れた流動性を維持しつつ機械的強度が向上できる傾向にある。充填剤の種類としては、繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填剤も使用することができる。これら充填剤の好ましい具体例としてはガラス繊維、タルク、ワラストナイト、モンモリロナイト、および合成雲母などの層状珪酸塩が例示でき、特に好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明の実施形態に使用する上記の充填剤は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
また、樹脂組成物の熱安定性を保持するために、フェノール系およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の耐熱剤を含有せしめることも可能である。かかる耐熱剤の配合量は、耐熱性改良効果の点から、前記各種樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましい。また、成形時に発生するガス成分の観点からは、前記各種樹脂100重量部に対して5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系化合物を併用して使用することは、特に耐熱性、熱安定性、流動性保持効果が大きく好ましい。
さらに、前記樹脂組成物には以下のような化合物、すなわち、有機チタネート系化合物および有機ボラン系化合物などのカップリング剤や、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、および有機リン系化合物などの可塑剤や、タルク、カオリン、有機リン化合物、およびポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤や、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、およびステアリン酸アルミ等の金属石鹸や、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重宿合物、およびシリコーン系化合物などの離型剤や、次亜リン酸塩などの着色防止剤や、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、および発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物はいずれも前記各種樹脂100重量部に対して20重量部未満、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは1重量部以下の添加でその効果が有効に発現する傾向にある。
上記のごとき環式PASを配合してなる樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば環式PAS、各種樹脂および必要に応じてその他の充填材や各種添加剤を予めブレンドした後、各種樹脂および環式PASの融点以上において一軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常公知の溶融混合機で溶融混練する方法や、樹脂組成物の材料を溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられる。ここで環式PASとして環式PASの単体、すなわち前記式(Q)のmが単一のものを用いる場合や、異なるmの混合物であっても結晶性が高く融点が高いものを用いる場合は、環式PASを環式PASが溶解する溶媒に予め溶解して溶融混合機に供給し、溶融混練の際に溶媒を除去する方法、環式PASをその融点以上で一旦溶解した後に急冷することで結晶化を抑え、非晶状としたものを溶融混合機に供給する方法、あるいはプリメルターを環式PASの融点以上に設定し、プリメルター内で環式PASのみを溶融させ、融液として溶融混合機に供給する方法などを採用することができる。
ここで環式PASを配合する各種樹脂に特に制限は無く、結晶性樹脂にも非晶性樹脂にも適用可能であり、また、熱可塑性樹脂にも熱硬化性樹脂にも適用が可能である。
ここで結晶性樹脂の具体例としては例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびシンジオタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリイミド樹脂およびこれらの共重合体などが挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。中でも、耐熱性、成形性、流動性および機械特性の点で、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエステル樹脂が好ましい。また、得られる成形品の透明性の面からはポリエステル樹脂が好ましい。各種樹脂として結晶性樹脂を用いる場合は、上述した流動性の向上の他に結晶化特性も向上する傾向がある。また、各種樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることも特に好ましく、この場合、流動性の向上と共に、結晶性の向上、さらにはこれらが奏効した効果として射出成形時のバリ発生が顕著に抑制されるという特徴が発現しやすい傾向にある。
非晶性樹脂としては非晶性を有する溶融成形可能な樹脂であれば、特に限定されないが、耐熱性の点で、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。ガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、成形性などの点から300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、本発明の実施形態において、非晶性樹脂のガラス転移温度は、示差熱量測定において非晶性樹脂を30℃〜予測されるガラス転移温度以上まで、20℃/分の昇温条件で昇温し1分間保持した後、20℃/分の降温条件で0℃まで一旦冷却し、1分間保持した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観察されるガラス転移温度(Tg)を指す。このような非結晶性樹脂の具体例としては、非晶性ナイロン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート共重合、ポリスルホン樹脂、およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種が例示でき、1種または2種以上併用してもよい。これら非晶性樹脂の中でも、特に高い透明性を有するポリカーボネート(PC)樹脂、ABS樹脂の中でも透明ABS樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート共重合、およびポリエーテルスルホン樹脂を好ましく使用することができる。各種樹脂として透明性に優れる非晶性樹脂を用いる場合には、前述の溶融加工時の流動性向上に加えて、高い透明性を維持させることができるという特徴を発現できる。ここで、非晶性樹脂組成物に高い透明性を発現させたい場合には、環式PASとして前記式(Q)のmが異なる環式PASを用いることが好ましい。なお、環式PASとして環式PASの単体、すなわち前記式(Q)のmが単一のものを用いる場合、この様な環式PASは融点が高い傾向にあるため、非晶性樹脂と溶融混練する際に十分に溶融分散せずに樹脂中に凝集物となったり透明性が低下する傾向にあるが、前述したように前記式(Q)のmが異なる環式PASはその融解温度が低い傾向にあり、このことは溶融混練時の均一性の向上に効果的である。ここで、本発明の実施形態の製造方法により得られる環式PASは、前記式(Q)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(Q)が得られやすいという特徴を有するため、高い透明性を有する非晶性樹脂組成物を得たい場合に特に有利である。
上記で得られる、各種樹脂に環式PASを配合した樹脂組成物は通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などとして利用できる。またこれにより得られた各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。また、上記樹脂組成物およびそれからなる成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して得られる樹脂組成物は、上記樹脂組成物と同じように使用でき、成形品とすることも可能である。
(13)環式PASの高重合度体への転化
本発明の実施形態によって回収される環式PASは前記(11)項に述べたごとき優れた特性を有するので、PASポリマーすなわち高重合度体を得る際のプレポリマーとして好適に用いることが可能である。なおここでプレポリマーとしては本発明の実施形態の環式PASの回収方法で得られる環式PAS単独でも良いし、所定量の他の成分を含むものでも差し障り無い。ただし、環式PAS以外の成分を含む場合は、線状PASや分岐構造を有するPASなど、PAS成分であることが特に好ましい。少なくとも本発明の実施形態の環式PASを含み、以下に例示する方法により高重合度体へ変換可能なものがポリアリーレンスルフィドプレポリマーであり、以下PASプレポリマーと称する場合もある。
環式PASの高重合度体への転化は環式PASを原料にして高分子量体が生成する条件下で行えばよく、例えば本発明の実施形態の環式PAS製造方法による環式PASを含む、PASプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる方法が好ましい方法として例示できる。この加熱の温度は前記PASプレポリマーが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度がPASプレポリマーの溶融解温度未満では分子量の高いPASを得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、PASプレポリマーが溶融解する温度は、PASプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばPASプレポリマーを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。なお、加熱温度が高すぎるとPASプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及び加熱により生成したPASとPASプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合がある。そのため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。このような好ましくない副反応の顕在化を抑制しやすい加熱温度としては、180℃以上が例示でき、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上である。また、上記加熱温度としては、400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下であり、より好ましくは360℃以下である。一方、ある程度の副反応が起こっても差し障り無い場合には、250℃以上、好ましくは280℃以上の温度範囲も選択可能である。また、450℃以下、好ましくは420℃以下の温度範囲も選択可能である。この場合には、極短時間で高分子量体への転化を行えるという利点がある。
前記加熱を行う時間は、使用するPASプレポリマーにおける環式PASの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては、0.05時間以上が例示でき、0.1時間以上が好ましい。また、100時間以下が例示でき、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。加熱時間が0.05時間未満では、PASプレポリマーのPASへの転化が不十分になりやすい。また、加熱時間が100時間を超えると、得られるPASの特性に対して、好ましくない副反応による悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
また、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化に際しては、転化を促進する各種触媒成分を使用することも可能である。このような触媒成分としてはイオン性化合物やラジカル発生能を有する化合物が例示できる。イオン性化合物としては、たとえばチオフェノールのナトリウム塩やリチウム塩等、および硫黄のアルカリ金属塩が例示できる。また、ラジカル発生能を有する化合物としては、たとえば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物を例示でき、より具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が例示できる。なお、各種触媒成分を使用する場合、触媒成分は通常はPASに取り込まれ、得られるPASは触媒成分を含有するものになることが多い。特に触媒成分としてアルカリ金属及び/または他の金属成分を含有するイオン性の化合物を用いた場合、これに含まれる金属成分の大部分は得られるPAS中に残存する傾向が強い。また、各種触媒成分を使用して得られたPASは、PASを加熱した際の重量減少が増大する傾向にある。従って、より純度の高いPASを所望する場合および/または加熱した際の重量減少の少ないPASを所望する場合には、触媒成分の使用をできるだけ少なくする、好ましくは使用しないことが望まれる。従って、各種触媒成分を使用してPASプレポリマーを高重合度体へ転化する際には、PASプレポリマーと触媒成分を含む反応系内のアルカリ金属量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下であって、なお且つ、反応系内の全イオウ原子の重量に対するジスルフィド基を構成するイオウ原子の重量が1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満になるように触媒成分の添加量を調整して行うことが好ましい。
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒や、ジメチルスルホキシドおよびジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびアセトフェノンなどのケトン系溶媒や、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、およびテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒や、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、およびクロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、およびポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒や、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
前記、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行っても良いし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりPASプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及び加熱により生成したPASとPASプレポリマー間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは、PAS成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。この中でも特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは、反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にある。一方、減圧条件が好ましい下限未満では、反応温度によってはPASプレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポリアリーレンスルフィドが揮散しやすくなる傾向にある。
前記したPASプレポリマーの高重合度体への転化は、繊維状物質の共存下で行うことも可能である。ここで繊維状物質とは、細い糸状の物質のことであって、天然繊維のごとく細長く引き延ばされた構造である任意の物質が好ましい。繊維状物質存在下でPASプレポリマーの高重合度体への転化を行うことで、PASと繊維状物質からなる複合材料構造体を容易に作成する事ができる。このような構造体は、繊維状物質によって補強されるため、PAS単独の場合に比べて、たとえば機械物性に優れる傾向にある。
ここで、各種繊維状物質の中でも長繊維からなる強化繊維を用いることが好ましく、これによりPASを高度に強化する事が可能になる。一般に樹脂と繊維状物質からなる複合材料構造体を作製する際には、樹脂が溶融した際の粘度が高いことに起因して、樹脂と繊維状物質のぬれが悪くなる傾向にあり、均一な複合材料ができなかったり、期待通りの機械物性が発現しないことが多い。ここでぬれとは、溶融樹脂のごとき流体物質と、繊維状化合物のごとき固体基質との間に実質的に空気または他のガスが捕捉されないようにこの流体物質と固体基質との物理的状態の良好且つ維持された接触があることを意味する。ここで流体物質の粘度が低い方が繊維状物質とのぬれは良好になる傾向にある。本発明の実施形態のPASプレポリマーは、融解した際の粘度が、一般的な熱可塑性樹脂、たとえば従来知られる方法により製造されたPASと比べて著しく低いため、繊維状物質とのぬれが良好になりやすい。PASプレポリマーと繊維状物質が良好なぬれを形成した後、本発明の実施形態のPASの製造方法によればPASプレポリマーが高重合度体に転化するので、繊維状物質と高重合度体(ポリアリーレンスルフィド)が良好なぬれを形成した複合材料構造体を容易に得ることができる。
繊維状物質としては長繊維からなる強化繊維が好ましいことは前述したとおりであり、本発明の実施形態に用いられる強化繊維に特に制限はないが、好適に用いられる強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な繊維が挙げられる。例えば、その強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、およびボロン繊維が挙げられる。この内、比強度、比弾性率が良好で、軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が最も良好なものとして例示できる。炭素繊維や黒鉛繊維としては、用途に応じて、あらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、引張強度450Kgf/mm2 、引張伸度1.6%以上の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。長繊維状の強化繊維を用いる場合、その長さは、5cm以上であることが好ましい。この長さの範囲では、強化繊維の強度を複合材料として十分に発現させることが容易となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は、他の強化繊維を混合して用いてもかまわない。また、強化繊維は、その形状や配列を限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組み紐状であっても使用可能である。また、特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明の実施形態には適している。
また、前記したPASプレポリマーの高重合度体への転化は、充填剤の存在下で行うことも可能である。充填剤としては、たとえば非繊維状ガラス、非繊維状炭素や、無機充填剤、たとえば炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどを例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。最初に、実施例および比較例の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法で得られる試料の評価方法について説明する。
<環式ポリフェニレンスルフィドの分析>
環式ポリフェニレンスルフィド化合物の定性定量分析は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて実施した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学社製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
なお、HPLCで成分分割した各成分の構造決定は、液体クロマトグラフ質量分析(LC―MS)による分析と、分取液体クロマトグラフ(分取LC)での分取物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)による分析、および赤外分光測定(IR測定)により行った。これにより、繰り返し単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが、本条件のHPLC測定により定性定量できることを確認した。
上記HPLC分析において検出されたピークを、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークとそれ以外に由来するピークに分類した。検出された全てのピークの検出面積の積算値に対する環式ポリフェニレンスルフィド以外に由来するピークの検出面積の積算値の割合(面積比)を、不純物率と定義し、環式ポリフェニレンスルフィドの不純物量を比較した。
<ジハロゲン化芳香族化合物の分析>
反応混合物や反応生成物及び反応途中の中間生成物中のジハロゲン化芳香族化合物の定量(p−ジクロロベンゼンの定量)は、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:島津製作所製 GC−2010
カラム:J&W社製 DB−5 0.32mm×30m(0.25μm)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
<スルフィド化剤の分析>
反応混合物や反応生成物及び反応途中の中間生成物中のスルフィド化剤の定量(水硫化ナトリウムの定量)は、イオンクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:島津製作所製 HIC−20Asuper
カラム:島津製作所製 Shim−packIC−SA2(250mm×4.6mmID)
検出器:電気伝導度検出器(サプレッサ)
溶離液:4.0mM炭酸水素ナトリウム/1.0mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0mL/分
注入量:50マイクロリットル
カラム温度:30℃
試料中に過酸化水素水を添加して、試料中に含まれる硫化物イオンを硫酸イオンへと酸化させ、その後に上記分析により硫酸イオンを定量した。得られた硫酸イオンの定量値から、過酸化水素水を添加しない無処理の試料を分析した際の硫酸イオン定量値を差し引く方法により、試料中の硫化物イオン量を算出した。ここで算出した硫化物イオン量は、資料中に含まれる未反応のスルフィド化剤量に対応すると考えられる。そのため、上記算出した硫化物イオン量から未反応のスルフィド化剤量を算出し、得られた未反応のスルフィド化剤量と、仕込んだスルフィド化剤量との割合から、試料におけるスルフィド化剤の反応消費率を算出した。
<反応生成物の固液分離性評価>
反応生成物の固液分離性の評価は以下の条件で実施した。
得られた反応生成物200gを分取し、300mL容のフラスコに仕込んだ。反応生成物をマグネチックスターラーを用いて撹拌すると共に、反応生成物のスラリーに窒素バブリングを行いながら、オイルバスにて100℃に加熱した。
ADVANTEC社製の万能型タンク付フィルターホルダーKST−90−UH(有効濾過面積約45平行センチメートル)に、直径90mm,平均細孔直径10μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターをセットし、タンク部分をバンドヒーターにて100℃に調温した。
100℃に加熱した反応生成物をタンクに仕込み、タンクを密閉後、タンク内を窒素にて0.1MPaに加圧した。加圧後にフィルターホルダーの下部から濾過液が排出され始めた時点を起点として、50gの濾液が排出される間での時間を計測し、単位濾過面積基準の濾過速度(kg/(m2・hr))を算出した。
<線状ポリフェニレンスルフィドの分子量測定方法>
原料として用いる線状ポリフェニレンスルフィドの重量平均分子量は下記条件にて測定し、標準ポリスチレン換算として求めた。
装置:センシュー科学製 SSC−7100
カラム:Shodex UT806M×2
カラム温度:210℃
移動相:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
検出器温度:210℃
以下に、各実施例および比較例の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法、および、各実施例および比較例に係る評価結果について説明する。実施例1〜11および比較例1〜7の製造条件及び評価結果を、表1にまとめて示す。
Figure 2013061561
[実施例1]
<反応混合物の調製>
攪拌機付きオートクレーブ(材質はSUS316L)に、スルフィド化剤(a)として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)としてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)35.4g(0.241モル)、及び、有機極性溶媒(c)としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)600g(6.05モル)を仕込むことで反応混合物を調製した。原料に含まれる水分量は25.6g(1.42モル)であり、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の溶媒量は約2.43Lであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の、アリーレン単位(ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBに相当)の量は1.00モルであった。
<工程1>
オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.0MPaであった。その後250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。
<工程2>
高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにp−DCBのNMP溶液(p−DCB3.54gをNMP10gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、p−DCBのNMP溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP5gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。本操作により、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位(工程1と工程2でジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBの合計量に相当)は1.10モルとなった。この追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱を継続して反応を進行させた。その後約15分かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することで主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分を水冷冷却管にて凝集させることで、約394gの液成分を回収した後に高圧バルブを閉じて密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、反応生成物を回収した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの反応消費率は96%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、17.8%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は355kg/(m2・hr)であった。
<環式ポリアリーレンスルフィドの回収>
上記固液分離性評価と同様の手法にて反応生成物を固液分離して得た濾液成分100gを300mLフラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後80℃に冷却した。この際、常温では一部不溶成分が存在したが100℃に到達した段階、さらに80℃に冷却した段階で不溶部は認められなかった。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、チューブポンプを用いて水33gを約15分かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで30℃以下で約30分間撹拌を継続した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分(母液を含む)を約30gの水に分散させ70℃で15分撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、環式ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。
乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、乾燥固体中の環式ポリフェニレンスルフィドの含有率は、約86重量%であり、得られた乾燥固体は純度の高い環式ポリフェニレンスルフィドであることがわかった。またこの乾燥固体の不純物率は2.0%であった。
また、上記のように工程1、工程2で得られた反応生成物を固液分離の後に回収して得られた試料とは別に、工程1までを行った段階で操作を終了して反応混合物を回収した試料も用意した。この反応混合物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は94%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例1の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば、不純物含有率の少ない高品質な環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得ることができ、また環式PASの製造工程における固液分離の効率が極めて高く、生産性の観点でも極めて優れていることがわかった。
[比較例1]
実施例1の工程2において、DCBを追加添加せず、NMP15gのみを小型タンクを用いてオートクレーブ内に追加添加した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。従って、工程1、工程2とも、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.00モルであり、反応の開始から終了まで一貫して、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.00モルであった。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は96%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、15.6%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は3kg/(m2・hr)であった。
<環式ポリアリーレンスルフィドの回収>
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約79重量%であることがわかった。またこの乾燥固体の不純物率は1.5%であった。
比較例1の結果から、本発明の特長であるジハロゲン化芳香族化合物の追加を行わず、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率が本発明法と異なる場合であっても、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの不純物率は低い傾向にあった。しかしながら、単離される乾燥固体における環式ポリアリーレンスルフィドの重量分率(環式PASの含有率)が低く、さらに反応生成物の固液分離性も悪く生産性が低いことがわかった。
[比較例2]
実施例1の反応混合物の調製において、p−DCBを38.9g(0.265モル)として、反応混合物におけるイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位の量を1.10モルとした以外は、実施例1と同様に工程1の操作を行った。
工程2における操作は比較例1と同様とした。すなわち、工程2ではp−DCBを追加添加せず、NMP15gのみを小型タンクを用いてオートクレーブ内に追加添加した。ここで比較例2では工程2でのp−DCB追加はおこなわなかったが、工程1で用いた反応混合物における水硫化ナトリウムのイオウ成分1モル当たりのp−DCBは1.10モルであったので、工程2も同じ条件で反応を実施したこととなる。したがって、反応の開始から終了まで一貫して、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのp−DCBは1.10モルであった。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は16.0%であった。また得られた反応物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は350kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約72重量%であることがわかった。またこの乾燥固体の不純物率は10.1%であった。
なお、実施例1と同様に、工程1までを行った段階で操作を終了して反応混合物を回収して分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は95%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
比較例2の結果から、本発明の特長であるジハロゲン化芳香族化合物の追加を行わず、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位の比率が本発明法と異なる場合には、不純物率が非常に高く品質に劣る環式ポリアリーレンスルフィドしか得られないことがわかった。
[実施例2]
工程1までを実施例1と同様に行ない(工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は94%)、次の工程2で追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB1.76gをNMP10gに溶解させたものに変えた。すなわち、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.05モルとして工程2の反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で環式PASを製造した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は96%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は17.5%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は247kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約84重量%であることがわかった。またこの乾燥固体の不純物率は1.5%であった。
実施例2の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば、不純物含有率の少ない高品質な環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得ることができ、また、環式PASの製造工程における固液分離の効率が極めて高く、生産性の観点でも極めて優れていることがわかった。また、実施例1との対比から、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を低めに設定することで、反応生成物の固液分離性がわずかに低下するものの、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの純度が更に向上し、きわめて高い生産性が達成できることがわかった。
[実施例3]
工程1までを実施例1と同様に行ない(工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は94%)、次の工程2で追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB2.65gをNMP10gに溶解させたものに変えた。すなわち、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.075モルとして工程2の反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で環式PASを製造した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は18.0%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は290kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約84重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は1.5%であった。
実施例3の結果を実施例1と対比することにより、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程2の反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率をより低めに設定しても、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの純度、および環式PASの製造工程における固液分離性を十分なレベルにできることがわかった。
[実施例4]
工程1までを実施例1と同様に行ない(工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は94%)、次の工程2で追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB8.84gをNMP20gに溶解させたものに変えた。すなわち、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.25モルとして工程2の反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で環式PASを製造した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は99%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は17.4%であった。また、得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は334kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約82重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は4.3%であった。
実施例4の結果を実施例1と対比することにより、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を高めに設定することで、環式ポリアリーレンスルフィドの製造時に得られる反応生成物の固液分離性がよりいっそう高まる反面、得られる環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる不純物成分が増加する傾向にあることがわかった。
[比較例3]
工程2で追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB0.71gをNMP10gに溶解させたものに変え、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.02モルとして工程2の反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で環式PASを製造した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は17.2%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は9kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約79重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は1.3%であった。
比較例3の結果から、工程1の後にジハロゲン化芳香族化合物の追加を行った場合でも、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率が本発明の範囲よりも低い条件の場合には、不純物率が低い環式ポリアリーレンスルフィドが得られる傾向にあるものの、単離される乾燥固体における環式ポリアリーレンスルフィドの含有率が低く、さらに環式PASの製造工程における固液分離性も悪く生産性が低いことがわかった。
[実施例5]
実施例1の反応混合物の調製において、p−DCBを33.6g(0.229モル)として、反応混合物におけるイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を0.95モルとした以外は実施例1と同様に工程1の操作を行い、次いで工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB5.31gをNMP10gに溶解させたものに変えた。すなわち、工程1における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を0.95モルとして工程1の反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で環式PASを製造した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は18.9%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は600kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は2.0%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応混合物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は92%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例5の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率をイオウが過剰の条件とすることで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上することがわかった。
[実施例6]
実施例1の反応混合物の調製において、p−DCBを31.8g(0.217モル)として、反応混合物におけるイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を0.90モルとした以外は実施例1と同様に工程1の操作を行い、次いで工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB7.07gをNMP10gに溶解させたものに変えた。すなわち、工程1における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を0.90モルとして工程1の反応を行なった以外は、実施例1と同様の条件で環式PASを製造した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は20.5%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は940kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は3.5%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応混合物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は91%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例6の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を実施例5よりも更にイオウが過剰の条件とすることで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率がさらに向上する一方で、不純物率はわずかに上昇することがわかった。
[実施例7]
実施例6と同様に工程1の操作を行なった後(工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は91%)、高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにp−DCBのNMP溶液(p−DCB3.54gをNMP10gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、p−DCB溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP5gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。本操作により、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.00モルとなった。なお、この追加仕込みの一連の操作には約5分を要した。追加の仕込み終了後、250℃にてさらに0.5時間加熱を継続して反応を進行させた。次いで工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB3.53gをNMP10gに溶解させたものに変え、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.10モルとして、実施例6と同様に工程2の反応を行なった。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は98%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は21.1%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は320kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約88重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は2.1%であった。
実施例7の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率をイオウが過剰の条件とし、また追加するDCBの追加方法を本発明の特に好ましい方法である分割添加とすることで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率がさらに向上し、また不純物率も低い高品質な環式ポリアリーレンスルフィドが得られることがわかった。
[比較例4]
実施例1の反応混合物の調製において、p−DCBを26.5g(0.181モル)として、反応混合物におけるイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を0.75モルとした以外は、実施例1と同様に工程1の操作を行なった。工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB12.4gをNMP10gに溶解させたものに変え、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.10モルにしており、実施例1と同様の条件で工程2を実施した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は14.1%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は98kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約70重量%であることがわかった。また、この環式乾燥固体の不純物率は12.0%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応混合物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は90%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
比較例4の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を本発明の範囲よりも低くした場合には、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率は低く、また不純物率が大幅に増大し、品質の低い環式ポリアリーレンスルフィドしかえられないことがわかった。
[比較例5]
ここでは、工程1における加熱の条件を変更して、200℃まで昇温した後、200℃で2時間保持しており、次いで工程2の操作を行った以外は実施例6と同様の操作を実施した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は95%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定して場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、16.4%であった。また、得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は120kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約80重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は5.1%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応生成物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は39%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費される前、すなわちスルフィド化剤の反応消費が不十分な段階で工程2が行われたことが確認できた。
比較例5の結果から、本発明の特長であるジハロゲン化芳香族化合物の追加を、スルフィド化剤の50%以上が反応消費される前、すなわちスルフィド化剤の反応消費が不十分な時点で行った場合には、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が低く、また、不純物率も高く品質に劣る環式ポリアリーレンスルフィドしか得られないことがわかった。
[実施例8]
ここでは、工程1における加熱の条件を変更して、250℃まで昇温した時点で工程1を終了し、次いで工程2の操作を行った以外は実施例6と同様の操作を実施した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は95%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定して場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、18.0%であった。また、得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は260kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約85重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は4.5%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応生成物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は82%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例8の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、実施例6に比べ、工程1の終了時点におけるスルフィド化剤の反応消費率がやや低下しても、環式ポリアリーレンスルフィドの製造時に得られる反応生成物の固液分離性がやや低下するものの、高い生産性を維持できることがわかった。また、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは、生成率や品質がわずかに低下するものの十分に高品質であることがわかった。
[実施例9]
実施例1の反応混合物の調製において、p−DCBを36.1g(0.246モル)として、反応混合物におけるイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.02モルとした以外は実施例1と同様に工程1の操作を行なった。工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB2.87gをNMP10gに溶解させたものに変え、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.10モルにしており、実施例1と同様の条件で工程2を実施した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は98%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は17.6%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は370kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約86重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は2.1%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応混合物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は94%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例9の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を1.00モルから1.02モルに微増した場合、実施例1と比較して、環式ポリアリーレンスルフィドの純度等はほぼ同等の結果だが、製造時に得られる反応生成物の固液分離の効率は向上傾向にあることがわかった。
[比較例6]
実施例4の反応混合物の調製において、p−DCBを38.9g(0.264モル)として、反応混合物におけるイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.10モルとした以外は実施例4と同様に工程1の操作を行なった。工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、p−DCB5.38gをNMP20gに溶解させたものに変え、工程2における反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.25モルとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で工程2を実施した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は16.2%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は460kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約71重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は10.4%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応混合物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は95%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
比較例6の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程1および工程2における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を高めに設定することで、環式ポリアリーレンスルフィドの製造時に得られる反応生成物の固液分離性がよりいっそう高まる反面、得られる環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる不純物成分が増加する傾向にあることがわかった。
[参考例1]
ここでは水を含むスルフィド化剤を原料に用いて有機極性溶媒中で脱水処理を行い、水分量の低減されたスルフィド化剤を調製する方法を例示する。
攪拌機付き1リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液19.8g(水酸化ナトリウムとして0.238モル) 、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)238.0g(2.40モル)を仕込んだ。オートクレーブに仕込んだ混合物が、水を含むスルフィド化剤に相当する。原料に含まれる水分量は24.9g(1.38モル)であり、スルフィド化剤の硫黄成分1モル当たりの水の量は5.75モルであった。また、スルフィド化剤の硫黄成分1モル当たりの有機極性溶媒量は約0.97リットルであった。
オートクレーブ上部にバルブを介して充填剤入りの精留塔を取り付け、常圧で窒素を通じて240rpmで撹拌しながら230℃まで約3時間かけて徐々に加熱して脱液を行い、留出液27.1gを得た。
この留出液をガスクロマトグラフ法で分析したところ留出液の組成は水23.4g、NMPが3.7gであり、この段階では反応系内反応混合物中に水が1.5g(0.083モル)、NMPが234.3g(2.36モル)残存していることが判った。なお、脱水工程を通して反応系から飛散した硫化水素は0.004モルであり、硫化水素の飛散により反応系から水硫化ナトリウムが0.004モル減少し、水酸化ナトリウムが0.004モル増加したことになる。
次いでオートクレーブ内を室温近傍まで冷却して、半固体状の内容物を回収した。上記分析の結果、この内容物は、水硫化ナトリウムを0.237molモル、水酸化ナトリウムを0.242molモル、水を0.083molモル、NMPを234.3g(2.36molモル)含む、含水量の少ないスルフィド化剤であることがわかった。
[参考例2]
ここではスルフィド化剤とp−DCBおよびNMPを混合してスラリー状の原料混合物を調製する方法を例示する。
撹拌機を具備したステンレス製オートクレーブに参考例1で得られた含水量の少ないスルフィド化剤218.36g(水硫化ナトリウム11.21g(0.200モル)、水酸化ナトリウム8.17g(0.204モル)、水1.26g(0.070モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)197.72g(1.997モル)からなる)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)29.99g(0.204モル)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)386.53g(3.90モル)を仕込んだ。仕込んだ原料混合物中の硫黄成分1モルあたりの溶媒量は、約2.85リットルであった。また、アリーレン単位は硫黄成分1モルあたり1.02モルであった。オートクレーブ内を十分に窒素置換した後に100℃で30分撹拌して得た均一スラリーを、原料混合物とした。
[比較例7]
実施例9と同様に工程1の操作を行なった(工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は94%)。工程2では、追加するp−DCBのNMP溶液を、参考例2で調製した原料混合物スラリー60.75g(アリーレン単位として0.0195モル相当、イオウ成分として0.0191モル相当を含む)に変えることにより、イオウ成分も同時に加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.02モルとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で工程2を実施した。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は94%であった。また、反応混合物中のスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は17.8%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は12kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約80重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は1.3%であった。
本比較例より、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を同時に追添加した場合には、実施例9に比べて、環式ポリフェニレンスルフィドが良好な生成率で得られるが、固液分離性は低く、品質も低下(環式PAS含有率が低下)することがわかった。
[実施例10]
工程2における追加の操作後の反応温度を260℃にした以外は、実施例6と同様の操作を実施した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は20.6%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は945kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約88重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は3.2%であった。
実施例10の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、工程2を工程1よりも高い温度で行うことで、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの含有率は向上し、不純物率は低下する傾向にあり、高品質の環式ポリフェニレンスルフィドが得られることがわかった。
[実施例11]
工程2の反応温度を270℃にした以外は実施例6と同様の操作を実施した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は98%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、20.5%であった。また、得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は935kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は3.3%であった。
実施例11の結果から、実施例10よりも工程2をさらに高い温度で行っても、高品質の環式ポリフェニレンスルフィドが得られ、270℃まで温度を上げてもよいが、更なる品質の向上はないことがわかった。
[参考例3]
ここでは従来技術による線状ポリアリーレンスルフィドの製造例、すなわち、スルフィド化剤と、ジハロゲン化芳香族化合物と、スルフィド化剤のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒とを用いて、加熱して反応させて反応混合物を得て、得られる反応混合物を固液分離することにより環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドの分離を行い、溶媒を含む固形分として線状ポリアリーレンスルフィドを製造した例を示す。
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブ(反応容器)に、48重量%の水硫化ナトリウム水溶液46.75g(水硫化ナトリウムとして0.40モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液35.00g(0.42モル)、NMP1000g(10.1モル)、およびp−ジクロロベンゼン(p−DCB)59.98g(0.41モル)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、加圧窒素を用いてゲージ圧で0.3MPaに加圧して密封した。
400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて反応容器内を昇温した。この段階で、反応容器内の圧力はゲージ圧で0.9MPaであった。次いで200℃から250℃まで約30分かけて反応容器内を昇温した。この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.5MPaであった。250℃で2時間保持した後、室温付近まで急冷して、反応容器から内容物を回収した。
得られた内容物をガスクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのp−DCBの消費率は92%であった。また、反応混合物中のイオウ成分が全て環式ポリアリーレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリアリーレンスルフィドの生成率は16.7%であることがわかった。
上記で得られた内容物、すなわち少なくとも環式ポリアリーレンスルフィド、線状ポリアリーレンスルフィド、NMPおよび副生塩としてNaClを含む反応混合物をナスフラスコに仕込み、フラスコ内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら約100℃に調温し、加圧窒素を用いた熱時加圧濾過にて前記反応混合物の固液分離を行った。この操作により湿潤状態の固形分を得た。
得られた湿潤状態の固形分の一部を分取して、温水を用いた洗浄を十分に行った後に乾燥し乾燥固体を得た。この乾燥固体の分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルより、これは線状のポリフェニレンスルフィドであり、また、重量平均分子量はポリスチレン換算で11,000であることがわかった。また、得られた乾燥固体の重量から、湿潤状態の固形分中の線状ポリフェニレンスルフィドの含有率は約23%であることがわかった。また、前記湿潤状態の固形分の分析を行った結果、NMPおよびNaClの含有率はそれぞれ47重量%、30重量%であった。
以下に、参考例3で得られた線状ポリアリーレンスルフィドをさらに加えた反応混合物を用いた実施例および比較例の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法、および、各実施例および比較例に係る評価結果について説明する。実施例12〜17および比較例8、9の製造条件及び評価結果を、表2にまとめて示す。
Figure 2013061561
[実施例12]
<反応混合物の調製>
攪拌機付きオートクレーブ(材質はSUS316L)に、参考例3で得られた湿潤状態の線状ポリフェニレンスルフィドを90.39g((線状ポリフェニレンスルフィド20.79g(イオウ成分、アリーレン単位としてそれぞれ0.192モル相当)、NMP42.48g(0.429モル)、NaCl27.12g(0.464モル))、スルフィド化剤(b)として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液5.62g(水硫化ナトリウムとして0.048モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液5.07g(水酸化ナトリウムとして0.061モル)、ジハロゲン化芳香族化合物(c)としてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)7.07g(0.048モル)、及び、有機極性溶媒(d)としてNMP573g(5.78モル)を仕込むことで反応混合物を調製した。原料に含まれる水分量は5.56g(0.309モル)であり、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は約2.50リットルであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりの、アリーレン単位(線状ポリアリーレンスルフィドとして仕込んだ線状ポリフェニレンスルフィドに由来するフェニレン単位と、ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBに由来するフェニレン単位の合計量に相当)は1.00モルであった。
<工程1>
オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で0.5MPaであった。その後250℃で1時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。
<工程2>
高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにp−DCBのNMP溶液(p−DCB1.76gをNMP50gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、p−DCB溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP10gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。本操作により、反応系内の反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位(工程1で線状ポリアリーレンスルフィドとして仕込んだ線状ポリフェニレンスルフィドに由来するフェニレン単位と、工程1と工程2でジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBに由来するフェニレン単位の合計量に相当)は1.05モル、また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりの溶媒量は2.74リットルとなった。この追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱を継続して反応を進行させた。その後約15分かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することで主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分を水冷冷却管にて凝集させることで、約538gの液成分を回収した。その後、高圧バルブを閉じてオートクレーブを密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、オートクレーブ内から反応生成物を回収した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの反応消費率は76.2%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリアリーレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15.9%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は55kg/(m2・hr)であった。
<環式ポリアリーレンスルフィドの回収>
上記固液分離性評価と同様の手法にて得た濾液成分100gを300mLフラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後80℃に冷却した。この際、常温では一部不溶成分が存在したが100℃に到達した段階、さらに80℃に冷却した段階で不溶部は認められなかった。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、チューブポンプを用いて水33gを約15分かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで30℃以下で約30分間撹拌を継続した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分(母液を含む)を約30gの水に分散させ70℃で15分撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して乾燥固体を得た。
乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であり、純度の高い環式ポリフェニレンスルフィドであることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は2.1%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は75.0%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例12の結果から、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば、不純物含有率の少ない高品質な環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得ることができ、また、製造時に得られる反応生成物の固液分離の効率が極めて高く、生産性の観点でも極めて優れていることがわかった。
[実施例13]
実施例12の反応混合物の調製において、p−DCBの量を6.35g(0.043モル)に低減し、工程2で追添加するp−DCBの量を2.47g(0.017モル)に増加した以外は、実施例12と同様に操作を実施した。従って、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は0.98モルであり、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.05モルであった。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は80.4%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、17.0%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は83kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は1.8%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応生成物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は78.0%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例13の結果によれば、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、反応開始時(工程1)の反応混合物中のアリーレン単位が、イオウ成分に対して不足しても、不純物含有率の少ない高品質な環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得ることができ、また、製造時に得られる反応生成物の固液分離の効率が極めて高く、生産性の観点でも極めて優れていることがわかった。
[比較例8]
実施例12の反応混合物の調製において、p−DCBを8.83g(0.060モル)として、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位を1.05モルとした以外は実施例12と同様に工程1の操作を行った。
次いで工程2においては、DCBを追加添加せず、NMP60gのみを小型タンクを用いてオートクレーブ内に追加添加した以外は実施例1と同様に行程2の操作を行った。ここで、比較例8においては、工程2でのp−DCB追加は行わなかったが、工程1で用いた反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.05モルであったので、工程2も同じ条件で反応を実施したこととなり、反応の開始から終了まで一貫して反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.05モルであった。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は70.0%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、10.8%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は15kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約71重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は4.5%であった。
なお、実施例12と同様に、工程1までを行った段階で操作を終了して反応混合物を回収して分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は68.1%であった。
比較例8の結果によれば、本発明の特長であるジハロゲン化芳香族化合物の追加を行わず、工程1における反応混合物中のイオウ成分とアリーレン単位との比率が本発明と異なる場合には、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が低く、また、不純物率が非常に高く品質に劣る環式ポリアリーレンスルフィドしか得られないことがわかった。
[実施例14]
実施例1の反応混合物の調製において、p−DCBの量を3.53g(0.024モル)に低減し、工程2で追添加するp−DCBの量を5.29g(0.036モル)に増加した以外は、実施例1と同様に操作を実施した。従って、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は0.90モルであり、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.05モルであった。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は17.8%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は17.8%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は80kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約86重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は2.3%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応生成物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は77.5%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例14の結果によれば、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、反応開始時(工程1)における反応混合物中のイオウ成分に対するアリーレン単位の比率を、実施例13よりもさらにイオウ過剰の条件とすることで、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率がさらに向上することがわかった。
[実施例15]
工程2で追添加するp−DCBの量を7.06g(0.048モル)に増加した以外は、実施例14(工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は77.5%)と同様に操作を実施した。従って、工程1における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は0.90モルであり、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.10モルであった。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は81.0%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、18.2%であった。また、得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は155kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約86重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は3.7%であった。
実施例15の結果によれば、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、反応開始時(工程1)における反応混合物中のイオウ成分に対するアリーレン単位の比率を、実施例14と同様のイオウ過剰の条件とし、工程2における反応混合物中のイオウ成分1モルに対するアリーレン単位の比率を実施例14より高めに設定することで、環式ポリアリーレンスルフィドの製造時に得られる反応生成物の固液分離性が高まり、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率がさらに向上する一方で、不純物率はわずかに上昇することがわかった。
[比較例9]
ここでは工程1を、加熱を200℃まで昇温した時点で終了し、次いで工程2の操作を行った以外は実施例15と同様の操作を実施した。この場合の工程1における水硫化ナトリウムの反応消費率は29.4%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費する前に工程2が行われたことが確認できた。
<反応生成物の分析評価>
工程2および固液分離の操作後に得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は80.1%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は12.5%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は310kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約78重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は5.6%であった。
比較例9の結果によれば、本発明の特長であるジハロゲン化芳香族化合物の追加を、スルフィド化剤の50%以上が反応消費される前、すなわちスルフィド化剤の反応消費が不十分な時点で行った場合には、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が低く、また、不純物率が非常に高く品質に劣る環式ポリアリーレンスルフィドしか得られないことがわかった。
[実施例16]
工程2の反応温度260℃にした以外は実施例15と同様の操作を実施した。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は82.3%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、18.6%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は170kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は3.2%であった。
実施例16の結果によれば、本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法において、原料に線状PASを用いつつ、工程2を工程1よりも高い温度で行うことで、環式ポリアリーレンスルフィドの製造時に得られる反応生成物の固液分離性が高まり、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの含有率は向上し、不純物率は低下する傾向にあることがわかった。
[実施例17]
工程1において250℃での保持時間を2時間に延長した以外は実施例16と同様の操作を行った。
<反応生成物の分析評価>
得られた反応生成物および反応後の脱液操作で回収した液成分を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤である水硫化ナトリウムの反応消費率は90.0%であった。また、反応混合物中の線状ポリアリーレンスルフィドおよびスルフィド化剤がすべて環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合との比較により求めた環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、19.3%であった。また得られた反応生成物の固液分離性を評価した結果、濾過速度は175kg/(m2・hr)であった。
上記固液分離で得られた濾液成分を実施例1の環式ポリアリーレンスルフィドの回収と同様に処理することで得た乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが検出された。また、得られた乾燥固体は、環式ポリフェニレンスルフィドの含有率が約87重量%であることがわかった。また、この乾燥固体の不純物率は3.1%であった。
また、工程1までを行った段階で操作を終了して回収した反応生成物を分析した結果、工程1の終了段階における水硫化ナトリウムの反応消費率は88.6%であり、反応混合物に含まれるスルフィド化剤が十分に反応消費された後に工程2が行われたことが確認できた。
実施例17の結果によれば、実施例16に対し工程1の終了時点におけるスルフィド化剤の反応消費率が向上すると、環式ポリアリーレンスルフィドの生成率が向上し、さらに不純物率は低減傾向にあることがわかった。

Claims (13)

  1. 少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、該反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の前記有機極性溶媒(c)を含む前記反応混合物を加熱して反応させて、環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、
    前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である前記反応混合物を加熱して、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程1と、
    前記工程1に次いで、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに加熱して反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程2と、
    を含む環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記工程2に次いで、前記反応生成物を、前記有機極性溶媒(c)の常圧における沸点以下の温度領域で固液分離することで、環式ポリアリーレンスルフィドと前記有機極性溶媒(c)とを含む濾液を得る工程3を行う
    請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記工程1において、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.00モル未満である前記反応混合物を加熱する、請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記反応混合物は、さらに線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記反応混合物は、前記工程1の反応開始時点において前記線状ポリアリーレンスルフィド(d)を含む請求項4に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. 前記工程1において、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の70%以上が反応消費されるまで反応させた後に工程2を行う請求項1から5のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. 前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たり0.2〜20.0モルの水を含む前記反応混合物を用いて、前記工程1を行う請求項1から6のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  8. 前記工程1および前記工程2において、常圧における前記反応混合物の還流温度を越える温度で前記反応混合物を加熱する請求項1から7のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  9. 前記工程1および前記工程2において、前記反応混合物を加熱する際の圧力がゲージ圧で0.05MPa以上である請求項1から8のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  10. 前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)がジクロロベンゼンである請求項1から9のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  11. 前記スルフィド化剤(a)がアルカリ金属硫化物である請求項1から10のいずれか1項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  12. 請求項4または5に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
    少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、前記反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の前記有機極性溶媒(c)を含む前記反応混合物を、
    前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である前記反応混合物を加熱して、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程1と、
    前記工程1に次いで、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに加熱して反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程2と、
    を含む方法で加熱して反応させることにより得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを、前記線状ポリアリーレンスルフィド(d)として用いる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  13. 請求項4または5に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
    少なくとも線状ポリアリーレンスルフィド(d)、スルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および有機極性溶媒(c)を含む反応混合物であって、前記反応混合物中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の前記有機極性溶媒(c)を含む前記反応混合物を、
    前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.80モル以上1.05モル未満である前記反応混合物を加熱して、前記反応混合物中の前記スルフィド化剤(a)の50%以上が反応消費されるまで反応させる工程1と、
    前記工程1に次いで、前記反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加した後にさらに加熱して反応を行い、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物を得る工程2と、
    を含む方法で加熱して反応させることにより得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドとを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを、前記線状ポリアリーレンスルフィド(d)として用いる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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