JPH11508909A - α,ω−ブロモクロロアルカンの製造方法 - Google Patents
α,ω−ブロモクロロアルカンの製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
α,ω-ブロモクロロアルカンの製造方法。環状エーテルを臭化水素化し、得られた相を従来の精製または分離をせずに塩化チオニルと反応させる。
Description
【発明の詳細な説明】
α,ω-ブロモクロロアルカンの製造方法
本発明はα,ω-ブロモクロロアルカンを環状エーテルから直接製造する方法に
関するものである。
ハロアルカン、特にα,ω-ブロモクロロアルカンは医薬品、殺虫剤および洗剤
を製造するための出発材料として広く使用されている。
α,ω-ブロモクロロアルカンの製造方法は多数記載されている。大抵の場合、
ハロゲン(臭素または塩素)またはその誘導体、例えばPBr3またはSBr6と、
α,ω-クロロヒドロキシアルカンとの反応またはハロゲン(臭素または塩素)ま
たはその誘導体、例えばSOCl2とハロアルカンまたはω-ハロアルカン酸との
反応である。
英国特許第788,349号には、第1段階で約100℃以下の温度で痕跡量のZnCl2
の存在下で乾燥塩酸を用いてTHFを処理し、第2段階で得られた4-クロロ-1-
ブタノールを赤リンで処理し、次いで0℃〜-10℃の温度で乾燥臭素で処理して1
-ブロモ-4-クロロブタンを製造する方法が記載されている。使用したTHFに対
して約62%の収率で1-ブロモ-4-クロロブタンが得られる。
米国特許第2,839,574号には、赤リンおよび臭素またはSBr6を用いない1-ブ
ロモ-4-クロロブタンの製造方法が記載されている。この方法は、予備蒸留した4
-クロロ-1-ブタノールを、乾燥した臭化水素酸ガスを用いて、反応:
Cl(CH2)4OH+HBr→Br(CH2)4Cl+H2O
で生じる水と共沸混合物を成す溶媒の存在下、沸点で処理する。収率は約70%で
ある。
日本国特許出願第JP5791930号では、反応系:
SBr6+6Cl(CH2)4OH→6Br(CH2)4Cl+H2SO4+2H2O
によって、硫黄および臭素から生成したSBr6を用いて新規に蒸留した4-クロロ
-1-ブタノールを処理して約90%の収率で1-ブロモ-4-クロロブタンを得ている。
SBr6をテトラヒドロフランと塩酸との混合物から得られる未精製の4-クロロ-1
-ブタノ
ールと反応させるため、1-ブロモ-4-クロロブタンの収率は約70%である。
D.C.SaylesおよびEd.F.Degering(Journal of American Chemistry
Society,71,3162頁、1949年)は、塩化スルフリル(SO2Cl2)を用いてベンゾイ
ルペルオキシドの存在下でn-ブロモブタンを処理し、反応物を還流する1-ブロ
モ-4-クロロブタンの製造方法を記載している。1-ブロモ-4-クロロブタンの収率
は35%である。
Smushkevich,Yu.I達は、Borodin-フンスジーカー反応をω-クロロアルカン酸
に適用している(Tr.Mosk.Khim.Technol.Inst.No.61,47-48頁,1969年)。
すなわち、反応系:
Cl(CH2)nCOOH+Br2→Cl(CH2)nBr+CO2+HBr
によって、CCl4媒体中でω-クロロアルカン酸をHgOおよび臭素を用いて処理
してα,ω-ブロモクロロアルカンを得る。
上記の方法は全て多くの欠点がある。使用する出発材料が大抵は不純で、精製
操作を必要とし、反応物は高価で扱いが困難であり(P+臭素、S+臭素)、α
,ω-ブロモクロロアルカンの収率は低く、得られた生成物は不純物を含み、不純
物を除去する分離操作は困難且つ高価である。
本発明者は化学式(I):
Br(CH2)nCl (I)
(ここで、nは3〜8の整数)のα,ω-ブロモクロロアルカンを化学式(II):
(ここで、nは化学式(I)と同じ意味を有する)
の環状エーテルから直接製造する方法において、
下記(a)、(b)を特徴とする方法を見出した:
(a) 環状エーテル(II)を臭化水素酸ガスと接触させ、次いで、
(b) (a)で得られた相を塩化チオニル(SOCl2)およびN-アルキル化またはN-
ジアルキル化カルボン酸アミド基を含む化合物と接触させる。
本発明で使用可能な環状エーテル(II)の例としては1,3-プロピレンオキシド(
オキセタン)、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,6-ヘキサメチレン
オキシド(オキセパン)または1,7-ヘプタメチレンオキシド(オキソカン)を挙
げるこ
とができる。
本発明方法は特にテトラヒドロフランからの1-ブロモ-4-クロロブタンの製造
に適用できる。
本発明で使用可能なN-アルキル化またはN-ジアルキル化カルボン酸アミド基
を含む化合物の例としては、N-メチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドま
たはジエチルホルムアミドを挙げることができる。この化合物の中ではジメチル
ホルムアミドを使用するのが好ましい。
この化合物の重量は使用するエーテルに対して最大で5重量%、好ましくは0.
1重量%〜3重量%にする。
本発明では、反応系:
によって、環状エーテル(II)を臭化水素化する段階(a)で得られるα,ω-ブロモ
ヒドロキシアルカン(III)を単離および/または精製する必要がない。
(b)段階は(a)で得られた中間体(III)を含む上記相を反応系:
HO(CH2)nBr+SOCl2→Br(CH2)nCl+HCl+SO2 (B)
(III) (I)
によって塩化チオニルおよびN-アルキル化またはN-ジアルキル化カルボン酸ア
ミド基を含む化合物と直接接触させてα,ω-ブロモクロロアルカン(I)を得る。
本発明の利点の1つは(a)段階で得られる中間体のα,ω-クロロヒドロキシア
ルカン(III)を塩化チオニルと接触させる(b)段階前に単離および/または精製す
る必要がない点にある。
本発明方法の(a)段階は約0℃〜30℃、b)段階は約20℃〜約130℃、好ましくは
50〜70℃の温度で実施する。
(a)段階の温度を30℃以上にした場合には、中間化合物(III)の含有率が低くな
り、望ましくない副生成物、例えばジブロモアルカンが生成する。
本発明方法では、HBr/環状エーテルの比は事実上1であり、SOCl2/環状
エーテルの比は0.90〜1.50、好ましくは0.95〜1.20である。
(a)段階および(b)段階の反応時間は広範囲に変えることができるが、一般に5
〜20時間、好ましくは10〜15時間である。
反応は大気圧下で行うことができる。本発明の1つの運転方法では、環状エー
テルに臭化水素酸ガスを撹拌しながら導入する。導入が完了した時点で、必要に
応じて好ましくは室温で減圧するか窒素などの不活性ガスを用いて反応混合物か
ら未反応の臭化水素酸を脱気する。次いで、N-アルキル化またはN-ジアルキル
化カルボン酸アミド基を含む化合物を導入し、その後に塩化チオニルを添加する
。
生成した塩酸および亜硫酸ガスを反応物から連続脱気する。この脱気では反応
終了時に不活性ガスを掃気するか、反応混合物を減圧するのが好ましい。塩酸お
よび亜硫酸ガスは水酸化ナトリウムと亜硫酸ナトリウムなどのアルカリ性亜硫酸
とを含む1種または複数の吸収カラムで中和することができる。
(b)段階をN-アルキル化またはN-ジアルキル化カルボン酸アミド基を含む化合
物を用いずに実施しても本発明から逸脱するものではない。
本発明のα,ω-ブロモクロロアルカンの製造方法は、中間体のα,ω-ブロモヒ
ドロキシアルカンを単離または精製せずに、同じ装置を用いて2つの反応を連続
して実施できるという利点がある。
本発明方法はさらに溶媒を用いないという利点もある。
α,ω-ブロモクロロアルカンの収率は高く、得られる生成物は蒸留などの当業
者に周知の方法で精製することができる。
以下、本発明の実施例を説明する。実施例1 (a) 段階
ラシヒリングを充填したカラムと-25℃に冷却した凝縮器とを上部に有し、撹
拌器、温度制御装置および熱流体が循環するジャケットを備えた1リットル容の
反応器中に、216g(3mol)のテトラヒドロフラン(THF)を室温で導入する。次
いで、撹拌しながら、反応器の底から臭化水素酸ガスを流速1mol/hで2時間、
次いで、流速0.5mol/hで2時間噴射し、反応混合物の温度は室温(約20℃)に維
持する。
気相クロマトグラフィー(GPC)分析から、得られた反応相は91重量%の4-ブ
ロモ-1-ブタノール、5重量%の1,4-ジブロモブタンおよび4重量%の未変換T
HFを含
む。
4-ブロモ-1-ブタノールの粗モル収率は使用したTHFに対して88%である。(b) 段階
上記で得られた相(a)に0.84gのジメチルホルムアミドを導入する。反応混合
物を50℃に冷却し、次いで、90分かけて撹拌しながら、357g(3mol)のSOCl2
を注入し、温度は50℃に維持する。SOCl2の添加が完了した時点で、反応混合
物の温度を70℃に上げ、この温度を2時間維持する。生成した塩酸およびSO2
を連続脱気し、それを水酸化ナトリウムと亜硫酸ナトリウムとの混合物を含む吸
収カラムを用いて中和する。
室温に冷却後、反応混合物を105gの水で洗浄し、静置分離する。504gの有機
相が得られる。有機相は84.7重量%の1-ブロモ-4-クロロブタンと、9.3重量%の
1,4-ジブロモブタンと、2.5重量%の1,4-ジクロロブタンと、1.9%のTHFとを
含む。1-ブロモ-4-クロロブタンの粗モル収率は使用したTHFに対して83%で
ある。
この有機相を30の理論段を有する断熱カラムを用いて減圧下(25mm Hg)で蒸留
する。純度99.5%以上の1-ブロモ-4-クロロブタンが得られた(B.P・25mm Hg=7
6℃/76.5℃)。蒸留収率は約75%である。実施例2
実施例1の(a)および(b)段階と同じ条件を用いて操作するが、SOCl2を50℃
でなく、70℃で注入する。
得られた反応混合物(精製前)の重量組成は下記の通り:
73.2重量%の1-ブロモ-4-クロロブタン
15.7重量%の1,4-ジブロモブタン
6重量%の1,4-ジクロロブタン
2.4重量%のTHF
1-ブロモ-4-クロロブタンの粗モル収率は使用したTHFに対して70.5%であ
る。反応混合物を実施例1と同様に処理して有機相を減圧蒸留する。実施例3
実施例2と同様に運転するが、(b)段階でSOCl2を70℃でなく、60℃の温度
で添加する。
得られた反応混合物(精製前)の重量組成は下記の通り:
81重量%の1-ブロモ-4-クロロブタン
11.5重量%の1,4-ジブロモブタン
4重量%の1,4-ジクロロブタン
1.3重量%のTHF
1-ブロモ-4-クロロブタンの粗モル収率は78%である。実施例4
(本発明でない)
実施例1と同量の反応物を用いるが、操作条件を変えて運転する。HBrの導
入開始温度を67℃にし、HBrの導入終了温度は105℃にする。
GPC分析から、反応相は52重量%の4-ブロモ-1-ブタノール、36重量%の1,4
-ジブロモブタンおよび12重量%のTHFを含む。4-ブロモ-1-ブタノールのモル
収率は使用したTHFに対して約50%である。実施例5 (a) 段階
実施例1の(a)段階と同じ条件を用いて操作を行うが、8molのTHFと、8mo
lのHBrを用いる。HBrは流速1.5mol/hで5時間、次いで、流速1mol/hで30分
間導入する。(b) 段階
9.5molのSOCl2(使用するTHFに対して18.7モル%過剰)を50℃で4時間
直接注入し、次いで、65℃-85℃で2時間30分、次いで130℃で2時間加熱する。
冷却後、反応混合物を水で洗浄し、静置分離する。
静置分離した有機相のGPC分析から、使用するTHFに対して77.5%の粗モ
ル収率を有する1-ブロモ-4-クロロブタンが得られたことが分かる。
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フロントページの続き
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Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.化学式(I): Br(CH2)nCl (ここで、nは3〜8の整数) のα,ω-ブロモクロロアルカンを化学式(II): (ここで、nは化学式(I)と同じ意味を表す) の環状エーテルから直接製造する方法において、 下記(a)、(b)を特徴とする方法: (a) 環状エーテル(II)を臭化水素酸ガスと接触させ、次いで、 (b) (a)で得られた相を塩化チオニル(SOCl2)と、N-アルキル化またはN-ジ アルキル化カルボン酸アミド基を含む化合物と接触させる。 2.環状エーテル(II)がテトラヒドロフランである請求項1に記載の方法。 3.N-ジアルキル化カルボン酸アミド基を含む化合物がジメチルホルムアミド である請求項1に記載の方法。 4.N-アルキル化またはN-ジアルキル化カルボン酸アミド基を含む化合物が環 状エーテルに対して最大で5%、好ましくは0.1%〜3%である請求項1〜3の いずれか一項に記載の方法。 5.臭化水素酸ガス/環状エーテルのモル比が約1である請求項1〜4のいずれ か一項に記載の方法。 6.塩化チオニル/環状エーテルのモル比が0.90〜1.50である請求項1〜4のい ずれか一項に記載の方法。 7.塩化チオニル/環状エーテルのモル比が0.95〜1.20である請求項6に記載の 方法。 8.(a)段階の温度が0℃〜30℃である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方 法。 9.(b)段階の温度が20℃〜130℃である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方 法。 10.(b)段階の温度が50℃〜70℃である請求項9に記載の方法。
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