JPWO2003102641A1 - プラスチック製光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Abstract
伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造できる製造方法の提供。(A)光ファイバの内層となり、含フッ素重合体a1を基材とし特定の屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する工程、(B)光ファイバの外層となり、重合体a1との比較において、SP値の差が4以内である樹脂を用いて円筒成形体を準備する工程、(C)円柱状成形体を最内部に円筒成形体をその外側に配置し光ファイバ母材を準備する工程、(D)それぞれ独立に温度調節可能な第1と第2の加熱炉とを準備する工程、(E)母材の有する空隙を大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にする工程、(F)母材を第1の加熱炉を用いて所定の温度に加熱する工程、および、(G)第1の加熱炉で加熱された母材を第2の加熱炉で紡糸する工程、の各工程を含むプラスチック製光ファイバの製造方法。
Description
技術分野
本発明はプラスチック製の光ファイバの製造方法に関し、特に多層構造を有するプラスチック製の光ファイバの製造方法において、層間の接着性に優れ、伝送損失が低く、線径変動が少ない光ファイバの製造方法に関する。
背景技術
近年通信用の光ファイバとして、プラスチック製の光ファイバの開発が進んできた。特に屈折率分布型の光ファイバが実用化されつつある。プラスチック製の屈折率分布型光ファイバは、大口径を有し接続が容易である点、柔軟性に優れる点、高帯域で高速通信に好適である点等で、特に加入者系と呼ばれる比較的短距離の通信媒体として好適であり、その市場が拡大しつつある。これらの中でも含フッ素重合体を用いたプラスチック製の屈折率分布型光ファイバは、広い波長領域にわたって伝送損失が低くなることが実証されている。具体的には特開平8−5848号公報に開示されている光ファイバは、500〜1300nmという広い波長領域にわたって、100dB/km以下という低い伝送損失性能を有しており、既に実用化されている種々の光源が使用できる点で優れている。
上述のプラスチック製光ファイバの製造方法としては、種々の方法が開発され、改良されてきている。そのうち、光ファイバ母材を紡糸し光ファイバを製造する、いわゆるプリフォーム法においては、光ファイバの高い性能を引き出すために多くの改良が加えられてきた。特に母材の材質を選定することにより、また母材を加熱、紡糸するための加熱炉の構造を工夫することにより、より高性能の光ファイバを安定に製造することが可能となってきている。
母材の材質を選定する例としては、特開平11−109144号公報には、光ファイバの引っ張り強度や耐磨耗性を改良するために、含フッ素重合体を用いた内層と、アクリル樹脂等の高い引っ張り弾性率を有する樹脂からなる外層とを有する光ファイバ母材を紡糸し、光ファイバを製造する技術が開示されている。また特開2000−284131号公報には、多層構造を有する光ファイバの製造方法として、特定の溶融粘度範囲の樹脂を用い、かつ、隣り合う層の間の空隙を減圧にしながら紡糸する方法が開示されている。
また加熱炉の構造の工夫は、具体的には線径変動の抑制という効果に着目して各種の方法が開示されている。ここで、線径とは光ファイバの外直径である。また線径変動とは光ファイバの長手方向にわたる線径の変動であり、平均線径に対する変動範囲で表す。具体的には、例えば線径が500μmの光ファイバを製造する際には、その線径の変動を直径の±1%、すなわち±5μmに抑制する必要がある。これは光ファイバどうしを接続する際に、その光軸どうしを合わせる必要があるためである。線径変動が大きい場合には光ファイバどうしの接続損失が大きくなり、大口径で接続が簡易であるという長所を相殺することになる。
この線径変動の抑制方法としては、特開平8−94860号公報に不活性ガスをプリフォーム表面に流して表面温度を制御する方法が、特開平11−337745号公報には、加熱炉下部に低温維持手段を設ける方法が、それぞれ開示されているが、いずれも線径変動の抑制効果は不充分であった。
上記従来の方法に関して、材料の選定については、含フッ素重合体を基材として用い、伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造することは困難であった。その原因を追求した結果、内層と外層との樹脂どうしの接着性が良好でないことが、伝送損失の安定した光ファイバの製造に対して、大きな影響を与えていることが明らかとなった。すなわち、含フッ素重合体は周知のように汎用の炭化水素系樹脂と混和しにくいため、内層に含フッ素重合体を用いた場合には、外層の炭化水素系樹脂との接着性が必ずしも充分ではなかった。本発明における光ファイバ母材のように多層構造を有する光ファイバ母材を紡糸する場合には、母材の紡糸過程においては、外層の樹脂が内層の樹脂を引っ張りながら紡糸が進行する。したがって外層と内層との樹脂どうしの接着性が不充分な場合には、その界面で微小なすべりが発生すると考えられ、この影響で光ファイバの製造が不安定になりやすくなると考えられる。
発明の開示
本発明では上述の問題を解決し、内層と外層との樹脂どうしの接着性を向上させるために、用いる樹脂のそれぞれのSP値、および、光ファイバ母材を紡糸する際の加熱条件に着目した。ここでSP値とは、Smallによるモル引力定数ΔF(Molar Attraction Constant)、分子量M、および、密度dより、下記式(1)により求められる値である。
このSP値の近い材料どうしは比較的親和性が高く、したがって接着性の向上も実現できる。また本発明では、SP値による材料の選定とともに、光ファイバ母材を紡糸する際の加熱条件、特に光ファイバ母材の予熱が重要な要素であることを見出した。これらの改良により、伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造できるようになった。
さらに加熱炉の構造については鋭意検討を重ねた結果、母材表面の気流を整流し層流として制御することで、効果的に線径変動を抑制できることが明らかとなった。
本発明は、光ファイバ母材を紡糸して、内層と少なくとも1層の外層とを有する多層構造を有するプラスチック製の光ファイバを製造するプラスチック製光ファイバの製造方法であって、前記内層が含フッ素重合体a1を基材とする含フッ素重合体組成物a3からなり、前記内層が屈折率分布を有し、かつ、前記外層がフッ素原子を含まない樹脂からなる、プラスチック製光ファイバの製造方法において、(A):光ファイバの内層となり、含フッ素重合体a1を基材とし、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する(prepare)工程、(B):光ファイバの外層となり、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内である樹脂を選定し、選定された樹脂を用いて工程(A)における円柱状成形体の外側に隣り合うように配置しうる円筒成形体を準備する工程、(C):工程(A)の円柱状成形体を最内部に、工程(B)の1以上の円筒成形体をその外側に空隙を設けて同軸に配置して、光ファイバ母材を準備する工程、(D):それぞれ独立に温度調節可能な第1の加熱炉と第2の加熱炉とを準備する工程、(E):母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にする工程、(F):光ファイバ母材を含フッ素重合体a1のガラス転移点をTa1としたとき、光ファイバ母材を第1の加熱炉を用いて、Ta1〜(Ta1+40)℃に加熱する工程、および、(G):第1の加熱炉で加熱された母材を第2の加熱炉で紡糸する工程、の各工程を含むことを特徴とするプラスチック製光ファイバの製造方法を提供する。この製造方法によれば、伝送損失が安定して低く抑えられたプラスチック製の光ファイバが製造できる。
また上記の製造方法において、前記の第1の加熱炉または第2の加熱炉として、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉を用いることが好ましい。この態様によれば、大口径の母材を用いた場合でも安定した製造が可能となる。
また前記第2の加熱炉が、炉体が円筒状であり、炉開口部の一方にシール部が設けられ、炉開口部の他方に円管が少なくとも2以上設けられ、前記シール部は弾性を有する膜状であり、前記シール部は炉体の中心軸を中心とする円形開口部と、該円形開口部の周辺に設けられた複数の小開口部とを有し、前記2以上の円管は炉体の中心軸と同一の中心軸を有し、円管どうしは空隙を有するようにそれぞれ配置され、かつ、前記2以上の円管のうち最小の内径を有する円管の一方の開口部は炉体の内部に配置されている、加熱炉を用いることが好ましい。特に前記シール部が上部となるように炉体を設置し、前記シール部の円形開口部の直径より太い母材を用い、加熱された炉中に前記母材を前記円形開口部より挿入し、炉中で母材を加熱し、前記2以上の円管のうち最小の内径を有する円管を通して光ファイバを取り出すことが好ましい。
上記態様によれば、プラスチック製光ファイバの製造時の線径変動が抑制でき、線径変動に由来する光ファイバどうしの接続損失が抑制できる。特に炉内部に熱がこもらない最小限度に炉内部の気流を抑制し、かつ、母材表面の気流の乱れを抑制することにより線径変動が抑制できることが明らかとなった。
発明を実施するための形態
以下に本発明の詳細を説明する。本発明において、「光ファイバ」とは「プラスチック製の光ファイバ」を意味する。ここで低伝送損失の光ファイバであればあるほど、長距離の信号伝送が可能となるが、通常は複数の接続を経て長距離伝送が行われる。そのために接続損失を抑制する必要が大きい。一方で線径変動は接続損失に重大な影響を与える。したがって、本発明で開示される線径変動が極めて抑制された光ファイバの製造方法は、低伝送損失である透明含フッ素樹脂製の光ファイバの製造に好適であり、その中でも屈折率分布型の透明含フッ素樹脂製光ファイバの製造に特に好適である。
また本発明においては、光ファイバ母材(以下、単に母材ともいう。)を加熱、紡糸してプラスチック製光ファイバを製造する。本発明に係る光ファイバは樹脂製であり、内層と少なくとも1層の外層とを有する多層構造を有する。すなわち母材も同様の多層構造を有する。ここで内層は実質的に光線が通過する領域となり、外層は主に補強、保護の役割をはたす。
また重合体がC−H結合を有しないとは、重合体のフィルム(測定する厚さは0.2mm程度が好ましい。)を作成し赤外吸収スペクトルを測定した場合に、C−H結合に基づく吸収が実質上観測されないことをいう。また非結晶性とは、重合体または重合体組成物のX線回折(XRD)を測定した際に、横軸に2θ(単位:度)、縦軸に強度(cps)をとった回折図において、半値幅が2度以下の明瞭なピークが実質上見られないことをいう。また屈折率とはナトリウムD線に対する屈折率をいう。またコアとは、光パワーの大部分が閉じ込められて伝送される光ファイバの部分をいい、クラッドとは、コアを取り囲んでいるコアより屈折率の低い物質で構成される部分をいう。またコア径とは、コア中心部の光量の5%以上の光量を示す領域の直径について考える。
本発明において、母材の内層(光ファイバの内層と同じである。)は含フッ素重合体a1を基材とする含フッ素重合体組成物a3からなる。ここで含フッ素重合体a3は、含フッ素重合体a1と屈折率調整剤a2との組成物である。ただし、内層において屈折率調整剤a2は濃度に特定の分布を有する。すなわちこの濃度分布は、後述する屈折率分布を与える。
本発明において含フッ素重合体a1とは、C−H結合を有していない含フッ素重合体である。含フッ素重合体a1はC−H結合を有していないために、近赤外領域の波長の光を吸収することがない。含フッ素重合体a1は非結晶性であることが、光ファイバの散乱損失が低減できる点で好ましい。この含フッ素重合体a1としては、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するとは、脂肪族環を構成する炭素原子の1以上が主鎖を構成する炭素連鎖中の炭素原子であり、かつ脂肪族環を構成する炭素原子の少なくとも一部にフッ素原子またはフッ素含有基が結合している構造を有することを意味する。含フッ素脂肪族環構造としては、含フッ素脂肪族エーテル環構造がさらに好ましい。
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素環構造を有する単量体(環を構成する炭素原子と環を構成しない炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または環を構成する炭素原子2個間に重合性二重結合を有する単量体)を重合して得られる重合体や、2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体を環化重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が好適である。
含フッ素脂肪族環構造を有する単量体を重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(2−メチル−1,4−ジオキシン)などの含フッ素脂肪族環構造を有する単量体を単独重合することにより得られる。またこの単量体とC−H結合を含まないラジカル重合性単量体とを共重合させることにより得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体も用いられるが光の透過性が低下する場合があるので単独重合体が好ましい。C−H結合を含まないラジカル重合性単量体としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
また、2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体を環化重合して得られる、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特開昭63−238111号公報、特開昭63−238115号公報等に開示されている。すなわち、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)やペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などの単量体を環化重合することにより、またはこのような単量体とテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)などのラジカル重合性単量体とを共重合させることにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。なかでも、光の透過性が低下する場合があるので単独重合体が好ましい。
また、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)などの含フッ素脂肪族環構造を有する単量体とペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などの2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体とを共重合させることによっても主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られ、含フッ素重合体a1として用いられる。ただし、この場合も組み合わせによっては光の透過性が低下する場合があるので単独重合体が好ましい。
本発明において屈折率調整剤a2としては、含フッ素重合体a1との相溶性に優れ、かつ、C−H結合を実質的に有していない化合物が好ましい。また含フッ素重合体a1との比較において、屈折率調整剤a2の屈折率が高いことが好ましい。すなわち、屈折率調整剤a2は、含フッ素重合体a1にとって高屈折率化剤であることが好ましい。屈折率調整剤a2としては、屈折率が高いことから、塩素原子を有する化合物および/または芳香族化合物が好ましい。塩素原子を有する化合物としては、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー等が挙げられる。また芳香族化合物としては、ペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)、ペルフルオロ(2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン)等が挙げられる。
本発明において、母材の外層(光ファイバの外層と同じである。)は1層以上である。この外層はフッ素原子を含まない樹脂からなる。ただし2層以上の外層を設けた場合に、それらの樹脂は同一でも異なっていてもよい。また外層に用いる樹脂であって内層と隣り合う外層に用いる樹脂は、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内、好ましくは3以内の樹脂である。本発明において、上記のSP値の差が4以内であることは、内層の含フッ素重合体a1と、外層のフッ素原子を含まない樹脂との親和性が高く、接着性が良好であることを意味する。フッ素原子を含まない樹脂を採用することにより、高価なフッ素樹脂の使用量を抑制できるだけでなく、強度等に優れた汎用の炭化水素系樹脂が使用でき、選択の自由度が高くなる。ただし炭化水素系樹脂とは、炭素原子と水素原子のみからなる単量体を重合して得られる樹脂に限られず、酸素原子および/または窒素原子を含む単量体を重合して得られる樹脂であってもよい。なお2層以上の外層が設けられた場合に、それらの樹脂どうしの関係では、たがいに隣り合う外層どうしの樹脂のSP値の差は4以内が好ましく、特には3以内が好ましい。
また本発明において、外層の樹脂の粘弾性特性が内層の樹脂(含フッ素重合体a1)に近いことが好ましい。この条件を満たす樹脂は、母材が紡糸される際にその成形に大きな影響を与える温度−粘度特性が、内層の樹脂に近くなるために、母材の紡糸が安定に行える。具体的には、外層の樹脂の貯蔵弾性率(M’)が含フッ素重合体a1の貯蔵弾性率の好ましくは0.7〜1.3倍、特に好ましくは0.8〜1.2倍であり、かつ、外層の樹脂の損失弾性率(M”)が含フッ素重合体a1の損失弾性率の好ましくは0.7〜1.3倍、特に好ましくは0.8〜1.2倍である。なお、貯蔵弾性率(M’)および損失弾性率(M”)は、JIS K−7244−1で定義される値であり、その単位はいずれもPaである。
本発明において、光ファイバは屈折率分布型である。すなわち光ファイバの内層は屈折率分布を有する。この屈折率分布は放物線様であることが好ましい。すなわち内層の中心部において屈折率が高く、周辺部に向かうに従って屈折率が低くなる分布が好ましい。この光ファイバの内層の屈折率分布は、対応する母材の内層が所定の屈折率分布を有することにより与えられる。すなわち、母材の内層は、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する。
本発明において工程(A)は、光ファイバの内層となり、含フッ素重合体a1を基材とし、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する工程である。すなわち工程(A)は、上述した含フッ素重合体a1を用いて、特定の屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する工程である。この円柱状成形体はその中心部が軸方向に沿って中空になっていてもよい。この円柱状成形体の製造方法としては、次の例が挙げられる。まず含フッ素重合体a1を重合し、これを公知の方法により精製する。精製された含フッ素重合体a1の樹脂を金属製の管に充填する。この管を、含フッ素重合体a1のガラス転移点Ta1より充分高い温度(例えばTa1より100℃高い温度)にて、回転させて中空部を有する成形体を得る。この成形体を冷却し、中空部に含フッ素樹脂a1より屈折率が高い屈折率調整剤a2を所定量投入する。これを先程と同様に回転させながら、屈折率調整剤a2が含フッ素重合体a1に拡散する温度に昇温し、屈折率調整剤a2を含フッ素重合体a1に含浸、拡散させる。屈折率調整剤a2の投入量および拡散させる温度と時間を適宜選択することにより、所望の屈折率分布が得られる。以上の方法で、特定の屈折率分布を有し、円柱型の中空部を有する円柱状成形体が製造される。
また本発明において工程(B)は、光ファイバの外層となり、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内である樹脂を選定し、選定された樹脂を用いて工程(A)における円柱状成形体の外側に隣り合うように配置しうる円筒成形体を準備する工程である。前述したように、外層に用いられる樹脂は、フッ素原子を含まない樹脂であり、かつ、含フッ素重合体a1との比較においてSP値の差が4以内である樹脂である。この条件を満たす樹脂の例としては、含フッ素重合体a1としてペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体(SP値:5.37)を用いた場合に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(SP値:9.02)等が挙げられる。
工程(B)においては、上述の樹脂を用いて所定の円筒成形体を準備する。この円筒成形体の製造方法としては、以下の方法が例示できる。1つの方法は、上述の樹脂を適切な押し出し機を用いて円筒に押し出し成形することである。また別の方法としては、前記の工程(A)で含フッ素重合体a1の成形で述べたように、樹脂を金属製の管に充填し、この管を樹脂のガラス転移点より充分高い温度にて、回転させて円筒の成形体を得る方法である。
また上記の円筒成形体の大きさは次のように決められる。まず外層が1層のみの場合には、上記工程(A)で準備される円柱状成形体の外直径より大きい内直径を有するように、円筒成形体の内直径が決められる。またこの円筒成形体の厚さ、すなわち、円筒成形体の外直径−内直径は適宜決められる。通常は光ファイバに求められる引っ張り強度等を参考にして決められる。また円筒成形体の長さは光ファイバを製造する際に取り扱いが容易となることから、前記の円柱状成形体の長さより長く決められる。次に外層が2層以上の場合には、上記と同様にして外層の第1層の外側に第2層が配置できる大きさに内直径が決められる。本発明においては、隣り合う2層(前記の円柱状成形体と、外層のうちの最内層となる層との関係も含む)において、内部に配置される成形体の外直径と外部に配置される成形体の内直径との差は1.5mm以内が好ましく、0.1〜1.2mmがより好ましい。上記の差が1.5mm以内であれば、光ファイバ製造時に樹脂が挫屈することなく、結果として製造される光ファイバの外径寸法が安定化する点で好ましい。
また本発明において工程(C)は、工程(A)の円柱状成形体を最内部に、工程(B)の1以上の円筒成形体をその外側に空隙を設けて同軸に配置して、光ファイバ母材を準備する工程である。この工程では、工程(A)で準備された円柱状成形体と、工程(B)で準備された円筒成形体とを、組み合わせて配置する。またこのとき前記の円柱状成形体と前記の円筒成形体とは空隙を設けて同軸に配置される。ただし外層の円筒成形体が2層以上設けられる場合には、これらの円筒成形体も同様に空隙を設けて同軸に配置される。この組み合わされた1組を、光ファイバ母材として扱う。
この組み合わせの工程は清浄度の高い場所で行われることが好ましい。例えば、クリーンルーム内で取り扱うことが好ましい。これは母材に異物が付着しないようにするためである。母材に付着した異物は、製造される光ファイバの伝送損失に大きな影響を与える。特に最内部に配置される円柱状成形体は、いわゆるフッ素樹脂一般と同様に静電気により帯電しやすく、異物が付着しやすい。したがってこの工程(B)はクリーンルーム内で行い、かつ、制電気流中で静電気を除去しながら行うことが特に好ましい。また上記クリーンルームとしては、JIS B−9920で定められたクラス6以下の清浄度を有していることが好ましく、クラス5以下の清浄度を有していることがさらに好ましい。
また本発明において工程(D)は、それぞれ独立に温度調節可能な第1の加熱炉と第2の加熱炉とを準備する工程である。本発明においては、第1の加熱炉において母材を予熱し、母材が一定温度以上に加熱された後に、母材を第2の加熱炉に導き光ファイバを製造する。第1の加熱炉、第2の加熱炉とも、母材を均一に加熱するために環状炉であることが好ましい。第1の加熱炉は第2の加熱炉の鉛直上方に配置される。また第1の加熱炉と第2の加熱炉とは共通の鉛直に伸びる中心軸を有する。この共通の中心軸に沿って、母材を上方から下方へ移動させ、まず第1の加熱炉に挿入し、続いて第2の加熱炉に挿入する。このとき母材の中心軸も、前記の共通の中心軸と同一に配置される。
また第1の加熱炉と第2の加熱炉とは、抵抗線等の発熱体が組み込まれた加熱炉であっても、ハロゲンランプ等の加熱炉であってもよい。この2種類の加熱炉は放射される光線の中心波長が異なり、抵抗線等の発熱体が組み込まれた加熱炉ではその波長は3〜9μmであり、ハロゲンランプ等の加熱炉では0.5〜1.5μmである。しかし工程(F)で述べる理由により、第1の加熱炉は放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉が好ましい。また第2の加熱炉についても、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉が好ましい。
また第1の加熱炉の内径は、母材の外直径(外層のうち最外部に配置される円筒成形体の外直径である。)に対して1.5〜2倍が好ましい。ただし加熱炉の内径とは、加熱炉の長手方向(紡糸の際には鉛直方向となる方向である。)に垂直な断面をとった場合に、その内部空間に内接する円の直径を意味する。この範囲を超えて加熱炉の内径が大きいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が広いと光ファイバの製造が安定しにくく好ましくない。またこの範囲を超えて加熱炉の内径が小さいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が狭いと、母材と加熱炉が接触する等の問題が発生しやすく、やはり好ましくない。また第1の加熱炉の長さ(鉛直方向)は、加熱炉の内径に対して1〜7倍が好ましく、2〜5倍がより好ましい。この長さが上記範囲より短いと加熱が不充分となりやすく、上記範囲より長いと母材送り装置が大型になりすぎる傾向にあり好ましくない。
また第2の加熱炉の内径は、母材の外直径に対して1.02〜1.67倍が好ましく、1.05〜1.54倍がより好ましく、1.18〜1.43倍が特に好ましい。すなわち母材の外直径は、第2の加熱炉の内径に対して、60〜98%が好ましく、65〜95%がより好ましく、70〜85%が特に好ましい。この範囲を超えて加熱炉の内径が大きいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が広いと光ファイバの製造、特に線径変動が安定しにくく好ましくない。またこの範囲を超えて加熱炉の内径が小さいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が狭いと、母材と加熱炉が接触する等の問題が発生しやすく、やはり好ましくない。また第2の加熱炉の長さ(鉛直方向)は、加熱炉の内径に対して2〜6倍が好ましく、3〜5倍がより好ましい。この長さが上記範囲より短いと加熱が不充分となりやすく、上記範囲より長いと製造される光ファイバの線径変動が大きくなりやすく好ましくない。ここで光ファイバの線径とは光ファイバの外直径である。また線径変動とは光ファイバの長手方向にわたる線径の変動であり、平均線径に対する変動範囲で表す。
ここで第1の加熱炉と第2の加熱炉とは、独立に温度調節ができることが好ましい。このためには、独立の温度調節手段を有する以外に、熱的に遮断されていることが望ましい。熱的に遮断されているとは、第1の加熱炉と第2の加熱炉との間に空隙を設け、放射と熱伝導による炉体どうしの熱的な干渉が抑制されていること、および、第2の加熱炉で発生する上昇気流が第1の加熱炉に与える影響が抑制されていることである。第1の加熱炉と第2の加熱炉との距離は、母材の外直径に対して0.5〜2倍が好ましい。この範囲より短いと第2の加熱炉が第1の加熱炉に熱的な干渉をおよぼしやすく、またこの範囲より長いと第1の加熱炉で加熱された母材が過度に冷却されることになり、いずれも好ましくない。また第2の加熱炉で発生する上昇気流が第1の加熱炉に与える影響を抑制するために、第2の加熱炉の上部には後述するシール部が設けられることが好ましい。
以下に本発明において好適な第2の加熱炉について、図1を用いて説明する。図1は加熱炉の一例の断面図である。加熱炉20は炉体21とシール部22と2本の円管23aおよび23bを有している。炉体21は円筒状であり、炉開口部を2箇所有している。一方の炉開口部にはシール部22が設けられ、他方の炉開口部には2本の円管23aおよび23bが設けられている。シール部22は弾性を有する膜状であり、円形開口部22aと小開口部22bとを有している。円形開口部22aは炉体21の中心軸を中心として、シール部22に設けられている。シール部22の円形開口部22a周辺には複数の小開口部22bが配置されている。2本の円管23aおよび23bは、炉体21の中心軸と同一の中心軸をそれぞれ有するように配置されている。円管23aと23bとは空隙を有するようにそれぞれ配置されている。円管23aは円管23bよりも小さい内径を有している。この円管23aの一方の開口部は炉体21の内部に配置されている。
炉体21は円筒状であり、炉体内部には図示しないが抵抗線等の発熱体が組み込まれている。炉内の円柱状の空間に光ファイバ用の母材を挿入し、紡糸して光ファイバを製造する。発熱体が組み込まれた部分、すなわち有効発熱面は炉体の長さの80%以上設けられることが好ましい。これは炉内面の多くを発熱面とし、全体としては炉体の長さを短くすることが好ましいことを意味する。
前記シール部22は母材を紡糸する際に、炉開口部のうち上部になる方に設けられる。シール部22は、炉内の熱が対流により過剰に放出されることを抑制するために設けられる。シール部22の材質は弾性を有し、炉の温度環境に耐えられる材料であれば制限はないが、好ましい具体的な材料としてはシリコーンゴムが挙げられる。
シール部22の形状を図2を用いて説明する。図2はシール部の上面図である。シール部22は円形開口部22aと小開口部22bとを有している。この円形開口部22aは母材が挿入される部分となる。円形開口部22aの大きさは、紡糸される母材の直径よりも小さい直径である。すなわち円形開口部22aの直径は母材の直径に対して97%以上100%未満が好ましく、98.5以上99.5%以下がより好ましい。円形開口部22aの直径が母材の直径より大きい、すなわち母材とシール部との間に間隙があると、対流が発生することにより母材表面の気流が乱れ、線径変動が抑制しにくくなる。また上記範囲より小さいとシール部が母材の加熱炉への挿入の際の抵抗となり好ましくない。
また円形開口部22a周辺には20個の小開口部22bが配置されている。この小開口部は炉内部に熱がこもらないために設けられる。この小開口部が設けられない場合には、炉内部に熱がこもり炉内温度の過剰な上昇の原因となり、安定な線径での製造が困難となる。この小開口部22bは円形開口部22aとは隣接せずに設けられる、すなわち円形開口部と小開口部との2種類の開口部が連続して設けられないことが好ましい。これは母材表面の気流の乱れを抑制するためである。また小開口部の個々の大きさと形状とは炉開口部の大きさと母材の大きさとから適宜決められるが、炉開口部の面積と母材の断面積との差をシール総面積とした場合に、小開口部の合計した総面積はシール総面積の5〜15%が好ましく、8〜13%がより好ましい。小開口部の合計した総面積がシール総面積の5%未満であると、炉内部に熱がこもり好ましくない。また同じく15%を超えると炉内の熱が対流により過剰に放出されやすくなり、結果として炉内部の気流が乱れやすくなり、線径変動の抑制の点から好ましくない。また小開口部は円周に沿うように均等に分散して配置されることが好ましい。
図1において、炉体21のシール部22が設けられていない炉開口部には2本の円管23aおよび23bが設けられている。すなわちこれらの円管は母材を紡糸する際に、炉開口部のうち下部になる方に設けられる。ここで円管の材料は、炉の温度環境に耐えられる材料であれば制限はなく、具体的な材料としてはシリカ、アルミナ等のセラミックス;アルミニウム、ステンレス鋼等の金属;またはガラスが挙げられる。円管のうち最小の内径を有する円管の材料としては、目視による位置合わせが容易である点で透明であるガラスが好ましい。
この円管は次の目的で設けられる。最小の内径を有する円管は母材近傍の気流を抑制するために設けられる。また他の円管は炉内の気流を抑制し、整流し、かつ、外乱の影響を排除するために設けられる。ここで母材の紡糸を行う際には、母材のひずみ速度の大きな領域において、その母材表面の気流の乱れを抑制することが、線径変動の抑制に大きな影響を与えることが明らかとなった。ただしひずみ速度とは、単位時間あたりのひずみの増加量であり、母材の変形の速度を意味する。具体的にひずみ速度の大きな領域とは、母材が紡糸され加熱炉の下部開口部を通過する前後の領域である。この領域では母材の直径は最終的な光ファイバの直径に近くなり、線速度が高速になる。ここで気流が乱れると、母材近傍の気流の乱れに起因する母材表面の温度の変化が大きくなり、線径変動に大きな影響を与える。
前記2本以上の円管と炉体とは、中心軸を共有するように設けられる。これは母材を紡糸する際に、母材が均一に加熱されるように、母材が炉体の中心軸に配置されることによる。円管どうしは空隙(間隙)を有するようにそれぞれ配置される。これはこの空隙は、炉内部に熱がこもらないように気流を維持するために必要である。また円管は2本以上設けられる。この本数の上限は前記の円管どうしの空隙が確保される限り制限はない。
前記の円管のうち最小の内径を有する円管の内径(直径)は、小さいことが好ましい。具体的には、上記内径は光ファイバの最終線径(光ファイバが加熱炉を出て、常温に冷却されたときの線径を意味する。)の10〜30倍が好ましい。例えば最終線径が0.5mmの光ファイバを製造する場合には、上記内径は5〜15mmが好ましい。
上記の最小の内径を有する円管の一方の開口部は炉体の内部に配置される。これは前述したひずみ速度の大きな領域が炉の下部開口部の前後にわたり、炉内部にもおよぶためである。具体的に上記最小の内径を有する円管の開口部が炉内に挿入される長さは、その円管の内径の1〜5倍が好ましい。ただし母材に接することがないように設けられる。また最小の内径を有する円管の長さはその内径の15〜100倍が好ましい。この長さの範囲であれば、線径変動を抑制する効果が充分に得られる。またこれより長くても大きな不都合はないが、操作性が低減しやすくなりやすい。
また前記の円管のうち最大の内径を有する円管の内径は、炉の下部開口部の直径より小さいことが好ましい。具体的にこの円管の内径は、炉の下部開口部の直径の50〜95%が好ましく、60〜80%がより好ましい。またこの円管と炉体との間には空隙を設けないこと、すなわちこの円管の外部から炉内へと気流が進入しないことが好ましい。またこの円管の長さはその内径の3〜8倍が好ましい。
また円管が3本以上設けられた場合に、その内径と長さとは、最大の円管に準じて適宜決められる。すなわち内径については1つ外側に設けられた円管に対して好ましくは10〜95%の範囲、より好ましくは15〜70%の範囲から決められる。またその長さは好ましくは当該円管の内径の3〜8倍の範囲から決められる。
また本発明において工程(E)は、母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にする工程である。ここで母材の有する空隙とは、工程(A)において準備された円柱状成形体とこのすぐ外側に配置された円筒成形体との空隙、および、外層が2以上設けられた場合には隣り合う外層どうしの間の空隙をまとめて(総称して)表わす。また、該空隙は、工程(A)において準備された円柱状成形体が中空部を有する場合にはこの中空部も含める。母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にすることで、樹脂どうしの、特に含フッ素重合体a1とこれに隣り合う樹脂との接着性が向上する。また円柱状成形体の有する中空部が気泡を残さずに融着するためにも、上記の空隙の減圧は必要である。この減圧度が1kPa未満であると、空隙の融着が不充分となる箇所が発生する可能性が高くなり、これにより断面に気泡の残る光ファイバが製造される可能性が高くなり好ましくない。またこの減圧度が1.4kPaを超えて大きいと、大気圧により加熱された母材が挫屈しやすくなり好ましくない。母材が挫屈した場合には製造された光ファイバの真円度が悪化し、扁平になりやすい。
また母材の有する空隙を減圧するにあたり、母材の先端部(先に加熱炉に挿入される端部)にはシール部が設けられ、母材の上端部(先端部とは逆の端部)には上記の空隙を減圧するための治具が設けられる。この治具の例としては、母材を加熱炉に挿入するための母材保持具に、真空ポンプ等の減圧手段に接続される開口部が設けられたものが挙げられる。ただしこの母材保持具と母材との間も気密状態に保たれる。
また本発明において工程(F)は、光ファイバ母材を含フッ素重合体a1のガラス転移点をTa1としたとき、光ファイバ母材を第1の加熱炉を用いて、Ta1〜(Ta1+40)℃に加熱する工程である。前述のように、本発明において母材を予熱した後に加熱し紡糸することにより、光ファイバは安定に製造される。ここで母材が加熱される温度とは、第1の加熱炉の出口(下端開口部)における母材の中心部の温度である。上記の温度範囲であれば、母材が実質的に溶融変形を起こさない温度まで充分に加熱される。これにより、光ファイバの線径変動が抑制され、また、製造された光ファイバの伝送損失のばらつきが少なくなる。上記の温度範囲を超えて高い温度まで加熱すると母材が溶融変形を開始しやすくなり好ましくない。また上記の温度範囲より低温であると、光ファイバの線径変動が抑制されにくくなり、製造された光ファイバの伝送損失のばらつきも大きくなる傾向にあり、好ましくない。
第1の加熱炉において充分な加熱が行われない場合には、以下に述べる理由により成形が不安定になる。本発明において、母材は熱伝達率が比較的低いとされる樹脂材料が選ばれる。特に内層の含フッ素重合体a1は一般のフッ素樹脂と同様に熱伝達率が非常に低い。また母材は多層構造を有していて空隙を有することから、母材の中心部を所定温度まで加熱するには課題が多い。例えば、室温まで冷却されている中心部を溶融成形可能な温度まで加温しようとした場合に、外側から短時間で加熱しようとすると、外周部を相当高温にする必要がある。しかし、この場合には外周部の樹脂が先に溶融変形してしまい、粘度が母材の内外で大きく異なる状態となる。具体的には、柔らかい外周部と硬い中心部を同時に成形することになり、成形が不安定になる。したがって第1の加熱炉により所定の加熱を行う必要がある。本発明では母材の横断面(母材の長軸と垂直な断面)で温度差が少なく、全体が均温化されていることが、光ファイバの製造が安定化される点で好ましい。具体的には、第1の加熱炉の出口において、母材の前記横断面における、母材の中心部と外周部との温度差は30℃以内が好ましく、10℃以内がより好ましい。
また第1の加熱炉により所定の加熱を行う必要がある他の理由として、第1の加熱炉を設けることにより、第2の加熱炉が母材を加熱する負荷が軽減され、母材の温度がより精密に制御された状態で紡糸できる点も挙げられる。
また第1の加熱炉としては、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉を用いることが好ましい。このような加熱炉を採用することで、母材の中心部まで比較的容易に加熱できる。これは上記波長範囲の光線は樹脂透過性に優れ、母材の中心部まで加熱するのに好適だからである。この態様によれば、大口径の母材を紡糸する場合においても、母材中心部まで安定に加熱され、光ファイバの製造が安定に行える。特に長距離にわたって伝送損失が低い光ファイバの製造が可能となる。
また本発明において工程(G)は、第1の加熱炉で加熱された母材を第2の加熱炉で紡糸する工程である。すなわち、第1の加熱炉で加熱され、所定温度まで予熱された母材を、第2の加熱炉に挿入し、所定の成形温度まで昇温することにより、母材が紡糸され光ファイバが製造される。
製造される光ファイバの直径は、母材の送り速度と、光ファイバの引き取り速度との比により決められる。ここで光ファイバの引き取り速度は引き取りローラの回転速度で調節される。なお、本発明の光ファイバの製造において、引き取りローラの前後の適宜の位置に光ファイバの線径をオンラインで測定する線径測定装置を設け、線径測定装置から得られるデータから線径の変動傾向を予測し、この予測をもとに引き取りローラの回転速度を調節することにより線径変動を抑制することが好ましい。この方法によれば、変動周期が5秒以上の緩やかな線径変動を抑制することができる。これに対して上述した気流の制御による線径変動の抑制は変動周期が5秒未満の線径変動の抑制に効果的である。前記の線径測定装置としては、非接触で線径を測定する線径測定装置が好ましく、具体例としてはレーザ光線を用いた線径測定装置が挙げられる。
また母材を加熱炉に挿入するための母材送り装置と加熱炉とは、水平方向に相互に位置を調整できることが好ましい。これは母材の紡糸が常に加熱炉の水平方向の中心部で行われることが、均一な紡糸のためには有効だからである。例えば仮に母材がわずかに傾いて母材送り装置に取り付けられてしまった場合には、紡糸の初期において母材が加熱炉の中心に存在していたとしても、紡糸の途中で加熱炉の内部で中心からずれていくことが考えられる。このとき母材は偏った加熱を受け、均一な紡糸ができなくなる。このような偏った加熱を防止するために、上記の位置の調整が可能であることが好ましい。ここで位置の調整は母材送り装置を動かしても、加熱炉を動かしても同等の効果が得られる。例えば母材送り装置を動かす場合には、母材送り装置の母材取り付け治具に水平位置の微調整機構を備えることができる。より具体的には、前述の線径測定装置で光ファイバの位置のずれを検出し、この測定をもとに母材取り付け治具をサーボモータを用いて水平方向にわずかに動かすことができる。またこの位置調整機構が設けられていると、第2の加熱炉の下部に設けられた円管としてより細い内径の管が採用でき、線径変動の抑制効果が上げられる。
(実施例)
以下に本発明について実施例および図1〜図3を用いて詳細に説明する。図3は、本発明の製造方法を示す概略の断面図である。母材31は内層31aと外層31bとを有する。母材31は、第1の加熱炉10で所定温度まで加熱され、第2の加熱炉20で溶融され紡糸される。第2の加熱炉は、シール部22と2本の円管を有する。シール部22は小開口部22aを有する。2本の円管は小円管23aと大円管23bであり、大円管23bはフランジ23cを有する。母材31は母材取り付け治具41に取り付けられ、母材取り付け治具41を介して図示しない母材送り装置に取り付けられる。母材取り付け治具41は排気孔41aを有する。母材31が紡糸され、引取りローラ42で引き取られて光ファイバが製造される。
母材は以下の方法で準備した。ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)を環化重合して、透明なフッ素樹脂P1を得た。これは含フッ素重合体a1にあたる。フッ素樹脂P1の屈折率は1.342、ガラス転移点は108℃、SP値は5.37である。またフッ素樹脂P1の230℃、1Hzにおける貯蔵弾性率は2740Pa、同じく損失弾性率は12000Paである。フッ素樹脂P1は公知の方法により精製し異物および残存揮発成分を除去した。精製されたフッ素樹脂P1を、金属製の管に充填した。この管を、240℃に保たれた熱風循環オーブン中で回転させて、内径が6.0mm、外径が19.6mm、長さが500mmを有し、中心部が軸方向に中空の円柱状成形体を得た。この円柱状成形体の中空部に屈折率調整剤としてペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)(以下、TPBという。)の3.5gを注入し、230℃に保たれた熱風循環オーブン中で回転させて、TPBをフッ素樹脂P1に含浸、拡散させた。これにより、内周部の屈折率が1.355、外周部の屈折率が1.342であり、連続的に変化する屈折率分布を有した、中空部を有する円柱状成形体が得られた。
また別途に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(三菱レーヨン社製、商品名:アクリペットTF−8)を用いて円筒成形体を製造した。このPMMA樹脂の屈折率は1.492、ガラス転移点は110℃、SP値は9.02である。またPMMA樹脂の230℃、1Hzにおける貯蔵弾性率は3080Pa、同じく損失弾性率は11800Paである。フッ素樹脂P1の場合と同様に、PMMA樹脂を金属製の管に充填し、240℃に保たれた熱風循環オーブン中で回転させた。これにより内径が20.2mm、外径が40.0mm、長さが600mmの円筒成形体を得た。
上記で得られたPMMA樹脂製の円筒成形体の中空部に、前記のフッ素樹脂P1を基材とした円柱状成形体を挿入し、両者の成形体の間に空隙を設けて同軸に配置して母材とした。なお母材を準備する作業は、JIS B−9920で定められたクラス5のクリーンルーム内で行い、制電気流中で静電気を除去しながら行った。
以下に再度図1〜図3を参照しながら説明する。加熱炉は以下のものを準備した。第1の加熱炉10としては、内径が78mm、長さが190mmの炉体を有する環状炉を準備した。炉体内部には抵抗線と熱電対が埋め込まれていて、電流量を調節することにより発熱量、すなわち炉内温度を調節する。
第2の加熱炉20としては、内径が54mm、長さが230mmの炉体を有する環状炉を準備した。炉体内部には抵抗線と熱電対が埋め込まれていて、第1の加熱炉と同様に炉内温度を調節する。第2の加熱炉20の上部開口部には、直径が70mm、厚さが2mmのシリコーンゴム製のシール部22を設けた。このシール部には直径が39.5mmの円形開口部と、この円形開口部を取り囲むように円周状に32個の小開口部22a(それぞれは直径2mmの円形である。)とを設けた。前記円形開口部には母材が挿入される。第2の加熱炉22の炉体下部には2本の円管(大円管23bと小円管23aとする。)を設けた。この2本の円管23aおよび23bは第2の加熱炉の母材近傍の気流を整流し、製造された光ファイバの線径変動を抑制するために設けた。大円管23bは内径が37mm、外径が38mm、長さが150mmでアルミニウム製である。この大円管23bには一方の開口部にフランジ23cを設けた。このフランジ23cを炉体に固定することにより、大円管23bを炉体の下部に固定した。すなわち、炉体と大円管23bとの間には空隙がないようにした。また大円管23bは炉内には挿入されず、炉体の下部の面に設けた。また小円管23aは内径が10mm、外径が12mm、長さが200mmのガラス管である。小円管23aの一方の開口部を炉内に挿入し、炉体の下部開口端から20mmの位置(炉体の下面に相当する位置を0mmとした。)に固定した。ただし固定位地は変更できるように、すなわち炉体内部へ挿入する長さが変えられるように固定した。ここで第2の加熱炉21において、炉体、2本の円管およびシール部は中心軸を共有するように設けた。
第1の加熱炉10と第2の加熱炉20とは、70mmの距離をおいて設置した。また第2の加熱炉20の下方、炉体の下面から1.1mの位置に引き取りローラ42を設置した。図示しないが、引き取りローラ42の0.2m上方にレーザ光線を用いた線径測定装置(キーエンス社製、LS5000)を設置した。線径の測定回数は毎秒1200回とした。引き取りローラ42の回転速度は、線径測定装置の測定結果を計算機に取り込み、記録した。同時に線径変動の傾向を予測し、この予測をもとに引き取りローラ42の回転速度を自動的に計算機により制御することとした。上述した、第1の加熱炉10、第2の加熱炉21、引き取りローラ42および線径測定装置を架台に取り付け、それぞれ同一の鉛直線上に配置されるように調整した。また同じ鉛直線上の第1の加熱炉上方に母材31を送るように母材送り装置を準備した。母材31は母材送り装置に母材取り付け治具41を介して取り付けた。母材取り付け治具41は排気孔41aを有し、排気孔41aを通して母材31が有する空隙を所定の圧力に減圧した。
以上の準備を行い、各例に示す条件で光ファイバの製造を行った。また線径変動は線径測定装置で測定された線径の平均値からのずれで表した。具体的には光ファイバを製造中の10分間の記録を統計処理し、平均値と標準偏差を求めた。この標準偏差の3倍をずれとして、例えば標準偏差の3倍が5μmであった場合に±5μmのように表した。また線径変動が接続損失に与える影響を評価するために、以下の接続損失試験を行った。
850nmのLED光源と、オプティカルパワーメータ(アンリツ社製、MS9020C)を用いた。試料としては、同一の条件下で製造された光ファイバの330mを用いた。始めに光ファイバ全体の伝送損失を測定した。次にオプティカルパワーメータから1mの部分で切断した。切断端面はそれぞれ研磨を行い、セラミック製フェルールを用いて切断端面どうしを光学的に接続した。この接続による損失を測定した。その後オプティカルパワーメータから1mの部分はフェルールも含めてそのままにした。反対側の329mの部分については、先程の切断端面から20cmの位置で切断して、その切断端面を研磨した。新たに研磨した端部に、切除された20cmの部分からはずしたセラミック製フェルールを装着した。その後同様にその接続損失を測定した。これを合計で10回行い、10回の平均値を求めた。
(実施例1)
光ファイバの製造を次の条件で行った。母材を母材送り装置により、1.8mm/分の速度で第1の加熱炉を経て第2の加熱炉に挿入した。第1の加熱炉の設定温度は135℃、第2の加熱炉の設定温度は245℃とした。母材が第2の加熱炉に挿入され、紡糸され始めた後に、引き取りローラにより12.5m/分の速度で引き取りを行った。第1の加熱炉の出口における母材中心部の温度は132℃、母材外周部の温度は135℃であった。また母材の空隙は大気圧に対して1.4kPa減圧とした。上記の条件において、内層が屈折率分布を有し、平均線径492μmの光ファイバが製造された。
製造された光ファイバの線径変動は±5μmであった。接続損失の平均値は、0.32dBであった。また製造された光ファイバの20mを用い、JIS C−6862に規定されたニアフィールドパターン法(ビデオアナライザ法)に準拠して光ファイバの各種構造パラメータを測定した。測定装置は浜松ホトニクス社製のLEPAS−11を用いた。その結果、コア径は120μm、コア非円率は1.5%、開口数(NA)は0.185であった。また製造された光ファイバの330mを用い、JIS C−6823に規定されたカットバック法に準拠して、伝送損失を測定したところ、波長850nmにおいて25dB/kmであった。
(実施例2)
第1の加熱炉として以下の輻射炉を用いた以外は、実施例1と同様に光ファイバを製造した。用いた輻射炉は、放射される光線の中心波長が1.0μmであるハロゲンランプを3基取り付けた環状炉(ウシオライティング社製、商品名:UL−HU−P/ML195S/AGX3)である。第1の加熱炉の出口における母材中心部の温度は134℃、母材外周部の温度は135℃であった。製造された光ファイバの線径変動は±3μmであった。また構造パラメータとしては、コア径は122μm、コア非円率は1.3%、NAは0.183であった。また伝送損失は波長850nmにおいて20dB/kmであった。
(実施例3)
前記小円管の上端を炉内部から20mm離した状態(炉体の下面に相当する位置より20mm離した状態である。)で固定した。その結果線径変動は±25μmであった。接続損失の平均値は、0.74dBであった。
(実施例4)
前記小円管の代わりに内径が7mm、外径が10mm、長さが200mmのガラス管を用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±2μmであった。接続損失の平均値は、0.19dBであった。
(実施例5)
大円管をはずした以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±10μmであった。接続損失の平均値は、0.53dBであった。
(実施例6)
シール部の小開口部を全て耐熱粘着テープでふさいだ以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±10μmであった。接続損失の平均値は、0.55dBであった。
(実施例7)
前記小円管の代わりに内径が7mm、外径が10mm、長さが750mmのガラス管を用いて、母材の送り装置を水平方向に微動させる機構を動作させた以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±1μmであった。接続損失の平均値は、0.11dBであった。
(比較例1)
外層としてポリカーボネート樹脂(GE Japan社製、商品名:レキサンSP1310)を用いた以外は、実施例1と同様に光ファイバを製造した。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.586、ガラス転移点は128℃、SP値は9.59である。第1の加熱炉の出口における母材中心部の温度は131℃、母材外周部の温度は135℃であった。製造された光ファイバの線径変動は±30μmであった。また構造パラメータとしては、コア径は118μm、コア非円率は3.5%、NAは0.188であった。また伝送損失は波長850nmにおいて176dB/kmであった。
産業上の利用の可能性
本発明のプラスチック製の光ファイバの製造方法によれば、伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造できる。これは内層と外層との接着性が向上したためと考えられる。また特に本発明に係る加熱炉を用いると、プラスチック製光ファイバの製造時の線径変動が抑制でき、線径変動に由来する光ファイバどうしの接続損失が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
(図1)第2の加熱炉の一例の断面図である。
(図2)シール部の一例の上面図である。
(図3)本発明の製造方法を示す概略の断面図である。
(符号の説明)
10:第1の加熱炉、
20:第2の加熱炉、21:炉体、22:シール部、22a:小開口部、
23a:小円管、23b:大円管、23c:フランジ部、
31:母材、31a:内層、32b:外層、
41:母材取り付け治具、41a:排気孔、42:引き取りローラ。
本発明はプラスチック製の光ファイバの製造方法に関し、特に多層構造を有するプラスチック製の光ファイバの製造方法において、層間の接着性に優れ、伝送損失が低く、線径変動が少ない光ファイバの製造方法に関する。
背景技術
近年通信用の光ファイバとして、プラスチック製の光ファイバの開発が進んできた。特に屈折率分布型の光ファイバが実用化されつつある。プラスチック製の屈折率分布型光ファイバは、大口径を有し接続が容易である点、柔軟性に優れる点、高帯域で高速通信に好適である点等で、特に加入者系と呼ばれる比較的短距離の通信媒体として好適であり、その市場が拡大しつつある。これらの中でも含フッ素重合体を用いたプラスチック製の屈折率分布型光ファイバは、広い波長領域にわたって伝送損失が低くなることが実証されている。具体的には特開平8−5848号公報に開示されている光ファイバは、500〜1300nmという広い波長領域にわたって、100dB/km以下という低い伝送損失性能を有しており、既に実用化されている種々の光源が使用できる点で優れている。
上述のプラスチック製光ファイバの製造方法としては、種々の方法が開発され、改良されてきている。そのうち、光ファイバ母材を紡糸し光ファイバを製造する、いわゆるプリフォーム法においては、光ファイバの高い性能を引き出すために多くの改良が加えられてきた。特に母材の材質を選定することにより、また母材を加熱、紡糸するための加熱炉の構造を工夫することにより、より高性能の光ファイバを安定に製造することが可能となってきている。
母材の材質を選定する例としては、特開平11−109144号公報には、光ファイバの引っ張り強度や耐磨耗性を改良するために、含フッ素重合体を用いた内層と、アクリル樹脂等の高い引っ張り弾性率を有する樹脂からなる外層とを有する光ファイバ母材を紡糸し、光ファイバを製造する技術が開示されている。また特開2000−284131号公報には、多層構造を有する光ファイバの製造方法として、特定の溶融粘度範囲の樹脂を用い、かつ、隣り合う層の間の空隙を減圧にしながら紡糸する方法が開示されている。
また加熱炉の構造の工夫は、具体的には線径変動の抑制という効果に着目して各種の方法が開示されている。ここで、線径とは光ファイバの外直径である。また線径変動とは光ファイバの長手方向にわたる線径の変動であり、平均線径に対する変動範囲で表す。具体的には、例えば線径が500μmの光ファイバを製造する際には、その線径の変動を直径の±1%、すなわち±5μmに抑制する必要がある。これは光ファイバどうしを接続する際に、その光軸どうしを合わせる必要があるためである。線径変動が大きい場合には光ファイバどうしの接続損失が大きくなり、大口径で接続が簡易であるという長所を相殺することになる。
この線径変動の抑制方法としては、特開平8−94860号公報に不活性ガスをプリフォーム表面に流して表面温度を制御する方法が、特開平11−337745号公報には、加熱炉下部に低温維持手段を設ける方法が、それぞれ開示されているが、いずれも線径変動の抑制効果は不充分であった。
上記従来の方法に関して、材料の選定については、含フッ素重合体を基材として用い、伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造することは困難であった。その原因を追求した結果、内層と外層との樹脂どうしの接着性が良好でないことが、伝送損失の安定した光ファイバの製造に対して、大きな影響を与えていることが明らかとなった。すなわち、含フッ素重合体は周知のように汎用の炭化水素系樹脂と混和しにくいため、内層に含フッ素重合体を用いた場合には、外層の炭化水素系樹脂との接着性が必ずしも充分ではなかった。本発明における光ファイバ母材のように多層構造を有する光ファイバ母材を紡糸する場合には、母材の紡糸過程においては、外層の樹脂が内層の樹脂を引っ張りながら紡糸が進行する。したがって外層と内層との樹脂どうしの接着性が不充分な場合には、その界面で微小なすべりが発生すると考えられ、この影響で光ファイバの製造が不安定になりやすくなると考えられる。
発明の開示
本発明では上述の問題を解決し、内層と外層との樹脂どうしの接着性を向上させるために、用いる樹脂のそれぞれのSP値、および、光ファイバ母材を紡糸する際の加熱条件に着目した。ここでSP値とは、Smallによるモル引力定数ΔF(Molar Attraction Constant)、分子量M、および、密度dより、下記式(1)により求められる値である。
このSP値の近い材料どうしは比較的親和性が高く、したがって接着性の向上も実現できる。また本発明では、SP値による材料の選定とともに、光ファイバ母材を紡糸する際の加熱条件、特に光ファイバ母材の予熱が重要な要素であることを見出した。これらの改良により、伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造できるようになった。
さらに加熱炉の構造については鋭意検討を重ねた結果、母材表面の気流を整流し層流として制御することで、効果的に線径変動を抑制できることが明らかとなった。
本発明は、光ファイバ母材を紡糸して、内層と少なくとも1層の外層とを有する多層構造を有するプラスチック製の光ファイバを製造するプラスチック製光ファイバの製造方法であって、前記内層が含フッ素重合体a1を基材とする含フッ素重合体組成物a3からなり、前記内層が屈折率分布を有し、かつ、前記外層がフッ素原子を含まない樹脂からなる、プラスチック製光ファイバの製造方法において、(A):光ファイバの内層となり、含フッ素重合体a1を基材とし、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する(prepare)工程、(B):光ファイバの外層となり、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内である樹脂を選定し、選定された樹脂を用いて工程(A)における円柱状成形体の外側に隣り合うように配置しうる円筒成形体を準備する工程、(C):工程(A)の円柱状成形体を最内部に、工程(B)の1以上の円筒成形体をその外側に空隙を設けて同軸に配置して、光ファイバ母材を準備する工程、(D):それぞれ独立に温度調節可能な第1の加熱炉と第2の加熱炉とを準備する工程、(E):母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にする工程、(F):光ファイバ母材を含フッ素重合体a1のガラス転移点をTa1としたとき、光ファイバ母材を第1の加熱炉を用いて、Ta1〜(Ta1+40)℃に加熱する工程、および、(G):第1の加熱炉で加熱された母材を第2の加熱炉で紡糸する工程、の各工程を含むことを特徴とするプラスチック製光ファイバの製造方法を提供する。この製造方法によれば、伝送損失が安定して低く抑えられたプラスチック製の光ファイバが製造できる。
また上記の製造方法において、前記の第1の加熱炉または第2の加熱炉として、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉を用いることが好ましい。この態様によれば、大口径の母材を用いた場合でも安定した製造が可能となる。
また前記第2の加熱炉が、炉体が円筒状であり、炉開口部の一方にシール部が設けられ、炉開口部の他方に円管が少なくとも2以上設けられ、前記シール部は弾性を有する膜状であり、前記シール部は炉体の中心軸を中心とする円形開口部と、該円形開口部の周辺に設けられた複数の小開口部とを有し、前記2以上の円管は炉体の中心軸と同一の中心軸を有し、円管どうしは空隙を有するようにそれぞれ配置され、かつ、前記2以上の円管のうち最小の内径を有する円管の一方の開口部は炉体の内部に配置されている、加熱炉を用いることが好ましい。特に前記シール部が上部となるように炉体を設置し、前記シール部の円形開口部の直径より太い母材を用い、加熱された炉中に前記母材を前記円形開口部より挿入し、炉中で母材を加熱し、前記2以上の円管のうち最小の内径を有する円管を通して光ファイバを取り出すことが好ましい。
上記態様によれば、プラスチック製光ファイバの製造時の線径変動が抑制でき、線径変動に由来する光ファイバどうしの接続損失が抑制できる。特に炉内部に熱がこもらない最小限度に炉内部の気流を抑制し、かつ、母材表面の気流の乱れを抑制することにより線径変動が抑制できることが明らかとなった。
発明を実施するための形態
以下に本発明の詳細を説明する。本発明において、「光ファイバ」とは「プラスチック製の光ファイバ」を意味する。ここで低伝送損失の光ファイバであればあるほど、長距離の信号伝送が可能となるが、通常は複数の接続を経て長距離伝送が行われる。そのために接続損失を抑制する必要が大きい。一方で線径変動は接続損失に重大な影響を与える。したがって、本発明で開示される線径変動が極めて抑制された光ファイバの製造方法は、低伝送損失である透明含フッ素樹脂製の光ファイバの製造に好適であり、その中でも屈折率分布型の透明含フッ素樹脂製光ファイバの製造に特に好適である。
また本発明においては、光ファイバ母材(以下、単に母材ともいう。)を加熱、紡糸してプラスチック製光ファイバを製造する。本発明に係る光ファイバは樹脂製であり、内層と少なくとも1層の外層とを有する多層構造を有する。すなわち母材も同様の多層構造を有する。ここで内層は実質的に光線が通過する領域となり、外層は主に補強、保護の役割をはたす。
また重合体がC−H結合を有しないとは、重合体のフィルム(測定する厚さは0.2mm程度が好ましい。)を作成し赤外吸収スペクトルを測定した場合に、C−H結合に基づく吸収が実質上観測されないことをいう。また非結晶性とは、重合体または重合体組成物のX線回折(XRD)を測定した際に、横軸に2θ(単位:度)、縦軸に強度(cps)をとった回折図において、半値幅が2度以下の明瞭なピークが実質上見られないことをいう。また屈折率とはナトリウムD線に対する屈折率をいう。またコアとは、光パワーの大部分が閉じ込められて伝送される光ファイバの部分をいい、クラッドとは、コアを取り囲んでいるコアより屈折率の低い物質で構成される部分をいう。またコア径とは、コア中心部の光量の5%以上の光量を示す領域の直径について考える。
本発明において、母材の内層(光ファイバの内層と同じである。)は含フッ素重合体a1を基材とする含フッ素重合体組成物a3からなる。ここで含フッ素重合体a3は、含フッ素重合体a1と屈折率調整剤a2との組成物である。ただし、内層において屈折率調整剤a2は濃度に特定の分布を有する。すなわちこの濃度分布は、後述する屈折率分布を与える。
本発明において含フッ素重合体a1とは、C−H結合を有していない含フッ素重合体である。含フッ素重合体a1はC−H結合を有していないために、近赤外領域の波長の光を吸収することがない。含フッ素重合体a1は非結晶性であることが、光ファイバの散乱損失が低減できる点で好ましい。この含フッ素重合体a1としては、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するとは、脂肪族環を構成する炭素原子の1以上が主鎖を構成する炭素連鎖中の炭素原子であり、かつ脂肪族環を構成する炭素原子の少なくとも一部にフッ素原子またはフッ素含有基が結合している構造を有することを意味する。含フッ素脂肪族環構造としては、含フッ素脂肪族エーテル環構造がさらに好ましい。
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素環構造を有する単量体(環を構成する炭素原子と環を構成しない炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または環を構成する炭素原子2個間に重合性二重結合を有する単量体)を重合して得られる重合体や、2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体を環化重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が好適である。
含フッ素脂肪族環構造を有する単量体を重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(2−メチル−1,4−ジオキシン)などの含フッ素脂肪族環構造を有する単量体を単独重合することにより得られる。またこの単量体とC−H結合を含まないラジカル重合性単量体とを共重合させることにより得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体も用いられるが光の透過性が低下する場合があるので単独重合体が好ましい。C−H結合を含まないラジカル重合性単量体としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
また、2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体を環化重合して得られる、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特開昭63−238111号公報、特開昭63−238115号公報等に開示されている。すなわち、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)やペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などの単量体を環化重合することにより、またはこのような単量体とテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)などのラジカル重合性単量体とを共重合させることにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。なかでも、光の透過性が低下する場合があるので単独重合体が好ましい。
また、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)などの含フッ素脂肪族環構造を有する単量体とペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などの2個以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体とを共重合させることによっても主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られ、含フッ素重合体a1として用いられる。ただし、この場合も組み合わせによっては光の透過性が低下する場合があるので単独重合体が好ましい。
本発明において屈折率調整剤a2としては、含フッ素重合体a1との相溶性に優れ、かつ、C−H結合を実質的に有していない化合物が好ましい。また含フッ素重合体a1との比較において、屈折率調整剤a2の屈折率が高いことが好ましい。すなわち、屈折率調整剤a2は、含フッ素重合体a1にとって高屈折率化剤であることが好ましい。屈折率調整剤a2としては、屈折率が高いことから、塩素原子を有する化合物および/または芳香族化合物が好ましい。塩素原子を有する化合物としては、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー等が挙げられる。また芳香族化合物としては、ペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)、ペルフルオロ(2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン)等が挙げられる。
本発明において、母材の外層(光ファイバの外層と同じである。)は1層以上である。この外層はフッ素原子を含まない樹脂からなる。ただし2層以上の外層を設けた場合に、それらの樹脂は同一でも異なっていてもよい。また外層に用いる樹脂であって内層と隣り合う外層に用いる樹脂は、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内、好ましくは3以内の樹脂である。本発明において、上記のSP値の差が4以内であることは、内層の含フッ素重合体a1と、外層のフッ素原子を含まない樹脂との親和性が高く、接着性が良好であることを意味する。フッ素原子を含まない樹脂を採用することにより、高価なフッ素樹脂の使用量を抑制できるだけでなく、強度等に優れた汎用の炭化水素系樹脂が使用でき、選択の自由度が高くなる。ただし炭化水素系樹脂とは、炭素原子と水素原子のみからなる単量体を重合して得られる樹脂に限られず、酸素原子および/または窒素原子を含む単量体を重合して得られる樹脂であってもよい。なお2層以上の外層が設けられた場合に、それらの樹脂どうしの関係では、たがいに隣り合う外層どうしの樹脂のSP値の差は4以内が好ましく、特には3以内が好ましい。
また本発明において、外層の樹脂の粘弾性特性が内層の樹脂(含フッ素重合体a1)に近いことが好ましい。この条件を満たす樹脂は、母材が紡糸される際にその成形に大きな影響を与える温度−粘度特性が、内層の樹脂に近くなるために、母材の紡糸が安定に行える。具体的には、外層の樹脂の貯蔵弾性率(M’)が含フッ素重合体a1の貯蔵弾性率の好ましくは0.7〜1.3倍、特に好ましくは0.8〜1.2倍であり、かつ、外層の樹脂の損失弾性率(M”)が含フッ素重合体a1の損失弾性率の好ましくは0.7〜1.3倍、特に好ましくは0.8〜1.2倍である。なお、貯蔵弾性率(M’)および損失弾性率(M”)は、JIS K−7244−1で定義される値であり、その単位はいずれもPaである。
本発明において、光ファイバは屈折率分布型である。すなわち光ファイバの内層は屈折率分布を有する。この屈折率分布は放物線様であることが好ましい。すなわち内層の中心部において屈折率が高く、周辺部に向かうに従って屈折率が低くなる分布が好ましい。この光ファイバの内層の屈折率分布は、対応する母材の内層が所定の屈折率分布を有することにより与えられる。すなわち、母材の内層は、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する。
本発明において工程(A)は、光ファイバの内層となり、含フッ素重合体a1を基材とし、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する工程である。すなわち工程(A)は、上述した含フッ素重合体a1を用いて、特定の屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する工程である。この円柱状成形体はその中心部が軸方向に沿って中空になっていてもよい。この円柱状成形体の製造方法としては、次の例が挙げられる。まず含フッ素重合体a1を重合し、これを公知の方法により精製する。精製された含フッ素重合体a1の樹脂を金属製の管に充填する。この管を、含フッ素重合体a1のガラス転移点Ta1より充分高い温度(例えばTa1より100℃高い温度)にて、回転させて中空部を有する成形体を得る。この成形体を冷却し、中空部に含フッ素樹脂a1より屈折率が高い屈折率調整剤a2を所定量投入する。これを先程と同様に回転させながら、屈折率調整剤a2が含フッ素重合体a1に拡散する温度に昇温し、屈折率調整剤a2を含フッ素重合体a1に含浸、拡散させる。屈折率調整剤a2の投入量および拡散させる温度と時間を適宜選択することにより、所望の屈折率分布が得られる。以上の方法で、特定の屈折率分布を有し、円柱型の中空部を有する円柱状成形体が製造される。
また本発明において工程(B)は、光ファイバの外層となり、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内である樹脂を選定し、選定された樹脂を用いて工程(A)における円柱状成形体の外側に隣り合うように配置しうる円筒成形体を準備する工程である。前述したように、外層に用いられる樹脂は、フッ素原子を含まない樹脂であり、かつ、含フッ素重合体a1との比較においてSP値の差が4以内である樹脂である。この条件を満たす樹脂の例としては、含フッ素重合体a1としてペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体(SP値:5.37)を用いた場合に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(SP値:9.02)等が挙げられる。
工程(B)においては、上述の樹脂を用いて所定の円筒成形体を準備する。この円筒成形体の製造方法としては、以下の方法が例示できる。1つの方法は、上述の樹脂を適切な押し出し機を用いて円筒に押し出し成形することである。また別の方法としては、前記の工程(A)で含フッ素重合体a1の成形で述べたように、樹脂を金属製の管に充填し、この管を樹脂のガラス転移点より充分高い温度にて、回転させて円筒の成形体を得る方法である。
また上記の円筒成形体の大きさは次のように決められる。まず外層が1層のみの場合には、上記工程(A)で準備される円柱状成形体の外直径より大きい内直径を有するように、円筒成形体の内直径が決められる。またこの円筒成形体の厚さ、すなわち、円筒成形体の外直径−内直径は適宜決められる。通常は光ファイバに求められる引っ張り強度等を参考にして決められる。また円筒成形体の長さは光ファイバを製造する際に取り扱いが容易となることから、前記の円柱状成形体の長さより長く決められる。次に外層が2層以上の場合には、上記と同様にして外層の第1層の外側に第2層が配置できる大きさに内直径が決められる。本発明においては、隣り合う2層(前記の円柱状成形体と、外層のうちの最内層となる層との関係も含む)において、内部に配置される成形体の外直径と外部に配置される成形体の内直径との差は1.5mm以内が好ましく、0.1〜1.2mmがより好ましい。上記の差が1.5mm以内であれば、光ファイバ製造時に樹脂が挫屈することなく、結果として製造される光ファイバの外径寸法が安定化する点で好ましい。
また本発明において工程(C)は、工程(A)の円柱状成形体を最内部に、工程(B)の1以上の円筒成形体をその外側に空隙を設けて同軸に配置して、光ファイバ母材を準備する工程である。この工程では、工程(A)で準備された円柱状成形体と、工程(B)で準備された円筒成形体とを、組み合わせて配置する。またこのとき前記の円柱状成形体と前記の円筒成形体とは空隙を設けて同軸に配置される。ただし外層の円筒成形体が2層以上設けられる場合には、これらの円筒成形体も同様に空隙を設けて同軸に配置される。この組み合わされた1組を、光ファイバ母材として扱う。
この組み合わせの工程は清浄度の高い場所で行われることが好ましい。例えば、クリーンルーム内で取り扱うことが好ましい。これは母材に異物が付着しないようにするためである。母材に付着した異物は、製造される光ファイバの伝送損失に大きな影響を与える。特に最内部に配置される円柱状成形体は、いわゆるフッ素樹脂一般と同様に静電気により帯電しやすく、異物が付着しやすい。したがってこの工程(B)はクリーンルーム内で行い、かつ、制電気流中で静電気を除去しながら行うことが特に好ましい。また上記クリーンルームとしては、JIS B−9920で定められたクラス6以下の清浄度を有していることが好ましく、クラス5以下の清浄度を有していることがさらに好ましい。
また本発明において工程(D)は、それぞれ独立に温度調節可能な第1の加熱炉と第2の加熱炉とを準備する工程である。本発明においては、第1の加熱炉において母材を予熱し、母材が一定温度以上に加熱された後に、母材を第2の加熱炉に導き光ファイバを製造する。第1の加熱炉、第2の加熱炉とも、母材を均一に加熱するために環状炉であることが好ましい。第1の加熱炉は第2の加熱炉の鉛直上方に配置される。また第1の加熱炉と第2の加熱炉とは共通の鉛直に伸びる中心軸を有する。この共通の中心軸に沿って、母材を上方から下方へ移動させ、まず第1の加熱炉に挿入し、続いて第2の加熱炉に挿入する。このとき母材の中心軸も、前記の共通の中心軸と同一に配置される。
また第1の加熱炉と第2の加熱炉とは、抵抗線等の発熱体が組み込まれた加熱炉であっても、ハロゲンランプ等の加熱炉であってもよい。この2種類の加熱炉は放射される光線の中心波長が異なり、抵抗線等の発熱体が組み込まれた加熱炉ではその波長は3〜9μmであり、ハロゲンランプ等の加熱炉では0.5〜1.5μmである。しかし工程(F)で述べる理由により、第1の加熱炉は放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉が好ましい。また第2の加熱炉についても、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉が好ましい。
また第1の加熱炉の内径は、母材の外直径(外層のうち最外部に配置される円筒成形体の外直径である。)に対して1.5〜2倍が好ましい。ただし加熱炉の内径とは、加熱炉の長手方向(紡糸の際には鉛直方向となる方向である。)に垂直な断面をとった場合に、その内部空間に内接する円の直径を意味する。この範囲を超えて加熱炉の内径が大きいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が広いと光ファイバの製造が安定しにくく好ましくない。またこの範囲を超えて加熱炉の内径が小さいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が狭いと、母材と加熱炉が接触する等の問題が発生しやすく、やはり好ましくない。また第1の加熱炉の長さ(鉛直方向)は、加熱炉の内径に対して1〜7倍が好ましく、2〜5倍がより好ましい。この長さが上記範囲より短いと加熱が不充分となりやすく、上記範囲より長いと母材送り装置が大型になりすぎる傾向にあり好ましくない。
また第2の加熱炉の内径は、母材の外直径に対して1.02〜1.67倍が好ましく、1.05〜1.54倍がより好ましく、1.18〜1.43倍が特に好ましい。すなわち母材の外直径は、第2の加熱炉の内径に対して、60〜98%が好ましく、65〜95%がより好ましく、70〜85%が特に好ましい。この範囲を超えて加熱炉の内径が大きいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が広いと光ファイバの製造、特に線径変動が安定しにくく好ましくない。またこの範囲を超えて加熱炉の内径が小さいと、すなわち母材と加熱炉との空隙が狭いと、母材と加熱炉が接触する等の問題が発生しやすく、やはり好ましくない。また第2の加熱炉の長さ(鉛直方向)は、加熱炉の内径に対して2〜6倍が好ましく、3〜5倍がより好ましい。この長さが上記範囲より短いと加熱が不充分となりやすく、上記範囲より長いと製造される光ファイバの線径変動が大きくなりやすく好ましくない。ここで光ファイバの線径とは光ファイバの外直径である。また線径変動とは光ファイバの長手方向にわたる線径の変動であり、平均線径に対する変動範囲で表す。
ここで第1の加熱炉と第2の加熱炉とは、独立に温度調節ができることが好ましい。このためには、独立の温度調節手段を有する以外に、熱的に遮断されていることが望ましい。熱的に遮断されているとは、第1の加熱炉と第2の加熱炉との間に空隙を設け、放射と熱伝導による炉体どうしの熱的な干渉が抑制されていること、および、第2の加熱炉で発生する上昇気流が第1の加熱炉に与える影響が抑制されていることである。第1の加熱炉と第2の加熱炉との距離は、母材の外直径に対して0.5〜2倍が好ましい。この範囲より短いと第2の加熱炉が第1の加熱炉に熱的な干渉をおよぼしやすく、またこの範囲より長いと第1の加熱炉で加熱された母材が過度に冷却されることになり、いずれも好ましくない。また第2の加熱炉で発生する上昇気流が第1の加熱炉に与える影響を抑制するために、第2の加熱炉の上部には後述するシール部が設けられることが好ましい。
以下に本発明において好適な第2の加熱炉について、図1を用いて説明する。図1は加熱炉の一例の断面図である。加熱炉20は炉体21とシール部22と2本の円管23aおよび23bを有している。炉体21は円筒状であり、炉開口部を2箇所有している。一方の炉開口部にはシール部22が設けられ、他方の炉開口部には2本の円管23aおよび23bが設けられている。シール部22は弾性を有する膜状であり、円形開口部22aと小開口部22bとを有している。円形開口部22aは炉体21の中心軸を中心として、シール部22に設けられている。シール部22の円形開口部22a周辺には複数の小開口部22bが配置されている。2本の円管23aおよび23bは、炉体21の中心軸と同一の中心軸をそれぞれ有するように配置されている。円管23aと23bとは空隙を有するようにそれぞれ配置されている。円管23aは円管23bよりも小さい内径を有している。この円管23aの一方の開口部は炉体21の内部に配置されている。
炉体21は円筒状であり、炉体内部には図示しないが抵抗線等の発熱体が組み込まれている。炉内の円柱状の空間に光ファイバ用の母材を挿入し、紡糸して光ファイバを製造する。発熱体が組み込まれた部分、すなわち有効発熱面は炉体の長さの80%以上設けられることが好ましい。これは炉内面の多くを発熱面とし、全体としては炉体の長さを短くすることが好ましいことを意味する。
前記シール部22は母材を紡糸する際に、炉開口部のうち上部になる方に設けられる。シール部22は、炉内の熱が対流により過剰に放出されることを抑制するために設けられる。シール部22の材質は弾性を有し、炉の温度環境に耐えられる材料であれば制限はないが、好ましい具体的な材料としてはシリコーンゴムが挙げられる。
シール部22の形状を図2を用いて説明する。図2はシール部の上面図である。シール部22は円形開口部22aと小開口部22bとを有している。この円形開口部22aは母材が挿入される部分となる。円形開口部22aの大きさは、紡糸される母材の直径よりも小さい直径である。すなわち円形開口部22aの直径は母材の直径に対して97%以上100%未満が好ましく、98.5以上99.5%以下がより好ましい。円形開口部22aの直径が母材の直径より大きい、すなわち母材とシール部との間に間隙があると、対流が発生することにより母材表面の気流が乱れ、線径変動が抑制しにくくなる。また上記範囲より小さいとシール部が母材の加熱炉への挿入の際の抵抗となり好ましくない。
また円形開口部22a周辺には20個の小開口部22bが配置されている。この小開口部は炉内部に熱がこもらないために設けられる。この小開口部が設けられない場合には、炉内部に熱がこもり炉内温度の過剰な上昇の原因となり、安定な線径での製造が困難となる。この小開口部22bは円形開口部22aとは隣接せずに設けられる、すなわち円形開口部と小開口部との2種類の開口部が連続して設けられないことが好ましい。これは母材表面の気流の乱れを抑制するためである。また小開口部の個々の大きさと形状とは炉開口部の大きさと母材の大きさとから適宜決められるが、炉開口部の面積と母材の断面積との差をシール総面積とした場合に、小開口部の合計した総面積はシール総面積の5〜15%が好ましく、8〜13%がより好ましい。小開口部の合計した総面積がシール総面積の5%未満であると、炉内部に熱がこもり好ましくない。また同じく15%を超えると炉内の熱が対流により過剰に放出されやすくなり、結果として炉内部の気流が乱れやすくなり、線径変動の抑制の点から好ましくない。また小開口部は円周に沿うように均等に分散して配置されることが好ましい。
図1において、炉体21のシール部22が設けられていない炉開口部には2本の円管23aおよび23bが設けられている。すなわちこれらの円管は母材を紡糸する際に、炉開口部のうち下部になる方に設けられる。ここで円管の材料は、炉の温度環境に耐えられる材料であれば制限はなく、具体的な材料としてはシリカ、アルミナ等のセラミックス;アルミニウム、ステンレス鋼等の金属;またはガラスが挙げられる。円管のうち最小の内径を有する円管の材料としては、目視による位置合わせが容易である点で透明であるガラスが好ましい。
この円管は次の目的で設けられる。最小の内径を有する円管は母材近傍の気流を抑制するために設けられる。また他の円管は炉内の気流を抑制し、整流し、かつ、外乱の影響を排除するために設けられる。ここで母材の紡糸を行う際には、母材のひずみ速度の大きな領域において、その母材表面の気流の乱れを抑制することが、線径変動の抑制に大きな影響を与えることが明らかとなった。ただしひずみ速度とは、単位時間あたりのひずみの増加量であり、母材の変形の速度を意味する。具体的にひずみ速度の大きな領域とは、母材が紡糸され加熱炉の下部開口部を通過する前後の領域である。この領域では母材の直径は最終的な光ファイバの直径に近くなり、線速度が高速になる。ここで気流が乱れると、母材近傍の気流の乱れに起因する母材表面の温度の変化が大きくなり、線径変動に大きな影響を与える。
前記2本以上の円管と炉体とは、中心軸を共有するように設けられる。これは母材を紡糸する際に、母材が均一に加熱されるように、母材が炉体の中心軸に配置されることによる。円管どうしは空隙(間隙)を有するようにそれぞれ配置される。これはこの空隙は、炉内部に熱がこもらないように気流を維持するために必要である。また円管は2本以上設けられる。この本数の上限は前記の円管どうしの空隙が確保される限り制限はない。
前記の円管のうち最小の内径を有する円管の内径(直径)は、小さいことが好ましい。具体的には、上記内径は光ファイバの最終線径(光ファイバが加熱炉を出て、常温に冷却されたときの線径を意味する。)の10〜30倍が好ましい。例えば最終線径が0.5mmの光ファイバを製造する場合には、上記内径は5〜15mmが好ましい。
上記の最小の内径を有する円管の一方の開口部は炉体の内部に配置される。これは前述したひずみ速度の大きな領域が炉の下部開口部の前後にわたり、炉内部にもおよぶためである。具体的に上記最小の内径を有する円管の開口部が炉内に挿入される長さは、その円管の内径の1〜5倍が好ましい。ただし母材に接することがないように設けられる。また最小の内径を有する円管の長さはその内径の15〜100倍が好ましい。この長さの範囲であれば、線径変動を抑制する効果が充分に得られる。またこれより長くても大きな不都合はないが、操作性が低減しやすくなりやすい。
また前記の円管のうち最大の内径を有する円管の内径は、炉の下部開口部の直径より小さいことが好ましい。具体的にこの円管の内径は、炉の下部開口部の直径の50〜95%が好ましく、60〜80%がより好ましい。またこの円管と炉体との間には空隙を設けないこと、すなわちこの円管の外部から炉内へと気流が進入しないことが好ましい。またこの円管の長さはその内径の3〜8倍が好ましい。
また円管が3本以上設けられた場合に、その内径と長さとは、最大の円管に準じて適宜決められる。すなわち内径については1つ外側に設けられた円管に対して好ましくは10〜95%の範囲、より好ましくは15〜70%の範囲から決められる。またその長さは好ましくは当該円管の内径の3〜8倍の範囲から決められる。
また本発明において工程(E)は、母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にする工程である。ここで母材の有する空隙とは、工程(A)において準備された円柱状成形体とこのすぐ外側に配置された円筒成形体との空隙、および、外層が2以上設けられた場合には隣り合う外層どうしの間の空隙をまとめて(総称して)表わす。また、該空隙は、工程(A)において準備された円柱状成形体が中空部を有する場合にはこの中空部も含める。母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にすることで、樹脂どうしの、特に含フッ素重合体a1とこれに隣り合う樹脂との接着性が向上する。また円柱状成形体の有する中空部が気泡を残さずに融着するためにも、上記の空隙の減圧は必要である。この減圧度が1kPa未満であると、空隙の融着が不充分となる箇所が発生する可能性が高くなり、これにより断面に気泡の残る光ファイバが製造される可能性が高くなり好ましくない。またこの減圧度が1.4kPaを超えて大きいと、大気圧により加熱された母材が挫屈しやすくなり好ましくない。母材が挫屈した場合には製造された光ファイバの真円度が悪化し、扁平になりやすい。
また母材の有する空隙を減圧するにあたり、母材の先端部(先に加熱炉に挿入される端部)にはシール部が設けられ、母材の上端部(先端部とは逆の端部)には上記の空隙を減圧するための治具が設けられる。この治具の例としては、母材を加熱炉に挿入するための母材保持具に、真空ポンプ等の減圧手段に接続される開口部が設けられたものが挙げられる。ただしこの母材保持具と母材との間も気密状態に保たれる。
また本発明において工程(F)は、光ファイバ母材を含フッ素重合体a1のガラス転移点をTa1としたとき、光ファイバ母材を第1の加熱炉を用いて、Ta1〜(Ta1+40)℃に加熱する工程である。前述のように、本発明において母材を予熱した後に加熱し紡糸することにより、光ファイバは安定に製造される。ここで母材が加熱される温度とは、第1の加熱炉の出口(下端開口部)における母材の中心部の温度である。上記の温度範囲であれば、母材が実質的に溶融変形を起こさない温度まで充分に加熱される。これにより、光ファイバの線径変動が抑制され、また、製造された光ファイバの伝送損失のばらつきが少なくなる。上記の温度範囲を超えて高い温度まで加熱すると母材が溶融変形を開始しやすくなり好ましくない。また上記の温度範囲より低温であると、光ファイバの線径変動が抑制されにくくなり、製造された光ファイバの伝送損失のばらつきも大きくなる傾向にあり、好ましくない。
第1の加熱炉において充分な加熱が行われない場合には、以下に述べる理由により成形が不安定になる。本発明において、母材は熱伝達率が比較的低いとされる樹脂材料が選ばれる。特に内層の含フッ素重合体a1は一般のフッ素樹脂と同様に熱伝達率が非常に低い。また母材は多層構造を有していて空隙を有することから、母材の中心部を所定温度まで加熱するには課題が多い。例えば、室温まで冷却されている中心部を溶融成形可能な温度まで加温しようとした場合に、外側から短時間で加熱しようとすると、外周部を相当高温にする必要がある。しかし、この場合には外周部の樹脂が先に溶融変形してしまい、粘度が母材の内外で大きく異なる状態となる。具体的には、柔らかい外周部と硬い中心部を同時に成形することになり、成形が不安定になる。したがって第1の加熱炉により所定の加熱を行う必要がある。本発明では母材の横断面(母材の長軸と垂直な断面)で温度差が少なく、全体が均温化されていることが、光ファイバの製造が安定化される点で好ましい。具体的には、第1の加熱炉の出口において、母材の前記横断面における、母材の中心部と外周部との温度差は30℃以内が好ましく、10℃以内がより好ましい。
また第1の加熱炉により所定の加熱を行う必要がある他の理由として、第1の加熱炉を設けることにより、第2の加熱炉が母材を加熱する負荷が軽減され、母材の温度がより精密に制御された状態で紡糸できる点も挙げられる。
また第1の加熱炉としては、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉を用いることが好ましい。このような加熱炉を採用することで、母材の中心部まで比較的容易に加熱できる。これは上記波長範囲の光線は樹脂透過性に優れ、母材の中心部まで加熱するのに好適だからである。この態様によれば、大口径の母材を紡糸する場合においても、母材中心部まで安定に加熱され、光ファイバの製造が安定に行える。特に長距離にわたって伝送損失が低い光ファイバの製造が可能となる。
また本発明において工程(G)は、第1の加熱炉で加熱された母材を第2の加熱炉で紡糸する工程である。すなわち、第1の加熱炉で加熱され、所定温度まで予熱された母材を、第2の加熱炉に挿入し、所定の成形温度まで昇温することにより、母材が紡糸され光ファイバが製造される。
製造される光ファイバの直径は、母材の送り速度と、光ファイバの引き取り速度との比により決められる。ここで光ファイバの引き取り速度は引き取りローラの回転速度で調節される。なお、本発明の光ファイバの製造において、引き取りローラの前後の適宜の位置に光ファイバの線径をオンラインで測定する線径測定装置を設け、線径測定装置から得られるデータから線径の変動傾向を予測し、この予測をもとに引き取りローラの回転速度を調節することにより線径変動を抑制することが好ましい。この方法によれば、変動周期が5秒以上の緩やかな線径変動を抑制することができる。これに対して上述した気流の制御による線径変動の抑制は変動周期が5秒未満の線径変動の抑制に効果的である。前記の線径測定装置としては、非接触で線径を測定する線径測定装置が好ましく、具体例としてはレーザ光線を用いた線径測定装置が挙げられる。
また母材を加熱炉に挿入するための母材送り装置と加熱炉とは、水平方向に相互に位置を調整できることが好ましい。これは母材の紡糸が常に加熱炉の水平方向の中心部で行われることが、均一な紡糸のためには有効だからである。例えば仮に母材がわずかに傾いて母材送り装置に取り付けられてしまった場合には、紡糸の初期において母材が加熱炉の中心に存在していたとしても、紡糸の途中で加熱炉の内部で中心からずれていくことが考えられる。このとき母材は偏った加熱を受け、均一な紡糸ができなくなる。このような偏った加熱を防止するために、上記の位置の調整が可能であることが好ましい。ここで位置の調整は母材送り装置を動かしても、加熱炉を動かしても同等の効果が得られる。例えば母材送り装置を動かす場合には、母材送り装置の母材取り付け治具に水平位置の微調整機構を備えることができる。より具体的には、前述の線径測定装置で光ファイバの位置のずれを検出し、この測定をもとに母材取り付け治具をサーボモータを用いて水平方向にわずかに動かすことができる。またこの位置調整機構が設けられていると、第2の加熱炉の下部に設けられた円管としてより細い内径の管が採用でき、線径変動の抑制効果が上げられる。
(実施例)
以下に本発明について実施例および図1〜図3を用いて詳細に説明する。図3は、本発明の製造方法を示す概略の断面図である。母材31は内層31aと外層31bとを有する。母材31は、第1の加熱炉10で所定温度まで加熱され、第2の加熱炉20で溶融され紡糸される。第2の加熱炉は、シール部22と2本の円管を有する。シール部22は小開口部22aを有する。2本の円管は小円管23aと大円管23bであり、大円管23bはフランジ23cを有する。母材31は母材取り付け治具41に取り付けられ、母材取り付け治具41を介して図示しない母材送り装置に取り付けられる。母材取り付け治具41は排気孔41aを有する。母材31が紡糸され、引取りローラ42で引き取られて光ファイバが製造される。
母材は以下の方法で準備した。ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)を環化重合して、透明なフッ素樹脂P1を得た。これは含フッ素重合体a1にあたる。フッ素樹脂P1の屈折率は1.342、ガラス転移点は108℃、SP値は5.37である。またフッ素樹脂P1の230℃、1Hzにおける貯蔵弾性率は2740Pa、同じく損失弾性率は12000Paである。フッ素樹脂P1は公知の方法により精製し異物および残存揮発成分を除去した。精製されたフッ素樹脂P1を、金属製の管に充填した。この管を、240℃に保たれた熱風循環オーブン中で回転させて、内径が6.0mm、外径が19.6mm、長さが500mmを有し、中心部が軸方向に中空の円柱状成形体を得た。この円柱状成形体の中空部に屈折率調整剤としてペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)(以下、TPBという。)の3.5gを注入し、230℃に保たれた熱風循環オーブン中で回転させて、TPBをフッ素樹脂P1に含浸、拡散させた。これにより、内周部の屈折率が1.355、外周部の屈折率が1.342であり、連続的に変化する屈折率分布を有した、中空部を有する円柱状成形体が得られた。
また別途に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(三菱レーヨン社製、商品名:アクリペットTF−8)を用いて円筒成形体を製造した。このPMMA樹脂の屈折率は1.492、ガラス転移点は110℃、SP値は9.02である。またPMMA樹脂の230℃、1Hzにおける貯蔵弾性率は3080Pa、同じく損失弾性率は11800Paである。フッ素樹脂P1の場合と同様に、PMMA樹脂を金属製の管に充填し、240℃に保たれた熱風循環オーブン中で回転させた。これにより内径が20.2mm、外径が40.0mm、長さが600mmの円筒成形体を得た。
上記で得られたPMMA樹脂製の円筒成形体の中空部に、前記のフッ素樹脂P1を基材とした円柱状成形体を挿入し、両者の成形体の間に空隙を設けて同軸に配置して母材とした。なお母材を準備する作業は、JIS B−9920で定められたクラス5のクリーンルーム内で行い、制電気流中で静電気を除去しながら行った。
以下に再度図1〜図3を参照しながら説明する。加熱炉は以下のものを準備した。第1の加熱炉10としては、内径が78mm、長さが190mmの炉体を有する環状炉を準備した。炉体内部には抵抗線と熱電対が埋め込まれていて、電流量を調節することにより発熱量、すなわち炉内温度を調節する。
第2の加熱炉20としては、内径が54mm、長さが230mmの炉体を有する環状炉を準備した。炉体内部には抵抗線と熱電対が埋め込まれていて、第1の加熱炉と同様に炉内温度を調節する。第2の加熱炉20の上部開口部には、直径が70mm、厚さが2mmのシリコーンゴム製のシール部22を設けた。このシール部には直径が39.5mmの円形開口部と、この円形開口部を取り囲むように円周状に32個の小開口部22a(それぞれは直径2mmの円形である。)とを設けた。前記円形開口部には母材が挿入される。第2の加熱炉22の炉体下部には2本の円管(大円管23bと小円管23aとする。)を設けた。この2本の円管23aおよび23bは第2の加熱炉の母材近傍の気流を整流し、製造された光ファイバの線径変動を抑制するために設けた。大円管23bは内径が37mm、外径が38mm、長さが150mmでアルミニウム製である。この大円管23bには一方の開口部にフランジ23cを設けた。このフランジ23cを炉体に固定することにより、大円管23bを炉体の下部に固定した。すなわち、炉体と大円管23bとの間には空隙がないようにした。また大円管23bは炉内には挿入されず、炉体の下部の面に設けた。また小円管23aは内径が10mm、外径が12mm、長さが200mmのガラス管である。小円管23aの一方の開口部を炉内に挿入し、炉体の下部開口端から20mmの位置(炉体の下面に相当する位置を0mmとした。)に固定した。ただし固定位地は変更できるように、すなわち炉体内部へ挿入する長さが変えられるように固定した。ここで第2の加熱炉21において、炉体、2本の円管およびシール部は中心軸を共有するように設けた。
第1の加熱炉10と第2の加熱炉20とは、70mmの距離をおいて設置した。また第2の加熱炉20の下方、炉体の下面から1.1mの位置に引き取りローラ42を設置した。図示しないが、引き取りローラ42の0.2m上方にレーザ光線を用いた線径測定装置(キーエンス社製、LS5000)を設置した。線径の測定回数は毎秒1200回とした。引き取りローラ42の回転速度は、線径測定装置の測定結果を計算機に取り込み、記録した。同時に線径変動の傾向を予測し、この予測をもとに引き取りローラ42の回転速度を自動的に計算機により制御することとした。上述した、第1の加熱炉10、第2の加熱炉21、引き取りローラ42および線径測定装置を架台に取り付け、それぞれ同一の鉛直線上に配置されるように調整した。また同じ鉛直線上の第1の加熱炉上方に母材31を送るように母材送り装置を準備した。母材31は母材送り装置に母材取り付け治具41を介して取り付けた。母材取り付け治具41は排気孔41aを有し、排気孔41aを通して母材31が有する空隙を所定の圧力に減圧した。
以上の準備を行い、各例に示す条件で光ファイバの製造を行った。また線径変動は線径測定装置で測定された線径の平均値からのずれで表した。具体的には光ファイバを製造中の10分間の記録を統計処理し、平均値と標準偏差を求めた。この標準偏差の3倍をずれとして、例えば標準偏差の3倍が5μmであった場合に±5μmのように表した。また線径変動が接続損失に与える影響を評価するために、以下の接続損失試験を行った。
850nmのLED光源と、オプティカルパワーメータ(アンリツ社製、MS9020C)を用いた。試料としては、同一の条件下で製造された光ファイバの330mを用いた。始めに光ファイバ全体の伝送損失を測定した。次にオプティカルパワーメータから1mの部分で切断した。切断端面はそれぞれ研磨を行い、セラミック製フェルールを用いて切断端面どうしを光学的に接続した。この接続による損失を測定した。その後オプティカルパワーメータから1mの部分はフェルールも含めてそのままにした。反対側の329mの部分については、先程の切断端面から20cmの位置で切断して、その切断端面を研磨した。新たに研磨した端部に、切除された20cmの部分からはずしたセラミック製フェルールを装着した。その後同様にその接続損失を測定した。これを合計で10回行い、10回の平均値を求めた。
(実施例1)
光ファイバの製造を次の条件で行った。母材を母材送り装置により、1.8mm/分の速度で第1の加熱炉を経て第2の加熱炉に挿入した。第1の加熱炉の設定温度は135℃、第2の加熱炉の設定温度は245℃とした。母材が第2の加熱炉に挿入され、紡糸され始めた後に、引き取りローラにより12.5m/分の速度で引き取りを行った。第1の加熱炉の出口における母材中心部の温度は132℃、母材外周部の温度は135℃であった。また母材の空隙は大気圧に対して1.4kPa減圧とした。上記の条件において、内層が屈折率分布を有し、平均線径492μmの光ファイバが製造された。
製造された光ファイバの線径変動は±5μmであった。接続損失の平均値は、0.32dBであった。また製造された光ファイバの20mを用い、JIS C−6862に規定されたニアフィールドパターン法(ビデオアナライザ法)に準拠して光ファイバの各種構造パラメータを測定した。測定装置は浜松ホトニクス社製のLEPAS−11を用いた。その結果、コア径は120μm、コア非円率は1.5%、開口数(NA)は0.185であった。また製造された光ファイバの330mを用い、JIS C−6823に規定されたカットバック法に準拠して、伝送損失を測定したところ、波長850nmにおいて25dB/kmであった。
(実施例2)
第1の加熱炉として以下の輻射炉を用いた以外は、実施例1と同様に光ファイバを製造した。用いた輻射炉は、放射される光線の中心波長が1.0μmであるハロゲンランプを3基取り付けた環状炉(ウシオライティング社製、商品名:UL−HU−P/ML195S/AGX3)である。第1の加熱炉の出口における母材中心部の温度は134℃、母材外周部の温度は135℃であった。製造された光ファイバの線径変動は±3μmであった。また構造パラメータとしては、コア径は122μm、コア非円率は1.3%、NAは0.183であった。また伝送損失は波長850nmにおいて20dB/kmであった。
(実施例3)
前記小円管の上端を炉内部から20mm離した状態(炉体の下面に相当する位置より20mm離した状態である。)で固定した。その結果線径変動は±25μmであった。接続損失の平均値は、0.74dBであった。
(実施例4)
前記小円管の代わりに内径が7mm、外径が10mm、長さが200mmのガラス管を用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±2μmであった。接続損失の平均値は、0.19dBであった。
(実施例5)
大円管をはずした以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±10μmであった。接続損失の平均値は、0.53dBであった。
(実施例6)
シール部の小開口部を全て耐熱粘着テープでふさいだ以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±10μmであった。接続損失の平均値は、0.55dBであった。
(実施例7)
前記小円管の代わりに内径が7mm、外径が10mm、長さが750mmのガラス管を用いて、母材の送り装置を水平方向に微動させる機構を動作させた以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果線径変動は±1μmであった。接続損失の平均値は、0.11dBであった。
(比較例1)
外層としてポリカーボネート樹脂(GE Japan社製、商品名:レキサンSP1310)を用いた以外は、実施例1と同様に光ファイバを製造した。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.586、ガラス転移点は128℃、SP値は9.59である。第1の加熱炉の出口における母材中心部の温度は131℃、母材外周部の温度は135℃であった。製造された光ファイバの線径変動は±30μmであった。また構造パラメータとしては、コア径は118μm、コア非円率は3.5%、NAは0.188であった。また伝送損失は波長850nmにおいて176dB/kmであった。
産業上の利用の可能性
本発明のプラスチック製の光ファイバの製造方法によれば、伝送損失の低いプラスチック製の光ファイバを安定して製造できる。これは内層と外層との接着性が向上したためと考えられる。また特に本発明に係る加熱炉を用いると、プラスチック製光ファイバの製造時の線径変動が抑制でき、線径変動に由来する光ファイバどうしの接続損失が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
(図1)第2の加熱炉の一例の断面図である。
(図2)シール部の一例の上面図である。
(図3)本発明の製造方法を示す概略の断面図である。
(符号の説明)
10:第1の加熱炉、
20:第2の加熱炉、21:炉体、22:シール部、22a:小開口部、
23a:小円管、23b:大円管、23c:フランジ部、
31:母材、31a:内層、32b:外層、
41:母材取り付け治具、41a:排気孔、42:引き取りローラ。
Claims (9)
- 光ファイバ母材を紡糸して、内層と少なくとも1層の外層とを有する多層構造を有するプラスチック製の光ファイバを製造するプラスチック製光ファイバの製造方法であって、
前記内層が含フッ素重合体a1を基材とする含フッ素重合体組成物a3からなり、前記内層が屈折率分布を有し、かつ、前記外層がフッ素原子を含まない樹脂からなる、プラスチック製光ファイバの製造方法において、
(A):光ファイバの内層となり、含フッ素重合体a1を基材とし、中心部において高く、周辺部において低く、かつ連続的に変化する屈折率分布を有する円柱状成形体を準備する工程、
(B):光ファイバの外層となり、含フッ素重合体a1との比較において、SP値の差が4以内である樹脂を選定し、選定された樹脂を用いて工程(A)における円柱状成形体の外側に隣り合うように配置しうる円筒成形体を準備する工程、
(C):工程(A)の円柱状成形体を最内部に、工程(B)の1以上の円筒成形体をその外側に空隙を設けて同軸に配置して、光ファイバ母材を準備する工程、
(D):それぞれ独立に温度調節可能な第1の加熱炉と第2の加熱炉とを準備する工程、
(E):母材の有する空隙を、大気圧に対して1〜1.4kPa減圧にする工程、
(F):光ファイバ母材を含フッ素重合体a1のガラス転移点をTa1としたとき、光ファイバ母材を第1の加熱炉を用いて、Ta1〜(Ta1+40)℃に加熱する工程、および、
(G):第1の加熱炉で加熱された母材を第2の加熱炉で紡糸する工程、
の各工程を含むことを特徴とするプラスチック製光ファイバの製造方法。 - 前記工程(B)において、外層の樹脂の貯蔵弾性率(M’)が含フッ素重合体a1の貯蔵弾性率の0.7〜1.3倍であり、かつ、外層の樹脂の損失弾性率(M”)が含フッ素重合体a1の損失弾性率の0.7〜1.3倍である、請求項1に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 前記の第1の加熱炉として、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉を用いる、請求項1または2に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 前記の第2の加熱炉として、放射される光線の中心波長が0.5〜1.5μmである加熱炉を用いる、請求項1、2または3に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 前記第2の加熱炉の内径が、母材の外直径に対して1.02〜1.67倍である、請求項1、2、3または4に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 前記第2の加熱炉が、炉体が円筒状であり、炉開口部の一方にシール部が設けられ、炉開口部の他方に円管が少なくとも2以上設けられ、前記シール部は弾性を有する膜状であり、前記シール部は炉体の中心軸を中心とする円形開口部と、該円形開口部の周辺に設けられた複数の小開口部とを有し、前記2以上の円管は炉体の中心軸と同一の中心軸を有し、円管どうしは空隙を有するようにそれぞれ配置され、かつ、前記2以上の円管のうち最小の内径を有する円管の一方の開口部は炉体の内部に配置されている、加熱炉を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 前記シール部が上部となるように炉体を設置し、前記シール部の円形開口部の直径より太い母材を用い、加熱された炉中に前記母材を前記円形開口部より挿入し、炉中で母材を加熱し、前記2以上の円管のうち最小の内径を有する円管を通して光ファイバを取り出す、請求項6に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 母材を加熱炉に挿入するために母材送り装置を使用し、該母材送り装置と加熱炉とが水平方向に相互に位置を調整できる請求項7に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
- 前記最小の内径を有する円管の長さがその内径の15〜100倍である請求項6、7または8に記載のプラスチック製光ファイバの製造方法。
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