JPH1075786A - 交配型遺伝子上の特定部位を増幅させるためのプライマー - Google Patents

交配型遺伝子上の特定部位を増幅させるためのプライマー

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JPH1075786A
JPH1075786A JP8231066A JP23106696A JPH1075786A JP H1075786 A JPH1075786 A JP H1075786A JP 8231066 A JP8231066 A JP 8231066A JP 23106696 A JP23106696 A JP 23106696A JP H1075786 A JPH1075786 A JP H1075786A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 菌類の片方の交配型遺伝子上のDNA結
合部位を増幅させるためのプライマー、上記プライマー
を用いる菌類の交配型遺伝子の分離方法、菌類の交配型
の識別方法、および上記プライマーを使用して増幅され
た上記DNA結合部位塩基配列を比較して、菌の進化を
推測する方法を提供する。 【効果】 交配型遺伝子未知の菌類の片方交配型遺伝子
上のDNA結合部位のクローニングなどが可能であり、
その交配型遺伝子の全長及び周囲のクローニング、シー
クエンシングも可能となる。さらに、これまでと比して
短時間で菌類の交配型遺伝子が得られる。菌類の交配型
の検定、識別も可能であり、従来、交配型遺伝子の有無
の調査も不可能だった交配が不可能な菌類(ホモタリッ
クな菌およびasexualな菌)からの交配型遺伝子の単離
が可能となる。さらにまた、上記DNA結合部位の塩基
配列の比較により、菌類の分類、進化過程の推測ができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、菌類の交配型遺伝
子上に存在する特定の塩基配列を増幅するためのプライ
マーに関する。より詳細には、菌類の交配型遺伝子上に
存在するDNA結合部位(HMGボックスを)増幅する
ためのプライマー、このプライマーを用いた菌類の交配
型の識別方法、およびこのプライマーを用いて増幅した
DNA断片の塩基配列を用いた菌の進化の推測方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】菌類は分類学上菌界と呼ばれるが、この
菌類は、通常その生活環のほとんどを単相(n )で経過
する。しかし、これらのうちには、細胞融合や核融合に
よって複相(2n )のステージを作り、組み換え等の後
単相(n )に戻るものがある。こうした複相世代は完全
世代と称される。菌類は、完全世代を形成するか否かで
2つのグループに分けることができる。1つは、完全世
代を形成するsexualなグループであり、他の1つは完全
世代を形成しないasexual なグループである。sexualな
グループは、完全世代の形成方法によって、さらに2つ
のグループに分けることができる。すなわち、2つの交
配型の株の交配により完全世代を形成するヘテロタリッ
クなグループと、交配を必要としないホモタリックなグ
ループとに分けられる。
【0003】これらヘテロタリックな菌類のうち数種か
ら交配型を決定する交配型遺伝子が単離されている。こ
うした交配型遺伝子が単離された菌類としては、Cochli
obolus heterostrophus 、Neurospora crassa およびPo
dospora anserina等を挙げることができる。そして、こ
れらの菌類からはMAT1とMAT2、mta-1 とmtA-1 、mat+と
mat-という相対立する2つずつの交配型遺伝子が単離さ
れ、これらの塩基配列およびアミノ酸配列が決定され、
報告されている。
【0004】既報の交配型遺伝子の塩基配列情報より、
2つの交配型遺伝子の片方の上に共通してDNA結合部
位(HMGボックス)が存在すること、および塩基配列
がその一部で比較的類似していることが明らかになっ
た。HMGボックスが存在するのは、上記のC. heteros
trophus ではmat2、N. crassa ではmta-1 、そしてP. a
nserina ではmat+(FPR1)の上である。こうした交配型遺
伝子の片方の上に存在するHMGボックスのアミノ酸配
列を図2に示す。図2中にこれらの配列に共通する部分
を枠を付けて示したが、塩基配列もその一部で比較的類
似している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、これ
までは、数種の交配型遺伝子上のHMGボックスの塩基
配列およびアミノ酸配列が明らかにされたに過ぎない。
菌類の交配型遺伝子を得るためには、膨大な時間を要
し、またも煩雑な操作が必要であった。さらに、交配型
遺伝子の全長や周囲のクローニング、あるいはシークエ
ンシングを行うことも困難であった。
【0006】また、ヘテロタリックな菌類の交配型の相
違を調べて、こうした菌類の交配型の検定、あるいは識
別をすることができないという問題点があった。この結
果、菌類の完全世代であるきのこなどを交配する場合に
は、交配型の異なる2つの株が必要であるが、交配型の
識別ができないために生産効率を挙げることが難しかっ
た。さらに、交配が不可能な菌類、すなわち、ホモタリ
ックな菌類およびasexualな菌類では、交配型遺伝子の
存在を調べることもできず、単離を行うこともできなか
った。さらにまた、菌類の分類や進化の過程の推測など
の点に関しても問題が残されていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】以上のような課題を解決
すべく、本発明の発明者は鋭意研究を進め、菌類の片方
の交配型遺伝子上のDNA結合部位が保存性が高く、塩
基配列に一部で類似することを見い出し、これに基づい
て本発明を完成したものである。すなわち、本発明の第
一の態様は、菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結
合部位を増幅するためのプライマーである。また、上記
プライマーは図1に示す塩基配列からなるオリゴマーで
あることを特徴とする。
【0008】本発明の第二の態様は、菌類の交配型遺伝
子上に存在するDNA結合部位を増幅するためのプライ
マーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、ホモタリッ
クまたは完全世代を形成しない菌類から交配型遺伝子を
単離する方法である。また、上記単離方法で使用される
前記プライマーが、図1に示す塩基配列からなるオリゴ
マーであることを特徴とする。本発明の第三の態様は、
菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅
するためのプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を
行い、前記菌類の片方の交配型遺伝子上に存在するDN
A結合部位を増幅することによって菌類の交配型を識別
する方法である。また、上記識別方法で使用されるプラ
イマーは図1に示す塩基配列からなるオリゴマーである
ことを特徴とする。
【0009】本発明の第四の態様は、菌類の交配型遺伝
子上に存在するDNA結合部位を増幅するためのプライ
マーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、前記菌類の
片方の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅
する工程と、前記増幅されたDNA結合部位を比較する
工程とを有する菌の進化の推測方法である。上記菌の進
化の推測方法において使用されるプライマーは、図1に
示す塩基配列からなるオリゴマーであることを特徴とす
る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を具体的に説明す
る。本発明において用いられる菌類は、sexualなグルー
プに属する菌類、asexualなグループに属する菌類のい
ずれをも使用することができる。特に、asexual なグル
ープに属する菌類およびsexualなグループに属する菌類
のうち、ホモタリックな菌類を使用することができると
いう利点を有する。
【0011】本発明においては、上記菌類の交配型遺伝
子上のDNA結合部位を所定の塩基配列からなるDNA
オリゴマーを設計、作製し、これをプライマーとして所
定のPCR条件の下で増幅する。菌類の片方の交配型遺
伝子上に共通して存在するDNA結合部位(HMGボッ
クス)のアミノ酸配列を図2に示す。図2中、Ch MAT2
はCochliobolus heterostrophus の交配型遺伝子である
MAT2を表わし、以下同様に、Ncmt a-1はNeurospora cra
ssa のmt a-1、PaFPR1はPodospora anserinaのmat+(FPR
1)、SpmatMc はSchizosaccharomyces pombe のmat-(M
c)、そしてHuSRYはhuman のSRY を表わす。枠を付けた
部分は、これら5種類の各交配型遺伝子上のアミノ酸配
列の類似性の高い部分を示す。上記プライマーは、完全
世代を形成するグループに属する菌類に存在する交配型
遺伝子の片方の交配型遺伝子上にあり、上記のようにア
ミノ酸配列からそれらの塩基配列が明らかにされたHM
Gボックスの塩基配列を元に作製することができる。Co
chliobolus spp.(Loculoascomycetes 綱) あるいはNeur
ospora crassa(Pyrenomycetes 綱) の交配型遺伝子上に
あるHMGボックスの塩基配列(図2)などを、好適に
使用することができる。
【0012】上記プライマーは、HMGボックスの塩基
配列を増幅させることができるものであればよく、特に
長さは限定されないが、ターゲット遺伝子を特異的に増
加させやすいとの理由から18〜30塩基程度であることが
好ましい。特に、21〜23塩基程度にすると、上記プライ
マーの設計に使用した菌類のHMGボックスの塩基配列
とある程度共通部分を有する他の菌類のHMGボックス
の増幅にも使用できるプライマーを得ることができる。
【0013】上記プライマーの塩基配列を修飾して、他
の菌類のHMGボックスの増幅にも使用できるプライマ
ーとするためには、他の菌類の遺伝子上にあるHMGボ
ックスの塩基配列を以下のようにして推定してこれらを
用いる。すなわち、図2から推定される菌類のHMGボ
ックスの共通部分を、上述したC. heterostrophus とN.
crassa のHMGボックスのアミノ酸を基本にし、上記
プライマーのこの部分に対する塩基配列を仮定する。つ
いで、各アミノ酸の第三コドンの一般化等により修飾す
べき部分を確定し、プライマー全体の塩基配列を決定し
て、他の菌類のHMGボックスの増幅にも使用できるプ
ライマーを設計することができる。
【0014】こうしたプライマーは、DNA合成機を用
いて常法に従って合成することができる。このようにし
て得られたプライマーを脱塩し、プライマーとして使用
する。このようにして得たプライマーと、所望の菌類の
染色体DNAを鋳型として用いて、所定の条件でポリメ
ラーゼ連鎖反応(PCR)を行なう。例えば、10mMのTr
is-HCl(pH8.3) 、50mMのKCl 、2.5mM のMgCl2 、 0.2 μ
M のdNTPs 、 2μM のプライマー、0.25μl のmpli Taq
DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer社)および約20mgの菌
類の染色体DNAを含む50μl の混合液を用いて、以下
の温度条件で30サイクル程度行う。90℃ 2分、(94℃
1分,47-55 ℃ 30秒,72℃ 1分)×30〜35サイク
ル、72℃ 1分。
【0015】以上のようにして、菌類の交配型遺伝子上
に存在するHMGボックスを増幅させることができ、こ
れによって交配型遺伝子の一部をクローンし、塩基配列
を決定する。特に、本発明のプライマーを用いると、従
来、交配型遺伝子が存在するかどうかを調べることもで
きず、交配型遺伝子を単離することもできなかった交配
が不可能な菌類、すなわち、ホモタリックな菌類あるい
はasexual な菌類について、これらの菌類が交配型遺伝
子上にDNA結合部位を有するかを調べることが可能と
なるという利点がある。
【0016】さらに、これらのDNA結合部位から増幅
されたDNA断片に関するデータに基づいて、TAIL-PCR
法などの様々な方法を採用することにより、上記交配型
遺伝子のさらに長い部分をクローンすると、交配型遺伝
子の全長が得られる。ここでTAIL-PCR法とは、Liu ら(G
enomics,25:674,1995)が報告した方法で、既知配列情報
に従ってデザインした特異プライマーとランダムプライ
マーを利用して既知配列の外側の所望のDNA断片を得
る方法である。
【0017】すなわち、決定されたHMGボックスの塩
基配列に従って上流、下流方向に複数の20〜25塩基の特
異プライマーをデザインし、これと14〜16塩基のランダ
ムプライマー(ADプライマー)を用いて、表4の条件
で複数回ポリメラーゼ連鎖反応を行うことでHMGボッ
クス外側の遺伝子を上流、下流それぞれ増幅させること
ができ、より長い遺伝子配列を得ることができる。所望
の菌類の交配型遺伝子から増幅されたDNA断片につい
てクローンした後、ジデオキシ法、マクサムギルバート
法などを用いてこれらのDNA断片の塩基配列を決定す
る。すなわち、DNA断片をクローンしたベクター上あ
るいは増幅に用いた特異プライマーにより増幅された断
片を電気泳動で分離、あるいはDNAを特異的に切断し
ながら電気泳動で分離して、塩基配列を決定する。
【0018】本発明のプライマーを使用すると、ヘテロ
タリックな菌類の片方の交配型遺伝子上のDNA結合部
位が増幅されるので、ここでDNA結合部位が増幅され
る株と増幅されない株とに分けることができる。したが
って、増幅される株とされない株とでは交配型が異なる
ことになり、この相違を利用してこれら菌類の交配型を
識別する。特に、交配型の異なる2つの株の交配を行う
必要がある場合には、交配型を容易に識別できるので、
こうした場合に好適である。さらに、各種の菌から上記
のようにして増幅し、こうして得られたDNA結合部位
の塩基配列を比較することにより、菌類の分類、進化の
過程を推測する。すなわち、塩基配列やアミノ酸配列の
相違の度合を時間軸で計算することで、菌の近縁性や種
としての分化時期を数的に導くことにより、この推測を
行う。
【0019】
【実施例】
(実施例1)プライマーの調製 (1)プライマーの設計 Cochliobolus spp.(Loculoascomycetes 綱) およびNeur
ospora crassa(Pyrenomycetes 綱) の交配型遺伝子上に
は、多くの微生物で保存性の高いDNA結合部位(HM
Gボックス)が存在する。Cochliobolus spp. のC. het
erostrophus の一方の交配型遺伝子上の MAT2 およびN.
crassa のそれのmt a-1の交配型遺伝子上にあるHMG
ボックスの位置を図3に示した。これらの配列を基に、
このDNA結合部位のインナーフラグメントを増幅する
ために、21-23merの2組のオリゴマーのセット、ChHMG1
およびChHMG2、NcHMG1およびNcHMG2をPCRプライマー
用に設計した。
【0020】セット1 ChHMG1 AAGGCNCCNCGYCCNATG
AAC ChHMG2 CTNGGNGTGTAYTTGTAR
TTNGG セット2 NcHMG1 CCYCGYCCYCCYAAYGCN
TAYAT NcHMG2 CGNGGRTTRTARCGRTAR
TNRGG
【0021】セット1および2において、Nは、A、
T、G、Cの混合あるいはイノシンとの混合であること
を、Yは、CとTとの混合、RはAとGとの混合である
ことを示す。上記プライマーの塩基配列の一部をこのよ
うに一般化させることにより、菌類に広く応用すること
が可能となる。 (2)プライマーの合成 上記セット1および2に示すオリゴマーのセットは、常
法に従って作製した。このようにして得られたオリゴマ
ーをプライマーとして用いて、下記の条件でPCRを行
い、各種の菌のDNA結合部位を増幅した。
【0022】(実施例2)セット1のプライマーを用い
たPCRによる各種の菌のDNA結合部位(HMGボッ
クス)の増幅 (1)使用した菌類 表1に示す、交配型遺伝子未知の病原菌19種を使用し
た。Cochloboulus spp.、Mycosphaerella zeae-maydi
s、Neurospora crassa 、Bipolaris sacchariおよびSet
osphaeria rostrata およびPodospora anserinaはCorne
ll 大学のDr.O.C.Yoder、Setosphaeria turcicaはDr.N.
Keller 、Pyrenophora teres は、Dr.T.Peever 、Pyren
ophora tritici-repentisはDr.D.Kalb 、Alternaria al
ternataは児玉基一朗博士、Nectria haematococcaはDr.
Van Etten、Cryphonectria parasiticaはDr.B.Marra、G
aeumannomyces graminis はDr.G.Bryanより入手した。
【0023】(2)PCR条件 PCR条件は以下の通りである。10mMのTris-HCl(pH8.
3), 50mM のKCl, 2.5mMのMgCl2 , 0.2 μM のdNTPs, 2
μM のセット1のプライマー、0.25μl のAmpli Taq DN
A ポリメラーゼ(Perkin-Elmer社)、および約20ngの上
記表1に示す菌類の染色体DNAを含む50μl の混合液
を使用した。上記混合液を90℃で2分、(94℃で1分,
47−55℃で30秒,72℃で1分)を30〜35サイクル、つい
で72℃で1分の条件で増幅させた。 (3)増幅結果 使用した各種の菌のHMGボックスの増幅結果を表1に
示す。
【0024】(実施例3)セット2のプライマーを用い
たPCRによる各種の菌のDNA結合部位(HMGボッ
クス)の増幅 (1)使用した菌類 表1に示す、交配型遺伝子未知の病因菌19種を使用し
た。これらの菌は、実施例2と同様にして入手した。 (2)PCR条件 実施例2と同様の条件で行った。 (3)増幅結果 使用した各種の菌のHMGボックスの増幅結果を、実施
例2の結果と共に表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】+は増幅されたことを示し、−は増幅され
なかったことを示す。以上の結果より、セット1は Loc
uloascomyctes に属する菌類(図11)および近縁の菌
類、セット2は Pyrenomycetesに属する菌類および近縁
の菌類の交配型遺伝子上のHMGボックスを増幅させる
ことが明らかになった。
【0027】(実施例4)セット1およびセット2のプ
ライマーを用いたときのPCRのまとめ セット1およびセット2のプライマーを用いたときにH
MGボックスが増幅される各菌の交配型、交配性状、お
よびそれらの塩基配列の増幅が既に報告されているかど
うかを表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】以上より、セット1のChHMG1プライマーに
より、Loculoascomycetes 綱に属するSetosphaeria tur
cicaなどのヘテロタリックな菌の片方の交配型株、Myco
sphaerlla zede-maydis などのホモタリックな菌の全
株、asexual なAlternaria alternataの一部の株から、
各々約270bp のDNA断片が増幅された。また、セット
2のNcHMGプライマーにより、Pyrenomycetes 綱に属
すNectria haematococca、Gaumannomyces graminisなど
から、各々約270bp のDNA断片が増幅されたことが明
らかになった。各DNA結合部位をクローニング・シー
クエンシングし、塩基配列を決定した。
【0030】(実施例5)HMGボックスのクローニン
グと塩基配列の決定 (1)クローニング・シークエンシング HMGボックスのクローニングは、常法に従って行っ
た。すなわち、PCRで増幅させた断片をインビトロゲ
ン社の販売するpCRIIベクターに挿入した後、このベ
クターでコンピタントセルを形質転換し、ブルースクリ
プト選択とコロニーハイブリダイゼーションによりクロ
ーニングを行い、図4に示すような菌類から各々のHM
Gボックスを増幅した。
【0031】(2)塩基配列の決定 得られたHMGボックスの塩基配列をpCRIIベクター
上のプライマーM13(-20)、M13(-40)、T7、M13Revers
e、Sp6などを用い、ABIシークエンサーを用いて
決定した。結果を図4に示す。図4中の略号は下記表3
の通りである。
【0032】
【表3】
【0033】この増幅されたDNA断片の塩基配列は、
既報のHMGボックスのものと相同性が高かった。上記
の菌について得られたDNA断片の塩基配列に基づい
て、推定アミノ酸配列を決定し、図5に示した。これら
の菌のあいだにおけるこのDNA断片のアミノ酸配列の
相同性も高いことが示された。
【0034】(3)遺伝的解析 S. turcicaを用いて、以下のようにして遺伝的解析を行
った。すなわち、2つの交配型MAT1、MAT2の親株NK22と
NK72を交配して得た9株の子孫について、親株と戻し交
配して交配型を調べるとともに、各々の染色体DNAを
用いて、ChHMG1とChHMG2プライマーによりPCRを行っ
た結果を図8に、また、制限酵素消化した染色体DNA
を0.6 %アガロースゲルで分離し、ニトランプラス膜へ
移し、クローンした断片とハイブリダイズさせたサザン
ブロットの結果を図9に示す。
【0035】図8に示したように、PCRにより、12R
8、12R13 、12R16 、12R17 および、12R20 でNK72と同
じバンドが検出された。交配により、各子孫の交配型
は、12R4:MAT1 、12R6:MAT1 、12R7:MAT2 、12R8:MAT2
、12R13:MAT2、12R16:MAT2、12R17:MAT2、12R20:MAT
1、12R35:MAT1であることが判明した。交配型と図8お
よび図9の結果の断片の存在が同調するため、得られた
DNA断片が交配型遺伝子上にあることが確認された。
【0036】(4)TAIL-PCRによる遺伝子の取得 実際にホモタリックな菌類であるMycosphaerella zeae-
maydisについて、交配型遺伝子を調べた。この株の菌糸
を凍結乾燥し、フェノール法でDNAを抽出し、PEG
沈殿法により染色体DNAを精製した。ChHMG1とChHMG2
とをプライマーとして用いたPCRによりHMGボック
スを増幅し、得られた塩基配列データに基づいて、M. z
ede-maydisからTAIL-PCR法で、交配型遺伝子により、長
い部分をクローンした。TAIL-PCRの条件は、表4に示し
た通りである。
【0037】
【表4】
【0038】以上のようにしてTAIL-PCRをおこなったと
ころ、HMGボックス周囲の上流2.5 kb、下流1.5 kbが
得られ(図7)、さらに上流にCochliobolus heterostr
ophus のMAT1相同部位が検出された。また実際にTAIL-P
CRによりPyrenophria teres +ve 株よりHMGボックス
周囲の1721bpの配列を得た(図10)。この断片はCochli
obolus heterostrophus MAT2と一部相同で、交配型遺伝
子と考えられた。以上、新規な交配型遺伝子取得法の可
能性を示した。
【0039】(実施例6)菌類の識別 上記のようにして得た菌のHMGボックスの塩基配列を
比較して、下記表5に示すように識別を行った。
【0040】
【表5】
【0041】表中、(8/8)などの記載は、何株中何
株が陽性であったかを示す。asexual 、ホモタリックな
ものでも、HMGボックスを含む交配型遺伝子を持つこ
とが判明した。
【0042】(実施例7)菌類の進化の推測 実施例1〜5のようにして得た塩基配列をPAM250 resid
ue weight table によるクラスター法で解析した結果の
例を図12に示す。実施例2〜5で使用した菌類の進化の
過程は図12に示したように推測された。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、交配型遺伝子未知の菌
類の片方交配型遺伝子上のDNAバインディングドメイ
ンをクローニング、シークエンシングすることが可能で
あった。これを元に、ウオーキングやTAIL−PCR
などでその交配型遺伝子の全長及び周囲を容易にクロー
ニング、シークエンシングすることができる。また、そ
の情報を元にもう片方の交配型遺伝子全長をクローニン
グ、シークエンシングすることもできる。さらに、本発
明のプライマーを用いると、これまで菌類の交配型遺伝
子を得るのに、デイスラプション等で非常に時間がかか
っていたが、短時間のうちに交配型遺伝子を得ることが
できる。
【0044】また、菌類の交配型の検定、識別を行うこ
とができる。ヘテロタリックな菌類の片方の交配型遺伝
子上のDNA結合部位が増幅されるため、増幅される
株、増幅されない株で交配型が異なる。したがって、こ
れを利用して種々の菌類の交配型の検定あるいは識別が
可能である。このため、きのこなどの菌類の完全世代を
交配するさいに必要な交配型の異なる2つの株を確実に
選ぶことができ、交配が容易になり、生産効率も上昇す
る。したがって、本発明は、ヘテロタリックな菌の交配
型はいにおいて、その交配型の識別に有用である。さら
に、良好な形質を持った株の育種にも必須とさる交配の
ための重要な情報は重要を得ることができる。
【0045】さらに、本発明の単離方法を使用すること
により、従来、交配型遺伝子の存在を調べることもでき
ず、また、それらの単離も不可能であった交配が不可能
な菌類(ホモタリックな菌およびasexual な菌)での交
配型遺伝子の存在を調べること、およびそれら交配型遺
伝子の単離が可能となる。加えて、そのような情報を用
いて、交配型遺伝子の全長を取得することもでき、菌類
の交配能、homothallicity、asexualityのメカニズム解
析に利用できる。完全世代を作れない菌に完全世代を作
らせることも可能になり、従来培地上で菌糸状しかとり
得なかった菌にきのこ等の生産も可能となる。さらにま
た、増幅されるDNA結合部位の塩基配列を比較するこ
とで、菌類の分類、進化過程を推測することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプライマーの2つのセットの塩基配列
を示す図である。
【図2】配列が既知となっている5種の菌類のHMGボ
ックスのアミノ酸配列を示す図である。
【図3】C. heterostrophus のMAT2およびN. Crassa の
mt a-1の遺伝子上におけるHMGボックスの位置、およ
び各々のプライマーの位置と方向を示す図である。
【図4】実施例4で使用した22種類の菌のHMGボック
スの塩基配列のアライメントを示す図である。
【図5】実施例4で使用した22種類の菌のHMGボック
スのアミノ酸配列のアライメントを示す図である。
【図6】HMGボックス(277bp )の塩基配列をベース
に周囲の遺伝子をTAIL-PCRにより取得する方法を示した
ものであり、得られた産物(≡)が正しいものかどうか
を211bp の増幅で確認できることを示した図である。
【図7】ホモタリックな菌であるMycosphaerella zeae-
maydisのTAIL-PCRによる交配型遺伝子のクローニングを
示す図である。
【図8】Setosphaeria turcica の親株と交配した子孫
とにおける交配型遺伝子の保有をChHMG1とChHMG2プライ
マーを用いたPCRの結果を示す電気泳動写真である。
【図9】Setosphaeria turcica の親株と交配した子孫
とにおけるgDNAのサザンブロットの結果を示す電気
泳動写真である。
【図10】P. teres +veのスプライスされた仮のオープ
ンリーディングフレームの転写を示す図である。
【図11】本文中で用いたLoculoascomycetes およびPy
renomycetes の分類(The Fungi1973に従う)の分類学
的位置を示す図である。
【図12】HMGボックスの塩基配列から推定した進化
の系統樹を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12Q 1/68 C12R 1:645)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA
    結合部位を増幅するためのプライマー。
  2. 【請求項2】 前記プライマーが図1に示す塩基配列か
    らなるオリゴマーである請求項1に記載のプライマー。
  3. 【請求項3】 菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA
    結合部位を増幅するためのプライマーを用いてポリメラ
    ーゼ連鎖反応を行い、ホモタリックまたは完全世代を形
    成しない菌類から交配型遺伝子を単離する交配型遺伝子
    の単離方法。
  4. 【請求項4】 前記プライマーが、図1に示す塩基配列
    からなるオリゴマーである請求項3に記載の交配型遺伝
    子の単離方法。
  5. 【請求項5】 菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA
    結合部位を増幅するためのプライマーを用いてポリメラ
    ーゼ連鎖反応を行い、前記菌類の片方の交配型遺伝子上
    に存在するDNA結合部位を増幅することによって菌類
    の交配型を識別する菌類の交配型の識別方法。
  6. 【請求項6】 前記プライマーが図1に示す塩基配列か
    らなるオリゴマーである請求項5に記載の菌類の交配型
    の識別方法。
  7. 【請求項7】 菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA
    結合部位を増幅するためのプライマーを用いてポリメラ
    ーゼ連鎖反応を行い、前記菌類の片方の交配型遺伝子上
    に存在するDNA結合部位を増幅する工程と、前記増幅
    されたDNA結合部位を比較する工程とを有する菌類の
    進化の推測方法。
  8. 【請求項8】 前記プライマーが図1に示す塩基配列か
    らなるオリゴマーである請求項7に記載の菌類の進化の
    推測方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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