JPH1058020A - 連続圧延機のロールギャップ設定方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 オペレータの手介入を可能な限り減少させる
ようにした、連続圧延機のロールギャップ設定方法を提
供すること。 【解決手段】 連続圧延機の各スタンドのロールギャッ
プを設定する方法において、相隣接するスタンド間にお
けるロールギャップ差を、目標ロールギャップ差として
予め定め、各スタンドのロールギャップを設定する際、
前記目標ロールギャップ差が確保できるように、各スタ
ンドのロールギャップを設定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、連続圧延機のロー
ルギャップ設定方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に連続圧延機によって熱間の帯鋼を
加工する際には、各帯鋼の寸法、形状、強度などの与え
られた仕様を満たすように、合理的なロールギャップ、
圧延速度等の操業設定値を予め決定する必要がある。従
来よりこれらのセットアップは、周知の圧延理論をベー
スにした圧延モデルに基づいて計算機により自動設定さ
れてきた。

【０００３】しかし、前記計算機により自動設定された
設定値をそのまま用いて圧延したのでは、所定の精度の
製品を得ることができず、オペレータが何らかの修正を
加えて圧延を行うのが現状であった。しかし、自動制御
圧延における前記オペレータの手介入操作は、極めて高
度な熟練を要し、瞬時の判断が求められ、また個人差が
あり、安定した操業、安定した精度を確保することが困
難であった。

【０００４】そこで従来より、前記オペレータの手介入
をできるだけ少なくするような自動修正方法が各種提案
されている。例えば、特公昭５０−２９７０８号公報に
記載のものは、計算された圧延荷重と標準圧延荷重との
偏差より、出側板厚を変更するようにしている。また、
特開平３−９９７１０号公報にに記載のものは、圧延荷
重により構成された評価関数を最小にするように最適パ
ススケジュールを決定するものであった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、各種の従来技
術を駆使しても、オペレータの手介入をゼロにすること
は困難であった。その理由は、パススケジュールの決定
が理論的な数式だけでは決まらない曖昧な要素を多く含
んでおり、それら曖昧な要素の全てを取り込んだ予測式
や推論を構築することは不可能に近く、結局、最終的に
は、オペレータの勘に頼らざるを得ないからである。

【０００６】しかしながら、熟練者の減少や操業のコス
トダウンの要請等により、オペレータの手介入作業の軽
減が更に望まれているところである。そこで、本発明
は、このような現状の下で、オペレータの手介入を可能
な限り減少させるようにした、連続圧延機のロールギャ
ップ設定方法を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本願発明者らは、オペレ
ータの手介入を更に減少させるための方策を鋭意研究し
た結果、相隣接するスタンド間のロールギャップ差が、
製品精度に重要な影響を与えていることを知見した。本
発明は、この知見に基づきなされたものであり、その特
徴とするところは、連続圧延機の各スタンドのロールギ
ャップを設定する方法において、相隣接するスタンド間
におけるロールギャップ差（以下、単に「ロールギャッ
プ差」という）を、目標ロールギャップ差として予め定
め、各スタンドのロールギャップを設定する際、前記目
標ロールギャップ差が確保できるように、各スタンドの
ロールギャップを設定する点にある。

【０００８】そして、前記各スタンドのロールギャップ
の設定は、予め与えられたパススケジュール板厚に基づ
き、所定の設定計算を行って、各スタンドのロールギャ
ップを求めるものであり、前記目標ロールギャップ差の
確保は、前記パススケジュール板厚を修正することによ
り行うことができる。前記パススケジュール板厚修正
は、各スタンドのロールギャップを求め、該求めたロー
ルギャップから相隣接するスタンド間のロールギャップ
差を求め、該求めたロールギャップ差と目標ロールギャ
ップ差との差が許容値以上のとき、行うことができる。

【０００９】なお、前記目標ロールギャップ差は、被圧
延材の品種、板幅、板厚、強度毎に定められている。そ
して、前記圧延は熱間の帯鋼の仕上圧延に適用するのが
好ましい。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施
の形態を説明する。図１は、本発明方法を適用する連続
圧延機設備の概略構成図である。同図において、加熱炉
１において所定温度に加熱されたスラブは、粗ミル２に
より粗圧延されてラフバーに成形され、該ラフバーは更
に引続き、仕上ミル３により所定の板幅、板厚の連続し
た帯鋼に圧延されてコイラ４により巻取られて製品とさ
れる。前記仕上ミル３は、第１スタンド（Ｆ１）から第
７スタンド（Ｆ７）までを直列状に配置した連続圧延機
により構成されている。

【００１１】図２に、前記仕上ミル３のセットアップの
フローチャートが示されている。本発明では、パススケ
ジュール板厚と目標ロールギャップ差とが、予め設定さ
れて記憶手段に記憶されている。即ち、過去の実績よ
り、所定製品を圧延するときの各スタンド（Ｆ１〜Ｆ
７）の出側板厚が、実績値として収集されている。この
実績値に基づき、所定板厚寸法の製品を圧延するときの
各スタンドの出側板厚が、板厚テーブルという形でテー
ブル化されて、メモリーに予め記憶されている。

【００１２】同様に、過去の実績より、所定製品を圧延
するときの相隣接するスタンド間のロールギャップ差
が、図３に示すように実績値として収集されている。こ
の実績値に基づき、所定の製品を圧延するときのロール
ギャップ差が、被圧延材の品種、板幅、板厚、強度毎
に、目標ロールギャップ差テーブルという形でテーブル
化されて、メモリーに予め記憶されている。

【００１３】このような前提条件において、先ず、パス
スケジュール板厚が決定される。このパススケジュール
板厚の決定は、前記メモリーに記憶されている板厚テー
ブルの中から、今回圧延しようとする製品仕様に合致す
る所定のものを呼び出すことにより、パススケジュール
板厚、即ち、各スタンドの出側板厚が決定される。同様
に、目標ロールギャップ差が、前記メモリーに記憶され
ている目標ロールギャップ差テーブルの中から、今回圧
延しようとする製品仕様に合致する所定のものを呼び出
すことにより、決定される。

【００１４】次に、このようにして決定されたパススケ
ジュール板厚に基づき、ロールギャップの設定計算が行
われる。この設定計算は、所定の先進率計算、ロール速
度計算、温度予測計算や圧延荷重予測計算により行われ
る。そして、このようにして求めた各スタンドのロール
ギャップより、相隣接するスタンド間のロールギャップ
差を求める。

【００１５】次に、前記求めたロールギャップ差と、前
記決定した目標ロールギャップ差との偏差を求める。次
に、前記偏差が許容値以下か否かを判定する。許容値以
下の場合は、前記設定計算により得られたロールギャッ
プに基づくロールギャップ差は、目標ロールギャップ差
の範囲内にあるので、最適な設定であると判断し、前記
ロールギャップ値を設定値として確定する。

【００１６】前記偏差が許容値を越える場合は、設定計
算により得られたロールギャップを用いたのでは目標ロ
ールギャップ差が確保出来ないので、最適な設定ではな
いと判断し、設定計算のやり直しを行う。この再計算
は、パススケジュール板厚を修正することにより行われ
る。前記板厚修正は、次の式（１）により行われる。

【００１７】

【数１】ｈ＝ｈ’＋α・Δｄｓ ……（１） Δｄｓ＝ｄｓ’−ｄｓ ｈ ：今回計算板厚 ｈ’ ：前回計算板厚 α ：振り分け係数 ｄｓ’：目標ロールギャップ差 ｄｓ ：計算ロールギャップ差 即ち、前記偏差を各スタンドに振り分け計算することに
より各スタンドの出側板厚修正量を求め、この修正量を
前記パススケジュール板厚に加算して、前記パススケジ
ュール板厚を修正し、再度、同じ設定計算を繰り返す。
そして、ロールギャップ差と目標ロールギャップ差との
偏差が許容値以下になるまで、前記修正を繰り返す。

【００１８】尚、前記振り分け係数として行列式を用い
るのが好ましい。即ち、仕上ミルはタンデムミルである
ため、あるスタンドの板厚を変更すると、前後スタンド
のロールギャップが変化してしまう。そこで、板厚とロ
ールギャップの関係を示す式（２）を使って、全スタン
ドについて考慮した行列Ｊを用いる式（３）の行列式と
し、そして、その逆行列式を用いた式（４）により、板
厚を修正するのが好ましい。

【００１９】

【数２】 ΔＳ_i ＝（１／Ｍ_i ）・（∂Ｐ_i ／∂ｈ_i ）・Δｈ_i ……（２） ΔＳ＝ＪΔｈ ……（３） ｈ＝ｈ’＋Ｊ^-1・Δｄｓ ……（４） 但し、 ΔＳ：ロールギャップ変更量 Ｍ：ミル定数 ∂Ｐ／∂ｈ：塑性係数 Δｈ：スタンド出側板厚変化量 ｉ：スタンド番号 Δｄｓ＝ｄｓ’−ｄｓ ｈ ：今回計算板厚 ｈ’ ：前回計算板厚 ｄｓ’：目標ロールギャップ差 ｄｓ ：計算ロールギャップ差

【００２０】

【実施例】ロールギャップ差を一定にする本発明方法
と、パススケジュール板厚を一定にする従来方法とで
は、どの様な差がでるかを、以下の条件でシミュレーシ
ョンを行った。板厚１．２ｍｍ、板幅１２００ｍｍ、鋼
種ＸＨ１８０５Ｋ、粗ミル出側温度１１５０℃として、
仕上ミル出側温度を８００〜８４０℃の間で１０℃間隔
で変化させた。

【００２１】前記シミュレーション結果を、図４、５に
示す。このシミュレーション結果より、ロールギャップ
差を一定にする本発明方法に係わる圧延は、パススケジ
ュール板厚一定にする圧延よりも、前コイルからの板変
形の変化が少ない圧延といえる。即ち、従来の計算方法
では、板厚、板幅、鋼種等の条件が同じ材料を圧延して
いるときに、仕上ミル出側温度が８４０℃から８００℃
に変わるだけで、第１スタンドから第５スタンドにかか
る荷重が均等に変化しているのに対して、第７スタンド
にかかる荷重が大幅にばらついている。即ち、８４０℃
で第７スタンド出側板形状が良好であるとき、８００℃
では耳波になり、逆に、８００℃で良好なときに８４０
℃に変化すると中延びになることを意味している。

【００２２】このように、従来方法では、板形状が悪く
なるため、オペレータが手介入を行い、パススケジュー
ルを修正し、最悪の場合、ミスロールとなり、生産性、
歩留を悪化させていた。本発明方法では、板厚、板幅、
鋼種等の条件が同じ材料を圧延しているときに、仕上ミ
ル出側温度が８４０℃から８００℃に変わっても、第１
スタンドから第７スタンドにかかる荷重が均等に変化し
ているので、８４０℃で第７スタンド出側板形状が良好
なときに、８００℃でも出側板形状が良好になる。逆に
８００℃から８４０℃に変化したときも板形状は良好に
なる。

【００２３】このことから、前後コイルの温度変化のば
らつきが、荷重バランスに大きく影響するため、ロール
ギャップ差を確保して圧延することが望ましいことがわ
かる。

【００２４】

【発明の効果】本発明によれば、ロールギャップの設定
に際して、目標ロールギャップ差を確保できるように自
動設定されるので、オペレータはロールギャップ差を気
にする必要がなくなるので、その分、オペレータの手介
入が減少する。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明方法を適用する連続圧延機の配
置図である。

【図２】図２は、本発明方法のフローチャートである。

【図３】図３は、目標ロールギャップ差の一例を示す図
である。

【図４】図４は、従来の計算方法による荷重バランスを
しめすグラフである。

【図５】図５は、本発明方法による荷重バランスをしめ
すグラフである。

【符号の説明】

３ 仕上ミル（連続圧延機）

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 連続圧延機の各スタンドのロールギャッ
   プを設定する方法において、 相隣接するスタンド間におけるロールギャップ差を、目
   標ロールギャップ差として予め定め、 各スタンドのロールギャップを設定する際、前記目標ロ
   ールギャップ差が確保できるように、各スタンドのロー
   ルギャップを設定することを特徴とする連続圧延機のロ
   ールギャップ設定方法。
2. 【請求項２】 各スタンドのロールギャップの設定は、
   予め与えられたパススケジュール板厚に基づき、所定の
   設定計算を行って、各スタンドのロールギャップを求め
   るものであり、 前記目標ロールギャップ差の確保は、前記パススケジュ
   ール板厚を修正することにより行われることを特徴とす
   る請求項１記載の連続圧延機のロールギャップ設定方
   法。
3. 【請求項３】 各スタンドのロールギャップを求め、該
   求めたロールギャップから相隣接するスタンド間のロー
   ルギャップ差を求め、該求めたロールギャップ差と目標
   ロールギャップ差との差が許容値以上のとき、前記パス
   スケジュール板厚を修正することを特徴とする請求項２
   記載の連続圧延機のロールギャップ設定方法。
4. 【請求項４】 前記目標ロールギャップ差は、被圧延材
   の品種、板幅、板厚、強度毎に定められていることを特
   徴とする請求項１〜３の何れかに記載の連続圧延機のロ
   ールギャップ設定方法。
5. 【請求項５】 圧延は熱間の帯鋼の仕上圧延であること
   を特徴とする請求項１〜４の何れかに記載の連続圧延機
   のロールギャップ設定方法。