JPH0971893A - 耐蝕性鉄系部材およびその製造方法 - Google Patents

耐蝕性鉄系部材およびその製造方法

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JPH0971893A
JPH0971893A JP24845495A JP24845495A JPH0971893A JP H0971893 A JPH0971893 A JP H0971893A JP 24845495 A JP24845495 A JP 24845495A JP 24845495 A JP24845495 A JP 24845495A JP H0971893 A JPH0971893 A JP H0971893A
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JP
Japan
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heat treatment
corrosion
iron
resin
plating
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JP24845495A
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English (en)
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Atsuo Suehiro
篤夫 末廣
Norio Kogashiwa
典夫 小柏
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Kowa Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Kowa Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬質クロムメッキ層の厚みが小さくても鉄系
基材の耐蝕性を高める。 【解決手段】 シリンダーロッドなどの鉄系基材を硬質
クロムメッキする工程と、高周波加熱またはベーキング
により熱処理する工程と、樹脂を含浸する工程と、バフ
仕上げする工程とを含む方法において、メッキ処理及び
/又は熱処理の後、洗浄することにより、耐蝕性部材を
製造する。メッキ処理後の洗浄は湯洗や酸洗浄などで行
なわれ、熱処理後の洗浄は酸洗浄などで行なわれる。熱
処理温度は、例えば、100〜500℃程度である場合
が多い。前記含浸工程では減圧下で熱硬化性樹脂を含浸
させてもよい。このような方法で得られた耐蝕性部材
は、JIS H 8502のキャス試験を96時間行な
ったとき、レイティングナンバーが9.5〜10.0で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐蝕性鉄系部材お
よびその製造方法に関する。特に、建設機械、産業機
械、産業車両などに使用されるシリンダーロッドなどの
鉄系基材に、高い耐蝕性を付与できる耐蝕性部材の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、パワーシャベルなどの建設機械の
油圧機などには、ピストンロッドなどのシリンダーロッ
ドが使用されている。シリンダーに対して摺動する前記
ロッドには、硬度、耐摩耗性が高いこと、表面精度を含
めた寸法精度が高いことなどの特性が要求される。そこ
で、シリンダー用ロッドは、通常、鉄系材料からなるロ
ッドに硬質クロムメッキを施すことにより製造されてい
る。しかし、硬質クロムメッキにより形成されたメッキ
層には、他の電気メッキ層と異なり、メッキ層の厚みが
100μm程度であっても、クラック、ピンホールやピ
ットなどの多数の欠陥部が生成する。従って、硬質クロ
ムメッキを施したロッドは、種々の優れた特性を有する
にも拘らず、腐蝕し、錆が発生し易い。特に、塩化ナト
リウムなどの塩化物、酸の存在下や高温多湿環境下で
は、前記数多くの欠陥部に起因して、ロッドが著しく腐
蝕する。ロッドが腐蝕すると、シリンダーとの摺動によ
り傷が発生し、油洩れなどの原因となる。
【0003】なお、硬質クロムメッキ物の腐蝕を防止す
るため、防錆剤を塗布し、クラックなどの欠陥部に浸透
させることが行なわれているが、根本的な解決法とは言
い難い。また、硬質クロムメッキ物の腐蝕を防止するた
め、厚み0.05〜0.1mm程度のメッキ層を形成す
ることが行なわれている。しかし、メッキ層の厚みを大
きくすると、生産性が低下する。
【0004】特公平3−14913号公報には、高品質
の鏡面クロムメッキを施す方法に関し、マイクロクラッ
クタイプのクロムメッキ浴を用いて、鉄製基材の表面
に、仕上りメッキ層の約2倍の厚さのメッキ層を形成
し、苛酷な条件(使用標準温度の上限値よりも40〜6
0℃高い温度で40〜50時間)でベーキングした後、
メッキ層の40〜50%を研磨などにより除去し、温和
な条件(使用標準温度の上限値よりも10〜20℃高い
温度で20〜30時間)でベーキングし、仕上げ研磨す
る方法が開示されている。しかし、この方法では、厚み
の大きなメッキ層を形成し、しかも40〜50%のメッ
キ層を除去する必要があるので、経済的でないばかり
か、メッキ処理、メッキ層の除去に長時間を要する。し
かも、2度に亘るベーキングに長時間を必要とする。そ
のため、ドラムやロールなどの生産性が著しく低下す
る。さらに、前記先行文献には、耐蝕性に関して何ら記
載されていない。
【0005】特開昭60−33369号公報には、金属
をクロムメッキし、120±10℃で15〜30分間加
熱してメッキにより生成した水素ガスを除去し、不飽和
ポリエステル20〜80重量%およびジアリルフタレー
ト80〜20重量%の混合物で構成された防蝕組成物を
塗着する防蝕方法が開示されている。しかし、得られた
金属部材は、後述する比較例で示されるように、耐蝕性
が十分でない。
【0006】本出願人は、シリンダーロッドの耐蝕性を
向上させるため、特開平4−160197号公報におい
て、シリンダーロッドを硬質クロムメッキし、ベーキン
グ処理することを提案した。また、特開平7−7078
7号公報において、腐食性鉄系基材を10〜100μm
程度の厚みに硬質クロムメッキし、150℃以上(17
0〜600℃程度)の温度で熱処理した後、樹脂又は封
止剤を減圧下で含浸して樹脂又は封止剤を硬化させ、バ
フ仕上げすることにより、高い耐蝕性を付与することを
提案した。これらの方法は、腐食性の高い鉄系基材に高
い耐蝕性を付与でき、過酷な条件で使用されるシリンダ
ーロッドなどを製造する上で有用である。しかし、これ
らの方法では、原因不明の要因により鉄系基材の耐蝕性
が変動し、耐蝕性鉄系部材の歩留まりが低下する場合が
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、硬質クロムメッキ層の厚みが小さくても、極めて高
い耐蝕性が確実に付与された耐蝕性鉄系部材とその製造
方法を提供することにある。本発明の他の目的は、腐蝕
性を有する鉄系基材であっても、ステンレススチールと
同等又はそれ以上の耐蝕性を確実に付与でき、蝕性鉄系
部材を高い歩留まりで製造できる方法を提供することに
ある。本発明のさらに他の目的は、前記の如き優れた特
性を有するシリンダーロッドを製造する上で有用な耐蝕
性鉄系部材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため、鋭意検討の結果、硬質クロムメッキ工
程、熱処理工程、樹脂含浸工程、仕上げ工程を含む前記
方法において、硬質クロムメッキ工程及び/又は熱処理
工程の後、クロムメッキ品(ワーク)を洗浄処理を施す
と、熱処理温度が低くても、極めて高い耐蝕性を腐食性
基材に確実に付与できることを見いだし、本発明を完成
した。
【0009】すなわち、本発明の方法では、腐蝕性鉄系
基材を硬質クロムメッキするメッキ処理工程と、熱処理
する熱処理工程と、樹脂又は封止剤を含浸する含浸工程
と、バフ仕上げする仕上げ工程とを含む方法であって、
前記メッキ処理工程及び/又は熱処理工程の後、洗浄処
理することにより、耐蝕性鉄系部材を製造する。このよ
うな方法において、メッキ処理後の洗浄工程(以下、単
に第1の洗浄工程という場合がある)および熱処理後の
洗浄工程(以下、単に第2の洗浄工程という場合があ
る)のうち、少なくともいずれか一方の洗浄工程を採用
すればよいが、少なくとも第2の洗浄工程を採用するの
が効果的である。第2の洗浄工程では無機酸などの酸で
洗浄してもよい。これらの洗浄工程は単独で又は組み合
わせて行ってもよい。このような洗浄工程により極めて
高い耐蝕性が付与される。樹脂又は封止剤としては、ア
クリル又はメタクリル系のオリゴマー又はモノマーで構
成され、25℃での粘度が1〜50cpsの熱硬化性樹
脂又は封止剤などが使用でき、これらの樹脂又は封止剤
による含浸は、減圧下(例えば、0.1〜100Torrの
減圧下)で行なうことができる。また、バフ仕上げ工程
では、5〜95μm程度の硬質クロムメッキ層を形成し
てもよい。本発明の方法には、シリンダーロッドなどの
腐食性鉄系円筒状ロッドを硬質クロムメッキして10〜
100μmの硬質クロムメッキ層を形成するメッキ処理
工程と、100℃以上の温度で熱処理する熱処理工程
と、少なくとも減圧下で熱硬化性樹脂又は封止剤を含浸
させる含浸工程と、含浸した樹脂又は封止剤を硬化させ
る硬化工程と、バフ仕上げする仕上げ工程とを含む方法
であって、少なくとも熱処理工程の後、酸で洗浄するこ
とにより耐蝕性鉄系部材を製造する方法も含まれる。こ
れらの方法において、前記洗浄工程を採用することによ
り、比較的温和な熱処理条件で熱処理しても、高い耐蝕
性を付与できる。例えば、熱処理温度は100〜500
℃程度の範囲であってもよく、温度100〜300℃で
30分〜12時間熱処理してもよい。
【0010】本発明の方法では、極めて高い耐蝕性を付
与でき、例えば、JIS H 8502に規定するキャ
ス試験を96時間行なったとき、レイティングナンバー
が9.5〜10.0程度の耐蝕性鉄系部材を得ることも
できる。そのため、耐蝕性鉄系部材は、苛酷な条件下で
も高い耐蝕性が要求される部材、例えば、ピストンロッ
ドなどのシリンダーロッドとして適している。
【0011】
【発明の実施の形態】
[鉄系基材]前記鉄系基材は、種々の鉄系材料、例え
ば、低炭素鋼、高炭素鋼、焼入れ鋼、高速度鋼、クロム
鋼、ニッケル鋼、ニッケル・クロム鋼、ニッケル・クロ
ム・モリブデン鋼、タングステン鋼などで形成できる。
本発明の方法によれば腐蝕性部材に顕著に改善された耐
蝕性を付与できるので、本発明は腐蝕性鉄系基材に好適
に適用される。前記鉄系基材の形状は、特に制限され
ず、平板状、湾曲板状、断面多角形状、円筒状、中空状
などであってもよい。高い耐蝕性が要求される鉄系基材
には、円筒状ロッドなどのロッド状基材(例えば、ピス
トンロッドなどのシリンダーロッドなど)などが含まれ
る。
【0012】なお、クロムメッキに先立って、前記鉄系
基材は、通常、前処理工程に供される。この前処理工程
において、前記鉄系基材は、通常、有機溶剤、アルカリ
浸漬、アルカリ電解脱脂などによる脱脂処理、必要に応
じて、塩酸、硫酸などの酸による酸洗処理を行なっても
よい。
【0013】また、必要に応じて、クロムメッキに先立
って、前記鉄系基材を研磨工程に供してもよい。鉄系基
材の研磨は、慣用の方法、例えば、研磨力の大きな円筒
研磨(リングバフ)、バーチカル研磨など;エメリーバ
フ研磨、ベルト研磨、フラップホイール研磨などの粗研
磨;綿バフ、サイザルバフ、これらを組合せた中研磨や
仕上げ研磨などを単独で、または組合せて行なうことが
できる。なお、中研磨、仕上げ研磨は、クローズドフェ
ース、オープンフェース、ユニットフェースタイプのい
ずれであってもよい。なお、クロムメッキ処理工程及び
/又は熱処理工程の後、特に熱処理工程の後で洗浄処理
すると、下地調整のための腐食性鉄系基材の研磨を行な
わなくても高い耐蝕性が得られる。そのため、前記洗浄
工程を採用することにより、基材の下地調整のための研
磨工程を省略でき、耐蝕性鉄系部材の生産効率を高める
上で工業的に有利である。
【0014】クロムメッキに先立って、鉄系基材は、メ
ッキ下地調整のため、陽極酸化によるエッチング処理に
供してもよい。陽極酸化によるエッチング処理は、例え
ば、鉄系基材を陽極として、温度30〜60℃程度、電
流密度10〜50A/dm2程度、時間10〜600秒
程度の条件で電解処理することにより行なうことができ
る。なお、陽極酸化によるエッチング処理に代えて、ま
たは陽極酸化によるエッチング処理と共に、塩酸、硫酸
などに浸漬する酸浸漬処理を行なってもよい。
【0015】[クロムメッキ処理工程]前記鉄系基材
は、硬質クロムメッキ処理に供される。クロムメッキ浴
の組成は特に制限されず、慣用のメッキ浴が使用でき
る。メッキ浴としては、例えば、無水クロム酸Cr
3 、硫酸を含むサージェント浴;無水クロム酸CrO
3 、硫酸に加えて、ケイフッ化ナトリウムやケイフッ化
カリウムなどを含むケイフッ化浴などであってもよい。
また、クロムメッキ浴は、ケイフッ酸、フッ化アンモニ
ウム、硫酸ストロンチウム、クエン酸、酒石酸、シュウ
酸、ギ酸などの少なくとも1つの成分を含んでいてもよ
い。メッキ浴は、通常、三価クロムを0.1〜3g/L
程度含む場合が多い。
【0016】メッキ浴、例えば、サージェント浴におけ
る無水クロム酸と硫酸との割合は、通常、無水クロム
酸:硫酸=100:0.8〜1.5(g/L)程度であ
る。耐蝕性を高めるためには、無水クロム酸100g/
Lに対する硫酸量は、0.9〜〜1.3g/L、好まし
くは1.0〜1.25g/L程度である。硫酸量が少な
くなるにつれて、被覆力が向上するが、耐蝕性が低下し
易く、硫酸量が多くなるにつれて、耐蝕性が向上するも
のの、密着性、メッキ層の均一性が低下し易くなる。な
お、メッキ浴は、高濃度浴、標準浴、低濃度浴のいずれ
であってもよく、無水クロム酸濃度は、通常100〜4
00g/L、好ましくは150〜350g/L、さらに
好ましくは200〜300g/L程度である。
【0017】硬質クロムメッキに際しては、陽極とし
て、鉛合金、鉄などを、適宜配置して使用できると共
に、メッキ部を均一化するため、補助陰極、遮蔽板など
を使用できる。メッキ条件は、浴の組成などに応じて選
択でき、通常、メッキ温度20〜70℃、好ましくは4
0〜65℃程度、電流密度10〜100A/dm2 、好
ましくは30〜60A/dm2 程度である。また、メッ
キ時間は、浴の温度、電流効率、所望するメッキ膜厚な
どに応じて選択できる。
【0018】メッキによる硬質クロムメッキ層の厚み
は、耐蝕性を損わない範囲で選択でき、例えば、10〜
200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ま
しくは10〜100μm程度である。特に好ましい硬質
クロムメッキ層の厚みは、15〜75μm(例えば、2
5〜75μm程度)、なかでも15〜60μm程度であ
る。硬質クロムメッキ層の厚みが小さい場合には、耐蝕
性が低下し易く、厚過ぎる場合には、経済的でないばか
りか、メッキに長時間を要し、生産性が低下する。な
お、前記のような厚みのメッキ層は、例えば、1〜2時
間程度で形成でき、耐蝕性鉄系部材を工業的に効率よく
生産する上で有利である。
【0019】顕微鏡観察によると、硬質クロムメッキ層
には、腐蝕の原因となる多数のクラックやピンホールな
どが存在する。また、前記先行文献にも記載されている
ように、硬質クロムメッキ層を熱処理すると、一般にク
ラックが成長する。しかし、硬質クロムメッキ処理した
鉄系基材を熱処理する工程、樹脂を含浸する含浸工程
と、前記第1の洗浄工程及び/又は第2の洗浄工程とを
組み合わせることにより、硬質クロムメッキ層の膜厚が
薄くても、極めて高い耐蝕性を鉄系基材に確実に付与で
き、耐蝕性鉄系部材の歩留まりを飛躍的に向上できる。
さらに、前記先行文献のように、厚みの大きな硬質クロ
ムメッキ層を形成し、二度に亘る研磨及びベーキングを
行なうことなく、苛酷な条件で使用される建設機械など
のシリンダーピストンロッドなどとして使用しても、耐
蝕性が著しく高い。
【0020】[洗浄工程]本発明の特色は、硬質クロム
メッキ処理した後、熱処理工程と、樹脂含浸工程と、洗
浄工程と組み合わせた一連の工程でメッキ品を処理する
ことにより、鉄系基材の耐蝕性を確実かつ飛躍的に高め
る点にある。特に熱処理工程及び樹脂含浸工程の組み合
わせに比べて、さらに洗浄工程を組み合わせることによ
り、硬質クロムメッキ層の厚みが小さくても、腐食性基
材に高い耐蝕性を確実に付与でき、高品質の硬質クロム
メッキ品の歩留まりを大きく改善できる。なお、前記洗
浄工程は、前記メッキ処理工程及び熱処理工程のうちい
ずれか一方の工程の後で行えばよい。これらの洗浄工程
のうち、メッキ処理工程後の第1の洗浄工程よりも、熱
処理工程後の第2の洗浄工程は、耐蝕性に大きな影響を
及ぼすようである。そのため、洗浄工程のうち少なくと
も第2の洗浄工程で熱処理品を洗浄するのが好ましく、
第1の洗浄工程は必ずしも必要ではない。さらに高い耐
蝕性を確実に付与するためには、第1の洗浄工程と第2
の洗浄工程とを組み合わせて洗浄するのが好ましい。な
お、洗浄工程において、酸やアルカリなどの薬剤で洗浄
したとき、洗浄後に水洗又は湯洗などにより、残存する
薬剤を除去してもよい。
【0021】[第1の洗浄工程]クロムメッキ処理の後
の洗浄は、種々の方法、例えば、水洗、湯洗、酸洗浄、
アルカリ洗浄(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなど
のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアル
カリ金属炭酸水素塩など)、溶剤洗浄(例えば、エステ
ル、ケトン、エーテル、炭化水素類など)、これらを組
み合わせた洗浄などのいずれであってもよい。好ましい
工程では、湯洗又は酸洗浄により洗浄処理が行なわれ
る。湯洗において、湯の温度は、例えば、30〜100
℃、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは75
〜100℃程度であり、洗浄効率を高めるためには、8
5〜100℃程度である場合が多い。また、湯洗に代え
て、スチーム洗浄、例えば、90〜130℃程度のスチ
ームを利用して洗浄処理してもよい。
【0022】酸洗浄は、有機酸(例えば、酢酸、トリク
ロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ギ酸、ク
エン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン
酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸な
ど)、無機酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素
酸などのハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)
を用いて行なうことができる。これらの酸は単独で又は
二種以上組み合わせて使用できる。好ましい酸には、無
機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)が含ま
れる。酸の濃度は、メッキ被膜や基材に悪影響を及ぼさ
ず、作業性を損わない範囲で、酸の種類に応じて選択で
き、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40
重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度の水溶液
として使用する場合が多い。
【0023】なお、洗浄液は、洗浄効率を高めるため界
面活性剤などを含んでいてもよい。また、洗浄方法は特
に制限されず、例えば、洗浄液へメッキ品(ワーク)を
浸漬したり、洗浄液又はワークを振盪したり、超音波を
照射しながら洗浄液でワークを洗浄してもよい。また、
洗浄効率を高めるため、洗浄液を加熱(例えば、30〜
80℃、好ましくは30〜60℃程度に加熱)して洗浄
してもよい。洗浄時間は、洗浄液の種類や洗浄方法に応
じて選択でき、例えば、10秒〜120分、好ましくは
30秒〜60分程度である。なお、湯洗する場合には、
1〜90分、好ましくは5〜60分程度であり、酸洗浄
する場合、10秒〜30分、好ましくは30秒〜20分
程度であってもよい。
【0024】[熱処理工程]洗浄処理後の熱処理は、例
えば、ベーキング、誘導加熱(例えば高周波加熱など)
の種々の加熱方法が採用でき、その種類は特に制限され
ない。好ましい熱処理には、ベーキング処理及び高周波
熱処理が含まれる。前記メッキ処理後の洗浄、又は熱処
理後の洗浄を採用すると、熱処理工程での加熱温度が高
い場合にはもちろん、加熱温度がさほど高くなくても、
耐蝕性を大幅に改善できる。そのため、本発明の方法で
は熱エネルギーを大幅に節約でき、鉄系基材の焼き戻し
により軟化が生じる虞がないという利点がある。加熱温
度は、広い温度範囲、例えば、100℃以上(例えば、
100〜600℃)、好ましくは100〜500℃、さ
らに好ましくは100〜300℃、特に120〜250
℃程度の範囲から適当に選択でき、150〜200℃程
度であっても高い耐蝕性を付与できる。加熱温度が10
0℃未満では、耐蝕性を高めるのに長時間を要し、高温
度で処理すると作業性が低下し易くなる。
【0025】加熱温度は、加熱方法に応じて選択するこ
ともできる。例えば、ベーキング処理の場合には、伝熱
効率が小さく高温で加熱すると熱エネルギーの損失が大
きくなり易い。そのため、ベーキング温度は、通常、1
00〜400℃、好ましくは100〜300℃、さらに
好ましくは120〜250℃程度の範囲内で選択でき、
ベーキング温度150〜250℃程度で熱処理する場合
が多い。ベーキング時間は、ベーキング温度に応じて、
例えば、30分〜12時間、好ましくは1〜10時間、
さらに好ましくは2〜8時間程度の範囲で選択できる。
ベーキングは、赤外線加熱炉、熱風炉、電気炉などの種
々の加熱炉を用いて行なうことができる。
【0026】一方、誘導加熱による場合には、短時間内
に効率よくシリンダーロッドなどの鉄系基材を熱処理で
きるので、耐蝕性鉄系部材の生産性を著しく向上させる
ことができる。特に高周波加熱は、熱処理効率が高い。
高周波加熱の場合、加熱温度は、100〜600℃、好
ましくは120〜500℃、さらに好ましくは150〜
400℃程度の範囲内で適当に選択できる。なお、高周
波加熱の場合には、加熱温度を直接測定するのが困難で
あるが、鉄系基材の表面温度を加熱温度とすることがで
きる。高周波加熱による加熱の程度は、例えば、コイル
の内径、コイルの幅、高周波発生機の出力、周波数、鉄
系基材とコイルとの相対的送り速度などを調整すること
により、任意に制御できる。なお、これらのファクター
は相互に関連しているので、熱処理に際して、1つのフ
ァクターのみを独立して決定できるものではない。
【0027】以下、鉄系基材として外径30〜100m
mφのロッドを用いる場合、高周波加熱条件の一例を、
より具体的に説明する。コイルとシリンダーロッドとの
距離が大きくなるにつれて、誘導電流が小さくなり、表
面温度の上昇が抑制されるので、コイルとシリンダーロ
ッドとの距離は、熱処理の程度に応じて、例えば、10
〜50mm、好ましくは15〜30mm程度の範囲で選
択できる。また、コイルの幅は、熱処理時間、およびシ
リンダーロッドとコイルとの相対的送り速度に関連す
る。コイルの長さが小さい場合や送り速度が大きい場合
には、発熱の程度が小さくなる。そのため、コイルの長
さは、送り速度との関係で適当に選択できるが、通常1
0〜50mm程度で十分である。なお、シリンダーロッ
ドとコイルとの相対的送り速度は、例えば、0.1〜5
m/分、好ましくは0.5〜5m/分程度とすることが
できる。高周波加熱によると、ベーキング処理に比べて
送り速度を大きくできるので、耐蝕性に優れたシリンダ
ーロッドを連続的に効率よくかつ短時間内に製造でき
る。
【0028】高周波発生機の出力は、誘導電流のエネル
ギーに比例するので、出力が大きい程、シリンダーロッ
ドの表面温度が高くなる。高周波発生機の出力は、例え
ば、30〜150kw程度の範囲内で選択できる。周波
数が小さくなると、シリンダーロッドの深部にまで誘導
電流が流れ、局部的な温度上昇が抑制されるようであ
る。周波数は、例えば、3kHz〜1MHz、好ましく
は4〜100kHz、さらに好ましくは4〜10kHz
程度の範囲で選択できる。
【0029】なお、誘導加熱により熱処理する場合、シ
リンダーロッドなどの鉄系基材の大きさ、所望する熱処
理の程度などに応じて、前記条件は適宜選択できる。鉄
系基材が焼入れ鋼である場合、前記熱処理は、鉄系素地
の焼戻し温度を越えない温度で行なうのが好ましい。熱
処理後、通常、メッキ品は徐冷される。
【0030】本発明における前記加熱時間は、前記先行
技術文献に記載のベーキング時間よりも著しく短い。し
かも、本発明においては、1回の熱処理により耐蝕性が
著しく向上する。さらに、硬質クロムメッキ層を必要に
より洗浄した後、熱処理(ベーキング)する熱処理工程
と、熱処理後の洗浄工程と、樹脂含浸工程とを組合せる
と、鉄系基材にステンレススチールと何ら遜色のない耐
蝕性を長期間に亘り付与でき、耐蝕性が格段に向上させ
ることができる。
【0031】[第2の洗浄工程]熱処理後の洗浄は、前
記第1の洗浄工程と同様に、水洗、湯洗、酸洗浄、アル
カリ洗浄、溶剤洗浄、これらを組み合わせた洗浄などの
いずれであってもよい。好ましい洗浄工程では、酸洗浄
により洗浄処理が行なわれる。酸洗浄は、前記第1の洗
浄工程と同様の有機酸(例えば、酢酸、トリクロロ酢
酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ギ酸、クエン
酸、酒石酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベ
ンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸など)、無
機酸(例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸などの
ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)を用いて
行なうことができる。これらの酸は単独で又は二種以上
組み合わせて使用できる。好ましい酸には、無機酸(例
えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)が含まれる。酸
洗浄における洗浄液のpH、洗浄液の酸の濃度は、前記
第1の洗浄工程と同様である。
【0032】洗浄液は、前記と同様に、洗浄効率を高め
るため界面活性剤などを含んでいてもよく、洗浄方法も
前記第1の洗浄工程と同様にして行なうことができる。
洗浄時間は、洗浄液の種類や洗浄方法に応じて選択で
き、例えば、10秒〜120分、好ましくは30秒〜6
0分程度であり、無機酸を含む洗浄液を用いる場合、1
0秒〜30分、好ましくは30秒〜20分程度であって
もよい。酸などの薬剤で洗浄した後、必要に応じて、水
や湯などでさらに洗浄し、残存する薬剤を除去してもよ
い。
【0033】なお、前記第1の洗浄工程と第2の洗浄工
程とにおいて、メッキ処理工程の後に湯洗又は酸洗浄
し、熱処理工程の後、湯洗してもよいが、メッキ処理工
程および熱処理工程うち少なくともいずれか一方の工
程、特に熱処理工程の後で酸洗浄すると、クロムメッキ
品に対して高い耐蝕性を再現性よく付与できる。
【0034】[樹脂含浸工程]樹脂含浸(封孔)工程に
おいて、樹脂又は封止剤を含浸させると、硬質クロムメ
ッキ層の多数のクラックやピンホールなどが埋設して封
孔されるためか、鉄系基材の耐蝕性が顕著に向上する。
前記含浸処理に含浸剤として使用する樹脂又は封止剤
は、耐蝕性を付与できる樹脂であればよく、例えば、ポ
リ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩
化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニ
ルアセタール、アクリル樹脂、スチレン系ポリマー、ポ
リエステル、ポリアミド、シリコーン樹脂などの熱可塑
性樹脂;熱硬化性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタ
ン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和
ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性シリ
コーン樹脂、ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂など
が例示される。なお、熱硬化性樹脂又は封止剤は、樹脂
の種類に応じて、硬化剤や架橋剤を含んでいてもよい。
【0035】好ましい樹脂又は封止剤には、耐蝕性の高
い樹脂、例えば、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性
樹脂が含まれる。さらに、好ましい熱硬化性アクリル樹
脂は、アクリル又はメタクリル系のオリゴマー及び/又
はアクリル又はメタクリル系のモノマーで構成できる。
(メタ)アクリル系オリゴマー及びモノマーには、例え
ば、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性
オリゴマー(例えば、エポキシアクリレート、オリゴエ
ステルアクリレート、ウレタンアクリレートおよびこれ
らに対応するメタクリレートなど)、2以上の(メタ)
アクリロイル基を有する多官能性モノマー(例えば、エ
チレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコー
ルジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレ
ート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピ
レングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコー
ルジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリ
レート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テ
トラメチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオ
ールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリ
レート、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキ
シフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロイ
ルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロー
ルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテ
トラアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレー
トなど)、単官能性(メタ)アクリレート(例えば、メ
チルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリ
レート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレー
ト、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートおよ
びこれらに対応するメタクリレートなど)が含まれる。
これらの化合物は単独で又は二種以上組合せて使用でき
る。
【0036】硬質クロムメッキ層への含浸効率を高める
ため、液状の樹脂又は封止剤(オリゴマー)、特に不揮
発性液状樹脂又は封止剤が好ましい。前記樹脂及び封止
剤は、溶液又は分散液、特に水溶液又は有機溶媒溶液と
して使用してもよい。溶媒としては、前記樹脂の種類に
応じて、例えば、水、脂肪族又は脂環族炭化水素類、芳
香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール
類、エステル類、ケトン類、エーテル類などの有機溶媒
やこれらの混合溶媒が使用できる。含浸剤中の不揮発性
樹脂又は封止剤の含有量は、例えば、0.1〜100重
量%、好ましくは10〜100重量%、さらに好ましく
は50〜100重量%程度である。含浸剤としての樹脂
又は封止剤の粘度は、含浸性に悪影響を及ぼさない範囲
で選択でき、例えば、25℃において約1〜50cp
s、好ましくは1〜30cps、さらに好ましくは1〜
15cps程度である。なお、前記樹脂は、必要に応じ
て、安定化剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤を含ん
でいてもよい。
【0037】樹脂含浸は、慣用の方法、例えば、常圧下
での浸漬法などによって行なってもよいが、樹脂を効率
よく含浸させるため、減圧又は加圧下で含浸するのが好
ましい。含浸は、通常、少なくとも減圧下で行なわれ
る。また、含浸処理に先だって、鉄系基材を減圧脱気処
理し、含浸処理に供するのも好ましい。これらの樹脂含
浸法は、組合せて行なうことができる。
【0038】減圧下での樹脂の含浸は、(1)クロムメ
ッキ品と樹脂又は封止剤(好ましくは液状樹脂又は封止
剤)を収容する所定の容器内を減圧する真空含浸法;
(2)クロムメッキ品を収容した容器内を減圧して脱気
し、容器内に樹脂又は封止剤を送液して樹脂を含浸させ
る真空浸漬含浸法;(3)クロムメッキ品を収容した容
器内を減圧して脱気し、容器内に樹脂又は封止剤を送液
して樹脂を減圧下で含浸させるとともに、さらに容器内
を加圧し樹脂又は封止剤を含浸させる方法などにより行
なうことができる。含浸時の減圧度は、適当に選択で
き、例えば、0.1〜100Torr、好ましくは1〜50
Torr、さらに好ましくは1〜20Torr程度である。ま
た、含浸時間は、通常、30秒〜1時間、好ましくは1
〜30分程度である。含浸に先立って、樹脂又は封止剤
を、樹脂含浸工程での減圧度と同等又はそれ以下の減圧
下で脱気し、気泡の生成を防止するのが好ましい。な
お、前記減圧下で含浸が終了した後、容器は大気圧に開
放されるが、大気圧への開放は、急激に行なうよりも、
徐々に行なうのが好ましい場合が多い。
【0039】加圧下での樹脂の含浸は、クロムメッキ層
の厚みやクロムメッキ条件などに応じて、例えば、圧力
1〜20kg/cm2 、好ましくは2〜10kg/cm
2 程度で行なうことができ、含浸時間は、前記と同様で
ある。
【0040】なお、樹脂の含浸は、室温下で行なっても
よく、例えば、30〜70℃程度の加熱下で行なっても
よい。熱硬化性樹脂又は封止剤を用いる場合、含浸温度
は、熱硬化性樹脂又は封止剤の硬化温度未満である場合
が多い。
【0041】前記樹脂又は封止剤は、少なくとも1回含
浸すればよいが、複数回に亘り含浸してもよい。好まし
い樹脂の含浸回数は、1〜3回程度である。なお、上記
含浸回数は、一連の含浸工程を1回とした回数である。
すなわち、真空含浸と加圧含浸とを組合せて樹脂を含浸
する場合、真空含浸および加圧含浸の含浸工程を1回と
するものである。
【0042】本発明では、樹脂又は封止剤の含浸量が極
めて少なくても高い耐蝕性を付与できるという特色があ
る。樹脂又は封止剤の含浸量は、硬質クロムメッキ層の
クラック数やクラックの深さなどにより変動するが、通
常、硬質クロムメッキ層100gに対して1000mg
以下(1重量%以下)、例えば、1〜100mg(0.
001〜0.1重量%)程度である。なお、含浸率は、
樹脂含浸に伴なう重量増加により評価できる。
【0043】前記含浸処理の後、クロムメッキ品は、過
剰な樹脂又は封止剤を除去するため液切り工程に供して
もよい。また、液切りされたメッキ品は、洗浄工程に供
してもよい。なお、この洗浄工程において、前記樹脂又
は封止剤に対して良溶媒を用いると、硬質クロムメッキ
層の欠陥部に含浸した樹脂が溶出するので、洗浄溶媒と
して、前記樹脂又は封止剤に対して貧溶媒を用いるのが
好ましい。貧溶媒としては、樹脂又は封止剤の種類に応
じて選択できるが、通常、水などが使用できる。なお、
貧溶媒による洗浄は、加温又は加熱下で行なってもよ
く、バブリングやジェット流などによる水流を利用した
物理的方法により行なうことができる。
【0044】[硬化工程]樹脂又は封止剤として熱硬化
性樹脂(又は熱硬化性オリゴマー)を用いる場合、通
常、鉄系基材は硬化工程に供される。熱硬化性樹脂又は
封止剤の硬化は、樹脂の硬化温度に応じて、例えば、5
0〜200℃、好ましくは80〜150℃程度で行なう
ことができる。また、熱硬化性樹脂又は封止剤の硬化
は、加熱炉などを用いて行なうこともでき、熱水中で行
なうこともできる。熱水による硬化は、例えば、温度7
0〜100℃(好ましくは85〜100℃,特に95〜
100℃)程度の熱水に、含浸処理されたメッキ品(ワ
ーク)を5〜60分(好ましくは10〜30分)程度浸
漬することにより行なうことができる。熱水による硬化
は、1段で硬化させてもよいが、順次温度の高い熱水で
硬化処理する複数段で硬化させるのが、耐蝕性を向上さ
せる上で有利な場合がある。例えば、70℃程度の熱
水、又は100℃程度の熱水単独で硬化させるよりも、
70℃程度の熱水で硬化処理した後、さらに100℃程
度の熱水で硬化処理すると、高い耐蝕性を付与できる。
なお、熱水を利用して硬化させると、嫌気性熱硬化性樹
脂(特に(メタ)アクリル系オリゴマー及びモノマー)
であっても円滑に硬化させることができる。
【0045】なお、前記含浸工程、硬化工程を複数回に
亘り繰り返し、硬質クロムメッキ層のクラックなどに樹
脂を含浸させて封孔処理してもよい。
【0046】[仕上げ工程]前記樹脂含浸処理の後、メ
ッキ品の硬質クロムメッキ層は、バフ仕上げ工程に供す
るのが好ましい。硬質クロムメッキ品をバフ仕上げ工程
に供することにより、耐蝕性をさらに高めることができ
る。このバフ仕上は、前記研磨工程と同様に行なうこと
ができる。好ましい方法は、大きな研磨力を作用させて
研磨し、順次細かいバフ仕上げを行なう方法である。特
に#400〜1000程度のリングバフを行なった後、
#240〜600程度の研磨剤による綿バフやサイザル
バフを行なうのが好ましく、その後、オープンサイザル
バフを行なうのも好ましい。このような方法でバフ仕上
げを行なうと、前記リングバフにより大きな研磨力が作
用すると共に、綿バフやサイザルバフにより、メッキ層
の突起部などが切削されるだけでなく、塑性変形し、前
記メッキ層のクラックなどの開口部が閉塞され、かつ平
滑化されるため、耐蝕性が向上する。
【0047】[繰り返し処理]前記メッキ処理工程、第
1の洗浄工程、熱処理工程、第2の洗浄工程、含浸工
程、および仕上げ工程で構成されるサイクルを経て耐蝕
性鉄系部材を製造する方法では、1回の前記サイクルに
より、きわめて高い耐蝕性を付与でき、鉄系部材が殆ど
腐蝕することがない。なお、前記サイクルにおいては、
第1の洗浄工程および第2の洗浄工程のうち、少なくと
もいずれか一方の工程、特に第2の洗浄工程が採用され
る。なお、前記サイクルにおいて、含浸工程、又は含浸
及び硬化工程を少なくとも2回以上繰返してもよい。さ
らに、前記メッキ処理工程と、第1の洗浄工程と、熱処
理工程と、第2の洗浄工程と、含浸工程と、仕上げ工程
とで構成されたサイクルを少なくとも2回繰返すことに
より、極めて高い耐蝕性を鉄系部材に付与してもよい。
前記サイクルの繰返し数は、2回以上であればよいが、
通常、2〜3回程度である場合が多い。複数回に亘り硬
質クロムメッキを施す場合、各メッキ処理による硬質ク
ロムメッキ層の厚みは、メッキ回数に応じて前記の範囲
10〜200μmから適当に選択でき、例えば、10〜
100μm、好ましくは15〜50μm程度である。な
お、複数回に亘り硬質クロムメッキを行なう場合、樹脂
含浸した後、硬質クロムメッキ処理すると、通常、含浸
した樹脂により均一な硬質クロムメッキ層を形成するこ
とが困難である。しかし、前記のサイクルでは、樹脂含
浸工程の後、バフ仕上げするので、硬質クロムメッキ処
理を複数回行なっても、通常、均一な硬質クロムメッキ
層を形成できる。
【0048】[耐蝕性鉄系部材の特性]このようにして
形成された硬質クロムメッキ層の最終的な厚みは、例え
ば、5〜100μm、好ましくは10〜80μm、さら
に好ましくは15〜75μm程度である。最終製品にお
ける特に好ましい硬質クロムメッキ層の厚みは、10〜
50μm(えば、20〜50μm)程度である。得られ
たシリンダーロッドなどの鉄系部材は、メッキ層にクラ
ックなどが存在していても、苛酷な条件下、例えば、塩
水噴霧試験に供しても腐蝕しない。
【0049】例えば、JIS H 8502(198
8)に規定するキャス試験を96時間行なっても、腐蝕
面積の指標となるレイティングナンバーは9.5〜1
0.0、好ましくは9.8〜10.0程度、特に10.
0程度であり、殆ど腐蝕しない。また、JIS H 8
502に規定する塩水噴霧試験を1200時間行なって
も、レイティングナンバーは9.5〜10.0、好まし
くは9.8〜10.0程度、特に10.0程度であり、
殆ど腐蝕しない。
【0050】なお、本発明の方法によれば、腐蝕性鉄系
基材に高い耐蝕性を付与できる。そのため、本発明は、
種々の腐蝕性鉄系基材、例えば、腐蝕性環境下又は腐蝕
が促進される環境下で使用される鉄系部材、特に摺接な
どにより耐蝕性が低下し易い摺動部材に適用できる。な
かでも、種々のシリンダーロッド、例えば、建設機械用
シリンダーロッド、特にピストンロッドに好適に適用で
きる。
【0051】[シリンダーロッド]シリンダーロッド
は、ロッドの進退動を制御するため、円筒状ロッドの軸
方向に位置検出用凹部、例えば、ロッドの軸方向に散在
する凹部、好ましくは所定のピッチで周方向に延びる複
数の溝が形成されていてもよい。このようなシリンダー
ロッドにおいて、周方向に形成された複数の溝の位置
は、位置検出センサ(例えば、磁気抵抗変化により検出
する電磁式位置検出センサ、静電容量により検出するポ
テンシオメータなどのセンサ)により検出できる。好ま
しいセンサには、溝に対応して渦電流が流れることを利
用して、溝の厚み(深さ)や幅を磁気的手段により検出
できる電磁式位置検出センサが含まれる。そのため、ロ
ッドをシリンダのピストンロッドとして使用した場合、
シリンダに対するピストンロッドの進退動に応答して生
じる渦電流の検出信号をカウントすることにより、ピス
トンロッドの進退度を検出できる。
【0052】位置検出用凹部は、ロッドの周面全体に亘
り形成した環状溝や螺旋状溝、ロッドの軸方向に沿っ
て、周方向に少なくとも部分的に延びる溝が好ましい。
特に好ましい位置検出用溝は、ロッドの軸方向に延びる
領域に、ロッドの軸方向と直交する周方向に延びてい
る。前記溝のピッチは、溝の位置検出精度が低下しない
範囲で選択でき、例えば、0.1〜50mm、好ましく
は0.5〜25mm程度である。溝の深さも、溝加工作
業性が低下しない範囲で適当に選択できるが、例えば、
1〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに
好ましくは25〜100μm程度である。ロッドの溝は
基準マーカーとなる基準溝を含んでいてもよい。基準マ
ーカーを含むシリンダーロッドは、円筒状の鉄系ロッド
の軸方向に、所定のピッチで周方向に延びる複数の位置
検出用溝と、これらの溝のピッチよりも大きなピッチで
周方向に形成された基準溝とを含んでいる。
【0053】このようなロッドでは、前記基準溝を基準
マーカーとして利用し、基準溝を検出する位置検出セン
サからの検出信号を基準信号とし、この基準信号に基づ
いて、ロッドをシリンダから前進又は後退させることが
できる。基準溝が形成されたロッドを用いると、基準溝
で生じる渦電流の検出信号を基準信号として利用できる
ので、基準点まで、ロッドをシリンダ内に一旦戻した
後、ロッドを前進又は後退させる必要がなく、ロッドを
基準位置に戻すためのストロークを小さくできる。しか
も、前記基準信号を基準として、位置検出用溝で生じる
渦電流の検出信号をカウントしながら、ロッドを所定ス
トロークだけ前進又は後退させることができる。
【0054】なお、基準溝も、溝状に限らず前記位置検
出用凹部と同様に形成できる。好ましい基準凹部は、前
記と同様に、ロッドの軸方向に沿って、周方向に少なく
とも部分的に延びる溝である。特に好ましい基準溝は、
ロッドの軸方向に延びる領域に、ロッドの軸方向と直交
する周方向に延びている。
【0055】このようなシリンダーロッドにおいて、前
記位置検出用凹部および基準凹部は、前記硬質クロムメ
ッキ層で埋設されていると共に、前記ロッドの表面は表
面が平滑な硬質クロムメッキ層で被覆されている。
【0056】前記シリンダーロッドは、鉄系ロッドの軸
方向に複数の凹部を形成した後、前記と同様にして硬質
クロムメッキ層を形成することにより製造できる。な
お、シリンダーロッドの凹部は、スクリーン印刷法、フ
ォトレジスト法、テープマスキング法などにより、凹部
に対応する部分を余してレジストを形成し、その後、エ
ッチングすることにより形成できる。また、硬質クロム
メッキ層の形成に際しては、前記凹部を除くロッドの領
域をマスクして硬質クロムメッキを施して、前記マスク
を除去し、再度、硬質クロムメッキを施すのが好まし
い。この場合、各硬質クロムメッキの後、必要に応じて
バフ研磨とともに、前記樹脂含浸と熱処理とを適当に組
合せて行なってもよく、第2の硬質クロムメッキ処理を
行なった後、最終的に、前記樹脂含浸と、熱処理と、必
要に応じてバフ研磨とを組合せて行なってもよい。な
お、マスクを除去した後、クロムメッキ部と鉄系ロッド
の鉄とが共存していても、効率的に鉄系ロッドの表面を
エッチングするためには、予めエッチング液、好ましく
は塩化第2鉄を含むエッチング液を使用してエッチング
し、下地を調整するのが好ましい。さらに、引続いて、
前記陽極酸化によるエッチング処理を行なうことによ
り、クロムメッキ部の表面もエッチングされ、鉄系ロッ
ドの表面全体を清浄化及び活性化できる。
【0057】
【発明の効果】本発明の方法によれば、硬質クロムメッ
キ、熱処理、洗浄処理および樹脂含浸とを組合せている
ので、硬質クロムメッキ層の厚みが小さくても、耐蝕性
が著しく優れる耐蝕性鉄系部材を確実に得ることができ
る。また、腐蝕性を有する鉄系基材に、ステンレススチ
ールと同等又はそれ以上の耐蝕性を確実に付与し、耐蝕
性鉄系部材を高い歩留まりで製造できる。さらに、前記
の如き優れた特性を有するシリンダーロッドを経済的か
つ生産性よく製造できる。
【0058】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。 実施例1 外径25mmφの低炭素鋼(S43C)製のロッドを脱
脂処理し、#320番のリングバフ、#600番のリン
グバフ、#800番のリングバフおよびサイザルバフに
よりバフ研磨(下地バフ処理)し、下記のメッキ浴を用
い、ロッドを陽極として陽極酸化法により電流密度35
A/dm2 、3分間のエッチングを行なった。 メッキ浴組成 無水クロム酸:250g/L 硫酸 :2.5g/L 三価クロム :1.0g/L 次いで、前記メッキ浴の温度50℃、電流密度35A/
dm2 、メッキ時間100分の条件で、ロッドをクロム
メッキし、厚み35μmの硬質クロムメッキ層を形成し
た。
【0059】得られた硬質クロムメッキ品を、100℃
の熱水で40分間湯洗し、温度250℃で6時間ベーキ
ングし、徐冷した後、硫酸洗浄液(硫酸濃度15g/
L)で1分間洗浄し、樹脂含浸工程に供した。
【0060】この樹脂含浸工程では、アクリル樹脂系含
浸剤(ダイアフロック(株)製、DIAKITE PF-1900 )と
硬化剤(ダイアフロック(株)製、A−1)とを含む含
浸液を用いて行なった。すなわち、硬質クロムメッキし
たロッドを収容する真空容器内を、真空ポンプにより5
Torrで10分間脱気し、前記含浸液を容器内に送液し、
5Torrで10分間真空浸漬含浸した後、大気圧下に開放
した。次いで、ロッドを取出して過剰な含浸液を液切り
し、乾燥炉に入れて175℃で2時間加熱して樹脂を硬
化させ、樹脂が含浸した硬質クロムメッキロッドを得
た。
【0061】そして、ロッドを徐冷した後、仕上げバフ
工程に供し、硬質クロムメッキが施されたピストンロッ
ドを作製した。なお、仕上げバフは、#800番のリン
グバフおよびサイザルバフの順序で行なった。バフ仕上
げにより、硬質クロムメッキ層の厚みは30μmとなっ
た。
【0062】実施例2 第2の洗浄工程において硫酸洗浄液(硫酸濃度15g/
L)で10分間洗浄する以外、実施例1と同様にして、
ピストンロッドを得た。
【0063】実施例3 第2の洗浄工程において硫酸水溶液I代えて塩酸水溶液
(塩酸濃度15g/L)で10分間洗浄する以外、実施
例1と同様にして、ピストンロッドを得た。
【0064】実施例4 外径25mmφの低炭素鋼(S43C)製のロッドを脱
脂処理し、実施例1と同様のメッキ浴を用い、ロッドを
陽極として陽極酸化法により電流密度35A/dm2
3分間のエッチングを行なった。次いで、実施例1と同
様にして、ロッドをクロムメッキし、厚み35μmの硬
質クロムメッキ層を形成した。得られた硬質クロムメッ
キ品を、100℃の熱水で40分間湯洗し、温度175
℃で6時間ベーキングし、徐冷した後、硫酸洗浄液(硫
酸濃度15g/L)で1分間洗浄し、実施例1と同様の
樹脂含浸工程、硬化工程及び仕上げバフ工程に供し、硬
質クロムメッキが施されたピストンロッドを作製した。
【0065】実施例5 第2の洗浄工程において硫酸洗浄液(硫酸濃度15g/
L)で10分間洗浄する以外、実施例6と同様にして、
ピストンロッドを得た。
【0066】実施例6〜8 第1の洗浄工程を下記の条件で行なうとともに、第2の
洗浄工程において酸洗浄液(硫酸濃度15g/L)で1
0分間洗浄する以外、実施例4と同様にして、ピストン
ロッドを得た。
【0067】 第1の洗浄工程 実施例6: 100℃の熱水で10分間湯洗 実施例7: 90℃の熱水で10分間湯洗 実施例8: なし 実施例9 外径25mmφの低炭素鋼(S43C)製のロッドを脱
脂処理し、実施例1と同様にして下地バフ処理し、実施
例1と同様のメッキ浴を用い、ロッドを陽極として陽極
酸化法により電流密度35A/dm2 、3分間のエッチ
ングを行なった。次いで、実施例1と同様にして、ロッ
ドをクロムメッキし、厚み35μmの硬質クロムメッキ
層を形成した。得られた硬質クロムメッキ品を、90℃
の熱水で40分間湯洗し、温度250℃で4時間30分
ベーキングし、徐冷した後、酸洗浄することなく、実施
例1と同様の樹脂含浸工程、硬化工程及び仕上げバフ工
程に供し、硬質クロムメッキが施されたピストンロッド
を作製した。
【0068】実施例10 150℃で6時間ベーキングし、仕上げバフ工程により
厚み25μmの硬質クロムメッキ層を形成する以外、実
施例1と同様にして、ピストンロッドを得た。
【0069】実施例11 実施例1のロッドに代えて、外径65mmφの低炭素鋼
(S43C)製のロッド(ロッド全体の長さ590m
m、シャフトの長さ120mm)を用い、実施例1と同
様にして、厚み30μmの硬質クロムメッキ層を形成し
た。そして、クロムメッキ品を実施例2と同様にして湯
洗し、熱処理工程において、コイル(内径86mmφ、
幅20mm)の中空部に前記ロッドを配し、電圧300
V、高周波発生機の出力50kw、周波数5.0kH
z、コイルの送り速度2.8m/分の条件で高周波熱処
理し、実施例2と同様に酸洗浄液で洗浄した。なお、上
記熱処理工程でのピストンロッドの表面温度を測定した
ところ、220℃であった。酸洗浄液で洗浄したロッド
を、実施例1と同様にして樹脂含浸工程に供し、樹脂を
含浸した後、最終バフ仕上げに供し、硬質クロムメッキ
層の厚み27μmのシリンダーロッドを作製した。
【0070】実施例12 実施例11のコイルを用い、高周波加熱条件を、電圧4
60V、高周波発生機の出力80kw、周波数6.0k
Hz、コイルの送り速度3.3m/分とする以外、実施
例11と同様にして、シリンダーロッドを作製した。な
お、上記の条件で高周波熱処理したときのピストンロッ
ドの表面温度を測定したところ、500℃であった。
【0071】比較例1 第1の洗浄処理、ベーキング処理及び第2の洗浄処理を
行なうことなく、実施例1と同様にして、厚み30μm
の硬質クロムメッキ層が形成されたピストンロッドを得
た。
【0072】比較例2 第1の洗浄処理、第2の洗浄処理及び樹脂含浸処理を行
なうことなく、実施例1と同様にして、厚み30μmの
硬質クロムメッキ層が形成されたピストンロッドを得
た。
【0073】比較例3 第1の洗浄処理、ベーキング処理、第2の洗浄処理及び
樹脂含浸処理を行なうことなく、実施例1と同様にし
て、厚み30μmの硬質クロムメッキ層が形成されたピ
ストンロッドを得た。
【0074】比較例4 第1の洗浄処理および第2の洗浄処理を行なうことな
く、実施例1と同様にしてクロムメッキし、厚み50μ
mの硬質クロムメッキ層を形成した。
【0075】そして、各実施例及び比較例で得られたピ
ストンロッドを、JIS H 8502(1988)に
規定するキャス試験方法に供し、噴霧時間(96時間お
よび480時間)の経過に伴なうロッドの腐蝕欠陥(耐
蝕性)の程度を、ロッド表面を拭くことなく、レイティ
ングナンバー標準図表により評価した。なお、キャス試
験における試験液は、塩化ナトリウム濃度40g/Lの
水溶液に、塩化第2銅・2水和物0.268gを溶解
し、酢酸によりpH3.0に調整することにより得た。
また、キャス試験は50℃で行なった。結果を表1に示
す。レイティングナンバー標準図表は、全腐蝕面積率
(%)に対応し、全腐蝕面積とレイティングナンバーと
の関係は、以下の通り、数値が大きい程、耐蝕性が高
い。 全腐蝕面積(%) レイティングナンバー 0 10 0〜0.02 9.8 0.02〜0.05 9.5 0.05〜0.07 9.3 0.07〜0.10 9.0 0.10〜0.25 8 0.25〜0.50 7 0.50〜1.00 6 1.00〜2.50 5 2.50〜5.00 4 5.00〜10.0 3 10.0〜25.0 2 25.0〜50.0 1
【0076】
【表1】 表1より、各実施例のピストンロッドは、比較例のロッ
ドに比べて、耐蝕性が著しく改善され、殆ど腐蝕するこ
とがなかった。
【0077】実施例13〜15 実施例2、実施例5及び実施例8の操作を、それぞれ日
時を異にして繰り返し、1日当たり1本の割合で、それ
ぞれ合計20本のピストンロッドを得た。
【0078】比較例5及び6 第1の洗浄工程及び第2の洗浄工程で洗浄処理すること
なく、実施例2及び実施例5の操作を、それぞれ日時を
異にして繰り返し、1日当たり1本の割合で、それぞれ
合計20本のピストンロッドを得た。
【0079】そして、前記と同様にしてキャス試験に供
し、噴霧時間480時間における腐蝕欠陥(耐蝕性)の
程度を、レイティングナンバー標準図表により評価し
た。耐蝕性のレベル(レイティングナンバー)毎にロッ
ドの本数を分類したところ、表2に示す結果を得た。
【0080】
【表2】 表2より明らかなように、洗浄工程の採用により、熱処
理温度が低くても、クロムメッキ品に対して確実に高い
耐蝕性を付与できる。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 腐蝕性鉄系基材を硬質クロムメッキする
    メッキ処理工程と、熱処理する熱処理工程と、樹脂又は
    封止剤を含浸する含浸工程と、バフ仕上げする仕上げ工
    程とを含む方法であって、前記メッキ処理工程及び/又
    は熱処理工程の後、洗浄処理する耐蝕性鉄系部材の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 熱処理工程の後、酸で洗浄する請求項1
    記載の耐蝕性鉄系部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 熱処理工程の後、無機酸で洗浄する請求
    項1記載の耐蝕性鉄系部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 腐食性鉄系円筒状ロッドを硬質クロムメ
    ッキして10〜100μmの硬質クロムメッキ層を形成
    するメッキ処理工程と、100℃以上の温度で熱処理す
    る熱処理工程と、少なくとも減圧下で熱硬化性樹脂又は
    封止剤を含浸させる含浸工程と、含浸した樹脂又は封止
    剤を硬化させる硬化工程と、バフ仕上げする仕上げ工程
    とを含む方法であって、少なくとも熱処理工程の後、酸
    で洗浄する請求項1記載の耐蝕性鉄系部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 熱処理工程において温度100〜500
    ℃で熱処理する請求項1又は4記載の耐蝕性鉄系部材の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 鉄系基材がシリンダーロッドである請求
    項1又は4記載の耐蝕性鉄系部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 熱処理工程において温度100〜300
    ℃で30分〜12時間熱処理する請求項1又は4記載の
    耐蝕性鉄系部材の製造方法。
  8. 【請求項8】 アクリル又はメタクリル系のオリゴマー
    又はモノマーで構成され、25℃での粘度が1〜50c
    psの熱硬化性樹脂又は封止剤を用いる請求項1又は4
    記載の耐蝕性部材の製造方法。
  9. 【請求項9】 含浸を0.1〜100Torrの減圧下で行
    なう請求項1又は4記載の耐蝕性鉄系部材の製造方法。
  10. 【請求項10】 バフ仕上げにより5〜95μmの硬質
    クロムメッキ層を形成する請求項1又は4記載の耐蝕性
    鉄系部材の製造方法。
  11. 【請求項11】 鉄系基材を硬質クロムメッキして15
    〜60μmの硬質クロムメッキ層を形成するメッキ処理
    工程と、120〜250℃で熱処理する熱処理工程と、
    無機酸で洗浄する洗浄工程と、1〜50Torrの減圧下
    で、25℃での粘度1〜15cpsの熱硬化性樹脂又は
    封止剤を含浸させる含浸工程と、含浸した樹脂又は封止
    剤を硬化させる硬化工程と、バフ仕上げする仕上げ工程
    とで構成された腐蝕性鉄系基材の製造方法。
  12. 【請求項12】 腐蝕性鉄系円筒状ロッドを硬質クロム
    メッキし、メッキ処理したロッドを熱処理し、熱処理し
    たロッドに熱硬化性樹脂又は封止剤を含浸させ、含浸処
    理したロッドをバフ仕上げする工程を含み、前記メッキ
    処理及び/又は熱処理の後、洗浄処理することにより得
    られる耐蝕性鉄系部材であって、JIS H 8502
    に規定するキャス試験を96時間行なったとき、レイテ
    ィングナンバーが9.5〜10.0である耐蝕性鉄系部
    材。
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