JPH09241311A - 粉末混合光硬化性流動樹脂組成物 - Google Patents

粉末混合光硬化性流動樹脂組成物

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JPH09241311A
JPH09241311A JP8056202A JP5620296A JPH09241311A JP H09241311 A JPH09241311 A JP H09241311A JP 8056202 A JP8056202 A JP 8056202A JP 5620296 A JP5620296 A JP 5620296A JP H09241311 A JPH09241311 A JP H09241311A
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component
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JP8056202A
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English (en)
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Nobuyoshi Tajima
信芳 田島
Masaki Yokohama
正毅 横浜
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Olympus Corp
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Olympus Optical Co Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F2/00Processes of polymerisation
    • C08F2/46Polymerisation initiated by wave energy or particle radiation
    • C08F2/48Polymerisation initiated by wave energy or particle radiation by ultraviolet or visible light

Abstract

(57)【要約】 【課題】光硬化時に樹脂組成物中に含まれる粉末の体積
含有率を低くして光硬化性を保ち、且つ焼結する際に粉
末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体積含有率を高くす
ることが可能な粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を提供
すること。 【解決手段】(a)ラジカル重合性官能基を1つ以上有
する有機物質から成るモノマーと、(b)ラジカル重合
性官能基を2つ以上有する有機物質から成る架橋剤と、
(c)光重合開始剤と、(d)光照射に対して反応性を
示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒と、
(e)焼結によって三次元構造体に加工し得る粉末とを
含有し、上記成分中の粉末の体積比(Vx )が0.27
〜0.4、粉末を除いた成分中の溶媒の体積比(Vy )
が0.55〜0.75、溶媒を除いた成分中の粉末の体
積比(Vz )が0.6以上の割合となるように各成分が
含有されていることを特徴とする粉末混合光硬化性流動
樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光照射によって重
合し、溶剤に不溶化するか、または液体から固体に変化
する、三次元構造体を造形するための粉末混合光硬化性
流動樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、セラミック
製三次元構造体に加工し得る粉末を含有した粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物であって、該粉末混合光硬化性樹
脂組成物を光硬化し、三次元樹脂成形体を造形した後
に、乾燥等を行ってこれを収縮させ、更に焼結すること
によりセラミック製三次元構造体を成形することができ
る組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年マイクロマシーンの研究が盛んであ
り、特に三次元部品加工技術のニーズは大きく、多種の
微細加工技術が研究されている。これらの微細加工技術
の1つとして、三次元光造形法が知られている。三次元
光造形法とは、光硬化性樹脂に光を照射して光硬化層を
造形し、該光硬化層を複数層積み重ねて、所望の三次元
樹脂成形体を形成する方法である。三次元光造形に関し
ては、「丸山洋二、大川和夫、星野誠治、斎藤直一郎、
中井孝、「光造形法」日刊工業新聞社、(1990)」
に詳しく説明されている。
【0003】この三次元光造形法を利用した三次元構造
体の加工方法として、セラミックス粉末を含有した粉末
混合光硬化性流動樹脂を用い、光をパターン照射して樹
脂成形体を製造し、この後に脱脂及び焼結を行ってセラ
ミックス構造体を得る技術が知られている。例えば、特
開平6−329460には、セラミックス粉末100重
量部、光硬化性樹脂0.5〜50重量部、溶媒10〜2
00重量部とからなるスラリーを用い、三次元光造形法
によってセラミックス構造体を立体的に成型する方法が
記載されている。また、「光造形シンポジウム予稿集、
52−55(1994)」には、シランカップリング処
理したセラミックス粉末を含有した粉末混合光硬化性樹
脂を用い、三次元光造形法によってセラミックス構造体
を立体的に成型する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】セラミックス構造体を
得るためには、セラミックス粉末を混合した粉末混合光
硬化性流動樹脂を光硬化するが、セラミックス粉末の含
量が多くなると粉末が光を遮断して光の透過性が悪くな
ること、及び該光硬化性樹脂の粘度が高くなり、光造形
装置での使用が困難になる等の理由から、所望の樹脂成
形体を得ることが困難となる。また、逆に、粉末含量を
少なくすれば、光硬化は効率よく行うことができるが、
得られた三次元樹脂成形体を脱脂及び焼結するときに、
非等方性の収縮を起こし、焼結した構造体の保形性が悪
く、また崩れが生じやすくなり所望のセラミックス構造
体を得ることが困難となる。
【0005】従って、三次元樹脂成形体に成形した後に
脱脂及び焼結を行い、所望のセラミックス構造体を得る
ためには、粉末混合光硬化性流動樹脂に含まれるセラミ
ックス粉末の含量が非常に重要な要素となる。特に、光
硬化時には粉末混合光硬化性流動樹脂組成物中に含まれ
る粉末含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ焼結
する際には三次元樹脂成形体に含まれるセラミック粉末
の含有率を高くする工夫が必要となる。
【0006】一方、セラミックス粉末を含有する粉末混
合光硬化性流動樹脂組成物においては、該組成物中に含
有されるセラミックス粉末の体積含有率も非常に重要な
要素となる。セラミック粉末の含有率を体積比で表すこ
とが重要なのは以下の理由による。含有されるセラミッ
ク粉末を重量比で規定する場合、セラミックス粉末はそ
の種類によって比重が異なるため、同じ重量比で含有量
を計算しても、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物中のセ
ラミックス粉末の体積含量が使用するセラミックス粉末
によって異なることとなる。このため、使用するセラミ
ックス毎に焼結後に得られる構造体のサイズが異なって
しまう。従って、種々のセラミックス粉末を用いて、同
じサイズのセラミッス構造体を得る場合、セラミックス
毎に重量比を求めなければならなず煩雑であった。
【0007】このように、三次元光造形法による三次元
構造体を得る技術においては、上述のように光硬化時に
は樹脂組成物中に含まれる粉末含有率を低くして光硬化
性を保ちつつ、且つ焼結する際には三次元樹脂成形体に
含まれるセラミック粉末の含有率を高くするという課題
に加え、樹脂中に含有されているセラミックス粉末を体
積含有率で規定し、これを最適化することも非常に重要
な課題となる。
【0008】しかしながら、特開平6−329460に
は、組成物の各成分の含有率が重量比で記載されてお
り、体積比の記載はされていない。更に、上記課題の解
決方法についても特に記載されていない。
【0009】また、「光造形シンポジウム予稿集、52
−55(1994)」は、シランカップリング処理した
セラミックス粉末を用いることによって、粉末含有率を
向上できることが記載されているものの、その最多含有
率は体積にして30%前後であり、焼結体を機能部品と
して利用するには更に多量の粉末を混合することが望ま
しい。
【0010】本発明は、上記課題を解決すべくなされた
もので、その目的は、光硬化時には組成物中に含まれる
粉末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ
焼結する際には三次元樹脂成形体に含まれる粉末の体積
含有率を高くすることが可能な、焼結によって三次元構
造体に加工し得る粉末を含有した粉末混合光硬化性流動
樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の(1
)から(3)の光硬化性流動樹脂組成物によって解決
することができる。
【0012】(1) 光の作用によって重合し溶剤に不
溶化するか、または液体から固体に変化して構造体を造
形することができる粉末混合光硬化性流動樹脂組成物に
おいて、その必須成分として、(a)ラジカル重合性官
能基を1つ以上有する有機物質から成る少なくとも1種
のモノマーと、(b)ラジカル重合性官能基を2つ以上
有する有機物質から成る架橋剤と、(c)光重合開始剤
と、(d)光照射に対して反応性を示さず光硬化後の乾
燥によって除去し得る溶媒と、(e)焼結によって三次
元構造体に加工し得る粉末とを含有し、これら必須成分
中の前記粉末(e)の体積比(Vx )が0.27〜0.
4、前記粉末を除いた必須成分中の前記溶媒(d)の体
積比(Vy )が0.55〜0.75、前記溶媒を除いた
必須成分中の前記粉末(e)の体積比(Vz)が0.6
以上の割合であることを特徴とする粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物。
【0013】(2) 前記成分(e)の粉末が、一方の
側鎖に該粉末と反応し得る官能基を含有するシランを有
し、他方の側鎖にラジカル重合可能な官能基を有する有
機化合物によって表面処理されていることを特徴とする
上記(1)に記載の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
【0014】(3) 前記成分(a)のモノマーが水溶
性の有機物質であり、前記(d)の溶媒が水であること
を特徴とする上記(1)又は(2)に記載の粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物。
【0015】以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0016】本発明においては以下の用語を使用した。
【0017】光硬化性流動樹脂組成物とは、上記成分
(a)から(d)までを混合した流動性の光硬化性樹脂
組成物をいう。
【0018】粉末混合光硬化性流動樹脂組成物とは、焼
結によってセラミックス構造体に加工しうる粉末(上記
成分(e))を光硬化性流動樹脂組成物に含有させた光
硬化性流動樹脂組成物をいう。
【0019】また、三次元樹脂成形体とは、前記粉末混
合光硬化性樹脂組成物を光硬化し、三次元的に成形した
造形体、又は該造形体を浸透圧、相転移若しくはpH変
化により等方的に収縮させた造形体をいう。
【0020】粉末混合樹脂成形体とは、前記三次元樹脂
成形体を乾燥させることにより等方的に収縮させた造形
体をいう。
【0021】更に、三次元構造体とは、前記粉末混合樹
脂成形体を脱脂・焼結して得られるセラミックス製三次
元構造体をいう。
【0022】本発明の第一の側面は、粉末混合光硬化性
流動樹脂組成物に関する。
【0023】本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
は、(a)ラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質から成る少なくとも1種のモノマーと、(b)ラジ
カル重合性官能基を2つ以上有する有機物質から成る架
橋剤と、(c)光重合開始剤と、(d)光照射に対して
反応性を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒
と、(e)焼結によって三次元構造体に加工し得る粉末
とを含有し、該必須成分中の前記粉末の体積比(Vx )
が0.27〜0.4、前記粉末を除いた必須成分中の前
記溶媒体積比(Vy )が0.55〜0.75、前記溶媒
を除いた必須成分中の前記粉末体積比(Vz )が0.6
以上の割合で含有されていることを特徴とする。ここ
で、上記必須成分全体に対する粉末の体積比をVx 、上
記必須成分のうち粉末(e)を除いた必須成分の合計に
対する溶媒(d)の体積比をVy 、前記必須成分のうち
溶媒を除いた必須成分の合計に対する粉末(e)の体積
比をVz とした。即ち、これらは下記(1)から(3)
式で表される。
【0024】 Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +Ve ) 0.27≦Vx ≦0.4 (1) Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd ) 0.55≦Vy ≦0.75 (2) Vz =ve /(Va +Vb +Vc +Ve ) 0.6 ≦Vz (3) ここで、(Va )はモノマー(a)の体積、(Vb )は
架橋剤(b)の体積、(Vc )は光重合開始剤(c)の
体積、(Vd )は溶媒(d)の体積、(Ve )は粉末
(e)の体積を表す。また、体積の値は、それぞれの重
量を比重で割った値から算出する。
【0025】粉末混合光硬化性流動樹脂組成物に含まれ
る必須成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)
の混合比と、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物の硬化性
及びそれを用いて製造した焼結体の保形性の関係を図1
から3で説明する。図1に示すように、(Vx )の値が
0.4より大きい場合、(e)の含有量が多すぎて光硬
化性が悪く、目的の光硬化物を得ることができない。図
2に示すように、(Vy )の値が0.75より大きい場
合、(d)の量が多すぎて光硬化性が悪く、目的の硬化
物を得ることができない。図3に示すように、(Vz )
の値が0.6より小さいと、光硬化後の乾燥工程で
(d)を除去した後、焼結する際の粉末混合樹脂成形体
に含まれる(e)の含有量が少なく、焼結後の三次元構
造体の保形性が悪く、崩れが生じやすくなり所望する焼
結体が得られない。(Vx )の下限の値0.27と、
(Vy )の下限の値0.55は、Vx ≦0.4、Vy ≦
0.75、及び0.6≦Vz の条件を満たすよう、式
(1)から(3)を計算して導いた値である。従って、
(Vx )の値が0.27より小さい場合、上記条件を満
たすことができず、(e)の含有量が少なすぎて焼結後
の構造体の保形性が悪く、崩れが生じやすくなり、所望
する焼結体が得られなくなる。また、(Vy )の値が
0.55より小さい場合は、上記条件を満たすことがで
きず、光硬化後の乾燥工程で除去される成分(d)の含
有量が少ないため、焼結する際の粉末混合樹脂成形体に
含まれる(e)の含有量を、焼結体の保形性を保持する
ために必要な量まで向上することができなくなる。
【0026】また、本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂
組成物は、上記(Vx )、(Vy )及び(Vz )を規定
すれば十分である。これは、本発明の三次元構造体を造
形するとき、後述するように、三次元樹脂成形体を乾燥
する段階で溶媒(e)が除去され、等方的に該成形体が
収縮することによる。即ち、三次元樹脂成形体の乾燥時
に溶媒が除去され、三次元成形体が収縮するので粉末混
合樹脂成形体中の粉末の含量が見かけ上増加する。従っ
て、本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を用いて
三次元構造体を成形する場合には、該造形体が収縮され
ることになり、全体に対する粉末の含量のほかに、収縮
した段階での各成分(即ち、上記(a)、(b)、
(c)及び(e))の合計に対する粉末の含量を粉末混
合光硬化性流動樹脂組成物を調製するときに規定してお
く必要があり、また除去される溶媒の体積含量も併せて
規定しておく必要がある。
【0027】次に本発明の各成分について説明する。
【0028】(a)は、アクリロイル基、またはメタク
リロイル基、またはビニル基を1個以上有する単量体の
中から選択され、(b)は前記官能基を2個以上有する
単量体から選択される。(c)は、光照射によってラジ
カルを発生する作用を有する化合物から選択される。
(a)(b)(c)については、具体的には、「加藤清
視、「紫外線硬化システム」総合技術センター、(19
89)」に詳しく説明されており、特に限定されるもの
ではない。例えば、モルフォリンアクリレート、2−ヒ
ドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、(2
−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェー
ト、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニ
ウムクロライド、N,N−ジメチルアミノプロピルアク
リルアミドを挙げることができる。
【0029】成分(a)は、上記のモノマーの単一物で
あっても、またこれらの混合物であってもよい。更に
は、上記モノマー若しくは上記モノマーの混合物を主成
分としたラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機物
質の混合物であってもよい。このような上記モノマー等
を主成分とするラジカル重合性官能基を1つ以上有する
有機物質の混合物である場合は、主成分となる上記モノ
マー成分若しくは上記モノマー成分の混合物の含量は、
少なくともラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質の混合物の60%以上であることが好ましい。ま
た、この場合、少なくともラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質の混合物に含まれる上記モノマー成
分以外の成分は、具体的には2−ヒドロキシエチルメタ
クリレート、グリセロールモノメタクリレートがある。
【0030】(d)は光照射に対して反応性を示さず光
硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒であって、前記成
分(a)、(b)及び(c)と相溶性を有する溶媒から
選択される。例えば、エタノール、n−プロパノール、
n−ブタノール、n−アミルアルコール等のアルコー
ル、ベンゼン、トルエンなどの芳香族化合物、又は水を
用いることができる。
【0031】(e)は、焼結によってセラミックス構造
体に加工し得る粉末であればよく、特に限定されるもの
ではない。例えば、磁器、粘土、白陶土、カオリン組成
物、リン酸塩、ケイ酸塩、カーバイト、ガラス、シリ
カ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸ジルコン酸鉛等が
挙げられる。
【0032】(b)と(c)の混合比は、(a)に対し
て(b)は0.5〜10mol%、(c)は0.01〜
10mol%の範囲であることが望ましい。(b)が
0.5mol%未満の場合では、粉末混合樹脂成形体の
材料強度が非常に弱くなる。一方、10mol%よりも
多量の場合は粉末混合樹脂成形体の乾燥工程での収縮率
が小さくなる、収縮する際粉末混合樹脂成形体に亀裂が
入り崩壊しやすくなる等の問題が生じる。また、(c)
が0.001mol%未満の場合は重合速度が遅く、1
0mol%より多量の場合は重合度が低下する。
【0033】本発明の粉末混合光硬化樹脂組成物は、上
記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を適切な方法
で混合し、更にこれに粉末を加え、混練することによっ
て調製される。成分(a)、(b)、(c)及び(d)
の混合方法は、これら樹脂等を均一にし得るものであれ
は特に限定されないが、樹脂中にスターラーチップを入
れたスターラーを用いて撹拌する等の方法を用いること
が望ましい。次いで、得られた光硬化性流動樹脂組成物
を成分(e)の粉末と混練する。混練の方法は特に限定
されないが、真空にして気泡を取り除きながら撹拌する
真空脱泡機等を用い混練する等の方法を使用しうる。
【0034】本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
に紫外線等の光を照射すると、成分(c)より発生した
ラジカルによって成分(a)及び(b)が共重合し、成
分(d)及び(e)を内包した三次元網目構造を有する
三次元樹脂成形体が得られる。この三次元樹脂成形体
は、溶媒(d)を含んだ高分子ゲルとみなすことがで
き、加熱乾燥することにより成分(d)が蒸発して成分
(a)と(b)からなる三次元網目構造が等方的に収縮
し、三次元樹脂成形体が収縮した粉末混合樹脂成形体が
得られる。従って、乾燥後の三次元樹脂成形体は、成分
(e)の体積含有率がVz の値で示される粉末混合樹脂
成形体となる。この粉末混合樹脂成形体は、三次元樹脂
成形体に比べ成分(e)の体積含有率が見かけ上多くな
る。従って、粉末混合樹脂成形体を高温加熱することに
より成分(a)、(b)及び(c)を脱脂すると共に、
成分(e)を焼結することによって、保形性が保持され
た所望の焼結体を得ることが可能となる。
【0035】本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
を用いれば、光硬化後の乾燥工程により硬化物が等方収
縮する。これは、三次元網目構造を有する高分子ゲルが
等方的に収縮する特性を利用している。このように、本
発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物は、光硬化時に
は組成物中に含まれる粉末の体積含有率を低くして光硬
化性を保ちつつ、且つ焼結する際には粉末混合樹脂成形
体に含まれる粉末の体積含有率を高くすることが可能な
粉末混合光硬化性流動樹脂組成物である。
【0036】本発明の第二の側面では、前記成分(e)
の粉末として、一方の側鎖に該粉末と反応しうる官能基
を含有するシランを有し、他方の側鎖にラジカル重合可
能な官能基を有する有機化合物によって表面処理されて
いる粉末を使用する。
【0037】一方の側鎖に粉末と反応しうる官能基を含
有するシランを有し、他方の側鎖にラジカル重合可能な
官能基を有する有機化合物としては、例えば、ビニルト
リメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メタ
クリル酸−3−トリメトキシシリルプロピル、トリクロ
ロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等を挙げる
ことができる。また、粉末としては、金属酸化物である
シリカ、アルミナ、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられ
る。
【0038】本発明において、粉末と反応しうる官能基
を含有するシランとは、粉末の表面に存在するOH基と
反応しうる官能基を含有したシラン基を意味する。従っ
て、一方の側鎖に粉末と反応しうる官能基を含有するシ
ランを有し、他方の側鎖にラジカル重合可能な官能基を
有する有機化合物を用いて粉末の表面処理を行うと、シ
ラン化合物と粉末上に存在するOH基とが反応し、シラ
ン化合物が粉末に共有結合で強固に結合される。これに
より、粉末の表面上にラジカル重合可能な官能基が表面
に出た単分子皮膜が形成される。この粉末を含有した本
発明の組成物に紫外線等の光を照射すると、粉末表面の
ラジカル重合可能な官能基と上記成分(a)及び(b)
とが化学結合によって結合され、粉末と光硬化した樹脂
とが化学結合によって結合されることになる。従って、
このような表面処理を施すことにより、このような表面
処理をしない場合に比べ、成分(e)が樹脂成分に強固
に結合され、三次元樹脂成形体での粉末の沈殿の生成を
軽減することができ、更に、三次元樹脂成形体を洗浄す
る場合に、成分(e)が三次元樹脂成形体から流出する
のを防ぐことが可能である。また、三次元樹脂成形体を
乾燥し、収縮させる際に成分(e)が粉末混合樹脂成形
体表面に析出するのも防ぐことが可能となる。
【0039】次に粉末の表面処理法について説明する。
まず、アルコール(例えば、エタノール)のような有機
溶媒と、水(好ましくはイオン交換水)を混合した溶液
に塩酸等の鉱酸を滴下し、溶液のpHを3.5〜4.5
に調製する。この溶液に、一方の側鎖に粉末と反応しう
る官能基を含有するシランを有し、他方の側鎖にラジカ
ル重合可能な官能基を有する有機化合物を撹拌しながら
加え、更に、15分から2時間、好ましくは20分から
1時間撹拌して表面処理溶液を調製する。次に成分
(e)の粉末として例えばアルミナ粉末を撹拌しながら
前記表面処理溶液を滴下し、全容量を滴下した後、更に
15分から2時間、好ましくは30分から1時間撹拌を
続けた。次に、これを加熱乾燥する。加熱乾燥は、使用
する前記成分(d)によって異なり、乾燥温度は前記成
分(d)の沸点を境に前後10℃以内に設定し、1から
5時間行う。乾燥後、アルミナはメノウ乳鉢を用いて粉
砕し、微粉末とした。
【0040】以上のように、本発明の第二の側面によ
り、粉末の三次元樹脂成形体中での沈殿が軽減され、三
次元樹脂成形体からの粉末の流出及び粉末混合樹脂成形
体表面への粉末の析出を防ぐことが可能な粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物が提供できる。
【0041】また、混合方法等の他の条件は、上記第一
の側面で説明したとおりである。
【0042】本発明の第三の側面では、前記成分(a)
のモノマーが水溶性の有機物質であり、前記成分(d)
の溶媒が水であることを特徴とする。
【0043】第三の側面において、成分(a)は、ラジ
カル重合性の官能基を1つ以上有する水溶性の単量体か
ら選択される。ラジカル重合性の官能基を1つ以上有す
る水溶性の単量体は、不飽和炭化水素基を1個以上有す
る水溶性の単量体の中から選択され、これらにはイオン
基を有する単量体とイオン基を有さない単量体がある。
イオン基を有するラジカル重合性単量体は、カルボキシ
ル基、スルホン酸基、リン酸基、3級アミン、水酸化4
級アミン、スルホニウム基などのイオン基を有し、少な
くとも1個以上のラジカル重合性官能基を有する単量体
の中から選択される。例えば、(メタ)アクリル酸、ビ
ニル酢酸、スチレンスルホン酸、無水マレイ酸、2−ア
クリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N
−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジ
メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ
メチルアミノプロピルアクリルアミド、2−アクリロイ
ルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3
−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロ
ライドなどを挙げることができる。イオン基を有さない
水溶性のラジカル重合性単量体としては、例えば、モル
フォリンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)
アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレー
ト、ビニルピロリドン、N−イソプロピルアクリルアミ
ド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、モルフォリ
ノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メ
チル、(メタ)アクリル酸エチル、N,N−ジメチルア
クリルアミドなどを挙げることができる。ラジカル重合
性の官能基を1つ以上有する水溶性の単量体は、上記単
量体のうち一つまたは複数を用いて構成される。
【0044】水は純水が望ましい。
【0045】本発明の第三の側面に係る組成物に紫外線
等の光を照射すると、水と成分(e)を内包した三次元
網目構造を有した三次元樹脂成形体が得られる。該三次
元樹脂成形体は、水を含んだ高分子ゲルとみなすことが
できる。水を含んだ高分子ゲルは、浸透圧の変化によっ
て等方的な体積変化を示す。従って、浸透圧を利用した
三次元樹脂成形体の収縮が可能となる。つまり、三次元
樹脂成形体を1mol/l以上の高濃度の電解質水溶液
に浸漬することにより、浸透圧の影響で三次元樹脂成形
体が等方的に収縮した三次元樹脂成形体となる。さら
に、この収縮した三次元樹脂成形体を加熱乾燥すること
により内包された水を蒸発し、成分(a)と(b)から
なる三次元網目構造を等方的に収縮させて、粉末混合樹
脂成形体を得ることができる。この粉末混合樹脂成形体
は、浸透圧による収縮前の三次元樹脂成形体より成分
(e)の体積含有率が見かけ上多くなる。この粉末混合
樹脂成形体を高温加熱することにより成分(a)、
(b)及び(c)を脱脂するとともに成分(e)を焼結
することによって、保形性が保持された所望の焼結体を
得ることが可能となる。上記のように、段階的に三次元
樹脂成形体を収縮できるので、収縮時に生じる歪みが軽
減され、焼結体の保形性が更に向上する。
【0046】本発明の第三の側面に係る組成物を使用す
ることによって、光硬化後、浸透圧による収縮工程及び
乾燥工程により三次元樹脂成形体を等方収縮することが
できる。従って、光硬化時には組成物中に含まれる粉末
の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ焼結
する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体積含
有率を高くすることが可能な粉末混合光硬化性流動樹脂
組成物が提供できる。
【0047】また、混合方法等の他の条件は、上記第一
の側面で説明したとおりである。
【0048】
【発明の実施の形態】以下に本発明を実施例に従い更に
詳細に説明する。
【0049】
【実施例】
実施例1 以下に本発明の第1の実施例を示す。
【0050】この実施例は以下のような(a)〜(e)
の成分を使用した。
【0051】成分(a)のラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質からなるモノマーとしてモルフォリ
ンアクリレート(興人)を100g、成分(b)のラジ
カル重合性官能基を2つ以上有する有機物質からなる架
橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(和
光純薬工業)を3g、成分(c)の光重合開始剤として
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−
1−オン(チバガイギー)を12g、成分(d)の光照
射に対して反応性を示さず光硬化後の乾燥によって除去
し得る溶媒としてイオン交換水を345g、成分(e)
の粉末としてアルミナ粉末TM−DA(平均粒径0.2
μm)(大明化学)を786g、それぞれ混合して粉末
混合光硬化性流動樹脂組成物1とした。具体的には、上
記成分(a)、(b)、(c)及び(d)をスターラー
を用いて混合し、次いで、得られた光硬化性流動樹脂組
成物に真空脱泡機を用いて、成分(e)の粉末を混練し
た。
【0052】各成分(a)、(b)、(c)及び(d)
の比重を1g/cm3 とし、(e)の比重を3.99g
/cm3 として前述の(1)〜(3)式を計算すると、
以下の値となる。
【0053】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.3 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.63 次に粉末混合光硬化性流動樹脂組成物1を用いた三次元
構造体の製造方法を示す。
【0054】粉末混合光硬化性流動樹脂組成物1を用
い、三次元光造形装置により以下に示す手順で三次元樹
脂成形体1を製造した。
【0055】図4の工程図に示したように、まず、1)
三次元CADに三次元構造物の図面を入力する。2)該
三次元構造物から一定の積層の厚みごとに水平方向のス
ライス図形データ群を作成する。3)本発明の粉末混合
光硬化性流動樹脂組成物[例えばオリゴマー(エポキシ
アクリレート、ウレタンアクリレートなど)、反応性希
釈剤(モノマー)、光重合開始剤(ベンゾイン系、アセ
トフェノン系など)の3要素からなる光硬化性流動樹脂
に粉末及び溶媒を加えたもの。]に上下方向に移動する
エレベータを設置し、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
が一定の積層厚みになる様に位置決めする。4)レーザ
ビーム[例えば紫外線の波長領域を持つエキシマレーザ
(308nm)、He−Cdレーザ(325nm)、A
rレーザ(351〜346nm)等]を目的形状の水平
断面に沿って走査させ、粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物を硬化させる。5)再度エレベータを一定の積層厚み
になる様に位置させる。6)目的形状の三次元樹脂成形
体が完成するまで4)と5)の操作を繰り返す。7)三
次元樹脂成形体を取り出し、表面に付着している未硬化
の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を洗浄除去する。
8)後露光を行う。
【0056】以上の工程で三次元樹脂成形体が製造され
る。この様な方法によって三次元樹脂成形体を切削無し
に製造することができる。
【0057】次にこの光造形工程を図5により示す。図
5は光造形の各工程を示す概略図であり51は上下方向
に動くエレベータ、52は光を透過するガラス板、53
は粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を入れるタンク、5
4は下から上に向かう集光された紫外線レーザビーム、
55は粉末混合光硬化性流動樹脂組成物、56は紫外線
により硬化した三次元樹脂成形体の一部を表す。(A)
は、エレベータ(51)のテーブルとガラス板(52)
の面との間が一定の間隔になるようにエレベータ(5
1)を上昇させ、レーザビーム(54)を照射し、三次
元樹脂成形体を造形している状態を表している。(B)
は三次元樹脂成形体の一層目の光造形が終了した状態を
表す図である。(C)は三次元樹脂成形体の二層目を光
造形する為にレーザビームの照射を止め51のエレベー
タを一定の間隔上昇させた状態を表す図である。(D)
は三次元樹脂成形体の二層目をレーザビームにより光造
形している図である。これらの(A)〜(D)の手順を
繰り返し、三次元樹脂成形体を積層形成しながら所望形
状の三次元樹脂成形体を造形する。
【0058】上記製造工程によって、直径10mm、高
さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体1を製造するこ
とができた。
【0059】次に、上記三次元樹脂成形体1を乾燥機に
入れ、加熱乾燥して三次元樹脂成形体を収縮させて粉末
混合樹脂成形体を調製した。加熱乾燥を100℃で5時
間行った。本乾燥工程で上記直径10mm、高さ5mm
の円柱形状の三次元樹脂成形体1は、そのサズが直径8
mm、高さ4mmの円柱形状に収縮した粉末混合樹脂成
形体1となった。
【0060】次に、得られた粉末混合樹脂成形体1を炉
に入れ、1.6℃/minで最高温度460℃にて脱脂
を行い、次いで1500℃で1時間焼結することによ
り、三次元構造体1を得た。三次元構造体1は、上記の
直径8mm、高さ4mmの円柱形状に収縮した粉末混合
樹脂成形体1のサイズが直径7mm、高さ3.5mmの
円柱形状に収縮した所望形状の三次元構造体であった。
【0061】次に、本発明を更に検討するため、以下の
比較例1〜4を行った。
【0062】<比較例1>実施例1記載の粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物1の成分(d)を0gとして粉末混
合光硬化性流動樹脂組成物を調製した。つまり、成分
(a)のラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機物
質からなるモノマーとしてモルフォリンアクリレート
(興人)を100g、成分(b)のラジカル重合性官能
基を2つ以上有する有機物質からなる架橋剤としてN,
N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業)を
3g、成分(c)の光重合開始剤として2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ
ガイギー)を12g、成分(d)の光照射に対して反応
性を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒とし
てイオン交換水を0g、成分(e)の粉末としてアルミ
ナ粉末TM−DA(平均粒径0.2μm)(大明化学)
を786g、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物2を調製した。成分(a)、(b)、(c)及
び(d)の比重を1g/cm3 とし、成分(e)の比重
を3.99g/cm3 として前記(1)、(2)及び
(3)式を計算すると、以下の値となる。
【0063】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.63 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.63 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物2を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の粉末混合樹脂成形体の
製造を試みた。しかしながら、粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物2の流動性が無いため三次元光造形装置による
三次元樹脂成形体の製造は不可能であった。
【0064】<比較例2>実施例1記載の粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物1の成分(d)を100gとして粉
末混合光硬化性流動樹脂組成物を調製した。つまり、成
分(a)のラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質からなるモノマーとしてモルフォリンアクリレート
(興人)を100g、成分(b)のラジカル重合性官能
基を2つ以上有する有機物質からなる架橋剤としてN,
N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業)を
3g、(c)の光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガイ
ギー)を12g、(d)の光照射に対して反応性を示さ
ず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒としてイオン
交換水を100g、(e)の粉末としてアルミナ粉末T
M−DA(平均粒径0.2μm)(大明化学)を786
g、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
3を調製した。成分(a)、(b)、(c)及び(d)
の比重を1g/cm3 とし、(e)の比重を3.99g
/cm3 として前記(1)、(2)及び(3)式を計算
すると以下の値となる。
【0065】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.49 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.47 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.63 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物3を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の粉末混合樹脂成形体の
製造を試みた。しかしながら、粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物3の流動性が悪く、所望の三次元樹脂成形体の
製造は不可能であった。
【0066】<比較例3>実施例1記載の粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物1の成分(d)を500gとして粉
末混合光硬化性流動樹脂組成物を調製した。つまり、成
分(a)のラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質からなるモノマーとしてモルフォリンアクリレート
(興人)を100g、成分(b)のラジカル重合性官能
基を2つ以上有する有機物質からなる架橋剤としてN,
N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業)を
3g、成分(c)の光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−
メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガイギ
ー)を12g、成分(d)の光照射に対して反応性を示
さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒としてイオ
ン交換水を500g、成分(e)の粉末としてアルミナ
粉末TM−DA(平均粒径0.2μm)(大明化学)を
786g、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流動樹脂
組成物4とした。成分(a)、(b)、(c)及び
(d)の比重を1g/cm3 とし、成分(e)の比重を
3.99g/cm3 として前記(1)、(2)及び
(3)式を計算すると以下の値となる。
【0067】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.24 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.81 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.63 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物4を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の粉末混合樹脂成形体の
製造を試みた。しかしながら、粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物4の光硬化性が不十分であることが原因で、所
望の粉末混合樹脂成形体の製造は不可能であった。
【0068】<比較例4>実施例1記載の粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物1の成分(e)を450gとして粉
末混合光硬化性流動樹脂組成物を調製した。つまり、成
分(a)のラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質からなるモノマーとしてモルフォリンアクリレート
(興人)を100g、成分(b)のラジカル重合性官能
基を2つ以上有する有機物質からなる架橋剤としてN,
N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業)を
3g、成分(c)の光重合開始剤として2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ
ガイギー)を12g、成分(d)の光照射に対して反応
性を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒とし
てイオン交換水を345g、成分(e)の粉末としてア
ルミナ粉末TM−DA(平均粒径0.2μm)(大明化
学)を450g、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物5とした。成分(a)、(b)、(c)及
び(d)の比重を1g/cm3 とし、成分(e)の比重
を3.99g/cm3 として前記(1)、(2)及び
(3)式を計算すると以下の値となる。
【0069】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.2 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.5 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物5を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体3を
製造した。次いで、この三次元樹脂成形体3を用い、実
施例1記載の乾燥・収縮工程及び焼結工程を行ったとこ
ろ、得られた三次元構造体2は表面に亀裂を有するか、
または非常に脆く、所望の三次元構造体を得ることはで
きなかった。これは乾燥収縮後の粉末混合樹脂成形体に
含まれる粉末の含有率が少ないことに起因するものであ
る。
【0070】上記比較例から明らかなように、実施例1
に示した粉末混合光硬化性流動樹脂組成物は光硬化後の
乾燥工程により三次元樹脂成形体が等方収縮する。従っ
て、本発明の粉末混合光硬化性樹脂組成物は、光硬化時
には組成中に含まれる粉末の体積含有率を低くして光硬
化性を保ちつつ、且つ焼結する際には粉末混合樹脂成形
体に含まれるセラミック粉末の体積含有率を高くするこ
とが可能であるため、形状が保持された所望の構造体を
得るのに最適な粉末混合光硬化性流動樹脂組成物であ
る。
【0071】実施例2 以下に本発明の第2の実施例を示す。
【0072】この実施例は、実施例1記載の粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物1に含まれる成分(e)として、
メタクリル酸−3−トリメトキシシリルプロピルによっ
て表面処理されたアルミナ粉末を用いて実施例1と同様
に粉末混合光硬化性流動樹脂組成物6を調製した。ま
た、実施例1と同様な操作で三次元構造体を製造した。
【0073】以下に表面処理方法を示す。
【0074】エタノール(和光純薬工業)200gと、
イオン交換水200gを混合した溶液に塩酸(和光純薬
工業)を滴下し、溶液のpHを3.5〜4.5に調製し
た。この溶液にメタクリル酸−3−トリメトキシシリル
プロピル(関東化学)を20g加え、20分間撹拌して
表面処理溶液1を調製した。次にアルミナ粉末TM−D
A(平均粒径0.2μm)(大明化学)1000gを秤
量し、該アルミナを撹拌しながら表面処理溶液1を滴下
し、全容量を滴下した後、30分間撹拌を続けた。次
に、これをステンレス性のバットに薄めに広げ、乾燥機
中で120℃、3時間の加熱乾燥を行って、表処理を終
了した。乾燥後、アルミナはメノウ乳鉢を用いて粉砕
し、微粉末とした。
【0075】以下に粉末混合光硬化性流動樹脂組成物6
の組成を示す。
【0076】成分(a)のラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質からなるモノマーとしてモノフォリ
ンアクリレート(興人)を100g、成分(b)のラジ
カル重合性官能基を2つ以上有する有機物質からなる架
橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(和
光純薬工業)を3g、成分(c)の光重合開始剤として
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−
1−オン(チバガイギー)を12g、成分(d)の光照
射に対して反応性を示さず光硬化後の乾燥によって除去
し得る溶媒としてイオン交換水を345g、成分(e)
の粉末として、上記工程で表面処理したアルミナ粉末を
1200g、それぞれ実施例1に示したように混合して
粉末混合光硬化性流動樹脂組成物6を調製した。成分
(a)、(b)、(c)及び(d)の比重を1g/cm
3 とし、成分(e)の比重を3.99g/cm3 として
前記(1)、(2)及び(3)式を計算すると、以下の
値となる。
【0077】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.4 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.72 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物6を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体4を
製造した。
【0078】次に、三次元樹脂樹脂成形体4を1mol
/lの塩酸水溶液中に30時間浸漬し、浸透圧によって
三次元樹脂成形体4を収縮させ、三次元樹脂成形体5と
した。アルミナ粉末は表面処理の効果によって光硬化性
樹脂と共有結合で結ばれているため、浸透圧差によって
三次元樹脂成形体4が収縮する際、アルミナ粉末の析出
や流出は確認されなかった。三次元樹脂成形体5は、そ
のサイズが直径9.4mm、高さ4.7mmの円柱形状
に収縮したものとなった。
【0079】この三次元樹脂成形体5を乾燥機に入れ、
100℃で5時間加熱乾燥して三次元樹脂成形体5を収
縮させて、粉末混合樹脂成形体6を得た。粉末混合樹脂
成形体6は、そのサイズが直径8.3mm、高さ4.2
mmの円柱形状に収縮したものとなった。
【0080】次に、粉末混合樹脂成形体6を炉に入れ、
1.6℃/minで最高温度460℃にて脱脂を行い、
さらに、1500℃で1時間焼結することにより、三次
元構造体3を得た。三次元構造体3は、そのサイズが直
径7.6mm、高さ3.8mmの円柱形状に収縮したも
のであり、所望形状の三次元構造体を製造することがで
きた。
【0081】以上のように、本実施例の粉末混合光硬化
性流動樹脂組成物は、光硬化時には組成物中に含まれる
粉末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ
焼結する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体
積含有率を高くすることが可能であるので、形状が保持
された所望の三次元構造体を得るのに最適な粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物であることがわかる。また、実施
例2に示した粉末混合光硬化性流動樹脂組成物は光硬化
後の浸透圧による収縮工程及び乾燥工程により三次元樹
脂成形体が等方収縮する。従って、本実施例の粉末混合
光硬化性流動樹脂組成物は、段階的に三次元樹脂成形体
を収縮ことができるので、収縮時に生じる歪みが軽減さ
れ、三次元構造体の保形性が更に向上する。また、含有
される粉末が表面処理されているので、該粉末が光照射
で光硬化性流動樹脂に結合され、粉末の沈殿が軽減さ
れ、さらに三次元樹脂成形体からの粉末の流出及び析出
を防ぐことが可能である。
【0082】実施例3 以下に本発明の第3の実施例を示す。
【0083】この実施例は以下のような成分(a)から
(e)を用いた。
【0084】成分(a)のラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質からなるモノマーとして2−ヒドロ
キシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(共栄社化
学)を100g、成分(b)のラジカル重合性官能基を
2つ以上有する有機物質からなる架橋剤としてトリメチ
ロールプロパントリアクリレート(共栄社化学)を3
g、成分(c)の光重合開始剤として2−ヒドロキシ−
2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガ
イギー)を12g、成分(d)の光照射に対して反応性
を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒として
n−ブタノールを345g、成分(e)の粉末としてア
ルミナ粉末TM−DA(平均粒径0.2μm)(大明化
学)を786g、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物7を実施例1と同様に調製した。成分
(a)、(b)、(c)及び(d)の比重を1g/cm
3 とし、成分(e)の比重を3.99g/cm3 として
前記(1)、(2)及び(3)の式を計算すると以下の
値となる。
【0085】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.3 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.63 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物7を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体7を
製造した。
【0086】次に、得られた三次元樹脂成形体7を乾燥
機に入れ、120℃で5時間加熱乾燥して粉末混合樹脂
成形体7を収縮させて、粉末混合樹脂成形体8を得た。
三次元樹脂成形体8は、そのサイズが直径8mm、高さ
4mmの円柱形状に収縮したものとなった。
【0087】次に、得られた粉末混合樹脂成形体8を炉
に入れ、1.6℃/minで最高温度460℃にて脱脂
を行い、次いで1500℃で1時間焼結することにより
三次元構造体4を得た。この三次元構造体4は、そのサ
イズが直径7mm、高さ3.5mmの円柱形状に収縮し
ており、所望形状の三次元構造体を製造することができ
た。
【0088】以上のように、本実施例の粉末混合光硬化
性流動樹脂組成物は、光硬化時には組成物中に含まれる
粉末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ
焼結する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体
積含有率を高くすることが可能であるので、形状が保持
された所望の三次元構造体を得るのに最適な粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物であることがわかる。
【0089】実施例4 以下に本発明の第4の実施例を示す。
【0090】本実施例では、以下の(a)から(e)の
成分を用いた。
【0091】成分(a)のラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質からなるモノマーとしてモノ(2−
メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート
(共栄社化学)100gを、成分(b)のラジカル重合
性官能基を2つ以上有する有機物質からなる架橋剤とし
てトリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化
学)3gを、成分(c)の光重合開始剤として2−ヒド
ロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
(チバガイギー)12gを、成分(d)の光照射に対し
て反応性を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶
媒としてn−プロパノール(和光純薬工業)145gと
n−アミルアルコール(和光純薬工業)245gを混合
したものを、成分(e)の粉末としてアルミナ粉末TM
−DA(平均粒径0.2μm)(大明化学)786g
を、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
8を実施例1と同様に調製した。成分(a)、(b)、
(c)及び(d)の比重を1g/cm3 とし、成分
(e)の比重を3.99g/cm3として前記(1)、
(2)及び(3)式を計算すると以下の値となる。
【0092】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.3 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.63 この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物8を用い、実施例
1記載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径1
0mm、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体8を
製造した。
【0093】次に、得られた三次元樹脂成形体8を乾燥
機に入れ、100℃で1時間保持して三次元樹脂成形体
8に含まれたn−プロパノールを蒸発除去して三次元樹
脂成形体8を収縮させ、更に140℃で5時間加熱乾燥
してn−アミルアルコールを蒸発除去して三次元樹脂成
形体8を更に収縮させて、粉末混合樹脂成形体9を得
た。三次元樹脂成形体9は、そのサイズが直径8mm、
高さ4mmの円柱形状を有していた。
【0094】次に、得られた粉末混合樹脂成形体9を炉
に入れ、1.6℃/minで最高温度460℃にて脱脂
を行い、次いで1500℃で1時間焼結することによ
り、三次元構造体5を得た。この三次元構造体5は、そ
のサイズが直径7mm、高さ3.5mmの円柱形状を有
しており、所望形状の三次元構造体を製造することがで
きた。
【0095】以上のように、本実施例の粉末混合光硬化
性流動樹脂組成物は、光硬化時には組成物中に含まれる
粉末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ
焼結する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体
積含有率を高くすることが可能であるので、形状が保持
された所望の三次元構造体を得るのに最適な粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物であることがわかる。また、沸点
の異なる2種の溶媒を用いることにより、乾燥・収縮工
程を段階的に行うことが可能となるため、段階的に三次
元樹脂成形体を収縮することができ、収縮時に生じる歪
みを軽減し、三次元構造体の保形性を更に向上させるこ
とができる。
【0096】実施例5 以下に本発明の第5の実施例を示す。
【0097】この実施例では次のような成分(a)から
(e)を使用した。
【0098】成分(a)のラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質からなるモノマーとして2−アクリ
ロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
(興人)を100g、成分(b)のラジカル重合性官能
基を2つ以上有する有機物質からなる架橋剤としてN,
N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業)を
3g、成分(c)の光重合開始剤として2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ
ガイギー)を12g、成分(d)の光照射に対して反応
性を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒とし
てイオン交換水を345g、成分(e)の粉末として、
実施例2記載の表面処理したアルミナ粉末を1200
g、それぞれ混合して粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
9を実施例1と同様にして調製した。成分(a)、
(b)、(c)及び(d)の比重を1g/cm3 とし、
成分(e)の比重を3.99g/cm3 として前記
(1)、(2)及び(3)式を計算すると以下の値とな
る。
【0099】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve )=0.4 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd )=0.75 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve )=0.72 粉末混合光硬化性流動樹脂組成物9を用い、実施例1記
載の方法と同様に三次元光造形装置によって直径10m
m、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体10を製
造した。
【0100】次に、得られた三次元樹脂成形体10をア
セトン(和光純薬工業)中に30時間浸漬し、樹脂の相
転移によって三次元樹脂成形体10を収縮させ、三次元
樹脂成形体11とした。アルミナ粉末は表面処理をした
ことにより光硬化性樹脂と共有結合で結ばれているた
め、浸透圧差によって三次元樹脂成形体10が収縮する
際、アルミナ粉末の析出や流出は確認されなかった。三
次元樹脂成形体11は、そのサイズが直径9mm、高さ
4.5mmの円柱形状を有していた。
【0101】次に、三次元樹脂成形体11を乾燥機に入
れ、100℃で5時間加熱乾燥して三次元樹脂成形体1
1を収縮させて、粉末混合樹脂成形体12を得た。粉末
混合樹脂成形体12は、そのサイズが直径8.3mm、
高さ4.2mmの円柱形状を有していた。
【0102】次に、得られた粉末混合樹脂成形体12を
炉に入れ、1.6℃/minで最高温度460℃にて脱
脂を行い、次いで1500℃で1時間焼結することによ
り、三次元構造体6を得た。三次元構造体6は、そのサ
イズが直径7.6mm、高さ3.8mmの円柱形状を有
しており、所望形状の三次元構造体を製造することがで
きた。
【0103】以上のように、本実施例の粉末混合光硬化
性流動樹脂組成物は、光硬化時には組成物中に含まれる
粉末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ
焼結する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体
積含有率を高くすることが可能であるので、形状が保持
された所望の三次元構造体を得るのに最適な粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物であることがわかる。また、上記
のように段階的に三次元樹脂成形体を収縮することによ
り、収縮時に生じる歪みが軽減され、三次元構造体の保
形性が更に向上する。また、含有される粉末が表面処理
されているため、該粉末が光照射で光硬化性流動樹脂に
結合され、粉末の沈殿が軽減され、さらに三次元樹脂成
形体からの粉末の流出及び析出を防ぐことが可能であ
る。
【0104】実施例6 以下に本発明の第6の実施例を示す。
【0105】この実施例は次のような成分(a)から
(f)を使用した。即ち、本実施例は、上述の実施例で
示した(a)から(e)の成分のほかに成分(f)とし
て重合度1000以上の光照射に対して反応性を示さな
い水溶性ポリマーを含有させた粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物の例である。
【0106】成分(a)のラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質からなるモノマーとしてN,N−ジ
メチルアミノプロピルアクリルアミド(興人)を100
g、成分(b)のラジカル重合性官能基を2つ以上有す
る有機物質からなる架橋剤としてN,N’−メチレンビ
スアクリルアミド(和光純薬工業)を3g、成分(c)
の光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1
−フェニルプロパン−1−オン(チバガイギー)を12
g、成分(d)の光照射に対して反応性を示さず光硬化
後の乾燥によって除去し得る溶媒としてイオン交換水を
345g、成分(e)の粉末として、実施例2記載の表
面処理したアルミナ粉末を1200g、さらに成分
(f)として重合度1000以上の光照射に対して反応
性を示さない水溶性ポリマー(重合度2000のポリビ
ニルアルコール(和光純薬工業))を6g、それぞれ混
合して粉末混合光硬化性流動樹脂組成物10を実施例1
と同様に調製した。成分(a)、(b)、(c)、
(d)及び(f)の比重を1g/cm3 とし、成分
(e)の比重を3.99g/cm3 として前記(1)、
(2)及び(3)式を計算すると以下の値となる。
【0107】Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +
Ve +Vf )=0.39 Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd +Vf )=0.
74 Vz =Ve /(Va +Vb +Vc +Ve +Vf )=0.
71 本発明においては、このように他の成分を加えた場合で
あっても、本発明の他の実施例と同様に体積含有率を計
算すればよい。
【0108】この粉末混合光硬化性流動樹脂組成物10
を用い、実施例1記載の方法と同様に三次元光造形装置
によって直径10mm、高さ5mmの円柱形状の三次元
樹脂成形体13を製造した。
【0109】次に、得られた三次元樹脂成形体13をア
セトン(和光純薬工業)中に30時間浸漬し、樹脂の相
転移によって三次元樹脂成形体13を収縮させ、三次元
樹脂成形体14とした。アルミナ粉末は表面処理をした
ことにより光硬化性樹脂と共有結合で結ばれているた
め、浸透圧差によって三次元樹脂成形体10が収縮する
際、アルミナ粉末の析出や流出は確認されなかった。三
次元樹脂成形体14は、そのサイズが直径9mm、高さ
4.5mmの円柱形状を有していた。
【0110】次に、得られた三次元樹脂成形体14を乾
燥機に入れ、100℃で5時間加熱乾燥して該三次元樹
脂成形体14を収縮させて、粉末混合樹脂成形体15を
得た。この三次元樹脂成形体15は、そのサイズが直径
8.3mm、高さ4.2mmの円柱形状を有していた。
【0111】次に、得られた粉末混合樹脂成形体15を
炉に入れ、1.6℃/minで最高温度460℃にて脱
脂を行い、次いで1500℃で1時間焼結することによ
り、三次元構造体7を得た。該三次元構造体7は、その
サイズが直径7.6mm、高さ3.8mmの円柱形状を
有しており、所望形状の三次元構造体を製造することが
できた。
【0112】以上のように、本実施例の粉末混合光硬化
性流動樹脂組成物は、光硬化時には組成物中に含まれる
粉末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ
焼結する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体
積含有率を高くすることが可能であるので、形状が保持
された所望の三次元構造体を得るのに最適な粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物であることがわかる。また、上記
のように段階的に三次元樹脂成形体を収縮することによ
り、収縮時に生じる歪みが軽減され、三次元構造体の保
形性が更に向上する。また、含有される粉末が表面処理
されているため、該粉末が光照射で光硬化性流動樹脂に
結合され、粉末の沈殿が軽減され、さらに樹脂成形体か
らの粉末の流出及び析出を防ぐことが可能である。さら
に、ポリビニルアルコールを成分(f)として加えたこ
とにより、光照射でこれを基材として光硬化性樹脂が三
次元架橋し、三次元樹脂成形体の材料強度が向上する。
従って、三次元樹脂成形体の保形性が向上し、焼結時に
崩れが生じにくくなり、三次元構造体の保形性が更に向
上する。
【0113】表1に上記実施例および比較例に記載した
粉末混合光硬化性流動樹脂組成物の(Vx )、(Vy )
及び(Vz )の値と、各実施例の三次元構造体の保形性
をまとめる。
【0114】
【表1】
【0115】本発明は、上記特許請求の範囲に記載した
発明に加え、更に、以下の発明をも包含する。以下で
は、上記請求項1から3との関係を明らかにするため、
これらをあわせて記載する。なお、請求項1から3は、
下記の(1 )から(3)に相当する。
【0116】(1) 光の作用によって重合し溶剤に不
溶化するか、または液体から固体に変化して構造体を造
形することができる粉末混合光硬化性流動樹脂組成物に
おいて、その必須成分として、(a)ラジカル重合性官
能基を1つ以上有する有機物質から成る少なくとも1種
のモノマーと、(b)ラジカル重合性官能基を2つ以上
有する有機物質から成る架橋剤と、(c)光重合開始剤
と、(d)光照射に対して反応性を示さず光硬化後の乾
燥によって除去し得る溶媒と、(e)焼結によって三次
元構造体に加工し得る粉末とを含有し、これら必須成分
中の前記粉末成分(e)の体積比(Vx )が0.27〜
0.4、前記粉末を除いた必須成分中の前記溶媒(d)
の体積比(Vy )が0.55〜0.75、前記溶媒を除
いた必須成分中の前記粉末(e)の体積比(Vz )が
0.6以上の割合であることを特徴とする粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物。
【0117】(構成)実施例1〜6が該当する。
【0118】本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
は、(a)ラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質から成る少なくとも1種のモノマーと、(b)ラジ
カル重合性官能基を2つ以上有する有機物質から成る架
橋剤と、(c)光重合開始剤と、(d)光照射に対して
反応性を示さず光硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒
と、(e)焼結によって三次元構造体に加工し得る粉末
とを含有し、該必須成分中の前記粉末の体積比(Vx )
が0.27〜0.4、前記粉末を除いた必須成分中の前
記溶媒体積比(Vy )が0.55〜0.75、前記溶媒
を除いた必須成分中の前記粉末体積比(Vz )が0.6
以上の割合で含有されていることを特徴とする。ここ
で、上記必須成分全体に対する粉末の体積比をVx 、上
記必須成分のうち粉末(e)を除いた必須成分の合計に
対する溶媒(d)の体積比をVy 、前記必須成分のうち
溶媒を除いた必須成分の合計に対する粉末(e)の体積
比をVz とした。即ち、これらは下記(1)から(3)
式で表される。
【0119】 Vx =Ve /(Va +Vb +Vc +Vd +Ve ) 0.27≦Vx ≦0.4 (1) Vy =Vd /(Va +Vb +Vc +Vd ) 0.55≦Vy ≦0.75 (2) Vz =ve /(Va +Vb +Vc +Ve ) 0.6 ≦Vz (3) ここで、(Va )はモノマー(a)の体積、(Vb )は
架橋剤(b)の体積、(Vc )は光重合開始剤(c)の
体積、(Vd )は溶媒(d)の体積、(Ve )は粉末
(e)の体積を表す。また、体積の値は、それぞれの重
量を比重で割った値から算出する。
【0120】粉末混合光硬化性流動樹脂組成物に含まれ
る必須成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)
の混合比と、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物の硬化性
及びそれを用いて製造した焼結体の保形性の関係を図1
から3で説明する。図1に示すように、(Vx )の値が
0.4より大きい場合、(e)の含有量が多すぎて光硬
化性が悪く、目的の光硬化物を得ることができない。図
2に示すように、(Vy )の値が0.75より大きい場
合、(d)の量が多すぎて光硬化性が悪く、目的の硬化
物を得ることができない。図3に示すように、(Vz )
の値が0.6より小さいと、光硬化後の乾燥工程で
(d)を除去した後、焼結する際の粉末混合樹脂成形体
に含まれる(e)の含有量が少なく、焼結後の三次元構
造体の保形性が悪く、崩れが生じやすくなり所望する焼
結体が得られない。(Vx )の下限の値0.27と、
(Vy )の下限の値0.55は、Vx ≦0.4、Vy ≦
0.75、及び0.6≦Vz の条件を満たすよう、式
(1)から(3)を計算して導いた値である。従って、
(Vx )の値が0.27より小さい場合、上記条件を満
たすことができず、(e)の含有量が少なすぎて焼結後
の構造体の保形性が悪く、崩れが生じやすくなり、所望
する焼結体が得られなくなる。また、(Vy )の値が
0.55より小さい場合は、上記条件を満たすことがで
きず、光硬化後の乾燥工程で除去される成分(d)の含
有量が少ないため、焼結する際の粉末混合樹脂成形体に
含まれる(e)の含有量を、焼結体の保形性を保持する
ために必要な量まで向上することができなくなる。
【0121】また、本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂
組成物は、上記(Vx )、(Vy )及び(Vz )を規定
すれば十分である。これは、本発明の三次元構造体を造
形するとき、後述するように、三次元樹脂成形体を乾燥
する段階で溶媒(e)が除去され、等方的に該成形体が
収縮することによる。即ち、三次元樹脂成形体の乾燥時
に溶媒が除去され、三次元成形体が収縮するので粉末混
合樹脂成形体中の粉末の含量が見かけ上増加する。従っ
て、本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を用いて
三次元構造体を成形する場合には、該造形体が収縮され
ることになり、全体に対する粉末の含量のほかに、収縮
した段階での各成分(即ち、上記(a)、(b)、
(c)及び(e))の合計に対する粉末の含量を粉末混
合光硬化性流動樹脂組成物を調製するときに規定してお
く必要があり、また除去される溶媒の体積含量も併せて
規定しておく必要がある。
【0122】次に本発明の各成分について説明する。
【0123】(a)は、アクリロイル基、またはメタク
リロイル基、またはビニル基を1個以上有する単量体の
中から選択され、(b)は前記官能基を2個以上有する
単量体から選択される。(c)は、光照射によってラジ
カルを発生する作用を有する化合物から選択される。
(a)(b)(c)については、具体的には、「加藤清
視、「紫外線硬化システム」総合技術センター、(19
89)」に詳しく説明されており、特に限定されるもの
ではない。例えば、モルフォリンアクリレート、2−ヒ
ドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、(2
−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェー
ト、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニ
ウムクロライド、N,N−ジメチルアミノプロピルアク
リルアミドを挙げることができる。
【0124】成分(a)は、上記のモノマーの単一物で
あっても、またこれらの混合物であってもよい。更に
は、上記モノマー若しくは上記モノマーの混合物を主成
分としたラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機物
質の混合物であってもよい。このような上記モノマー等
を主成分とするラジカル重合性官能基を1つ以上有する
有機物質の混合物である場合は、主成分となる上記モノ
マー成分若しくは上記モノマー成分の混合物の含量は、
少なくともラジカル重合性官能基を1つ以上有する有機
物質の混合物の60%以上であることが好ましい。ま
た、この場合、少なくともラジカル重合性官能基を1つ
以上有する有機物質の混合物に含まれる上記モノマー成
分以外の成分は、具体的には2−ヒドロキシエチルメタ
クリレート、グリセロールモノメタクリレートがある。
【0125】(d)は光照射に対して反応性を示さず光
硬化後の乾燥によって除去し得る溶媒であって、前記成
分(a)、(b)及び(c)と相溶性を有する溶媒から
選択される。例えば、エタノール、n−プロパノール、
n−ブタノール、n−アミルアルコール等のアルコー
ル、ベンゼン、トルエンなどの芳香族化合物、又は水を
用いることができる。
【0126】(e)は、焼結によってセラミックス構造
体に加工し得る粉末であればよく、特に限定されるもの
ではない。例えば、磁器、粘土、白陶土、カオリン組成
物、リン酸塩、ケイ酸塩、カーバイト、ガラス、シリ
カ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸ジルコン酸鉛等が
挙げられる。
【0127】(b)と(c)の混合比は、(a)に対し
て(b)は0.5〜10mol%、(c)は0.01〜
10mol%の範囲であることが望ましい。(b)が
0.5mol%未満の場合では、粉末混合樹脂成形体の
材料強度が非常に弱くなる。一方、10mol%よりも
多量の場合は粉末混合樹脂成形体の乾燥工程での収縮率
が小さくなる、収縮する際粉末混合樹脂成形体に亀裂が
入り崩壊しやすくなる等の問題が生じる。また、(c)
が0.001mol%未満の場合は重合速度が遅く、1
0mol%より多量の場合は重合度が低下する。
【0128】(作用)本発明の粉末混合光硬化樹脂組成
物は、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を適
切な方法で混合し、更にこれに粉末を加え、混練するこ
とによって調製される。成分(a)、(b)、(c)及
び(d)の混合方法は、これら樹脂等を均一にし得るも
のであれは特に限定されないが、樹脂中にスターラーチ
ップを入れたスターラーを用いて撹拌する等の方法を用
いることが望ましい。次いで、得られた光硬化性流動樹
脂組成物を成分(e)の粉末と混練する。混練の方法は
特に限定されないが、真空にして気泡を取り除きながら
撹拌する真空脱泡機等を用い混練する等の方法を使用し
うる。
【0129】本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
に紫外線等の光を照射すると、成分(c)より発生した
ラジカルによって成分(a)及び(b)が共重合し、成
分(d)及び(e)を内包した三次元網目構造を有する
三次元樹脂成形体が得られる。この三次元樹脂成形体
は、溶媒(d)を含んだ高分子ゲルとみなすことがで
き、加熱乾燥することにより成分(d)が蒸発して成分
(a)と(b)からなる三次元網目構造が等方的に収縮
し、三次元樹脂成形体が収縮した粉末混合樹脂成形体が
得られる。従って、乾燥後の三次元樹脂成形体は、成分
(e)の体積含有率がVz の値で示される粉末混合樹脂
成形体となる。この粉末混合樹脂成形体は、三次元樹脂
成形体に比べ成分(e)の体積含有率が見かけ上多くな
る。従って、粉末混合樹脂成形体を高温加熱することに
より成分(a)、(b)及び(c)を脱脂すると共に、
成分(e)を焼結することによって、保形性が保持され
た所望の焼結体を得ることが可能となる。
【0130】本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物
を用いれば、光硬化後の乾燥工程により硬化物が等方収
縮する。これは、三次元網目構造を有する高分子ゲルが
等方的に収縮する特性を利用している。このように、本
発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物は、光硬化時に
は組成物中に含まれる粉末の体積含有率を低くして光硬
化性を保ちつつ、且つ焼結する際には粉末混合樹脂成形
体に含まれる粉末の体積含有率を高くすることが可能な
粉末混合光硬化性流動樹脂組成物である。
【0131】(効果)本発明の粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物は、光硬化後の乾燥工程により三次元樹脂成形
体が等方収縮する。従って、本発明の粉末混合光硬化性
樹脂組成物は、光硬化時には組成中に含まれる粉末含有
率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ焼結する際には
粉末混合樹脂成形体に含まれるセラミック粉末の体積含
有率を高くすることが可能であるため、形状が保持され
た所望の構造体を得るのに最適な粉末混合光硬化性流動
樹脂組成物である。
【0132】(2) 前記成分(e)の粉末が、一方の
側鎖に該粉末と反応し得る官能基を含有するシランを有
し、他方の側鎖にラジカル重合可能な官能基を有する有
機化合物によって表面処理されていることを特徴とする
上記(1)に記載の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
【0133】(構成)実施例2、5、6が該当する。
【0134】上記(1)の粉末成分(e)として、一方
の側鎖に該粉末と反応し得る官能基を含有するシランを
有し、他方の側鎖にラジカル重合可能な官能基を有する
有機化合物によって表面処理されているものを用いる。
【0135】一方の側鎖に粉末と反応し得る官能基を含
有するシランを有し、他方の側鎖にラジカル重合可能な
官能基を有する有機化合物としては、例えば、ビニルト
リメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メタ
クリル酸−3−トリメトキシシリルプロピル、トリクロ
ロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等から選択
される。粉末としては、金属酸化物であるシリカ、アル
ミナ、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。
【0136】(作用)一方の側鎖に粉末と反応しうる官
能基を含有するシランを有し、他方の側鎖にラジカル重
合可能な官能基を有する有機化合物を用いて粉末の表面
処理を行うと、シラン化合物と粉末上に存在するOH基
とが反応し、シラン化合物が粉末に共有結合で強固に結
合される。これにより、粉末の表面上にラジカル重合可
能な官能基が表面に出た単分子皮膜が形成される。この
粉末を含有した本発明の組成物に紫外線等の光を照射す
ると、粉末表面のラジカル重合可能な官能基と上記成分
(a)及び(b)とが化学結合によって結合され、粉末
と光硬化した樹脂とが化学結合によって結合されること
になる。従って、このような表面処理を施すことによ
り、このような表面処理をしない場合に比べ、成分
(e)が樹脂成分に強固に結合され、三次元樹脂成形体
作製工程での粉末沈殿の生成を軽減することができ、更
に、三次元樹脂成形体を洗浄する場合に、成分(e)が
三次元樹脂成形体から流出するのを防ぐことが可能であ
る。また、三次元樹脂成形体を乾燥し、収縮させる際に
成分(e)が粉末混合樹脂成形体表面に析出するのも防
ぐことが可能となる。
【0137】次に粉末の表面処理法法について説明す
る。まず、アルコール(例えば、エタノール)のような
有機溶媒と、水(好ましくはイオン交換水)を混合した
溶液に塩酸等の鉱酸を滴下し、溶液のpHを3.5〜
4.5に調製する。この溶液に、一方の側鎖に粉末と反
応しうる官能基を含有するシランを有し、他方の側鎖に
ラジカル重合可能な官能基を有する有機化合物を撹拌し
ながら加え、更に、15分から2時間、好ましくは20
分から1時間撹拌して表面処理溶液を調製する。次に成
分(e)の粉末として例えばアルミナ粉末を撹拌しなが
ら前記表面処理溶液を滴下し、全容量を滴下した後、更
に15分から2時間、好ましくは30分から1時間撹拌
を続けた。次に、これを加熱乾燥する。加熱乾燥は、使
用する前記成分(d)によって異なり、乾燥温度は前記
成分(d)の沸点を境に前後10℃以内に設定し、1か
ら5時間行う。乾燥後、アルミナはメノウ乳鉢を用いて
粉砕し、微粉末とした。
【0138】また、混合方法等の他の条件は、上記
(1)で説明したとおりである。
【0139】(効果)以上のように、(2)により、粉
末の三次元樹脂成形体中での沈殿が軽減され、三次元樹
脂成形体からの粉末の流出及び粉末混合樹脂成形体表面
への粉末の析出を防ぐことが可能な粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物が提供できる。
【0140】(3) 前記成分(a)のモノマーが水溶
性の有機物質であり、前記(d)の溶媒が水であること
を特徴とする上記(1)又は(2)に記載の粉末混合光
硬化性流動樹脂組成物。
【0141】(構成)実施例1、2、5、6が該当す
る。
【0142】成分(a)は、ラジカル重合性の官能基を
1つ以上有する水溶性の単量体から選択される。ラジカ
ル重合性の官能基を1つ以上有する水溶性の単量体は、
不飽和炭化水素基を1個以上有する水溶性の単量体の中
から選択され、これらにはイオン基を有する単量体とイ
オン基を有さない単量体がある。イオン基を有するラジ
カル重合性単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、
リン酸基、3級アミン、水酸化4級アミン、スルホニウ
ム基などのイオン基を有し、少なくとも1個以上のラジ
カル重合性官能基を有する単量体の中から選択される。
例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、スチレンス
ルホン酸、無水マレイ酸、2−アクリルアミド−2−メ
チルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアミノプロ
ピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル
(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピ
ルアクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチルトリ
メチルアンモニウムクロライド、3−アクリルアミドプ
ロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどを挙げる
ことができる。イオン基を有さない水溶性のラジカル重
合性単量体としては、例えば、モルフォリンアクリレー
ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチ
レングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミ
ド、グリセロール(メタ)アクリレート、ビニルピロリ
ドン、N−イソプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、モルフォリノエチル(メタ)
アクリレート、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)ア
クリル酸エチル、N,N−ジメチルアクリルアミドなど
を挙げることができる。ラジカル重合性の官能基を1つ
以上有する水溶性の単量体は、上記単量体のうち一つま
たは複数を用いて構成される。
【0143】水は純水が望ましい。
【0144】(作用)上記組成物に紫外線等の光を照射
すると、水と成分(e)を内包した三次元網目構造を有
した三次元樹脂成形体が得られる。該三次元樹脂成形体
は、水を含んだ高分子ゲルとみなすことができる。水を
含んだ高分子ゲルは、浸透圧の変化によって等方的な体
積変化を示す。従って、浸透圧を利用した三次元樹脂成
形体の収縮が可能となる。つまり、三次元樹脂成形体を
1mol/l以上の高濃度の電解質水溶液に浸漬するこ
とにより、浸透圧の影響で三次元樹脂成形体が等方的に
収縮した三次元樹脂成形体となる。さらに、この収縮し
た三次元樹脂成形体を加熱乾燥することにより内包され
た水を蒸発し、成分(a)と(b)からなる三次元網目
構造を等方的に収縮させて、粉末混合樹脂成形体を得る
ことができる。この粉末混合樹脂成形体は、浸透圧によ
る収縮前の三次元樹脂成形体より成分(e)の体積含有
率が見かけ上多くなる。この粉末混合樹脂成形体を高温
加熱することにより成分(a)、(b)及び(c)を脱
脂するとともに成分(e)を焼結することによって、保
形性が保持された所望の焼結体を得ることが可能とな
る。上記のように、段階的に三次元樹脂成形体を収縮で
きるので、収縮時に生じる歪みが軽減され、焼結体の保
形性が更に向上する。
【0145】(効果)(3)に係る組成物を使用するこ
とによって、光硬化後、浸透圧による収縮工程及び乾燥
工程により三次元樹脂成形体を等方収縮することができ
る。従って、光硬化時には組成物中に含まれる粉末の体
積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ焼結する
際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体積含有率
を高くすることが可能な粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物が提供できる。
【0146】(4) 前記(d)の溶媒が、沸点が10
0℃以上であり常温において液体として存在する有機溶
媒であることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載
の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
【0147】(構成)実施例3、4が該当する。
【0148】本発明は、上記(1)又は(2)に記載の
成分(d)として、沸点が100℃以上であり常温にお
いて液体として存在する有機溶媒を用いた粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物である。有機溶媒としては、例え
ば、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−アミルア
ルコール等のアルコールや、アニスアルコール、ベンジ
ルアルコール、アニソール、キシレン等の芳香族化合物
から選択される。沸点が100℃以下の場合、揮発性が
高いため、光照射熱や反応熱による蒸発、長期保存によ
る組成変化等の問題が生じやすく、好ましくない。
【0149】(作用)上記(1)に記載の成分(a)、
(b)及び(c)は、そのほとんどが有機溶媒への溶解
性に優れた物であるため、成分(d)を水とした場合の
上記(3)と比べ、樹脂の選択の幅が広がる。
【0150】(効果)(1)の効果と同様に、本発明の
粉末混合光硬化性流動樹脂組成物は、光硬化後の乾燥工
程により三次元樹脂成形体が等方収縮する。従って、本
発明の粉末混合光硬化性樹脂組成物は、光硬化時には組
成中に含まれる粉末の体積含有率を低くして光硬化性を
保ちつつ、且つ焼結する際には粉末混合樹脂成形体に含
まれる粉末の体積含有率を高くすることが可能であるた
め、形状が保持された所望の構造体を得るのに最適な粉
末混合光硬化性流動樹脂組成物である。
【0151】(5) 前記成分(d)から成る溶媒が、
沸点の異なる2種以上の互いに均一に混合する液体の混
合物からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載
の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
【0152】(構成)実施例4が該当する。
【0153】上記(1)又は(2)に記載の成分(d)
として、沸点の異なる2種以上の互いに均一に混合する
液体の混合物からなる溶媒を用いて粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物を調製する。この混合溶媒は、例えば、n
−プロパノールとn−アミルアルコールの混合液や、キ
シレンとベンジルアルコールの混合物などを挙げること
ができる。
【0154】(作用)上記(1)の作用に記載した乾燥
工程において、一定の上昇勾配の温度で乾燥すれば、沸
点の低い溶媒から先に蒸発除去されるため、1種の溶媒
を用いた場合に比べ徐々に三次元樹脂成形体を収縮する
ことが可能となる。また、乾燥工程における乾燥温度
を、低沸点の溶媒の沸点近傍と高沸点の溶媒の沸点近傍
でそれぞれ保持すれば段階的に溶媒を除でき、三次元樹
脂成形体を段階的に収縮することが可能となる。従っ
て、収縮時に生じる歪みが軽減され、三次元構造体の保
形性が更に向上する。
【0155】(効果)三次元樹脂成形体に含まれる溶媒
が徐々に、または段階的に蒸発除去され、三次元樹脂成
形体が等方的に収縮する。従って、本発明の粉末混合光
硬化性樹脂組成物は、光硬化時には組成中に含まれる粉
末の体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ焼
結する際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体積
含有率を高くすることが可能であるため、形状が保持さ
れた所望の構造体を得るのに最適な粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物である。
【0156】(6)上記(3)に記載の粉末混合光硬化
性流動樹脂組成物に、さらに光照射に対して反応性を示
さない重合度1000以上の水溶性ポリマーを含有した
ことを特徴とする粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
【0157】(構成)実施例6が該当する。
【0158】上記(3)記載の粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物に、さらに重合度1000以上の光照射に対し
て反応性を示さない水溶性ポリマーを含有して粉末混合
光硬化性流動樹脂組成物を調製する。
【0159】水溶性ポリマーは特に限定されず、ポリビ
ニルアルコールやポリエチレングリコールなどのイオン
基を持たない水溶性ポリマー、又はポリアクリル酸やカ
ルボキシメチルセルロースやポリアリルアミンなどのイ
オン基を有するポリマーのどちらのポリマーでも用いる
ことができる。ただし、成分(a)にイオン基を有する
モノマーを用いる場合であって、且つイオン基を有する
水溶性ポリマーを用いる場合、該水溶性ポリマーは、成
分(a)のラジカル重合性モノマーのイオンと同種の電
荷のイオン基を有することが望ましい。また、水溶性ポ
リマーの配合比は、配合組成物中の水溶性ポリマーの濃
度が50wt%以下であって配合組成物中に沈殿が生じ
ない範囲で多量に配合することが望ましい。なお、水溶
性ポリマーには、その重合度が1000以上の物を用い
る。この水溶性ポリマーの含有は、光重合した際の三次
元樹脂成形体の材料強度を向上させる目的で含有される
ものである。重合度が1000以下の水溶性ポリマーで
は、材料強度の向上には不十分となり、この目的を達成
することができない。
【0160】(作用)水溶性ポリマーを基材としてラジ
カル重合性モノマーが三次元架橋するため、三次元樹脂
成形体の材料強度が向上する。三次元樹脂成形体は、多
量の溶媒(d)を含んだゲルとみなすことができるた
め、三次元樹脂成形体は柔らかく構造によって保形性が
悪い場合があるが、水溶性ポリマーを含有させることに
よってその問題を回避することが可能となる。
【0161】(効果)三次元樹脂成形体の材料強度が向
上できるため、本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物は、光照射後の三次元樹脂成形体の保形性に優れた、
粉末混合光硬化性流動樹脂組成物である。
【0162】(7) 前記成分(a)のモノマーがモル
ホリノ基を有する有機物質であることを特徴とする上記
(1)から(6)に記載の粉末混合光硬化性流動樹脂組
成物。
【0163】(構成)実施例1、2が該当する。
【0164】上記(1)から(6)に記載の成分(a)
にモルホリノ基を有するモノマーを用いて粉末混合光硬
化性流動樹脂組成物を調製する。モノマーの例として
は、例えば、モルフォリンアクリレート、モルフォリノ
エチルアクリレート、モルフォリノエチルメタクリレー
ト等がある。
【0165】(作用)成分(a)にモルホリノ基を有す
るモノマーを用いると、粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物は、多量の溶媒(d)を含んだ場合においても内部硬
化性に優れており、所望の三次元樹脂成形体を得ること
が可能となる。また、粉末混合光硬化性流動樹脂の粘度
も低く、成分(e)の粉末が混合しやすくなり、混合特
性にも優れた組成物となる。
【0166】(効果)多量の溶媒(d)を含んだ場合に
おいても本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂は、内部硬
化性に優れ、且つ成分(e)の粉末が均一に混合され、
混合特性の優れた、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物が
提供できる。
【0167】(8) 上記(3)に記載の成分(a)の
モノマーがイオン基を有する有機物質であることを特徴
とする粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
【0168】(構成)実施例5、6が該当する。
【0169】上記(3)に記載の成分(a)としてイオ
ン基を有するモノマーを用いて光硬化性流動樹脂組成物
を調製する。イオン基を有するラジカル重合性モノマー
は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、3級ア
ミン、水酸化4級アミン、スルホニウム基などのイオン
基を有し、少なくとも1個以上のラジカル重合性官能基
を有するモノマーの中から選択される。例えば、(メ
タ)アクリル酸、ビニル酢酸、スチレンスルホン酸、無
水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパ
ンスルホン酸、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリ
ルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アク
リレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルア
ミド、2−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモ
ニウムクロライド、3−アクリルアミドプロピルトリメ
チルアンモニウムクロライドなどを挙げることができ
る。
【0170】(作用)上記組成物に紫外線等の光を照射
すると、水と成分(e)を内包した三次元網目構造を有
した三次元樹脂成形体が得られる。該三次元樹脂成形体
は、水を含んだ高分子電解質ゲルとみなすことができ
る。水を含んだ高分子電解質高分子ゲルは、浸透圧、p
H、相転移等によって等方的な体積変化を示す。従っ
て、浸透圧、pH、相転移、を利用した三次元樹脂成形
体の収縮が可能となる。
【0171】浸透圧については、(3)の記載と同様で
ある。
【0172】pHについては、モノマーのイオン基が弱
酸性または弱アルカリ性のイオン基の場合、pHによっ
てイオン基の解離度が変化して等方的な体積変化が生じ
る。弱酸性のイオン基を有するモノマーを用いた場合
は、上記三次元樹脂成形体を強酸性溶液に浸漬するとイ
オン基の解離度が減少し粉末混合樹脂成形体は等方的に
収縮する。
【0173】相転移については、上記三次元樹脂成形体
を例えばアセトンに浸漬すると、イオン基を有するゲル
が相転移を起こし、上記三次元樹脂成形体が等方的に収
縮する。
【0174】上記の浸透圧等により収縮された三次元樹
脂成形体を加熱乾燥することにより内包する溶媒が蒸発
して更に等方的に収縮し、成分(a)と(b)からなる
三次元網目構造を有する粉末混合樹脂成形体が得られ
る。該粉末混合樹脂成形体は、前記収縮された三次元樹
脂成形体に比べ粉末成分(e)の体積含有率が見かけ上
多くなる。次に、この粉末混合樹脂成形体を高温加熱す
ることにより成分(a)、(b)及び(c)を脱脂する
と共に、成分(e)を焼結することによって、保形性が
保持された所望の三次元構造体を得ることが可能とな
る。
【0175】上記のように、段階的に三次元樹脂成形体
を収縮できるため、収縮時に生じる歪みが軽減され、三
次元構造体の保形性が更に向上する。
【0176】(効果)本発明の粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物を光硬化後、溶液浸漬すると収縮工程及びの乾
燥工程により三次元樹脂成形体が等方収縮する。従っ
て、本発明の粉末混合光硬化性樹脂組成物は、光硬化時
には組成中に含まれる粉末の体積含有率を低くして光硬
化性を保ちつつ、且つ焼結する際には粉末混合樹脂成形
体に含まれる粉末の体積含有率を高くすることが可能で
あるため、形状が保持された所望の構造体を得るのに最
適な粉末混合光硬化性流動樹脂組成物である。
【0177】(9) 前記(1)から(8)の何れかに
記載の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物から三次元構造
体を製造するための方法であって、(a)前記粉末混合
光硬化性樹脂組成物に光のパターンを照射して光硬化層
を形成する工程と、(b)該硬化層を複数層積層して三
次元樹脂成形体を造形する工程と、(c)該三次元樹脂
成形体を乾燥する工程と、(d)該乾燥された三次元樹
脂成形体を焼結する工程とを具備することを特徴とする
方法。
【0178】(作用)本発明の粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物により三次元構造体を製造する光造形法の具体
的な方法を図4の工程図に示す。まず、1)三次元CA
Dに三次元構造物の図面を入力する。2)該三次元構造
物から一定の積層の厚みごとに水平方向のスライス図形
データ群を作成する。3)本発明の粉末混合光硬化性流
動樹脂組成物[例えばオリゴマー(エポキシアクリレー
ト、ウレタンアクリレートなど)、反応性希釈剤(モノ
マー)、光重合開始剤(ベンゾイン系、アセトフェノン
系など)の3要素からなる光硬化性流動樹脂に粉末及び
溶媒を加えたもの。]に上下方向に移動するエレベータ
を設置し、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物が一定の積
層厚みになる様に位置決めする。4)レーザビーム[例
えば紫外線の波長領域を持つエキシマレーザ(308n
m)、He−Cdレーザ(325nm)、Arレーザ
(351〜346nm)等]を目的形状の水平断面に沿
って走査させ、粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を硬化
させる。5)再度エレベータを一定の積層厚みになる様
に位置させる。6)目的形状の三次元樹脂成形体が完成
するまで4)と5)の操作を繰り返す。7)三次元樹脂
成形体を取り出し、表面に付着している未硬化の粉末混
合光硬化性流動樹脂組成物を洗浄除去する。8)後露光
を行う。
【0179】以上の工程で三次元樹脂成形体が製造され
る。この様な方法によって三次元樹脂成形体を切削無し
に製造することができる。
【0180】次にこの光造形工程を図5により示す。図
5は光造形の各工程を示す概略図であり51は上下方向
に動くエレベータ、52は光を透過するガラス板、53
は粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を入れるタンク、5
4は下から上に向かう集光された紫外線レーザビーム、
55は粉末混合光硬化性流動樹脂組成物、56は紫外線
により硬化した三次元樹脂成形体の一部を表す。(A)
は、エレベータ(51)のテーブルとガラス板(52)
の面との間が一定の間隔になるようにエレベータ(5
1)を上昇させ、レーザビーム(54)を照射し、三次
元樹脂成形体を造形している状態を表している。(B)
は三次元樹脂成形体の一層目の光造形が終了した状態を
表す図である。(C)は三次元樹脂成形体の二層目を光
造形する為にレーザビームの照射を止め51のエレベー
タを一定の間隔上昇させた状態を表す図である。(D)
は三次元樹脂成形体の二層目をレーザビームにより光造
形している図である。これらの(A)〜(D)の手順を
繰り返し、三次元樹脂成形体を積層形成しながら所望形
状の三次元樹脂成形体を造形する。
【0181】上記製造工程によって、例えば直径10m
m、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体を製造す
ることができる。
【0182】次に、三次元樹脂成形体を乾燥機に入れ、
加熱乾燥して三次元樹脂成形体を収縮させて粉末混合樹
脂成形体を調製する。加熱乾燥は、成分(d)の溶媒が
除去できる条件で行われる。具体的には、前記成分
(d)の沸点を境に前後10℃以内に乾燥温度を設定
し、1〜5時間乾燥する。本乾燥工程で、例えば上記直
径10mm、高さ5mmの円柱形状の三次元樹脂成形体
を100℃で5時間加熱乾燥すると、そのサイズが直径
8mm、高さ4mmの円柱形状に収縮した粉末混合樹脂
成形体となる。
【0183】次に、得られた粉末混合樹脂成形体を炉に
入れ、好ましくは昇温速度0.16〜6.6℃/mi
n、より好ましくは1.6℃/minで最高温度350
〜500℃、より好ましくは460℃にて脱脂を行い、
次いで1200〜1550℃、好ましくは1500℃に
昇温して、1〜3時間、好ましくは1時間焼結すること
により、三次元構造体を得ることができる。三次元構造
体は、例えば上記の直径8mm、高さ4mmの円柱形状
に収縮した粉末混合樹脂成形体を用いた場合、そのサイ
ズが直径7mm、高さ3.5mmの円柱形状に収縮した
所望形状の三次元構造体であり、本製造方法で、所望の
三次元構造体を製造することができる。
【0184】
【発明の効果】光硬化時には組成物中に含まれる粉末の
体積含有率を低くして光硬化性を保ちつつ、且つ焼結す
る際には粉末混合樹脂成形体に含まれる粉末の体積含有
率を高くすることが可能であるため、形状が保持された
所望の構造体を選るのに最適な、後の焼結によって構造
体に加工し得る粉末を含有した粉末混合光硬化性流動樹
脂組成物がえられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物に含まれる必須成分(a)、(b)、(c)、(d)
及び(e)の体積から得た(Vx )の値と、該粉末混合
光硬化性流動樹脂組成物の硬化性およびそれを用いて製
造した三次元構造体の保形性の関係を表した図である。
【図2】図2は本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物に含まれる必須成分(a)、(b)、(c)、(d)
及び(e)の体積から得た(Vy )の値と、該粉末混合
光硬化性流動樹脂組成物の硬化性およびそれを用いて製
造した三次元構造体の保形性の関係を表した図である。
【図3】図3は本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物に含まれる必須成分(a)、(b)、(c)、(d)
及び(e)の体積から得た(Vz )の値と三次元構造体
の保形性の関係を表した図である。
【図4】図4は本発明の粉末混合光硬化性流動樹脂組成
物を用いた光造形方法の手順を示したフローチャート図
である。
【図5】図5は粉体混合光硬化性流動樹脂組成物に光を
照射させ三次元樹脂成形体を造形するための造形工程の
各手順を、規制液面法を例に取り示した概略図である。
【符号の説明】
51…上下方向に動くエレベータ、52…光を透過する
ガラス板、53…粉末混合光硬化性流動樹脂組成物を収
容するタンク、54…集光された紫外線レーザビーム、
55…粉末混合光硬化性流動樹脂組成物、56…三次元
樹脂成形体。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光の作用によって重合し溶剤に不溶化す
    るか、または液体から固体に変化して構造体を造形する
    することができる粉末混合光硬化性流動樹脂組成物にお
    いて、その必須成分として、(a)ラジカル重合性官能
    基を1つ以上有する有機物質から成る少なくとも1種の
    モノマーと、(b)ラジカル重合性官能基を2つ以上有
    する有機物質から成る架橋剤と、(c)光重合開始剤
    と、(d)光照射に対して反応性を示さず光硬化後の乾
    燥によって除去し得る溶媒と、(e)焼結によって三次
    元構造体に加工し得る粉末とを含有し、これら必須成分
    中の前記粉末(e)の体積比(Vx )が0.27〜0.
    4、前記粉末を除いた必須成分中の前記溶媒(d)の体
    積比(Vy )が0.55〜0.75、前記溶媒を除いた
    必須成分中の前記粉末(e)の体積比(Vz)が0.6
    以上の割合であることを特徴とする粉末混合光硬化性流
    動樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 前記成分(e)の粉末が、一方の側鎖に
    該粉末と反応し得る官能基を含有するシランを有し、他
    方の側鎖にラジカル重合可能な官能基を有する有機化合
    物によって表面処理されていることを特徴とする請求項
    1に記載の粉末混合光硬化性流動樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 前記成分(a)のモノマーが水溶性の有
    機物質であり、前記(d)の溶媒が水であることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の粉末混合光硬化性流動樹
    脂組成物。
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Cited By (9)

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