JPWO2011111628A1 - リン酸化合物、二次電池用正極、及び二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
特性や信頼性に優れるリン酸化合物を安価にかつ効率的に製造することを可能にしたリン酸化合物の製造方法を提供する。MxPyOz(MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子、Mの価数N1は+2≦N1≦+4、0.8≦x/y≦1.2)の組成を有する第1の化合物と、Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種の原子Aを含む第2の化合物とを、AとMとPの原子比(A:M:P)がa:b:1(ただし、0<a<2、0.8<b<1.2)となるように調合する。第1の化合物と第2の化合物との調合物を混合しつつ粉砕した後、不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、AaMbPOc(ただし、Mの価数はN1と等しいかN1より小さく、cはa、bの数値及びMの価数に依存する数)で表される組成を有するリン酸化合物を製造する。
Description
本発明はリン酸化合物の製造方法、二次電池用正極、及び二次電池の製造方法に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器、電動工具等の電源として、リチウムイオン二次電池が広汎に使用されている。リチウムイオン二次電池の次世代の正極材料として、資源面、安全面、コスト面、安定性等の観点から、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)に代表されるオリビン型結晶構造のリン酸化合物(LiMPO4、Mは遷移金属元素の原子)が注目されており、その製造方法が検討されている。
特許文献1には、Li2OとFe2O3等の遷移金属原子Mの酸化物とP2O5とを含有する混合物を溶融し、該溶融物を急冷して前駆体ガラスを形成した後、該前駆体ガラスを焼成して、LiFePO4の結晶やLiMnxFe1-xPO4の結晶(0<x<1)等を析出させることによって、二次電池用正極材料を製造することが記載されている。
特許文献2及び特許文献3には、下式(1)で表される固相反応でLiMPO4を製造する方法が記載されている。
Li3PO4+M3(PO4)2・nH2O→3LiMPO4+nH2O …(1)
Li3PO4+M3(PO4)2・nH2O→3LiMPO4+nH2O …(1)
リン酸化合物を構成するLiと、Fe等の遷移金属原子Mと、Pとを、全て含む混合物は、ガラス化範囲が狭く、加熱時に均一に溶融物を得にくい。このため、特許文献1に記載の方法では、リン酸化合物及びその結晶粒子の組成制御が難しい。
また、特許文献2及び特許文献3に記載の原料としてリン酸鉄(M3(PO4)2・8H2O)を用いる固相反応の場合、リン酸鉄が高価である。加えて、リン酸鉄リチウム等のリン酸化合物の組成制御が難しい。
また、特許文献2及び特許文献3に記載の原料としてリン酸鉄(M3(PO4)2・8H2O)を用いる固相反応の場合、リン酸鉄が高価である。加えて、リン酸鉄リチウム等のリン酸化合物の組成制御が難しい。
本発明の目的は、リン酸化合物の組成制御をしやすくする方法を提供することにある。本発明の方法によれば、電池特性や信頼性に優れるリン酸化合物を安価にかつ効率的に製造できるリン酸化合物の製造方法を提供することにある。本発明は、電池特性は信頼性に優れる二次電池用正極及び二次電池の製造方法を提供する。
本発明は、下記[1]〜[15]の発明である。
[1]下式(1)で表される組成を有する第1の化合物と、Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種の原子Aを含む第2の化合物とを、下式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程、
前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、下式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程、
を含むことを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
MxPyOz (1)
(式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子であり、かつ、Mの価数N1は+2≦N1≦+4であり、x及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する数であり、zはx、yの数値及びMの価数N1に依存する数である。)
A:M:P=a:b:1 (2)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、aは0<a<2、bは0.8<b<1.2である。)
AaMbPOc (3)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、Mの価数は前記N1と等しいかN1よりも小さく、a及びbは前記と同じ数値を示し、cはa、bの数値及びMの価数に依存する数である。)
[1]下式(1)で表される組成を有する第1の化合物と、Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種の原子Aを含む第2の化合物とを、下式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程、
前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、下式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程、
を含むことを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
MxPyOz (1)
(式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子であり、かつ、Mの価数N1は+2≦N1≦+4であり、x及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する数であり、zはx、yの数値及びMの価数N1に依存する数である。)
A:M:P=a:b:1 (2)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、aは0<a<2、bは0.8<b<1.2である。)
AaMbPOc (3)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、Mの価数は前記N1と等しいかN1よりも小さく、a及びbは前記と同じ数値を示し、cはa、bの数値及びMの価数に依存する数である。)
[2]前記第1の化合物が、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して得られた化合物である、[1]のリン酸化合物の製造方法。
[3]Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して式(1)で表される組成を有する第1の化合物を得る工程を含む、[1]のリン酸化合物の製造方法。
[4]前記溶融物の冷却速度が、−103℃/秒〜−1010℃/秒である、[2]又は[3]のリン酸化合物の製造方法。
[3]Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して式(1)で表される組成を有する第1の化合物を得る工程を含む、[1]のリン酸化合物の製造方法。
[4]前記溶融物の冷却速度が、−103℃/秒〜−1010℃/秒である、[2]又は[3]のリン酸化合物の製造方法。
[5]前記第1の化合物が、非晶質部分を含む固体状化合物である、[1]〜[4]のリン酸化合物の製造方法。
[6]前記第2の化合物が、加熱によりA2Oに変化する化合物である、[1]〜[5]のリン酸化合物の製造方法。
[7]前記第2の化合物が、A2CO3、AHCO3及びAOHから選ばれる化合物(ただし、これらの化合物は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)から選択される少なくとも1種である、[1]〜[6]のリン酸化合物の製造方法。
[8]前記加熱して式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程を、不活性ガス中又は還元ガス中にて400〜900℃で行う、[1]〜[7]のリン酸化合物の製造方法。
[6]前記第2の化合物が、加熱によりA2Oに変化する化合物である、[1]〜[5]のリン酸化合物の製造方法。
[7]前記第2の化合物が、A2CO3、AHCO3及びAOHから選ばれる化合物(ただし、これらの化合物は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)から選択される少なくとも1種である、[1]〜[6]のリン酸化合物の製造方法。
[8]前記加熱して式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程を、不活性ガス中又は還元ガス中にて400〜900℃で行う、[1]〜[7]のリン酸化合物の製造方法。
[9]前記粉砕物を得る工程において、前記調合物に、有機化合物及び炭素粉末から選択される少なくとも1種の炭素源を含ませ、該炭素源の量は、調合物と炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対する該炭素換算量(質量)の割合が0.1〜20質量%となる量である、[1]〜[8]のリン酸化合物の製造方法。
[10]式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、下式(4)で表される組成を有する結晶粒子である、[1]〜[9]のリン酸化合物の製造方法。
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、a及びbは前記と同じ数値を示す。)
[11]式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、オリビン型結晶構造のLiMPO4を含む粒子である、[1]〜[10]のリン酸化合物の製造方法。
[12]式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、オリビン型結晶構造のLiFedMn1-dPO4(dは0≦d≦1である)を含む粒子である、[1]〜[11]のリン酸化合物の製造方法。
[10]式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、下式(4)で表される組成を有する結晶粒子である、[1]〜[9]のリン酸化合物の製造方法。
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、a及びbは前記と同じ数値を示す。)
[11]式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、オリビン型結晶構造のLiMPO4を含む粒子である、[1]〜[10]のリン酸化合物の製造方法。
[12]式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、オリビン型結晶構造のLiFedMn1-dPO4(dは0≦d≦1である)を含む粒子である、[1]〜[11]のリン酸化合物の製造方法。
[13]下式(1)で表される組成を有する第1の化合物と、
Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種のAの原子を含む第2の化合物とを、調合して調合物を得る工程、
前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、下式(4)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程、
を含むことを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
MxPyOz (1)
(式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子であり、かつ、Mの価数N1は+2≦N1≦+4であり、x及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する数であり、zはx、yの数値及びMの価数N1に依存する数である。)
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、Mの価数は前記N1と等しいかN1よりも小さく、aは0<a<2、bは0.8<b<1.2である。)
Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種のAの原子を含む第2の化合物とを、調合して調合物を得る工程、
前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、下式(4)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程、
を含むことを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
MxPyOz (1)
(式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子であり、かつ、Mの価数N1は+2≦N1≦+4であり、x及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する数であり、zはx、yの数値及びMの価数N1に依存する数である。)
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、Mの価数は前記N1と等しいかN1よりも小さく、aは0<a<2、bは0.8<b<1.2である。)
[14]前記[1]〜[13]の製造方法によってリン酸化合物を得て、次に、該リン酸化合物を二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極を製造することを特徴とする二次電池用正極の製造方法。
[15]前記[14]の製造方法で二次電池用正極を得て、次に、該二次電池用正極を用いて二次電池を製造することを特徴とする二次電池の製造方法。
[15]前記[14]の製造方法で二次電池用正極を得て、次に、該二次電池用正極を用いて二次電池を製造することを特徴とする二次電池の製造方法。
本発明の製造方法によれば、リン酸化合物の組成の制御がしやすいため、リン酸化合物を安価にかつ特別な装置や反応条件を用いることなく製造することができる。従って、電池特性や信頼性に優れるリン酸化合物を安価にかつ効率的に製造できる。本発明により得られるリン酸化合物を用いることにより、電池特性や信頼性に優れる二電池用正極及び二次電池が製造できる。
以下の説明において、Aは、Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種の原子を表す。Mは、Fe、Mn、Co及びNiから選択される少なくとも1種の原子を表す。
式(1)、式(3)などの化学式は平均組成を表す。したがって、上記3種のアルカリ金属元素の原子を表すAは、平均組成を表す化学式においては上記3種から選ばれる2種以上の原子の組み合わせからなっていてもよい。同様に、上記4種の遷移金属元素の原子を表すMは、平均組成を表す化学式においては上記4種から選ばれる2種以上の原子の組み合わせからなっていてもよい。
また、オリビン型構造の結晶を以下オリビン型結晶といい、オリビン型結晶を含む粒子を以下オリビン型結晶粒子ともいう。オリビン型結晶粒子は、オリビン型結晶構造以外の結晶構造を部分的に含んでいてもよく、非結晶構造を部分的に含んでいてもよい。オリビン型結晶粒子としては、その実質的にすべてがオリビン型結晶からなっていることが好ましい。
さらに、本発明製造方法の目的物である、式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を、リン酸化合物(3)ともいう。
式(1)、式(3)などの化学式は平均組成を表す。したがって、上記3種のアルカリ金属元素の原子を表すAは、平均組成を表す化学式においては上記3種から選ばれる2種以上の原子の組み合わせからなっていてもよい。同様に、上記4種の遷移金属元素の原子を表すMは、平均組成を表す化学式においては上記4種から選ばれる2種以上の原子の組み合わせからなっていてもよい。
また、オリビン型構造の結晶を以下オリビン型結晶といい、オリビン型結晶を含む粒子を以下オリビン型結晶粒子ともいう。オリビン型結晶粒子は、オリビン型結晶構造以外の結晶構造を部分的に含んでいてもよく、非結晶構造を部分的に含んでいてもよい。オリビン型結晶粒子としては、その実質的にすべてがオリビン型結晶からなっていることが好ましい。
さらに、本発明製造方法の目的物である、式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を、リン酸化合物(3)ともいう。
本発明のリン酸化合物の製造方法は、以下の工程(I)、工程(II)、及び工程(III)を、この順に行う。(I)〜(III)の工程前、工程間、及び工程後には、各工程に影響を及ぼさない限り、他の工程を行ってもよい。
工程(I):前記第1の化合物と前記第2の化合物とを、前記式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程、
工程(II):前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
工程(III):前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、リン酸化合物(3)を得る工程。
工程(I):前記第1の化合物と前記第2の化合物とを、前記式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程、
工程(II):前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
工程(III):前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、リン酸化合物(3)を得る工程。
さらに、第1の化合物としては、Mを含む化合物及びPを含む化合物を、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、該粉砕物を加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して製造されたものが好ましい。この第1の化合物を製造する工程を以下工程(IV)という。
第1の化合物としては、特に、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して得られた化合物であることが好ましい。
ここで溶融とは、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とが融解し、目視で透明な状態となることをいう。
本発明の製造方法で製造されるリン酸化合物は、二次電池用正極材料として有用な化合物であり、特にリチウムイオン二次電池用正極材料として有用である。
第1の化合物としては、特に、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して得られた化合物であることが好ましい。
ここで溶融とは、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とが融解し、目視で透明な状態となることをいう。
本発明の製造方法で製造されるリン酸化合物は、二次電池用正極材料として有用な化合物であり、特にリチウムイオン二次電池用正極材料として有用である。
[工程(I)]
工程(I)は、第1の化合物と第2の化合物とを、式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程である。
第1の化合物は予め粉砕してから調合するのが好ましい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、又は遊星ミル等を用いて、乾式又は湿式で行うことが好ましく、溶媒除去が不要なことから乾式が好ましい。
工程(I)は、第1の化合物と第2の化合物とを、式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程である。
第1の化合物は予め粉砕してから調合するのが好ましい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、又は遊星ミル等を用いて、乾式又は湿式で行うことが好ましく、溶媒除去が不要なことから乾式が好ましい。
第1の化合物において、MはFe、Mn、Co及びNiから選択される少なくとも1種の原子である。リン酸化合物を二次電池用正極材料に適用する場合、コストの点から、MとしてはFe及びMnから選択される少なくとも1種が好ましい。二次電池用正極材料の理論容量を発現し易くなる点から、Feが特に好ましい。作動電圧を高くする点からは、Co及びNiから選択される少なくとも1種が好ましい。Mの価数は本発明の製造方法の各工程において変化しうる数値であり、+2〜+4の範囲である。従って、第1の化合物におけるMの価数N1は、+2≦N1≦+4である。MがFeの場合は+2、+8/3、又は+3、Mnの場合は+2、+3、又は+4、Coの場合は+8/3、Niの場合は+2又は+4が好ましい。
式(1)中のx及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する任意の数である。該式を満たすことで、リン酸化合物(3)を得ることができる。
式(1)中のx及びyはx/yが1であることが好ましい。例えば、MxPyOzがM2P2O7で表されるMのピロリン酸塩である場合、Mの価数N1は+2であり、オリビン型結晶構造のリン酸化合物を得やすい。M2P2O7と、Aの酸化物(例えばA2O)とを混合して加熱した場合、下式(5)で表される固相反応が化学量論的に進行するため、AMPO4が得られやすい。ただしMは価数N1が+2である原子を示す。他の価数においても同様である。
M(II)2P2O7+A2O→2AM(II)PO4 …(5)
また、x/y=1であるMxPyOzがMPO4である場合、オリビン型結晶構造のリン酸化合物(3)を得やすいと共に、空気中又は酸素分圧が0.21を超えて1.0以下の範囲の酸化ガス中で効率的に製造できるので好ましい。空気中の場合、雰囲気を制御する必要がないので特に好ましい。このようなMPO4を、Aの酸化物(例えばA2O)と混合して加熱した場合、下式(6)で表される固相反応が化学量論的に進行するため、AMPO4が得やすい。
2M(III)PO4+A2O→2AM(II)PO4+0.5O2 …(6)
M(II)2P2O7+A2O→2AM(II)PO4 …(5)
また、x/y=1であるMxPyOzがMPO4である場合、オリビン型結晶構造のリン酸化合物(3)を得やすいと共に、空気中又は酸素分圧が0.21を超えて1.0以下の範囲の酸化ガス中で効率的に製造できるので好ましい。空気中の場合、雰囲気を制御する必要がないので特に好ましい。このようなMPO4を、Aの酸化物(例えばA2O)と混合して加熱した場合、下式(6)で表される固相反応が化学量論的に進行するため、AMPO4が得やすい。
2M(III)PO4+A2O→2AM(II)PO4+0.5O2 …(6)
式(1)中のzの値は、x、yの値及びMの価数N1に依存し、これらの値により変化する数値である。例えば、MがFeであり、そのMの価数N1が+2、x及びyの値がそれぞれ2、x/y=1であり、二量体(ピロリン酸)であると、zは7となる。また、MがFeであり、そのMの価数N1が+3、x及びyの値がそれぞれ1、x/y=1であると、zは4となる。zは一般に、Mの原子の種類、x及びyの値、及びMの価数N1が同一でも、正塩(オルトリン酸)、二量体(ピロリン酸)、縮合塩(ポリリン酸)で異なり、かつzとMの価数N1とは独立している。MがMn、Co及びNiの場合も、価数N1がそれぞれ+2、x及びyの値がそれぞれ1、x/y=1であり、二量体(ピロリン酸)であると、zは全て5である。
第1の化合物は、非晶質物を含むのが好ましい。第1の化合物が非晶質物を含むことにより、結晶質物に比べて柔らかいので粉砕しやすく、また非晶質物中の物質拡散は速いので、第1の化合物とAを含む第2の化合物との反応性を高めることができる。次工程の工程(II)が実施しやすくなり、リン酸化合物の組成を制御しやすくなる。さらに、後工程の工程(III)において、生成物が塊状になるのを防ぐことができ、かつ生成物の粒度が制御しやすくなる。非晶質部分は第1の化合物全体の80〜100質量%であるのが好ましい。非晶質部分が該範囲であると、第1の化合物が粉砕しやすく、第2の化合物との反応性が高まるので好ましい。
第1の化合物が結晶化物を含む場合、工程(III)で結晶化物が結晶核となり、結晶化しやすくなる。第1の化合物中の結晶化物の量は、第1の化合物の全質量に対して0〜20質量%であることが好ましい。結晶質部分が20質量%以下であると、第1の化合物の粉砕のしやすさと、第2の化合物との反応性を低下させることなく、工程(III)で結晶核となって反応を促進する効果を有するので好ましい。
第1の化合物は、M、リン(P)、及び酸素(O)のみからなるものに限らず、V、Si、B、Al、Mg、及びZnから選択される少なくとも1種の原子Xを含んでいてもよい。第1の化合物にXを含有させることで、第1の化合物と第2の化合物との反応性を改善することができる。また、第1の化合物として非晶質物を適用する場合には、第1の化合物の非晶質化を促進することができる。Xの含有量(Xが複数の原子からなる場合には合計量)は、リン(P)とXとの合計量に対するXの原子比(X/(P+X))を0.01〜0.2の範囲とすることが好ましい。また、還元剤として作用する元素(例えば炭素(C))の原子Yを、リン(P)とYとの合計量に対するYの原子比(Y/(B+Y))が0.01〜0.1となる範囲で含んでいてもよい。
第1の化合物は、フレーク状又は繊維状が好ましい。フレーク状の場合には、平均厚さが200μm以下が好ましく、100μm以下が特に好ましい。フレーク状の場合の平均厚さに垂直な面の平均直径は、特に限定されない。繊維状の場合には、平均直径が50μm以下が好ましく、30μm以下が特に好ましい。平均厚さや平均直径の上限値以下であると、工程(II)の手間を低減することができ、結晶化効率を高くすることができる。平均厚さ及び平均直径は、ノギスやマイクロメータにより測定することができる。平均直径は、顕微鏡観察により測定することもできる。
第2の化合物は、Li、Na及びKから選択される少なくとも1種の原子Aを含む化合物であり、加熱により熱分解してA2Oに変化する化合物であればよい。第2の化合物としては、工程(III)でA2Oに変化する化合物であることが好ましい。このような化合物を使用することで、リン酸化合物(3)を効率的に得ることができる。第2の化合物としては、Aの炭酸塩(A2CO3)、Aの炭酸水素塩(AHCO3)、Aの水酸化物(AOH)、Aの硝酸塩(ANO3)、Aの塩化物(ACl)、Aの硫酸塩(A2SO4)、Aの酢酸塩(CH3COOA)及びAのシュウ酸塩((COOA)2)(ただし、これらの化合物は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)から選択される少なくとも1種が好ましい。安価で入手しやすく、また加熱によりA2Oになりやすい点から、A2CO3、AHCO3及びAOHから選択される少なくとも1種が特に好ましい。なお、第2の化合物自体がA2Oである場合、A2OはH2OやCO2と反応しやすく、化学的安定性が低いために好ましくない。
第2の化合物を構成するAは、二次電池用正極材料として適しているため、Liを必須とするのが好ましく、Liのみであることが特に好ましい。Liを含むリン酸化合物は、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量が高くできる。
第1の化合物及び第2の化合物の純度は特に限定されず、反応性やリン酸化合物(3)の特性(例えば正極材料の特性)等を考慮すると、99質量%以上が好ましい。
第1の化合物や第2の化合物は粒子であることが好ましい。該粒子の平均粒径は特に限定されず、いずれの平均粒径も体積換算のメディアン径で1nm〜100μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲であると、第1の化合物と第2の化合物との反応を促進できる。平均粒径が小さい場合には、還元反応が促進され、工程(III)の加熱温度や時間を低減できるために好ましい。なお、第1の化合物や第2の化合物の平均粒径は、工程(I)の原料として使用される際に上記範囲であるのが好ましい。すなわち、例えば工程(IV)によって第1の化合物を製造する場合、得られた第1の化合物の平均粒径は上記範囲外であっても、工程(I)において調合する前に予め粉砕して上記範囲に調整できていればよい。なお、粉砕によって生じた微粒子等は、特に除去する必要はない。粒径の測定は、沈降法やレーザ回折/散乱式粒子径測定装置で測定できる。
第1の化合物や第2の化合物は粒子であることが好ましい。該粒子の平均粒径は特に限定されず、いずれの平均粒径も体積換算のメディアン径で1nm〜100μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲であると、第1の化合物と第2の化合物との反応を促進できる。平均粒径が小さい場合には、還元反応が促進され、工程(III)の加熱温度や時間を低減できるために好ましい。なお、第1の化合物や第2の化合物の平均粒径は、工程(I)の原料として使用される際に上記範囲であるのが好ましい。すなわち、例えば工程(IV)によって第1の化合物を製造する場合、得られた第1の化合物の平均粒径は上記範囲外であっても、工程(I)において調合する前に予め粉砕して上記範囲に調整できていればよい。なお、粉砕によって生じた微粒子等は、特に除去する必要はない。粒径の測定は、沈降法やレーザ回折/散乱式粒子径測定装置で測定できる。
第1の化合物と第2の化合物とは、前述した式(2)で表される原子比となるように、すなわち式(2)中のaが0<a<2で、bが0.8<b<1.2となるように調合される。a及びbを上記範囲にすることにより、リン酸化合物(3)が得られる。本発明により得られるリン酸化合物(3)は、粒子であることが好ましく、結晶質粒子であることがより好ましく、オリビン型結晶粒子であることが特に好ましい。第1の化合物と第2の化合物とを式(2)で表される原子比となるように調合することにより、リン酸化合物(3)のオリビン型結晶粒子を得やすい。さらに、AMPO4の組成を有するリン酸化合物(3)のオリビン型結晶粒子が得やすい。
AとMとPを式(2)で表される原子比となるように調合して調合物とする際、調合物における酸素原子の原子比(酸化物となったと仮定した場合、リン(P)原子を1とした場合の酸素原子の原子比)の値は後の工程(III)で変化しうる値であり、工程(III)の後にcとなる値である。例えば、工程(III)で成分の酸化還元、揮発等により酸素原子比の値が増減する場合には、該増減を考慮に入れた値とするのが好ましい。調合物においてリン(P)原子を1とした場合の酸素原子の原子比の値は、目的とするリン酸化合物(3)のcの値に対して、100%以上103%以内とするのが好ましい。
AとMとPを式(2)で表される原子比となるように調合して調合物とする際、調合物における酸素原子の原子比(酸化物となったと仮定した場合、リン(P)原子を1とした場合の酸素原子の原子比)の値は後の工程(III)で変化しうる値であり、工程(III)の後にcとなる値である。例えば、工程(III)で成分の酸化還元、揮発等により酸素原子比の値が増減する場合には、該増減を考慮に入れた値とするのが好ましい。調合物においてリン(P)原子を1とした場合の酸素原子の原子比の値は、目的とするリン酸化合物(3)のcの値に対して、100%以上103%以内とするのが好ましい。
第1の化合物と第2の化合物とを調合する手段としては、特定量の2以上の化合物を合わせる手段から採用され、混合することにより合わせることが好ましい。第1の化合物と第2の化合物との調合物には、後述する有機化合物及び炭素粉末から選択される少なくとも1種の炭素源を含ませてもよい。特にリン酸化合物(3)のオリビン型結晶は絶縁物質であるため、リン酸化合物(3)の粒子からなる粉末を二次電池用正極材料として用いる場合に、調合物に炭素源を含ませるのが好ましい。炭素源は加熱時に還元剤として機能し、さらに加熱後に導電材として機能する。リン酸化合物(3)を二次電池用正極材料として用いる場合、リン酸化合物(3)の粒子からなる粉末が導電材を含むことによって、二次電池用正極材料の導電性を高めることができる。
調合物に含まされた炭素粉末は、リン酸化合物(3)の粒子の表面に固着し、リン酸化合物(3)の粒子の集合体である粉末の導電性を向上させる。有機化合物はリン酸化合物(3)に対する炭素粉末の結合材として機能することに加えて、例えばそれ自体も工程(III)により熱分解し、さらに炭化して炭化物となり、それ自体が導電材としてリン酸化合物(3)の導電性を向上させる。従って、有機化合物は工程(III)で熱分解反応し、例えば水素原子や酸素原子が離脱して炭化する性質を有するものが好ましく、これによって有機化合物の工程(III)での反応物を導電材として機能させることができる。有機化合物及び炭素粉末はいずれも導電材として機能するため、それらの少なくとも1種を含ませればよい。
炭素源として炭素粉末を使用する場合には、リン酸化合物(3)に対する結合力を高める上で有機化合物と併用することが好ましい。すなわち、調合物には有機化合物を単独で含ませるか、あるいは有機化合物と炭素粉末とを含ませることが好ましい。
有機化合物や炭素粉末は、工程(III)での第1の化合物と第2の化合物との還元反応を促進する機能を有する。例えば、MPO4(Mの価数は+3とする)とA2Oとを加熱する際に、有機化合物(CmHn)を含ませた場合には、下式(7)で表される還元反応が促進され、AMPO4(Mの価数は+2とする)が得られやすくなる。
2M(III)PO4+A2O+CmHn+(m+n/4−1/2)O2
→2AM(II)PO4+mCO2+n/2H2O …(7)
2M(III)PO4+A2O+CmHn+(m+n/4−1/2)O2
→2AM(II)PO4+mCO2+n/2H2O …(7)
有機化合物は第1の化合物と第2の化合物との反応温度(第1の化合物が非晶質物の場合、その結晶核の生成及び粒成長温度を含む)より高い温度で分解、炭化するものが好ましい。有機化合物はそれ自体が炭素粉末のリン酸化合物(3)に対する結合材として機能するため、炭素粉末と併用されることが好ましい。さらに、粉砕時に調合物の酸化を防止し、さらに還元を促進する上で、還元性を有する有機化合物を用いることが好ましい。
有機化合物としては、糖類、アミノ酸類、ペプチド類、アルデヒド類及びケトン類から選択される少なくとも1種であることが好ましく、糖類、アミノ酸類及びペプチド類が特に好ましい。糖類としては、グルコース、フラクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース、マルトース、セロビオース、トレハロース等のオリゴ糖、転化糖、デキストリン、アミロース、アミロペクチン、セルロース等の多糖類、及びアスコルビン酸等のこれらの類縁物質が挙げられる。単糖類及び一部のオリゴ糖は還元性が強くて好ましい。
アミノ酸類としては、アラニン、グリシン等のアミノ酸が挙げられる。ペプチド類としては、分子量が1,000以下の低分子ペプチドが挙げられる。さらに、アルデヒド基やケトン基等の還元性の官能基を有する有機化合物も挙げられる。有機化合物としては、とりわけグルコース、スクロース、グルコース−フラクトース転化糖、カラメル、澱粉、α化した澱粉、カルボキシメチルセルロース等が好適である。
炭素粉末としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック等を用いることが好ましい。炭素粉末を調合物の粉砕時に含ませることによって、工程(III)でリン酸化合物(3)のオリビン型結晶粒子を生成した後に、炭素粉末を混合する工程を別途に設ける必要がなくなる。さらに、炭素粉末を有機化合物と共に調合物の粉砕時に含ませることによって、リン酸化合物(3)の粉末内での炭素粉末の分布が均一となり、また有機化合物又はその熱分解物(炭化物)との接触面積が大きくなる。これによって、炭素粉末のリン酸化合物(3)に対する結合力を高めることが可能となる。
炭素源の量は、調合物と炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対する該炭素換算量(質量)の割合が0.1〜20質量%となる量が好ましく、2〜10質量%となる量が特に好ましい。炭素源を上記範囲の下限値以上にすることにより、リン酸化合物(3)を二次電池用正極材料として用いる場合の導電性を充分に高めることができる。上記範囲の上限値以下にすることにより、リン酸化合物(3)を二次電池用正極材料として用いる場合に、二次電池用正極材料としての特性を高いまま保持できる。
[第1の化合物の製造]
第1の化合物は、市販品を使用してもよいし、製造してもよい。製造する場合には、前記工程(IV)で製造することが好ましい。すなわち、まずMを含む化合物及びPを含む化合物を、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、該粉砕物を加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して第1の化合物を製造するのが好ましい。また、前記原子Xや原子Yを含む第1の化合物を製造する場合には、Xを含む化合物やYを含む化合物をMを含む化合物及びPを含む化合物とともに使用することにより、製造できる。
第1の化合物は、市販品を使用してもよいし、製造してもよい。製造する場合には、前記工程(IV)で製造することが好ましい。すなわち、まずMを含む化合物及びPを含む化合物を、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、該粉砕物を加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して第1の化合物を製造するのが好ましい。また、前記原子Xや原子Yを含む第1の化合物を製造する場合には、Xを含む化合物やYを含む化合物をMを含む化合物及びPを含む化合物とともに使用することにより、製造できる。
原料混合物におけるMを含む化合物としては、Mの酸化物(FeO、Fe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、CoO、Co3O4、Co2O3、NiO)、Mのオキシ水酸化物(MO(OH))、Mの金属から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。入手のし易さやコストの点から、Fe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、Co3O4及びNiOが特に好ましい。
原料混合物におけるPを含む化合物としては、酸化リン(P2O5)、リン酸アンモニウム((NH4)3PO4)、リン酸水素アンモニウム((NH4)2HPO4、NH4H2PO4)、リン酸(H3PO4)、ポリリン酸(H(n+2)PnO(3n+1))、亜リン酸(H3PO3)及び次亜リン酸(H3PO2)から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。入手容易であり、かつ取扱いがしやすい点から、(NH4)2HPO4、NH4H2PO4及びP2O5が特に好ましい。
Mを含む化合物とPを含む化合物の好ましい組み合わせは、入手容易な点からFe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、Co3O4及びNiOと、NH4H2PO4及びP2O5とである。
原料混合物におけるPを含む化合物としては、酸化リン(P2O5)、リン酸アンモニウム((NH4)3PO4)、リン酸水素アンモニウム((NH4)2HPO4、NH4H2PO4)、リン酸(H3PO4)、ポリリン酸(H(n+2)PnO(3n+1))、亜リン酸(H3PO3)及び次亜リン酸(H3PO2)から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。入手容易であり、かつ取扱いがしやすい点から、(NH4)2HPO4、NH4H2PO4及びP2O5が特に好ましい。
Mを含む化合物とPを含む化合物の好ましい組み合わせは、入手容易な点からFe3O4、Fe2O3、MnO、Mn2O3、MnO2、Co3O4及びNiOと、NH4H2PO4及びP2O5とである。
原料混合物の粉砕は、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて行うことが好ましい。粉砕は乾式又は湿式で行い、分散媒の除去が不要である点で、乾式で粉砕することが好ましい。粉砕により、より小さな粒径の原料が均一にかつ密に混合した粉砕物が得られる。
原料混合物を粉砕した後の粉砕物の加熱は、空気中、不活性ガス中、還元ガス中のいずれでもよい。空気中での粉砕物の溶融がコストの点で好ましい。空気中で製造した化合物であっても、後工程(工程(III))で不活性ガス中又は還元ガス中で加熱することによって、化合物を構成するMが還元される。例えば、空気中で加熱することにより製造された第1の化合物におけるMの価数が+2を超える場合であっても、Mは工程(III)において還元され、Mの価数が+2のリン酸化合物(3)が得られる。
不活性ガスとは、窒素ガス(N2)、及びヘリウムガス(He)及びアルゴンガス(Ar)等の希ガスから選択される少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含む気体をいう。還元ガスとは、上記した不活性ガスに、還元性を有するガスを添加し、実質的に酸素を含まない気体をいう。還元性を有するガスとしては、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)及びアンモニアガス(NH3)等が挙げられる。不活性ガス中の還元性を有するガスの量は、全気体体積中に含まれる還元性を有するガスの量が0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%が特に好ましい。酸素の含有量は、該気体体積中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下が特に好ましい。
不活性ガスとは、窒素ガス(N2)、及びヘリウムガス(He)及びアルゴンガス(Ar)等の希ガスから選択される少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含む気体をいう。還元ガスとは、上記した不活性ガスに、還元性を有するガスを添加し、実質的に酸素を含まない気体をいう。還元性を有するガスとしては、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)及びアンモニアガス(NH3)等が挙げられる。不活性ガス中の還元性を有するガスの量は、全気体体積中に含まれる還元性を有するガスの量が0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%が特に好ましい。酸素の含有量は、該気体体積中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下が特に好ましい。
原料混合物の粉砕物の加熱温度は1,100〜1,400℃が好ましく、1,200〜1,350℃が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると溶融が容易になり、上記範囲の上限値以下であると原料成分の揮発がしにくくなる。
また、原料混合物の粉砕物の加熱時間は0.2〜2時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。上記範囲とすることにより原料混合物の溶融物の均一性が充分になり、また原料成分が揮発しにくい。
また、原料混合物の粉砕物の加熱時間は0.2〜2時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。上記範囲とすることにより原料混合物の溶融物の均一性が充分になり、また原料成分が揮発しにくい。
第1の化合物としては、非晶質部分を含む化合物、特に非晶質部分が80〜100質量%である固体状化合物を得るためには、加熱で得た溶融物を冷却してガラス状物質を製造する方法、水熱法、ゾル−ゲル法を用いる。非晶質物を安価にかつ大量に製造できる点で、加熱で得た溶融物を冷却してガラス状物質を製造する方法が好ましい。
溶融物の冷却方法としては、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下して冷却する方法、回転する単ローラに溶融物を滴下して冷却する方法、及び溶融物を冷却したカーボン板や金属板にプレスして冷却する方法が好ましい。中でも、双ローラを用いた冷却方法が、冷却速度が速く、大量に処理できるので特に好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製、セラミックス製のものを用いることが好ましい。
なお、冷却方法としては、溶融物を水に直接投入する方法もあるが、該方法は制御が難しく、非晶質物を得るのが難しく、固化物が塊状となり、粉砕に多くの労力を要する欠点がある。冷却方法としては、液体窒素に溶融物を直接投入する方法もあり、水の場合よりも冷却速度を速くできるが、水を使用する方法と同様な問題があり、高コストである。
溶融物の冷却方法としては、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下して冷却する方法、回転する単ローラに溶融物を滴下して冷却する方法、及び溶融物を冷却したカーボン板や金属板にプレスして冷却する方法が好ましい。中でも、双ローラを用いた冷却方法が、冷却速度が速く、大量に処理できるので特に好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製、セラミックス製のものを用いることが好ましい。
なお、冷却方法としては、溶融物を水に直接投入する方法もあるが、該方法は制御が難しく、非晶質物を得るのが難しく、固化物が塊状となり、粉砕に多くの労力を要する欠点がある。冷却方法としては、液体窒素に溶融物を直接投入する方法もあり、水の場合よりも冷却速度を速くできるが、水を使用する方法と同様な問題があり、高コストである。
溶融物の冷却は、空気中、不活性ガス中又は還元ガス中で行うのが、設備が簡便であることから好ましい。該冷却方法によれば、非晶質物をより簡便に得ることができる。
溶融物の冷却速度は−1×103℃/秒以上が好ましく、−1×104℃/秒以上が特に好ましい。本明細書では、冷却する場合の単位時間当たりの温度変化(すなわち冷却速度)を負の値で示し、加熱する場合の単位時間当たりの温度変化(すなわち加熱速度)を正の値で示す。冷却速度を該値以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度の上限値は製造設備や大量生産性の点から−1×1010℃/秒程度が好ましく、実用性の点からは−1×108℃/秒が特に好ましい。
溶融物の冷却速度は−1×103℃/秒以上が好ましく、−1×104℃/秒以上が特に好ましい。本明細書では、冷却する場合の単位時間当たりの温度変化(すなわち冷却速度)を負の値で示し、加熱する場合の単位時間当たりの温度変化(すなわち加熱速度)を正の値で示す。冷却速度を該値以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度の上限値は製造設備や大量生産性の点から−1×1010℃/秒程度が好ましく、実用性の点からは−1×108℃/秒が特に好ましい。
[工程(II)]
工程(II)は、工程(I)で得た調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程である。粉砕により、より小さな粒径の化合物が均一にかつ密に混合した、調合物の粉砕物が得られる。また、炭素源を含む調合物を使用する代わりに、この工程で炭素源を含まない調合物に前記炭素源を混入してもよい。この工程で炭素源を混入する場合、炭素源の種類や量などは前記炭素源を含む調合物を製造する場合と同じでよい。調合物の粉砕はボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて、乾式又は湿式で行うことが好ましい。炭素源を含む調合物を用いた場合やこの工程で炭素源を混入する場合には、炭素源を粉砕物の表面に均一に分散させる上で、湿式で粉砕することが好ましい。特に炭素源が有機化合物の場合、該有機化合物を溶解しうる分散媒を使用した湿式粉砕が好ましい。
工程(II)は、工程(I)で得た調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程である。粉砕により、より小さな粒径の化合物が均一にかつ密に混合した、調合物の粉砕物が得られる。また、炭素源を含む調合物を使用する代わりに、この工程で炭素源を含まない調合物に前記炭素源を混入してもよい。この工程で炭素源を混入する場合、炭素源の種類や量などは前記炭素源を含む調合物を製造する場合と同じでよい。調合物の粉砕はボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて、乾式又は湿式で行うことが好ましい。炭素源を含む調合物を用いた場合やこの工程で炭素源を混入する場合には、炭素源を粉砕物の表面に均一に分散させる上で、湿式で粉砕することが好ましい。特に炭素源が有機化合物の場合、該有機化合物を溶解しうる分散媒を使用した湿式粉砕が好ましい。
湿式粉砕の際の分散媒としては、水、又はエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。水及び有機溶媒の混液を用いることもできる。工程(II)終了時の粉砕物の平均粒径は、第1の化合物と第2の化合物との反応を促進するために、体積換算のメディアン径で1nm〜100μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲であると、第1の化合物と第2の化合物との反応を促進できる。粉砕物の粒径が小さいと、工程(III)における加熱温度や加熱時間を低減できるために好ましい。工程(II)を湿式で行った場合には、分散媒を沈降、濾過、減圧乾燥、加熱乾燥等で除去した後に、工程(III)を実施することが好ましい。
[工程(III)]
工程(III)は、第1の化合物と第2の化合物とを反応させて、リン酸化合物(3)、好ましくはその結晶質粒子、さらに好ましくはそのオリビン型結晶粒子を得る工程である。工程(III)は、第2の化合物の熱分解反応工程や、第1の化合物が非晶質物である場合の結晶核生成工程及び粒成長工程を含むことが好ましい。さらに、炭素源を含む粉砕物を使用した場合には、生成するリン酸化合物(3)の粒子の表面に炭素源やその熱分解物を結合させる工程であることが好ましい。工程(II)を湿式で行った場合には、工程(III)における加熱により分散媒の除去を行ってもよい。
工程(III)は、第1の化合物と第2の化合物とを反応させて、リン酸化合物(3)、好ましくはその結晶質粒子、さらに好ましくはそのオリビン型結晶粒子を得る工程である。工程(III)は、第2の化合物の熱分解反応工程や、第1の化合物が非晶質物である場合の結晶核生成工程及び粒成長工程を含むことが好ましい。さらに、炭素源を含む粉砕物を使用した場合には、生成するリン酸化合物(3)の粒子の表面に炭素源やその熱分解物を結合させる工程であることが好ましい。工程(II)を湿式で行った場合には、工程(III)における加熱により分散媒の除去を行ってもよい。
工程(III)は、不活性ガス中又は還元ガス中で行う。
圧力は、常圧、加圧(1.1×105Pa以上)、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれでもよい。また、還元剤(例えばグラファイト)と粉砕物とを入れた容器を加熱炉内に装填して実施した場合には、粉砕物中のMイオンの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進することができる。
圧力は、常圧、加圧(1.1×105Pa以上)、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれでもよい。また、還元剤(例えばグラファイト)と粉砕物とを入れた容器を加熱炉内に装填して実施した場合には、粉砕物中のMイオンの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進することができる。
工程(III)においてMの一部又は全部が還元されるのが好ましく、リン酸化合物(3)におけるMの価数N3は、前記第1の化合物におけるMの価数N1と等しいかMの価数N1より小さくなる。すなわち、リン酸化合物(3)におけるMの価数N3は、平均値として、その原料である第1の化合物のMの価数N1よりも小さくなる(N3<N1)。好ましくは、工程(III)により、第1の化合物におけるMの実質的にすべてが還元されることが好ましい(N3≦N1−1)。また、リン酸化合物(3)におけるMの価数N3は、N1−1であることが好ましい。
加熱温度は、400〜900℃が好ましく、500〜800℃が特に好ましい。第1の化合物として非晶質部分を含む化合物、特に非晶質部分が80〜100質量%である化合物を用いた場合には、通常の固相反応の加熱温度より低い温度で加熱工程を実施することができる。加熱温度が上記範囲の下限値以上であると、反応が生じ易くなる。上記範囲の上限値以下であると、粉砕物が融解しない。
加熱工程は一定温度で保持しても、多段階に温度を変化させて行ってもよい。加熱温度を高くするほど、生成する粒子の径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定することが好ましい。
また、加熱時間(加熱温度による保持時間)は所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。
加熱工程は一定温度で保持しても、多段階に温度を変化させて行ってもよい。加熱温度を高くするほど、生成する粒子の径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定することが好ましい。
また、加熱時間(加熱温度による保持時間)は所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。
工程(III)の加熱が終了した後、通常は室温(20〜25℃)まで冷却する。該冷却における冷却速度は、−30℃/時間〜−300℃/時間が好ましい。冷却速度を該範囲にすることにより、加熱による歪みを除去でき、生成物が結晶質粒子である場合は、結晶構造を保ったまま目的物を得ることができる。また、冷却手段を用いずに冷却できる利点もある。冷却は放置して室温(20〜25℃)まで冷却させてもよい。冷却は、不活性ガス中又は還元ガス中で行うのが好ましい。
工程(II)で調合物の粉砕物の表面に付着した有機化合物や炭素粉末は、工程(III)で生成したリン酸化合物(3)の粒子表面に結合して導電材として機能する。有機化合物は工程(III)で熱分解され、さらに少なくとも一部が炭化物となって導電材として機能する。有機化合物の熱分解は400℃以下で行うことが好ましく、炭化は600℃以下で行うことが好ましい。熱分解を600℃以下で行うと、炭素粉末の炭化に加えて、熱分解反応に伴う体積変化を小さくできるため、炭化物及び炭素粉末がリン酸化合物(3)の粒子表面に均一かつ強固に結合できる。
[リン酸化合物(3)]
本発明の製造方法により得られるリン酸化合物(3)は、特に二次電池用正極材料として有用なリン酸化合物である。該リン酸化合物(3)からなる固体はオリビン型結晶構造を含むことが好ましく、特にオリビン型結晶粒子であることが好ましい。該粒子としては、一次粒子及び二次粒子の双方を含む。また、調合物に炭素源を含ませた場合には、リン酸化合物(3)の結晶質粒子の生成と同時に、その表面に有機化合物や炭素粉末に基づく導電材が均一にかつ強固に結合した粉末材料を製造することができる。この粉末材料は二次電池用正極材料に好適である。得られたリン酸化合物(3)の粒子やそれを含む粉末材料中に二次粒子が存在する場合、一次粒子が破壊されない程度の範囲で解砕及び粉砕してもよい。
本発明の製造方法により得られるリン酸化合物(3)は、特に二次電池用正極材料として有用なリン酸化合物である。該リン酸化合物(3)からなる固体はオリビン型結晶構造を含むことが好ましく、特にオリビン型結晶粒子であることが好ましい。該粒子としては、一次粒子及び二次粒子の双方を含む。また、調合物に炭素源を含ませた場合には、リン酸化合物(3)の結晶質粒子の生成と同時に、その表面に有機化合物や炭素粉末に基づく導電材が均一にかつ強固に結合した粉末材料を製造することができる。この粉末材料は二次電池用正極材料に好適である。得られたリン酸化合物(3)の粒子やそれを含む粉末材料中に二次粒子が存在する場合、一次粒子が破壊されない程度の範囲で解砕及び粉砕してもよい。
本発明の製造方法は、リン酸化合物(3)の組成制御がしやすくかつ均一な粒子を得やすいため、リン酸化合物(3)を安価にかつ簡便に製造することができる。特に、リン酸化合物(3)のオリビン型結晶粒子の組成制御がしやすくかつ均一な粒子を得やすい。さらに、化学組成や粒子径の均一性に優れ、かつ高い結晶性を有するオリビン型結晶粒子を得ることができる。このようなリン酸化合物(3)のオリビン型結晶粒子は、化学組成や粒子径の均一性に基づいて特性や信頼性の向上を図ることができる。また、得られるオリビン型結晶粒子は高い結晶性を有しているため、二次電池用正極材料に適用した際に、繰返し使用における機能低下を抑制することができる。従って、特性や信頼性に優れる二次電池用正極材料を安価に提供することが可能となる。
さらに、炭素源を使用した場合には、リン酸化合物(3)の粒子の表面に導電材を均一にかつ強固に結合させることができる。このため、リン酸化合物(3)の粉末からなる正極材料の導電性やその信頼性を高めうる。すなわち、導電性を含む特性や信頼性に優れる二次電池用正極材料を再現性よく得られる。従って、リチウムイオン二次電池等の容量の向上を図ると共に、電池特性や信頼性を長期にわたって維持できる二次電池用正極材料を提供できる。
本発明の製造方法で得られるリン酸化合物(3)は、下式(4)で表される組成を有するリン酸化合物が好ましい。
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、a及びbは前記と同じ数値を示す。)
特に、AとしてLiを使用すると共に、MとしてFe及びMnから選択される少なくとも1種を使用した組成を有することが好ましい。
リン酸化合物(3)の組成はLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物であることがより好ましく、LiFedMn1-dPO4(0≦d≦1)で表される組成を有するリン酸化合物がさらに好ましく、LiFePO4で表される組成を有するリン酸化合物が特に好ましい。これらのリン酸化合物はオリビン型結晶粒子であることが好ましく、該オリビン型結晶粒子からなる粉末は二次電池用正極材料として好適である。
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、a及びbは前記と同じ数値を示す。)
特に、AとしてLiを使用すると共に、MとしてFe及びMnから選択される少なくとも1種を使用した組成を有することが好ましい。
リン酸化合物(3)の組成はLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物であることがより好ましく、LiFedMn1-dPO4(0≦d≦1)で表される組成を有するリン酸化合物がさらに好ましく、LiFePO4で表される組成を有するリン酸化合物が特に好ましい。これらのリン酸化合物はオリビン型結晶粒子であることが好ましく、該オリビン型結晶粒子からなる粉末は二次電池用正極材料として好適である。
本発明のリン酸化合物(3)の粒子の平均粒径は、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmが特に好ましい。平均粒径を該範囲とすることにより、リン酸化合物(3)粒子の粉末の導電性がより高くなる。平均粒径は、例えば電子顕微鏡による観察やレーザ回折式粒度分布計による測定等によって求められる。リン酸化合物(3)からなる粉末の比表面積は、0.2〜200m2/gが好ましく、1〜200m2/gが特に好ましい。比表面積を該範囲とすることにより、リン酸化合物(3)からなる粉末の導電性が高くなる。比表面積は、例えば窒素吸着法による比表面積測定装置で測定できる。
本発明の特に好ましい製造方法の態様を以下に記すが、本発明はこれに限定されない。第1の化合物は非晶質化し易い化合物が好ましい。非晶質化し易い第1の化合物としては、MとしてFe及びMnから選択される少なくとも1種を用いたMxPyOz、すなわち(FeeMn1-e)xPyOz(0≦e≦1)が例示される。第2の化合物はLiの炭酸塩や炭酸水素塩が好ましい。得られるリン酸化合物(3)は結晶質物であることが好ましい。
特に好ましい態様の第1の具体例としては、第1の化合物としてFefMn2-fP2O7(0≦f≦2)を用いると共に、第2の化合物としてLi2CO3及びLiHCO3から選択される少なくとも1種を用いて、オリビン型結晶構造のLiFedMn1-dPO4(0≦d≦1)を含む粒子を製造する方法が挙げられる。
第2の具体例としては、第1の化合物としてFegMn1-gPO4(0≦g≦1)を用いると共に、第2の化合物としてLi2CO3及びLiHCO3から選択される少なくとも1種を用いて、オリビン型結晶構造のLiFedMn1-dPO4(0≦d≦1)を含む粒子を製造する方法が挙げられる。
第2の具体例としては、第1の化合物としてFegMn1-gPO4(0≦g≦1)を用いると共に、第2の化合物としてLi2CO3及びLiHCO3から選択される少なくとも1種を用いて、オリビン型結晶構造のLiFedMn1-dPO4(0≦d≦1)を含む粒子を製造する方法が挙げられる。
[二次電池用正極及び二次電池の製造方法]
本発明の製造方法により得られたリン酸化合物(3)を、二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極及び二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状及びサイズを適宜採用できる。
本発明の製造方法により得られたリン酸化合物(3)を、二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極及び二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状及びサイズを適宜採用できる。
本発明の二次電池用正極は、本発明の製造方法で得られるリン酸化合物(3)を用いる以外は、公知の電極の製造方法に従って製造できる。例えば、リン酸化合物(3)の粉末を必要に応じて公知の結着材(ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等)、さらに必要に応じて公知の導電材(アセチレンブラック、カーボン、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス等)と混合した後、得られた混合粉末をステンレス鋼製等の支持体上に圧着成形したり、金属製容器に充填すればよい。また、例えば、該混合粉末を有機溶剤(N−メチルピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)と混合して得られたスラリーをアルミニウム、ニッケル、ステンレス、又は銅等の金属基板上に塗布する等の方法も採用できる。
二次電池の構造は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極を電極として用いる以外は、公知の二次電池における構造を採用することができる。セパレータ、電池ケース等についても同様である。負極としては、活物質として公知の負極用活物質を使用でき、アルカリ金属材料及びアルカリ土類金属材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。電解液としては、非水系の電解液が好ましい。すなわち、本発明の製造方法で得られる二次電池としては、非水電解質リチウムイオン二次電池が好ましい。
本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の説明に限定されない。
(実施例1〜10)
四酸化三鉄(Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三コバルト(Co3O4)、酸化ニッケル(NiO)及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を、それぞれ表1に示す第1の化合物となるように秤量して原料混合物を得、該原料混合物を乾式で粉砕した。これらの粉砕物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のるつぼにそれぞれ充填した。次に、該るつぼをケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉(株式会社モトヤマ社製、装置名:NH3045F)の中に入れた。該電気炉を、流量2L/分でN2ガスを流通しつつ、1,300℃で0.5時間加熱し加熱した。目視で透明になったことを確認して、それぞれの溶融物を得た。
四酸化三鉄(Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三コバルト(Co3O4)、酸化ニッケル(NiO)及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を、それぞれ表1に示す第1の化合物となるように秤量して原料混合物を得、該原料混合物を乾式で粉砕した。これらの粉砕物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のるつぼにそれぞれ充填した。次に、該るつぼをケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉(株式会社モトヤマ社製、装置名:NH3045F)の中に入れた。該電気炉を、流量2L/分でN2ガスを流通しつつ、1,300℃で0.5時間加熱し加熱した。目視で透明になったことを確認して、それぞれの溶融物を得た。
次に、るつぼ中の溶融物を、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことによって、液滴を−1×105℃/秒で室温(20〜25℃)まで冷却し、黒色又は茶褐色のフレーク状の固化物を得た。得られた固化物はガラス状物質であった。各例で得たフレーク状固化物は、X線回折パターンから、いずれも非晶質部分を主体とすることがわかった。非晶質部分の割合は、いずれも90質量%以上であった。以上のようにして第1の化合物を製造した。実施例1、3及び5で得たフレーク状固化物のX線回折パターンを図1に示す。図1のa)は実施例1で得たフレーク状固化物のX線回折パターンであり、同様にb)、c)はそれぞれ実施例3及び5で得たフレーク状固化物のX線回折パターンである。
各例で得たフレーク状固化物を予め乾式で粉砕し、これら粉砕物と炭酸リチウム(第2の化合物)とを酸化物基準のモル比で1:1となるように調合した後、調合物をエタノールを媒体として湿式で粉砕した。各粉砕物を3体積%H2−Arガス中にて、700℃で8時間加熱することによって、それぞれLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を得た。さらに、各例において、各粉砕物を3体積%H2−Arガス中にて、600℃×8時間の加熱により、また800℃×8時間の加熱により、いずれの温度においてもそれぞれ上記700℃×8時間の加熱の場合と同様のLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を得た。得られた各粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、いずれも既存のLiMPO4の回折パターンと類似した回折パターンが得られた。
実施例1〜5で得た粒子では、既存のLiFePO4(PDF番号01−083−2092)及び/又はLiMnPO4(PDF番号01−077−0178)の回折パターンと類似した回折パターンが得られた。実施例1、3及び5において、700℃で8時間加熱して得たLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ図2のa)、b)、及びc)に示す。また、実施例6では既存のLiCoPO4(PDF番号01−089−6192)の回折パターンと類似した回折パターンが得られ、実施例7〜10ではLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子の固溶体又は共晶体と考えられる回折パターンが得られた。
上記X線回折パターンは、いずれの粒子もオリビン型結晶粒子であることを示している。
上記X線回折パターンは、いずれの粒子もオリビン型結晶粒子であることを示している。
実施例1及び5で得たリン酸化合物の粒径分布を、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、装置名:LA−920)で測定した。体積換算のメディアン径は、それぞれ0.76μm(実施例1)、0.83μm(実施例5)であった。さらに、比表面積を比表面積測定装置(島津製作所社製、装置名:ASAP2020)で測定したところ、25m2/g(実施例1)、29m2/g(実施例5)であった。
(実施例11、12)
実施例1及び3で得たフレーク状固化物を予め乾式で粉砕し、これら粉砕物と炭酸リチウム(第2の化合物)とを酸化物基準のモル比で1:1となるように調合して調合物を得、さらに該調合物に対してカーボンブラックを、該調合物とカーボンブラックとの質量比が90:10となるように添加した。これらを実施例1と同様に湿式で粉砕した。各粉砕物をN2ガス中にて800℃で8時間加熱することによって、それぞれ炭素含有のLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を得た。
実施例1及び3で得たフレーク状固化物を予め乾式で粉砕し、これら粉砕物と炭酸リチウム(第2の化合物)とを酸化物基準のモル比で1:1となるように調合して調合物を得、さらに該調合物に対してカーボンブラックを、該調合物とカーボンブラックとの質量比が90:10となるように添加した。これらを実施例1と同様に湿式で粉砕した。各粉砕物をN2ガス中にて800℃で8時間加熱することによって、それぞれ炭素含有のLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を得た。
得られた各粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、実施例11では既存のLiFePO4の回折パターンと類似した回折パターンが得られた。実施例12では既存のLiFePO4とLiMnPO4との回折パターンと類似した回折パターンが得られ、これらの固溶体と考えられた。実施例11及び12の回折パターンを、図3のa)及びb)に示す。さらに、実施例11及び12で得たLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子の炭素含有量を炭素分析計で測定したところ、それぞれC質量基準で8.5%(実施例11)、8.3%(実施例12)であった。
(実施例13〜18)
四酸化三鉄(Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三コバルト(Co3O4)、酸化ニッケル(NiO)及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を、それぞれ表2に示す第1の化合物の組成となるように秤量して混合し、該混合物を実施例1と同様に乾式で粉砕した後、1,300℃で0.5時間加熱した。次いで、実施例1と同様にして溶融物を室温(20〜25℃)まで冷却して、フレーク状固化物を製造した。各例で得たフレーク状固化物はX線回折パターンから、いずれも非晶質部分を主体とすることがわかった。非晶質部分の割合は、いずれも90質量%以上であった。実施例13、15及び17で得たフレーク状固化物のX線回折パターンを、それぞれ図4のa)、b)、及びc)に示す。
四酸化三鉄(Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三コバルト(Co3O4)、酸化ニッケル(NiO)及びリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)を、それぞれ表2に示す第1の化合物の組成となるように秤量して混合し、該混合物を実施例1と同様に乾式で粉砕した後、1,300℃で0.5時間加熱した。次いで、実施例1と同様にして溶融物を室温(20〜25℃)まで冷却して、フレーク状固化物を製造した。各例で得たフレーク状固化物はX線回折パターンから、いずれも非晶質部分を主体とすることがわかった。非晶質部分の割合は、いずれも90質量%以上であった。実施例13、15及び17で得たフレーク状固化物のX線回折パターンを、それぞれ図4のa)、b)、及びc)に示す。
各例で得たフレーク状固化物を予め乾式で粉砕し、これらと炭酸リチウム(第2の化合物)とを酸化物基準のモル比で2:1となるように調合して調合物を得、さらに該調合物に対してカーボンブラックとグルコース(水溶液)とを、該調合物とカーボンブラックとグルコースとの質量比が90:5:5となるように添加した。これらを実施例1と同様に粉砕した。各粉砕物を3体積%H2−Arガス中にて700℃で8時間加熱することで、それぞれ炭素含有のLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を得た。また、各粉砕物を3体積%H2−Arガス中にて600℃で8時間の加熱によっても、800℃で8時間の加熱によっても、同様のリン酸化合物粒子を得た。
得られた各粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、実施例13〜17ではいずれも既存のLiFePO4及び/又はLiMnPO4の回折パターンと類似した回折パターンが得られた。実施例13、15及び17において、700℃で8時間加熱して得たLiMPO4粒子のX線回折パターンを、それぞれ図5のa)、b)、及びc)に示す。また、実施例18ではLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子の共晶体と考えられる回折パターンが得られた。さらに、実施例13、15及び17で得たLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子の炭素含有量を炭素分析計で測定したところ、それぞれC質量基準で6.2%(実施例13)、6.4%(実施例15)、6.5%(実施例17)であった。
(実施例19〜20)
<Liイオン二次電池用正極及び評価用電池の製造>
実施例1及び11で800℃で8時間加熱して得たLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子又は炭素含有のLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を活物質とし、これらと結着剤としてポリフッ化ビニリデン樹脂と導電材としてアセチレンブラックとを、質量比で85:5:10の比率となるように秤量し、N−メチルピロリドンを溶媒としてよく混合してスラリーを調製した。次いで、該スラリーをバーコーターで厚さ30μmのアルミニウム箔に塗布した。これらを空気中にて120℃で乾燥させて溶媒を除去した後、ロールプレスで塗工層を圧密化した後、幅10mm×長さ40mmの短冊状に切り出した。
<Liイオン二次電池用正極及び評価用電池の製造>
実施例1及び11で800℃で8時間加熱して得たLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子又は炭素含有のLiMPO4で表される組成を有するリン酸化合物粒子を活物質とし、これらと結着剤としてポリフッ化ビニリデン樹脂と導電材としてアセチレンブラックとを、質量比で85:5:10の比率となるように秤量し、N−メチルピロリドンを溶媒としてよく混合してスラリーを調製した。次いで、該スラリーをバーコーターで厚さ30μmのアルミニウム箔に塗布した。これらを空気中にて120℃で乾燥させて溶媒を除去した後、ロールプレスで塗工層を圧密化した後、幅10mm×長さ40mmの短冊状に切り出した。
塗工層は短冊状アルミニウム箔の先端10×10mmの部分を残して剥離し、これを電極とした。得られた電極のロールプレス後の塗工層厚は20μmであった。得られた電極は150℃で真空乾燥した後、精製アルゴンガスが満たされたグローブボックス中に搬入し、ニッケルメッシュにリチウム箔を圧着した対極と多孔質ポリエチレンフィルム製セパレータを介して対向させ、さらに両側をポリエチレン板で挟んで固定した。
対向電極をポリエチレン製ビーカに入れ、六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(1:1体積比)に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を注入して充分に含浸させた。電解液含浸後の電極をビーカから取り出し、アルミニウムラミネートフィルム袋に入れ、リード線部を取り出して封止して半電池を構成した。これらの半電池の特性を以下のようにして測定した。
<Liイオン二次電池用正極の充放電特性評価>
得られた半電池を25℃の恒温槽に入れ、定電流充放電試験機(北斗電工社製、装置名:HJ201B)に接続して充放電試験を行った。電流密度は電極活物質の質量(導電材と結着剤とを除いた質量)当たりの電流値を85mA/gとして充放電を行った。充電終止電位はLi対極基準で4.2Vとし、終止電圧に到達後即座に放電を開始した。放電終止電圧はLi対極基準で2.0Vとした。この充放電サイクルを10サイクル繰り返した。実施例19及び20の活物質を用いた半電池の5サイクル目の放電容量は、それぞれ154mAh/g(実施例19)、152mAh/g(実施例20)であった。
得られた半電池を25℃の恒温槽に入れ、定電流充放電試験機(北斗電工社製、装置名:HJ201B)に接続して充放電試験を行った。電流密度は電極活物質の質量(導電材と結着剤とを除いた質量)当たりの電流値を85mA/gとして充放電を行った。充電終止電位はLi対極基準で4.2Vとし、終止電圧に到達後即座に放電を開始した。放電終止電圧はLi対極基準で2.0Vとした。この充放電サイクルを10サイクル繰り返した。実施例19及び20の活物質を用いた半電池の5サイクル目の放電容量は、それぞれ154mAh/g(実施例19)、152mAh/g(実施例20)であった。
本発明により得られるリン酸化合物は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の正極の製造に用いられる正極材料として有用である。
なお、2010年3月9日に出願された日本特許出願2010−051564号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
なお、2010年3月9日に出願された日本特許出願2010−051564号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (15)
- 下式(1)で表される組成を有する第1の化合物と、Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種の原子Aを含む第2の化合物とを、下式(2)で表される原子比となるように調合して調合物を得る工程、
前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、下式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程、
を含むことを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
MxPyOz (1)
(式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子であり、かつ、Mの価数N1は+2≦N1≦+4であり、x及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する数であり、zはx、yの数値及びMの価数N1に依存する数である。)
A:M:P=a:b:1 (2)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、aは0<a<2、bは0.8<b<1.2である。)
AaMbPOc (3)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、Mの価数は前記N1と等しいかN1よりも小さく、a及びbは前記と同じ数値を示し、cはa、bの数値及びMの価数に依存する数である。) - 前記第1の化合物が、
Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して得られた化合物である、請求項1に記載のリン酸化合物の製造方法。 - Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物及びMの金属から選択される少なくとも1種と、酸化リン、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選択される少なくとも1種とを、MとPが式(1)で表される組成となるように調合して原料混合物を得、該原料混合物を粉砕し、加熱して溶融物を得た後、該溶融物を冷却して式(1)で表される組成を有する第1の化合物を得る工程を含む、請求項1に記載のリン酸化合物の製造方法。
- 前記溶融物の冷却速度が、−103℃/秒〜−1010℃/秒である、請求項2又は3に記載のリン酸化合物の製造方法。
- 前記第1の化合物が、非晶質部分を含む固体状化合物である、請求項1〜4のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 前記第2の化合物が、加熱によりA2Oに変化する化合物である、請求項1〜5のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 前記第2の化合物が、A2CO3、AHCO3及びAOHから選ばれる化合物(ただし、これらの化合物は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 前記加熱して式(3)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程を、不活性ガス中又は還元ガス中にて400〜900℃で行う、請求項1〜7のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 前記粉砕物を得る工程において、前記調合物に、有機化合物及び炭素粉末から選択される少なくとも1種の炭素源を含ませ、該炭素源の量は、調合物と炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対する該炭素換算量(質量)の割合が0.1〜20質量%となる量である、請求項1〜8のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、下式(4)で表される組成を有する結晶粒子である、請求項1〜9のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、a及びbは前記と同じ数値を示す。) - 式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、オリビン型結晶構造のLiMPO4を含む粒子である、請求項1〜10のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 式(3)で表される組成を有するリン酸化合物が、オリビン型結晶構造のLiFedMn1-dPO4(dは0≦d≦1である)を含む粒子である、請求項1〜11のいずれか一項記載のリン酸化合物の製造方法。
- 下式(1)で表される組成を有する第1の化合物と、
Li、Na、及びKから選択される少なくとも1種のAの原子を含む第2の化合物とを、調合して調合物を得る工程、
前記調合物を混合しつつ粉砕して粉砕物を得る工程、
前記粉砕物を不活性ガス中又は還元ガス中で加熱し、下式(4)で表される組成を有するリン酸化合物を得る工程、
を含むことを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
MxPyOz (1)
(式中、MはFe、Mn、Co、及びNiから選択される少なくとも1種の原子であり、かつ、Mの価数N1は+2≦N1≦+4であり、x及びyは0.8≦x/y≦1.2を満足する数であり、zはx、yの数値及びMの価数N1に依存する数である。)
AaMbPO(0.5a+b+2.5) (4)
(式中、A及びMは前記と同じ種類の原子を示し、Mの価数は前記N1と等しいかN1よりも小さく、aは0<a<2、bは0.8<b<1.2である。) - 請求項1〜13のいずれか一項記載の製造方法によってリン酸化合物を得て、次に、該リン酸化合物を二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極を製造することを特徴とする二次電池用正極の製造方法。
- 請求項14記載の製造方法で二次電池用正極を得て、次に、該二次電池用正極を用いて二次電池を製造することを特徴とする二次電池の製造方法。
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