JPH0841536A - 板厚方向の硬度むらが少なくdwtt特性の優れた高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
板厚方向の硬度むらが少なくdwtt特性の優れた高張力鋼板の製造方法Info
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- JPH0841536A JPH0841536A JP6178527A JP17852794A JPH0841536A JP H0841536 A JPH0841536 A JP H0841536A JP 6178527 A JP6178527 A JP 6178527A JP 17852794 A JP17852794 A JP 17852794A JP H0841536 A JPH0841536 A JP H0841536A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 板厚方向の硬度むらが少なく、DWTT85
%破面遷移温度が−60℃以下の厚肉のパイプライン用
高強度鋼板を製造する方法を提供する。 【構成】 C:0.01〜0.18%、Si:0.05
〜0.5%、Mn:1.0〜2.5%、Nb:0.01
〜0.1%を含む鋼スラブを900〜1050℃に加熱
後、再結晶γ域で50%以上、未再結晶γ域で65%以
上、γ+α2相域で1〜6回の水冷パスを含む10〜6
0%の圧下を加え、20〜50℃/sの速度で400℃
未満まで加速冷却する。
%破面遷移温度が−60℃以下の厚肉のパイプライン用
高強度鋼板を製造する方法を提供する。 【構成】 C:0.01〜0.18%、Si:0.05
〜0.5%、Mn:1.0〜2.5%、Nb:0.01
〜0.1%を含む鋼スラブを900〜1050℃に加熱
後、再結晶γ域で50%以上、未再結晶γ域で65%以
上、γ+α2相域で1〜6回の水冷パスを含む10〜6
0%の圧下を加え、20〜50℃/sの速度で400℃
未満まで加速冷却する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原油や天然ガス等を輸
送するパイプラインに使用される厚肉UOE鋼管用素材
に用いられる低温でのDWTT(Drop weight tear tes
t) 特性に優れ、板厚方向の硬度むらが少ない高張力鋼
板の製造方法に関するものである。
送するパイプラインに使用される厚肉UOE鋼管用素材
に用いられる低温でのDWTT(Drop weight tear tes
t) 特性に優れ、板厚方向の硬度むらが少ない高張力鋼
板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、原油や天然ガス等を輸送するパイ
プラインにおいては、輸送の効率を上げるために高圧の
操業が指向され、強度が高くかつ板厚の厚いUOE鋼管
用鋼板が要求されている。これらパイプラインは、脆性
破壊に対する安全性を高めるため、脆性破壊の発生特性
を向上させることは勿論、発生した脆性亀裂を停止させ
る能力を向上させる必要がある。前者はシャルピー衝撃
試験の破面遷移温度やCTOD試験で評価されるのに対
して、後者はDWTTの破面遷移温度で評価される。D
WTT85%破面遷移温度(85% FATT)を低下させるに
は、従来はシャルピー衝撃試験の破面遷移温度とDWT
Tの破面遷移温度とに相関があるとの考えから、結晶粒
微細化を達成することが重要であるとして、そのため例
えば制御圧延等の結晶粒微細化技術が発展してきたこと
は周知の通りである。
プラインにおいては、輸送の効率を上げるために高圧の
操業が指向され、強度が高くかつ板厚の厚いUOE鋼管
用鋼板が要求されている。これらパイプラインは、脆性
破壊に対する安全性を高めるため、脆性破壊の発生特性
を向上させることは勿論、発生した脆性亀裂を停止させ
る能力を向上させる必要がある。前者はシャルピー衝撃
試験の破面遷移温度やCTOD試験で評価されるのに対
して、後者はDWTTの破面遷移温度で評価される。D
WTT85%破面遷移温度(85% FATT)を低下させるに
は、従来はシャルピー衝撃試験の破面遷移温度とDWT
Tの破面遷移温度とに相関があるとの考えから、結晶粒
微細化を達成することが重要であるとして、そのため例
えば制御圧延等の結晶粒微細化技術が発展してきたこと
は周知の通りである。
【0003】しかしながら、板厚が20mmを超えるような
場合には、結晶粒の細粒化を行えばシャルピーの破面遷
移温度は低温側に移行するものの、DWTTの破面遷移
温度は必ずしも低温側に移行せず、したがって要求特性
を満足させ得ない場合が往々にしてでてきた。今までに
UOE鋼管に要求されているDWTT特性は幹線ライン
では-20 ℃、ステーション廻りで-46 ℃が最低温度であ
ったが、近年北極海等のガス田や油田を開発するため、
DWTT85% 破面遷移温度が -60℃以下の極低温用UO
E鋼管が要求されるようになった。
場合には、結晶粒の細粒化を行えばシャルピーの破面遷
移温度は低温側に移行するものの、DWTTの破面遷移
温度は必ずしも低温側に移行せず、したがって要求特性
を満足させ得ない場合が往々にしてでてきた。今までに
UOE鋼管に要求されているDWTT特性は幹線ライン
では-20 ℃、ステーション廻りで-46 ℃が最低温度であ
ったが、近年北極海等のガス田や油田を開発するため、
DWTT85% 破面遷移温度が -60℃以下の極低温用UO
E鋼管が要求されるようになった。
【0004】また厚肉で高強度化を図るため、例えば特
開昭54-68719号公報に開示されているように、制御圧延
後の冷却速度を15℃/s以上として強度上昇を図ろうとし
ているが、表面と中心の冷却速度の差により、板厚方向
に硬度差が生じ、板内の歪みや材質バラツキの原因とな
っている。
開昭54-68719号公報に開示されているように、制御圧延
後の冷却速度を15℃/s以上として強度上昇を図ろうとし
ているが、表面と中心の冷却速度の差により、板厚方向
に硬度差が生じ、板内の歪みや材質バラツキの原因とな
っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、板厚
方向の硬度むらが少なく、DWTT特性の優れた厚肉U
OE鋼管材の製造方法を提供することである。
方向の硬度むらが少なく、DWTT特性の優れた厚肉U
OE鋼管材の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量比にて、
C :0.01〜0.18%、Si:0.05〜0.5 %、Mn:1.0 〜2.5
%、Al:0.005 〜0.06%、Nb:0.01〜0.1 %を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物によりなる鋼スラブを90
0 〜1050℃の範囲に加熱後、(Ar3+70℃) 以上の再結晶
γ域で50%以上の圧下を与え、引き続いて(Ar3+70℃)
〜Ar3 の未再結晶γ域で65%以上の圧下を与え、次いで
Ar3 〜(Ar3 -80℃) の(γ+α)2相域で最終仕上げ前
に1〜6回の水冷パスを含む10〜60%の圧下を与え、そ
の後20〜50℃/sの冷却速度で400 ℃未満まで加速冷却
することを特徴とする板厚方向の硬度むらが少なく低温
靱性の優れた高張力鋼板の製造方法であり、また本発明
は、必要によりさらに重量比にて、Cu:1.0 %以下、N
i:1.0 %以下、Cr:1.5 %以下、Mo:0.5 %以下、V
:0.01〜0.1 %以下、Ti:0.005 〜0.1 %以下、Ca:
0.001 〜0.01%、REM :0.001 〜0.01%の1種または2
種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物により
なる鋼スラブを900 〜1050℃の範囲に加熱後、(Ar3+70
℃) 以上の再結晶γ域で50%以上の圧下を与え、引き続
いて(Ar3+70℃)〜Ar3 の未再結晶γ域で65%以上の圧
下を与え、次いでAr3 〜(Ar3−80℃) の(γ+α)2相
域で最終仕上げ前に1〜6回の水冷パスを含む10〜60%
の圧下を与え、その後20〜50℃/sの冷却速度で400 ℃
未満まで加速冷却することを特徴とする板厚方向の硬度
むらが少なく低温靱性の優れた高張力鋼板の製造方法で
ある。
C :0.01〜0.18%、Si:0.05〜0.5 %、Mn:1.0 〜2.5
%、Al:0.005 〜0.06%、Nb:0.01〜0.1 %を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物によりなる鋼スラブを90
0 〜1050℃の範囲に加熱後、(Ar3+70℃) 以上の再結晶
γ域で50%以上の圧下を与え、引き続いて(Ar3+70℃)
〜Ar3 の未再結晶γ域で65%以上の圧下を与え、次いで
Ar3 〜(Ar3 -80℃) の(γ+α)2相域で最終仕上げ前
に1〜6回の水冷パスを含む10〜60%の圧下を与え、そ
の後20〜50℃/sの冷却速度で400 ℃未満まで加速冷却
することを特徴とする板厚方向の硬度むらが少なく低温
靱性の優れた高張力鋼板の製造方法であり、また本発明
は、必要によりさらに重量比にて、Cu:1.0 %以下、N
i:1.0 %以下、Cr:1.5 %以下、Mo:0.5 %以下、V
:0.01〜0.1 %以下、Ti:0.005 〜0.1 %以下、Ca:
0.001 〜0.01%、REM :0.001 〜0.01%の1種または2
種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物により
なる鋼スラブを900 〜1050℃の範囲に加熱後、(Ar3+70
℃) 以上の再結晶γ域で50%以上の圧下を与え、引き続
いて(Ar3+70℃)〜Ar3 の未再結晶γ域で65%以上の圧
下を与え、次いでAr3 〜(Ar3−80℃) の(γ+α)2相
域で最終仕上げ前に1〜6回の水冷パスを含む10〜60%
の圧下を与え、その後20〜50℃/sの冷却速度で400 ℃
未満まで加速冷却することを特徴とする板厚方向の硬度
むらが少なく低温靱性の優れた高張力鋼板の製造方法で
ある。
【0007】
【作 用】本発明者らは、厚肉材のDWTT特性を向上
させるミクロ組織を鋭意検討した結果、単にスラブ加熱
温度を低下させ、フェライト組織を微細化させるだけで
は、DWTT85% 破面遷移温度が -60℃以下とならない
のに対し、微細アシキュラーフェライト組織に島状マル
テンサイトを混入させた組織とすることにより、DWT
T特性が改善され、板厚方向の硬度むらも少なくなるこ
とを新規に見い出した。
させるミクロ組織を鋭意検討した結果、単にスラブ加熱
温度を低下させ、フェライト組織を微細化させるだけで
は、DWTT85% 破面遷移温度が -60℃以下とならない
のに対し、微細アシキュラーフェライト組織に島状マル
テンサイトを混入させた組織とすることにより、DWT
T特性が改善され、板厚方向の硬度むらも少なくなるこ
とを新規に見い出した。
【0008】本発明は上記の組織を工業的に実現するた
めの製造方法に係わる。まず本発明の基礎となった実験
について説明する。図1は0.07%C−0.3 %Si−1.9
%Mn−0.04%Nb鋼を用い、スラブを850 ℃から1100
℃に加熱後、(Ar3+70℃) 以上の再結晶γ域で60%の圧
下を与えた後、(Ar3+70℃) からAr3 までの未再結晶γ
域で70%の圧下を与え、さらにAr3から(Ar3−80℃) ま
での(γ+α)2相域で30%の圧下を与えた後、加速冷
却を行ったときの引張強さとDWTT85% 破面遷移温度
の関係を示す。加速冷却は冷却速度を30℃/sと固定し、
冷却停止温度を600 ℃( □印)と300 ℃(△印および○
印) と変えたものである。300 ℃停止材の○印と△印の
相違は加速冷却前の(γ+ α) 2相域圧延において、最
終仕上げ圧延前1パスから6パスの間に水冷パスを3回
入れたもの(○印)と水冷パスを1回も入れないもの
(△印)との比較である。このときの板厚は24mmとし
た。
めの製造方法に係わる。まず本発明の基礎となった実験
について説明する。図1は0.07%C−0.3 %Si−1.9
%Mn−0.04%Nb鋼を用い、スラブを850 ℃から1100
℃に加熱後、(Ar3+70℃) 以上の再結晶γ域で60%の圧
下を与えた後、(Ar3+70℃) からAr3 までの未再結晶γ
域で70%の圧下を与え、さらにAr3から(Ar3−80℃) ま
での(γ+α)2相域で30%の圧下を与えた後、加速冷
却を行ったときの引張強さとDWTT85% 破面遷移温度
の関係を示す。加速冷却は冷却速度を30℃/sと固定し、
冷却停止温度を600 ℃( □印)と300 ℃(△印および○
印) と変えたものである。300 ℃停止材の○印と△印の
相違は加速冷却前の(γ+ α) 2相域圧延において、最
終仕上げ圧延前1パスから6パスの間に水冷パスを3回
入れたもの(○印)と水冷パスを1回も入れないもの
(△印)との比較である。このときの板厚は24mmとし
た。
【0009】冷却停止温度を600 ℃から300 ℃と低くす
ると引張強さは上昇し、DWTT特性は低温側に移行
し、高強度化と高DWTT特性化が同時に図れる。また
300 ℃停止材において水冷パスを導入することにより、
さらにDWTT特性が向上することが分かる。またDW
TT特性は加熱温度に強く依存し、加熱温度を900 ℃か
ら1050℃の範囲にすることにより、DWTT85% 破面遷
移温度が-60 ℃以下となる。
ると引張強さは上昇し、DWTT特性は低温側に移行
し、高強度化と高DWTT特性化が同時に図れる。また
300 ℃停止材において水冷パスを導入することにより、
さらにDWTT特性が向上することが分かる。またDW
TT特性は加熱温度に強く依存し、加熱温度を900 ℃か
ら1050℃の範囲にすることにより、DWTT85% 破面遷
移温度が-60 ℃以下となる。
【0010】図2は0.07%C−0.3 %Si−1.9 %Mn
−0.04%Nb鋼を用い、スラブを1000℃に加熱後、(Ar3
+70℃) 以上の再結晶γ域で60%の圧下を与えた後、(A
r3+70℃) からAr3 までの未再結晶γ域で70%の圧下を
与え、さらにAr3 から(Ar3−80℃) までの(γ+α)2
相域で30%の圧下を与えた後、30℃/sの冷却速度で300
℃まで加速冷却を行ったときの板厚方向の硬度分布を示
す。
−0.04%Nb鋼を用い、スラブを1000℃に加熱後、(Ar3
+70℃) 以上の再結晶γ域で60%の圧下を与えた後、(A
r3+70℃) からAr3 までの未再結晶γ域で70%の圧下を
与え、さらにAr3 から(Ar3−80℃) までの(γ+α)2
相域で30%の圧下を与えた後、30℃/sの冷却速度で300
℃まで加速冷却を行ったときの板厚方向の硬度分布を示
す。
【0011】同図は加速冷却前の(γ+α)2相域圧延
において、最終仕上げ圧延前1パスから6パスの間に水
冷パスを導入しないもの(△印)と3回の水冷パスを導
入したもの(○印)と硬度分布の相違を比較したもので
ある。水冷パスを導入しないものは硬度差が約30ポイ
ントあるのに対し、水冷パスを導入することにより硬度
差は約10ポイントとなり、板厚方向の硬度差が小さく
なることがわかる。
において、最終仕上げ圧延前1パスから6パスの間に水
冷パスを導入しないもの(△印)と3回の水冷パスを導
入したもの(○印)と硬度分布の相違を比較したもので
ある。水冷パスを導入しないものは硬度差が約30ポイ
ントあるのに対し、水冷パスを導入することにより硬度
差は約10ポイントとなり、板厚方向の硬度差が小さく
なることがわかる。
【0012】すなわち、(γ+α)2相域圧延中に水冷
パスを導入し、冷却停止温度を400℃未満とすること
により、板厚方向の硬度むらが少なくDWTT特性の優
れた鋼板を製造することができることが分かる。冷却停
止温度を400℃未満とすることにより、DWTT特性
が向上する詳細なメカニズムは明らかになっていない
が、DWTT試験ではシャルピー試験片に比べ、試験片
板厚が厚いため、亀裂先端で大きな内部応力が発生す
る。この内部応力により、硬い島状マルテンサイトが剥
離し、微細セパレーションが発生する。この島状マルテ
ンサイトは微細分散させることにより微細セパレーショ
ンが多数発生し、破面遷移温度が低温側に移行する。
パスを導入し、冷却停止温度を400℃未満とすること
により、板厚方向の硬度むらが少なくDWTT特性の優
れた鋼板を製造することができることが分かる。冷却停
止温度を400℃未満とすることにより、DWTT特性
が向上する詳細なメカニズムは明らかになっていない
が、DWTT試験ではシャルピー試験片に比べ、試験片
板厚が厚いため、亀裂先端で大きな内部応力が発生す
る。この内部応力により、硬い島状マルテンサイトが剥
離し、微細セパレーションが発生する。この島状マルテ
ンサイトは微細分散させることにより微細セパレーショ
ンが多数発生し、破面遷移温度が低温側に移行する。
【0013】微細な島状マルテンサイトを微細分散させ
るためには基地組織をアシキュラーフェライト組織と
し、アシキュラーフェライトの間に島状マルテンサイト
を生成させることが重要となる。そこで冷却速度を20
℃/s以上と速くし、冷却速度を400℃未満とするこ
とにより未変態γがアシキュラーフェライトに変態し、
その界面に島状マルテンサイトが生成する。
るためには基地組織をアシキュラーフェライト組織と
し、アシキュラーフェライトの間に島状マルテンサイト
を生成させることが重要となる。そこで冷却速度を20
℃/s以上と速くし、冷却速度を400℃未満とするこ
とにより未変態γがアシキュラーフェライトに変態し、
その界面に島状マルテンサイトが生成する。
【0014】しかし、島状マルテンサイトが生成すると
硬度上昇しやすい問題がある。組織をポリゴナルフェラ
イトからアシキュラーフェライトとすることにより、未
変態γは微細分散され、また微細分散された未変態γへ
のCなどの濃化が少なくなり、島状マルテンサイトの硬
度上昇が小さくなる。鋼板を(γ+α)2相域を空冷し
ながら圧延するとフェライトが粗大化し、島状マルテン
サイトが生成し、硬度が上昇する。しかし(γ+α)2
相域圧延中に水冷パスを導入すると、水冷パスにより鋼
板が過冷却状態になり、フェライト核は多数発生する
が、フェライトの粒成長は阻止され、フェライト粒は微
細化される。さらに微細フェライトが多数生成すること
により未変態γへのCなどの濃化が防止されるため、硬
度は低下し、靱性は向上する。
硬度上昇しやすい問題がある。組織をポリゴナルフェラ
イトからアシキュラーフェライトとすることにより、未
変態γは微細分散され、また微細分散された未変態γへ
のCなどの濃化が少なくなり、島状マルテンサイトの硬
度上昇が小さくなる。鋼板を(γ+α)2相域を空冷し
ながら圧延するとフェライトが粗大化し、島状マルテン
サイトが生成し、硬度が上昇する。しかし(γ+α)2
相域圧延中に水冷パスを導入すると、水冷パスにより鋼
板が過冷却状態になり、フェライト核は多数発生する
が、フェライトの粒成長は阻止され、フェライト粒は微
細化される。さらに微細フェライトが多数生成すること
により未変態γへのCなどの濃化が防止されるため、硬
度は低下し、靱性は向上する。
【0015】なお従来から(γ+α)2相域圧延後加速
冷却する例が例えば特開昭51-26615号公報や特開昭57-1
34518 号公報に見られるが、いずれも本発明のように第
2相組織をアシキュラーフェライトに変態させ、島状マ
ルテンサイトを微細分散させ、板厚方向の硬度むらが少
なく、DWTT特性を向上させる技術についての開示は
みられない。
冷却する例が例えば特開昭51-26615号公報や特開昭57-1
34518 号公報に見られるが、いずれも本発明のように第
2相組織をアシキュラーフェライトに変態させ、島状マ
ルテンサイトを微細分散させ、板厚方向の硬度むらが少
なく、DWTT特性を向上させる技術についての開示は
みられない。
【0016】次にこのような圧延、加速冷却処理により
上述のような組織とするための鋼板の成分組成の限定理
由について説明する。Cは、0.01%未満では鋼板の強度
が低下すること及び溶接熱影響部(以下HAZと略記す
る)の軟化が大きいため、C含有量の下限は0.01%とし
た。またCが0.18%を超えると母材の靱性が劣化すると
ともに溶接部の硬化、耐割れ性の劣化が著しいので上限
を0.18%とした。
上述のような組織とするための鋼板の成分組成の限定理
由について説明する。Cは、0.01%未満では鋼板の強度
が低下すること及び溶接熱影響部(以下HAZと略記す
る)の軟化が大きいため、C含有量の下限は0.01%とし
た。またCが0.18%を超えると母材の靱性が劣化すると
ともに溶接部の硬化、耐割れ性の劣化が著しいので上限
を0.18%とした。
【0017】Siは、鋼精錬時に脱酸上必然的に含有さ
れる元素であるが、0.05%未満になると母材靱性が劣化
するため下限を0.05%とした。一方Siが多すぎると鋼
の清浄度が劣化し、靱性を低下させるため上限を0.5 %
とした。Mnは、1.0 %未満では鋼板の強度及び靱性が
低下すること、そしてHAZの軟化が大きくなるため下
限を1.0 %とした。一方Mnが多すぎるとHAZの靱性
が劣化するため上限を2.5 %とした。
れる元素であるが、0.05%未満になると母材靱性が劣化
するため下限を0.05%とした。一方Siが多すぎると鋼
の清浄度が劣化し、靱性を低下させるため上限を0.5 %
とした。Mnは、1.0 %未満では鋼板の強度及び靱性が
低下すること、そしてHAZの軟化が大きくなるため下
限を1.0 %とした。一方Mnが多すぎるとHAZの靱性
が劣化するため上限を2.5 %とした。
【0018】Alは、脱酸上、最低0.005 %のAlが固
溶するように添加する必要があることから、Alの下限
を0.005 %とした。一方、固溶が0.06%超になるとHA
Zの靱性のみならず溶接金属の靱性も著しく劣化する。
このためAlの上限を0.06%とした。Nbは、本発明に
おいてアシキュラーフェライトを得るために重要な元素
であるが、溶接金属部の靱性劣化を避けるためには0.1
%以下でなければならないので、上限を0.1 %とした。
一方Nb含有量が0.01%未満では遷移温度を向上させる
細粒効果が得られず、このことから全Nb量の下限を0.
01%とした。
溶するように添加する必要があることから、Alの下限
を0.005 %とした。一方、固溶が0.06%超になるとHA
Zの靱性のみならず溶接金属の靱性も著しく劣化する。
このためAlの上限を0.06%とした。Nbは、本発明に
おいてアシキュラーフェライトを得るために重要な元素
であるが、溶接金属部の靱性劣化を避けるためには0.1
%以下でなければならないので、上限を0.1 %とした。
一方Nb含有量が0.01%未満では遷移温度を向上させる
細粒効果が得られず、このことから全Nb量の下限を0.
01%とした。
【0019】以上が本発明において使用される鋼スラブ
の基本成分であり、さらに必要により、強度上昇あるい
は厚肉化のためにCu:1.0%以下、Cr:1.5%以下、N
i:1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.01 〜0.1 %以下
を1種又は2種以上、靱性むらを少なくし、もしくは靱
性を向上させるためにTi:0.005〜0.1 %、またMnS
の形態制御、靱性向上及び耐HIC特性向上のためにC
a:0.001〜0.01%、REM:0.001〜0.01%のうち1種ま
たは2種以上を含有させることができる。
の基本成分であり、さらに必要により、強度上昇あるい
は厚肉化のためにCu:1.0%以下、Cr:1.5%以下、N
i:1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.01 〜0.1 %以下
を1種又は2種以上、靱性むらを少なくし、もしくは靱
性を向上させるためにTi:0.005〜0.1 %、またMnS
の形態制御、靱性向上及び耐HIC特性向上のためにC
a:0.001〜0.01%、REM:0.001〜0.01%のうち1種ま
たは2種以上を含有させることができる。
【0020】Cuは、靱性を向上させるが、1.0 %を超
えると熱間圧延中にクラックが発生しやすくなり、鋼板
の表面性状が劣化するので上限を1.0 %とした。Ni
は、Cuとほぼ同様の効果があるが、1.0 %を超えて添
加含有させるとHAZの硬化性及び製造コストの上昇を
招き、また本発明の目的ならびに効果を達成するために
は必要がないのでNiの上限を1.0 %とした。
えると熱間圧延中にクラックが発生しやすくなり、鋼板
の表面性状が劣化するので上限を1.0 %とした。Ni
は、Cuとほぼ同様の効果があるが、1.0 %を超えて添
加含有させるとHAZの硬化性及び製造コストの上昇を
招き、また本発明の目的ならびに効果を達成するために
は必要がないのでNiの上限を1.0 %とした。
【0021】Crは、ベイナイトを生成するので、強
度、靱性を向上させるため添加するが、添加量が多きに
失すると母材およびHAZの靱性を著しく劣化させるの
で上限を1.5 %とした。Moは、圧延時のγ粒を整粒に
し、なおかつ微細なベイナイトを生成するので強度と靱
性を向上させるが、この発明の目的を達成するためには
0.5%を超えて添加する必要はなく、それ以上は製造コ
ストの上昇を招くので上限を 0.5%とした。
度、靱性を向上させるため添加するが、添加量が多きに
失すると母材およびHAZの靱性を著しく劣化させるの
で上限を1.5 %とした。Moは、圧延時のγ粒を整粒に
し、なおかつ微細なベイナイトを生成するので強度と靱
性を向上させるが、この発明の目的を達成するためには
0.5%を超えて添加する必要はなく、それ以上は製造コ
ストの上昇を招くので上限を 0.5%とした。
【0022】Vは、鋼板の母材強度と靱性向上、継手部
強度確保のため添加するものである。しかし添加量が多
きに失すると母材及びHAZの靱性を著しく劣化させる
ので上限を 0.1%とした。Tiは、γ粒の微細化効果に
よる靱性向上とTi炭窒化物による強度上昇を目的とし
て添加する。しかしTi量が 0.005%未満ではその効果
はなく、また0.1%を超えると靱性が劣化するのでTi
添加量の下限を0.005 %、上限を0.1 %とした。
強度確保のため添加するものである。しかし添加量が多
きに失すると母材及びHAZの靱性を著しく劣化させる
ので上限を 0.1%とした。Tiは、γ粒の微細化効果に
よる靱性向上とTi炭窒化物による強度上昇を目的とし
て添加する。しかしTi量が 0.005%未満ではその効果
はなく、また0.1%を超えると靱性が劣化するのでTi
添加量の下限を0.005 %、上限を0.1 %とした。
【0023】Caは、 0.001%未満ではMnSの形態制
御に不十分で、T方向の靱性改善効果がないのでCaの
下限を 0.001%とした。一方、Caが0.01%を超えると
鋼の清浄度が悪くなり、内部欠陥の原因となるので、C
aの上限を0.01%とした。REMは、 0.001%未満では
MnSの形態制御に不十分でT方向の靱性向上に有効で
ないのでREMの下限を 0.001%とした。一方REMが
0.01%を超えると鋼の清浄度が悪くなり、またアーク溶
接の際にトラブルを起こすこともあるので、REMの上
限を0.01%とした。
御に不十分で、T方向の靱性改善効果がないのでCaの
下限を 0.001%とした。一方、Caが0.01%を超えると
鋼の清浄度が悪くなり、内部欠陥の原因となるので、C
aの上限を0.01%とした。REMは、 0.001%未満では
MnSの形態制御に不十分でT方向の靱性向上に有効で
ないのでREMの下限を 0.001%とした。一方REMが
0.01%を超えると鋼の清浄度が悪くなり、またアーク溶
接の際にトラブルを起こすこともあるので、REMの上
限を0.01%とした。
【0024】次に本発明の第2の構成要件である加熱、
圧延、冷却条件の限定理由について説明する。はじめに
スラブを加熱するが、加熱温度を900 ℃〜1050℃に限定
した理由は加熱時のγ粒を微細に保ち、圧延組織の細粒
化を図るためである。1050℃は加熱時のγ粒が粗大化し
ない上限温度であって、加熱温度がこれを超えるとγ粒
が粗大化し、これが圧延後も粗大ベイナイトとなって残
存し、鋼の靱性を劣化させる。一方加熱温度が余りにも
低すぎると炭化物などが十分に溶体化されず、鋼の内質
が劣化するとともに、圧延終了段階の温度が下がりす
ぎ、加速冷却による十分な材質向上効果が期待できな
い。このため下限を 900℃とする必要がある。
圧延、冷却条件の限定理由について説明する。はじめに
スラブを加熱するが、加熱温度を900 ℃〜1050℃に限定
した理由は加熱時のγ粒を微細に保ち、圧延組織の細粒
化を図るためである。1050℃は加熱時のγ粒が粗大化し
ない上限温度であって、加熱温度がこれを超えるとγ粒
が粗大化し、これが圧延後も粗大ベイナイトとなって残
存し、鋼の靱性を劣化させる。一方加熱温度が余りにも
低すぎると炭化物などが十分に溶体化されず、鋼の内質
が劣化するとともに、圧延終了段階の温度が下がりす
ぎ、加速冷却による十分な材質向上効果が期待できな
い。このため下限を 900℃とする必要がある。
【0025】しかしながら加熱温度を上記のように低く
制限しても圧延条件が不適当であると良い材質を得るこ
とができない。このため(Ar3+70℃) 以上の再結晶γ域
での圧下率が50%以上という条件を付加する。再結晶γ
域では圧延−再結晶の繰り返しにより結晶粒の細粒化を
図るが、圧下率が50%未満ではγ粒の細粒化が不十分と
なり、続く未再結晶γ域での圧延を行っても靱性が劣化
する。よって再結晶γ域での圧下率は50%以上とする必
要がある。
制限しても圧延条件が不適当であると良い材質を得るこ
とができない。このため(Ar3+70℃) 以上の再結晶γ域
での圧下率が50%以上という条件を付加する。再結晶γ
域では圧延−再結晶の繰り返しにより結晶粒の細粒化を
図るが、圧下率が50%未満ではγ粒の細粒化が不十分と
なり、続く未再結晶γ域での圧延を行っても靱性が劣化
する。よって再結晶γ域での圧下率は50%以上とする必
要がある。
【0026】次に(Ar3+70℃) 以下Ar3 以上の未再結晶
γ域での圧延は、γ粒の伸長化やγ粒内に変形体を導入
するために行うが、(Ar3+70℃) 超の温度域あるいはAr
3 未満の温度域では前記目的が達成されない。さらにこ
の温度域での圧下率を65%以上とする必要がある。圧下
率が65%未満ではγ粒の伸長化、変形帯の導入が不十分
となり、この後に続く(γ+α)2相域圧延中のαが粗
大化するため、靱性が著しく劣化する。
γ域での圧延は、γ粒の伸長化やγ粒内に変形体を導入
するために行うが、(Ar3+70℃) 超の温度域あるいはAr
3 未満の温度域では前記目的が達成されない。さらにこ
の温度域での圧下率を65%以上とする必要がある。圧下
率が65%未満ではγ粒の伸長化、変形帯の導入が不十分
となり、この後に続く(γ+α)2相域圧延中のαが粗
大化するため、靱性が著しく劣化する。
【0027】続いてAr3 〜(Ar3−80℃) の(γ+α)2
相域での圧延は、変態したα中にサブグレインを導入
し、また未変態γの細粒化と伸長化を図り、さらに衝撃
試験片破面にセパレーションを発生させ、遷移温度の低
下を図るために行う。しかしAr 3 超の温度域あるいは(A
r3−80℃) 未満の温度域では前記目的は達成されない。
さらにこの温度域での圧下率が10%未満では未変態γの
細粒化が不十分となり、この後に続く加速冷却により粗
大ベイナイトが生成する。また圧下率が60%超えでは変
態したα中のサブグレイン導入が多くなるため、いずれ
も靱性が著しく劣化する。よって圧下率を10〜60%とす
る必要がある。
相域での圧延は、変態したα中にサブグレインを導入
し、また未変態γの細粒化と伸長化を図り、さらに衝撃
試験片破面にセパレーションを発生させ、遷移温度の低
下を図るために行う。しかしAr 3 超の温度域あるいは(A
r3−80℃) 未満の温度域では前記目的は達成されない。
さらにこの温度域での圧下率が10%未満では未変態γの
細粒化が不十分となり、この後に続く加速冷却により粗
大ベイナイトが生成する。また圧下率が60%超えでは変
態したα中のサブグレイン導入が多くなるため、いずれ
も靱性が著しく劣化する。よって圧下率を10〜60%とす
る必要がある。
【0028】上記(γ+α)2 相域圧延の最終仕上げ前
1 パスから6 パスにおいて、水冷しながら圧延を行う。
これは鋼板表面から3mm 近傍までを過冷状態とし、微細
フェライトを多数生成させ、板厚方向の硬度むらを少な
くするために行うが、水冷パスを行わないと鋼板表面近
傍が過冷状態とならないため、硬度むらが発生する。一
方6 パス超えでは水冷による過冷領域が3mm 超えとな
り、硬度むら防止の効果が小さくなるため、水冷パスは
1 〜6 パスの範囲とした。
1 パスから6 パスにおいて、水冷しながら圧延を行う。
これは鋼板表面から3mm 近傍までを過冷状態とし、微細
フェライトを多数生成させ、板厚方向の硬度むらを少な
くするために行うが、水冷パスを行わないと鋼板表面近
傍が過冷状態とならないため、硬度むらが発生する。一
方6 パス超えでは水冷による過冷領域が3mm 超えとな
り、硬度むら防止の効果が小さくなるため、水冷パスは
1 〜6 パスの範囲とした。
【0029】水冷の目的は鋼板表面から約3mm 近傍まで
を過冷状態にすることであり、例えば、圧延機の前後面
に設置されているディスケーリングの水冷装置での水冷
や温度調節用のシャワーなどによる水冷などが考えられ
るが、水冷の手段は特に問わない。上記(γ+α)2相
域圧延及び水冷パスを付与後に加速冷却を行うが、この
冷却では未変態γをアシキュラーフェライトと微細島状
マルテンサイトに変態させ、微細なセパレーションを生
成させ、DWTT特性を向上させることにある。冷却速
度が20℃/sに満たないと、アシキュラーフェライトが生
成しないため、一方50℃/sを超えると粗大ベイナイトが
生成し、DWTT特性が著しく劣化するので冷却速度を
20℃/s〜50℃/sの範囲に限定した。前記加速冷却は400
℃未満まで冷却を続けるが、400 ℃以上で加速冷却を停
止すると、島状マルテンサイトが生成しないため、DW
TT特性が著しく劣化するので冷却停止温度を400 ℃未
満とした。
を過冷状態にすることであり、例えば、圧延機の前後面
に設置されているディスケーリングの水冷装置での水冷
や温度調節用のシャワーなどによる水冷などが考えられ
るが、水冷の手段は特に問わない。上記(γ+α)2相
域圧延及び水冷パスを付与後に加速冷却を行うが、この
冷却では未変態γをアシキュラーフェライトと微細島状
マルテンサイトに変態させ、微細なセパレーションを生
成させ、DWTT特性を向上させることにある。冷却速
度が20℃/sに満たないと、アシキュラーフェライトが生
成しないため、一方50℃/sを超えると粗大ベイナイトが
生成し、DWTT特性が著しく劣化するので冷却速度を
20℃/s〜50℃/sの範囲に限定した。前記加速冷却は400
℃未満まで冷却を続けるが、400 ℃以上で加速冷却を停
止すると、島状マルテンサイトが生成しないため、DW
TT特性が著しく劣化するので冷却停止温度を400 ℃未
満とした。
【0030】
【実施例】表1に成分組成を示す供試鋼について、表2
に示す加熱−圧延−冷却条件により処理した鋼板の機械
的性質の変化を調査し、その結果を表2にまとめて示
す。
に示す加熱−圧延−冷却条件により処理した鋼板の機械
的性質の変化を調査し、その結果を表2にまとめて示
す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】表2において試験No.1〜10およびNo. 12〜
16は本発明で限定した範囲内の成分組成を有する表1の
A鋼のスラブに種々の加熱−圧延−冷却条件を施し、い
ずれも板厚24mmの製品としたものである。まず試験No.1
はスラブ加熱温度が850 ℃と低いため、引張強さが低
く、DWTT特性が十分でない。
16は本発明で限定した範囲内の成分組成を有する表1の
A鋼のスラブに種々の加熱−圧延−冷却条件を施し、い
ずれも板厚24mmの製品としたものである。まず試験No.1
はスラブ加熱温度が850 ℃と低いため、引張強さが低
く、DWTT特性が十分でない。
【0034】試験No.2、3 は未再結晶γ域での圧下率が
50%と低いため、あるいは(γ+α)2相域圧延を実施
していないため、DWTT特性が悪い。試験No.4、5 は
冷却速度が15℃/sと遅いため、あるいは冷却停止温度が
500 ℃と高いため、引張強さが低く、DWTT特性が十
分でない。試験No.6、7 、8 はスラブ加熱温度が1100℃
と高いため、あるいは再結晶γ域での圧下率が40%と低
いため、および(γ+α)2相域での圧下率が70% と大
きすぎるため、DWTT特性が悪い。
50%と低いため、あるいは(γ+α)2相域圧延を実施
していないため、DWTT特性が悪い。試験No.4、5 は
冷却速度が15℃/sと遅いため、あるいは冷却停止温度が
500 ℃と高いため、引張強さが低く、DWTT特性が十
分でない。試験No.6、7 、8 はスラブ加熱温度が1100℃
と高いため、あるいは再結晶γ域での圧下率が40%と低
いため、および(γ+α)2相域での圧下率が70% と大
きすぎるため、DWTT特性が悪い。
【0035】試験No. 14は( γ+α)2相域での最終仕
上げ前の水冷パスを行なっていないため、表面と中心と
の硬度差(ΔHv) が大きい。試験No. 15は圧延後の冷却
速度が 60 ℃/sと速すぎるため、DWTT特性が悪い。
これらに対して試験No.9、10はこの発明の構成要件に従
い製造したため、高い強度と優れたDWTT特性 (85%
破面遷移温度が -60℃以下) を有していることがわか
る。
上げ前の水冷パスを行なっていないため、表面と中心と
の硬度差(ΔHv) が大きい。試験No. 15は圧延後の冷却
速度が 60 ℃/sと速すぎるため、DWTT特性が悪い。
これらに対して試験No.9、10はこの発明の構成要件に従
い製造したため、高い強度と優れたDWTT特性 (85%
破面遷移温度が -60℃以下) を有していることがわか
る。
【0036】試験No.11 、は製造条件は本発明の構成条
件を満足しているが、もう1 つの重要な構成条件である
成分組成において、Nbを含有していないため強度とDW
TT特性が悪い。次に試験No.12 、13はこの発明に従う
成分組成よりなるC,D鋼スラブについて、しかもこの
構成要件を全て満足して製造した板厚30mmの鋼板の機械
的性質を示す。いずれも高い強度と優れたDWTT特性
を有する鋼板であることがわかる。
件を満足しているが、もう1 つの重要な構成条件である
成分組成において、Nbを含有していないため強度とDW
TT特性が悪い。次に試験No.12 、13はこの発明に従う
成分組成よりなるC,D鋼スラブについて、しかもこの
構成要件を全て満足して製造した板厚30mmの鋼板の機械
的性質を示す。いずれも高い強度と優れたDWTT特性
を有する鋼板であることがわかる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、板厚方向の冷却むらが
少なく、DWTT85%破面遷移温度が─60℃以下と
DWWTT特性が優れ、しかも高強度の厚肉の極寒冷地
パイプライン用鋼板が容易に得られる。
少なく、DWTT85%破面遷移温度が─60℃以下と
DWWTT特性が優れ、しかも高強度の厚肉の極寒冷地
パイプライン用鋼板が容易に得られる。
【図1】加熱温度と(γ+α)2相域圧延中の水冷パス
の有無および冷却停止温度を変化させたときの引張強さ
とDWTT85%遷移温度( FATT )の関係を示す特
性図。
の有無および冷却停止温度を変化させたときの引張強さ
とDWTT85%遷移温度( FATT )の関係を示す特
性図。
【図2】(γ+α)2相域圧延中の水冷パスの有無によ
る板厚方向の硬度分布の相違を示す図。
る板厚方向の硬度分布の相違を示す図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比にて、C :0.01〜0.18%、Si:0.
05〜0.5 %、Mn:1.0 〜2.5 %、Al:0.005 〜0.06%、
Nb:0.01〜0.1 %を含有し、残部が鉄および不可避的不
純物よりなる鋼スラブを900 〜1050℃の範囲に加熱後、
(Ar3+70℃)以上の再結晶γ域で50%以上の圧下を与
え、引き続いて(Ar3+70℃) 〜Ar3 の未再結晶γ域で65
%以上の圧下を与え、次いでAr3 〜(Ar3 -80℃) の(γ
+α)2相域で最終仕上げ前に1〜6回の水冷パスを含
む10〜60%の圧下を与え、その後20〜50℃/sの冷却速
度で400 ℃未満まで加速冷却することを特徴とする板厚
方向の硬度むらが少なくDWTT特性の優れた高張力鋼
板の製造方法。 - 【請求項2】 重量比にて、C :0.01〜0.18%、Si:0.
05〜0.5 %、Mn:1.0 〜2.5 %、Al:0.005 〜0.06%、
Nb:0.01〜0.1 %を含有し、さらにCu:1.0%以下、N
i:1.0 %以下、Cr:1.5 %以下、Mo:0.5 %以下、V
:0.01〜0.1 %以下、Ti:0.005 〜0.1 %以下、Ca:
0.001 〜0.01%、REM :0.001 〜0.01%の1種または2
種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物よりな
る鋼スラブを900 〜1050℃の範囲に加熱後、(Ar3+70
℃) 以上の再結晶γ域で50%以上の圧下を与え、引き続
いて(Ar3+70℃) 〜Ar3 の未再結晶γ域で65%以上の圧
下を与え、次いでAr3 〜(Ar3−80℃) の(γ+α)2相
域で最終仕上げ前に1〜6回の水冷パスを含む10〜60%
の圧下を与え、その後20〜50℃/sの冷却速度で400 ℃
未満まで加速冷却することを特徴とする板厚方向の硬度
むらが少なくDWTT特性の優れた高張力鋼板の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6178527A JPH0841536A (ja) | 1994-07-29 | 1994-07-29 | 板厚方向の硬度むらが少なくdwtt特性の優れた高張力鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6178527A JPH0841536A (ja) | 1994-07-29 | 1994-07-29 | 板厚方向の硬度むらが少なくdwtt特性の優れた高張力鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0841536A true JPH0841536A (ja) | 1996-02-13 |
Family
ID=16050038
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6178527A Pending JPH0841536A (ja) | 1994-07-29 | 1994-07-29 | 板厚方向の硬度むらが少なくdwtt特性の優れた高張力鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0841536A (ja) |
Cited By (11)
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-
1994
- 1994-07-29 JP JP6178527A patent/JPH0841536A/ja active Pending
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