JPS6312784B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

「産業上の利用分野」 本願発明は、装飾材の製法に関し、芯材と外被
との間に特別な金属からなる２つの層を設けた構
造のものを特別な温度で加熱しつつ加圧処理する
ものである。 「従来技術およびその問題点」 強度が高く耐食性に富み軽量なTi材に、他の
金属材を合わせてクラツド化し、メガネフレーム
用などの装飾用に供される材料の製法として従
来、TiまたはTi基合金からなる芯材の表面に、
NiまたはNi基合金あるいはCu基合金をクラツド
圧着する技術が知られている。 前記製法によつて得られた材料にあつては、表
面にNiまたはNi基合金、あるいはCu基合金が存
在するために、ろう付けが容易にできるといつた
長所を有するものの、ろう付け加工による加熱に
よつてNiまたはNi基合金とTiとの間、あるい
は、Cu基合金とTiとの間に非常に脆い金属間化
合物が形成されるためにろう付け強度が低下する
問題がある。 また、従来、NiあるいはNi基合金とTi材のク
ラツド、あるいは、Cu基合金とTi材とのクラツ
ドにあたつては、静水圧押出、あるいは、爆発圧
着などの方法によりクラツド化することがなされ
ているが、これらの方法により接合された前記各
合金製の装飾材にあつては、密着度の高いものは
未だに少ないようである。なお、加圧処理ととも
に加熱処理を行えば良好なクラツド化が可能とな
るが、良好なクラツド化を行うために高温加熱処
理を行うと前記金属間化合物が生成する問題を生
じることになる。 本願発明は、上述した事情に鑑みてなされたも
ので、ろう付け加工が容易でろう付け強度も高
く、その上芯材と外被との密着度が高く、熱処理
と成形加工が容易な装飾材を得るための製法の提
供を目的とする。 「問題点を解決するための手段」 本願発明は前記問題点を解決するために、Ti
またはTi基合金からなる芯材に、NiまたはNi基
合金、あるいは、Cu基合金からなる外被をクラ
ツドするにあたり、芯材と外被との間に、Cr層
およびMo層からなる中間層を介在させた後に、
400〜900℃に加熱しつつ加圧してクラツドするも
のである。 「作用」 芯材と外被との間に形成したCr層とMo層が芯
材の構成材料との間に金属間化合物を生成しない
ために、加熱時の金属間化合物発生が阻止されて
ろう付け性が向上する。そしてこの構造のものを
400〜900℃に加熱しつつ加圧処理することによつ
て各層の密着度が向上し、加工性も向上する。 「実施例」 第１図は、本願発明を実施して製造された装飾
材の一例を示すもので、Ti（チタン）またはTi基
合金製の棒状の芯材１の周面を覆つて２層構造の
中間層２が形成され、この中間層２の周面を覆つ
てNi（ニツケル）またはNi基合金あるいはCu
（銅）基合金からなるパイプ状の外被３が形成さ
れている。前記中間層２は、芯材１の外周面に被
覆されたMo（モリブデン）層２ｂと、該Mo層２
ｂの外周面に被覆されたCr（クロム）層２ａとか
ら構成されている。 本願発明を実施して第１図に示す装飾材を製造
するには、まず、芯材１の外周にMoメツキを施
すかあるいはMo箔を被せてMo層２ｂを形成し、
次いでMo層２ｂの外周に、Crメツキを施すかあ
るいはCr箔を被せてCr層２ａを形成し、更にCr
層２ａの外周に、NiまたはNi基合金あるいはCu
基合金からなるパイプ状の外被３を被せて装飾素
材を形成する。 次に前記装飾素材の両端に金属蓋（例えば、外
被３の構成材料と同じ材料で形成されたもの）を
溶接し、両端面を金属蓋で覆い、第２装飾素材を
形成する。 次いでこの第２装飾素材を周知の熱間静水圧プ
レス（Hot Isostatic Press、以下HIPと略称す
る）によつて、0.7MPa、好ましくは10MPa、更
に好ましくは、50MPa以上（例えば100MPa）の
圧力を加えるとともに、400〜900℃（好ましくは
500〜900℃）に加熱する操作を１時間程度行つて
第３装飾素材を得る。この第３装飾素材にあつて
は、HIP処理によつて芯材１とCr層２ａとMo層
２ｂと外被３が各々の全面にわたつて均一に圧縮
され加熱されているので、各層の密着度が高く、
均一にクラツド化されている。 なお、HIP処理に伴う加熱によつて芯材１に含
まれるTiと外被３の構成材料との間で金属間化
合物を生成するおそれを生じる。ところが前述の
構造においては、Mo層２ｂのMoがTiに対する
拡散が極めて容易であつてTiに容易に固溶する
ために、金属間化合物を生成することなくMo層
２ｂと芯材１の密着度が十分高くなる。 続いて前記第３装飾素材の端部の金属蓋および
その近傍部分を削り取つて錐体状の第４装飾素材
を得る。 次に、この第４装飾素材を円錐ダイスを有する
周知の液圧押出装置によつて棒状に加工して第５
装飾素材を得、この第５装飾素材を必要な径まで
線引加工するとともに、熱処理を施して目的の装
飾材（メガネフレーム用など）を得ることができ
る。なお前記熱処理にあたつては、装飾素材に金
属間化合物が生じないために、熱処理温度を従来
より高く設定することが可能になり、熱処理条件
の選択が容易になる。なお、これに伴つて熱処理
による装飾素材の軟質化が可能になり、熱処理後
の加工性が向上する。 以上の如く製造された装飾材は芯材１がTi製
のために軽量で強度が高く、外被３がNiまたは
Ni基合金あるいはCu基合金製のためにろう付け
性に優れた上に、前述のように金属間化合物生成
の問題も生じないためにろう付け強度低下のおそ
れもなく、しかも芯材１と外被３とが高い密着力
で接合している。従つて前記装飾材はメガネフレ
ーム用材料などの装飾用として最適である。 なお、中間層２の形成手段は、メツキ法や箔体
の巻き付け法に限るものではなく、溶射法や蒸着
法等の手段を用いても良いが、いずれにしてもコ
ストの安い手段を選択することが好ましい。 「製造例」 中間層の有無による芯材と外被との密着度を調
査するために種々の装飾材を製造した。 まず、中間層のない装飾材の試料を製造した。 外径60mm、肉厚2.5mm、長さ1000mmのNiパイプ
中に、外径54mm、長さ980mmのTi製丸棒を挿入
し、両端にNi製の蓋を被せ、電子ビーム溶接に
て固定する。 次にこの材料を300〜1000℃に加熱するととも
に、圧力100MPaを１時間の間加えるHIP処理を
施した。 次いでこの棒体をドローベンチにより直径８mm
の棒材に加工し、500℃に20分間加熱後に徐冷す
る焼鈍処理を行つた。次いでこの棒材を線引機に
より加工して直径３mmの線材に加工し、500℃に
10分間加熱後徐冷する焼鈍処理を行い試料を得
た。 この試料に複数回のねじり加工を加えるねじり
テストを施して線材と外被との密着強度を調査し
た。なお、ねじりテストの条件は、チヤツク長さ
を直径の50倍とするとともに、20回のねじりとね
じり戻しを交互に加えるものとした。 また、第２図に示すようにTi丸棒からなる芯
材とNiパイプからなる外被３との間にCr箔（厚
さ1μｍ）からなる中間層２′を介在させた試料
と、Ti丸棒とNiパイプとの間に内側からMo箔
（厚さ3μｍ）とOr箔（厚さ１〜3μｍ）とを介在さ
せた試料を作製し、前記と同等の処理を施してね
じりテストを行つた。 なお、前記３種類の試料製造にあたり、HIP処
理時の加熱温度の異なるものを複数用意し、各々
についてねじりテストを行つた。その結果を第１
表に示す。 第１表に示す結果から、Cr層とMo層を介在さ
せ、加熱温度を700〜900℃に設定した試料No.８、
No.９の結果が優れていることが明らかである。一
方、Crの中間層のみを設けた試料であつて、600
℃に加熱した試料No.５では良好な結果が得られ、
300℃に加熱した試料No.４でははがれが発生して
いる。以上の点に鑑みて本願発明では加熱温度を
400℃以上であつて900℃以下の温度に限定した。

【表】

【表】 「発明の効果」 以上説明したように本願発明の製法は、芯材と
外被との間にMo層とCr層を設け、次いで400〜
900℃で加熱しつつ加圧するために、芯材とMo
層とCr層と外被の密着度が高い装飾材を得るこ
とができる効果がある。また、Mo層のMoは芯
材のTiに対して容易に固溶するために、ろう付
け時の加熱によつても金属間化合物を生成するこ
とがなくなり、ろう付け性が向上するとともに、
金属間化合物の生成が阻止されるために熱処理温
度を従来より高く設定することができるようにな
り、熱処理時の軟質化が可能になつて加工性が向
上する効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本願発明を実施して製造された装飾材
の一例を示す断面図、第２図は製造例で製造され
た装飾材の一例を示す断面図である。 １……芯材、２，２′……中間層、３……外被。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ TiまたはTi基合金からなる芯材に、 NiまたはNi基合金、あるいは、Cu基合金から
   なる外被をクラツドするにあたり、 芯材と外被との間に、Cr層およびMo層からな
   る中間層を介在させた後に、400〜900℃に加熱し
   つつ加圧してクラツドすることを特徴とする装飾
   材の製法。