JPH0989895A - トランスフェリン−トランスフェリンレセプター・コンプレックス測定試薬および測定方法 - Google Patents
トランスフェリン−トランスフェリンレセプター・コンプレックス測定試薬および測定方法Info
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Abstract
フェリンレセプター・コンプレックス(Tf−TfRコ
ンプレックス)を簡便な操作で測定しうる試薬と、測定
方法を提供することである。 【解決手段】本発明は、TfRに親和性のある物質を固
定した不溶性粒子で構成されるTf−TfRコンプレッ
クス測定試薬、並びにこの試薬を用いたTf−TfRコ
ンプレックスの測定方法である。親和性物質としては、
TfRやTfに対する抗体が有利である。 【効果】本発明は、操作性に優れた粒子凝集反応による
Tf−TfRコンプレックスの測定技術を提供する。本
発明によってTfRの測定範囲が拡大し、試料を希釈す
ること無く広い濃度範囲を測定することができる。測定
範囲の拡大は、特に造血機能の診断マーカーとしてTf
Rを測定する場合に有効である。
Description
フェリンレセプター(以下TfRと省略する)濃度に基
づいて各種疾病の診断に利用するための測定試薬と、こ
の試薬によるTfRの測定方法に関する。TfRは各種
細胞の表層に存在し、鉄輸送蛋白トランスフェリン(以
下Tfと省略する)と結合する役割を担っている。Tf
RとTfの親和性は約10-9と抗原抗体反応に匹敵する
ほど強く、そのうえ一般には血中のTfがTfRの10
3倍も多量に存在することから、血中においてはほとん
どのTfRがTfと結合した型で存在する。血中TfR
濃度は、癌や造血機能等の指標として有用であることが
知られている。
は、癌診断を目的として標識免疫測定法を応用した報告
(特開昭62−6169)があった。この報告で採用さ
れている酵素免疫測定法(以下EIAと省略する)に代
表される標識物質を利用した免疫測定法は、一般的には
感度を上げる場合に用いられる方法である。標識物質と
してしばしば用いられる物としては、125Iのような放
射性同位元素や、ペルオキシダーゼ(以下PODと省略
する)、βガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ
等の酵素が挙げられる。放射性同位元素を標識物質とし
て用いる免疫測定法をRIA法、酵素を標識物質として
用いる免疫測定法をEIA法と呼んでいる。RIA法
は、標識物質として放射性同位元素を用いるために特別
な施設や装置を求められるので簡易であるとは言い難
い。またEIA法は、免疫反応の他に標識物質である酵
素を特定の基質に反応させる酵素反応のステップがある
ため、反応様式や試薬構成が複雑となる。またいずれの
方法においても、不均一系の反応原理を採用する限りは
結合相と遊離相との分離(B/F分離)が要求され、自
動化や迅速化の障害となりやすい。
を上げる方向で発達してきた経緯があるため、検体であ
る体液中に測定対象である物質が測定可能範囲の上限を
越えて多量に存在する場合には検体を希釈するステップ
が必要となる。TfRは血中に比較的高い濃度で存在す
るので、EIA法のような標識法による測定技術ではし
ばしば検体の希釈を要求される。
ーカーとしての用途の他に造血機能のマーカーとなるこ
とも指摘されている(Clin.Chem.41/7,1053-1064;199
5)。造血機能のマーカーとしてTfRを測定するときに
は、癌マーカーとして測定する場合に比べてより高い水
準のTfR値を測定することが多くなる。そのためこれ
までに知られているような高い感度を追求した測定系で
はしばしば測定範囲を越える試料が出現することにな
り、希釈操作が要求される。つまりこれまでに報告され
ているTfRの測定技術の測定濃度域は、実際に要求さ
れる濃度域をカバーできていないのである。したがって
造血機能障害を疑う患者の機能検査に用いることのでき
る簡便なTfR測定技術の提供が望まれている。また標
識法による測定技術においては、高い感度を得やすいよ
うに反応時間を長く取る場合が少なくない。このような
背景から、より簡便な操作で迅速な測定を実現するTf
R測定技術の提供が待たれている。
ついての問題も持っていた。つまり、TfRの精製物を
入手することはできるものの遊離した状態では安定性に
問題が有った。具体的には、精製TfRを放置しておく
と不溶性のアグリゲートもしくはオリゴマーの形成が観
察されるのである。精製TfRがアグリゲートを形成し
ていることはG3000によるゲルろ過のパターンで確
認できる。またアグリゲートを解離させるために界面活
性剤処理すると、反応性が約2倍に上がるケースが有る
ことも確認した。このような不安定な標準物質に基づい
て得られた測定値の信頼性には限界が有る。加えて精製
TfRと血中に存在するTf−TfRコンプレックスと
では同じ抗体に対する反応性に差の出ることがある。発
明者らの知見によれば、血清から精製したTf−TfR
コンプレックスは精製TfRに比べて4倍も高い反応性
を示した。たとえば今までの報告ではTfRとして正常
値が約5000ng/ml、また測定範囲として1000〜
50000ng/mlとある。しかしこれは用いた標準が組
織由来の精製TfRであるためその値の信頼性は低いと
言える。したがってTfRの測定技術を一般に普及させ
るには、測定のための標準物質を安定な状態で流通させ
るための配慮が求められる。そのうえ先に述べたように
高い濃度域の測定を行うには、目的とする濃度域に応じ
た高濃度の標準が求められる。しかし従来はこのような
条件を満足する標準物質は提供されていなかった。
能との関連から、鉄輸送蛋白Tfの受容体である体液中
のTfR濃度を測定することの意義が大きいと考えた。
そしてそのためには、より簡易に測定でき、しかも自動
化しやすい測定系と、より適切な測定濃度域を持つ試薬
が必要である。すなわち本発明は、従来のTfR測定技
術では試料の希釈を要求されるような高濃度域であって
も、低濃度域と同じ条件で測定可能な広い測定レンジを
実現する新しいTfRの測定技術の提供を課題とするも
のである。更には、この新しい測定技術をサポートす
る、安定性と信頼性に優れる新規な標準物質を提供する
ことを課題としている。
親和性物質を固定した不溶性粒子、またはTfR親和性
物質とTf親和性物質とを個別にまたは混合して固定し
た不溶性粒子で構成されるTf−TfRコンプレックス
測定試薬、ならびにこの試薬を用いた測定方法によって
解決される。
なものは、抗TfR抗体や抗Tf−TfRコンプレック
ス抗体などの抗体である。またTf−TfRコンプレッ
クスを測定対象としているので、抗Tf抗体も親和性物
質として挙げることができる。Tfを介してTfRと特
異的に結合すると考えられるためである。親和性物質と
して抗体を用いる場合は、充分抗体価の高い抗体を選び
さえすれば検体となる生体体液中に親和性の点で競合す
るものがなく有利である。抗体としては通常の方法によ
りマウス、ラット、家兎、山羊などを免疫して得たポリ
クローナル抗体を利用できる。もちろん、モノクローナ
ル抗体も使用できることは言うまでもない。TfRに対
する抗体は、これまでにいくつか報告されている。これ
ら公知の抗体は、ポリクローナル抗体であれ、モノクロ
ーナル抗体であれ、不溶性粒子に感作した状態でTfR
と反応して凝集しうる親和性と特異性を備えているもの
であれば本発明に利用することができる。
背景から好ましい抗体として示すことができる。まず凝
集反応の反応原理から考えると、粒子に固定する親和性
物質と被検物質との結合部位の数が多いほうが一般的に
有利である。つまり結合部位が制限されるモノクローナ
ル抗体よりも多数の結合部位を認識するポリクローナル
抗体の方が有利となる。更にTfとコンプレックスを形
成したTfRを測定するために、TfR上のTf結合部
位はTfにカバーされてしまっている。このようなコン
プレックスでは、Tf結合部位を認識する抗体はもはや
結合することができない。これらの理由からポリクロー
ナル抗体が好ましい抗体として挙げられるのである。
免疫原としてのTfRやTfの消費量を少なくしたいと
きには、抗体としてモノクローナル抗体を利用しても良
い。ただしモノクローナル抗体を利用するときには先に
述べたような事情を考慮して、より有利な結合親和性を
持つクローンを選択するべきである。たとえば、TfR
のTf結合部位を認識するような抗体は、Tfによって
結合部位をブロックされてしまうので選択すべきではな
い。したがってモノクローナル抗体の結合部位として、
TfRのTf結合部位以外に存在する抗原決定基、Tf
−TfRコンプレックスに特異的に存在する抗原決定
基、Tfに特異的な抗原決定基等を利用するのが好まし
い。特にTfRのTf結合部位以外に存在する抗原決定
基とTfに特異的な抗原決定基とを認識するモノクロー
ナル抗体の組合せは、血液中でコンプレックスを形成し
ているTfRを確実に測定することができる好ましい組
合せである。これらのモノクローナル抗体を固定した不
溶性粒子を混合するか、あるいはモノクローナル抗体の
混合物を不溶性粒子に固定することにより本発明による
試薬を得ることができる。抗Tfモノクローナル抗体で
構成した本発明による試薬は、遊離のTfにも結合する
ものの架橋構造を構成できないので凝集反応にはつなが
らない。つまりTf−TfRコンプレックスが存在する
時にだけ特異的に凝集を起こす高い精度を備えた試薬と
なることから、モノクローナル抗体の採用が有利となる
態様として示すことができる。またモノクローナル抗体
をポリクローナル抗体に組み合せて用いることも可能で
ある。
る場合、Tf−TfRに比較して血中に多量に存在する
遊離のTfがこのモノクローナル抗体に競合するので十
分な粒子凝集を期待できない場合が予想される。このよ
うな場合には、粒子に固定したものと同じTfに対する
モノクローナル抗体を粒子に固定しない状態で加え、そ
の共存下で反応させると良い。
くことによって補体やリウマチ因子等による非特異反応
の影響を受けにくくすることができる。Fc部位を除去
する方法は、各種蛋白分解酵素を作用させる方法が公知
である。
するα−1アンチトリプシンなどが想定できる。これら
の親和性物質には、各々生体体液中に親和性の点でTf
Rと競合する物質が存在するので、できるだけTfRへ
の親和性の方が大きくなる条件のもとで反応させるのが
好ましい。あるいは競合物質との結合サイトをブロック
する方法も有効である。たとえばα−1アンチトリプシ
ンを利用する時には、トリプシンを結合した粒子を用意
しこれにトリプシンを介してα−1アンチトリプシンを
間接的に結合させると良い。この方法によって、α−1
アンチトリプシンのトリプシン結合サイトはブロックさ
れ、TfRとの結合活性が粒子上に存在する形となる。
物の赤血球、金属ゾル、ラテックス、ゼラチン、あるい
は顔料のような免疫学の分野で常用されているものが考
えられるが、これらに限られるものではない。中でもポ
リスチレン等の合成樹脂製ラテックス粒子は既に広く利
用されているので入手し易く安価であり、動物赤血球よ
りは質的に均一な点で有利である。ポリスチレンラテッ
クスとしては平均粒径0.02−1.0μm、好ましく
は0.04−0.6μmのものを示すことができる。
は、免疫反応に必要なpHを提供する緩衝液に分散剤、
界面活性剤、非特異反応を防ぐ物質、少量の防腐剤等を
添加して用いる。これらの添加物質や濃度の選択は固定
する親和性物質およびその量、不溶性粒子の種類などに
応じて適宜に調整する。たとえばゼラチンやウシ血清ア
ルブミンのような不活性蛋白質は、凝集反応の安定化や
非特異反応の防止に有効である。具体的には親和性物質
として抗体を固定したポリスチレンラテックスを分散さ
せるとき、リン酸緩衝液(以下PBSと省略する)やH
EPESのような中性域を与える緩衝液に、BSAや正
常動物血清等を加える。
ス測定試薬によってTf−TfRコンプレックスを測定
する方法をも提供する。本発明の試薬とTf−TfRコ
ンプレックスとの反応は、凝集程度を観察することで追
跡可能である。凝集反応を観察する方法としては、肉眼
による方法および光学的装置により散乱光または透過光
の量の変化として計測する方法がある。一般的に、肉眼
で観察する方法は、検体を数段階の濃度に希釈しその各
々を観察することによってしか定量的な測定ができな
い。光学的方法においては適切な検量曲線を予めまたは
測定時に作成することにより検体の濃度を数段階取るこ
となく定量的測定ができるので、本発明の具現例として
はより好ましいものである。
Rコンプレックスを標準物質として用いると良い。細胞
から血中に遊離したTfRは組織から抽出したTfRと
は構造が違うことから、精製TfRを標準とする方法で
は反応性の違いのために正確な結果を期待できない可能
性が有る。実際、血中に遊離したTfRは組織に存在す
る完全なTfRに比べてN末端側の100残基のアミノ
酸が欠損している。また血中TfRの大部分がTfとコ
ンプレックスとなっていることから考えて、血中TfR
の値を得るにはTf−TfRコンプレックスとして測定
すべきである。なお血中のTfとコンプレックスを形成
していない遊離のTfRを測定するのであれば、フリー
のTfRを標準として用いる。
濃度範囲の測定を実現する。この特徴によって、本発明
は大部分の血清試料を希釈操作無しで測定するTf−T
fRコンプレックス測定方法を提供する。なおここで言
う希釈操作を必要としない測定とは、低濃度試料と高濃
度試料とを同一の反応条件で測定可能であることを意味
する。つまり、測定可能な濃度範囲が狭い従来の測定方
法においては、高濃度試料の測定にあたっては低濃度試
料とは違う希釈条件が必要であった。一方本発明では、
たとえ高濃度試料であっても低濃度試料と同じ条件で測
定が可能となる。
プレックスの測定値は、TfR値に換算することも可能
である。TfRとTfとは1:1で結合するので両者の
モル比は1:1となる。血中のTfRの大部分がTfと
結合した状態で存在していることから、Tf−TfRコ
ンプレックスの測定値に占めるTfRの蛋白量の比をか
ければTfR値となる。この値は実施例で示すように4
7%であり、本発明による測定値に対して47%をかけれ
ばTfR値に換算できるということである。
溶性粒子で構成されるTf−TfRコンプレックス測定
試薬によるTf−TfRコンプレックスの測定に有用な
標準物質をも提案する。本発明が提供する標準物質と
は、Tf−TfRコンプレックスを含むTf−TfRコ
ンプレックス測定用標準物質である。Tf−TfRコン
プレックスは、TfR高値の血清を原料として精製する
ことができる。血中のTf−TfRコンプレックスを測
定するのであれば、試薬との反応性を共通とするために
も標準物質も血中から精製したものを用いるのが有利で
ある。血清からTf−TfRコンプレックスを精製する
には、血清の硫安分画、陰イオン交換クロマトグラフィ
ー、免疫吸着クロマトグラフィー等の精製ステップによ
り容易に行うことができる。こうして精製したTf−T
fRコンプレックスは、適当な緩衝液に希釈するか、あ
るいはTfRフリーとした血清に添加して濃度を検定し
標準物質とすることができる。本発明の標準物質は、造
血機能の診断をも可能とする広い濃度域にわたって標準
物質として利用できるよう14000〜70000ng/m
l程度の高い濃度を備えたものが有用である。
溶性粒子は、Tf−TfRコンプレックスと結合してそ
の分析を可能とする。本発明は、従来TfRの測定に利
用されていた高感度を実現するための測定技術に換え
て、より簡便な操作で実施可能な粒子凝集反応を応用し
た点において新規である。粒子凝集反応の応用によっ
て、試料を希釈することなく低濃度域の測定と同じ条件
のもとで、高い濃度までを十分な精度で測定することが
可能となる。更に均一系反応である粒子凝集反応では、
標識による測定で要求されるB/F分離が不要となり自
動化が容易である。更に迅速化にも貢献するものであ
る。
TfRコンプレックスとしてとらえ、これを測定対象と
しうる広い濃度域をカバーする測定技術をサポートする
ものである。従来用いられていたTfRを基礎とする標
準では血中に存在するTf−TfRコンプレックスとは
異なる物質を標準としていたことになる。本発明の標準
物質は、従来の標準ではカバーすることが困難な高い濃
度域までを保証すると同時に、精製TfRの安定性の問
題を解決するものである。本発明によるTf−TfRコ
ンプレックス測定技術によれば広い濃度範囲のTfRを
測定することが可能である。そのため従来のような濃度
既知の血清を適当に希釈して標準とする方法では、測定
可能範囲の上限まで完全に測定値を保証することができ
ない。TfR含有血清の他、精製TfRを希釈して標準
とする方法も考えられる。しかし本発明者らの知見によ
れば、公知の方法でたとえば胎盤等から精製したTfR
の測定値は血清のTfR測定値と必ずしも一致しないの
である。この理由の一つには先に述べたような構造的な
違いも挙げられる。つまり、公知の精製TfRでは信頼
できる標準物質とすることができないのである。このよ
うな背景から、本発明によって新たに提案された測定技
術をサポートする新規な標準物質が必要となるのであ
る。
によるTf−TfRコンプレックスの測定を可能とす
る。本発明によってTfRの測定範囲が拡大し、試料を
希釈すること無く広い濃度範囲を測定することができ
る。測定範囲の拡大は、特に造血機能の診断マーカーと
してTf−TfRコンプレックスを測定する場合に有効
である。更に本発明によれば、標識技術を利用した高感
度測定法に比べて容易に迅速化、自動化を実現すること
ができる。また本発明は、新たに提案された測定技術の
広い濃度範囲をカバーする新規な標準物質をも提供す
る。以下に本発明の実施例を示す。
定値の信頼性を高める。まず従来の測定技術ではカバー
できなかった高濃度域の標準を提供しうる点で信頼性の
向上をもたらず。更に、Tf−TfRコンプレックスと
して提供したことによって保存中の安定性を改善し、結
果として信頼性の向上に貢献する。
18-8325,1988)で胎盤から精製したヒトTfRをフロイ
ントのコンプリート・アジュバントと等量混合し、充分
乳化した後、家兎フットパットに初回の免疫を行い、4
週毎に背部皮内に2回の追加免疫を行った。精製ヒトT
fRとのオクテロニー法により抗体価の上昇を確認し
て、最終免疫後2週目に採血を行い抗血清を分離した。
抗血清をDEAE−セルロース・イオン交換クロマトグ
ラフィーで精製し、そのIgG分画をもって抗TfR抗
体とした。 本発明試薬の調製例:抗TfR抗体をポリスチレンラテ
ックス(平均粒径0.104μm)と混和し37℃1時
間反応させた。3,000×G、15分遠心によりラテ
ックス粒子を分離した後、1%BSAを含むPBS緩衝
液に懸濁して0.5%ラテックス乳液を得、本発明の測定
試薬とした。
BS緩衝液で10mg/lとし96穴マイクロタイタープレ
ート(ヌンク社製)のウエルに0.1ml宛分注後、37
℃1時間静置し、更にプレートを生理食塩液で洗浄後B
SAによるブロック操作をほどこしてELISA用固相
プレートとした。また抗TfR抗体を過ヨウ素酸架橋法
にてPOD標識し、ELISA用標識抗体とした。
硫安で分画後、20mMトリス塩酸(pH8.6)の緩衝
液で透析し、陰イオン交換カラム(Q−セファロース、
ファルマシア社)にアプライした。0.5MのNaCl
を含む20mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.6)でリニ
アグラジエントに溶出した。ELISAによってTfR
濃度を追跡してTfRに富む分画をプールし、抗Tf抗
体を固定化したアフィニティーカラムにかけた。カラム
はまず0.1MのNaClを含む50mMのHEPES緩
衝液(pH7.5)、次いで100mMのNaClと1mM
の desferroxamine mesilateを含む50mMのクエン酸緩
衝液(pH4.9)でこのカラムを洗浄してTfから鉄
を遊離させた。再び0.1MのNaClを含む50mMの
HEPES緩衝液(pH7.5)で洗浄後、3MのKC
lを含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)で鉄
の遊離によってTfとの結合性の低下したTfRを溶出
した。アフィニティーカラムの溶出物は、過剰量の鉄飽
和Tfと反応させて完全にTf−TfRコンプレックス
を形成させ20mMトリス塩酸(pH8.6)の緩衝液で
透析した後、さらにゲルろ過カラム及び陰イオン交換カ
ラム(リソース−Q、ファルマシア社)を用いて、精製
Tf−TfRコンプレックスを得た。この方法によるコ
ンプレックスの収率は約50%であった(2000ng/ml
のTf−TfRコンプレックスを含む血清2Lから約
2.0mgのTf−TfRコンプレックスを回収)。
Eにより分子量約85kDaと65kDaの2つのバンドが認
められた。還元状態では、Tfは分子内SS結合がはず
れて見かけの分子量が大きくなるので、2つのバンドが
近接する。PVDF膜へブロッティング後それぞれの蛋
白についてアミノ酸配列分析を行ったところ、85kDa
はTfRの101番目からの配列と一致し、65kDaは
TfのN末端からの配列と一致することが確認できた。
TfRとTfの組成比率は、染色したSDS−PAGE
ゲルのデンシトグラムからほぼ47%対53%であり、
アミノ酸残基数がTfRが660、Tfが719の比と
一致した。つまりモル比として1対1であったと考えら
れる。蛋白量にTfRの濃度比(47%)を乗じた値を
精製したコンプレックス中のTfR量として決定した。
なお精製Tf−TfRコンプレックスの蛋白量は、BC
A蛋白定量法により決定した。この精製Tf−TfRコ
ンプレックスを1%のBSA、0.1%のTfを含むPB
Sで希釈して1次標準として使用した。ELISAでは
血清を適宜希釈したものの凍結乾燥品を、ラテックス凝
集法では、血清からTf−TfRコンプレックスをイオ
ン交換カラムにより部分的に精製濃縮した物の凍結乾燥
品をそれぞれ1次標準で検定し、2次標準として用い
た。従って、この標準を用いた測定によって得られる濃
度値は、Tf−TfRコンプレックスの濃度である。
比較:1で作成した本発明の測定試薬を用い試料液(検
量線の場合は標準希釈濃度液、一般測定の場合は検体
液)30μl、と本試薬乳液300μlを測定セルに分注
して混和し、25秒後および300秒後に散乱光(波長
660nm)を測定し散乱光の強度の差を求めた。標準希
釈液は部分精製ヒトTf−TfRコンプレックスを16
000ng/mlより順次2倍希釈した5段階の各々を用い
て測定し検量曲線を作成した。測定には全自動免疫化学
分析装置LX−3000(栄研化学・アナリテイカルイ
ンスツルメント社製、商品名)を用いた。
ELISA法の検量線を作成した。測定は固相プレート
にウエル当たり100μlの試料液を分注し37℃で1
時間反応後0.1%のTween20加PBSで洗浄、
標識抗体を100μlを加え37℃30分反応させ洗
浄、TMB(テトラメチルベンチジン)で発色させ波長
450nmでの吸光度を測定、という操作によって行っ
た。標準希釈濃度液はTf−TfRコンプレックス値既
知の血清を78.0ng/mlより順次2倍希釈した5段階
の各々を用いて測定し検量曲線を作成した。この標準物
質の濃度は、予備的に行った実験で確認した実用的な精
度で測定が可能な濃度範囲に基づいて設定したものであ
る。結果は図1および図2に示した。本発明の測定試薬
では測定範囲が500〜16000ng/mlである(図
1)のに対し、参考例ELISA法(図2)では2.4
4〜78.0ng/mlである。つまりELISA法で本発
明の測定試薬と同じ測定範囲を得るには試料を予め20
0倍に希釈する必要があることが確認された。
ISA法の相関:様々な濃度のTf−TfRコンプレッ
クス値を持つ血清検体80検体を1で調製した本発明に
よるラテックス凝集反応試薬と、参考試薬であるELI
SA試薬により測定し測定値の相関を調査した。ELI
SA法では直接測定できない高値検体は適宜希釈して測
定した。結果は図3に示すとおりである。本発明による
測定値とELISAによる測定値とは良好な相関を示し
高精度な測定が可能なことが確認された。
示した本発明の測定試薬により、健常者15名、鉄欠乏
性貧血症患者10名、安定期透析患者15名、鉄欠乏を
伴う透析患者10名、多血症患者2名、腎移植患者2名
の血清についてTf−TfRコンプレックス値を測定し
た。結果は表1に示した。鉄欠乏性貧血症、多血症等の
患者血清中のTfR値は異常に高く、本発明によるTf
Rの測定が造血機能の診断マーカーとして有用なことが
確認された。このような高い値は、ELISA法の測定
可能範囲を越えている。
体と、Tfを認識するモノクローナルにより本発明の測
定試薬を構成した。特開昭62−6169に記載された
方法にしたがって前記モノクローナル抗体を調製し、こ
れをそれぞれ不溶性粒子に固定した後に混合した。具体
的な操作は次のとおりである。1で用いたのと同じ精製
TfRをフロイントのコンプリート・アジュバントと等
量混合しBalb/cマウスの皮下に免疫した。2週間
おきに免疫をくり返し、4回の免疫の後に50μgのT
fRを腹腔内に免疫した。最終免疫の3日後に抗体価の
上昇していることを確認して脾臓を摘出し、常法(Harad
a.NらProc.Natl.Acad.Sci. USA 84:4581-4585,1987)に
よってマウスミエローマ細胞P3−X63Ag8.65
3と細胞融合させた。
イムノブロッティングアッセイによって、まずTfRに
特異的な抗体についてスクリーニングした。TfRを認
識するモノクローナル抗体を産生するクローンは、更に
TfRとTfを用いたインヒビションアッセイによりス
クリーニングしてTf結合部位以外の部分に存在する抗
原決定基を認識するモノクローナル抗体を産生するもの
をセレクションした。こうしてTfRのTf結合部位以
外を認識するモノクローナル抗体を得た。一方Tfを認
識するモノクローナル抗体については、免疫原をTfと
すること、またスクリーニングを単にTfについて行う
こと以外はほぼ同じ操作によって得た。
(IgG、0.11mg/ml)をそれぞれ粒径0.104
μmのポリスチレンラテックスに37℃で1時間物理吸
着させた。HEPES緩衝液で洗浄後、1%のBSAを
含むHEPES緩衝液に粒子濃度0.5%となるように
等量分散させてモノクローナル抗体で構成された本発明
の試薬とした。
よる試薬は、2と同じ操作によって精製Tf−TfRコ
ンプレックスと反応させた時、光学測定が可能な凝集を
定量的に生じることを確認した。この凝集は精製したT
fやTfRでは観察できず、Tf−TfRコンプレック
スに特異的であることが明らかであった。
凝集反応法によって得られた標準曲線。図中、縦軸は6
60nmにおける散乱光強度の変化量(DLSE)を、横
軸はTf−TfRコンプレックス濃度(ng/ml)を示
す。
標準曲線。図中、縦軸は450nmにおける吸光度を、横
軸はTf−TfRコンプレックス濃度(ng/ml)を示
す。
法)による測定値(ng/ml、横軸)、ELISA試薬によ
る測定値(ng/ml、縦軸)の相関を示すグラフ。
Claims (16)
- 【請求項1】トランスフェリンレセプター親和性物質を
固定した不溶性粒子で構成されるトランスフェリン−ト
ランスフェリンレセプター・コンプレックス測定試薬 - 【請求項2】トランスフェリンレセプター親和性物質が
抗体である請求項1のトランスフェリン−トランスフェ
リンレセプター・コンプレックス測定試薬 - 【請求項3】抗体が、抗トランスフェリンレセプター抗
体、および抗トランスフェリン−トランスフェリンレセ
プター・コンプレックス抗体から選択される請求項2の
トランスフェリン−トランスフェリンレセプター・コン
プレックス測定試薬 - 【請求項4】抗体がポリクローナル抗体である請求項3
のトランスフェリン−トランスフェリンレセプター・コ
ンプレックス測定試薬 - 【請求項5】不溶性粒子がラテックス粒子である請求項
1のトランスフェリン−トランスフェリンレセプター・
コンプレックス測定試薬 - 【請求項6】更にトランスフェリン親和性物質を固定し
た不溶性粒子を含む請求項1のトランスフェリン−トラ
ンスフェリンレセプター・コンプレックス測定試薬 - 【請求項7】トランスフェリン親和性物質をトランスフ
ェリンレセプター親和性物質とともに固定した不溶性粒
子を含む請求項1のトランスフェリン−トランスフェリ
ンレセプター・コンプレックス測定試薬 - 【請求項8】トランスフェリン親和性物質が、トランス
フェリンに対するモノクローナル抗体である請求項6ま
たは7のトランスフェリン−トランスフェリンレセプタ
ー・コンプレックス測定試薬 - 【請求項9】トランスフェリンレセプター親和性物質を
固定した不溶性粒子をトランスフェリン−トランスフェ
リンレセプター・コンプレックスと反応させ、不溶性粒
子の凝集を指標としてヒト体液中のトランスフェリン−
トランスフェリンレセプター・コンプレックスを測定す
る方法 - 【請求項10】不溶性粒子の凝集を光学測定を利用して
追跡する請求項9のヒト体液中のトランスフェリン−ト
ランスフェリンレセプター・コンプレックスを測定する
方法 - 【請求項11】試料として希釈しない血清を利用する請
求項9−10のトランスフェリン−トランスフェリンレ
セプター・コンプレックスを測定する方法 - 【請求項12】標準物質としてトランスフェリン−トラ
ンスフェリンレセプター・コンプレックスを利用するト
ランスフェリン−トランスフェリンレセプター・コンプ
レックスを測定する方法 - 【請求項13】トランスフェリンレセプター親和性物質
を固定した不溶性粒子をトランスフェリンレセプターと
反応させ、不溶性粒子の凝集を指標としてヒト体液中の
トランスフェリンレセプターを測定する方法であって、
標準物質としてトランスフェリンとコンプレックスを形
成していないトランスフェリンレセプターを用いる測定
方法 - 【請求項14】トランスフェリン−トランスフェリンレ
セプター・コンプレックスを含む、トランスフェリン−
トランスフェリンレセプター・コンプレックスを測定す
るための標準物質 - 【請求項15】トランスフェリン−トランスフェリンレ
セプター・コンプレックスが血清から精製したものであ
る請求項14の標準物質 - 【請求項16】トランスフェリン−トランスフェリンレ
セプター・コンプレックスを少なくとも14000ng/m
l含む請求項14の標準物質
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