JPWO2007063579A1 - カーボンナノチューブの製造方法および精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】純度の高いカーボンナノチューブを製造する方法、および未精製または純度の低いカーボンナノチューブを精製する方法を提供する。【解決手段】本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、カーボンナノチューブを含む炭素質材料を用意する工程、および前記炭素質材料に、鉄材と過酸化水素とを添加して、カーボンナノチューブを精製する工程を含む。前記鉄材として、鉄粉末を用いることが好ましい。鉄粉末は、炭素質材料の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部の割合で用いられることが好ましい。

Description

本発明は、未精製のまたは純度の低いカーボンナノチューブを精製して高純度のカーボンナノチューブを製造する方法に関する。さらには、該方法によって得られた高純度のカーボンナノチューブに関する。また本発明は、カーボンナノチューブを精製するためのカーボンナノチューブ精製用材料に関する。
カーボンナノチューブは、導電性、熱伝導性、機械的強度等の優れた特性を持つことから、多くの分野から注目を集めている新素材である。カーボンナノチューブは、一般に、炭素または炭素原料を必要に応じて触媒の存在下で高温条件に置くことにより合成(製造)される。代表的なカーボンナノチューブ製造方法として、アーク放電法、レーザ蒸発法、および化学気相成長法(すなわちCVD法)が挙げられる。
アーク放電法は、欠陥が少なく品質の良いカーボンナノチューブが得られる点で優れている。しかしながら、アーク放電法はCVD法に比べてカーボンナノチューブの収率が低い。このため量産可能な方法が種々提案されている。例えば、特開2003−277032号公報には、使用する電極に鉄触媒を含有させることにより、カーボンナノチューブを含有する生成物におけるカーボンナノチューブ含有率を向上させる方法が開示されている。また、安藤義則ら著、「材料」(2001年4月)、第50巻、第4号、第357〜360頁には、ニッケル−イットリウム触媒を含有する電極を用いたカーボンナノチューブの製造方法が記載されている。ニッケル−イットリウム触媒は活性が高いため、より高い収率でカーボンナノチューブを得ることができる。
特開2003−277032号公報 特開2002−265209号公報 特開2003−89510号公報 安藤義則ら著、「材料」(2001年4月)、第50巻、第4号、第357〜360頁
これら方法によって得られたカーボンナノチューブ(生成物)には、いずれの方法によって得られたものであっても、アモルファスカーボンのようなカーボンナノチューブ以外の炭素成分(換言すれば、カーボンナノチューブを構成しない炭素成分)や触媒金属が不純物として混入している。このため、より高純度のカーボンナノチューブを所望する場合には、得られたカーボンナノチューブを精製する必要があった。
カーボンナノチューブの精製に関し、例えば、特開2002−265209号公報および特開2003−89510号公報に記載されるような方法が従来用いられている。しかし、より効率よくカーボンナノチューブを精製して高純度のカーボンナノチューブを製造することが求められている。
そこで本発明は、従来とは異なる手法によって、純度の高いカーボンナノチューブを製造する方法を提供することを目的とする。また、別の観点からは、未精製または純度の低いカーボンナノチューブを精製する方法を提供することを目的とする。また、カーボンナノチューブの精製に用いられるカーボンナノチューブ精製用材料を提供することを目的とする。
本発明に係るカーボンナノチューブの製造方法は、精製されたカーボンナノチューブを製造する方法である。この方法は、カーボンナノチューブを含む炭素質材料を用意することと、該炭素質材料に鉄材と過酸化水素(H22)とを添加してカーボンナノチューブを精製することとを含む。
ここで「カーボンナノチューブ」とは、チューブ状の炭素同素体(典型的にはグラファイト構造の円筒構造物)をいい、特定の形態(長さや直径)に限定されない。いわゆる単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、あるいはチューブ先端が角状のカーボンナノホーンは、ここでいうカーボンナノチューブに包含される典型例である。また、ここで「炭素質材料」とは、カーボンナノチューブを含む材料であって炭素(カーボン)成分を主体とする材料をいい、炭素以外の成分の含有を排除するものではない。例えば、種々の方法によって得られたカーボンナノチューブ生成物(未精製物)は、ここでいう「炭素質材料」の典型例である。
本発明者は、カーボンナノチューブを含む炭素質材料に、別途(すなわち外部から)、過酸化水素(H22)と鉄材とを添加することにより、炭素質材料に含まれるカーボンナノチューブ以外の炭素成分(不純物であるスス等)や触媒金属等を酸化させる能力が著しく高められることを見出した。すなわち、かかる方法によると、カーボンナノチューブ以外の炭素成分(不純物)を効率よく酸化除去することができる。これにより、任意の方法で得られたカーボンナノチューブ含有炭素質材料(種々の不純物を含み得る。)から高純度のカーボンナノチューブを容易に得ることができる。
ここに開示されるカーボンナノチューブ製造方法の好適な一態様では、前記炭素質材料が実質的に鉄(Fe)を含まない。このように、それ自体が鉄を含まない炭素質材料を用いる態様においては、ここに開示される方法(すなわち、該炭素質材料に外部から鉄材および過酸化水素を添加して精製することを包含する方法)を適用することによって、より大きなメリットが得られる。
また、ここに開示されるカーボンナノチューブ製造方法の好適な一態様では、前記炭素質材料として、ニッケル(Ni),コバルト(Co)、および白金族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属または該金属を主体とする合金を含有する炭素成形物(典型的には棒状)を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られたものを用いる。例えば、ニッケルまたはニッケルを主体とする合金を含有する炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極からカーボンを蒸発させ、そのカーボンを堆積させることにより得られた炭素質材料を用いる。
これら鉄以外の触媒金属を含有させた電極を用いるアーク放電法は、カーボンナノチューブの収率自体は高い点で好適であるものの、該方法による生成物は、未精製の段階(すなわちアーク放電後の回収物)ではカーボンナノチューブ以外の不純物炭素成分(アモルファスカーボン等)や触媒金属粒子の含有率が比較的高いものであった。また、不純物炭素成分は触媒金属粒子に強く結合して(例えば、触媒金属粒子を厚く覆う形態で)存在する場合があり、そのような不純物の除去は特に煩雑であった。本発明によれば、過酸化水素(H22)および鉄(Fe)材の添加によって、このように触媒金属粒子と不純物炭素成分とが強く結合した不純物であっても容易に酸化除去することができる。したがって、上記アーク放電法による生成物にかかる精製処理を適用することによって、高純度なカーボンナノチューブを効率よく得ることができる。
上記鉄材としては、例えば鉄粉末を好ましく用いることができる。このような鉄粉末を用いる態様によると、容易かつ安価に所望する量の鉄(Fe)を正確に添加することができる。
該鉄粉末を構成する鉄粒子の平均粒径は500nm以下(典型的には50〜500nm)であり得る。該平均粒径が300nm以下(典型的には50〜300nm)である鉄粉末の使用がより好ましい。このようなサイズの鉄粒子によると、上記炭素質材料(被精製物)に含まれる不純物の酸化除去効率を高める効果が特によく発揮され得る。
該鉄粉末は、炭素質材料の合計100質量部に対して、例えば0.5〜20質量部の割合で用いることが好ましい。この添加割合で鉄粉末を用いることによって、より効率よくカーボンナノチューブを精製することができる。
また、上記鉄材として、鉄を含む炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られた鉄含有炭素質材料を用いてもよい。このような鉄含有炭素質材料を用いることによっても適当量の鉄(Fe)を供給することができる。さらに、この方法によると、上記鉄含有炭素質材料に含まれているカーボンナノチューブを同時に精製することができる。
好ましい一つの態様では、上記鉄含有炭素質材料が平均粒径100nm以下(典型的には3〜100nm、好ましくは3〜50nm、より好ましくは5〜20nm、例えば5〜10nm)の鉄粒子を含む。このようなサイズの鉄粒子を含む鉄含有炭素質材料によると、上記炭素質材料(被精製物)に含まれる不純物の酸化除去効率を高める効果が特によく発揮され得る。
前記カーボンナノチューブを精製することは、さらに無機酸成分を添加することを含み得る。このことによって、処理対象たる炭素質材料に含まれ得る金属成分を溶解除去する能力を向上させることができる。このため、カーボンナノチューブの精製をより効率的に行うことができる。
上記無機酸成分は、炭素質材料に過酸化水素および鉄材を添加して該炭素質材料をいったん処理した後に添加してもよい。この場合には、当該処理後に残留し得る触媒金属成分や添加した鉄材に由来する鉄粒子を、上記無機酸成分の添加によって、効率よく溶解除去することができる。あるいは、過酸化水素および鉄材とともに上記無機酸成分を添加してもよい。この場合には、上記無機酸成分の添加によって過酸化水素の添加量を節約し得、あるいは不純物炭素成分を酸化除去する能力を向上させることができる。
本発明は、他の側面として、カーボンナノチューブの精製方法を提供する。この精製方法は、カーボンナノチューブを含む炭素質材料に鉄材と過酸化水素とを添加して該カーボンナノチューブを精製することを特徴とする。
かかる精製方法は、種々の入手方法によって得られた種々の不純物を含む炭素質材料に適用されて、鉄材および過酸化水素を添加するといった簡単な方法により上述のようにカーボンナノチューブを高純度に精製することができる。
本発明によると、また、カーボンナノチューブの精製に使用されるカーボンナノチューブ精製用材料が提供される。該精製用材料は、カーボンナノチューブを含む炭素質材料に平均粒径100nm以下の鉄粒子が分散した構成を有する。
このようなカーボンナノチューブ精製用材料は、任意の方法により得られたカーボンナノチューブ含有炭素質材料を処理して精製されたカーボンナノチューブを得る用途に好適である。該精製用材料は、典型的には、適当な酸化剤(特に好ましくは過酸化水素)とともに上記カーボンナノチューブ含有炭素質材料に添加して使用される。例えば、上述したいずれかのカーボンナノチューブ製造方法またはカーボンナノチューブ精製方法に使用される鉄材として、上記精製用材料を好ましく採用することができる。上記のように微細な鉄粒子は単独では凝集しがちであるところ、上記カーボンナノチューブ精製用材料では該鉄粒子が炭素質材料に分散して配置されている。このことによって、該鉄粒子を効果的に利用してカーボンナノチューブを効率よく精製することができる。
ここに開示されるカーボンナノチューブ精製用材料の好ましい一つの態様では、前記鉄粒子が、アモルファスカーボンに包まれた複合粒子として前記炭素質材料に分散している。
かかる態様のカーボンナノチューブ精製用材料では、鉄粒子がアモルファスカーボンに包まれていることにより、該鉄粒子が変質(酸化等)から保護されている。したがって、該鉄粒子を効果的に利用してカーボンナノチューブを効率よく精製することができる。
ここに開示される他の一つのカーボンナノチューブ精製用材料は、カーボンナノチューブの精製に使用される材料であって、鉄を含む炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られた材料である。
このようなカーボンナノチューブ精製用材料は、任意の方法により得られたカーボンナノチューブ含有炭素質材料を処理して精製されたカーボンナノチューブを得る用途に好適である。該精製用材料は、典型的には、適当な酸化剤(特に好ましくは過酸化水素)とともに上記カーボンナノチューブ含有炭素質材料に添加して使用される。例えば、上述したいずれかのカーボンナノチューブ製造方法またはカーボンナノチューブ精製方法に使用される鉄材として、上記精製用材料を好ましく採用することができる。上記カーボンナノチューブ精製用材料は、典型的には、平均粒径5〜100nm(例えば5〜30nm)の鉄粒子が、アモルファスカーボンに包まれた複合粒子として分散した構成を有する。このことによって、該鉄粒子を効果的に利用してカーボンナノチューブを効率よく精製することができる。
一実施形態に係る単層カーボンナノチューブ製造に用いられる装置の構成を示す模式図である。 実施例1で用いた精製前の炭素質材料のTEM写真である。 実施例1による精製後の単層カーボンナノチューブのTEM写真である。 実施例1による精製後の単層カーボンナノチューブのSEM写真である。 実施例1による精製後の単層カーボンナノチューブのラマンスペクトル分析チャートである。 比較例による精製後の単層カーボンナノチューブのTEM写真である。 実施例2による精製後の単層カーボンナノチューブのTEM写真である。 実施例1による精製後の単層カーボンナノチューブのTEM写真である。 実施例3による精製後の単層カーボンナノチューブのTEM写真である。 比較例による精製後の単層カーボンナノチューブのTGAチャートである。 実施例2による精製後の単層カーボンナノチューブのTGAチャートである。 実施例1による精製後の単層カーボンナノチューブのTGAチャートである。 実施例3による精製後の単層カーボンナノチューブのTGAチャートである。 (a)および(b)は、実施例3で用いたカーボンナノチューブ精製用材料のTEM写真である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、使用する炭素質材料、鉄材、無機酸成分等の組成、鉄材および過酸化水素の添加方法や添加量等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、カーボンナノチューブの合成法、カーボンナノチューブの回収方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明の製造方法は、カーボンナノチューブを含む未精製の(あるいは、さらなる精製を要する)炭素質材料に鉄材および過酸化水素を添加して該炭素質材料からカーボンナノチューブを高純度に取り出し得るものであればよく、種々の材料および構成をその目的のために適用することができる。
本発明において用意される炭素質材料は、カーボンナノチューブを含むいずれの炭素質材料であってもよく、特に限定されない。したがって該炭素質材料には、従来公知のいずれかのカーボンナノチューブの合成方法、例えば、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(すなわちCVD法)によって合成された種々の未精製生成物(回収物)が含まれ得る。また、ここで用意する炭素質材料は、市販のカーボンナノチューブ(不純物を含む。)であってもよい。特に、アーク放電法によって得られた生成物は、欠陥が少なく品質の良いカーボンナノチューブを含むため好ましい。ここで用意する炭素質材料の好適例として、少なくとも陽極に触媒金属を含有させて得られた単層カーボンナノチューブを含む炭素質材料が挙げられる。
具体的には、例えば以下のようにして実施されるアーク放電法によって、カーボンナノチューブを含む炭素質材料を得ることができる。
すなわち、触媒金属を含む陽極炭素成形物(典型的には棒状)と陰極炭素成形物(典型的には棒状)との間に電圧を印加し、電流を供給する。これにより発生したアーク放電に伴うアーク熱によって、上記陽極炭素成形物からカーボン等が蒸発する。蒸発したカーボンは、電極間の隙間において、アーク熱と触媒作用によって、単層カーボンナノチューブを含む生成物を形成する。このようにして得られたカーボンナノチューブは、収率が高く、かつ品質に優れる。
陽極炭素成形物に含ませる触媒金属としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)および白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属または該金属を主体とする合金が好ましい。これらのうち、ニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)を主体とする合金を含む触媒金属の使用が特に好ましい。かかる触媒金属の具体例としては、ニッケル触媒、ニッケル/イットリウム(Ni/Y)触媒、およびニッケル/コバルト(Ni/Co)触媒が挙げられる。好ましく使用される触媒金属の他の具体例としては、パラジウム/ロジウム(Pd/Rh)触媒が挙げられる。
このようにして用意されたカーボンナノチューブ含有炭素質材料(すなわち被精製物)は、これに鉄材および過酸化水素を添加する前に、いったん洗浄することが好ましい。この洗浄処理によって、材料間に混在する不純物(例えば、当該炭素質材料から容易に洗い流すことのできるアモルファスカーボンや触媒金属等)を除去することができる。かかる洗浄処理は、例えば、アルコール(例えばエタノール)、浄水等の適当な洗浄液を用いて実施することができる。洗浄回数は限定されず、一回のみの洗浄でもよく繰り返して洗浄してもよい。該洗浄処理に際して超音波振動を付与してもよい。このことによって洗浄効果を向上させることができる。
次いで、炭素質材料(被精製物)を回収し、これに鉄材および過酸化水素を添加して処理する。この処理は、処理対象たる炭素質材料を適当な溶媒中に高度に分散させた状態で行うことが好ましい。炭素質材料を溶媒に分散させる手段としては、攪拌棒による攪拌、ミキサーによる分散、超音波分散等を採用し得るが、これらに限定されない。効率よく炭素質材料を分散させ得るという観点から、例えば超音波分散を好ましく採用することができる。また、炭素質材料を分散させる溶媒としては、酸化処理に与える影響が少ないことから、水(例えば浄水)を好ましく使用することができる。あるいは、直接過酸化水素水を溶媒として、これに炭素質材料を分散させてもよい。
本発明において用いられる鉄材は、いずれの形態で鉄(Fe)を含むものであってもよい。例えば、鉄が単体として(金属鉄として)含まれるものであってもよく、鉄を主体とする合金として含まれるものであってもよい。あるいは、鉄原子を含む化合物(鉄化合物)を鉄材として使用してもよい。かかる鉄化合物としては、鉄原子を含む酸化物(例えば酸化第一鉄、酸化第二鉄)、鉄原子を含む無機塩(例えば硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄)等を例示することができる。これらのうち好ましい鉄化合物の例として塩化鉄が挙げられる。すなわち、本発明の実施に当たり炭素質材料に添加される鉄の形態は、粒子の状態であってもよく、溶媒に溶解した状態(種々の形態のイオンであり得る。)であってもよい。
上記鉄材は、鉄(Fe)の供給源となり得るものであればよく、鉄以外の元素(例えば炭素)を含むものであり得る。このように鉄以外の元素をも含む鉄材の典型例として、カーボンナノチューブを含む炭素質材料と鉄成分とを包含する鉄材を挙げることができる。かかる鉄成分は、金属鉄、鉄合金、鉄化合物のいずれの形態であってもよい。該鉄成分(例えば金属鉄)が粒子状の形態で前記炭素質材料に分散している鉄材が好ましい。
ここに開示される方法に使用される鉄材の一好適例として鉄粉末(粉末状の金属鉄)が挙げられる。かかる鉄粉末を使用することにより、酸化能力が効果的に高められ得る。したがって、カーボンナノチューブ含有炭素質材料(被精製物)に含まれる不純物を効率よく酸化除去することができる。また、一般に鉄粉末は価格が比較的安く経済的であるので好ましい。
なかでも、平均粒径500nm以下(より好ましくは300nm以下)の鉄粒子により構成された鉄粉末の使用が好ましい。このような鉄粉末によると、上記炭素質材料(被精製物)に含まれる不純物の酸化除去効率を高める効果が特によく発揮され得る。該鉄粉末を構成する鉄粒子の平均粒径の下限は特に限定されない。入手容易性、価格、取扱性および分散性(例えば、該鉄粉末を炭素質材料とともに溶媒に分散させて処理する場合における該溶媒への分散性)のうち一または二以上の観点から、通常は上記平均粒径が50nm以上である鉄粉末が好ましく使用される。
ここに開示される方法に使用される鉄材の他の好適例として、カーボンナノチューブを含む炭素質材料に平均粒径100nm以下(典型的には3〜100nm、好ましくは3〜50nm、より好ましくは5〜20nm、例えば5〜10nm)の鉄粒子が分散した鉄含有炭素質材料が挙げられる。かかる鉄含有炭素質材料の好ましい一つの態様では、上記炭素質材料に該鉄粒子が略均一に分散している。換言すれば、上記炭素質材料の全体によく散らばって該鉄粒子が存在している。このように微細な鉄粒子は、過酸化水素等の酸化剤とともに用いられてカーボンナノチューブ含有炭素質材料(被精製物)に含まれる不純物を効率よく酸化除去する性能に優れる一方、単独の状態では該鉄粒子が凝集しがちである。凝集した状態にある鉄粒子は本来の効果を十分に発揮することができない。上記サイズの鉄粒子が炭素質材料に分散した鉄含有炭素質材料によると、微細な鉄粒子を効果的に利用してカーボンナノチューブを効率よく精製することができる。
このような鉄含有炭素質材料は、カーボンナノチューブを含む他の炭素質材料(典型的には、鉄を含まない炭素質材料)を精製して、精製されたカーボンナノチューブ(以下「精製カーボンナノチューブ」ともいう。)を得るためのカーボンナノチューブ精製用材料として把握され得る。
上記カーボンナノチューブ精製用材料(または、鉄材としての鉄含有炭素質材料)の好ましい一つの態様では、上記鉄粒子が、アモルファスカーボンに包まれた複合粒子として分散している。これにより該鉄粒子が変質(酸化等)から保護されているので取り扱いが容易である。例えば、上記精製用材料の使用や保存を常に不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気下で行う等の特別な措置をとらなくても(例えば空気中で取り扱っても)、該精製用材料に含まれる鉄粒子を金属鉄の状態(未酸化の状態)に容易に維持することができる。
このようにアモルファスカーボンで覆われた微細な鉄粒子を有するカーボンナノチューブ精製用材料(鉄材)と過酸化水素等の酸化剤とを被精製物(カーボンナノチューブを含む炭素質材料)に添加すると、該鉄粒子を覆うアモルファスカーボンが酸化除去されて、該鉄粒子(典型的には、金属鉄の状態にある鉄粒子)が剥き出しとなる。この鉄粒子を効果的に利用してカーボンナノチューブを効率よく精製することができる。かかる観点から、上記鉄粒子を覆うアモルファスカーボンの厚みは比較的薄いことが好ましい。例えば、平均厚さが概ね2〜5nmのアモルファスカーボン層で覆われた鉄粒子を含むカーボンナノチューブ精製用材料(鉄材)が好適である。
また、ここに開示される方法に使用される鉄材として、従来公知のカーボンナノチューブの製造方法において、触媒金属としての鉄を含む陽極を用いたアーク放電法によって得られた生成物を好ましく使用することができる。このように鉄を含む陽極を用いたアーク放電法による生成物(鉄含有炭素質材料)には陽極から蒸発した鉄成分が含有されている。かかる鉄成分を、ここに開示される方法における鉄供給源として好ましく使用することができる。したがって、上記アーク放電法により得られた鉄含有炭素質材料は、カーボンナノチューブを含有する他の炭素質材料(典型的には、鉄を含まない炭素質材料)を精製して精製カーボンナノチューブを得るためのカーボンナノチューブ精製用材料として把握され得る。
かかる鉄含有炭素質材料の典型的な態様では、上記鉄成分が粒子状として含まれている。好ましくは、上記鉄成分が金属鉄の粒子として含まれている。該粒子がよく分散していることが好ましい。その粒子の平均粒径は、例えば100nm以下(典型的には3〜100nm、好ましくは3〜50nm、より好ましくは5〜20nm、例えば5〜10nm)であり得る。このようなサイズの鉄粒子を含む鉄含有炭素質材料によると、上記炭素質材料(被精製物)に含まれる不純物の酸化除去効率を高める効果が特によく発揮され得る。
上記アーク放電法に使用する陽極は、鉄成分の粉末(鉄源粉末)と炭素粉末とを含む混合材料を所定の形状(典型的には棒状)に成形したものであり得る。その成形方法は特に限定されず、例えば一般的な圧粉成形法を採用することができる。鉄源粉末としては鉄粉末を好ましく使用することができるが、これに限定されない。少なくともアーク放電による生成物(鉄含有炭素質材料)において鉄粒子を構成し得る鉄源粉末であればよい。鉄源粉末と炭素粉末との混合割合は、鉄と炭素との原子比(Fe/C)が例えば0.1〜10at%(より好ましくは0.2〜5at%)となる割合とすることができる。かかる陽極を用いたアーク放電法による生成物には、通常、陽極における鉄と炭素との原子比(Fe/C)と同程度の比率で鉄および炭素(カーボンナノチューブを構成している炭素および不純物炭素を包含する。)が含まれている。
ここに開示されるカーボンナノチューブ精製用材料または鉄含有炭素質材料(鉄材)としては、鉄を含む炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られた生成物をそのまま使用する(被精製物としての炭素質材料に添加する)ことができる。また、被精製物としての炭素質材料と同様に、該生成物をいったん洗浄した後に使用してもよい。あるいは、所望により該生成物に酸化処理を施した上で使用することもできる。例えば、該酸化処理によって鉄粒子を覆うアモルファスカーボンの一部を除去し、該鉄粒子を覆うアモルファスカーボンの厚みを小さくするとよい。このことによって、このカーボンナノチューブ精製用材料(鉄材)の使用時において、鉄粒子を覆うアモルファスカーボンをより容易に除去することができる。その結果、より効率よくカーボンナノチューブを精製することができる。あるいは、上記酸化処理によって、鉄粒子の少なくとも大部分が剥き出しになる程度にアモルファスカーボンを除去してもよい。このようなカーボンナノチューブ精製用材料(鉄材)によると、より効率よくカーボンナノチューブを精製することができる。ただし、剥き出しになった(アモルファスカーボンで覆われていない)鉄粒子の酸化等を防止するため、該カーボンナノチューブ精製用材料(鉄材)は非酸化性雰囲気(好ましくは不活性ガス雰囲気)中で取り扱うことが好ましい。
このような鉄材の添加量は特に限定されない。例えば、炭素質材料100質量部に対し、該鉄材を鉄(Fe)換算として凡そ0.5〜20質量部(好ましくは凡そ1〜15質量部、より好ましくは凡そ7〜13質量部)の割合で添加するとよい。鉄材として例えば鉄粉末を使用する場合には、上記添加割合を好ましく採用することができる。また、鉄材として鉄含有炭素質材料を使用する場合には、炭素質材料100質量部に対し、該鉄材全体の質量(すなわち炭素質材料を含む。)が凡そ2〜50質量部(好ましくは5〜20質量部)となる割合で添加するとよい。
本発明において用いられる過酸化水素は、従来公知の種々の製造方法によって得られたいずれの過酸化水素であってもよく、特に制限されない。例えば、硫酸(H2SO4)とアンモニア(NH3)とから得た硫酸水素アンモニウム(NH4HSO4)の水溶液を電解酸化して得られた過酸化水素を用いることができる。また、市販の過酸化水素水(通常30%水溶液)をそのままの状態(例えば、そのままの濃度)で用いてもよい。
市販の過酸化水素水を使用して、該過酸化水素水を含む溶液(例えば水溶液)に炭素質材料および鉄材を浸漬した状態で精製処理を行う場合、該溶液における過酸化水素水の含有率は特に限定されず、種々の含有率において処理することができる。例えば、過酸化水素水の含有率を、炭素質材料を含む溶液(処理液)全体の5〜50質量%(好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%)とするとよい。かかる含有率となるように炭素質材料に過酸化水素水を添加することが好ましい。なお、後述するような加熱還流条件で精製を行う場合には、該加熱還流中に全液量(処理液の量)が減少しがちであるので、適宜過酸化水素水を追加するとよい。
これら鉄材および過酸化水素を炭素質材料に添加する態様は、これらと該炭素質材料とを共存させる(典型的には、該炭素質材料に鉄材および過酸化水素を含ませる)ことができればよく、特に限定されない。好ましくは、炭素質材料を分散させた溶液中に、鉄材および過酸化水素を順次にあるいは同時に添加する。鉄材として鉄粉末を用いる場合には、該鉄粉末を過酸化水素と同時に添加するか、または過酸化水素よりも先に鉄粉末を添加することが好ましい。
また、鉄材として上述のような鉄含有炭素質材料を使用する場合には、炭素質材料ともに鉄含有炭素質材料をあらかじめ溶媒中に分散させておき(鉄含有炭素質材料を分散させる方法としては、炭素質材料と同様の各種分散方法を適宜採用することができる。)、この分散液に過酸化水素を添加することが好ましい。このように、鉄材としての鉄含有炭素質材料を被精製物たる炭素質材料(典型的には、鉄を含まない炭素質材料)とともに溶媒に分散させておくことで、これら二種の炭素質材料に含まれるカーボンナノチューブを効率よく精製することができる。
好ましい一つの態様では、上記精製処理を加熱還流条件下で行う。加熱条件は特に限定されないが、好ましくは処理物(処理液)が大気圧中で沸騰し得るまで加熱する(すなわち、処理液の沸点に達するまで加熱する)。このとき、過酸化水素を逐次追加補給しながら還流を行うことが好ましい。なお、鉄材については追加補給の必要はないが、過酸化水素と同様に逐次追加補給してもよい。かかる加熱還流条件下において精製処理を行うことによって、カーボンナノチューブ精製効率をより高めることができる。
所望により、さらに無機酸を添加して炭素質材料を処理することができる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、亜硝酸等を特に制限なく用いることができる。このうち好ましい無機酸として塩酸が例示される。無機酸の濃度は特に限定されない。無機酸の添加は、鉄材および過酸化水素の添加の後に行うことができる。この場合は、無機酸を添加する前に所定時間の加熱還流処理を行った後、無機酸を添加し、その添加後さらに加熱還流処理を継続するとよい。あるいは、鉄材および過酸化水素の添加と同時に無機酸を添加してもよい。すなわち、鉄、過酸化水素および無機酸の存在下で炭素質材料の加熱還流処理を開始することができる。
上述のような加熱還流処理終了後、精製されたカーボンナノチューブを回収する。その回収手段は特に限定されない。例えば、加熱還流処理物を静置した後に沈殿物を分画濾過することによって回収してもよく、遠心分離によって回収してもよく、加熱還流処理物を吸引濾過することにより回収してもよく、これらの方法を組み合わせて回収してもよい。得られた回収物は、さらに洗浄液によって洗浄することが好ましい。この洗浄処理によって、酸化または溶解された不純物を、回収されたカーボンナノチューブから分離する(洗い流す)ことができる。洗浄液としては、不純物の少ない水またはアルコール(例えばエタノール)を好ましく使用することができる。かかる洗浄の際、洗浄効果を向上するために超音波振動を付与してもよい。この洗浄工程は、一回のみ行ってもよく、複数回繰り返して行ってもよい。
洗浄後のカーボンナノチューブは、例えば、吸引濾過等の手段によって回収することができる。精製されたカーボンナノチューブの収率は、炭素質材料自体の製造手段にもよるが、例えば、精製前の炭素質材料の質量を100%として、その5〜80%、好ましくは10〜50%、特に10〜30%程度に相当する質量の精製カーボンナノチューブが得られる収率であり得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1>
精製されたカーボンナノチューブの具体的な製造例について説明する。まず、使用した単層カーボンナノチューブの製造装置について、その一例を図面を参照して説明する。
(1)製造装置;
図1に単層カーボンナノチューブ製造装置1の一構成例を示す。この装置1は、大まかに言って、反応容器3と、反応容器3内に配置された一対の電極13,15と、反応容器3にガスを供給するガス供給手段7とから構成される。
反応容器3は密閉可能な耐圧容器であり、例えばステンレス鋼により構成されている。
その反応容器3内に陽極13および陰極15が配置されている。これらの電極13,15はいずれも棒状に形成されている。陽極13は、反応容器3内においてその中心軸(長軸)を略垂直方向に向けて配置されている。一方、陰極15は、陽極13の中心軸に対して斜め(例えば略20〜50°、特に30°)の角度をもって、その一端16が陽極13の一端14に向かい合う位置に配置されている。すなわち、陽極13の中心軸の延長線と陰極15の中心軸の延長線とが所定の角度で交差するように配置されている。なお、各電極13,15の形状はスティック状に限られず、これらの電極が互いに向かい合う箇所(例えば、対向する面)があればよい。したがって、これらの電極の一方または両方が例えばタブレット状であってもよい。陽極13と陰極15との隙間のサイズは特に限定されない。例えば、アーク放電による単層カーボンナノチューブ発生効率が高い0.1〜10mm、特に0.5〜5mm程度が好適である。なお、図1では陽極13と陰極15とが鋭角で配置された例を示しているが、陽極13と陰極15との一端が互いに向かい合っていればよく、図1に示す配置に限定されない。例えば、陽極13と陰極15とが互いに水平方向に向かい合って配置されていてもよく、あるいは垂直方向に向かい合って配置されていてもよい。
陽極13および陰極15には、陽極13と陰極15の間にアーク放電を発生し得る電圧を印加可能な直流電源23が接続されている。なお、ここでは直流電源を用いた例を示しているが、交流電源を用いることもできる。
陽極13は、例えば、直径約6mm、長さ約75mmのサイズの耐熱性導電材料であってアーク放電によりカーボンを蒸発可能な材料から構成されている。そのような材料として種々の炭素材料を用いることができる。例えば、グラファイトに単層カーボンナノチューブ合成用触媒を含有させた炭素材料が好ましく使用され得る。かかる触媒は、例えば、ニッケルもしくはニッケル合金(好ましくはニッケル/イットリウム)、またはコバルト等であり得る。このような陽極13は、例えば、グラファイト粉末に触媒粉末(例えばニッケル/イットリウム粉末)を配合して圧粉成形することにより得ることができる。
陽極13における陰極15の対向面(先端部)14とは反対側の端部(基部)19には、ソレノイド22が接続されている。このソレノイド22は、図示しない電極保持部に保持された陽極13(電極保持部)を垂直方向(すなわち、陰極15の対向面(先端部)16方向、特に図1においては下方向)に移動可能としている。このソレノイド22を利用して、カーボン蒸発による陽極13の消耗にともなって陽極13を移動させることにより、両電極13,15間の隙間を一定に保持することができる。
陰極15は、例えば、直径約10mm、長さ約100mmのサイズの耐熱性導電材料から構成されている。該耐熱性導電材料としては、例えば、種々の炭素材料、金属材料(例えば銅)等を適宜選択して用いることができる。なお、電源として交流電源を用いる構成では、陰極15として、陽極13と同様に炭素(例えばグラファイト)に単層カーボンナノチューブ合成用触媒を含有させたものが好ましく使用される。
この陰極15にはモータ21が接続されている。モータ21は、図示しない電極保持部に保持された陰極15を、その長軸を中心として回転可能に設置されている。
反応容器3内に雰囲気ガスを供給するガス供給手段7は、雰囲気ガス供給用のボンベ27A,27Bを有する。これらのボンベ27A,27Bは、反応容器3の一部(ここでは底面30)に設けられたガス供給口31に接続され、そのガス供給口31から反応容器3内に雰囲気ガスを導入可能に設置されている。ボンベ27A,27Bからガス供給口31に至る経路にはそれぞれバルブ28A、28Bが設けられている。このバルブ28A,28Bの開閉によって、ボンベ27Aおよび/またはボンベ27Bから反応容器3への雰囲気ガス供給量および供給タイミングを制御することができる。
なお、後述するカーボンナノチューブ調達工程では雰囲気ガスとしてヘリウムガスを用いているが、雰囲気ガスの種類はこれに限定されない。例えば、雰囲気ガスとしてヘリウムガス以外の不活性ガスを用いてもよい。該不活性ガスとしては、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス等を例示することができる。これら不活性ガスのうち一種類のみを用いてもよく、二種以上の不活性ガスを任意の割合で使用してもよい。あるいは、雰囲気ガスとして、上述した一種または二種以上の不活性ガスと水素ガスとの混合ガスを用いてもよい。このように、雰囲気ガスとして複数種類のガスの混合気体を用いてもよい。
図1に示すボンベ27A,27Bは、同じ種類の雰囲気ガス(例えばヘリウムガス)を供給するものであり得る。かかる構成によると、例えば、バルブ28Aを開状態としてボンベ27Aから反応容器3内に雰囲気ガスを供給しつつ、バルブ28Bを閉状態としてボンベ27Bを交換する(典型的には、空になったボンベを新しいものと交換する)ことができる。また、ボンベ27Aおよびボンベ27Bから異なるガスを供給してもよい。この場合には、例えばバルブ28A,28Bの開度を調節することにより、ボンベ27Aから供給されるガス(例えばアルゴンガス)とボンベ27Bから供給されるガス(例えば水素ガス)との混合比を調整することができる。
排出部11は、反応容器3内のガスを流通可能に附設されており、反応容器3の一部(ここでは底面30)に接続されている。排出部11に備えられる真空ポンプ49によって反応容器3内のガスを吸引することによって、反応容器3内のガスを排出口45から容器外に排出することができる。また、ガス供給手段7からの雰囲気ガス供給量と排出部11からのガス排出量との兼ね合いによって、反応容器3内の雰囲気ガス圧力を調整することができる。
直流電源23ならびにモータ21およびソレノイド22は、所定のプログラムまたはマニュアル操作に基づいて動作する制御機構53からの制御指令が入力される入出力回路55に接続されている。このことによって、電圧印加による陽極13の移動および陰極15の回転を制御可能に構成されている。したがって、陽極13および陰極15間に印加された電圧からアーク放電状態を制御機構53で演算し、アーク放電で発生した単層カーボンナノチューブ含有生成物の成長に応じて、陽極13の移動、陰極15の回転を調整する制御信号を入出力回路55からモータ21およびソレノイド22に出力することができる。このような態様によると、安定した条件下でアーク放電させることが可能となり、品質の揃った(および所望により均一に広く分散した薄層の)単層カーボンナノチューブ含有生成物(すなわち、本実施例における炭素質材料)を得ることができる。
(2)カーボンナノチューブを含む炭素質材料の調達;
このような構成の製造装置1を用いて単層カーボンナノチューブを合成した。まず、上述したような陽極13および陰極15を用意し、あらかじめ設定した所定間隔が実現されるように、これらの電極13,15をそれぞれ反応容器3内の図示しない電極保持部にセットした。そして、反応容器3に設けられた排出部11のバルブ44を開け、当該排出口45に接続する真空ポンプ49を作動させて反応容器3内のガスを排気した。これにより反応容器3内の圧力を減少させた。容器3内が13〜1.3×10-3Pa程度の高真空に減圧されたらバルブ44を絞り、ガス供給手段7から反応容器3内に雰囲気ガスを導入した。ここでは雰囲気ガスとしてヘリウムガスを使用した。そして、真空ポンプ49とガス供給手段7とによって、反応容器3内におけるヘリウムガスの圧力が6.6×104Pa程度に維持されるように、反応容器3内のガス圧(雰囲気ガス圧力)を調整した。
そして、陽極13と陰極15との間に電圧を印加し、直流電源23から電流(典型的には、30〜70A、例えば60A)を供給した。この結果発生したアーク放電によるアーク熱で陽極13からカーボンを蒸発させた。ここで印加する電圧は、所望するカーボン蒸発速度に応じて適宜選択し得る。ここでは該電圧を30〜40V程度に設定した。また、印加された電圧から、アーク放電状態を制御機構53で演算し、アーク放電によるカーボンの蒸発(すなわち電極の消耗)に応じて制御信号を入出力回路55からモータ21およびソレノイド22に出力し、陽極13の移動および陰極15の回転を行った。
このようなアーク放電法により、電極間の隙間において、アーク熱と触媒作用によって単層カーボンナノチューブを含む生成物60が形成された。この生成物60は、供給された雰囲気ガスの気流によって反応容器3内に広がっていた(図1参照)。かかるカーボンナノチューブの合成時間(電圧を印加する時間)は特に限定されないが、例えば、5〜20分、好ましくは10〜15分、特に11〜13分程度であり得る。ここでは合成時間を13分とした。
本装置を作動して単層カーボンナノチューブを所定量堆積させた後、得られた単層カーボンナノチューブ含有生成物(すなわち、本実施例に係る炭素質材料)60を反応容器3から取り出した。ここでは、反応容器3前面に開閉可能に設けられた図示しない蓋部を開き、炭素質材料60を例えばピンセット等で容器3内から剥離して取り出した。本装置により生成した炭素質材料60は、反応容器3の全面に広く均一に分散しているため、このようにピンセット等で摘まんで取り出す態様によっても容易に反応容器3から取り出すことができる。また、陽極13が垂直方向に配置されるとともに、陰極15が陽極13に対して鋭角に配置されるため、アーク放電が斜め方向に起こり、単層カーボンナノチューブを含まない陰極堆積物を少なくすることができた。このため、カーボンナノチューブの生成速度が向上した。すなわち、本実施例では、約1g/分以上の生成速度を実現した。
(3)カーボンナノチューブの精製;
上記のようにして得られた生成物(炭素質材料)には、単層カーボンナノチューブとともに、触媒(例えばニッケル/イットリウム粉末)および不純物炭素が含まれていた。かかる生成物に対し、これら触媒および不純物炭素の含有量を低減する処理、すなわちカーボンナノチューブの精製処理を施した。その精製処理の手順を以下に示す。
まず、得られた炭素質材料200mgとエタノール50mlとを100mlビーカーに入れ、30分間の超音波処理(超音波振動を付与する処理)を施した。これを吸引濾過して流体を除去し、炭素質材料を回収した。
その回収された炭素質材料に蒸留水200mlを加え、4分間ミキサーにかけた。より具体的には、まず2分間ミキサーにかけ、1分間休憩し、再び2分間ミキサーにかけた。このようにして得られた炭素質材料分散液を100mlづつに分け、第一被精製物および第二被精製物とした。
この第一被精製物を加熱還流条件で処理した。すなわち、還流用パイプを備えたフラスコに上記第一被精製物を入れ、平均粒径約0.2μmの鉄微粒子10mgと、濃度30%の市販の過酸化水素水20mlとを加えて加熱した。フラスコ内の液が沸騰してから20分間経過後に過酸化水素水40mlを追加した。さらに20分間経過後に過酸化水素水40mlを追加し、さらに20分間経過後に過酸化水素水50mlを追加した。それから300分経過後に加熱を止め、還流処理を終了させた。冷却後、上澄み液を排出させて還流処理液を得た。
第二被精製物についても同様の還流処理を行って還流処理液を得た。
これら第一被精製物および第二被精製物から得られた還流処理液を合わせたものに、遠心分離機(11000rpm)を用いて30分間の遠心分離処理を施し、その沈殿物を回収した。回収した沈殿物に塩酸(濃度:約36%)100mlを加え、5分間の超音波処理を行った後、12時間放置した。12時間経過後、静かに上澄み液を捨て、単層カーボンナノチューブを含む画分を回収した。
その回収画分に蒸留水200mlを加えて10分間の超音波処理を行い、2時間ほど静置した後に上澄み液を捨て、再度蒸留水200mlを加えて10分間の超音波処理を行った。同様に2時間ほど放置した後に上澄み液を捨て、再び蒸留水200mlを加えて10分間の超音波処理を行った。これを2時間ほど放置した後、上澄み液を捨て、今度はエタノールを加えて10分間の超音波処理を行った。その後、吸引濾過することにより、精製した単層カーボンナノチューブを得た。得られた精製物の質量は、精密天秤で秤量したところ、28mgであった。収率は14%であった。
(4)得られたカーボンナノチューブの性状観察;
上記(3)の精製工程によって得られた単層カーボンナノチューブの観察を透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope、日立株式会社製、型式H7000)および走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、株式会社トプコン製、型式ABT−150F)によって行った。また、精製効果を比較評価するために、上記(2)の製造工程において得られた精製前の炭素質材料を透過電子顕微鏡(TEM)にて観察した。それらの写真を図2〜4に示す。図2は精製前の炭素質材料のTEM写真、図3は精製後の単層カーボンナノチューブのTEM写真、図4は精製後の単層カーボンナノチューブのSEM写真である。
図2に示されるように、精製前の炭素質材料には触媒金属であるニッケル/イットリウムのナノ粒子がカーボンナノチューブの表面に多量に混在しており、その純度が低いことが判る。また、カーボン粒子やグラファイトが不純物(不純物炭素)として観察された。そして、上記金属ナノ粒子は不純物炭素によって厚く覆われていた。
これに対して、本実施例により精製されたカーボンナノチューブ(図3,4)では、これら触媒金属粒子や炭素質の不純物がほとんど観察されず、その表面が清浄でカーボンナノチューブの純度が高いことが判る。また、精製の前後でカーボンナノチューブの構造に変化は観察されず、この精製処理によってカーボンナノチューブにダメージが与えられることはなかったことが判る。
また、本実施例により得られた精製後のカーボンナノチューブのラマンスペクトルを観察した。ラマンスペクトルの観察には、Jobin Yvon株式会社製のラマン分光測定装置(型番「RAMANOR T64000」)を使用した。その結果(チャート)を図5に示す。この精製されたカーボンナノチューブのラマンスペクトルには、1593cm-1付近にシャープなピークが観察された。また、1340cm-1付近には弱いピークしか観察されなかった。したがって、得られたカーボンナノチューブは、高純度であって、かつ高い結晶性を示すことが判る。
<比較例>
上記(3)の精製工程において鉄微粒子を使用しなかった点以外は実施例1と同様にして、上記(2)で調達したカーボンナノチューブ含有炭素質材料の精製を行った。すなわち本比較例では、上記炭素質材料(被精製物)に過酸化水素水を添加したが、鉄材を添加することなく精製処理を行った。
<実施例2>
本実施例では、上記(3)の精製工程において、平均粒径約0.2μmの鉄粒子に代えて平均粒径約2μmの鉄粒子を使用した。その他の点については実施例1と同様にして、上記(2)で調達したカーボンナノチューブ含有炭素質材料の精製を行った。すなわち本実施例では、上記炭素質材料(被精製物)に過酸化水素水と平均粒径約2μmの鉄粒子(鉄材)とを添加して精製処理を行った。
<実施例3>
次に、上記(2)において得られたカーボンナノチューブ含有炭素質材料の他の精製例を説明する。この製造例は、鉄を不純物として含む炭素質材料(鉄含有炭素質材料)を鉄材に用いて上記炭素質材料を精製した例である。
まず、鉄を不純物として含む炭素質材料を用意した。この鉄含有炭素質材料は、上記(2)に示した炭素質材料の製造手順と実質同じ手順で作製した。変更点は、陽極13においてニッケル/イットリウム触媒に代えて鉄触媒を含有させた点、および、雰囲気ガスとしてヘリウムガスに代えて全圧2.6×104Paのアルゴンガスと水素ガスとの1:1(体積比)の混合ガスを採用した点である。
そして、上記(2)により得られた炭素質材料180mgと上記鉄含有炭素質材料(鉄材)20mgとエタノール50mlとを100mlビーカーに入れて30分間の超音波処理を施した後、これら炭素質材料(以下、「混合炭素質材料」という)を吸引濾過により回収した。
その回収した混合炭素質材料に蒸留水200mlを加え、4分間ミキサーにかけた。より具体的には、まず2分間ミキサーにかけ、1分間休憩し、再び2分間ミキサーにかけた。このようにして得られた混合炭素質材料分散液を100mlづつに分け、第一被精製物および第二被精製物とした。
この第一被精製物を上記フラスコに入れ、ここに上記市販の過酸化水素水20m1を加えた。そして、上記(3)で説明したのと同様の還流処理を行った。すなわち、フラスコ内の液が沸騰してから20分間経過後に過酸化水素水40mlを追加し、さらに20分間経過後に過酸化水素水40mlを追加し、さらに20分間経過後に過酸化水素水50mlを追加した。それから120分経過後に加熱を止め、還流処理を終了させた。冷却後、フラスコの内容物に10分間の超音波処理を施した。その後2時間放置し、上澄み液を排出させて還流処理液を得た。
第二被精製物についても同様の還流処理を行って還流処理液を得た。
これら第一被精製物および第二被精製物から得られた還流処理液を合わせたものに、遠心分離機(11000rpm)を用いて30分間の遠心分離処理を施して沈殿物を回収した。この沈殿物に塩酸(濃度:約36%)100mlを加え、5分間の超音波処理を行った後、12時間放置した。12時間経過後、静かに上澄み液を捨て、単層カーボンナノチューブを含む画分を回収した。
その回収画分に蒸留水200mlを加えて10分間の超音波処理を行い、2時間ほど放置した後に上澄み液を捨て、再度蒸留水200mlを加えて10分間の超音波処理を行った。同様に2時間ほど放置した後に上澄み液を捨て、再び蒸留水200mlを加えて10分間の超音波処理を行った。これを2時間ほど放置した後、上澄み液を捨て、今度はエタノールを加えて10分間の超音波処理を行った、その後、吸引濾過することにより、精製した単層カーボンナノチューブを得た。得られた精製物の質量は、精密天秤で秤量したところ、42mgであった。収率は21%であった。
<精製した単層ナノチューブの性状観察>
以上の実施例および比較例により得られた精製物のTEM写真を図6〜図9に示す。これらのTEM写真と各実施例および比較例との対応関係を、その精製条件の概略とともに表1にまとめた。表中、実施例または比較例において過酸化水素の欄に「有」と示されているのは、当該実施例または比較例において過酸化水素を添加して精製を行ったことを表している。また、比較例において鉄材の欄に「−(ハイフン)」が表示されているのは、該比較例において鉄材を添加することなく精製を行ったことを表している。なお、図8は、他の実施例および比較例との対比を容易にするために、実施例1により得られた精製物を図3とは倍率を変えて観察したTEM写真である。
これら図6〜図9の比較からわかるように、過酸化水素のみを使用した比較例(図6)に比べて、過酸化水素と鉄材とを添加した実施例1〜3(図8,図7および図9)によると、該比較例による精製物よりも明らかに高度に精製された精製物(精製カーボンナノチューブ)が得られた。なかでも、鉄材として平均粒径が小さい鉄粒子を用いた実施例1(図8)では、より平均粒径が大きな鉄粒子を用いた実施例2(図7)に比べて明らかに高品質の精製物が得られた。そして、鉄材として鉄含有炭素質材料を用いた実施例3では、さらに顕著に高品質の(高度に精製された)精製物が得られた。
<精製した単層ナノチューブのTGA測定>
以上の実施例および比較例により得られた精製物につき、熱重量測定(TGA:Thermo Gravimetric Analysis)を行った。このTGA測定には、島津製作所社製のTGA測定装置(型番「DTG−60M」)を使用した。それらの測定結果(チャート)を図10〜図13に示す。図10は比較例により得られた精製物についてのTGA測定結果であり、図11は実施例2により得られた精製物、図12は実施例1により得られた精製物、図13は実施例3により得られた精製物についてのTGA測定結果である。これらのTGA測定結果と各実施例および比較例との対応関係を表1に併せて示した。
これらのTGA測定結果において主ピークよりも低温側(470℃前後)に表れているピークは、精製物中に残留するアモルファスカーボンの分解に起因するものと考えられる。この低温側のピークは比較例による精製物(図10)のTGAチャートではかなり大きく、それよりは小さいものの実施例2による精製物(図11)のTGAチャートにもはっきりと表れている。一方、実施例1による精製物のTGAチャートでは上記低温側のピークは痕跡程度にまで減少している。そして、実施例3による精製物のTGAチャートでは上記低温側のピークは該チャートに表れない程度にまで減少している。このように、各実施例および比較例により得られた精製物についてのTGA測定結果は、それらの精製物のTEMによる観察結果とよく一致するものであった。
<鉄含有炭素質材料の性状観察>
実施例3において鉄材として使用した鉄含有炭素質材料をTEMにより観察した。そのTEM写真を図14(a)および図14(b)に示す。図14(b)は、図14(a)の一部を拡大して観察したものである。
図14(a)には、この鉄含有炭素質材料を構成するカーボンナノチューブの表面に多数の微細な鉄粒子(黒い点として表れている。)が分散して付着している様子が示されている。それらの鉄粒子は、該炭素質材料の全体によく散らばって、略均一に配置されている。すなわち、著しい凝集を示すことなく薄く散らばっている。該鉄粒子の平均粒径は概ね5〜10nmの範囲にある。
また、図14(b)には、上記鉄粒子がアモルファスカーボンによって薄く覆われた様子が示されている。該鉄粒子を覆うアモルファスカーボンの平均厚みは概ね2〜5nmである。このように薄いアモルファスカーボン層は、酸化処理(例えば過酸化水素を用いた処理)によって容易に除去され得る。このことによって内部の鉄粒子が剥き出しとなる。上記実施例3によると、かかる鉄粒子と過酸化水素とによって被精製物中の不純物が効率よく酸化除去されて、高度に精製されたカーボンナノチューブ(精製物)が得られたものと推察される。

Claims (13)

  1. 精製されたカーボンナノチューブを製造する方法であって、
    カーボンナノチューブを含む炭素質材料を用意すること;および
    前記炭素質材料に鉄材と過酸化水素とを添加してカーボンナノチューブを精製すること;
    を包含する、方法。
  2. 前記炭素質材料が実質的に鉄(Fe)を含まない、請求項1に記載の方法。
  3. 前記炭素質材料として、ニッケル(Ni),コバルト(Co)および白金族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属または該金属を主体とする合金を含有する炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られたものを用いる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記鉄材として鉄粉末を用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記鉄粉末を構成する鉄粒子の平均粒径が500nm以下である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記鉄粉末は、前記炭素質材料100質量部に対して0.5〜20質量部の割合で用いられる、請求項4または5に記載の方法。
  7. 前記鉄材として、鉄を含む炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られた鉄含有炭素質材料を用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記鉄含有炭素質材料は平均粒径100nm以下の鉄粒子を含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記カーボンナノチューブを精製することは、さらに無機酸成分を添加することを包含する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. カーボンナノチューブの精製方法であって、
    カーボンナノチューブを含む炭素質材料に鉄材と過酸化水素とを添加して該カーボンナノチューブを精製することを特徴とする、方法。
  11. カーボンナノチューブの精製に使用されるカーボンナノチューブ精製用材料であって、
    カーボンナノチューブを含む炭素質材料に平均粒径100nm以下の鉄粒子が分散している、材料。
  12. 前記鉄粒子は、アモルファスカーボンに包まれた複合粒子として分散している、請求項11に記載の材料。
  13. カーボンナノチューブの精製に使用されるカーボンナノチューブ精製用材料であって、
    鉄を含む炭素成形物を少なくとも陽極とする一対の電極間にアーク放電を起こさせて該陽極から生じた蒸発物を堆積させることにより得られた、材料。
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