従来より、モータジェネレータなどの回転電機からの駆動力により車両を駆動する電気自動車、内燃機関であるエンジンと組み合わせたハイブリッド自動車、及び、燃料電池により発電した電力により車両を駆動する燃料電池自動車等が知られている。このような車両は、バッテリから電力の供給を受け、モータジェネレータ(以下、モータとも呼ぶ)への電力を制御する昇圧コンバータやインバータ等を有するPCU(パワーコントロールユニット)を有している。なお、電力制御装置はPCUとも呼ばれる。
一般的に、モータを効率良く作動させるためには、高電圧を供給することが必要であり、例えば、約200Vのバッテリ電圧を約600Vまで昇圧する昇圧コンバータを搭載したハイブリッド自動車が知られている。昇圧コンバータは、スイッチング素子と、スイッチング素子に接続したリアクトルと、を含み、リアクトルは、鉄心等の磁性材料を用いたコアと、コアに設けられたコイルと、を有している。また、昇圧コンバータは、スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、リアクトルに電力を蓄積・放出させ、バッテリから供給される電圧を昇圧してインバータに供給することが可能となる。この時、リアクトルは電磁エネルギー変換に伴いコアが発熱すると共に、コイルは通電電流のジュール熱により発熱する。放熱が適切でない場合には、リアクトルの温度上昇となり、昇圧コンバータでの電圧変換効率の低下となることから、リアクトルの適切な放熱が必要となる。そこで、リアクトルの放熱に関し、リアクトルに設けたクーリングフィンによる放熱や、冷却液による放熱等の技術がある。
特許文献1には、リアクトルを構成要素とする昇圧コンバータを備えたハイブリッド自動車の駆動装置が開示されている。特許文献1では、インバータ及びモータを1つのケースに収めて一体化する際、リアクトルの放熱を促進させるため、リアクトルを収容した収容室へモータジェネレータの回転によって汲み上げられた潤滑油を流入させ、収容室に蓄えられた潤滑油によりリアクトルを冷却する駆動装置が示されている。
図8は、従来の駆動装置100を示しており、手前側にモータジェネレータMG2及びリアクトルL1の断面と、その奥に配置されたコンデンサC2,冷却器108,パワー素子基板109及びモータジェネレータMG1が示されている。潤滑油は、モータジェネレータMG2の回転によって矢印F1,F2のように汲み上げられ、収容室開口部340を通過した潤滑油がリアクトル収容室300に流入することになる。流入した潤滑油はリアクトルL1を冷却し、F3のようにオイル抜き孔320から開口部102へ排出される。このような構成により、リアクトルL1の冷却性を確保することが可能となる。
上述したように、モータジェネレータMG1,MG2と、これらのモータを駆動するための昇圧コンバータと、インバータとを一体化収容する場合において、リアクトルL1を潤滑油で冷却する技術では、潤滑油の温度はモータケースやエンジンケースを冷却する冷却水によって温度調整がなされるため、通常運転状態であれば水温と油温とはほぼ同じ温度(例えば、約85度〜約90度)になる。一方、重負荷運転状態ではエンジンやモータジェネレータの急激な発熱により油温が水温より高くなり、リアクトルの冷却性だけでなく、リアクトルの近傍に配置されている昇圧コンバータやインバータへの熱の伝導が懸念される。
昇圧コンバータやインバータ等は、パワーモジュールとそれを制御する制御基板とを有し、パワーモジュールと制御基板はエンジンケースの冷却系統とは別の冷却系統による冷却器107の水温により冷却が行われている。水温は、大きなラジエータ及びファンによって常時冷却がなされているものの、重負荷状態では高温になり吸熱効果が低下する。さらに、冷却器107の能力を超える熱が冷却器107に伝わる場合には、パワーモジュールと制御基板は過熱状態となる。このような過熱に耐えられるように制御装置の素子や部品の耐熱温度を上げることはコストアップになるし、又は、パワー素子の温度上昇に伴う出力制限制御により車両の走行性能が低下する場合がある。
特に、上述したような、モータと電力制御装置を構成する昇圧コンバータやインバータとを1つのケースに収めて一体化する場合、ケースからの熱伝導、電力制御装置を覆うアルミダイキャストのカバーからの熱伝導及びカバー内部の空気の対流熱により電力制御装置の温度が上昇することになる。電力制御装置の上部には制御基板が配置されており、熱がこもりやすいことから、冷却について特別な配慮が必要である。
そこで、本発明に係る電力制御装置(PCU)の搭載構造は、電力制御装置を構成する昇圧コンバータ及びインバータとモータとを1つのケースに収めて一体化する構造において、電力制御装置の上部に配置されている制御基板の冷却性を確保することのできる搭載構造を提供することを目的とする。
以上のような目的を達成するために、本発明に係る電力制御装置の搭載構造は、車両を駆動する回転電機を収容したモータケース上に、回転電機の制御を行う電力制御装置を搭載する電力制御装置の搭載構造において、電力制御装置は、モータケースの開口部に取付けられ、樹脂によって形成された固定台座と、固定台座の上に配置されパワーモジュールを有する冷却器と、冷却器の上に接続された熱伝導性の基板取付け台と、基板取付け台の上に接続された制御基板と、金属製の薄板で形成された電力制御装置全体を覆うカバーと、を備え、モータケースから電力制御装置への熱の伝導を、固定台座とカバーとによって抑制することにより制御基板の温度上昇を防止する。このような構造により、モータケースから伝わる熱を固定台座が抑制することで、電力制御装置の温度上昇を抑えることが可能となる。
また、本発明に係る電力制御装置の搭載構造において、冷却器に取り付けられた基板取付け台は、冷却水の導入側近傍に伝熱可能に接続され、制御基板は、基板取付け台を介して冷却器に伝熱可能に接続されていることを特徴とする。このように、吸熱前の冷却水にて制御基板を冷却することにより、制御基板の温度上昇を抑えることが可能となる。
また、本発明に係る電力制御装置の搭載構造において、固定台座は、冷却器と固定台座との熱の伝導を抑制する金属製の薄板と、冷却器と薄板と固定台座とを共締めにより固定する固定手段と、を有し、薄板は、冷却器と薄板とにより囲まれた空間を形成し、薄板は冷却器によって冷却されることを特徴とする。このように、薄板を追加することにより断熱室を形成し、固定台座からの伝熱を抑えることが可能であると共に、空間を仕切ることが可能となる。
また、本発明に係る電力制御装置の搭載構造において、さらに、カバーは、固定台座の周囲を取り囲むように設けられたモータケースのフランジ部に取り付けられることで、モータケースから電力制御装置への熱の伝導をカバーによって抑制することを特徴とする。薄板によるカバーにて熱の抑制が可能になるだけでなく、カバーの軽量化及びコストダウンが可能となる。
本発明に係る電力制御装置(PCU)の搭載構造を用いることにより、電力制御装置を構成する昇圧コンバータ及びインバータとモータとを1つのケースに収めて一体化する構造において、電力制御装置の上部に配置されている制御基板の冷却性を確保することができるという効果がある。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
図1は電力制御装置の搭載構造におけるPCU20の斜視図を示し、図2A、図2Bは図1の電力制御装置(PCU20)を搭載する駆動装置10の概要を示している。なお、図2Aは駆動装置10上面図を示し、図2Bは図2AのG−G断面の正面図を示している。最初に、図2Bを用いて駆動装置10の全体構成を概説する。
図2Bに示すように、駆動装置10は、エンジンに動力分配装置を介して接続されたモータジェネレータMG1,MG2を有するトランスアクスル30と、トランスアクスルケース31の開口部を覆うように配置された樹脂製の固定台座22と、固定台座22の上に配置された鋼板製の薄板23と、薄板23の上に配置された冷却器27と、冷却器27の上に配置された平滑コンデンサ28と、平滑コンデンサ28の上に配置された制御基板29と、これらを覆う鋼板製のカバー43と、を有している。冷却器27は、上面の樹脂製部品と、下面のアルミ製部品と、内部にフィンが形成され、上面の樹脂製部品に取付けられた熱伝導が良い熱伝導ベース12と、を有し、冷却器27の下面にはDC/DCコンバータ25及びフィルタ用コンデンサ24が配置されると共に、冷却器27の上面には熱伝導ベース12を介してパワー素子13が配置されている。冷却器27の上側には、制御基板29が配置され、制御基板29の上面には外部コネクタ42が設けられている。カバー43はトランスアクスル30のフランジ部にボルトによって取り付けられ、冷却器27の冷却管17とカバー43との隙間にはゴムリング52が設けられている。また、固定台座22の下面にはリアクトル38が配置され、トランスアクスルケース31内に収容されたモータジェネレータMG1,MG2のロータ34,35の回転によって飛散する潤滑油によってリアクトル38が冷却されている。
図2Bに示すように、固定台座22は端子台21を有し、モータジェネレータMG1,MG2のステータコイル端子32a,33aから伸びるバスバー44は、端子台21を介して冷却器27に固定されている複数のパワー素子13に分岐を伴って接続されている。このため、パワー素子13から放出される熱の一部がバスバー44を介してPCUケース内に放熱されることになる。また、固定台座22はトランスアクスルケース31に面シール51を介して接続され、固定台座22によってトランスアクスル30を密閉している。このような構成を有することにより、本実施形態に係るPCU20は、モータジェネレータMG1,MG2と接続するワイヤーハーネスの代わりに、端子台21を介して接続されたバスバー44により接続されることで、部品点数の削減を行っている。さらに、トランスアクスル30とPCU20を仕切る固定台座22をアルミニウム製のトランスアクスルケース31より熱伝導の低い樹脂で形成することにより、トランスアクスル30からPCU20への熱伝導を抑制することが可能となっている。次に、図1のPCU20について述べる。
図1は、PCU20を覆っている図2Bに示す鋼板製のカバー43を取り外した状態のPCU20を示したものである。図1に示すように、PCU20は、トランスアクスルの開口部に取付けられ、樹脂によって端子台21と一体に形成された固定台座22と、固定台座22の上に配置されパワーモジュールを有する冷却器27と、冷却器27の上に接続された熱伝導性の基板ステー14と、基板ステー14の上に接続された制御基板29と、を有している。図1において、冷却管17aから吸熱前の冷却水が導入され、反対側の冷却管17bから吸熱後の冷却水が排出される。また、PCU20の上部には制御基板29が配置されていることから暖まった空気がカバー43の上部に集まり熱がこもりやすい。さらに、制御基板29は、CPUを搭載していることから、CPU自身による発熱により温度が上昇しやすい。そこで、本実施形態では、ラジエータによって冷却された冷却水が導入される冷却管17a近傍に基板ステー14を設け、制御基板29からの熱伝導を積極的に行わせるため放熱シート61aを介して基板ステー14に取り付けることにより、吸熱前の冷却水により制御基板29を冷やす構成を採用した(図1中の矢印の熱の伝熱経路)。なお、制御基板の冷却構造の詳細については後述する。次に、図2Aに示すH−H断面を示す図3を参照しながら駆動装置10について説明する。
図3は、図2Aに示すH−H断面における駆動装置10の断面図を示し、図3を用いてPCU20の搭載構造について詳説する。なお、すでに説明した部位については重複説明を避けるために省略する。図3に示すように、駆動装置10は、開口部を有するトランスアクスルケース31を固定台座22で覆うことで形成したトランスアクスル室81(A室71)と、固定台座22とカバー43で区切られたPCU室82を有している。トランスアクスル室81(A室71)には、モータジェネレータMG1,MG2を構成するステータ32,33と、ステータ内部に配置され、シャフト36,37を中心にして回転するロータ34,35と、固定台座22の下面に配置されたリアクトル38と、が配置されている。
図3のPCU室82は、固定台座22の上に配置されている鋼板製の薄板23と、薄板23の上に配置されている冷却器27と、冷却器27の上に配置されている平滑コンデンサ28及び制御基板29と、固定台座22から制御基板29までを覆い、トランスアクスルケース31に取り付けられた鋼板製のカバー43と、を有している。薄板23と冷却器27とはボルト26によって固定台座22に共締めされることで断熱室となるB室72とC室73を構成し、トランスアクスル30からの対流熱伝達を抑制する。さらに、トランスアクスルケース31に取り付けられている鋼板製のカバー43はC室73と、C室73の外側のD室74とを構成する。鋼板製のカバー43は、アルミニウムダイキャストの壁面と比べて板厚が薄く熱伝導率が低い為、トランスアクスル30からの熱の伝導を抑制する。また、カバー43はD室74を断熱室に構成する。次に、冷却手段について述べる。
図3に示す駆動装置10は、2つの冷却手段を有している。第1の冷却手段は、冷却器27によるパワー素子13、DC/DCコンバータ25、フィルタ用コンデンサ24、平滑コンデンサ28及び制御基板29の冷却であり、第2の冷却手段は、モータジェネレータMG1,MG2がシャフト36,37を中心にしてロータ34,35が回転することにより飛散する潤滑油によるリアクトル38の冷却である。一般の車両では、オイルクーラを装着していないことから、潤滑油の冷却はオイルパンによる放熱と、エンジンを冷却する冷却水によって冷却されることになる。このため、重負荷運転状態では、潤滑油の油温が冷却水の水温より高くなる場合がある。このような状態において、PCU20の制御基板29を効果的に冷却する構造について図4を用いて述べる。
図4は電力制御装置を冷却する冷却装置50の概要を示している。冷却装置50は、ラジエータ56と、ラジエータ56の周りに空気の流れを起こすファン57と、パワー素子13を冷却すると共に、基板ステー14が取り付けられた冷却器27と、ラジエータ56によって冷却された冷却水を冷却器27へ導く配管62と、冷却器27から排出された冷却水をラジエータ56に圧送するポンプ58と、冷却器27とポンプ58とを接続する配管63と、ポンプ58とラジエータ56とを接続する配管64と、を有している。図4の冷却器27は2つの冷却路55と、それぞれの冷却路55に流れる冷却水を対向流とするための流路と、を有している。このため、図4中の「C:Cold」部分は吸熱前の冷却水が導入されることになり、この2つの「C」部分に伝熱可能に接続された基板ステー14と、基板ステー14に放熱シート61a,61bと、を介して制御基板29が冷却されることになる。なお、冷却路55の下流側である図4中の「H:Hot」部分は、吸熱により冷却水温度が上昇して高温になる。高温となった冷却水はポンプ58によりラジエータ56に圧送され、ラジエータで再び冷却される。このような構造により、制御基板29の冷却性を確保することが可能となる。次に、伝熱による温度変化について図5を用いて説明する。
図5は、電力制御装置を搭載する駆動装置100におけるA室71、B室72、C室73、D室74、エンジンコンパートメント室75と、B,C,D室72〜74を伝わる伝熱量H3〜H5と、固定台座22、薄板23、基板ステー14を伝わる伝熱量H1,H2,H6を示している。各伝熱量(H1〜H6)は図5の中で白抜きの矢印で示し、矢印の方向は熱の伝わる方向を示している。なお、図5においては、電力制御装置の各機器の記載は省略している。
図6は図5に示した各室71〜75及び、固定台座22、薄板23、基板ステー14、冷却器27の温度の概要を示す温度グラフ図であり、特に、重負荷運転状態において冷却水の水温T2より潤滑油の油温T0が高い場合における温度分布について記載したものである。図6の横軸はA室71からエンジンコンパートメント室75までの伝熱経路を模式的に示したもので、位置P1からP2の間はA室71を示し、位置P2から位置P3までの間は固定台座22を示し、位置P3から位置P4までの間はB室72を示し、位置P4から位置P5までの間は薄板23を示し、位置P5から位置P6までの間はC室73を示し、位置P6から位置P9までの間は冷却器27を示し、位置P9から位置P10までの間は基板ステー14を示し、位置P10から位置P11までの間は制御基板29を示し、位置P11から位置P12までの間はD室74を示し、位置P12から位置P13までの間はカバー43を示し、位置P13から右は、エンジンコンパートメント室75を示す。また、位置P7から位置P8までの間は冷却器27の冷却水路を示している。従って、位置P7から位置P8までの間の温度は、冷却水の水温T2となっている。
重負荷運転状態では、図6に示すように、図5のトランスアクスル30側のA室71内の潤滑油の油温T0が冷却水の水温T2に比べて高温となる。このため、図5のトランスアクスルケース内のA室71内における潤滑油の飛散によってA室71の温度は潤滑油の油温T0まで上昇し、固定台座22のA室71に側の表面温度も潤滑油の油温T0近くまで上昇する。固定台座22は、例えば、固定台座22はインサート成形によりバスバーを内部に有する熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂比熱=1.57〜1.76j/g・K)で形成されているため、アルミニウムの隔壁に比べて比熱が大きく(アルミニウム比熱=0.9j/g・K)、また、熱伝導率が小さく、断熱性が高い。このため、固定台座22を通ってA室71からB室72への熱伝導により流れる熱量H1は小さく、固定台座22のB室72側の温度はA室71側の温度に比べて大きく低下する。
薄板23と固定台座22の間のB室72は断熱室となっていることから、B室72を通って伝達される伝熱量H3は小さいので、B室72のトランスアクスル30側の位置P3の温度と冷却器27側の位置P4の温度はあまり大きく変化しない。また、薄板23と冷却器27の冷却器ベース11とで形成されるC室73も同様の断熱室になっているので、C室74を通って伝達される伝熱量H4も小さなものとなっている。従ってC室73のトランスアクスル30側の位置P5の温度は、冷却器27の表面温度と略同等の温度となっている冷却器27側の位置P6の温度より若干高い程度の温度となっている。このように、C室73の内部の温度は、C室73が断熱室となっていることから、冷却器27の表面温度に略近い温度となっている。以上説明した様に樹脂製の固定台座22の断熱性と、B室72、C室73が断熱室となっていることから、トランスアクスル30側のA室71内の潤滑油の油温T0が冷却器27の冷却水の水温T2よりも高い場合であってもトランスアクスル30からの伝熱は固定台座22、B室72、C室73の断熱性によって制限され、冷却器27の温度は大きく上昇しない。また、図5に示すように、A室71の隔壁を伝わった第3の熱量H2はPCU20を覆うカバー43に到達するカバー43の厚みは、トランスアクスルケース31よりも薄いものであることから、その伝熱量は小さく、カバー43の温度がA室71からの熱伝導によって大きく上昇することはない。またカバー43の外面は、トランスアクスル30の潤滑油の温度T0よりも低い温度の温度T1のエンジンコンパーメント室75に接していることから、図6の右側に示すように、その外表面温度は、潤滑油の温度T0よりも温度の低いエンジンコンパートメント室75の温度T1と略と同様の温度となる。
また、D室74もB室72、C室73と同様に断熱室を構成していることから、図6に示すように、D室74の伝熱量は少なく、このため、D室74のカバー43側の位置P12の温度はD室の冷却器27側の位置P11の温度とあまり変わらない温度となる。以上説明したように、カバー43とD室74の断熱性によってカバー43側から冷却器27に伝わる熱量も小さいものとなっている。そして、制御基板29は、冷却器27に基板ステー14を介して接続されているので、熱量H6が制御基板29から冷却27に流れ、これにより、制御基板29は、効果的に冷却器27によって冷却され、その温度は、冷却器27の冷却水温T2に近い温度となる。また、基板ステー14は、平均的な冷却水温度より低い温度となっている冷却水導入部に接続されているので、より効果的の制御基板29を冷却することができる。
図7は電力制御装置を車両前方方向に傾斜させた傾斜搭載を示す断面図である。上述した実施形態では、PCU20を水平となるように搭載したが、図7のPCU20は、トランスアクスルケース内のモータジェネレータMG1,MG2及びデフギアの配置により傾斜角θだけ傾けてトランスアクスル30上に配置されている。図7の冷却水は、冷却器27の上側から冷却管17を通り、冷却器27を上から下へ流れて下側の冷却管17から排出される。この流れは、発熱による自然対流とは逆の対向流となっている。
本実施形態では、パワー素子とモータジェネレータとを接続するケーブルにバスバーを用いることにより、パワー素子から放出される熱の一部がPCUケース内に放出される。このため、暖められた空気は、PCUケース上面に沿って上側に流れ、PCU20の上側に集まることになる。そこで、図7の本実施形態では、吸熱前の冷却水をPCU上側から供給し、暖められた空気を冷却器27で冷却することにより、冷やされた空気はPCUケース下面に沿ってPCU下側に流れる事になり、PCU内部の空気を対流させることで内部雰囲気温度を下げることが可能となる。また、トランスアクスル30からの熱の侵入を防ぐ固定台座22により上記対流が妨げられることはない。このように、PCU20を傾斜角θだけ傾けて搭載し、吸熱前の冷却水をPCU上側から供給することにより、積極的にPCUケース内部の空気を対流させることが可能である。
以上、上述したように、本発明に係る電力制御装置(PCU)の搭載構造を用いることにより、電力制御装置を構成する昇圧コンバータ及びインバータとモータとを1つのケースに収めて一体化する構造において、固定台座22と薄板23により形成されるB室72及び、冷却器27の両隣で形成されるC室73とD室74が断熱室となっているので対流熱の防止が可能であり、固定台座22は熱伝導率が低い材質とすることによって断熱性を高め、カバー43は薄板の構成にすることにより、トランスアクスルケース31からの熱伝導を抑制することができるので、冷却液導入部に接続された制御基板29を十分冷却することができる。このような機能により、電力制御装置の温度上昇を防止し、制御基板29の冷却性を確保することが可能となる。