JPWO2012081249A1 - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどの粉粒状担体にFe、Co、およびNiなどの主触媒元素とTi、V、Cr、W、およびMoなどの助触媒元素を担持することによって担持触媒を得、 該担持触媒を合成反応温度で炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含み、且つ前記粉粒状担体が前記合成反応温度近傍で熱分解する物質からなるものである、炭素繊維の製造方法。

Description

本発明は、炭素繊維の製造方法に関する。より詳細に、本発明は、金属、樹脂、セラミックスなどの材料に添加して、当該材料の電気伝導性や熱伝導性等、特に熱伝導性を大幅に改善することができる、例えば、熱伝導ロール、放熱シートなどの熱伝導性成形体やナノフルイドなどの熱伝導性流体などを得るために用いられるフィラーとして、FED(フィールドエミッションディスプレー)用の電子放出素材として、各種反応用の触媒担体として、水素、メタンもしくはその他の気体を吸蔵するための媒体として、または電池やキャパシタなどの電気化学素子用の電極材として、好適に用いられる炭素繊維の製造方法に関する。
熱伝導性フィラーとしては、金属粒子、アルミナ、BN、AlNなどのセラミックス粒子などが知られている。熱伝導性フィラーを樹脂やゴムなどに複合させることによって熱伝導性材料が得られる。このような熱伝導性材料は、電子写真式プリンターやインキ式印刷機などに用いられているロールなどの材料や、CPUなどの熱を逃がすために用いられている放熱シートなどの材料などとして用いられる。また、熱伝導性フィラーを液状物に分散させることによってナノフルイドを得ることができる。ナノフルイドについては近年盛んに開発が進められており、CPU水冷装置や内燃機関用ラジエターに用いられる冷媒などへの応用が期待されている。
繊維状炭素は高い熱伝導性を有するので、熱伝導性フィラーとして有望な材料であると考えられてきた。ところが、従来技術では熱伝導性付与効果が充分でないため実用化には至っていない。
特開2001−80913号公報 米国特許6518218号 特表昭62−500943号公報 特開2008−174442号公報 特開2010−11173号公報 特開2010−24609号公報
Chemical Physics Letters 380(2003)319-324 Chemical Physics Letters 374(2003)222-228
繊維状炭素の製造方法としては、触媒を核として成長させる方法、いわゆる化学気相成長法(以下、CVD法という。)が知られている。該CVD法には、触媒金属を担体に担持して用いる方法と、担体を用いずに有機金属錯体などを気相中で熱分解させて得られる触媒を用いる方法(流動気相法)が知られている。
気相中で生成させた触媒を用いる方法(流動気相法)として、例えば、フェロセンなどの有機金属錯体をベンゼンなどの炭素元素含有物質と伴に反応系内に導入し流動させ、反応系内における有機金属錯体の熱分解によって得られる金属微粒子を触媒として用い、水素雰囲気下で炭素元素含有物質を熱分解する方法が特許文献1に示されている。この流動気相法では、触媒の生成と、炭素元素含有物質の炭素化という2つの反応が同時に進行する。流動気相法で得られる繊維状炭素は、グラファイト層の欠陥が多く、結晶性が低すぎるため、フィラーとして樹脂等に添加しても熱伝導性を発現しない。流動気相法によって得られた該繊維状炭素を高温で熱処理することによって繊維状炭素自身の熱伝導性は若干上昇するが、それでも樹脂材料等への熱伝導性付与効果は必ずしも充分なレベルでない。
しかもこのような高温での熱処理を実施すると炭素網面の再配列が生じるためか、熱処理前と比較して、比表面積が大幅に低下してしまうので、高比表面積で且つ結晶性の高い繊維状炭素を得るのは困難であった。さらに、本手法で得られる繊維状炭素の表面にはこぶ状の突起部が存在したり(非特許文献1)、硬い凝集形態をとる場合があったりして、樹脂や液中への分散に課題があった。特に液状分散体として使用する場合にはこのような凝集粒はフィラーの沈降の原因となるばかりでなく、熱輸送流体として使用した際に配管などの磨耗を促進する場合もある。
一方、担持触媒を用いる方法は、基板担体を用いる方法と、粉粒状担体を用いる方法に大別できる。
基板担体を用いる方法は、さまざまな製膜技術を応用することで、担持される触媒金属の大きさを任意にコントロールできる。そのため、実験室レベルでの研究において、多用されている。例えば、非特許文献2では、シリコン基板上に10nmのアルミニウム膜、1nmの鉄膜、0.2nmのモリブデン膜を生成させたものを用いて、10〜20nm程度の繊維径をもったチューブ状の多層ナノチューブや2層ナノチューブが得られることが開示されている。また、特許文献2には、NiとCrとMoとFeとの組み合わせや、CoとCuとFeとAlとの組み合わせからなる金属を基板担体にスパッタリング法等によって担持されてなる触媒が開示され、それによる炭素繊維の製造が記載されている。この基板担体を用いる方法で得られる繊維状炭素を樹脂等へ添加するためのフィラーとして使用するためには、基板から分離し、回収する必要がある。したがって、この方法は、工業的大量生産に対応するためにたくさんの基板を並べて基板表面積を稼ぐ必要があるので、装置効率が低い。また、基板への触媒金属の担持、繊維状炭素の合成、基板からの繊維状炭素の回収などの多くの工程が必要となるため、経済的に不利である。そのため、この基板担体を用いる方法は産業的な実用化に至っていない。
一方、粉粒状担体を用いる方法では、基板担体を用いる方法と比較して、触媒担体の比表面積が大きいため、装置効率が良いだけでなく、さまざまな化学合成に用いられている反応装置が適用可能で、基板法のようなバッチ処理を前提とした生産方式だけでなく、連続処理による生産方式が可能になるという利点を有する。
さらに担持触媒を用いた場合には触媒寿命が比較的長いため、流動気相法と比較して長時間の反応が可能であり、結果的に低温での反応を実施することができる。このことによって、炭素元素含有物質の好ましくない熱分解を抑制しながら炭素繊維化を優先的に進行させることが可能となるので、結晶性が高く比表面積の大きな微細な繊維状炭素を効率的に得ることができる。その結果、流動気相法で行われていたような高温での熱処理を実施しなくとも、結晶性が良好(特許文献3)で、流動気相法で得られた繊維状炭素を高温で熱処理したものと同等の特性が発現する。
このようなことから、粉粒状の担持触媒を用いて合成した繊維状炭素を実際に高温で熱処理を実施した例はこれまでになかった。
例えば、特許文献4には、触媒効率の向上を目的に特定の3成分触媒を用いることが開示されており、結果として低不純物量の繊維状炭素を得ている。得られた繊維状炭素について高温での熱処理が可能であるとの記述はあるが、実際に実施した例およびその効果についてはまったく開示がない。また、その実施例においてCaCO3担体を用いた担持触媒によって合成した繊維状炭素を用いた複合材料で高熱伝導性が得られることが開示されているが、そのレベルは充分とはいえない。
特許文献5や特許文献6に、特定の3成分ないし4成分の触媒を用いた担持触媒によって繊維状炭素を合成できることが開示されているが、一般的な開示にとどまり、実際に実施した例が記載されておらず、その効果についてはなんら開示していない。
このように、担持触媒を用いて合成した繊維状炭素を実際に高温で熱処理を実施した例は事実上存在しない。
従来製法で得られる繊維状炭素は熱伝導性の付与効果が充分でなく、所望の熱伝導性を得るためには、繊維状炭素を多量にゴム等に添加しなければならない。繊維状炭素をこのように多量に添加すると、複合材料の強度や伸びなどの機械的特性の低下をもたらす。また、液状分散体においては、所望の熱伝導性を得るためにフィラー濃度を高くする必要がある。このために、液粘性の増加や流動性の悪化が生じたり、そもそも液体中への分散が困難になったりする場合もあった。
そこで、本発明は、少量の添加で充分な熱伝導性が付与可能で、樹脂や液の中での分散性に優れた炭素繊維を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、従来の担持触媒によって合成された繊維状炭素を高温で熱処理しても熱伝導性付与効果がほとんど向上しなかったが、特定の担持触媒によって合成された繊維状炭素を高温で熱処理すると、比表面積の低下が実質的に起こらず、熱伝導性付与効果が大幅に向上することを見出した。さらに、特定繊維径をもつ繊維状炭素を高温で熱処理することで、これまでになかった高い熱伝導性付与効果を持つ炭素繊維が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて、さらに検討し完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
〈1〉粉粒状担体に金属触媒を担持することによって担持触媒を得、 該担持触媒を合成反応温度で炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含み、且つ 前記粉粒状担体が前記合成反応温度近傍で熱分解する物質からなるものである、 炭素繊維の製造方法。
〈2〉アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素を含み且つそれ以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む、炭素繊維の製造方法。
〈3〉アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素ならびにFe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素を含み且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
〈4〉アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素; Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素;ならびに Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素を含み、且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
〈5〉アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素を含む金属触媒を担持することによって担持触媒を得、
該担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって平均繊維径5〜70nmの繊維状炭素を合成し、
次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
〈6〉アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素ならびにTi、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素を含む金属触媒を担持することによって担持触媒を得、
該担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって平均繊維径5〜70nmの繊維状炭素を合成し、
次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
〈7〉粉粒状の担持触媒を用いて合成された平均繊維径30〜70nmの繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
〈8〉アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素ならびにCo元素を含む金属触媒を担持することによって、担持触媒を得、 該担持触媒を、合成反応温度で炭素元素含有物質と接触させることによって平均繊維径5〜70nmの繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
〈9〉比表面積が50m2/g以上で、平均繊維径が5〜70nmで、且つラマンスペクトルのR値が0.2以下であるチューブ状の炭素繊維。
本発明によれば、少量の添加でも熱伝導性の付与効果の高いチューブ状の炭素繊維を提供できる。本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、金属、樹脂、セラミックス等に充てんしたときに均一に分散しやすく、高い熱伝導性を付与でき、且つ添加量が少なく抑えられるので、経済的であるばかりか、得られる複合材料の強度などの物性低下などを引き起こさない。さらに、本発明の製造方法で得られる炭素繊維は、熱伝導ロール、放熱シートなどの熱伝導性成形体やナノフルイドなどの熱伝導性流体などを得るために用いられるフィラーとして、FED(フィールドエミッションディスプレー)用の電子放出素材として、各種反応用の触媒担体として、水素、メタンもしくは各種気体を吸蔵するための媒体として、または電池、キャパシタ、ハイブリッドキャパシタなどの電気化学素子用の電極材として、好適に用いられる。
本発明に係る炭素繊維の製造方法の一形態は、粉粒状担体に金属触媒を担持することによって担持触媒を得、 該担持触媒を炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む。
本発明に用いられる粉粒状担体の一例は、熱安定性の高くないものが好ましく、例えば、合成反応温度近傍で熱分解するものが好ましい。好ましい粉粒状担体としては、アルカリ金属の無機塩、アルカリ土類金属の無機塩を挙げることができる。無機塩としては炭酸塩が最も好ましい。
本発明の粉粒状担体は、示差熱分析の熱分解開始温度を測定することにより、選定することが可能であるが、より簡便には、化学便覧改訂5版基礎編I 4.1無機化合物・錯体・有機化合物の性質の項で分解温度を調べて選定するのがよい。粉粒状担体の具体例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水素化カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、セレン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、2水素化ストロンチウム、水素化バリウム、セレン酸バリウム臭化バリウム、過酸化バリウム、シュウ酸バリウム、水素化ナトリウムなどや、ビス(炭酸)マグネシウムカリウムのごとき複塩などを挙げることができる。これらのうち、炭酸カルシウムが特に好ましい。
粉粒状担体の平均粒径は、特に限定されないが、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。粉粒状担体の平均粒径の下限は、特に限定されないが、取り扱いやすさ、入手しやすさなどの観点で、任意に設定できる。なお、ここで、平均粒径は、累積体積50%における粒径D50である。
従来の担持触媒では、担体として、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化亜鉛、シリカ、珪藻土、ゼオライトアルミナなどのセラミックス粒子が用いられていた。本発明者の検討によると、これらセラミックス粒子に金属触媒を担持させて得られる担持触媒では、金属触媒の保持効果が強く、金属触媒の凝集や粗大化が抑制される。セラミックス粒子を用いた担持触媒によると、微細な繊維状炭素が生成しやすい。ところが、このような微細な繊維状炭素は、後の比較例で示すように結晶性は高いが、高温での熱処理を実施しても熱伝導性付与効果の向上が僅かである。一方、本発明で用いられる粉粒状の担持触媒は、熱的安定性に乏しいため、金属触媒の保持効果が弱いと考えられる。合成反応温度近傍で熱分解する粉粒状担体を用いた担持触媒などによると、比較的繊維径の太い繊維状炭素が生成しやすい。この比較的繊維径の太い繊維状炭素はその後の熱処理によって熱伝導性の付与効果が大幅に増加する。
本発明に用いられる金属触媒は、繊維状炭素の合成反応を促進させるものであれば、特に限定されない。金属触媒は、主触媒元素だけのものであってもよいし、主触媒元素に助触媒元素を添加したものであってもよい。
主触媒元素として、好ましくはFe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素、より好ましくはCo元素を挙げることができる。
助触媒元素として、好ましくはTi、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素、より好ましくはMo元素を挙げることができる。
助触媒元素の添加によって繊維状炭素の生成速度が向上する。生成速度が速すぎると炭素結晶面に欠陥が生じやすくなり、熱伝導性付与効果を低下させることがあるので、助触媒元素の種類や量は少ない方が好ましい。また、複数種の主触媒元素や複数種の助触媒元素を用いると触媒調製が煩雑になりやすいうえに、熱処理による熱伝導性付与効果の向上幅が小さくなりやすく、得られる炭素繊維中の不純物残存量も多くなりやすい。したがって、本発明においては反応速度や生成効率の観点からは主触媒元素に1成分の助触媒元素を添加した構成の金属触媒が好ましく、熱伝導性の向上、触媒調製の簡便さ、熱処理による不純物除去の容易さの観点からは助触媒元素を加えずに主触媒元素だけの構成の金属触媒であるのが好ましい。
従来は触媒効率、生成速度を高めるために数種類の元素を助触媒元素として添加し、生成した繊維状炭素中の不純物を低減させることが行われてきた(特許文献4−6参照)。このような複数種の元素を助触媒元素として添加する場合には、触媒調製時に複数種の元素を高濃度で含有した触媒液を調製し担体に含浸担持させるのが効率的であるが、実際には溶液のpHや各成分の溶解性の相違のために、一つの触媒液で金属触媒を担持させることが困難であった。そこで、通常、これらを溶解させるために、pH調整や、加熱、適切な溶媒を選定することで触媒液を調製していた。しかしながら、本発明における触媒担体を用いた場合には、触媒液のpHや溶媒、温度などに制約があるので従来のような混合触媒液の調製方法を使用することができない場合がある。そのために、各成分を含有する触媒液を複数調製し、触媒担体への含浸、乾燥の処理を複数回繰り返さなければ均一な担持触媒を得ることができない場合が多い。産業的に実施する場合には、工程数が増えるため効率的でなくコスト高となるため、使用する助触媒元素の種は少ない方が好ましい。
従来技術においては、複数種の助触媒元素を用いることによって、触媒効率を高め、残留する不純物濃度を低減していた。一方、本発明においては、合成反応後の高温熱処理によって、触媒由来の金属不純物が除去されるので、複数種の助触媒元素を使用する利点は少なく、むしろ、少ない種類か、主触媒元素のみのほうが好ましい。
このように、本発明においては生成速度を向上させるための助触媒元素を用いないか、用いても限定的に使用する。さらに、本発明においては、得られた繊維状炭素を高温で熱処理する。この熱処理によって、高純度で、結晶性が高く、且つ熱伝導性付与効果の高い炭素繊維を経済的を得ることができる。
助触媒元素の添加量は、主触媒元素に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは0.5〜30モル%、さらに好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%である。このような範囲とすることで、熱伝導性付与効果が高く、不純物含量が少ない炭素繊維を得ることができる。
担持触媒の調製法は特に限定されない。例えば、主触媒元素を含有する化合物および助触媒元素を含有する化合物を溶媒に溶解または分散させて触媒液を得、該触媒液と粉粒状担体とを混ぜ合わせ、次いで乾燥させることを含む方法がある。
触媒液には、分散剤や界面活性剤が添加されていてもよい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤が好適に用いられる。分散剤や界面活性剤の添加によって主触媒元素や助触媒元素の触媒液中での安定性が増す。
触媒液における触媒元素濃度は、溶媒の種類、触媒元素の種類などによって適宜選択することができる。粉粒状担体と混合される触媒液の量は、用いる粉粒状担体の吸液量相当であることが好ましい。
触媒液と粉粒状担体との混合物の乾燥は、70〜150℃で行うのが好ましい。また乾燥において真空乾燥を用いてもよい。さらに、乾燥後、適当な大きさにするために粉砕および分級をすることが好ましい。
本発明に用いられる担持触媒としては、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素ならびにFe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素を含み且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒、またはアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素; Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素;ならびに Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素を含み且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒が好ましい。また、より具体的に、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素を含む金属触媒を担持することによって得られる担持触媒、またはアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素ならびにTi、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素を含む金属触媒を担持することによって得られる担持触媒が好ましく、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素ならびにCo元素を含む金属触媒を担持することによって得られる担持触媒がより好ましい。なお、実質的に含まないとは、触媒調製時に不可避的に混入する元素の量を除いて、ICP−AESで検出限界以下になっていることを意味する。また、ここで「金属元素」とは、周期律表における、Hを除く1族から12族までの元素、Bを除く13族元素、Cを除く14族元素、SbおよびBiを指す。
次に、該担持触媒に合成反応温度下で炭素元素含有物質を接触させることによって、繊維状炭素を合成する。
用いられる炭素元素含有物質は、炭素元素の供給源となる物質であれば特に制限されない。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどのアルカン類;ブテン、イソブテン、ブタジエン、エチレン、プロピレンなどのアルケン類;アセチレンなどのアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ナフタレン、アントラセン、エチルベンゼン、フェナントレンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの脂環式炭化水素;クメン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトンなどのその他の有機化合物や、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、揮発油、灯油などを炭素元素含有物質として用いることができる。これらのうち、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、一酸化炭素が好ましく、特にメタン、エタン、エチレン、メタノール、エタノールが好ましい。
担持触媒と炭素元素含有物質とを気相中で接触させる方法は、従来公知の気相成長法と同様の方法で行うことができる。例えば、所定温度に加熱された縦型または横型の反応器に前記触媒をセットし、該反応器に炭素元素含有物質をキャリアガスで導入して接触させる方法がある。
担持触媒は、反応器内のボート(例えば、石英製ボート)に載せておく固定床式で反応器にセットしてもよいし、反応器内でキャリアガスで流動させる流動層式で反応器にセットしてもよい。担持触媒は酸化状態になっていることがあるので、炭素元素含有物質を供給する前に、還元性ガスを含むガスを流通させて担持触媒を還元することが好ましい。還元時の温度は好ましくは300〜1000℃、より好ましくは500〜700℃である。還元時間は、反応器の規模に応じて変わるが、好ましくは10分間〜5時間、より好ましくは10分間〜60分間である。
炭素元素含有物質を導入するために用いられるキャリアガスとしては、水素ガスなどの還元性ガスを使用することが好ましい。キャリアガスの量は反応器の形式によって適宜選択できるが、炭素元素含有物質1モル部に対して好ましくは0.1〜70モル部である。還元性ガス以外に、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを同時に使用してもよい。また、反応の進行途中でガスの組成を変えてもよい。還元性ガスの濃度は、キャリアガス全体に対して、好ましくは1体積%以上、より好ましくは30体積%以上、特に好ましくは85体積%以上である。
合成反応温度は、好ましくは500〜1000℃、より好ましくは550〜750℃である。合成反応温度が低すぎると生成効率が低下する傾向がある。合成反応温度が高すぎると生成する炭素繊維の結晶性が低くなる傾向がある。なお、前述したように、この合成反応温度付近において粉粒状担体は熱分解することが好ましい。なお、ここでいう合成反応温度付近とは合成反応温度の±300℃程度を言う。
次に、上記のようにして得られる繊維状炭素を熱処理する。熱処理に供される好適な繊維状炭素は、平均繊維径が、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜70nm、さらに好ましくは25〜70nm、特に好ましくは30〜70nm、最も好ましくは30〜50nmである。繊維径が大きすぎると、結晶性が低くなりやすく、熱処理を行っても十分なレベルの熱導電性に達しないことがある。逆に繊維径が小さすぎると、結晶性は高いのであるが、熱処理による熱伝導性付与効果の向上が小さく、十分なレベルの熱導電性に達しないことがある。なお、平均繊維径およびアスペクト比は、倍率20万倍程度で透過型電子顕微鏡を通して10視野程度写真撮影し、写し出された繊維の径およびアスペクト比を多数測定して、それらの平均値として求められる。また、熱処理に供される好適な繊維状炭素は、比表面積が、好ましくは20〜400m2/g、より好ましくは30〜350m2/g、さらに好ましくは40〜200m2/g、特に好ましくは40〜100m2/gである。なお、比表面積は窒素吸着によるBET法で求められる。
従来の繊維状炭素は熱処理を行っても熱伝導性付与効果が差ほど向上しなかった。ところが、本発明においては、熱処理によって熱伝導性付与効果が大幅に向上する。特に上記の範囲の繊維径および比表面積を有する繊維状炭素に熱処理を行うと、熱伝導性付与効果が大幅に向上し且つ不純物の残存量が低下し、従来の炭素繊維に比べて高い熱伝導性付与効果をもち且つ低不純物残存量の炭素繊維が得られやすくなるので、特に好ましい。
熱処理温度は、通常2000℃以上、好ましくは2000〜3500℃、より好ましくは2500〜3000℃である。最初から高温で熱処理を行ってもよいし、段階的な昇温で行ってもよい。段階的な昇温による熱処理では、第一段階で通常800〜1500℃、第二段階で通常2000〜3500℃にして行われる。熱処理は、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気において行うことが好ましい。
熱処理前後の比表面積の変化は小さい方が好ましい。具体的には熱処理前後の比表面積の差が、熱処理前の比表面積の20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが最も好ましい。
このような熱処理によって、残存していた触媒や触媒担体由来の金属不純物が揮散し、炭素繊維中の残留不純物の量が低減する。本発明に係る炭素繊維は、残留金属濃度が、好ましく1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
このように高温での熱処理によって、不純物の除去が可能であるので、合成直後の繊維状炭素中に残存している触媒や触媒担体由来の残存不純物の量は、特に制限されない。
本発明に係る好ましい形態の炭素繊維は、ラマン分光分析におけるR値が、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.15以下である。R値が小さいほど炭素繊維中の黒鉛層の成長度合いが多くなっていることを示す。このR値が上記範囲を満たしていると、樹脂等に充てんしたときに樹脂等の熱伝導性がより高くなる。
なお、R値は、ラマン分光分析で測定される1360cm-1の付近にあるピーク強度(ID)と1580cm-1の付近にあるピーク強度(IG)との強度比ID/IGである。IDおよびIGは、Kaiser社製Series5000を用いて、励起波長532nmの条件で測定した。
本発明に係る好ましい形態の炭素繊維は、その平均繊維径が、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜70nm、さらに好ましくは25〜70nm、特に好ましくは30〜50nmである。また、本発明に係る好ましい形態の炭素繊維は、アスペクト比(繊維長さ/繊維径の比)が、好ましくは5〜1000である。
本発明に係る好ましい形態の炭素繊維は、その比表面積の下限が、好ましくは20m2/g、より好ましくは30m2/g、さらに好ましくは40m2/g、特に好ましくは50m2/gである。比表面積の上限は、特段無いが、好ましくは400m2/g、より好ましくは350m2/gである。
本発明に係る好ましい形態の炭素繊維は、黒鉛層が繊維軸に対して略平行になっている。なお、本発明において、略平行とは、繊維軸に対する黒鉛層の傾きが約±15度以内のことをいう。
また、本発明に係る好ましい形態の炭素繊維は、繊維の中心部に空洞を有する、いわゆるチューブ状である。空洞部分は繊維長手方向に連続していてもよいし、不連続になっていてもよい。空洞部内径d0と繊維径dとの比(d0/d)は特に限定されないが、好ましくは0.1〜0.8、より好ましくは0.1〜0.6である。
本発明に係る炭素繊維は、樹脂、金属、セラミックスなどのマトリックスへの分散性に優れるので、該炭素繊維を樹脂等に含有させることによって高い熱伝導性を有する複合材料を得ることができる。特に樹脂に配合する場合には、従来の繊維状炭素の添加量に比べて1/2から1/3(質量比)あるいはそれ以下の添加量で、従来の繊維状炭素によって得られる熱伝導性と同等の熱伝導性を示すという優れた効果を有する樹脂複合材料を得ることができる。
本発明に係る炭素繊維が添加されるセラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、ムライト、酸化珪素、酸化ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素などが挙げられる。
本発明に係る炭素繊維が添加される金属としては、金、銀、アルミニウム、鉄、マグネシウム、鉛、銅、タングステン、チタン、ニオブ、ハフニウム、並びにこれらの合金および混合物が挙げられる。
本発明に係る炭素繊維が添加される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。上記熱可塑性樹脂として、耐衝撃性向上のために熱可塑性エラストマーもしくはゴム成分が添加された樹脂を用いることもできる。
本発明に係る炭素繊維を分散させた樹脂組成物には、樹脂組成物の性能、機能を損なわない範囲で、他の各種樹脂添加剤を配合させることができる。樹脂添加剤としては、例えば、着色剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、発泡剤、難燃剤、防錆剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの樹脂添加剤は、樹脂組成物を調製する際の最終工程で配合するのが好ましい。
本発明に係る炭素繊維を分散させた液状物としては、水、アルコール、エチレングリコールなどに炭素繊維を分散させた熱伝導性の流体や、塗料やバインダー樹脂とともに液中に炭素繊維を分散させた熱伝導性の塗料や皮膜を形成するための液分散体が好適に挙げられる。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
物性等は以下の方法により測定した。
[不純物濃度]
炭素繊維0.1gを石英ビーカーに精秤し、硫硝酸分解を行った。冷却後50mlに定容した。この溶液を適宜希釈し、CCD多元素同時型ICP発光分光分析装置(VARIAN社製:VISTA−PRO)を用い、高周波出力1200W、測定時間5秒間で、ICP−AES(Atomic Emission Spectrometer)にて各元素の定量を行った。
[熱伝導率]
炭素繊維とシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン製、ゼオノア1420R)とを、複合材料中の炭素繊維濃度が5質量%になるように秤量し、ラボプラストミル(東洋精機製作所製、30C150型)を用いて、270℃、80rpmの条件で、10分間混煉した。この混煉物を280℃、50MPaの条件で60秒間熱プレスし、20mm×20mm×2mmの平板を4枚作成した。Keithley社製HotDisk TPS2500を用い、ホットディスク法によって、熱伝導率を測定した。
実施例1
硝酸コバルト(II)六水和物0.99質量部と七モリブデン酸六アンモニウム0.006質量部とをメタノール1質量部に溶解させて、触媒液を調製した。
該触媒液を炭酸カルシウム(宇部マテリアル:CS・3N−A30)1質量部に添加混合し、次いで120℃で16時間真空乾燥して、担持触媒を得た。
秤量した担持触媒を石英ボートに載せ、石英製管状反応器に該石英ボートを入れ、反応器を密閉した。反応器内を窒素ガスで置換し、窒素ガスを流しながら、反応器を室温から690℃まで30分間かけて昇温させた。温度690℃を維持したまま、窒素ガスを、窒素ガス(50容量部)とエチレンガス(50容量部)との混合ガスに切り替えて、該混合ガスを反応器に60分間流して気相成長反応させた。混合ガスを窒素ガスに切り替え、反応器内を窒素ガスで置換し、室温まで冷やした。反応器を開き石英ボートを取り出した。担持触媒を核として成長した繊維状炭素が得られた。該繊維状炭素は、チューブ状で、シェルが多層構造をなしていた。BET比表面積SSAを測定したところ90m2/gであった。
得られた繊維状炭素をアルゴンガス流通下で2800℃で20分間熱処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維は、BET比表面積が90m2/gで、平均繊維径が約40nm、担持触媒由来の金属不純物の含有量がいずれも検出限界(100ppm)以下であった。また、得られた炭素繊維5質量%をシクロオレフィンポリマーに添加混煉して得られた複合材料の熱伝導率は0.52W/mKと非常に高い値を示した。これらの結果を表1にまとめて示した。
比較例1
七モリブデン酸六アンモニウムの量を0.06質量部に変え、高温での熱処理を実施しなかったこと以外は実施例1と同じ手法で炭素繊維を得た。結果を表1に示す。熱伝導率は0.41W/mKと低く、金属不純物の総量も約6%と高かった。
比較例2
硝酸コバルトの10モル%に相当する量の硝酸クロムをさらに加えて実施例1と同じ手法で触媒液の調製を試みたが、全成分を溶解することが困難で、非常に時間がかかりそうであったので、各々の金属化合物を溶解させた液を調製した。これらの液を順次炭酸カルシウム(宇部マテリアル:CS・3N−A30)1質量部に添加混合および120℃、16時間での真空乾燥して、担持触媒を得た。得られた担持触媒を用いた以外は比較例1と同じ手法で炭素繊維を得た。結果を表1に示す。比較例1に比べ触媒効率が向上(残留不純物量が減少)したが、ラマンスペクトルのR値が大きく、結晶性が低いことがわかった。熱伝導率は比較例1に比べてかなり低かった。
比較例3
硝酸コバルトに代えて硝酸鉄(III)九水和物1.8質量部を用い、炭酸カルシウムに代えてヒュームドアルミナ(デグッサ製 AluminumOxideC)を用いた以外は、比較例1と同じ手法で炭素繊維を得た。結果を表1に示す。
比較例4
比較例3で得られた比表面積が225m2/gの炭素繊維を実施例1と同じ手法で熱処理した。結果を表1に示す。
比較例5
特許文献1に記載の手法に従って、浮遊流動法にて炭素繊維を合成した。この炭素繊維を実施例1と同じ手法で熱処理した。結果を表1に示す。
Figure 2012081249
これらの結果から、本発明の製造方法によって得られる炭素繊維(実施例1)は、従来の製法によって得られる繊維状炭素に比べ、分散性が良好で、且つ少量の添加でも充分な熱伝導性を付与できることが判る。

Claims (9)

  1. 粉粒状担体に金属触媒を担持することによって担持触媒を得、 該担持触媒を合成反応温度で炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含み、且つ
    前記粉粒状担体が前記合成反応温度近傍で熱分解する物質からなるものである、
    炭素繊維の製造方法。
  2. アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素を含み且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む、炭素繊維の製造方法。
  3. アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素ならびにFe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素を含み且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
  4. アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素; Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素;ならびに Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素を含み且つそれら以外の金属元素を実質的に含まない担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって繊維状炭素を合成し、 次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
  5. アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素を含む金属触媒を担持することによって担持触媒を得、
    該担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって平均繊維径5〜70nmの繊維状炭素を合成し、
    次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
  6. アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Fe、Co、およびNiからなる群から選ばれる1種の元素ならびにTi、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素を含む金属触媒を担持することによって担持触媒を得、
    該担持触媒を、炭素元素含有物質と接触させることによって平均繊維径5〜70nmの繊維状炭素を合成し、
    次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
  7. 粉粒状の担持触媒を用いて合成された平均繊維径30〜70nmの繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
  8. アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩からなる粉粒状担体に、Ti、V、Cr、W、およびMoからなる群から選ばれる1種の元素ならびにCo元素を含む金属触媒を担持することによって担持触媒を得、
    該担持触媒を炭素元素含有物質と接触させることによって平均繊維径5〜70nmの繊維状炭素を合成し、
    次いで、得られた繊維状炭素を2000℃以上の温度で熱処理する工程を含む炭素繊維の製造方法。
  9. 比表面積が50m2/g以上で、平均繊維径が5〜70nmで、且つラマンスペクトルのR値が0.2以下であるチューブ状の炭素繊維。
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