JPH08318407A - 被覆切削工具 - Google Patents

被覆切削工具

Info

Publication number
JPH08318407A
JPH08318407A JP12116195A JP12116195A JPH08318407A JP H08318407 A JPH08318407 A JP H08318407A JP 12116195 A JP12116195 A JP 12116195A JP 12116195 A JP12116195 A JP 12116195A JP H08318407 A JPH08318407 A JP H08318407A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating
layer
titanium
base material
ticn
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP12116195A
Other languages
English (en)
Inventor
Hisanori Ohara
久典 大原
Katsuya Uchino
克哉 内野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to JP12116195A priority Critical patent/JPH08318407A/ja
Publication of JPH08318407A publication Critical patent/JPH08318407A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 被覆を構成する被覆層の相互間での結晶構造
の関係に言及し、安定した耐摩耗性を発揮する被覆切削
工具を提供すること。 【構成】 硬質合金よりなる母材の表面に化学蒸着法に
よってセラミックス被覆を形成した被覆切削工具におい
て、内側層の母材と接する第1層が窒化チタンであり、
その上の第2層が炭窒化チタンで構成されている被覆層
を被覆した表面被覆切削工具において、内側層の炭化チ
タンが、炭窒化チタンの上部に隣接して形成されてお
り、この炭化チタンの粒径D1が、下地となる炭窒化チ
タンの平均結晶粒径D2に対してD1=b×D2、0.7
≦b≦1.3の関係にある平均結晶粒径D1を持った結
晶粒から構成された等軸構造であることを特徴とする被
覆切削工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は強靱且つ耐摩耗性に優れ
た皮膜を形成した被覆切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】切削工具の使用される環境がますます過
酷になるのに伴い、炭化タングステン基超硬合金やサー
メットといった硬質母材の表面に化学蒸着法(CVD
法)や物理蒸着法(PVD法)等の手法によって各種の
セラミックス被覆を形成した、いわゆる被覆切削工具が
広く活用されるようになっている。このような被覆の実
例としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(Ti
N)及びアルミナ(Al23)被覆がある。これらの単
層または複層コーティングによって、切削工具の耐摩耗
性が向上するだけでなく、切削時に被削材と切削工具と
が反応することを防止でき、結果的に工具の寿命向上が
図れたことは、すでに公知の通りである。
【0003】しかし、これらの被覆切削工具を用いて加
工を行った場合、特に高速切削加工のように高温での耐
摩耗性が必要な加工、あるいは小物部品加工のように加
工数が多く被削材への食いつき回数が多い加工などで被
覆層の耐摩耗性が不足したり、被覆層の損傷が発生する
ことによる工具寿命の低下が発生していた。また、熱C
VD法による被覆ではPVD法に比べて母材との密着性
には優れるものの、母材の種類によっては、特に性能に
寄与する切り刃稜線部において母材との界面に脆化層で
あるη相が厚く析出し易く、切削中にこのη相とともに
被覆層が脱落して摩耗の進行が発生することから、工具
寿命のばらつきを引き起こし、被覆層が十分に寿命の向
上に寄与しているとは言えない場合があった。また被覆
層の剥離が母材と被覆層との界面の破壊から生じる場合
以外にも、多層被覆された被覆層同志の界面からの破壊
を発端として生じる場合もある。被覆層同志の界面での
破壊は、被覆層の異常損傷になり、やがては被覆層と母
材との界面での破壊をもたらし、最終的には工具刃先の
異常損傷(微小な欠けから大規模な欠損)へとつなが
る。
【0004】これらの従来から発生していた問題を解決
するための一つの方法として、アセトニトリル(CH3
CN)等の有機CN化合物を用いた熱CVD法による炭
窒化チタン膜(TiCN)(特公昭57−53308号
公報、特公昭57−50871号公報)が注目されてい
る。従来の熱CVD法(高温CVD法;HT−CVD法
と称する)では、チタン系被覆の形成中に母材から被覆
へ元素(特に炭素)の移動が生じ、母材表面に変質層
(η相と呼ばれるCo33C等の複炭化物)が生成す
る。この様な好ましくない変質相の生成を抑さえるMT
−CVD法(中温CVD法)は、被覆温度がやや低く
(800℃〜900℃)、気相からのCやNの供給が十
分であるために、切り刃稜線部の界面でさえもη相が生
じないとされている。
【0005】MT−CVD法を採用した特許はその後多
数出願されている。例えば特開平3−64469号公
報、特開平3−87368号公報では、いずれも超硬合
金母材表面に直接MT−CVD法を用いてTiCN膜を
形成し、その上にHT−CVD法によりアルミナ(Al
23)や窒化チタン(TiN)等の多層膜を形成した工
具を提案している。また、特開昭62−99467号公
報においては、結晶粒径が0.5μmのTiCN及び/
あるいはTiNを0.5〜5.0μmの厚みで被覆した
単層あるいは多層を提案しており、TiCN被覆の形成
方法として蒸着温度700〜900℃におけるMT−C
VD法を提案している。しかし、母材に接する被覆層と
してはTiCN層を提案していた。
【0006】ところが、MT−CVD法、HT−CVD
法によらず、CVD法によるTiCN層と超硬合金母材
との密着性は、しばしば不安定になることが本願発明者
らによって明かとなった。鋭意分析を進めた中から、そ
の原因が、TiCN被覆層の形成中に、反応生成物とし
て生じる塩素ガスによって、超硬合金母材表面の結合相
であるコバルト(Co)が腐食(エッチング)されてい
ることが判明した。また被覆層の微細構造については、
特開昭62−99467号公報の様に、被覆層を構成す
るTiCN及び/あるいはTiNの結晶粒径が0.5μ
m以下であれば最適であるとの提案はなされているが、
積層された被覆相互間の結晶構造の最適な関係や結晶粒
の形状、粒径の評価法に関する記載がなく、現実的では
なかった。
【0007】更に特開平6−8008号公報や特開平6
−8010号公報の様に、被覆層の少なくとも1層をT
iCN層とし、その構造を粒状と縦長状の組み合わせと
することが耐チッピング性に優れた工具を得るために重
要であることを開示している。また特開平7−3425
0号公報では、母材に接する第1層が柱状のTiCNか
ら成る被覆層であり、その上に粒状のTiCから成る被
覆層を形成することで耐摩耗性に優れた工具を作ること
ができるとしている。しかしいずれの先行例も、母材に
接する第1層がTiCNであり、また被覆全体の機械的
特性を支配する因子である結晶粒のサイズや粒形状の厳
密な規定や、積層された被覆層の相互間での結晶構造の
関係について言及されていない。このような問題を解決
するために、本発明者らにより特願平6−214807
号明細書により示されるように、内側層の第2層に含ま
れるTiCN被覆層を特定の構造にすることを開示して
いるが、更に微視的な被覆構造を提供するには至ってい
なかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点に鑑み、CVD法によるTiCN系被覆のメリットを
最大限発揮させることで、従来以上に信頼性の高い被覆
切削工具を提供することを目的としている。この為に、
被覆形成中における母材表面の変質を防止するととも
に、被覆と母材との界面に好ましくない物質の析出を抑
制することのできる被覆構造を提供するものである。ま
た、マクロな被覆構造の最適化に留まらず、微視的な構
造や硬度の観点から、被覆の構造、機械的強度について
も、最適な範囲を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために種々検討を加えた結果、まず母材の
表面に内側層の第1層としてTiN被覆層を形成し、次
にTiCN被覆層を形成し、その上にTiC被覆層を形
成する際にTiCNとTiCの結晶粒径が特定の関係を
持つことが上記問題点の解決に有効であることを見いだ
した。この特定の結晶粒径の関係とは、平均結晶粒径D
1を持ったTiC膜の結晶粒が、下地である炭窒化チタ
ンの平均結晶粒径D2に対してD1=b×D2、0.7≦
b≦1.3の関係にある平均結晶粒径D1を持った結晶
粒から構成された等軸構造であることが好ましいことを
見いだした。
【0010】即ち、本発明は、主たる成分として元素周
期率表におけるIVa、Va、VIa族の炭化物、窒化
物、炭窒化物のうちの少なくとも1種以上の硬質相を、
周期率表のVIII族の金属により焼結した硬質合金よ
りなる母材の表面に、被覆を形成した被覆切削工具にお
いて、内側層が、チタンの炭化物、窒化物、炭窒化物か
ら選ばれる2種以上を被覆した多重層で構成され、外側
層が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフ
ニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンから選
ばれる1種又は2種以上の単層または多重層で構成され
ている被覆層を被覆した表面被覆切削工具において、内
側層の炭化チタンが、炭窒化チタンの上部に隣接して形
成されており、その炭化チタンの粒径D1と下地となる
炭窒化チタンの平均粒径D2との関係が、上記の関係を
満足するものである。ここで、母材となる硬質合金とし
ては、通常用いられる炭化タングステン基超硬合金又は
サーメットを用いる。また母材に接する第1層はTiN
であることが好ましく、特に厚み0.1μm以上、2.0μm
以下のTiNとすることが好ましい。
【0011】
【作用】本発明の特徴は、CVD法によるTiCNを母
材表面に直接被覆するのではなく、TiNを介して被覆
する点にある。母材に接する第1層のTiN被覆層は、
超硬合金等の母材の表面が変質しない様に保護膜の働き
をしていると同時に、TiCN被覆を形成する際の表面
反応を安定化させていると推定される。従って、TiN
の被覆厚が0.1μmよりも薄いと、連続した膜となら
ず、所定の機能を発揮しないため、TiN被覆の膜厚は
0.1μm以上であることが好ましい。また、このTi
N被覆の厚みが2.0μmを越えると、TiN被覆の硬
度がTiCN被覆の硬度よりも低いために工具としての
耐摩耗性がかえって低下するので、2.0μm以下であ
ることが好ましい。
【0012】しかし、TiN被覆を炭素含有母材表面に
形成した場合、被覆形成中あるいは形成後に母材から供
給される炭素を吸って、TiN被覆中に若干の炭素が混
じる場合がある。この様なTiN被覆は炭素含有量に応
じてその色調が金色から紫あるいは褐色に変化すること
が知られている。本発明における第1層のTiN被覆
は、その色調が明かに金色のものを指す。母材から炭素
を吸って紫色あるいは褐色に変色したTiN被覆は、そ
の特性を十分発揮できないことも明かになった。この様
なTiN被覆を中間層としてTiCN被覆を形成し、更
にその上にTiC被覆を形成する。
【0013】平均結晶粒径の評価は、例えば走査型電子
顕微鏡により撮影された破断面あるいは研磨後のエッチ
ング面の写真において、決まった寸法の視野の中に見え
る結晶粒の個数を数えることにより実施される。例え
ば、破断面の組織観察においては、母材表面と平行に測
った10μm幅の視野の中に、10個の結晶粒が見られ
た時には、設定した幅である10μmを10で割ること
によって、1μmと評価される。このとき、視野からわ
ずかでもはみ出した結晶粒については、0.5個と数え
るものとする。
【0014】また柱状に成長した結晶粒から成るTiC
N被覆の様な場合は、その成長面を構成する粒子径(被
膜の成長方向に垂直な断面における平均結晶粒径)を指
すが、成長面の組織観察においては、母材表面に対して
平行(即ち被膜の成長方向に垂直)に研磨、ラッピング
した面において、10μm四方の視野の中に、100個
の結晶粒が見られた時には、設定した幅である10μm
を100の平方根である10で割ることによって、1μ
mと評価される。このとき、視野からわずかでもはみ出
した結晶粒については、0.5個と数えるものとする。
これらの組織観察の方法としては、薄片に加工した試料
を透過型電子顕微鏡で観察する方法などの方法を用いて
も構わない。いずれも適切な倍率で撮影した写真から、
結晶粒径を算出する。但し、X線回折法による結晶粒径
の算出は、計算値が被覆の残留応力等に影響され易いた
め、好ましくない。
【0015】さてTiCN被覆の上にTiC被覆を積層
すると、TiC被覆の成長が下地であるTiCNの成長
終了面の影響を受けず、TiCN被覆の表面に露出して
いる結晶粒とは無関係の大きさの結晶粒径を持ったTi
Cが形成される場合がある。この結果得られた積層被覆
は、耐摩耗性、耐剥離性共に劣ることがわかった。これ
に対して、TiC被覆の成長が下地TiCNの成長終了
面の影響を受け、TiCN被覆の結晶粒径に対応した粒
径になると、耐剥離性、耐摩耗性共に非常に優れた工具
となる。これは下地のTiCN被覆とその上のTiC被
覆の結晶成長が連続性を保ったまま行なわれているかど
うか、言い換えれば二つの被覆層の界面の接合状態が良
好かどうかに依存しているものと推定される。従って炭
窒化チタンの平均結晶粒径をD1、隣接する上層の炭化
チタン膜の平均結晶粒径D2としたときに、式 D1=b×D2 で表される粒径の関係式におけるbが0.7よりも小さ
いと、TiC被覆の結晶粒子が細かくなりすぎ、被覆質
の低下をもたらすので、好ましくない。またbが1.3
よりも大きいと、TiC被覆の粒子が大きくなりすぎ、
被覆の表面粗さが粗くなり、切削時に溶着等を生じるた
め、好ましくない。
【0016】また、TiC被覆が等軸状ではなく柱状に
成長すると、被覆の表面粗さが大きくなり、切削中に被
削材が溶着したり、切削中の衝撃で被覆が破壊しやす
く、好ましくないため、粒状であることが必要である。
つまり、本発明に該当しない被覆は、TiCNとTiC
との間の結合が弱く、被覆が均一に摩耗しないために、
被覆が崩れながら摩耗し、工具切れ刃のチッピング等の
異常摩耗につながっているものと推定される。これらの
具体的な内容は実施例において詳しく説明するが、いず
れにしても、本発明のTiCN被覆層とTiC被覆層の
構造の関係を維持することは、安定して優れた切削性能
を示す工具を得るために必要なものである。
【0017】
【実施例】 (実施例1) ISOに示された型番コート12040
8の形状の超硬合金(JIS B 4053切削工具用
合金成分一覧表中のP10に該当する合金成分)の表面
に、公知の熱CVD法により厚み0.5μmのTiN被
覆を形成した後に、公知のCVD法によりTiCN被覆
を4μm厚さで形成し、更にその上にTiC膜を3μm
厚さで形成した。TiN被覆の形成条件は、TiC
4:1.5%、N2:60%、H2:残、(いずれも流
量モル比)、総流量20リットル/分、基板温度900
℃、反応槽圧力500Torrとし、窒素の分圧を高め
にすることでTiN被覆が母材から炭素を吸う現象を抑
さえた。一方TiCN被覆の形成条件は、TiCl4
1.5%、CH4:3%、N2:2%、H2:残、(いず
れも流量モル比)、総流量20リットル/分、基板温度
980℃、反応槽圧力90Torrとした。
【0018】このTiCN被覆上のTiC被覆の形成条
件は、TiCl4:1.5%、CH4:5%、H2:残、
(いずれも流量モル比)、総流量15リットル/分、反
応槽圧力50Torrとし、基板温度をTiCN膜形成
時の温度条件である980℃から約30分間かけて10
50℃まで昇温し、TiCN被覆とTiC被覆の結晶成
長が連続的に行なわれるようにした。この上にTiBN
(0.5μm)、Al23(1.5μm)、TiN
(0.2μm)の順に公知の熱CVD法により被覆を形
成し、全体厚み9.7μmの、本発明の被覆構造を持っ
た工具を試作した。
【0019】平均結晶粒径の評価は、被覆の断面を研磨
して平滑にし、弗酸と硝酸の混合液を用いてエッチング
して結晶粒界を出し、これを走査型電子顕微鏡を用いて
観察し、評価した。評価の結果、本発明品である工具に
おいては、第1層のTiN被覆が明かに金色の色調を持
っており、母材からの炭素拡散による変色は全くないこ
と、第2層のTiCN被覆の成長終了面での平均結晶粒
径が0.5μmであり、第3層のTiC被覆が本発明に
記載の通りの等軸結晶粒(TiCN/TiC層界面での
TiC層の平均結晶粒径は0.55μmであった)であ
ること、がそれぞれ確認できた。本発明品に対して、被
覆厚を揃えた4種類の比較用工具を作製した。
【0020】(比較例1):第1層のTiNの無いもの
(TiCN厚みを4.5μmとした)。(比較例2):
下地のTiNを3μm厚さで形成したもの(TiCN厚
みを1.5μmとした)。(比較例3):TiC被覆が
下地であるTiCN被覆の成長終了面での結晶粒径0.
5μmに対して粗大等軸結晶(平均結晶粒径:2.1μ
m)から構成されているもの。(比較例4):TiC被
覆が柱状結晶(平均結晶粒径:0.6μm)から構成さ
れているもの。本発明品及び4つの比較例について、表
1に示す条件で切削試験を実施した。結果を表2に示
す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】表2からわかる様に、本発明品は、耐摩耗
性に優れると同時に耐剥離性、耐欠損性にもすぐれるこ
とがわかる。一方、下地のTiN被覆のない場合(比較
例1)は、被覆の耐剥離性にやや劣ることが確認された
が、本発明品に次いで耐摩耗性に優れていた。更に第1
層のTiNが厚い場合(比較例2)、耐剥離性は優れる
ものの、耐摩耗性に劣っていた。次にTiC被覆が粗大
等軸結晶から構成されている場合(比較例3)と、Ti
C被覆が柱状構造を持っている場合(比較例4)は、概
ね良好な耐摩耗性と耐剥離性を示したが、いずれも刃先
部に欠けが見られ、摩耗が乱れ易く、寿命がばらつくこ
とがわかった。
【0024】(実施例2) ISOに示された型番コー
ト120408の形状でチップブレーカー付きの形状で
ある超硬合金(JIS B 4053切削工具用合金成
分一覧表中のP30に該当する合金成分)を母材として
用い、この表面に表3に示す構造の被覆層を持った本発
明品1〜3を作製した。ここで、本発明品における第1
層のTiN被覆は実施例1に記載した条件と同じとし、
被覆厚を3通りとした。また第2層のTiCN被覆の形
成は、いずれの本発明品でもアセトニトリル(CH3
N)を用いたMT−CVD法により、被覆形成温度85
0℃で行なったが、TiCN被覆形成の最後の1時間で
被覆形成温度を980℃まで上昇させ、そのままTiC
被覆の形成へと移行させた。TiC被覆は公知のCVD
法により実施したが、その形成条件は実施例1と同じと
した。なお本発明品2では、塩化ハフニウムを原料とし
た酸化ハフニウム(HfO2)を、本発明品3では、塩
化ジルコニウムを原料とした酸化ジルコニウム(ZrO
2)をそれぞれ熱CVD法により形成した。
【0025】以上の手法により得られた本発明品である
工具のひとつ(本発明品1)について、被覆の破断面及
び研磨面を詳細に調べたところ、第1層のTiN被覆
が、厚み0.3μmであると共に、明かに金色の色調を
持っており、母材からの炭素拡散による変色は全く認め
られなかった。また第2層のTiCN被覆は厚み4.6
μmであると共に、被覆を構成する粒子がテーパー形状
の柱状結晶であり、TiCN/TiC層界面でのTiC
N被覆の平均結晶粒径は0.36μmであった。次に第
3層のTiC被覆は厚みが3.3μmであり、平均結晶
粒径0.4μmの微細かつ等軸構造を持っていることが
確認できた。その他の本発明品(2及び3)についても
同様の調査を行なった結果、いずれも本発明の範囲に入
る構造を有していた。
【0026】他方、比較例1では、下地にTiNを入れ
ずに、本発明品と同条件で基材上に直接TiCN被覆の
形成を行った。比較例2ではTiCN被覆の成長終了面
での平均結晶粒径が0.4μmであったのに対して、T
iC被覆が平均結晶粒径0.8μmの等軸構造を有して
おり、本発明の範囲を越えていた。比較例3ではTiC
N被覆の成長終了面での平均結晶粒径が0.45μmで
あったのに対して、TiC被覆が平均結晶粒径0.5μ
mの柱状構造を有しており、本発明の範囲に入っていな
かった。なお本発明品と同様に、全ての比較例における
TiCN被覆の形成はMT−CVD法により行った。そ
の他の被覆については、公知の熱CVD法により被覆形
成を行い、表3に示す被覆厚及び被覆構造の試料を得
た。
【0027】
【表3】
【0028】表3に示した試料について、表4に示す切
削条件にて切削試験を実施した。
【0029】
【表4】
【0030】切削試験の結果を表5に示す。
【0031】
【表5】
【0032】表5より、本発明品1〜3は、耐摩耗性、
耐剥離性共に優れており、安定した寿命が得られること
がわかる。これに対して、下地の中間層としてTiN被
覆を入れなかった場合(比較例1)は、実施例1におい
ても確認した様に、耐剥離性に劣るという結果が得られ
た。次にTiC被覆を構成する結晶の平均粒径及び粒形
状が本発明品に該当しない場合(比較例2及び3)は、
切削中に被覆が大規模に破壊し易く、欠けを生じた。こ
れらの比較例は全て耐摩耗性と耐剥離性を両方満足させ
ておらず、切削工具としては性能的に劣ることがわか
る。
【0033】(実施例3) ISOに示された型番コー
ト120408の形状で、JISB 4053切削工具
用合金成分一覧表中のP01に該当する炭窒化チタン基
サーメットを母材として用い、この表面に表6に示す構
造の被覆層を形成した。ここで、本発明品における第1
層のTiN被覆、第2層のTiCN被覆及び第3層のT
iC被覆の形成は、実施例1に記載の本発明品の被覆形
成条件にて、被覆形成時間を変えることで被覆厚のみを
調整し、第1層のTiN被覆の厚み、第2層のTiN被
覆と第3層のTiCN被覆の結晶粒径の関係、及び第3
層のTiC被覆を構成する粒形状が、それぞれ本発明の
範囲に入っていることを確認した。比較例では、第1層
のTiNを入れずに基材上に直接TiCN被覆の形成を
行なったもの(比較例1)、第1層のTiN被覆の厚み
が厚いもの(比較例2)、第2層のTiCN被覆と第3
層のTiC被覆との粒径の関係が本発明の範囲に入って
いないもの(比較例3)をそれぞれ作製した。またこれ
ら比較例におけるTiCN被覆の形成は、実施例1と同
様の条件を用いて、被覆形成時間を変えることで被覆厚
のみを調整した。その他の被覆については、従来の熱C
VD法により形成し、表6に示す被覆厚及び被覆構造の
試料を得た。
【0034】
【表6】
【0035】表6に示した試料について、表7に示す切
削条件にて切削試験を実施した結果を表8に示す。
【0036】
【表7】
【0037】
【表8】
【0038】表8より、本発明品は耐摩耗性、耐剥離性
共に優れており、安定した寿命が得られていることがわ
かる。これに対して、下地のTiN被覆を入れなかった
場合は、実施例1においても確認したように、耐剥離性
に劣るという結果が得られた。次にTiCN被覆を構成
する柱状結晶の平均粒径が本発明品に該当しない場合
は、切削中に異常摩耗を生じやすく、欠けを生じた。こ
れらの比較例はいずれも耐摩耗性と耐剥離性を両方満足
させておらず、切削工具としては性能的に劣ることがわ
かる。
【0039】
【発明の効果】以上記した様に、本発明の被覆切削工具
は、従来の被覆切削工具に比較し、被覆層全体の耐摩耗
性が高いだけでなく、被覆層と母材との接着が強固であ
り、切削時の耐剥離性にも優れている。また、従来提案
されていた被覆構造ではCVD法によるTiCN被覆の
持つ特徴を引き出すことが困難であったのに対して、下
地の中間層であるTiNを特定の厚みで挿入すること、
及び特定の構造を持ったTiC被覆を形成することで、
被覆切削工具の性能を安定させることが可能となった。
以上の点を加味した多層被覆を超硬合金工具基材上に形
成することで、前記の様な優れた性能を持った切削工具
を容易に製造することができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主たる成分として元素周期率表における
    IVa、Va、VIa族の炭化物、窒化物、炭窒化物の
    うちの少なくとも1種又は2種以上の硬質相を、周期率
    表のVIII族の金属により焼結した硬質合金よりなる母材
    の表面に、内側層が、チタンの炭化物、窒化物、炭窒化
    物から選ばれる2種以上を被覆した多層で構成され、外
    側層が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハ
    フニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンから
    選ばれる1種又は2種以上の単層又は多層で構成されて
    いる被覆層を被覆した表面被覆切削工具において、内側
    層の炭化チタンが、炭窒化チタンの上に隣接して形成さ
    れており、この炭化チタンの粒径D1と下地となる炭窒
    化チタンの平均結晶粒径D2がD1=b×D2、0.7≦
    b≦1.3の関係にある平均結晶粒径D1を持った結晶
    粒から構成された等軸構造であることを特徴とする被覆
    切削工具。
  2. 【請求項2】 前記内側層の母材と接する第1層が窒化
    チタンであり、その上の第2層が炭窒化チタンであり、
    更にその上の第3層がチタンの炭化物であることを特徴
    とする請求項1記載の被覆切削工具。
  3. 【請求項3】 前記母材と接する第1層の窒化チタンの
    厚みが0.1μm以上、2.0μm以下であることを特徴
    とする請求項2記載の被覆切削工具。
JP12116195A 1995-05-19 1995-05-19 被覆切削工具 Pending JPH08318407A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12116195A JPH08318407A (ja) 1995-05-19 1995-05-19 被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12116195A JPH08318407A (ja) 1995-05-19 1995-05-19 被覆切削工具

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08318407A true JPH08318407A (ja) 1996-12-03

Family

ID=14804361

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12116195A Pending JPH08318407A (ja) 1995-05-19 1995-05-19 被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08318407A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10219452A (ja) * 1997-02-04 1998-08-18 Hitachi Tool Eng Co Ltd 多層被覆超硬合金
JPH10219451A (ja) * 1997-02-04 1998-08-18 Hitachi Tool Eng Co Ltd 多層被覆超硬合金
WO2019065683A1 (ja) * 2017-09-29 2019-04-04 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐溶着性と耐異常損傷性を発揮する表面被覆切削工具

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10219452A (ja) * 1997-02-04 1998-08-18 Hitachi Tool Eng Co Ltd 多層被覆超硬合金
JPH10219451A (ja) * 1997-02-04 1998-08-18 Hitachi Tool Eng Co Ltd 多層被覆超硬合金
WO2019065683A1 (ja) * 2017-09-29 2019-04-04 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐溶着性と耐異常損傷性を発揮する表面被覆切削工具
US11299807B2 (en) 2017-09-29 2022-04-12 Mitsubishi Materials Corporation Surface-coated cutting tool in which hard coating layer exhibits exceptional adhesion resistance and anomalous damage resistance

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6423403B2 (en) PVD Al2O3 coated cutting tool
JP5715570B2 (ja) 被覆工具
EP0653499B1 (en) Coated cutting tool and method for producing the same
KR100250587B1 (ko) 피복 경질합금
RU2131328C1 (ru) Тело из цементированного карбида с покрытием и способ его изготовления
EP2594352B1 (en) Surface coating cutting tool
JP4824173B2 (ja) Pvd被膜切削工具およびその製造方法
JP2008183708A (ja) 被覆されたフライス加工用植刃及びその製造方法
CN107980013A (zh) 表面被覆切削工具及其制造方法
JP4970886B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP3962300B2 (ja) 酸化アルミニウム被覆工具
JP3353449B2 (ja) 被覆切削工具
JP4917447B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP3462859B2 (ja) 被覆切削工具
JPH08318407A (ja) 被覆切削工具
JPH08318406A (ja) 被覆切削工具
JP2005153098A (ja) 表面被覆切削工具
JP7190111B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2003039207A (ja) 被覆工具
JP3371564B2 (ja) 被覆超硬合金部材
JP5286931B2 (ja) 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP3818961B2 (ja) 酸化アルミニウム被覆工具
JP3781006B2 (ja) 酸化アルミニウム被覆工具
WO2021250841A1 (ja) 切削工具
JP2006175596A (ja) 被覆工具