JP2014055085A - リン酸化合物、二次電池用正極材料、および二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子伝導性およびイオン導電性が高められ、充放電操作による構造変化が抑制されたオリビン型リン酸化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化物基準のモル%表示で、Li2Oを20%以上35%以下、P2O5を20%以上35%以下、MnO2を35%以上55%以下、Fe2O3を0%以上10%未満、Co3O4を0%以上8%未満、NiOを0%以上15%未満、ならびにMgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.05%以上10%以下、含む原料調合物を加熱し、溶融して溶融物を得る工程と、前記溶融物を冷却して固化物を得る工程と、前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程と、前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程とを有するリン酸化合物の製造方法。
【選択図】図3
【解決手段】酸化物基準のモル%表示で、Li2Oを20%以上35%以下、P2O5を20%以上35%以下、MnO2を35%以上55%以下、Fe2O3を0%以上10%未満、Co3O4を0%以上8%未満、NiOを0%以上15%未満、ならびにMgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.05%以上10%以下、含む原料調合物を加熱し、溶融して溶融物を得る工程と、前記溶融物を冷却して固化物を得る工程と、前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程と、前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程とを有するリン酸化合物の製造方法。
【選択図】図3
Description
本発明はリン酸化合物、二次電池用正極材料、および二次電池の製造方法に関する。
近年、電気自動車やハイブリッド車等の開発において、リチウムイオン二次電池には安全性を維持しつつ、大幅な高容量化、高エネルギー化、および大型化が求められている。また、エネルギー問題の観点から、電力需給の平滑化、および非常時の電力の安定供給のために、高い安全性および信頼性を有する中型ないし大型の定置用蓄電池の開発が進んでいる。これらの一部は、実用化がなされている。
これら電池に用いる正極材料として、資源面、安全面、コスト面、安定性等の観点から、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)に代表されるオリビン型のリン酸リチウム化合物(LiMPO4/Mは遷移金属元素)が注目され、一部は実用化されている。しかし、オリビン型リン酸リチウム化合物(LiMPO4)は従来材料に比べて電気抵抗が高いため、それを正極材料として用いたリチウムイオン二次電池の充放電時におけるリチウムの挿入・脱離反応が遅くなり、その結果として二次電池の充放電容量およびエネルギー密度が理論上の値に比べて低下しやすいという難点がある。
オリビン型リン酸リチウム化合物の一つであるリン酸鉄リチウム(LiFePO4)およびリン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)は、これらの理論放電容量がいずれも170mAh/gであるが、これらのLiイオンの吸蔵、放出は、理論上最高で、それぞれ3.4Vおよび4.0V程度で生じる。したがって、LiMnPO4のエネルギー密度(放電容量と作動電圧との乗数)は、LiFePO4のそれに比較して大きい。また、これらの固溶体であるリン酸鉄マンガンリチウム(LiFe1−xMnxPO4,0<x<1)も、xの値が大きくなるほど、平均作動電圧が高くなり、エネルギー密度は大きくなることが期待される。しかし、xの値が大きくなるほど、理論放電容量および理論作動電圧の発現が困難となる(例えば、非特許文献1)。なお、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)およびリン酸マンガンリチウム(LiNiPO4)は、資源面、安全面、コスト面等の観点から使用しがたい。
これらのリン酸鉄リチウムの製造方法に関しては、従来から種々の方法が提案されている。例えば、固相反応法、水熱合成法、噴霧熱分解法、マイクロウェーブ加熱法等が知られている。
特許文献1には、モル%表示で、Li2Oを10〜50%、Fe2O3を10〜40%、P2O5を20〜50%、MgO、TiO2、V2O5、MnO2、Co3O4、NiO、Nb2O5、MoO3、WO3および希土類酸化物から選ばれる少なくとも1種を0.5〜32%の割合で混合し、溶融、冷却して前駆体ガラスを作製し、ガラス転移温度またはそれ以上の温度での熱処理、もしくはレーザ照射による加熱によってナシコン型、オリビン型、スピネル型およびこれらの固溶体からなるリチウム二次電池正極材料およびその製造方法が記載され、得られた正極材料は伝導度が高いことが示されている。
A. Yamada et al., Chemistry of Materials, 18, 804-813 (2006)
非特許文献1において、理論放電容量および理論作動電圧の発現が困難となるのは、電子伝導性およびイオン導電性が低いことなどによると考えられる。さらには、連続的充放電の履歴後は、良好なレート特性およびサイクル特性が得られていないのが現状であるが、不可逆的な構造変化によると考えられる。
特許文献1の方法は、前駆体ガラスがFe2O3を最低でも10モル%含み、MnO2を最高でも32モル%しか含まないため、MnO2含量が高いリン酸鉄マンガンリチウム粒子を得ることができなかった。なお、Fe2O3含量が10モル%およびMnO2含量が32モル%であるリン酸鉄マンガンリチウムは、およそLiFe0.4Mn0.6PO4に相当する。また、成型加工した前駆体ガラスに熱処理を施しているため、リン酸鉄リチウム粉末を得るためには結晶化物を粉砕する必要があり、リン酸鉄リチウムの結晶性が低下する等、様々な不都合が生じるおそれがあった。
本発明は、電子伝導性およびイオン導電性が高められ、充放電操作による構造変化が抑制されたオリビン型リン酸化合物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、高い放電容量を発現しつつ、レート維持率および放電容量維持率(サイクル特性)が優れ、その信頼性の向上した二次電池用正極材料および二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、下記[1]〜[10]の発明である。
[1]酸化物基準のモル%表示で、Li2Oを20%以上35%以下、P2O5を20%以上35%以下、MnO2を35%以上55%以下、Fe2O3を0%以上10%未満、Co3O4を0%以上8%未満、NiOを0%以上15%未満、ならびにMgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.05%以上10%以下、含む原料調合物を加熱し、溶融して溶融物を得る工程と、
前記溶融物を冷却して固化物を得る工程と、
前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程とを、
この順に実施することを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
前記溶融物を冷却して固化物を得る工程と、
前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程とを、
この順に実施することを特徴とするリン酸化合物の製造方法。
[2]前記原料調合物を不活性ガス中または還元ガス中において1,000℃〜1,400℃で溶融する、[1]に記載の製造方法。
[3]前記溶融物を冷却速度103〜1010℃/秒で冷却する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記溶融物を不活性ガス中または還元ガス中で冷却する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5]前記粉砕物は、前記固化物と、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源とを含み、該炭素源中の炭素換算量(質量)が、該固化物の質量と該炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対して、0.1〜20質量%である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6]前記粉砕物を不活性ガス中または還元ガス中において300℃〜900℃で加熱する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7][1]〜[6]に記載の製造方法によって、リン酸化合物を得て、次に該リン酸化合物を用いて二次電池用正極材料を得ることを特徴とする二次電池用正極材料の製造方法。
[8][7]に記載の製造方法によって二次電池用正極材料を得て、次に該二次電池用正極材料を用いて二次電池を得ることを特徴とする二次電池の製造方法。
[9]下式(1)で表わされる組成を有するリン酸化合物。
Li1+a(Mn1−(q+r)FeqMr)1−x+bXxPO4+c (1)
(式中、Mは、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、q、r、およびxは、それぞれ、−0.2≦a≦0.1、−0.2≦b≦0.1、0≦q≦0.3、0≦r<0.2、0≦(q+r)≦0.35、0.001≦x≦0.2であり、cは、Mn、Fe、M、およびXの価数、およびa、b、q、r、およびxに依存し、電気的中性を満たす数である。)
Li1+a(Mn1−(q+r)FeqMr)1−x+bXxPO4+c (1)
(式中、Mは、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、q、r、およびxは、それぞれ、−0.2≦a≦0.1、−0.2≦b≦0.1、0≦q≦0.3、0≦r<0.2、0≦(q+r)≦0.35、0.001≦x≦0.2であり、cは、Mn、Fe、M、およびXの価数、およびa、b、q、r、およびxに依存し、電気的中性を満たす数である。)
[10]下式(2)で表わされる組成を有するリン酸化合物。
Lid(Mn1−sFes)eXyPO4+f (2)
(式中、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、d、e、s、およびyは、それぞれ、0.95≦d≦1.10、0.95≦e≦1.05、0.03≦s≦0.3、および0.001≦y≦0.2であり、fは、Mn、Fe、およびXの価数、およびd、e、s、およびyに依存し、電気的中性を満たす数である。)
Lid(Mn1−sFes)eXyPO4+f (2)
(式中、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、d、e、s、およびyは、それぞれ、0.95≦d≦1.10、0.95≦e≦1.05、0.03≦s≦0.3、および0.001≦y≦0.2であり、fは、Mn、Fe、およびXの価数、およびd、e、s、およびyに依存し、電気的中性を満たす数である。)
本発明の製造方法によれば、電子伝導性およびイオン導電性が高められ、充放電操作による構造変化が抑制されたオリビン型リン酸化合物を提供できる。したがって、高い放電容量を発現しつつ、レート維持率および放電容量維持率が優れた正極材料および二次電池を再現性よく、効率的に製造できる。
本明細書において、オリビン型リン酸化合物とは、基本式Li(M’X)PO4(M’はMnを必須として、Fe、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよく、XはMg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種である。)で表わされる物質をいう。オリビン構造とは、結晶系が斜方晶であり、空間群がPnmaに代表される結晶構造をいう。
また、オリビン構造を含む結晶をオリビン型結晶ともいい、オリビン型結晶を含む粒子をオリビン型結晶粒子ともいう。オリビン型結晶粒子は、オリビン型結晶以外の結晶構造を部分的に含んでいてもよく、非結晶構造を部分的に含んでいてもよい。オリビン型結晶粒子としては、その実質的に全てがオリビン型結晶からなることが好ましい。
[リン酸化合物]
本発明のリン酸化合物は、下式(1)で表わされる組成を有する。
Li1+a(Mn1−(q+r)FeqMr)1−x+bXxPO4+c (1)
(式中、Mは、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、q、r、およびxは、それぞれ、−0.2≦a≦0.1、−0.2≦b≦0.1、0≦q≦0.3、0≦r<0.2、0≦(q+r)≦0.35、0.001≦x≦0.2であり、cは、Mn、Fe、M、およびXの価数、およびa、b、q、r、およびxに依存し、電気的中性を満たす数である。)
本発明のリン酸化合物は、下式(1)で表わされる組成を有する。
Li1+a(Mn1−(q+r)FeqMr)1−x+bXxPO4+c (1)
(式中、Mは、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、q、r、およびxは、それぞれ、−0.2≦a≦0.1、−0.2≦b≦0.1、0≦q≦0.3、0≦r<0.2、0≦(q+r)≦0.35、0.001≦x≦0.2であり、cは、Mn、Fe、M、およびXの価数、およびa、b、q、r、およびxに依存し、電気的中性を満たす数である。)
式(1)で表される組成を有するリン酸化合物は、オリビン型リン酸化合物であり、二次電池用正極材料として用いた場合に高い放電容量を発現しつつ、レート維持率および放電容量維持率を示し、信頼性が高く、かつ製造コストが安価である。
qおよびrは、0≦q<0.3、0≦r<0.2、0≦(q+r)≦0.35である。(q+r)>0.35であると、正極材料とした場合に作動電圧の高いリン酸化合物を得にくく、製造コストが高くなる。(q+r)≦0.30であることが好ましい。また、放電容量をより高められることから、(q+r)>0であることが好ましく、(q+r)≧0.03であることがより好ましい。さらに、オリビン型リン酸化合物としては、CoおよびNiは、高電圧化が可能な元素であるが高価であるので、r=0であることが好ましい。
原子Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であると、リン酸化合物の電子伝導性およびイオン伝導性を高め、充放電操作による構造変化を抑制することができるので好ましい。原子Xは、構造的には、Mn位、Fe位、M位、またはLi位を置換して存在すると考えられる。原子Xとしては、Mn、Fe、およびMとイオン半径が比較的等しく、置換しやすいと考えられることから、Mg、Zn、またはTiが好ましい。
xが、0.001≦x≦0.2であると、リン酸化合物の構造が安定化し、電子伝導性およびイオン伝導性を高めるので好ましい。x<0.001であると、導電性を上げる効果が十分でなく、x>0.2であると、リン酸化合物の放電容量が低下する。0.002≦x≦0.15であると、より好ましい。0.005≦x≦0.1であると、放電容量の低下を抑制しつつ、電子伝導性およびイオン伝導性を高め、充放電操作による構造変化を抑制することができるので、特に好ましい。
aおよびbは、−0.2≦a≦0.1、−0.2≦b≦0.1である。aおよびbが、それぞれ、−0.2より小さい、または0.1より大きいと、リン酸化合物を得ることが困難となる。−0.05≦a≦0.05、−0.05≦b≦0.05であると、放電容量維持率がより高くなるので、より好ましい。
cは、Mn、Fe、M、およびXの価数、およびa、b、q、r、およびxに依存し、電気的中性を満たす数である。リン酸化合物のMn、Fe、Co、およびNiの価数は、+2が好ましい。また、Mg、Zn、およびCaの価数は+2が好ましく、Zrの価数は+4、Tiの価数は+2、+3、または+4が好ましい。
リン酸化合物としては、下式(2)で表される組成を有するリン酸化合物が特に好ましい。
Lid(Mn1−sFes)eXyPO4+f (2)
(式中、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、d、e、s、およびyは、それぞれ、0.95≦d≦1.10、0.95≦e≦1.05、0.03≦s≦0.3、および0.001≦y≦0.2であり、fは、Mn、Fe、およびXの価数、およびd、e、s、およびyに依存し、電気的中性を満たす数である。)
Lid(Mn1−sFes)eXyPO4+f (2)
(式中、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、d、e、s、およびyは、それぞれ、0.95≦d≦1.10、0.95≦e≦1.05、0.03≦s≦0.3、および0.001≦y≦0.2であり、fは、Mn、Fe、およびXの価数、およびd、e、s、およびyに依存し、電気的中性を満たす数である。)
式(2)で表される組成を有するリン酸化合物は、製造コストが安価であり、二次電池用正極材料として用いた場合に、放電容量、放電容量維持率、レート維持率等の電気化学的性質がバランスよく良好な特性を示すために好ましい。
本発明のリン酸化合物を二次電池用正極材料として用いる場合、二次電池用正極材料は導電材を含有することが好ましい。導電材は、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源に由来する。導電材は、リン酸化合物粒子の表面または粒子間界面に存在するのが好ましい。導電材の含有量は、リン酸化合物と導電材との合計質量に対して、0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、2〜10質量%が特に好ましい。
リン酸化合物粒子は、オリビン型結晶粒子を含み、オリビン型結晶粒子のみからなることが特に好ましい。該結晶粒子としては、一次粒子および二次粒子の双方を含む。得られるリン酸化合物中に二次粒子が存在する場合、一次粒子が破壊されない程度の範囲で解砕および粉砕してもよい。
リン酸化合物粒子の平均粒径は、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。平均粒径を該範囲とすることで、リン酸化合物の導電性がより高くなる。平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径測定装置で測定できる。
リン酸化合物粒子の比表面積は、0.2〜200m2/gが好ましく、1〜200m2/gがより好ましく、3〜50m2/gがさらに好ましい。比表面積を該範囲とすることにより、リン酸化合物の導電性が高くなる。比表面積は、窒素吸着法による比表面積測定装置で測定できる。なお、上記リン酸化合物の平均粒経および比表面積は、リン酸化合物が導電材を含有していない場合の平均粒経および比表面積である。
導電材で被覆されたリン酸化合物粒子の平均粒径は、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmが特に好ましい。平均粒径を該範囲とすることで、リン酸化合物の導電性がより高くなる。リン酸化合物の比表面積は、0.2〜200m2/gが好ましく、1〜200m2/gがより好ましく、5〜50m2/gが特に好ましい。比表面積を該範囲とすることにより、リン酸化合物の導電性が高くなる。
[リン酸化合物の製造方法]
本発明のリン酸化合物の製造方法は、以下の溶融工程(I)〜加熱工程(IV)の各工程を、この順に実施する。溶融工程(I)〜加熱工程(IV)の工程前、工程間、および工程後には、各工程に影響を及ぼさない限り、他工程を行ってもよい。
本発明のリン酸化合物の製造方法は、以下の溶融工程(I)〜加熱工程(IV)の各工程を、この順に実施する。溶融工程(I)〜加熱工程(IV)の工程前、工程間、および工程後には、各工程に影響を及ぼさない限り、他工程を行ってもよい。
溶融工程(I):酸化物基準のモル%表示で、Li2Oを20%以上35%以下、MnO2を35%以上55%以下、Fe2O3を0%以上10%未満、P2O5を20%以上35%以下、Co3O4を0%以上8%未満、NiOを0%以上15%未満、ならびにMgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.05%以上10%以下、含む原料調合物を加熱し、溶融して溶融物を得る工程、
冷却工程(II):前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
粉砕工程(III):前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、
加熱工程(IV):前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程。
冷却工程(II):前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
粉砕工程(III):前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、
加熱工程(IV):前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程。
(溶融工程(I))
溶融工程(I)においては、各原子源(Li、Mn、P、Fe、Co、Ni、Mg、Zn、Ca、Zr、Ti)を含む原料を、上記範囲の組成となるように調整した原料調合物を準備する。
溶融工程(I)においては、各原子源(Li、Mn、P、Fe、Co、Ni、Mg、Zn、Ca、Zr、Ti)を含む原料を、上記範囲の組成となるように調整した原料調合物を準備する。
上記範囲の組成の原料調合物は、完全に溶融させることが可能で、溶融物は適度な粘性を有することから、続く冷却工程にて容易に処理することが可能である。
Li2Oはリン酸化合物の主成分であって、Li2O含量は、20%以上35%以下であり、好ましくは23%以上33%以下である。20%より少ない、または35%より多いと、得られる粉砕物を加熱しても、リン酸化合物を得ることが困難となる。
P2O5もリン酸化合物の主成分であって、P2O5含量は、20%以上35%以下であり、好ましくは23%以上30%以下である。20%より少ない、または35%より多いと、得られる粉砕物を加熱しても、リン酸化合物を得ることが困難となる。
MnO2もリン酸化合物の主成分であって、MnO2の含量は、35%以上55%以下であり、好ましくは37%以上52%以下である。当該範囲であると、正極材料とした場合に作動電圧の高い材料が得られやすいので好ましい。35%より少ないと、作動電圧の高い材料が得られにくい。また55%より多いと、得られる粉砕物を加熱しても、リン酸化合物を得ることが困難となる。
Fe2O3はリン酸化合物の任意の成分であり、その含量は、0%以上10%未満である。当該範囲であると、適度な粘性を有する溶融物を得ることができる。10%以上であると、作動電圧の高い材料が得られにくい。また、0%超であると、放電容量をより高められるので、より好ましい。
Co3O4はリン酸化合物の任意の成分である。Co3O4の含量が、0%以上8%未満であると、正極材料とした場合に作動電圧の高い材料が得られやすい。8%以上であると、均一な溶融物が得にくくなる。
NiOはリン酸化合物の任意の成分である。NiOの含量が、0%以上15%未満であると、正極材料とした場合に作動電圧の高い材料が得られやすい。15%以上であると、均一な溶融物が得にくくなる。
なかでも、Co3O4およびNiOは0%であり、Fe2O3は8.5%以下であると、放電容量、放電容量維持率、レート維持率等の電気化学的性質がバランスよく良好な特性を示すので、より好ましい。
Co3O4およびNiOはそれぞれ0%であり、Fe2O3は8.5%以下であるのが好ましい。
MgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種は必須成分であり、リン酸化合物の電子伝導性およびイオン伝導性を高める作用をする。また、充放電操作による構造変化を抑制する効果もある。さらに、溶融物の溶融範囲を広める作用もある。MgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2の含量は、これらの成分の合量で、0.05%以上10%以下であり、好ましくは0.1%以上7%以下である。0.05%より少ないと、上記作用が生じにくくなり、一方10%より多いと、溶融が困難となる。
溶融物のMgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2の含量が上記範囲であると、上記式(1)のリン酸化合物のxおよびyの範囲を満たすことができる。
溶融物におけるMn、Fe、Co、およびNiの価数は、+2〜+4の範囲が好ましい。Feの場合は+2、+8/3、または+3、Mnの場合は+2、+3、または+4、Coの場合は+2、+8/3、または+3、Niの場合は+2または+4が好ましい。得られるリン酸化合物におけるこれら元素の価数は、+2.0〜+2.5が好ましく、+2.0〜+2.2がより好ましく、+2が特に好ましい。
溶融物におけるMg、Zn、およびCaの価数は+2が好ましく、Zrの価数は+4、Tiの価数は+2、+3、または+4が好ましい。
原料調合物におけるLiを含む化合物としては、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸水素リチウム(LiHCO3)、水酸化リチウム(LiOH)、およびリン酸リチウム(Li3PO4、(LiPO3)n)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは所望のリン酸化合物を得やくする。また、塩化リチウム(LiCl)、硝酸リチウム(LiNO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)、および酢酸リチウム(CH3COOLi)やシュウ酸リチウム((COOLi)2)等の有機酸塩を用いてもよい(ただし、該少なくとも1種の一部または全部は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)。なかでも、安価でかつ取り扱いが容易な点で、Li2CO3、LiHCO3が特に好ましい。
原料調合物におけるPを含む化合物としては、酸化リン(P2O5)、リン酸(水素)アンモニウム((NH4)3PO4、(NH4)2HPO4、NH4H2PO4)、リン酸リチウム(Li3PO4、(LiPO3)n)、ならびに、Mn、Fe、Co、およびNiのリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは所望のリン酸化合物を得やくする。また、リン酸(H3PO4)、亜リン酸(H3PO3)、および次亜リン酸(H3PO2)を用いてもよい。以上の化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含むものとする。なかでも、扱いやすさおよび入手のしやすさから、リン酸二水素アンモニウム((NH4)H2PO4)、リン酸リチウム(Li3PO4、LiPO4)が好ましい。
原料調合物におけるMnを含む化合物としては、酸化マンガン(MnO、Mn2O3、Mn3O4)、水酸化マンガン(Mn(OH)2等)、オキシ水酸化マンガン(MnO(OH)2)、およびリン酸マンガン(Mn3(PO4)2、Mn2P2O7等)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらは所望のリン酸化合物を得やくする。また、塩化マンガン(MnCl2等)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2等)、硫酸マンガン(MnSO4等)、Mnのアルコキシド(Mn(OCH3)2、Mn(OC2H5)2等)、および酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2)やシュウ酸マンガン(Mn(COO)2)等の有機酸塩を用いてもよい。以上の化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含むものとする。なかでも、入手のしやすさやコストから、MnO2、MnOが特に好ましい。
原料調合物におけるFe、Co、およびNiを含む化合物としては、酸化物(FeO、Fe3O4、Fe2O3、CoO、Co3O4、Co2O3、NiO)、オキシ水酸化物(FeO(OH)等)、リン酸塩(Fe3(PO4)3、Fe3PO4等)、塩化物(FeCl2、FeCl3等)、硝酸塩(Fe(NO3)2等)、硫酸塩(FeSO4、Fe2(SO4)3等)、Feのアルコキシド(Fe(OCH3)2、Fe(OC2H5)2等)、およびFeの酢酸塩(Fe(CH3COO)2)やシュウ酸鉄(Fe(COO)2)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも、入手のしやすさやコストから、Fe3O4、Fe2O3、Co3O4およびNiOからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
原料調合物におけるMg、Zn、Ca、Zr、Tiを含む化合物としては、酸化物(MgO、ZnO、CaO、ZrO2、TiO2)、水酸化物(Mg(OH)2、Zn(OH)2、Ca(OH)2、Zr(OH)4、Ca(OH)2)、炭酸塩(MgCO3、ZnCO3、CaCO3)、リン酸塩(Mg3(PO4)2等)、塩化物(MgCl2等)、硝酸塩(Mg(NO3)2等)、硫酸塩(MgSO4等)、および酢酸塩(Mg(CH3COO)2)やシュウ酸塩(Mg(COO)2)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも、MgO、ZnO、CaCO3、ZrO2、およびTiO2が安価であり、扱いやすいので特に好ましい。
原料調合物の組成は原則として、当該原料調合物から得られる溶融物の組成と理論上対応する。ただし、原料混合物中には溶融処理中に揮発等により失われやすい成分、例えばPのような成分が存在するため、得られる溶融物の組成は各原料の仕込み量から計算される酸化物基準のモル%と若干相違する場合がある。
各原料の純度は、所望の特性を低下させない範囲であれば特に限定されるものではないが、水和水を除いた純度が99%以上であることが好ましく、99.9%以上がより好ましい。
各原料の粒度は、溶融して均一な溶融物が得られる範囲であれば特に限定されるものではない。各原料はミキサ、ボールミル、遊星ミル等の混合・粉砕手段を用いて、乾式または湿式で混合してから溶融することが好ましい。
溶融工程(I)においては、前記の方法で得られた原料調合物を、次に加熱して溶融する。原料調合物を容器等に入れ、加熱炉を用いて加熱し、溶融することが好ましい。該容器としては、アルミナ製、カーボン製、炭化ケイ素製、ホウ化ジルコニウム製、ホウ化チタン製、窒化ホウ素製、炭素製、白金製、ロジウムを含む白金合金製等、耐火物系煉瓦、および還元材料(例えばグラファイト)等の材料からなる容器が挙げられる。加熱炉中での揮発および蒸発防止のために、該容器は蓋を装着することが好ましい。加熱炉は、抵抗加熱炉、高周波誘導炉、またはプラズマアーク炉が好ましい。抵抗加熱炉はニクロム合金等の合金製、炭化ケイ素製、またはケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉であるのが好ましい。
溶融工程(I)は、空気中、不活性ガス中、または還元ガス中で実施することができる。不活性ガス中または還元ガス中で実施すると、Mn、Fe、Co、およびNiの価数を+2または+2に近い状態に維持でき、所望のリン酸化合物を得やすくなるので好ましい。空気中で溶融した場合には、後工程の加熱工程(IV)で還元(例えばM3+からM2+への変化)を行うのが好ましい。
ここで、不活性ガスとは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスおよび窒素(N2)ガスから選ばれる少なくとも1種のガスを99体積%以上含むガスをいう。還元ガスとは、上記した不活性ガスに、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、またはアンモニア(NH3)等の還元性を有するガスが、含有量が0.1体積%以上、より好ましくは1〜10体積%で存在するガスあり、酸素(O2)の含有量が1体積%以下、より好ましくは0.1体積%以下であるガスをいう。ただし、原料の分解時や融解時に気体が発生する場合、その期間においては上記雰囲気を満たさなくてもよい。さらに、原料混合物は不活性雰囲気や還元雰囲気を減圧した雰囲気下(0.8×105Pa以下)で溶融してもよい。
溶融のための加熱温度は、1,000〜1,400℃が好ましく、1,200〜1,350℃が特に好ましい。ここで、溶融とは各原料が融解し、目視で透明な状態となることをいう。加熱温度が上記範囲の下限値以上であると溶融が容易になり、上限値以下であると原料の揮発がしにくくなる。加熱時間は0.2〜2時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。加熱時間が上記範囲の下限値以上であると溶融物の均一性が充分になり、上限値以下であると原料が揮発しにくい。また、溶融物の均一性を上げるために撹拌してもよい。さらに、次工程の冷却工程(II)を行うまで、溶融温度より低い温度で溶融物を清澄させてもよい。
(冷却工程(II))
冷却工程(II)は、溶融工程(I)で得られた溶融物を室温(20〜25℃)付近まで冷却して固化物を得る工程である。固化物は非晶質物であることが好ましいが、固化物の一部は結晶化物であってもよい。固化物中の結晶化物の量は、固化物の全質量に対して0〜30質量%であることが好ましい。結晶化物を多く含むと粒状やフレーク状の固化物を得ることが困難となる。また、冷却機器の損耗を早め、その後の粉砕工程(III)の負担が大きくなる。固化物が非晶質物を含むことで、次の粉砕工程(III)が実施しやすくなり、リン酸化合物の組成や粒径が制御しやすくなる。非晶質物質を結晶化してオリビン型リン酸化合物を生成すると、例えば複数の粉体から固相反応で化合物を合成する場合に比べて、反応時間を短くすることができ、さらに化学組成、鉱物組成、構造等の均一性を高めることができる。
冷却工程(II)は、溶融工程(I)で得られた溶融物を室温(20〜25℃)付近まで冷却して固化物を得る工程である。固化物は非晶質物であることが好ましいが、固化物の一部は結晶化物であってもよい。固化物中の結晶化物の量は、固化物の全質量に対して0〜30質量%であることが好ましい。結晶化物を多く含むと粒状やフレーク状の固化物を得ることが困難となる。また、冷却機器の損耗を早め、その後の粉砕工程(III)の負担が大きくなる。固化物が非晶質物を含むことで、次の粉砕工程(III)が実施しやすくなり、リン酸化合物の組成や粒径が制御しやすくなる。非晶質物質を結晶化してオリビン型リン酸化合物を生成すると、例えば複数の粉体から固相反応で化合物を合成する場合に比べて、反応時間を短くすることができ、さらに化学組成、鉱物組成、構造等の均一性を高めることができる。
溶融物の冷却は空気中、不活性ガス中、または還元ガス中で実施することができる。不活性ガス中または還元ガス中で実施すると、設備が簡便であり、Mn、Fe、Co、およびNiの酸化を防止、または抑制できる。開放系で急冷する場合、被急冷物(溶融物)と冷却メディア(例えば、双ローラ)との接触部分の周囲の雰囲気を不活性雰囲気または還元雰囲気とすることが好ましい。
溶融物の冷却速度は1×103 ℃/秒以上が好ましく、1×104 ℃/秒以上がより好ましい。冷却速度を該値以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度の上限値は製造設備や大量生産性の点から1×1010 ℃/秒程度が好ましく、実用性の点からは1×108 ℃/秒が特に好ましい。溶融物の冷却速度は1,000℃から50℃までの冷却速度を1×103 ℃/秒〜1×1010 ℃/秒とすることが特に好ましい。
溶融物の冷却方法としては、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下して冷却する方法、回転する単ローラに溶融物を滴下して冷却する方法、溶融物を冷却したカーボン板や金属板にプレスして冷却する方法が好ましい。なかでも、双ローラを用いた冷却方法が、冷却速度が速く、大量に処理できるので特に好ましい。双ローラとしては、ステンレス等の金属製、カーボン製、セラミックス製のものを用いることが好ましい。
冷却工程(II)で得られる固化物は、フレーク状または繊維状が好ましい。フレーク状の場合には、平均厚さは200μm以下が好ましく、100μm以下が特に好ましい。フレーク状の平均厚さに垂直な面の平均直径は、特に限定されない。繊維状の場合には、平均直径は50μm以下が好ましく、30μm以下が特に好ましい。平均厚さや平均直径が上記範囲の上限値以下であると、粉砕工程(III)の負担を軽減でき、加熱工程(IV)における結晶化効率を高くすることができる。平均厚さおよび平均直径は、ノギスやマイクロメータにより測定することができる。平均直径は、顕微鏡観察により測定することもできる。
(粉砕工程(III))
粉砕工程(III)は、冷却工程(II)で得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る工程である。固化物は通常の場合、非晶質物を多く含む、または非晶質物からなるため、粉砕がしやすい利点がある。また、粉砕に使用する装置に負担をかけずに粉砕ができ、かつ粒径が制御しやすい利点がある。一方、従来の固相反応は、加熱工程後に粉砕を行うが、粉砕によって残留応力が生じ、電池特性等を悪化させる問題がある。本発明の製造方法では、加熱工程(IV)の前に粉砕工程(III)を行うため、粉砕工程(III)で生じた残留応力を加熱工程(IV)で低減または除去できる。
粉砕工程(III)は、冷却工程(II)で得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る工程である。固化物は通常の場合、非晶質物を多く含む、または非晶質物からなるため、粉砕がしやすい利点がある。また、粉砕に使用する装置に負担をかけずに粉砕ができ、かつ粒径が制御しやすい利点がある。一方、従来の固相反応は、加熱工程後に粉砕を行うが、粉砕によって残留応力が生じ、電池特性等を悪化させる問題がある。本発明の製造方法では、加熱工程(IV)の前に粉砕工程(III)を行うため、粉砕工程(III)で生じた残留応力を加熱工程(IV)で低減または除去できる。
粉砕は、カッターミル、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて行うことが好ましい。また、粒子径により各手法を段階的に用いることで、効率よく粉砕を進めることができる。例えば、手揉みやハンマー等で予備的に細かくすると、粉砕工程の負担が軽減するので好ましい。また、カッターミルで予備的な粉砕をした後、遊星ミルやボールミルを用いで粉砕することで、粉砕にかかる時間を短縮できるので好ましい。生産性の観点から、特にボールミルを用いることが好ましい。
粉砕メディアとしては、ジルコニア製ボール、アルミナ製ボール、窒化ケイ素製ボール、炭化ケイ素製ボール、ガラスボール等を用いることが好ましい。特に、ジルコニアボールは磨耗率が低く、不純物の混入を抑制できる。粉砕メディアの直径は0.1〜30mmが好ましい。粉砕を多段階にし、大きい粉砕メディアで粉砕を行った後、粉砕メディアと粉砕物を分離し、さらに小さい粉砕メディアを用いて粉砕してもよい。該方法であると、未粉砕粒子の残存を抑制できる。
粉砕容器は特に限定されないが、容器内に粉砕メディアと固化物とを容器容量の30〜80%まで入れると粉砕効率がよい。ボールミルを用いる場合、粉砕時間は6〜360時間が好ましく、6〜120時間がより好ましく、12〜96時間が特に好ましい。粉砕時間が上記範囲の下限値以上であると充分に粉砕を進めることができ、上限値以下であると過粉砕が抑制できる。
粉砕は乾式または湿式のいずれで行ってもよいが、粉砕粒度の観点から湿式で行うのが好ましい。粉砕に用いる溶媒(以下、粉砕溶媒ともいう。)としては、水、またはエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。コストや安全性の面からは水が好ましい。一方、極性溶媒では固化物が溶出してしまう等の問題が発生する場合には、有機溶媒が好ましい。粉砕溶媒は、固化物および粉砕メディアが入った状態で、容器容量の30〜80体積%まで充填すると、粉砕効率がよくなる。粉砕を湿式で行った場合、粉砕溶媒を沈降、濾過、減圧乾燥、加熱乾燥等で除去した後に、加熱工程(IV)を実施するのが好ましい。ただし、粉砕溶媒が少ない場合、特に粉砕物の質量に占める固形分の質量の割合が30%以上の場合には、粉砕溶媒を含んだ粉砕物のままで加熱工程(IV)に供してもよい。
粉砕物の平均粒径は、体積基準のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmがより好ましい。平均粒径が上記範囲の下限値以上であると、加熱工程(IV)で粉砕物同士が焼結して粒径が大きくなりすぎることがない。上記範囲の上限値以下であると、加熱工程(IV)での加熱温度や時間を低減でき、また得られるリン酸化合物の粒径を小さくできる。平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒子径測定装置で測定する。
本発明のリン酸化合物は絶縁物質であるため、二次電池用正極材料として用いる場合には、リン酸化合物の表面の少なくとも一部を導電材で被覆することが好ましい。粉砕工程(III)においては、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源を含ませるのが好ましい。炭素源としては、有機化合物と炭素系導電物質とを併用することが特に好ましい。併用することによって、リン酸化合物内での炭素系導電物質の分布が均一となり、また有機化合物やその熱分解物(炭化物)との接触面積が大きくなる。これらによって、リン酸化合物を用いた二次電池用正極材料の導電性を高めることができる。
粉砕工程(III)は、固化物と炭素源との粉砕物を得る工程であるのが好ましい。粉砕工程(III)は、固化物と炭素源とを混合した後に粉砕する工程、固化物と炭素源とをそれぞれ粉砕した後に混合する工程、また、固化物を粉砕した後に炭素源を含ませる工程であるのがより好ましい。
炭素源の質量の割合は、炭素源中の炭素換算量(質量)が、固化物の質量と、該炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対して、0.1〜20質量%となる量が好ましく、0.1〜10質量%となる量がより好ましく、2〜10質量%となる量が特に好ましい。炭素源の量を上記範囲の下限値以上とすることで、リン酸化合物を二次電池用正極材料として用いる場合に電気伝導性を充分に高めることができる。上記範囲の上限値以下とすることで、リン酸化合物を被覆する導電材の厚さが厚くなりすぎず、リン酸化合物を用いて二次電池用正極を製造した際に、二次電池用正極材料に電解液を充分に行きわたらせることができる。
固化物に有機化合物を含ませる場合の粉砕工程(III)は、粉砕物の表面に均一に分散させるために、湿式で行うのが好ましい。固化物に炭素系導電物質のみを含ませる場合の粉砕工程(III)は、乾式でもよい。
炭素源としての有機化合物としては、グルコース、スクロース、グルコース−フラクトース転化糖、カラメル、パラフィン、澱粉、α化した澱粉、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、カンファー、メラミン、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アスコルビン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、およびフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、グルコース、スクロース、エチルセルロース、カンファー、メラミン、ステアリン酸、アスコルビン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリアクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
炭素源としての炭素系導電物質は、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンファイバおよびアモルファスカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。アモルファスカーボンとしては、FT−IR分析において、正極材料の導電性低下の原因となるC−O結合ピークやC−H結合ピークが実質的に検出されないものが好ましい。
(加熱工程(IV))
加熱工程(IV)は、粉砕工程(III)で得られた粉砕物を加熱し、オリビン構造を含む結晶を含むリン酸化合物を得る工程である。得られるリン酸化合物は粒子状であることが好ましい。また、リン酸化合物は、非晶質物を含まないことが好ましい。リン酸化合物が非晶質物を含まないことは、X線回折でハローパターンが検出されないことにより確認されうる。
加熱工程(IV)は、粉砕工程(III)で得られた粉砕物を加熱し、オリビン構造を含む結晶を含むリン酸化合物を得る工程である。得られるリン酸化合物は粒子状であることが好ましい。また、リン酸化合物は、非晶質物を含まないことが好ましい。リン酸化合物が非晶質物を含まないことは、X線回折でハローパターンが検出されないことにより確認されうる。
加熱工程(IV)は、粉砕物を加熱することから、粉砕によって生じた残留応力の緩和が促進される。また、加熱により結晶核の生成および粒成長を行うため、リン酸化合物の組成、粒径およびその分布の制御が容易である。
加熱温度は、300〜900℃が好ましく、500〜900℃がより好ましく、550〜800℃が特に好ましい。加熱温度が300℃以上であると、炭化反応が生じやすくなり、リン酸化合物の結晶が生成しやすくなる。加熱温度が900℃以下であると、粉砕物が融解しにくく、結晶系や粒子径を制御しやすい。該加熱温度である場合には、適度な結晶性、粒子径、粒度分布等を有するオリビン型結晶を有するリン酸化合物粒子が得られやすい。また、粒子の表面に、導電材が均一に結合したリン酸化合物粒子が得られやすい。
加熱は一定温度で保持することに限らず、多段階に保持温度を設定して行ってもよい。加熱温度が高くなると、生成する粒子の粒子径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定するのが好ましい。また、加熱時間(加熱温度による保持時間)は、所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。加熱は、ボックス炉、トンネルキルン炉、ローラーハース炉、ロータリーキルン炉等で行うのが好ましい。
加熱は、空気中、不活性ガス中、または還元ガス中で実施することが好ましく、不活性ガス中または還元ガス中で実施することが特に好ましい。不活性ガスおよび還元ガスの条件は、溶融工程(I)における条件と同じである。また、メタンガス、アセチレンガスを炉内に導入することによって、ガス雰囲気を調整することもできる。圧力は、常圧、加圧(1.1×105Pa以上)、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれでもよい。また、還元剤(例えばグラファイト)と粉砕物とを入れた容器を加熱炉内に装填して実施した場合には、粉砕物中のMの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進することができる。これによって、リン酸化合物を再現性よく得ることができる。
加熱工程(IV)後において、通常は室温まで冷却する。冷却速度は、30〜300℃/時間が好ましい。冷却速度を該範囲にすることにより、加熱による歪みを除去できる。また、冷却は、放置して室温まで冷却してもよい。冷却は、放置して室温まで冷却させるのが好ましい。冷却は、不活性ガス中または還元ガス中で行うのが好ましい。冷却は、加熱工程(IV)の300〜900℃から室温までを、冷却速度30〜300℃/時間で冷却することが好ましい。
加熱工程(IV)でリン酸化合物を得た後、該リン酸化合物と炭素源との粉砕物を得て、次に、該粉砕物を不活性ガス中または還元ガス中で加熱してもよい。
本発明の製造方法において、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源を含ませた場合には、リン酸化合物粒子の表面に炭素源に由来する導電材を均一にかつ強固に結合させうる。導電材が結合したリン酸化合物粒子は、そのまま二次電池用正極材料として用いることができる。炭素源として有機化合物を用いた場合には、加熱工程(IV)で有機化合物が炭化され、炭化物が導電材としてリン酸化合物の表面の少なくとも一部を被覆する。炭素源として炭素系導電物質を用いた場合には、該物質が導電材としてリン酸化合物の表面の少なくとも一部を被覆する。また、炭素源として両者を用いた場合には、有機化合物由来の炭化物および炭素系導電物質がリン酸化合物の表面の少なくとも一部を被覆し、導電材のネットワークを形成する。
[二次電池用正極および二次電池の製造方法]
本発明の製造方法によって得られたリン酸化合物を、二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極および二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状およびサイズを適宜採用できる。
本発明の製造方法によって得られたリン酸化合物を、二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極および二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状およびサイズを適宜採用できる。
本発明の二次電池用正極は、本発明のリン酸化合物を用いる以外は、公知の電極の製造方法に従って製造できる。例えば、本発明のリン酸化合物を必要に応じて公知の結着材(ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等)、さらに必要に応じて公知の導電材(アセチレンブラック、カーボン、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス等)と混合した後、さらに、公知の有機溶媒(N−メチルピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)を用いてスラリーとし、公知の集電体(アルミニウム、またはステンレスの金属箔等)に塗布する等の方法によって、製造できる。
二次電池の構造は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極を電極として用いる以外は、公知の二次電池における構造を採用することができる。セパレータ、電池ケース等についても同様である。負極としては、活物質として公知の負極用活物質を使用でき、炭素材料、アルカリ金属材料およびアルカリ土類金属材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。電解液としては、非水系の電解液が好ましい。すなわち、本発明の製造方法で得られる二次電池としては、非水電解質リチウムイオン二次電池が好ましい。本発明の製造方法で得られる二次電池は、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車に搭載する二次電池として、また、電力貯蔵用の蓄電池として有用である。
実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の説明に限定されない。例1〜28、および、例41〜48が実施例、例31〜34、および、例51、52が比較例である。
[例1〜22、31〜33]
(溶融工程(I))
溶融物の組成がLi2O、P2O5、MnO2、Fe2O3、Co3O4、NiO、MgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2換算量(単位:モル%)で、それぞれ表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三鉄(Fe3O4)、四酸化三コバルト(Co3O4、)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、および酸化チタン(TiO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。
(溶融工程(I))
溶融物の組成がLi2O、P2O5、MnO2、Fe2O3、Co3O4、NiO、MgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2換算量(単位:モル%)で、それぞれ表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三鉄(Fe3O4)、四酸化三コバルト(Co3O4、)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、および酸化チタン(TiO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。
得られた原料調合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のるつぼに充填した。次に、該るつぼをケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉(株式会社モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉を、流量2L/分でN2ガスを流通しつつ、+300℃/時間の速度で昇温し、1,250〜1,320℃で0.5時間加熱した。目視で透明になったことを確認して、溶融物を得た。
(冷却工程(II))
溶融工程(I)で得たるつぼ中の溶融物を、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことにより、溶融物を1×105℃/秒で室温まで冷却し、フレーク状の固化物を得た。得られた固化物はガラス状物質であった。
溶融工程(I)で得たるつぼ中の溶融物を、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことにより、溶融物を1×105℃/秒で室温まで冷却し、フレーク状の固化物を得た。得られた固化物はガラス状物質であった。
(粉砕工程(III))
冷却工程(II)で得たフレーク状の固化物を、軽く手で揉んで細かくした後、カッターミルを用いて粗粉砕した。さらに、これを、粉砕媒体としてジルコニア製ボールを用いたボールミルで、湿式で粉砕し、乾燥し、微粉砕物を得た。粉砕は、まず直径5mmのボール、ついで2mmのボールを用いて段階的に行った。粉砕溶媒としてはエタノールを用いた。
冷却工程(II)で得たフレーク状の固化物を、軽く手で揉んで細かくした後、カッターミルを用いて粗粉砕した。さらに、これを、粉砕媒体としてジルコニア製ボールを用いたボールミルで、湿式で粉砕し、乾燥し、微粉砕物を得た。粉砕は、まず直径5mmのボール、ついで2mmのボールを用いて段階的に行った。粉砕溶媒としてはエタノールを用いた。
微粉砕物に、グルコース、スクロース、およびカーボンブラックを、微粉砕物の質量、グルコースの炭素換算量、スクロースの炭素換算量、およびカーボンブラックの炭素換算量が質量比で89:3:5:3となるように秤量した後、少量の純水を添加し、混合した。炭素源を混合した粉砕物を乾燥した後、続く加熱工程(IV)に供した。
(加熱工程(IV))
炭素源を混合した粉砕物を、電気炉(株式会社モトヤマ製、装置名:SKM−3035)を用い、H2ガスを3体積%H2−N2ガス中で、600℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸化合物粒子を析出させた。
炭素源を混合した粉砕物を、電気炉(株式会社モトヤマ製、装置名:SKM−3035)を用い、H2ガスを3体積%H2−N2ガス中で、600℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸化合物粒子を析出させた。
[例23、24]
溶融物の組成がそれぞれ例1および例16と同じになるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)、二酸化マンガン(MnO2)、三酸化二鉄(Fe2O3)および酸化ジルコニウム(ZrO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。得られた原料調合物を、例1と同様に溶融し、溶融物を得た。
溶融物の組成がそれぞれ例1および例16と同じになるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)、二酸化マンガン(MnO2)、三酸化二鉄(Fe2O3)および酸化ジルコニウム(ZrO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。得られた原料調合物を、例1と同様に溶融し、溶融物を得た。
それ以外は例1と同様にして、リン酸化合物粒子を得た。
[例25、26]
溶融物の組成がそれぞれ例1および例12と同じになるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)、シュウ酸マンガン(Mn(COO)2)、シュウ酸鉄(Fe(COO)2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化チタン(TiO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。
溶融物の組成がそれぞれ例1および例12と同じになるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸水素アンモニウム(NH4H2PO4)、シュウ酸マンガン(Mn(COO)2)、シュウ酸鉄(Fe(COO)2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化チタン(TiO2)を秤量し、乾式で混合・粉砕して、原料調合物を得た。
それ以外は例1と同様にして、リン酸化合物粒子を得た。
[例27、28]
それぞれ例1および12と同様にして、溶融、冷却を実施した。冷却工程(II)で得たフレーク状の固化物を、軽く手で揉んで細かくした後、カッターミルを用いて粗粉砕し、粗粉砕物を得た。粗粉砕物とエチルセルロースとを、粗粉砕物とエチルセルロース中の炭素換算量との質量比で9:1となるように混合した。粉砕溶媒としてアセトンを用いて、ボールミルを用いて、微粉砕した。微粉砕物を乾燥した後、続く加熱工程(IV)に供し、リン酸化合物粒子を得た。
それぞれ例1および12と同様にして、溶融、冷却を実施した。冷却工程(II)で得たフレーク状の固化物を、軽く手で揉んで細かくした後、カッターミルを用いて粗粉砕し、粗粉砕物を得た。粗粉砕物とエチルセルロースとを、粗粉砕物とエチルセルロース中の炭素換算量との質量比で9:1となるように混合した。粉砕溶媒としてアセトンを用いて、ボールミルを用いて、微粉砕した。微粉砕物を乾燥した後、続く加熱工程(IV)に供し、リン酸化合物粒子を得た。
[例34]
溶融物の組成がLi2O、P2O5、MnO2、およびMgO換算量(単位:モル%)で、表1に示す割合となるように、実施例1と同様に調合、溶融した。しかし、均一な溶融物を得ることはできなかった。
溶融物の組成がLi2O、P2O5、MnO2、およびMgO換算量(単位:モル%)で、表1に示す割合となるように、実施例1と同様に調合、溶融した。しかし、均一な溶融物を得ることはできなかった。
(X線回折の測定)
得られたリン酸化合物粒子の鉱物相を、X線回折装置(株式会社リガク製、装置名:RINT TTRIII)を用いて調べた。例1〜28で得られたリン酸化合物粒子は、いずれも結晶系が斜方晶であり、空間群がPnmaであると考えられるオリビン型結晶粒子であることが確認された。Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiの酸化物、これらの少なくとも一種とLiとの複合化合物、ならびに、これらの少なくとも一種とPとの複合化合物は、同定されなかった。例1〜3で得られたリン酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ、図1の(a)、(b)、および(c)に示す。例16〜18で得られたリン酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ、図2の(a)、(b)、および(c)に示す。
得られたリン酸化合物粒子の鉱物相を、X線回折装置(株式会社リガク製、装置名:RINT TTRIII)を用いて調べた。例1〜28で得られたリン酸化合物粒子は、いずれも結晶系が斜方晶であり、空間群がPnmaであると考えられるオリビン型結晶粒子であることが確認された。Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiの酸化物、これらの少なくとも一種とLiとの複合化合物、ならびに、これらの少なくとも一種とPとの複合化合物は、同定されなかった。例1〜3で得られたリン酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ、図1の(a)、(b)、および(c)に示す。例16〜18で得られたリン酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ、図2の(a)、(b)、および(c)に示す。
(形態観察)
例1で得たリン酸化合物粒子の形態を、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、装置名:SU6600)で観察した。観察して得られた画像を図3に示す。
例1で得たリン酸化合物粒子の形態を、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、装置名:SU6600)で観察した。観察して得られた画像を図3に示す。
(粒度分布および比表面積の測定)
例1〜3で得たリン酸化合物粒子の粒径分布を、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名:LA−920)で測定した。体積換算のメディアン径は、それぞれ0.34μm(例1)、0.36μm(例2)、および0.34μm(例3)であった。
例1〜3で得たリン酸化合物粒子の粒径分布を、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名:LA−920)で測定した。体積換算のメディアン径は、それぞれ0.34μm(例1)、0.36μm(例2)、および0.34μm(例3)であった。
さらに、比表面積を比表面積測定装置(株式会社島津製作所製、装置名:ASAP2020)で測定したところ、それぞれ29m2/g(例1)、28m2/g(例2)、および31m2/g(例3)であった。
(組成分析)
得られたリン酸化合物粒子の化学組成を測定した。まず、粒子表面の有機物を4mol/LのH2O2で酸化除去した後、次いで6.0mol/LのHCl溶液を添加し、80℃にて分解した。分解液中のLiは原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、装置名:Z−2310)を用いて定量した。また、分解液中のP、Mn、Fe、Co、Ni、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiは、誘導結合型発光分光分析装置(セイコーインスツル社製、装置名:SPS3100)を用いて定量した。Li、P、Mn、Fe、Co、Ni、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiの定量値から、Li2O、P2O5、MnO、FeO、CoO、NiO、MgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2の量をそれぞれ算出した。例1〜28および例31〜33で得られたリン酸化合物粒子の化学組成の定量値を、表2に示す。
得られたリン酸化合物粒子の化学組成を測定した。まず、粒子表面の有機物を4mol/LのH2O2で酸化除去した後、次いで6.0mol/LのHCl溶液を添加し、80℃にて分解した。分解液中のLiは原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、装置名:Z−2310)を用いて定量した。また、分解液中のP、Mn、Fe、Co、Ni、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiは、誘導結合型発光分光分析装置(セイコーインスツル社製、装置名:SPS3100)を用いて定量した。Li、P、Mn、Fe、Co、Ni、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiの定量値から、Li2O、P2O5、MnO、FeO、CoO、NiO、MgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2の量をそれぞれ算出した。例1〜28および例31〜33で得られたリン酸化合物粒子の化学組成の定量値を、表2に示す。
(炭素含量の測定)
得られたリン酸化合物粒子の炭素含量を炭素分析装置(株式会社堀場製作所製、装置名:EMIA−920V)で測定した。例1〜28および例31〜33で得たリン酸化合物粒子の炭素含量を表2に示す。
得られたリン酸化合物粒子の炭素含量を炭素分析装置(株式会社堀場製作所製、装置名:EMIA−920V)で測定した。例1〜28および例31〜33で得たリン酸化合物粒子の炭素含量を表2に示す。
[例41〜48、例51〜52:Liイオン二次電池用正極および評価用電池の製造例]
例1、2、5、11、16、18、23、25、31、および32で得られたリン酸化合物粒子(活物質)とポリフッ化ビニリデン樹脂(結着剤)とアセチレンブラック(導電材)とを、質量比で80:8:12の比率となるように秤量し、N−メチルピロリドン(溶媒)中で均一になるまで混合してスラリーを調製した。次いで、該スラリーをドクターブレードで厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布した。空気中にて120℃で乾燥させて溶媒を除去し、次いで、ロールプレスで塗工層を圧密化し、幅10mm×長さ40mmの短冊状に切り出した。
例1、2、5、11、16、18、23、25、31、および32で得られたリン酸化合物粒子(活物質)とポリフッ化ビニリデン樹脂(結着剤)とアセチレンブラック(導電材)とを、質量比で80:8:12の比率となるように秤量し、N−メチルピロリドン(溶媒)中で均一になるまで混合してスラリーを調製した。次いで、該スラリーをドクターブレードで厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布した。空気中にて120℃で乾燥させて溶媒を除去し、次いで、ロールプレスで塗工層を圧密化し、幅10mm×長さ40mmの短冊状に切り出した。
塗工層は短冊状アルミニウム箔の先端10×10mmの部分を残して剥離し、これを電極とした。得られた電極のロールプレス後の塗工層厚は20μmであった。得られた電極を150℃で真空乾燥した後、精製アルゴンガスが満たされたグローブボックス中に搬入した。電極を、ニッケルメッシュにリチウム箔を圧着した対極と多孔質ポリエチレンフィルム製セパレータを介して対向させ、さらに両側をポリエチレン板で挟んで固定し、対向電極を得た。
対向電極をポリエチレン製ビーカに入れ、六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(1:1体積比)に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を注入して充分に含浸させた。電解液含浸後の対向電極をビーカから取り出し、アルミニウムラミネートフィルム袋に入れ、リード線部を取り出して封止して半電池を構成した。この半電池の特性を以下のようにして測定した。
(Liイオン二次電池用正極の電気化学的性質の評価)
得られた半電池を25℃の恒温槽に入れ、定電流充放電試験機(北斗電工株式会社製、装置名:HJ201B)に接続して初期充放電試験を行った。電流密度は電極活物質の質量(導電材と結着剤とを除いた質量)当たりの電流値を15mA/g(0.088C相当)として充放電を行った。充電終止電圧はLi対極基準で4.5Vとし、終止電圧に到達後即座に放電を開始した。放電終止電圧はLi対極基準で1.5Vとした。例41〜48、および例51、52で得た初期放電容量値を表3に示す。
得られた半電池を25℃の恒温槽に入れ、定電流充放電試験機(北斗電工株式会社製、装置名:HJ201B)に接続して初期充放電試験を行った。電流密度は電極活物質の質量(導電材と結着剤とを除いた質量)当たりの電流値を15mA/g(0.088C相当)として充放電を行った。充電終止電圧はLi対極基準で4.5Vとし、終止電圧に到達後即座に放電を開始した。放電終止電圧はLi対極基準で1.5Vとした。例41〜48、および例51、52で得た初期放電容量値を表3に示す。
次いで、レート維持率を測定した。充電時の電流密度は15mA/gとし、放電時の電流密度は、15mA/g、37.5mA/g、150mA/g、300mA/g、600mA/g、および1200mA/gとした。また、充電終止電圧はLi対極基準で4.5Vとし、終止電圧に到達後即座に放電を開始した。放電終止電圧はLi対極基準で1.5Vとした。600mA/gでの放電容量値を15mA/gでの放電容量値を除した数値をレート維持率とした。例41〜48、および例51、52で得たレート維持率を表3に示す。
さらに、放電容量維持率を測定した。充電時および充電の電流密度は、それぞれ150mA/gおよび37.5mA/gとし、充電終止電位および放電終止電圧は、それぞれLi対極基準で4.5Vおよび1.5Vとした。この充放電を20回繰り返した。1回目の放電容量値に対する20回目の放電容量値の比率を放電容量維持率とした。例41〜48、および例51、52で得た放電容量維持率を表3に示す。
本発明のリン酸化合物は、二次電池用正極材料さらには二次電池に適用して有用である。本発明のリン酸化合物の製造方法は、電気化学的性質が優れたリン酸化合物を安価にかつ効率的に製造できるので有用である。
Claims (10)
- 酸化物基準のモル%表示で、Li2Oを20%以上35%以下、P2O5を20%以上35%以下、MnO2を35%以上55%以下、Fe2O3を0%以上10%未満、Co3O4を0%以上8%未満、NiOを0%以上15%未満、ならびにMgO、ZnO、CaO、ZrO2、およびTiO2からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.05%以上10%以下、含む原料調合物を加熱し、溶融して溶融物を得る工程と、
前記溶融物を冷却して固化物を得る工程と、
前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物を加熱して、オリビン構造を含む結晶を含む粒子を得る工程とを、
この順に実施することを特徴とするリン酸化合物の製造方法。 - 前記原料調合物を不活性ガス中または還元ガス中において1,000℃〜1,400℃で溶融する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記溶融物を冷却速度103〜1010℃/秒で冷却する、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記溶融物を不活性ガス中または還元ガス中で冷却する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記粉砕物は、前記固化物と、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源とを含み、該炭素源中の炭素換算量(質量)が、該固化物の質量と該炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対して、0.1〜20質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記粉砕物を不活性ガス中または還元ガス中において300℃〜900℃で加熱する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜6に記載の製造方法によって、リン酸化合物を得て、次に該リン酸化合物を用いて二次電池用正極材料を得ることを特徴とする二次電池用正極材料の製造方法。
- 請求項7に記載の製造方法によって二次電池用正極材料を得て、次に該二次電池用正極材料を用いて二次電池を得ることを特徴とする二次電池の製造方法。
- 下式(1)で表わされる組成を有するリン酸化合物。
Li1+a(Mn1−(q+r)FeqMr)1−x+bXxPO4+c (1)
(式中、Mは、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、q、r、およびxは、それぞれ、−0.2≦a≦0.1、−0.2≦b≦0.1、0≦q≦0.3、0≦r<0.2、0≦(q+r)≦0.35、0.001≦x≦0.2であり、cは、Mn、Fe、M、およびXの価数、およびa、b、q、r、およびxに依存し、電気的中性を満たす数である。) - 下式(2)で表わされる組成を有するリン酸化合物。
Lid(Mn1−sFes)eXyPO4+f (2)
(式中、Xは、Mg、Zn、Ca、Zr、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、d、e、s、およびyは、それぞれ、0.95≦d≦1.10、0.95≦e≦1.05、0.03≦s≦0.3、および0.001≦y≦0.2であり、fは、Mn、Fe、およびXの価数、およびd、e、s、およびyに依存し、電気的中性を満たす数である。)
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2012
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