JPH082504Y2 - ピンスライド型車両用ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、自動車や自動二・三輪車に搭載されるピン
スライド型の車両用ディスクブレーキに係り、詳しくは
キャリパボディ案内用のスライドピンに嵌着されるリテ
ーナに関する。

〔従来の技術〕

ピンスライド型のディスクブレーキでは、キャリパボ
ディに突設されるスライドピンが、キャリパブラケット
の支持腕に穿設された挿通孔内部で振動したり、挿通孔
にスライドピンが当たって打音を発生することがあるた
め、例えば実開平1-150230号公報に示されるように、ス
ライドピンの先端側に、挿通孔を摺動する筒状のブッシ
ュが嵌着される。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、このブッシュは、ゴム等の弾性材で挿
通孔よりも大径に形成されるため、スライドピンを挿通
孔に差込む時に組付けしにくく、しかも組付け後には、
スライドピンに対する大きな摺動抵抗となって、キャリ
パボディの円滑な移動を阻害し、非制動時の摩擦パッド
をディスクロータから充分に離間させることができず
に、摩擦パッドを異常摩耗させる原因となる。また、組
付け当初はこのように嵌め合いがきついものの、使用が
進むに連れて、弾性ブッシュにへたりや擦り切れ等の摩
耗を生じ易い。

本考案は、このような実情を背景にしてなされたもの
で、その目的とするところは、スライドピンの打音や振
動を抑制しつつ、摺動が円滑で耐久性に優れたディスク
ブレーキを提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

上述の目的に従い、第１考案は、キャリパボディに突
設されるスライドピンを、キャリパブラケットの支持腕
に穿設された挿通孔に挿通して、キャリパボディをディ
スク軸方向へ移動可能に支持したピンスライド型車両用
ディスクブレーキにおいて、前記スライドピンの先端側
外周に係合穴を凹設し、周方向に並ぶ複数の弾性脚片を
外周側へ湾曲状に脹らませて外側湾曲部を形成するとと
もに各弾性脚片の基端同士を連結して形成されるリテー
ナを、スライドピンの先端側から差込んで、各弾性脚片
の先端を前記係合穴に嵌合してスライドピンに装着し、
前記挿通孔の内周面に弾性脚片の外側湾曲部を弾接させ
る。

また、第２考案は、第１考案に記載されるスライドピ
ンの係合穴と弾性脚片の先端との間に、前記スライドピ
ンと挿通孔間のピンクリアランスよりも小さな間隙を設
定している。

〔作用〕

かかる構成によれば、スライドピンは、先端側をリテ
ーナによって挿通孔から離間して弾持され、振動や打音
の発生をリテーナで防止される。

〔実施例〕

以下、本考案の第１実施例を第１図乃至第３図に基づ
いて説明する。

ディスクブレーキ１は、ディスクロータ２の一側で車
体に固設されるキャリパブラケット３に、ディスクロー
タ２の外周を跨ぐ一対の支持腕3a,3aが設けられてお
り、両支持腕3a,3aの間には、キャリパボディ４が、両
側部の取付け腕4a,4aに突設された各スライドピン５を
支持腕3aの挿通孔3bに挿通して、ディスク軸方向へ移動
可能に支持されている。

キャリパボディ４は、ディスクロータ２の両側に配置
される作用部4b及び反作用部4cと、これらをディスクロ
ータ２の外周を跨いで連結するブリッジ部4dとからなっ
ており、前記取付け腕4a,4aは、作用部4bの両側部に突
出して設けられる。作用部4bにディスクロータ側を開口
して設けられたシリンダ孔６には、その底部に画成され
た液圧室に供給される圧液によって、ディスクロータ方
向へ液密に移動するコップ状のピストン７が内挿され、
またディスクロータ２の両側には、摩擦パッド8,8が対
向配置される。

各摩擦パッド８は、ディスクロータ２と摺接するライ
ニング９を裏板10に固着して構成され、これら摩擦パッ
ド8,8は、裏板10の両側に突設した吊下げ片10aを、各支
持腕3aの内側に形成した係止段部（図示せず）に係止さ
れ、ディスクロータ２の両側にディスク軸方向へ移動可
能に吊持されると共に、ブリッジ部4dの内側に係止され
るパッドスプリング11の付勢力にて、ディスク中心に弾
発されている。

前記スライドピン５は、その基部5aを取付けボルト12
にて前記取付け腕4aに固着され、挿通孔3bに挿通される
軸部5bが、挿通孔3bよりもやや小径に形成されている。
軸部5bの先端側には、係合穴5cが周状に凹設され、更に
係合穴5cの先端には、頭部5dが軸部5bよりも小径に形成
されている。軸部5bは、挿通孔3bから突出する部分を、
環状シール13aと一体のブーツ13bにて被覆され、挿通孔
3b内部の基端側を、挿通孔3bの開口部内側に嵌着された
上記環状シール13aに、また先端側をリテーナ14にてそ
れぞれ保持されている。

上記リテーナ14は、周方向に並ぶ４本の弾性脚片14a
の基端を端板14dに連結して形成され、全体を例えばス
テンレス薄板やばね板等の金属板で製作される。

各弾性脚片14aは、基端側に外周側へ湾曲する外側湾
曲部14bを、先端側に内側へ湾曲する内側湾曲部14cを連
続した波形で、外側湾曲部14bの頂部は、挿通孔3bの内
周面よりもやや大径に、また内側湾曲部14cの頂部は、
頭部5dよりも小径にそれぞれ形成されている。

このように形成されるリテーナ14は、挿通孔3bへ挿通
する前のスライドピン５に、内側湾曲部14cを頭部5d側
から差込んで、該頭部5dを外側湾曲部14bで覆うと共
に、内側湾曲部14cを係合穴5cに嵌合してスライドピン
５に装着される。

このようにして、リテーナ14を装着したスライドピン
５の軸部5bを挿通孔3bに差込むと、弾性脚片14aが挿通
孔3bの開口部で小径に絞られながら進入して行き、外側
湾曲部14bが挿通孔3bの内周面に、また内側湾曲部14cが
係合穴5cに、それぞれ弾性力を以って圧接され、軸部5b
の先端側が挿通孔3bから離間して弾持される。

本実施例は、以上のように構成されており、シリンダ
孔底部の液圧室に作動液が供給されると、ピストン７が
シリンダ孔６を前進して、一方の摩擦パッド８をディス
クロータ２の一側面に押圧し、次にこの反作用によっ
て、キャリパボディ４が作用部4b側へ移動し、反作用部
4cが他方の摩擦パッド８をディスクロータ２の他側面に
押圧して制動作用が行なわれる。

また、スライドピン5,5は、上述の作動時にキャリパ
ボディ４と一体に移動し、挿通孔3bを弾性脚片14aの外
側湾曲部14bが摺動する。外側湾曲部14bは、挿通孔3bの
内周を断続した線接触で摺動するため、摺動抵抗が極め
て小さく抑えられ、キャリパボディ４の移動を円滑に行
なうことができて、摩擦パッド８に引摺りによる早期摩
耗や偏減りがなくなる。

更に、弾性脚片14aの外側湾曲部14bが、挿通孔3bとの
擦り合わせに充分な剛性力を併せ持つので、長期間の使
用にも摩耗の少ない優れた耐久性を持ち、しかも軸部5b
の先端側を内側湾曲部14cが弾持するので、スライドピ
ン５がキャリパボディ４と一体に傾動した場合にも、挿
通孔3bに当たることがなくなり、振動による打音の発生
が防止される。

第４図に示す第２実施例では、スライドピン５に装着
されたリテーナ14の内側湾曲部14cと係合穴5cとの間に
間隙C₁を設けている。この間隙C₁は、挿通孔3bとスライ
ドピン５の軸部5bとの間のピンクリアランスC₂よりも小
さく設定されており、スライドピン５の摺動抵抗を一層
小さくすると共に、ピンクリアランスC₂の公差をラフな
ものにすることができる。

第５図は、本考案の第３実施例を示し、前記第１実施
例のように形成されたリテーナ14の端板14dに円孔14eを
穿設し、またスライドピン５の頭部5dには円柱形の突部
5eを設け、リテーナ14をスライドピン５に装着した際
に、突部5eを円孔14eに嵌合して、摺動時のリテーナ14
がスライドピン５から偏荷重を受けることがあっても、
容易に倒れることなく、スライドピン５を確実に保持し
得るようにしている。

尚、本考案のリテーナは、弾性脚片の先端側が外周側
への脹みよりも絞られていて、スライドピンの係合穴に
係合できる形状であればよく、実施例のように湾曲状に
反り返した形状に限定するものでない。また、スライド
ピンの係合穴形状も、実施例のような周状に限らず、弾
性脚片の先端それぞれが係合する独立した穴であっても
よい。

〔考案の効果〕 本考案の車両用ディスクブレーキは、スライドピンの
先端側外周に係合穴を凹設し、周方向に並ぶ複数の弾性
脚片を外周側へ湾曲状に脹らませて外側湾曲部を形成す
るとともに各弾性脚片の基端同士を連結して形成される
リテーナを、スライドピンの先端側から差込んで、各弾
性脚片の先端を前記係合穴に嵌合してスライドピンに装
着し、前記挿通孔の内周面に弾性脚片の外側湾曲部を弾
接させたから、リテーナをワンタッチで簡便に装着する
ことができる。また、スライドピンの摺動抵抗が極めて
小さく抑えられ、キャリパボディの移動を円滑に行なう
ことができて、摩擦パッドに引摺りによる早期摩耗や偏
減りがなくなる。

更にリテーナ自体も、弾性脚片が挿通孔との擦り合わ
せに充分な剛性力を併せ持つので、長期間の使用にも摩
耗の少ない優れた耐久性を持ち、しかも弾性脚片の先端
がスライドピンの先端側を弾持するので、振動による打
音の発生が防止される。

また、スライドピンの係合穴と弾性脚片の先端との間
に、スライドピンと挿通孔との間のピンクリアランスよ
りも小さな間隙を設定したことにより、スライドピンの
倒れや打音を防止しつつ、摺動抵抗を一層小さくできる
と共に、ピンクリアランスの公差をラフなものにするこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は本考案の第１実施例を示し、第１図
はディスクブレーキの一部を切欠いて見せた平面図、第
２図は要部断面図、第３図はリテーナの斜視図、第４図
は第２実施例の要部断面図、第５図は第３実施例の要部
断面図である。 １……ディスクブレーキ、２……ディスクロータ、３…
…キャリパブラケット、3a……支持腕、3b……スライド
ピン５が挿通される挿通孔、４……キャリパボディ、4a
……取付け腕、５……スライドピン、5a……基部、5b…
…軸部、5c……周状の係合穴、5d……頭部、5e……突
部、８……摩擦パッド、14……リテーナ、14a……弾性
脚片、14b……外側湾曲部、14c……内側湾曲部、14d…
…端板、14e……円孔、C₁……間隙、C₂……ピンクリア
ランス

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】キャリパボディに突設されるスライドピン
   を、キャリパブラケットの支持腕に穿設された挿通孔に
   挿通して、キャリパボディをディスク軸方向へ移動可能
   に支持したピンスライド型車両用ディスクブレーキにお
   いて、前記スライドピンの先端側外周に係合穴を凹設
   し、周方向に並ぶ複数の弾性脚片を外周側へ湾曲状に脹
   らませて外側湾曲部を形成するとともに各弾性脚片の基
   端同士を連結して形成されるリテーナを、スライドピン
   の先端側から差込んで、各弾性脚片の先端を前記係合穴
   に嵌合してスライドピンに装着し、前記挿通孔の内周面
   に弾性脚片の外側湾曲部を弾接させたことを特徴とする
   ピンスライド型車両用ディスクブレーキ。
2. 【請求項２】前記スライドピンの係合穴と弾性脚片の先
   端との間に間隙を設定し、該間隙を前記スライドピンと
   挿通孔との間のピンクリアランスよりも小さく設定した
   ことを特徴とする請求項１記載のピンスライド型車両用
   ディスクブレーキ。