JPH1072639A - 被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材 - Google Patents

被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材

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JPH1072639A
JPH1072639A JP16301497A JP16301497A JPH1072639A JP H1072639 A JPH1072639 A JP H1072639A JP 16301497 A JP16301497 A JP 16301497A JP 16301497 A JP16301497 A JP 16301497A JP H1072639 A JPH1072639 A JP H1072639A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Pb快削鋼と同等以上の被削性を有し、切削後
の表面粗度も小さく、冷間鍛造性および焼入れ性にも優
れた機械構造用鋼材を提供する。 【解決手段】 mass%で、B:0.0003〜0.0150%、Al:
0.005 〜0.1 %、N:0.0015〜0.0150%、Si:0.5 〜2.
0 %、Mn:0.1 〜2.0 %を含有し、必要に応じ、Ni、C
u、Co、Mo等を添加し、P、S、Oを低く制限して、さ
らに含有するCのうち10〜80%を黒鉛、残りを主として
セメンタイトとすることにより、Pb快削鋼と同等の被削
性を有し、切削後の表面粗度も小さく、しかも冷間鍛造
性および焼入れ性にも優れた機械構造用鋼材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、産業機械や自動車
等の機械部品に用いられて好適な機械構造用鋼材に関
し、特に被削性、冷間鍛造性および焼入れ性を兼ね備え
た機械構造用鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】産業機械や自動車等に用いられる機械部
品は、鋼材を切削または冷間鍛造あるいはそれらの併用
により所定の形状に加工され、その後、焼入れ焼戻し処
理によって、機械部品としての要求特性を確保するとい
う方法により製造される。このような機械部品に用いら
れる鋼材は、まず、被削性および冷間鍛造性が優れてい
ることが要求される。機械構造用鋼の被削性を改善する
手段としては、鋼中にPb、S、Bi、P等の快削性元素を
単独または複合添加する方法が一般的である。特にPbは
被削性を改善する作用が極めて強いために多用されてい
る。しかし一方では、Pbは人体に有害な元素でもあり、
鋼材の製造工程や機械部品の加工工程で大がかりな排気
設備を必要とし、また鋼材のリサイクルの点からも問題
がある。一方、鋼材の冷間鍛造性の改善のためには、P
b、S、Te、Bi、P等の快削性元素は延性、靱性を劣化
させるため、逆に減少させることが望ましい。
【0003】このようなことから、機械構造用鋼の被削
性と冷間鍛造性を同時に向上させるために、鋼の組織を
フェライト+黒鉛の2相組織とすることが考えられてい
る。例えば特開昭51−57621 号公報には、Siを 1.9〜3.
0 %と高め、微細黒鉛を0.20〜0.44%含有させた冷間鍛
造性に優れた快削鋼が提示されている。また、特開平3
−140411号公報には、調質後の冷間加工性を向上させる
方法が開示されている。この方法は、0.32〜0.54%C
で、Mn、Si、Al含有量を調整した熱延または冷延した鋼
材に、最終冷間加工、焼入れ焼戻しを行う前に 620〜68
0 ℃で15hr以上の焼鈍を施し、ほぼ完全に黒鉛化すると
いうものである。
【0004】しかしながら、フェライト+黒鉛の2相の
組織からなる鋼は、極めて軟質の2相の組み合わせであ
るため、冷間鍛造時の変形抵抗が低いなどの優れた特性
を持つ反面、切削時には軟質であるが故に表面にむしれ
を生じやすく、切削後の表面状況は必ずしも優れている
とは言えなかった。また、黒鉛はセメンタイトよりも極
めて安定な析出物であり、黒鉛となったCの鋼中への固
溶はオーステナイト域まで加熱されても非常に困難とな
る。そのため、焼入れに際し、組織がフェライト+黒鉛
の場合には、フェライト+パーライト組織、あるいはフ
ェライト+球状セメンタイト組織の場合にくらべ、充分
な強度が得られない場合があった。特に急熱、短時間保
持となる高周波焼入れの場合に、フェライト+黒鉛組織
で、焼入れ後の強度不足が顕著であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した問
題を有利に解決し、従来のPb添加快削鋼と同等以上の被
削性を有し、切削後の表面粗度も小さく、しかも冷間鍛
造性ならびに焼入れ性にも優れた機械構造用鋼材を提供
することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の検
討を行った結果、黒鉛化を迅進する成分組成とし、さら
に組織をフェライトと添加C量の10〜80%の黒鉛と残り
のC量をセメンタイトとするフェライト+黒鉛+セメン
タイト組織とすることにより、機械構造用鋼材の冷間鍛
造性、被削性、切削後の表面粗度および焼入れ性が向上
するという知見を得た。
【0007】鋼中にパーライト等の層状のセメンタイト
やMnS のような介在物が存在すると、冷間加工時にこれ
らの介在物と母相との界面からボイドが発生し、歪み量
の増加にともなってこれらが連結拡大して早期に破壊に
至る。しかし、鋼中に黒鉛が存在すれば、冷間鍛造時に
黒鉛が母相の変形に追従し、黒鉛−母相界面からのボイ
ドの発生が抑制されて、破壊に至るまでの歪み量が大き
くなり、冷間鍛造性が向上する。また、鋼中に黒鉛が存
在すれば、その黒鉛が切削時に潤滑剤として作用し、工
具の温度上昇を抑制するため、被削性が向上する。
【0008】しかし、黒鉛となったCの鋼中への固溶は
困難となるため、黒鉛のみでは焼入れ性、とくに高周波
焼入れ性が劣る。そこで本発明では、組織中に黒鉛に加
えてセメンタイトを残留させる。セメンタイトを鋼中に
残留させることで、同一C量で比較した場合の鋼中の黒
鉛粒径は微細となり、その結果黒鉛粒自体のマトリック
ス中への固溶も容易となり、この点からも焼入れ性は向
上する。
【0009】また、鋼中に一部セメンタイトを残留させ
ることで、全体の硬さを上昇させ、切削後の表面粗度も
改善される。本発明は上記した考えをもとに構成された
ものである。すなわち本発明は、第1発明として、mass
%で、C:0.1 〜1.5 %、Si:0.5〜2.0 %、Mn:0.1
〜2.0 %、Al:0.005 〜0.1 %、N:0.0015〜0.0150
%、B:0.0003〜0.0150%、P:0.020 %以下、S:0.
035 %以下、O:0.0030%以下を含み、残部がFeおよび
不可避的不純物からなり、含有するCが主として黒鉛と
セメンタイトとなり、かつ、{(黒鉛量)/(含有する
Cがすべて黒鉛化したときの黒鉛量)}×100 (%)で
定義される黒鉛化率が10〜80%であることを特徴とする
被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用
鋼材である。
【0010】また第2発明は、第1発明に加えて、mass
%で、Ni:3.0 %以下、Cu:3.0 %以下、Co:3.0 %以
下のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴と
する被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構
造用鋼材である。また第3発明は、第1発明または第2
発明に加えて、mass%で、V:0.5 %以下、Nb:0.05%
以下のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴
とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械
構造用鋼材である。
【0011】また第4発明は、第1発明または第2発明
または第3発明に加えて、mass%で、Mo:1.0 %以下を
含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼
入れ性に優れた機械構造用鋼材である。また第5発明
は、第1発明または第2発明または第3発明または第4
発明に加えて、mass%で、Ti:0.05%以下、Zr:0.2 %
以下、REM :0.2 %以下のうちから選ばれた1種以上を
含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼
入れ性に優れた機械構造用鋼材である。
【0012】また、第6発明として、上記第1〜第5発
明のいずれかに記載された鋼材を、所定の形状に加工し
たのち、高周波焼入れ焼戻しを施し所定の強度を付与す
ることを特徴とする機械構造部品の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明における、鋼材の成
分組成の限定理由について説明する。 C:0.1 〜1.5 % Cは、黒鉛相を形成するために必須の成分である。 0.1
%未満では被削性を確保する上で必要な黒鉛相を確保す
ることが困難である。また、 1.5%を超えて添加すると
熱間圧延時の変形抵抗が上昇し、変形能が低下するた
め、熱間圧延材に割れ、きずの発生が増大する。このた
め、Cは 0.1〜1.5 %の範囲とした。
【0014】Si:0.5 〜2.0 % Siは、セメンタイト中に固溶せず、セメンタイトを不安
定化することにより黒鉛化を促進する元素であるため、
積極的に添加するが、 0.5%未満ではその効果が認めら
れない。しかし、 2.0%を超えると、強度が高くなりす
ぎ延性が劣化する。このため、Siは0.5 〜2.0 %の範囲
とした。さらに好ましい範囲は、黒鉛化促進の観点から
0.7〜1.8 %である。
【0015】Mn:0.1 〜2.0 % Mnは鋼の脱酸剤として有効であるばかりでなく、焼入れ
性にも有用な元素であるので積極的に添加するが、一方
で、セメンタイト中に固溶し黒鉛化を阻害する。 0.1%
未満の添加では脱酸に効果がなく、また、 2.0%を超え
て添加すると黒鉛化を阻害する。このため、Mnは0.1 〜
2.0 %の範囲とした。なお好ましい範囲は、黒鉛化促進
の観点から 0.1〜1.5 %である。
【0016】N:0.0015〜0.0150% Nは、Al、Bと化合してAlN 、BNを形成し、黒鉛の結晶
化の核となる。AlN 、BNの微細分散により、黒鉛化を促
進するとともに黒鉛粒を微細化する。しかし0.0015%未
満の添加では、AlN 、BNが十分に形成されず、一方、0.
0150%を超えて添加すると連続鋳造時に鋳片の割れを促
進するので、Nは0.0015〜0.0150%の範囲とした。
【0017】B:0.0003〜0.0150% Bは、鋼中のNと化合してBNを形成し、これが黒鉛の結
晶化の核として作用し、黒鉛化を促進するとともに黒鉛
粒を微細化するため、本発明において重要な成分であ
る。また、Bは鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の強度を
確保する上でも有用な元素である。0.0003%未満の添加
では、黒鉛化および焼入れ性向上への効果が小さい。し
かし、0.0150%を超えて添加するとBがセメンタイト中
に固溶してセメンタイトを安定化し、逆に黒鉛化を阻害
することになる。このため、Bは0.0003〜0.0150%の範
囲とした。なお、黒鉛化と焼入れ性の観点からBの好適
範囲は0.0005〜0.0100%である。
【0018】Al:0.005 〜0.1 % Alは鋼中のNと反応してAlN を形成し、これが黒鉛の核
形成サイトとして作用することにより黒鉛化を促進する
ので積極的に添加する。しかし 0.005%未満の添加では
その作用が小さく、また、 0.1%を超えて添加すると、
鋳造工程においてAl系酸化物が多数形成されるため、Al
は 0.005〜0.1 %の範囲とした。Al系酸化物は、単独で
も疲労破壊の起点となるばかりでなく、硬質なため、切
削時に工具を摩耗させることにより被削性を低下させ
る。このようなことから、Alの含有量は 0.005〜0.1 %
の範囲とした。
【0019】P:0.020 %以下 Pは黒鉛化を阻害するとともに、フェライト相を脆化さ
せ、冷間鍛造性を劣化させる元素である。また、焼入れ
焼戻し時に粒界に偏析し粒界強度を低下させて、疲労亀
裂伝播に対する抵抗を減少させ、疲労強度を低下させる
など、材質に対し悪影響を及ぼす。したがって極力低減
すべきであるが、 0.020%まで許容される。
【0020】S:0.035 %以下 Sは鋼中でMnS を形成し、これが冷間鍛造時の割れ発生
の起点となり、冷間鍛造性、疲労特性を劣化させるので
極力低減すべきであるが、 0.035%まで許容される。ま
た、MnS は黒鉛の結晶化の核として作用し黒鉛化を促進
し、黒鉛化の観点からはSは多い方が良いが、多すぎる
と粗大化し粗大な黒鉛を形成する。このようなことか
ら、Sは好ましくは 0.001〜0.025 %である。
【0021】O:0.0030%以下 Oは酸化物系非金属介在物を形成し、冷間鍛造性、被削
性および疲労強度をともに低下させるので極力低減すべ
きであるが、0.0030%まで許容される。以上本発明にお
ける必須の成分系について説明したが、本発明において
は以下の各元素を必要に応じて用いることができる。以
下にそれらの限定理由を述べる。
【0022】Ni:3.0 %以下、Cu:3.0 %以下、Co:3.
0 %以下のうちから選ばれた1種以上 Ni、Cu、Coはいずれも黒鉛化を促進する元素であり、ま
た、焼入れ性を向上させる作用もあわせ持つので、黒鉛
化を促進し焼入れ性を向上させることが可能となる。し
かし、その添加量が0.1 %未満ではその効果は小さく、
3.0%を超えて添加してもその効果は飽和するので、N
i、Cu、Coはいずれも 3.0%以下、好ましくは 0.1〜3.0
%の範囲とした。
【0023】Mo:1.0 %以下 Moは、焼入れ性を高めると同時にMn、Crといった合金元
素に比較してセメンタイトへの分配が小さい。このため
に、黒鉛化を著しく阻害せずに、鋼材の焼入れ性を高め
ることができる。また、Moを添加した鋼材は焼戻し軟化
抵抗が大きいために、同一焼戻し温度では硬さを向上さ
せることが可能となり、この結果、疲労強度を向上させ
ることができる。また、鋼材の焼入れ性を増加させる作
用が大きく、Moを添加した鋼材では熱間圧延のままの状
態においてベイナイト組織とすることが容易である。ベ
イナイト組織は微細な黒鉛の生成に有利であり、その結
果、焼入れ時の黒鉛の溶解も短時間で完了させることが
できる。Moの添加は、疲労強度を一層向上させる必要が
ある場合に用いるが、 0.1%未満の添加ではその効果が
小さく、 1.0%を超えて添加すると黒鉛化を阻害し、冷
間鍛造性および被削性を低下させる。このようなことか
ら、Moは1.0 %以下、好ましくは0.1 〜1.0%の範囲と
した。また冷間鍛造性、被削性の観点からは 0.1〜0.8
%が好ましい。
【0024】V:0.5 %以下、Nb:0.05%以下のうちか
ら選ばれた1種以上 V、Nbはともに炭化物形成元素で炭窒化物を形成し強度
を上昇させる。しかし、セメンタイト中にはほとんど固
溶しないので、黒鉛化をさほど阻害しない。V、Nbとも
に焼入れ性を向上させる元素でもあるので、疲労強度を
向上させる必要のある場合に用いてもよい。Vの場合に
は、0.05%未満の添加ではこれらの効果は小さく、他
方、 0.5%を超えて添加しても効果が飽和するので、V
の添加は0.5 %以下、好ましくは0.05〜0.5 %の範囲と
する。一方、Nbの場合には、 0.005%未満の添加では上
記の効果が小さく、また、0.05%を超えて添加しても効
果が飽和するので、Nbの添加は0.05%以下、好ましくは
0.005 〜0.05%の範囲とする。
【0025】Ti:0.05%以下、Zr:0.2 %以下、REM :
0.2 %以下のうちから選ばれた1種以上 Ti、Zrはともに炭窒化物を形成し、これらが黒鉛の結晶
化の核となり黒鉛化を促進する。これらの炭窒化物が微
細分散することにより黒鉛粒を微細化するので、黒鉛粒
をさらに微細化する必要のある場合に用いてもよい。ま
た、Ti、Zrは炭窒化物を形成し、焼入れ時の有効Bを増
加させ焼入れ性を向上させる。このような効果を発揮さ
せるためには、Ti、Zrともに 0.005%以上の添加が望ま
しい。他方、Tiを0.05%およびZrを 0.2%を超えて添加
するとBNを形成するためのNが不足し、その結果、黒鉛
粒が粗大化するとともに黒鉛化時間が極めて長くなるの
で、それぞれ0.05%以下、好ましくは 0.005〜0.05%お
よび0.2 %以下、好ましくは 0.005〜0.2 %の添加とす
る。
【0026】REM はSと結合し、(REM)Sを形成する。
これが黒鉛化の核となり、黒鉛化を促進するとともに黒
鉛粒を微細化するので、黒鉛粒の微細化および黒鉛化の
促進が必要な場合に用いてもよい。しかし、0.0005%未
満ではその効果に乏しく、 0.2%を超えて添加しても効
果が飽和するので0.2 %以下、好ましくは0.0005〜0.2
%の範囲の添加とする。
【0027】黒鉛化率:10〜80% 黒鉛化率は、黒鉛化率={(黒鉛量)/(含有するCが
すべて黒鉛化したときの黒鉛量)}×100 (%)で定義
する。黒鉛化率が10%未満の場合には、冷間鍛造時の変
形抵抗が上昇し、また切削時の工具寿命も著しく低下す
る。黒鉛化率が80%を超える場合には、切削後の高周波
焼入れ性が劣化する。そのため黒鉛化率は10〜80%の範
囲とした。
【0028】本発明では、含有するCすべてが黒鉛化す
る必要はなく、一部をセメンタイトとしてあるいはさら
に固溶のままとして存在させる。セメンタイトを残留さ
せることで、黒鉛粒は微細となる。本発明では、鋼中に
一部セメンタイトを残留させることで全体の硬さを上昇
させ、切削後の表面粗度を向上させる。
【0029】また本発明では、黒鉛に加えてセメンタイ
トを残留させることで、焼入れ後とくに高周波焼入れ後
の表面硬さおよび焼入れ深さの向上が可能となる。本発
明鋼の製造方法は通常の方法でよく、特に限定しない。
通常、転炉、電気炉で溶製され、必要に応じてRH脱ガ
ス等、脱ガスや炉外精錬を行ってもよい。溶鋼は、連続
鋳造法あるいは造塊法により凝固される。分塊および/
または熱間圧延により所定の寸法の鋼板、棒鋼、線材等
に圧延される。圧延後、黒鉛化処理を施し製品とする。
黒鉛化処理条件は、 600℃〜Ac1点の温度範囲でN2
囲気中またはH2 等を少量含有した弱還元性雰囲気中で
行うのが好適である。
【0030】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼を、転炉溶製、連続
鋳造によりブルームとし、棒鋼圧延により52mmφ棒鋼と
した。
【0031】
【表1】
【0032】鋼A〜Rは化学組成が本発明の範囲内の鋼
であり、鋼SはB、鋼TはP、鋼UはAl、鋼VはSiが本
発明範囲外の鋼である。また、鋼Wは従来より機械構造
用として用いられているJIS規格のS30C相当鋼、
鋼XはS45C相当鋼に快削性向上元素であるS、Caお
よびPbを添加した快削鋼の例である。なお、S30C相
当の鋼Wは、冷間鍛造性に優れるために冷間鍛造用鋼と
して、また、S45C+S−Ca−Pb快削鋼の鋼Xは、被
削性に優れるために高い被削性の要求される用途に用い
られているものである。
【0033】これらの棒鋼に、 700℃で 100hrまでの黒
鉛化焼鈍処理を施し製品とした。製品について、黒鉛
量および黒鉛粒径の測定、被削性試験、冷間鍛造試
験、高周波焼入れ性試験を実施し、性能を確認した。
また、硬さをビッカース硬さ(10kg荷重)で測定した。
試験方法を下記に示す。 黒鉛量、黒鉛粒径の測定 直棒の1/4 d部から採取した光学顕微鏡用試片につき、
研磨後腐食せず画像解析装置により、断面5箇所、各箇
所につき視野数10として、×400 倍の倍率で黒鉛面積率
を測定しそれらの平均値を黒鉛量とした。黒鉛粒径は10
00〜2000個の黒鉛粒子につき直径を測定しそれらの平均
値を用いた。
【0034】被削性試験 被削性試験は、高速度工具鋼SKH4を用い、52mmφの
試片を切削速度80m/min 、無潤滑の条件により外周旋削
を行い工具が切削不能となるまでの時間を工具寿命とし
て評価した。 冷間鍛造試験 冷間鍛造性は、焼鈍後の素材より15mmφ×22.5mml の円
柱状試験片を作成し、300tプレスを用いて圧縮試験を
行い、試験時の荷重より変形抵抗を算出した。ここで
は、高さ減少率(圧縮率):60%時の変形抵抗を示し
た。また、繰返し数10個とし、試験片側面の割れ発生の
有無を確認し、試験後の試験片の半数に割れの発生する
圧縮率を限界圧縮率として変形能の指標とした。
【0035】焼入れ焼戻し材の引張試験 素材から15mmφ×100mmlの試験片を採取し、900 ℃×30
min 加熱したのち水溶性焼入れ液中に焼入れし、その後
500 ℃×1hr加熱保持後水冷する焼入れ焼戻し処理を行
った。処理後の試験片から平行部8mmφ×36mm lの引張
試験片を作製し、引張試験を実施し、降伏強さ(YS)、
引張強さ(TS)、伸び(EL)絞り(RA)を測定した。
【0036】高周波焼入れ性試験 高周波焼入れ性試験は、素材より30mmφ×100mmlの試験
片を作成し、周波数15kHz 、出力114kW 、試験片移動速
度10mm/sの移動焼入れの条件で高周波焼入れした後、 1
50℃×1hr の焼戻しをして、表面硬さ(HRC )および有
効硬化深さを測定した。
【0037】これらの結果を表2に示す。なお、従来鋼
は黒鉛化しなかった。鋼W(S30C相当鋼)については、
745℃×15hr保持後徐冷の球状化焼なまし処理を、ま
た、鋼Xは被削性のみ圧延ままで評価し、その他の試験
は 745℃×15h保持後徐冷の球状化焼なまし処理を、実
施した後に行った。表2中の黒鉛化後硬さの欄には、N
o.39 (鋼W)については球状化焼なまし後の硬さを、N
o.40 (鋼X)については圧延ままの硬さをそれぞれ示
した。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】表2から、本発明鋼と従来鋼とを比較する
と、冷間鍛造時の変形抵抗および界面圧縮率は従来の冷
間鍛造鋼である鋼W(S30C)よりも優れている。また、
被削性についても従来の鋼X(S45C+S−Ca−Pb快削
鋼)よりも優れている。また、黒鉛化率が本発明の範囲
よりも低い場合(No.1,No.4)は、冷間鍛造時の変形抵
抗が高く、切削時の工具寿命も本発明鋼よりも低い。逆
に黒鉛化率が本発明の範囲よりも高いもの(No.3,No.
8)は、切削後の表面粗度が粗く、焼入れ後の特性およ
び高周波焼入れ性が本発明例よりも劣化している。ま
た、黒鉛化に要する時間も本発明の範囲よりも長い。し
かし、冷間鍛造時の変形抵抗および切削時の工具寿命に
関してはむしろ本発明例よりも優れており、切削後の表
面粗度および焼入れ後の特性等が必要とされない用途に
おいては、黒鉛化率の高い鋼の使用も可能である。
【0041】Bが本発明の範囲外にある鋼S(No.35 )
は、同程度のC量の鋼B(No.6)に比較して、同一の黒
鉛化率に達するまでに要する黒鉛化処理時間は約10倍も
長くかかっている。また、PおよびAlが本発明の範囲外
である鋼T(No.36 )および鋼U(No.37 )の場合につ
いても、鋼B(No.6)に比較して焼鈍時間は約3〜4倍
長くかかっている。また、Siが本発明の範囲外である鋼
V(No.38 )は、前述の条件にて黒鉛化処理を実施して
も黒鉛は生じなかった。
【0042】本発明ではCaは添加しないが、疲労強度が
要求されない場合には、Caの添加は黒鉛化の促進および
被削性の改善に対して有効である。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、Pbを用いるまでもなく
従来のPb快削鋼と同程度あるいはそれ以上の切削時の工
具寿命および切削後の表面粗度を有し、かつ冷間鍛造性
および焼入れ後の特性にも優れた鋼材を提供することが
可能となり、機械部品の製造に資するところが大であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/16 C22C 38/16

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で、 C:0.1 〜1.5 %、 Si:0.5 〜2.0 %、 Mn:0.1 〜2.0 %、 Al:0.005 〜0.1 %、 N:0.0015〜0.0150%、 B:0.0003〜0.0150%、 P:0.020 %以下、 S:0.035 %以下、 O:0.0030%以下 を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、含有
    するCが主として黒鉛とセメンタイトとなり、かつ下記
    に定義する黒鉛化率が10〜80%であることを特徴とする
    被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用
    鋼材。 記 黒鉛化率(%)={(黒鉛量)/(含有するCがすべて
    黒鉛化したときの黒鉛量)}×100
  2. 【請求項2】 請求項1に加えて、mass%で、 Ni:3.0 %以下、 Cu:3.0 %以下、 Co:3.0 %以下 のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とす
    る被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造
    用鋼材。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に加えて、mass%で、 V:0.5 %以下、 Nb:0.05%以下 のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とす
    る被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造
    用鋼材。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3に加えて、mass%
    で、 Mo:1.0 %以下 を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および
    焼入れ性に優れた機械構造用鋼材。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3または4に加えて、ma
    ss%で、 Ti:0.05%以下、 Zr:0.2 %以下、 REM :0.2 %以下 のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とす
    る被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造
    用鋼材。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載の鋼
    材を所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ焼戻しを
    施し所定の強度を付与することを特徴とする機械構造部
    品の製造方法。
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