JPH09277307A - ホットランナー装置とこれを組み込んだ射出成形用金型装置及びその使用方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】小物の成形品の表面に、ゲート跡や突出し機構
の跡が残らず、コールドランナーやコールドゲートの跡
処理の必要もなく、ランナーレスで大量に成形できるホ
ットランナー装置を提供する。 【解決手段】ホットノズル（１１）のゲート（１１ａ）
をニードル弁（１３）により開閉するバルブゲート方式
のホットランナー装置（１０）において、ニードル弁
（１３）の先端がホットノズル（１１）のゲート先端よ
りキャビティ（３）内へ突き出し可能なよう構成したこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、バルブゲート方式
のホットランナー装置とこれを組み込んだ射出成形用金
型装置及びその使用方法に関する。本発明は、小物の各
種機械部品、ＯＡ部品、電子部品等の射出成形に特に好
適に利用できる。

【０００２】

【従来の技術】ホットランナー装置は、成形サイクル
中、常にホットノズルのゲートを開口したままのオープ
ンゲート方式と、射出保圧工程中においてはホットノズ
ルのゲートを開口させ、冷却及び型開閉動作中は、ホッ
トノズルのゲートを閉鎖するバルブゲート方式に分類さ
れる。本発明は、後者のバルブゲート方式のホットラン
ナー装置に係るものである。

【０００３】図４には、従来のバルブゲート方式のホッ
トランナー装置１０′の最も一般的な形態が示されてお
り、図中、１１′はホットノズル、１１ａ′はそのゲー
ト、１１ｂ′は内孔、１２′はヒーター、１３′はニー
ドル弁、１４′はアクチュエーター、１４ａ′はそのピ
ストン、１４ｂ′はシリンダーを示している。このよう
な従来のバルブゲート方式のホットランナー装置では、
ニードル弁１３′を用いてホットノズル１１′のゲート
１１ａ′からの樹脂漏れを防ぎ、効率的にゲートの開閉
操作を行なうことを目的としていた。このように、従来
のバルブゲート方式のホットランナー装置では、そのニ
ードル弁１３′によりホットノズルのゲート１１ａ′の
開閉を効率的に行うことのみを目的としていたため、成
形品をキャビティから離型させるためには、ホットノズ
ル１１′を内蔵した型板の反対側の型板に、突出しピ
ン、突出しスリーブ、突出しプレート等の突出し機構を
装備する必要があった。

【０００４】しかしながら、このような突出し機構を用
いると、成形品の表面に突出しピンの跡や突出しスリー
ブの跡が形成されるという問題のほか、突出しプレート
が適用できる形状が限定される等の問題点があった。ま
た、成形品が大型の場合には、製品設計上これら突出し
ピンの跡や突出しスリーブの跡を許容できる箇所が多々
存在するため、それほど問題はないが、小物の成形品、
例えばスラスト荷重を支える機械部品であるスラストプ
ラグ、スラストプレート、スラストワッシャーや、摺動
面を有するリテーナー、フェイスプレート、ローラー、
ボールベアリング用ボール、締付面を有するナット、ネ
ジ、キャップ、フェルール等は、成形品の裏側にはゲー
ト跡が許容されても、表側には突出しピンの跡が許容さ
れない等の制約がある。そのため、そのような小物の成
形品では、通常はセミホットランナー方式を採り入れ、
成形品のランナー部分にホットノズルと突出しピンの跡
を形成させるようにしていた。

【０００５】図５には、そのような従来のセミホットラ
ンナー方式の射出成形用金型装置の部分断面図が示され
ており、図中、１は固定側金型、２は可動側金型、３は
キャビティ、４はスプルー、５はマニホールド、６はリ
ターンピン、７は突出しピン、８は突出しプレート、９
ａはコールドランナー、９ｂはコールドゲート、１０′
はホットランナー装置、１１′はそのホットノズル、１
１ａ′はゲート、１３′はニードル弁、１４′はアクチ
ュエーターである。このようなセミホットランナー方式
の射出成形用金型装置を用いて小物の成形品を成形した
場合には、成形後にコールドランナー９ａ部分及びコー
ルドゲート９ｂ部分の跡処理が必要となり、成形品の数
量が多い場合には実用的でなかった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】このように、小物の成
形品の成形において、成形品の裏面にはゲート跡や突出
し機構の跡が許容されても、成形品の表面には、製品設
計上、これらの跡が許容されない状況下において、成形
後コールドランナー及びコールドゲートの跡処理の必要
もなく、ランナーレスで大量に成形できるホットランナ
ー装置等の開発が望まれていた。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意検討した結果、ニードル弁を用いたバル
ブゲート方式のホットランナー装置において、ニードル
弁、ホットノズル、及びアクチュエーターに工夫を加え
ることで、当該ニードル弁を用いて成形品を離型させる
ことができることを見い出し、本発明を完成した。即
ち、本発明は、ホットノズルのゲートをニードル弁によ
り開閉するバルブゲート方式のホットランナー装置にお
いて、ニードル弁の先端がホットノズルのゲート先端よ
りキャビティ内へ突き出し可能なよう構成したことを特
徴とするものである。この場合、キャビティ内に充填さ
れた樹脂の冷却、固化期間中は、ニードル弁の先端がホ
ットノズルのゲート先端よりキャビティ内へ突き出すの
を防止するリミット機構を設けることが推奨される。ニ
ードル弁の突出し動作を容易ならしめるよう、ニードル
弁の先端外周面、若しくはホットノズルのゲートの内周
面には、軸方向に沿った溝を形成することが推奨され
る。

【０００８】また、本発明は、上記の如き構成のホット
ランナー装置を組み込んだことを特徴とする射出成形用
金型装置を提供する。更にまた、本発明は当該射出成形
用金型装置の使用方法を提供するものである。即ち、上
記射出成形用金型装置により射出成形を行なう際、キャ
ビティへの樹脂の充填から成形品の離型までの過程にお
いて、閉型状態において、ホットランナー装置のニード
ル弁の先端をホットノズル内へ十分に後退させ、ゲート
を通じてキャビティ内に樹脂を充填するステップと、射
出装置のスクリューを回転させ、キャビティ内に保圧を
与えるステップと、ニードル弁の先端がゲート内に侵入
しホットノズルの先端近くに達するまでニードル弁を前
進させるステップと、キャビティ内の樹脂を冷却、固化
せしめるステップと、可動側金型を固定側金型から引き
離し、型を開くステップと、ニードル弁を更に前進さ
せ、その先端をホットノズルの先端よりキャビティ内へ
突出せしめて、固化した成形品を突き出し、離型するス
テップと、を順次遂行することを特徴とする前記射出成
形用金型装置の使用方法を提供するものである。かかる
使用方法を採用することにより、成形品をランナーレス
で成形することが可能となる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつゝ本発明を
更に具体的に説明する。図１は、本発明に係るホットラ
ンナー装置の一実施例におけるニードル弁の動作を示す
断面説明図である。図２は、図１に示したホットランナ
ー装置を組み込んだ本発明に係る射出成形用金型装置の
部分断面図である。図３は、図１に示したホットランナ
ー装置のゲート部及びニードル弁の先端部の望ましい構
成を示す拡大図である。各図中、１は固定側金型、２は
可動側金型、３はキャビティ、４はスプルー、５はマニ
ホールド、６はリターンピン、１０はホットランナー装
置、１１はそのホットノズル、１１ａはゲート、１１ｂ
は内孔、１２はヒーター、１３はニードル弁、１４はア
クチュエーター、１４ａはそのピストン、１４ｂはシリ
ンダー室、１４ｃはピストンロッド、１５はリミットバ
ーである。

【００１０】而して、図２に示した実施例における本金
型は、射出成形機の固定側プラテンに取り付ける固定側
金型１と、可動側プラテンに取り付ける可動側金型２と
に二分され、これらを型合わせしたとき、成形品を成形
するための空間であるキャビティ３が形成されるように
なっている。この金型を図示しない公知の射出成形機の
プラテンに取り付けて使用する。

【００１１】図示しない公知の射出装置のシリンダー内
で溶融された樹脂は、スプルー４より注入され、本発明
のホットランナー装置内のマニホールド５を経由し、ホ
ットノズル１１の内孔１１ｂへ導入され、ゲート１１ａ
からキャビティ３内へ射出、充填される。この時、ニー
ドル弁１３の先端は、図１に示すようにホットノズル１
１内の位置ａに止まっているため、ホットノズルのゲー
ト１１ａは開口しており，溶融樹脂が容易にキャビティ
３内へ流出できる。

【００１２】このようにして、樹脂がキャビティ３内に
充填された後、成形品のヒケを防止するために、図示し
ない公知の射出装置のスクリューを回転させ、溶融樹脂
の圧力を高めることにより、キャビティ３内に保圧を与
える。成形品のヒケを防止できるまで保圧を与えた後、
キャビティ３内の樹脂の逆流、及びホットノズル１１内
の樹脂の漏洩を防ぐために、ニードル弁１３の先端をホ
ットノズル１１の先端近傍の位置ｂまで、空圧もしくは
油圧で動作するアクチュエーター１４を用いて前進させ
る。このタイミングは樹脂の種類、樹脂温度、金型温
度、ホットノズル１１のゲート１１ａの口径等によって
変える必要があるが、通常、結晶性樹脂の場合で充填完
了後１秒から６秒後、非晶性樹脂の場合で、３秒から１
２秒後に動作させる必要がある。

【００１３】なお、型が閉じている期間中は、ニードル
弁１３の先端が位置ｂを越えて前進しないように、図示
した実施例においては、ピストンロッド１４ｃの上端に
取り付けたリミットバー１５が、リターンピン６の上端
に阻止されて、ニードル弁１３がそれ以上は前進（下
降）しないようになっている。このリミット機構は、図
示した実施例に限らず、同様な動作を達成し得る機構で
あれば、任意の構成を採用できる。

【００１４】このようにゲート１１ａをニードル弁１３
で強制的に閉鎖したのち、キャビティ３内の樹脂を冷却
させるための冷却時間を設定する。所定の冷却時間が経
過した後、図示しない射出成形機の型開閉装置を作動さ
せ、可動側のプラテンを移動させて、可動側金型２を固
定側金型１から引き離し、型を開く。

【００１５】このとき、十分に冷却された成形品は変形
しにくく、離型し易いため、本発明のホットランナー装
置のニードル弁１３の先端をアクチュエーター１４を用
いてホットノズル１１の先端からキャビティ３内の位置
ｃまで前進させて（図１参照）、成形品を突き出して離
型させる。

【００１６】なお、上記の如く型を開いたとき、リター
ンピン６は、可動側金型２と共に下方へ移動しているた
め、もはやその先端がリミットバー１５を阻止すること
はなく、ニードル弁１３はｂ位置を越えてｃ位置まで前
進することが可能となるものである。

【００１７】本発明のホットランナー装置のニードル弁
１３の形状は、ゲート１１ａの開閉よりも、むしろ突出
し動作を効率的に且つ確実に行うために、図３に示した
ような形状とすることが推奨される。突出し動作を確実
に行うために、ホットノズルのゲート１１ａとニードル
弁１３との間のクリアランスｐは１０〜５０ミクロン程
度が良好で、樹脂の逃げを確保するためにニードル弁１
３の先端に軸方向に沿った複数の溝１３ａ，１３ａを形
成することが推奨される。或いは、同様の溝をホットノ
ズルのゲート１１ａの内周面に形成するようにして良
い。また、耐摩耗性と摺動特性を向上させるため、ニー
ドル弁１３の先端外周面及びホットノズルのゲート１１
ａの内周面に、ＴｉＣＮ、ＴｉＮコーティングを施すこ
とが推奨される。ニードル弁１３及びホットノズル１１
のゲート１１ａ部分の材質は、量産を行う上で有利なも
のを適宜選定する。

【００１８】なお、本発明のホットランナー装置１０を
金型に組み込む場合、図２に示した実施例では固定側金
型１の側へ組み込んだが、これとは逆に、可動側金型２
の側へ組み込むようにしてもよい。また、ホットランナ
ー装置のホットノズル１１の数も１本に限らず、複数本
でも良く、ゲート１１ａの数も、１つのホットノズルに
複数個設けるようにしてもよい。更には、ホットランナ
ー装置のニードル弁１３を動作させるアクチュエーター
１４は、空圧、油圧、電動等、任意の駆動装置を利用で
き、突出し板に連結しても良い。

【００１９】

【発明の効果】本発明によれば、本発明のホットランナ
ー装置を、射出成形用金型に組み込んで使用すれば、樹
脂材料の種類に関係無く、表面にはゲート跡及び突出し
機構の跡を残さず、裏面にのみホットノズルのゲート
跡、及びニードル弁の突出しの跡を残した成形品を、ラ
ンナーレスで大量に成形することができる。これは、例
えばスラスト荷重を支える機械部品であるスラストプラ
グ、スラストプレート、スラストワッシャーや、摺動面
を有するリテーナー、フェイスプレート、ローラー、ボ
ールベアリング用ボール、締付面を有するナット、ネ
ジ、キャップ、フェルール等の広い分野の成形に極めて
有効である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るホットランナー装置の一実施例に
おけるニードル弁の動作を示す断面説明図である。

【図２】図１に示したホットランナー装置を組み込んだ
本発明に係る射出成形用金型装置の部分断面図である。

【図３】図１に示したホットランナー装置のゲート部及
びニードル弁の先端部の望ましい構成を示す拡大図であ
る。

【図４】従来のニードル弁を用いたバルブゲート方式の
ホットノズルの部分断面図である。

【図５】従来のセミホットランナー方式の射出成形用金
型装置の部分断面図である。

【符号の説明】

１ 固定側金型 ２ 可動側金型 ３ キャビティ ４ スプルー ５ マニホールド ６ リターンピン １０ ホットランナー装置 １１ ホットノズル １１ａゲート １２ ヒーター １３ ニードル弁 １４ アクチュエーター １５ リミットバー

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ホットノズル（１１）のゲート（１１ａ）
   をニードル弁（１３）により開閉するバルブゲート方式
   のホットランナー装置（１０）において、ニードル弁
   （１３）の先端がホットノズル（１１）のゲート先端よ
   りキャビティ（３）内へ突き出し可能なよう構成したこ
   とを特徴とするホットランナー装置。
2. 【請求項２】キャビティ（３）内に充填された樹脂の冷
   却、固化期間中は、ニードル弁（１３）の先端がホット
   ノズル（１１）のゲート先端よりキャビティ内へ突き出
   るのを防止するリミット機構（１５）を設けた請求項１
   に記載のホットランナー装置。
3. 【請求項３】ニードル弁（１３）の先端外周面に軸方向
   に沿った溝（１３ａ）を形成した請求項１に記載のホッ
   トランナー装置。
4. 【請求項４】ホットノズル（１１）のゲート（１１ａ）
   の内周面に軸方向に沿った溝を形成した請求項１に記載
   のホットランナー装置。
5. 【請求項５】請求項１ないし４のいずれか一項に記載の
   ホットランナー装置（１０）を組み込んだことを特徴と
   する射出成形用金型装置。
6. 【請求項６】請求項５に記載の射出成形用金型装置によ
   り射出成形を行なう際、キャビティへの樹脂の充填から
   成形品の離型までの過程において、 閉型状態において、ホットランナー装置のニードル弁
   （１３）の先端をホットノズル（１１）内へ十分に後退
   させ、ゲート（１１ａ）を通じてキャビティ（３）内に
   樹脂を充填するステップと、 射出装置のスクリューを回転させ、キャビティ（３）内
   に保圧を与えるステップと、 ニードル弁（１３）の先端がゲート（１１ａ）内に侵入
   しホットノズル（１１）の先端近くに達するまでニード
   ル弁を前進させるステップと、 キャビティ（３）内の樹脂を冷却、固化せしめるステッ
   プと、 可動側金型（２）を固定側金型（１）から引き離し、型
   を開くステップと、 ニードル弁（１３）を更に前進させ、その先端をホット
   ノズル（１１）の先端よりキャビティ（３）内へ突出せ
   しめて、固化した成形品を突き出し、離型するステップ
   と、 を順次遂行することを特徴とする請求項５に記載した射
   出成形用金型装置の使用方法。
7. 【請求項７】成形品をランナーレスで成形することを特
   徴とする請求項６に記載の使用方法。