JP3718755B2 - 交配型遺伝子上の特定部位を増幅させるためのプライマー - Google Patents

交配型遺伝子上の特定部位を増幅させるためのプライマー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、菌類の交配型遺伝子上に存在する特定の塩基配列を増幅するためのプライマーに関する。より詳細には、菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位(HMGボックスを)増幅するためのプライマー、このプライマーを用いた菌類の交配型の識別方法、およびこのプライマーを用いて増幅したDNA断片の塩基配列を用いた菌の進化の推測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
菌類は分類学上菌界と呼ばれるが、この菌類は、通常その生活環のほとんどを単相(n )で経過する。しかし、これらのうちには、細胞融合や核融合によって複相(2n )のステージを作り、組み換え等の後単相(n )に戻るものがある。こうした複相世代は完全世代と称される。
菌類は、完全世代を形成するか否かで2つのグループに分けることができる。1つは、完全世代を形成するsexualなグループであり、他の1つは完全世代を形成しないasexual なグループである。sexualなグループは、完全世代の形成方法によって、さらに2つのグループに分けることができる。すなわち、2つの交配型の株の交配により完全世代を形成するヘテロタリックなグループと、交配を必要としないホモタリックなグループとに分けられる。
【0003】
これらヘテロタリックな菌類のうち数種から交配型を決定する交配型遺伝子が単離されている。こうした交配型遺伝子が単離された菌類としては、Cochliobolus heterostrophus 、Neurospora crassa およびPodospora anserina等を挙げることができる。そして、これらの菌類からはMAT1とMAT2、mta-1 とmtA-1 、mat+とmat-という相対立する2つずつの交配型遺伝子が単離され、これらの塩基配列およびアミノ酸配列が決定され、報告されている。
【0004】
既報の交配型遺伝子の塩基配列情報より、2つの交配型遺伝子の片方の上に共通してDNA結合部位(HMGボックス)が存在すること、および塩基配列がその一部で比較的類似していることが明らかになった。HMGボックスが存在するのは、上記のC. heterostrophus ではmat2、N. crassa ではmta-1 、そしてP. anserina ではmat+(FPR1)の上である。こうした交配型遺伝子の片方の上に存在するHMGボックスのアミノ酸配列を図2に示す。図2中にこれらの配列に共通する部分を枠を付けて示したが、塩基配列もその一部で比較的類似している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、これまでは、数種の交配型遺伝子上のHMGボックスの塩基配列およびアミノ酸配列が明らかにされたに過ぎない。菌類の交配型遺伝子を得るためには、膨大な時間を要し、またも煩雑な操作が必要であった。さらに、交配型遺伝子の全長や周囲のクローニング、あるいはシークエンシングを行うことも困難であった。
【0006】
また、ヘテロタリックな菌類の交配型の相違を調べて、こうした菌類の交配型の検定、あるいは識別をすることができないという問題点があった。この結果、菌類の完全世代であるきのこなどを交配する場合には、交配型の異なる2つの株が必要であるが、交配型の識別ができないために生産効率を挙げることが難しかった。
さらに、交配が不可能な菌類、すなわち、ホモタリックな菌類およびasexual な菌類では、交配型遺伝子の存在を調べることもできず、単離を行うこともできなかった。
さらにまた、菌類の分類や進化の過程の推測などの点に関しても問題が残されていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決すべく、本発明の発明者は鋭意研究を進め、菌類の片方の交配型遺伝子上のDNA結合部位が保存性が高く、塩基配列に一部で類似することを見い出し、これに基づいて本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の第一の態様は、菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅するためのプライマーである。また、上記プライマーは図1に示す塩基配列からなるオリゴマーであることを特徴とする。
【0008】
本発明の第二の態様は、菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅するためのプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、ホモタリックまたは完全世代を形成しない菌類から交配型遺伝子を単離する方法である。また、上記単離方法で使用される前記プライマーが、図1に示す塩基配列からなるオリゴマーであることを特徴とする。
本発明の第三の態様は、菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅するためのプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、前記菌類の片方の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅することによって菌類の交配型を識別する方法である。また、上記識別方法で使用されるプライマーは図1に示す塩基配列からなるオリゴマーであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第四の態様は、菌類の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅するためのプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、前記菌類の片方の交配型遺伝子上に存在するDNA結合部位を増幅する工程と、前記増幅されたDNA結合部位を比較する工程とを有する菌の進化の推測方法である。上記菌の進化の推測方法において使用されるプライマーは、図1に示す塩基配列からなるオリゴマーであることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明において用いられる菌類は、sexualなグループに属する菌類、asexual なグループに属する菌類のいずれをも使用することができる。特に、asexual なグループに属する菌類およびsexualなグループに属する菌類のうち、ホモタリックな菌類を使用することができるという利点を有する。
【0011】
本発明においては、上記菌類の交配型遺伝子上のDNA結合部位を所定の塩基配列からなるDNAオリゴマーを設計、作製し、これをプライマーとして所定のPCR条件の下で増幅する。菌類の片方の交配型遺伝子上に共通して存在するDNA結合部位(HMGボックス)のアミノ酸配列を図2に示す。図2中、Ch MAT2 はCochliobolus heterostrophus の交配型遺伝子であるMAT2を表わし、以下同様に、Ncmt a-1はNeurospora crassa のmt a-1、PaFPR1はPodospora anserinaのmat+(FPR1)、SpmatMc はSchizosaccharomyces pombe のmat-(Mc)、そしてHuSRY はhuman のSRY を表わす。枠を付けた部分は、これら5種類の各交配型遺伝子上のアミノ酸配列の類似性の高い部分を示す。上記プライマーは、完全世代を形成するグループに属する菌類に存在する交配型遺伝子の片方の交配型遺伝子上にあり、上記のようにアミノ酸配列からそれらの塩基配列が明らかにされたHMGボックスの塩基配列を元に作製することができる。Cochliobolus spp.(Loculoascomycetes 綱) あるいはNeurospora crassa(Pyrenomycetes 綱) の交配型遺伝子上にあるHMGボックスの塩基配列(図2)などを、好適に使用することができる。
【0012】
上記プライマーは、HMGボックスの塩基配列を増幅させることができるものであればよく、特に長さは限定されないが、ターゲット遺伝子を特異的に増加させやすいとの理由から18〜30塩基程度であることが好ましい。特に、21〜23塩基程度にすると、上記プライマーの設計に使用した菌類のHMGボックスの塩基配列とある程度共通部分を有する他の菌類のHMGボックスの増幅にも使用できるプライマーを得ることができる。
【0013】
上記プライマーの塩基配列を修飾して、他の菌類のHMGボックスの増幅にも使用できるプライマーとするためには、他の菌類の遺伝子上にあるHMGボックスの塩基配列を以下のようにして推定してこれらを用いる。すなわち、図2から推定される菌類のHMGボックスの共通部分を、上述したC. heterostrophus とN. crassa のHMGボックスのアミノ酸を基本にし、上記プライマーのこの部分に対する塩基配列を仮定する。ついで、各アミノ酸の第三コドンの一般化等により修飾すべき部分を確定し、プライマー全体の塩基配列を決定して、他の菌類のHMGボックスの増幅にも使用できるプライマーを設計することができる。
【0014】
こうしたプライマーは、DNA合成機を用いて常法に従って合成することができる。このようにして得られたプライマーを脱塩し、プライマーとして使用する。
このようにして得たプライマーと、所望の菌類の染色体DNAを鋳型として用いて、所定の条件でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行なう。例えば、10mMのTris-HCl(pH8.3) 、50mMのKCl 、2.5mM のMgCl2 、 0.2 μM のdNTPs 、 2μM のプライマー、0.25μl のmpli Taq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer社)および約20mgの菌類の染色体DNAを含む50μl の混合液を用いて、以下の温度条件で30サイクル程度行う。90℃ 2分、(94℃ 1分,47-55 ℃ 30秒,72℃ 1分)×30〜35サイクル、72℃ 1分。
【0015】
以上のようにして、菌類の交配型遺伝子上に存在するHMGボックスを増幅させることができ、これによって交配型遺伝子の一部をクローンし、塩基配列を決定する。特に、本発明のプライマーを用いると、従来、交配型遺伝子が存在するかどうかを調べることもできず、交配型遺伝子を単離することもできなかった交配が不可能な菌類、すなわち、ホモタリックな菌類あるいはasexual な菌類について、これらの菌類が交配型遺伝子上にDNA結合部位を有するかを調べることが可能となるという利点がある。
【0016】
さらに、これらのDNA結合部位から増幅されたDNA断片に関するデータに基づいて、TAIL-PCR法などの様々な方法を採用することにより、上記交配型遺伝子のさらに長い部分をクローンすると、交配型遺伝子の全長が得られる。ここでTAIL-PCR法とは、Liu ら(Genomics,25:674,1995)が報告した方法で、既知配列情報に従ってデザインした特異プライマーとランダムプライマーを利用して既知配列の外側の所望のDNA断片を得る方法である。
【0017】
すなわち、決定されたHMGボックスの塩基配列に従って上流、下流方向に複数の20〜25塩基の特異プライマーをデザインし、これと14〜16塩基のランダムプライマー(ADプライマー)を用いて、表4の条件で複数回ポリメラーゼ連鎖反応を行うことでHMGボックス外側の遺伝子を上流、下流それぞれ増幅させることができ、より長い遺伝子配列を得ることができる。
所望の菌類の交配型遺伝子から増幅されたDNA断片についてクローンした後、ジデオキシ法、マクサムギルバート法などを用いてこれらのDNA断片の塩基配列を決定する。すなわち、DNA断片をクローンしたベクター上あるいは増幅に用いた特異プライマーにより増幅された断片を電気泳動で分離、あるいはDNAを特異的に切断しながら電気泳動で分離して、塩基配列を決定する。
【0018】
本発明のプライマーを使用すると、ヘテロタリックな菌類の片方の交配型遺伝子上のDNA結合部位が増幅されるので、ここでDNA結合部位が増幅される株と増幅されない株とに分けることができる。したがって、増幅される株とされない株とでは交配型が異なることになり、この相違を利用してこれら菌類の交配型を識別する。特に、交配型の異なる2つの株の交配を行う必要がある場合には、交配型を容易に識別できるので、こうした場合に好適である。
さらに、各種の菌から上記のようにして増幅し、こうして得られたDNA結合部位の塩基配列を比較することにより、菌類の分類、進化の過程を推測する。すなわち、塩基配列やアミノ酸配列の相違の度合を時間軸で計算することで、菌の近縁性や種としての分化時期を数的に導くことにより、この推測を行う。
【0019】
【実施例】
(実施例1)プライマーの調製
(1)プライマーの設計
Cochliobolus spp.(Loculoascomycetes 綱) およびNeurospora crassa(Pyrenomycetes 綱) の交配型遺伝子上には、多くの微生物で保存性の高いDNA結合部位(HMGボックス)が存在する。Cochliobolus spp. のC. heterostrophus の一方の交配型遺伝子上の MAT2 およびN. crassa のそれのmt a-1の交配型遺伝子上にあるHMGボックスの位置を図3に示した。
これらの配列を基に、このDNA結合部位のインナーフラグメントを増幅するために、21-23merの2組のオリゴマーのセット、ChHMG1およびChHMG2、NcHMG1およびNcHMG2をPCRプライマー用に設計した。
【0020】
セット1
ChHMG1 AAGGCNCCNCGYCCNATGAAC
ChHMG2 CTNGGNGTGTAYTTGTARTTNGG
セット2
NcHMG1 CCYCGYCCYCCYAAYGCNTAYAT
NcHMG2 CGNGGRTTRTARCGRTARTNRGG
【0021】
セット1および2において、Nは、A、T、G、Cの混合あるいはイノシンとの混合であることを、Yは、CとTとの混合、RはAとGとの混合であることを示す。上記プライマーの塩基配列の一部をこのように一般化させることにより、菌類に広く応用することが可能となる。
(2)プライマーの合成
上記セット1および2に示すオリゴマーのセットは、常法に従って作製した。このようにして得られたオリゴマーをプライマーとして用いて、下記の条件でPCRを行い、各種の菌のDNA結合部位を増幅した。
【0022】
(実施例2)セット1のプライマーを用いたPCRによる各種の菌のDNA結合部位(HMGボックス)の増幅
(1)使用した菌類
表1に示す、交配型遺伝子未知の病原菌19種を使用した。Cochloboulus spp. 、Mycosphaerella zeae-maydis、Neurospora crassa 、Bipolaris sacchariおよびSetosphaeria rostrata およびPodospora anserinaはCornell 大学のDr.O.C.Yoder、Setosphaeria turcicaはDr.N.Keller 、Pyrenophora teres は、Dr.T.Peever 、Pyrenophora tritici-repentisはDr.D.Kalb 、Alternaria alternataは児玉基一朗博士、Nectria haematococcaはDr.Van Etten、Cryphonectria parasiticaはDr.B.Marra、Gaeumannomyces graminis はDr.G.Bryanより入手した。
【0023】
(2)PCR条件
PCR条件は以下の通りである。
10mMのTris-HCl(pH8.3), 50mM のKCl, 2.5mMのMgCl2 , 0.2 μM のdNTPs, 2μM のセット1のプライマー、0.25μl のAmpli Taq DNA ポリメラーゼ(Perkin-Elmer社)、および約20ngの上記表1に示す菌類の染色体DNAを含む50μl の混合液を使用した。
上記混合液を90℃で2分、(94℃で1分,47−55℃で30秒,72℃で1分)を30〜35サイクル、ついで72℃で1分の条件で増幅させた。
(3)増幅結果
使用した各種の菌のHMGボックスの増幅結果を表1に示す。
【0024】
(実施例3)セット2のプライマーを用いたPCRによる各種の菌のDNA結合部位(HMGボックス)の増幅
(1)使用した菌類
表1に示す、交配型遺伝子未知の病因菌19種を使用した。これらの菌は、実施例2と同様にして入手した。
(2)PCR条件
実施例2と同様の条件で行った。
(3)増幅結果
使用した各種の菌のHMGボックスの増幅結果を、実施例2の結果と共に表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003718755
【0026】
+は増幅されたことを示し、−は増幅されなかったことを示す。
以上の結果より、セット1は Loculoascomyctes に属する菌類(図11)および近縁の菌類、セット2は Pyrenomycetesに属する菌類および近縁の菌類の交配型遺伝子上のHMGボックスを増幅させることが明らかになった。
【0027】
(実施例4)セット1およびセット2のプライマーを用いたときのPCRのまとめ
セット1およびセット2のプライマーを用いたときにHMGボックスが増幅される各菌の交配型、交配性状、およびそれらの塩基配列の増幅が既に報告されているかどうかを表2に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0003718755
【0029】
以上より、セット1のChHMG1プライマーにより、Loculoascomycetes 綱に属するSetosphaeria turcicaなどのヘテロタリックな菌の片方の交配型株、Mycosphaerlla zede-maydis などのホモタリックな菌の全株、asexual なAlternaria alternataの一部の株から、各々約270bp のDNA断片が増幅された。また、セット2のNcHMGプライマーにより、Pyrenomycetes 綱に属すNectria haematococca、Gaumannomyces graminisなどから、各々約270bp のDNA断片が増幅されたことが明らかになった。
各DNA結合部位をクローニング・シークエンシングし、塩基配列を決定した。
【0030】
(実施例5)HMGボックスのクローニングと塩基配列の決定
(1)クローニング・シークエンシング
HMGボックスのクローニングは、常法に従って行った。すなわち、PCRで増幅させた断片をインビトロゲン社の販売するpCRIIベクターに挿入した後、このベクターでコンピタントセルを形質転換し、ブルースクリプト選択とコロニーハイブリダイゼーションによりクローニングを行い、図4に示すような菌類から各々のHMGボックスを増幅した。
【0031】
(2)塩基配列の決定
得られたHMGボックスの塩基配列をpCRIIベクター上のプライマーM13(-20)、M13(-40)、T7、M13Reverse、Sp6などを用い、ABIシークエンサーを用いて決定した。結果を図4に示す。
図4中の略号は下記表3の通りである。
【0032】
【表3】
Figure 0003718755
【0033】
この増幅されたDNA断片の塩基配列は、既報のHMGボックスのものと相同性が高かった。上記の菌について得られたDNA断片の塩基配列に基づいて、推定アミノ酸配列を決定し、図5に示した。これらの菌のあいだにおけるこのDNA断片のアミノ酸配列の相同性も高いことが示された。
【0034】
(3)遺伝的解析
S. turcicaを用いて、以下のようにして遺伝的解析を行った。すなわち、2つの交配型MAT1、MAT2の親株NK22とNK72を交配して得た9株の子孫について、親株と戻し交配して交配型を調べるとともに、各々の染色体DNAを用いて、ChHMG1とChHMG2プライマーによりPCRを行った結果を図8に、また、制限酵素消化した染色体DNAを0.6 %アガロースゲルで分離し、ニトランプラス膜へ移し、クローンした断片とハイブリダイズさせたサザンブロットの結果を図9に示す。
【0035】
図8に示したように、PCRにより、12R 8、12R13 、12R16 、12R17 および、12R20 でNK72と同じバンドが検出された。
交配により、各子孫の交配型は、12R4:MAT1 、12R6:MAT1 、12R7:MAT2 、12R8:MAT2 、12R13:MAT2、12R16:MAT2、12R17:MAT2、12R20:MAT1、12R35:MAT1であることが判明した。
交配型と図8および図9の結果の断片の存在が同調するため、得られたDNA断片が交配型遺伝子上にあることが確認された。
【0036】
(4)TAIL-PCRによる遺伝子の取得
実際にホモタリックな菌類であるMycosphaerella zeae-maydisについて、交配型遺伝子を調べた。この株の菌糸を凍結乾燥し、フェノール法でDNAを抽出し、PEG沈殿法により染色体DNAを精製した。
ChHMG1とChHMG2とをプライマーとして用いたPCRによりHMGボックスを増幅し、得られた塩基配列データに基づいて、M. zede-maydisからTAIL-PCR法で、交配型遺伝子により、長い部分をクローンした。TAIL-PCRの条件は、表4に示した通りである。
【0037】
【表4】
Figure 0003718755
【0038】
以上のようにしてTAIL-PCRをおこなったところ、HMGボックス周囲の上流2.5 kb、下流1.5 kbが得られ(図7)、さらに上流にCochliobolus heterostrophus のMAT1相同部位が検出された。
また実際にTAIL-PCRによりPyrenophria teres +ve 株よりHMGボックス周囲の1721bpの配列を得た(図10)。この断片はCochliobolus heterostrophus MAT2と一部相同で、交配型遺伝子と考えられた。
以上、新規な交配型遺伝子取得法の可能性を示した。
【0039】
(実施例6)菌類の識別
上記のようにして得た菌のHMGボックスの塩基配列を比較して、下記表5に示すように識別を行った。
【0040】
【表5】
Figure 0003718755
【0041】
表中、(8/8)などの記載は、何株中何株が陽性であったかを示す。
asexual 、ホモタリックなものでも、HMGボックスを含む交配型遺伝子を持つことが判明した。
【0042】
(実施例7)菌類の進化の推測
実施例1〜5のようにして得た塩基配列をPAM250 residue weight table によるクラスター法で解析した結果の例を図12に示す。実施例2〜5で使用した菌類の進化の過程は図12に示したように推測された。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、交配型遺伝子未知の菌類の片方交配型遺伝子上のDNAバインディングドメインをクローニング、シークエンシングすることが可能であった。これを元に、ウオーキングやTAIL−PCRなどでその交配型遺伝子の全長及び周囲を容易にクローニング、シークエンシングすることができる。また、その情報を元にもう片方の交配型遺伝子全長をクローニング、シークエンシングすることもできる。
さらに、本発明のプライマーを用いると、これまで菌類の交配型遺伝子を得るのに、デイスラプション等で非常に時間がかかっていたが、短時間のうちに交配型遺伝子を得ることができる。
【0044】
また、菌類の交配型の検定、識別を行うことができる。ヘテロタリックな菌類の片方の交配型遺伝子上のDNA結合部位が増幅されるため、増幅される株、増幅されない株で交配型が異なる。したがって、これを利用して種々の菌類の交配型の検定あるいは識別が可能である。
このため、きのこなどの菌類の完全世代を交配するさいに必要な交配型の異なる2つの株を確実に選ぶことができ、交配が容易になり、生産効率も上昇する。したがって、本発明は、ヘテロタリックな菌の交配型はいにおいて、その交配型の識別に有用である。さらに、良好な形質を持った株の育種にも必須とさる交配のための重要な情報は重要を得ることができる。
【0045】
さらに、本発明の単離方法を使用することにより、従来、交配型遺伝子の存在を調べることもできず、また、それらの単離も不可能であった交配が不可能な菌類(ホモタリックな菌およびasexual な菌)での交配型遺伝子の存在を調べること、およびそれら交配型遺伝子の単離が可能となる。加えて、そのような情報を用いて、交配型遺伝子の全長を取得することもでき、菌類の交配能、homothallicity、asexualityのメカニズム解析に利用できる。
完全世代を作れない菌に完全世代を作らせることも可能になり、従来培地上で菌糸状しかとり得なかった菌にきのこ等の生産も可能となる。
さらにまた、増幅されるDNA結合部位の塩基配列を比較することで、菌類の分類、進化過程を推測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプライマーの2つのセットの塩基配列を示す図である。
【図2】配列が既知となっている5種の菌類のHMGボックスのアミノ酸配列を示す図である。
【図3】 C. heterostrophus のMAT2およびN. Crassa のmt a-1の遺伝子上におけるHMGボックスの位置、および各々のプライマーの位置と方向を示す図である。
【図4】実施例4で使用した22種類の菌のHMGボックスの塩基配列のアライメントを示す図である。
【図5】実施例4で使用した22種類の菌のHMGボックスのアミノ酸配列のアライメントを示す図である。
【図6】HMGボックス(277bp )の塩基配列をベースに周囲の遺伝子をTAIL-PCRにより取得する方法を示したものであり、得られた産物(≡)が正しいものかどうかを211bp の増幅で確認できることを示した図である。
【図7】ホモタリックな菌であるMycosphaerella zeae-maydisのTAIL-PCRによる交配型遺伝子のクローニングを示す図である。
【図8】 Setosphaeria turcica の親株と交配した子孫とにおける交配型遺伝子の保有をChHMG1とChHMG2プライマーを用いたPCRの結果を示す電気泳動写真である。
【図9】 Setosphaeria turcica の親株と交配した子孫とにおけるgDNAのサザンブロットの結果を示す電気泳動写真である。
【図10】 P. teres +veのスプライスされた仮のオープンリーディングフレームの転写を示す図である。
【図11】本文中で用いたLoculoascomycetes およびPyrenomycetes の分類(The Fungi 1973に従う)の分類学的位置を示す図である。
【図12】HMGボックスの塩基配列から推定した進化の系統樹を示す図である。

Claims (13)

  1. 以下の(a)〜(d)からなる群より選ばれるいずれか1つの、菌類の交配型遺伝子上のDNA結合部位配列を増幅するためのプライマー。
    (a) 5'-AAGGCNCCNCG(C/T)CCNATGAAC-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるChHMG1プライマー、
    (b) 5'-CTNGGNGTGTA(C/T)TTGTAATTNGG-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるChHMG2プライマー、
    (c) 5'-CC(C/T)CG(C/T)CC(C/T)CC(C/T)AA(C/T)GCNTA(C/T)AT-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるNcHMG1プライマー、
    (d) 5'-CGNGG(A/G)TT(A/G)TA(A/G)CG(A/G)TA(A/G)TN(A/G)GG-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるNcHMG2プライマー。
  2. 以下の(a)と(b)、または(c)と(d)の組み合わせからなる、菌類の交配型遺伝子上のDNA結合部位配列を増幅するためのプライマーセット。
    (a) 5'-AAGGCNCCNCG(C/T)CCNATGAAC-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるChHMG1プライマー、
    (b) 5'-CTNGGNGTGTA(C/T)TTGTAATTNGG-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるChHMG2プライマー、
    (c) 5'-CC(C/T)CG(C/T)CC(C/T)CC(C/T)AA(C/T)GCNTA(C/T)AT-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるNcHMG1プライマー、
    (d) 5'-CGNGG(A/G)TT(A/G)TA(A/G)CG(A/G)TA(A/G)TN(A/G)GG-3'の塩基配列からなるオリゴマーであるNcHMG2プライマー。
  3. 請求項2に記載のプライマーセットを用いて、菌類の各菌株由来のDNAを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応による増幅を行い、その結果によって交配型遺伝子上のDNA結合部位配列が増幅される菌株と増幅されない菌株とに分類し、その分類に基づいて各菌株の交配型を識別することを特徴とする、菌株の交配型を識別する方法。
  4. 前記菌株がヘテロタリックな菌類である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記プライマーセットが請求項2に記載の(a)と(b)の組み合わせからなるプライマーセットであり、かつ前記菌類がLoculoascomyctesに属する菌類である、請求項3または4に記載の方法。
  6. 前記プライマーセットが請求項2に記載の(a)と(b)の組み合わせからなるプライマーセットであり、かつ前記菌類がCochloboulus、Bipolaris、Setosphaeria、Pyrenophora、MycosphaerellaおよびAlternariaのうちのいずれか1つに属する菌類である、請求項3または4に記載の方法。
  7. 前記プライマーセットが請求項2に記載の(c)と(d)の組み合わせからなるプライマーセットであり、かつ前記菌類がPyrenomycetesに属する菌類である、請求項3または4に記載の方法。
  8. 前記プライマーセットが請求項2に記載の(c)と(d)の組み合わせからなるプライマーセットであり、かつ前記菌類がNeurospora、Podospora、Cryphonectria、NectriaおよびGaeumannomycesのうちのいずれか1つに属する菌類である、請求項3または4に記載の方法。
  9. 請求項2に記載のプライマーセットを用いて、菌類由来のDNAを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応による増幅を行うことを特徴とする、菌類の交配型遺伝子を単離する方法。
  10. 請求項2に記載のプライマーセットを用いて、菌類由来のDNAを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応による増幅を行い、増幅された交配型遺伝子上のDNA結合部位配列の塩基配列を比較することを特徴とする、菌類の進化を推測する方法。
  11. 前記菌類がヘテロタリックな菌類である、請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記菌類がホモタリックな菌類又は完全世代を形成しない菌類である、請求項9または10に記載の方法。
  13. 前記菌類がCochloboulus、Bipolaris、Setosphaeria、Pyrenophora、Mycosphaerella、Alternaria、Neurospora、Podospora、Cryphonectria、NectriaおよびGaeumannomycesからなる群から選択される少なくとも1つに属する菌類である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
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