JPH085323Y2 - 金属積層形ガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、金属積層形ガスケットに関するものであ
り、さらに詳しくは、内燃機関にシリンダヘッドガスケ
ットとして用いるのに適した金属積層形ガスケットに関
するものである。

［従来の技術］ 内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッドとの間
に装着して、燃焼ガスや冷却水、油などが漏洩するのを
防止する金属積層形ガスケットは、通常、複数枚の金属
板を積層し、上下両面の外板で中板を被覆して組立てら
れ、燃焼室穴や各種流体穴の周辺に必要に応じて穴シー
ル部が設けられている。このうち、燃焼室穴シール部
は、通常、一方の外板を他方の外板上に折り返し、ある
いはグロメットにより積層した金属板を挟み込むことに
よって縁取りを形成しているが、該燃焼室穴シール部の
シール効果を高めるために、その穴シール部における縁
取り内に硬い材料からなるワイヤリングを挿入して、そ
の部分の締付け時の面圧を上げようとする効果的手法が
ある。

一方、近年における内燃機関は軽量化の指向にあり、
特に、シリンダヘッドをアルミニウム合金材料で製造す
るという傾向にある。ところが、シリンダヘッドをこの
ようなアルミニウム合金材料等で形成した場合に、シリ
ンダヘッドガスケットの燃焼室穴シール部に上記ワイヤ
リングを挿入したガスケットを用いて締付けると、硬い
ワイヤリングが外板を介してアルミニウム合金に喰い込
み、シリンダヘッドの接面に円形圧痕を生じ、シール性
能を悪化するという問題がある。

［考案が解決しようとする課題］ 本考案の技術的課題は、アルミニウム合金材等の軟質
材からなるエンジン部材のための金属積層形ガスケット
において、燃焼室穴の周辺の穴シール部における縁取り
内に、締付け時の面圧を上げるためのワイヤリングを配
設するに際し、エンジン部材の接面に生ずる圧痕を防止
するとともに、均一な面圧を発生させ、それによってシ
ール性能の向上を図ることにある。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決するため、本考案では、シリンダヘッ
ド及びシリンダブロックのうち少なくともシリンダヘッ
ドがアルミニウム合金材料等の軟質材で構成されたエン
ジン部材に装着して用いるためのガスケットであって、
複数の中板とこれらの中板の外面を被覆する外板とを積
層することにより構成され、燃焼室穴の穴シール部にお
ける縁取り内に、締付け時の面圧を上げるためのワイヤ
リングを備えたものにおいて、上記穴シール部の近辺及
び隣接する燃焼室穴間に配設した一部の中板を、少なく
ともシリンダヘッド側においてワイヤリングと縁取りと
の間に自在させ、各部材の硬さを、中板、ワイヤリン
グ、縁取り、の順に小さくしたことを特徴とするもので
ある。

また、上記の如く穴シール部の近辺及び隣接する燃焼
室穴間に中板を配設することなく、一部の中板または外
体の端部を延長して、少なくともシリンダヘッド側にお
いてワイヤリングと縁取りとの間に介在させることもで
きる。

［作用］ ガスケットをアルミニウム合金材料等の軟質材からな
るエンジン部材の間において締付けるとき、ワイヤリン
グにそれより硬い材質の金属からなる金属板を当接して
いるので、その金属板によりワイヤリングを備えたシー
ル部において面接触による幅広い均一な面圧が発生し、
エンジン部材の接面に生ずる圧痕を防止するとともに、
シール性能の向上が図られる。

［実施例］ 以下に図面に参照して本考案の実施例について詳述す
る。

第１図及び第２図は本考案の第１実施例の金属積層形
シリンダヘッドガスケットを示している。

この金属積層形ガスケット１は、上下の外体2,3及び
中板4,5,6,7,8を構成する金属板を数枚積層し、外板2,3
で中板4,5,6,7,8を被覆することにより構成され、エン
ジン部材、即ち燃焼室11を備えたシリンダブロック10と
シリンダヘッド12との間に装着して用いられるものであ
る。なお、ここでは、シリンダヘッド12がアルミニウム
合金材料等の軟質材からなることを前提にしている。

上記外板2,3及び中板4,5,6,7,8からなるガスケット１
は、シリンダブロック10の燃焼室11に対応する燃焼室穴
15の周囲の穴シール16において、上方の外板２を下方の
外板３の外側に折り返すことにより中板4,5,6,7,8を被
覆する縁取りを形成しているが、この縁取り内には、ガ
スケットの締付け時における穴シール部16の面圧を上げ
るために、ワイヤリング17を配設している。このワイヤ
リング17は、一般的には外板及び中板よりも硬質の金属
材料で形成されるものである。

而して、上記ワイヤリング17の上面には、最上層の中
板４を当接しているが、この中板４は穴シール部16の近
辺及び隣接する燃焼室穴15,15間のみに配し、該ワイヤ
リング17よりも硬い材質の金属板により構成している。
従って、各部材の硬さは、中板４、ワイヤリング17、縁
取りを備えた外板２、の順に小さくなっている。

なお、図中、18は冷却水用穴、19はボルト穴を示して
いる。また、図示の実施例では、上方の外板２を下方の
外板３の外側に折り返しているが、下方の外板３を上方
の外板２の外側２の外側に折り返して中板4,5,6,7,8を
被覆することにより、縁取りを形成することもできる。

上記構成を有する金属積層形ガスケット１は、シリン
ダブロック10とシリンダヘッド12との間に装着し、燃焼
室穴15を取り囲む複数のボルト穴19で締付けボルトによ
り締付けられるが、アルミニウム合金材料等の軟質材か
らなるシリンダヘッド12側において、ワイヤリング17に
それよりも硬い材料からなる金属板で形成した中板４を
当接しているので、その中板４によりワイヤリング17を
備えた穴シール部16において面接触による幅広い均一な
面圧が発生し、シリンダヘッド12の接面に生ずる圧痕を
防止するとともに、シール性能の向上が図られる。

第３図は、第１図の中板４を設けた実施例におけるガ
スケット締付け時の面圧分布を示し、また、第４図は上
記中板を用いていない従来のガスケットを同一の力で締
付けた場合の面圧分布を示している。これらを比較対照
すると、上述の硬い材料からなる中板４により、従来の
ガスケットにおける実質的な線接触から、シール面幅が
広い面接触となり、優れたシール効果が得られると同時
に、締付け時の圧痕の発生を防止できることがわかる。

一般に、シリンダヘッド・ガスケットにおける燃焼室
穴の周辺は、燃焼室内で生ずる爆発的燃焼によって、高
温・高圧の燃焼ガスに常時曝されている。しかも、間欠
的爆発燃焼のため、ガスケットは、シリンダブロックと
シリンダヘッドとの間で常に叩き振動現象を受けてい
る。このような燃焼室穴の穴シール部にワイヤリング17
を配設し、さらに該ワイヤリングに上述の中板４を当接
した場合、ガスケットの締付け時ばかりでなく、機関運
転時における叩き振動現象に対しても、シール性の低下
を防止することができる。

第５図は第２図のＢ−Ｂ位置に対応する他の実施例の
斜視断面図を示すものである。この実施例では、外板2
2,23及び中板24,25,26,27を積層し、穴シール部28,28に
おいて下方の外板23を上方の外板22の折り返すことによ
り縁取りを形成し、ワイヤリング29とともに中板24,25,
26,27を外板22,23で被覆しており、特に燃焼室穴の周囲
の穴シール部28及びエンジンの燃焼室間の間隔が狭い部
分に介装する中板24をワイヤリング29よりも硬質の金属
板により構成し、その中板24を隣接する両燃焼室穴の穴
シール部28,28のワイヤリング29に当接している。

而して、この実施例においても、第１実施例と同様に
機能し、シール性能を大幅に向上することができる。

また、第６図は、シリンダブロックとシリンダヘッド
の両者がアルミニウム合金材料等の軟質材料製の場合に
用いるガスケットを示し、この実施例では、外板32,33
及び中板34,35,36,37,38,39を積層して、穴シール部40
において上方の外板32を下方の外板33の外側に折り返す
ことにより縁取りを形成し、ワイヤリング41とともに中
板34〜39を外板32,33で被覆しており、中板34及び中板3
8をワイヤリング41よりも硬質の金属板により形成し
て、それらの端部を他の中板の端部よりも延長し、縁取
り内においてワイヤリング41の上下に当接させている。

さらに、第７図の実施例は、外板42,43及び中板44,4
5,46,47を積層したガスケットにおいて、ワイヤリング5
1に当接する延長部を備えた最上層の中板44をそのワイ
ヤリング51よりも硬質の材料により形成した場合を示
し、第８図の実施例は、外板52,53及び中板54,55,56,5
7,58を積層したガスケットにおいて、グロメット59でそ
れらの外板及び中板をワイヤリング61と共に被覆するこ
とにより縁取りを形成し、該ワイヤリング61に当接する
延長部を備えた外板52をワイヤリング61よりも硬質の金
属板により形成した場合を示している。従って、第８図
の実施例において各部材の硬さは、延長部を備えた外板
52、ワイヤリング61、グロメット59、の順に小さくなっ
ている。

これらの実施例において、ワイヤリング41,51,61より
も硬質の材料で形成した中板34,38,44及び外板52の作用
は、前述した実施例の場合と同様である。

［考案の効果］ 以上に詳述した本考案によれば、アルミニウム合金材
料等の軟質材からなるエンジン部材のための金属積層形
ガスケットにおいて、燃焼室穴の周辺の穴シール部にお
ける縁取り内に、締付け時の面圧を上げるためのワイヤ
リングを配設するに際し、該ワイヤリングより硬い金属
板をワイヤリングと縁取りとの間に介在させ、各部材の
硬さを、上記金属板、ワイヤリング、縁取りの順に小さ
くするという簡単な手段によって、エンジン部材の接面
に生ずる圧痕を防止するとともに、均一な面圧を発生さ
せ、それによってシール性能の向上を図ることができ
る。

また、一部の中板または外板を硬い金属板により形成
し、この中板または外板の端部を延長してワイヤリング
と縁取りとの間に介在させるようにしたので、単にガス
ケットを構成する一部の金属板の材質を変えるだけで所
期のガスケットを得ることができ、特殊な部材を特別に
付加するなど従来のガスケットの構造を大きく改変する
必要がなく、しかも、外板の折り返し部またはグロメッ
トからなる縁取りを硬質金属板により形成する場合のよ
うな加工の困難さもなく、構造が簡単で加工が容易であ
る。

更に、上記の如く一部の中板または外板の端部を延長
してワイヤリングと縁取りとの間に介在させているの
で、この中板または外板を利用してガスケットの厚さ調
整を行うことにより、穴シール部における面圧分布の設
定を狂わすことなくガスケットの厚さのみを変えること
ができるとう利点もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る金属積層形ガスケットの要部（第
２図のＡ−Ａ位置）断面図、第２図は上記ガスケットの
平面図、第３図は第１図の実施例におけるガスケット締
付け時の面圧分布に関する説明図、第４図は従来のガス
ケットにおける同様な面圧分布に関する説明図、第５図
は第２図のＢ−Ｂ位置に対応する他の実施例の斜視断面
図、第６図ないし第８図はさらに他の実施例を示す断面
図である。 １……金属積層形ガスケット、2,3,22,23,32,33,42,43,
52,53……外板、4-8,24-27,34-39,44-47,54-58……中
板、15……燃焼室穴、16,28,40,50……穴シール部、17,
29,41,51,61……ワイヤリング。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッド及びシリンダブロックのう
   ち少なくともシリンダヘッドがアルミニウム合金材料等
   の軟質材で構成されたエンジン部材に装着して用いるた
   めのガスケットであって、複数の中板とこれらの中板の
   外面を被覆する外板とを積層することにより構成され、
   燃焼室穴の穴シール部における縁取り内に、締付け時の
   面圧を上げるためのワイヤリングを備えたものにおい
   て、 上記穴シール部の近辺及び隣接する燃焼室穴間に配設し
   た一部の中板を、少なくともシリンダヘッド側において
   ワイヤリングと縁取りとの間に介在させ、各部材の硬さ
   を、中板、ワイヤリング、縁取り、の順に小さくした、 ことを特徴とする金属積層形ガスケット。
2. 【請求項２】シリンダヘッド及びシリンダブロックのう
   ち少なくともシリンダヘッドがアルミニウム合金材料等
   の軟質材で構成されたエンジン部材に装着して用いるた
   めのガスケットであって、複数の中板とこれらの中板の
   外面を被覆する外板とを積層することにより構成され、
   燃焼室穴の穴シール部における縁取り内に、締付け時の
   面圧を上げるためのワイヤリングを備えたものにおい
   て、 一部の中板または外板の端部を延長して、少なくともシ
   リンダヘッド側においてワイヤリングと縁取りとの間に
   介在させ、各部材の硬さを、延長された中板または外
   板、ワイヤリング、縁取り、の順に小さくした、 ことを特徴とする金属積層形ガスケット。