JPH082294A - 車両のトラクションコントロール装置 - Google Patents

車両のトラクションコントロール装置

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Publication number
JPH082294A
JPH082294A JP6164475A JP16447594A JPH082294A JP H082294 A JPH082294 A JP H082294A JP 6164475 A JP6164475 A JP 6164475A JP 16447594 A JP16447594 A JP 16447594A JP H082294 A JPH082294 A JP H082294A
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JP
Japan
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engine
speed
traction control
shift
vehicle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6164475A
Other languages
English (en)
Inventor
Tetsuya Tatehata
哲也 立畑
Fumio Kageyama
文雄 景山
Toshiaki Tsuyama
俊明 津山
Tomoyuki Hirao
知之 平尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Publication date
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Publication of JPH082294A publication Critical patent/JPH082294A/ja
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  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 エンジントラクション制御と併せてシフトア
ップし、そのシフトアップによりエンジン回転数が所定
回転数未満に低下するのを防止する。 【構成】 エンジントラクション制御と併せて変速機を
シフトアップさせるシフトアップ指令処理において、初
回フラグFiが0から1にセットされてトラクション制
御が開始され、低摩擦路で、自動変速機が1速で、変速
マップの1速領域のうちの所定の運転領域のときには
(S81〜S84:Yes )、2速にシフトアップした場
合のエンジン回転数Ne2u を推定し(S85)、そのエ
ンジン回転数Ne2u がエンジンストールガード回転数
(1500rpm )以上のときだけ(S86:Yes )、2速へ
シフトアップする指令信号を出力し、その後所定時間T
1の間2速に保持する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両のトラクションコ
ントロール装置に関し、特に、エンジントラクション制
御に付随するシフトアップによるエンジンストールを防
止するように改善したものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両の加速時において、駆動輪が
過大駆動トルクによりスリップして走行性能が低下する
ことを防止する為に、駆動輪のスリップ量を検出し、駆
動輪のスリップ量が目標スリップ量となるように、エン
ジン駆動力を抑制するように構成した車両のトラクショ
ン制御技術は一般に実用化されている。この種の車両の
トラクション制御においては、4輪の車輪速を夫々検出
する車輪速センサが設けられ、駆動輪速と従動輪速とか
ら駆動輪のスリップ量が演算され、また、従動輪速から
決まる車体速と路面摩擦係数とに応じて目標スリップ量
が設定される。前記路面摩擦係数は、通常、従動輪速と
その加速度とから推定される(特開昭60−99757
号公報参照)。
【0003】前記駆動輪のスリップ抑制の為に、エンジ
ン駆動力を抑制する技術としては、点火時期のリタード
及び/又は燃料カット、又は、吸気通路の副スロットル
弁を介しての吸気量の調節、等が適用される。例えば、
特公平2−31779号公報には、駆動輪のスリップ量
が所定値以上のとき、燃料カットを介してエンジンの出
力トルクを低減させるとともに、自動変速機の変速段を
最高速段までシフトアップさせる技術が提案されてい
る。
【0004】更に、特開平4−92729号公報には、
エンジントラクション制御により燃料カットを行なうも
のにおいて、エンジン回転数が所定回転数以上で燃料カ
ットしたときには、自動変速機をシフトアップすること
で、エンジン回転数を低下させて、排気系の触媒内での
燃焼を抑制するようにした車両用駆動力制御装置が記載
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】発進時又は発進後にお
いて、エンジントラクション制御と併せて、自動変速機
を例えば1速から2速へシフトアップすると、駆動輪の
駆動トルクが低下することから、スリップ抑制に有効で
ある。但し、この場合、エンジン回転数が変速ギヤ比の
分だけ低下する。しかし、発進時又は発進後など、エン
ジン回転数が低い状態において、前記シフトアップを実
行すると、そのシフトアップに起因するエンジン回転数
の低下により、エンジンストールが発生することがある
し、また、エンジンストールが発生しないまでも、エン
ジン回転数が過度に低下してエンジンの制御性が低下す
る、等の問題がある。本発明の目的は、エンジントラク
ション制御と併せてシフトアップし、そのシフトアップ
によりエンジン回転数が所定回転数未満に低下するのを
防止できる車両のトラクションコントロール装置を提供
することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の車両のトラク
ションコントロール装置は、駆動輪の路面に対するスリ
ップ抑制の為にエンジンの駆動力を制御するエンジント
ラクション制御を行うトラクション制御手段を備えた車
両のトラクションコントロール装置において、4輪の車
輪速を検出する車輪速検出手段と、前記トラクション制
御手段によるエンジントラクション制御と併せて、自動
変速機を次変速段へシフトアップさせるように変速機制
御手段に指令するシフトアップ指令手段と、前記車輪速
検出手段で検出された駆動輪の車輪速を受け、前記シフ
トアップ指令手段によりシフトアップした場合のエンジ
ン回転数を推定し、そのエンジン回転数が所定回転数未
満の場合には、シフトアップ手指令手段に対して、シフ
トアップを禁止するシフトアップ禁止手段とを備えたも
のである。
【0007】請求項2の車両のトラクションコントロー
ル装置は、駆動輪の路面に対するスリップ抑制の為にエ
ンジンの駆動力を制御するエンジントラクション制御を
行うトラクション制御手段を備えた車両のトラクション
コントロール装置において、4輪の車輪速を検出する車
輪速検出手段と、前記トラクション制御手段によるエン
ジントラクション制御と併せて、自動変速機が1速であ
って変速マップの所定運転領域にあるとき、自動変速機
を1速から2速へシフトアップさせるように変速機制御
手段に指令するシフトアップ指令手段と、前記車輪速検
出手段で検出された駆動輪の車輪速を受け、2速へシフ
トアップした場合のエンジン回転数を推定し、そのエン
ジン回転数が所定回転数未満の場合には、シフトアップ
手指令手段に対して、シフトアップを禁止するシフトア
ップ禁止手段とを備えたものである。
【0008】ここで、前記所定回転数は、エンジンスト
ール防止の為に予め設定されたエンジンストールガード
回転数である構成(請求項1又は請求項2に従属の請求
項2)。前記トラクション制御手段は、燃焼カット及び
/又は点火時期リタードを介して、エンジンの駆動力を
制御するように構成してもよい(請求項1又は請求項2
に従属の請求項3)。前記トラクション制御手段は、駆
動輪のスリップ量が目標値となるようにエンジンの駆動
力を制御するように構成してもよい(請求項1又は請求
項2に従属の請求項4)。
【0009】
【発明の作用及び効果】請求項1の車両のトラクション
コントロール装置においては、トラクション制御手段
は、駆動輪の路面に対するスリップ抑制の為にエンジン
の駆動力を制御するエンジントラクション制御を実行
し、車輪速検出手段は4輪の車輪速を検出し、シフトア
ップ指令手段は、エンジントラクション制御と併せて、
自動変速機を次変速段へシフトアップさせるように変速
機制御手段に指令し、シフトアップ禁止手段は、駆動輪
の検出車輪速を受け、シフトアップ指令手段によりシフ
トアップした場合のエンジン回転数を推定し、そのエン
ジン回転数が所定回転数未満の場合には、シフトアップ
手指令手段に対して、シフトアップを禁止する。
【0010】このように、シフトアップ指令手段によ
り、エンジントラクション制御と併せて次変速段へシフ
トアップさせて、駆動輪の駆動トルクを低下させること
で、駆動輪のスリップの抑制を促進することができる。
シフトアップ禁止手段により、シフトアップした場合に
エンジン回転数が所定回転数未満となるのを防止でき
る。例えば、1速から2速へシフトアップするような場
合に、前記所定回転数として、エンジンストール防止の
為に予め設定されたエンジンストールガード回転数を適
用すれば、エンジン回転数の低下により、エンジンスト
ールが発生したり、エンジン回転数が過度に低下してエ
ンジンの制御性が低下したり、するのを確実に防止でき
る。
【0011】請求項2の車両のトラクションコントロー
ル装置においては、トラクション制御手段は、駆動輪の
路面に対するスリップ抑制の為にエンジンの駆動力を制
御するエンジントラクション制御を実行し、車輪速検出
手段は4輪の車輪速を検出し、シフトアップ指令手段
は、トラクション制御手段によるエンジントラクション
制御と併せて、自動変速機が1速であって変速マップの
所定運転領域にあるとき、自動変速機を1速から2速へ
シフトアップさせるように変速機制御手段に指令する。
シフトアップ禁止手段は、駆動輪の検出車輪速を受け、
前記所定運転領域において2速へシフトアップした場合
のエンジン回転数を推定し、そのエンジン回転数が所定
回転数未満の場合には、シフトアップ手指令手段に対し
て、シフトアップを禁止する。
【0012】このように、シフトアップ指令手段によ
り、エンジントラクション制御と併せて1速から2速へ
シフトアップさせて、駆動輪の駆動トルクを低下させる
ことで、駆動輪のスリップの抑制を促進することができ
る。そして、シフトアップ禁止手段により、2速へシフ
トアップした場合のエンジン回転数が所定回転数未満の
場合には、シフトアップを禁止することにより、エンジ
ンストールが発生したり、エンジンの制御性が低下した
り、するのを確実に防止することができる。
【0013】請求項3の車両のトラクションコントロー
ル装置においては、前記所定回転数は、エンジンストー
ル防止の為に予め設定されたエンジンストールガード回
転数であるので、エンジンストールの発生を確実に防止
できる。請求項4の車両のトラクションコントロール装
置においては、トラクション制御手段は、燃焼カット及
び/又は点火時期リタードを介して、エンジンの駆動力
を制御するが、この場合、エンジントラクション制御の
為の構成が簡単化し、製作コスト的に有利である。
【0014】請求項5の車両のトラクションコントロー
ル装置においては、トラクション制御手段は、駆動輪の
スリップ量が目標値となるようにエンジンの駆動力を制
御するが、この場合、駆動輪のスリップ量を目標値以下
に確実に抑制できる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
つつ説明する。本実施例は、後輪駆動型の車両のトラク
ションコントロール装置に、本発明を適用した場合の一
例である。図1に示すように、この車両においては、左
右の前輪1,2が従動輪、左右の後輪3,4が駆動輪と
され、車体の前部に搭載されたV型6気筒のエンジン5
の駆動トルクが、トクルコンバータと遊星歯車式変速ギ
ヤ機構を含む自動変速機6からプロペラシャフト7、差
動装置8及び左右の後輪駆動軸9,10を介して左右の
後輪3,4に伝達されるように構成してある。
【0016】前記エンジン5の左右のバンク間の上側に
は、吸気管11に接続されたサージタンク12が配設さ
れ、6つの分岐吸気管13の夫々は、サージタンク12
の側部から延びて反対側のバンクの吸気ポートに接続さ
れ、各分岐吸気管13には、分岐吸気管13又は吸気ポ
ート内へ燃料を噴射するインジェクタ14が装着され、
吸気管11には、アクセルペダル15に連動連結された
スロットル弁16が設けられ、また、6つの点火プラグ
に点火駆動信号を所定の順序で出力するディストリビュ
ータ17も設けられている。
【0017】左右の前輪1,2と後輪3,4には、車輪
と一体的に回転するディスク21a〜24aと、ブレー
キ油圧の供給を受けて、これらディスク21a〜24a
の回転を制動するキャリパ21b〜24bとからなるブ
レーキ装置21〜24が夫々設けられ、これらのブレー
キ装置21〜24を作動させるブレーキ制御システムが
設けられている。このブレーキ装置21〜24のブレー
キ油圧系は、図示のように一般な構成のものであるの
で、詳細な説明は省略する。
【0018】左前輪1の車輪速V1を検出する車輪速セ
ンサ51と、右前輪2の車輪速V2を検出する車輪速セ
ンサ52と、左後輪3の車輪速V3を検出する車輪速セ
ンサ53と、右後輪4の車輪速V4を検出する車輪速セ
ンサ54と、操舵ハンドル57の舵角を検出する舵角セ
ンサ58と、ブレーキペダル25の操作時にONとなる
ブレーキスイッチ59、エンジン回転数センサ61、ア
クセルペダル15の踏込み量を検出するアクセルセンサ
62、スロットル弁16の開度を検出するスロットルセ
ンサ63、走行モード(スポーツモード、ノーマルモー
ド、セーフティモード)を設定するモードスイッチ64
等のセンサ類が設けられるとともに、エンジン5に対す
るエンジントラクション制御と、左右の後輪3,4のブ
レーキ装置23,24に対するブレーキトラクション制
御とを行うトラクション制御ユニット50が設けられ、
また、エンジン5を制御するエンジン制御ユニット50
と、自動変速機6を制御する変速機制御ユニット70が
設けられている。
【0019】前記各車輪速センサ51〜54は、ブレー
キディスク21a〜24a又はその近傍のディスクに形
成された複数の検出部を電磁ピックアップで検出する構
成のものである。前記トラクション制御ユニット50に
対して、前記センサやスイッチ類からの検出信号が供給
されるとともに、変速機制御ユニット70から自動変速
機6の変速段を示す信号が供給されている。トラクショ
ン制御ユニット50からは、エンジン制御ユニット60
に対してエンジントラクション制御の制御信号が供給さ
れ、且つ電磁開閉弁31,46,36,37,39,4
0にブレーキトラクション制御の制御信号が供給され
る。
【0020】また、トラクション制御ユニット50から
変速機制御ユニット70に対して、トラクション制御に
より変速段の切換えを指令する指令信号が出力される。
尚、エンジン制御ユニット60は、トラクション制御の
制御信号に基いて、燃料カットや点火時期リタードを実
行する。変速機制御ユニット70は、車速Vと、スロッ
トル弁16のスロットル開度の検出信号と、シフトレバ
ーの操作位置を示す信号等と変速マップに基づいて、自
動変速機6に対して変速制御を実行するが、一般的な変
速機制御装置と同様であるので、その詳細についての説
明は省略する。
【0021】ブレーキ制御について簡単に説明すると、
ブレーキトラクション制御を実行しないときには、電磁
開閉弁31を開き且つ電磁開閉弁46を閉じると、制動
時に倍力装置26からブレーキ油圧がブレーキ装置21
〜24に供給される。ブレーキトラクション制御時に
は、電磁開閉弁31を閉じ且つ電磁開閉弁46を開き、
電磁開閉弁36,37,39,40を適宜デュティ制御
することで、左右の後輪3,4のブレーキ装置23,2
4のブレーキ油圧を所望の圧力に制御することができ
る。尚、ブレーキトラクション制御は、一般的なブレー
キトラクション制御と同様であるので、その詳細な説明
は省略する。
【0022】前記トラクション制御ユニット50は、セ
ンサやスイッチ類からの検出信号を、必要に応じて波形
整形する波形整形回路、前記検出信号を必要に応じてA
D変換するA/D変換器、入力出力インターフェース、
マイクロコンピュータ、電磁開閉弁31,46,36,
37,39,40等の為の駆動回路、複数のタイマ等で
構成され、マイクロコンピュータのROMには、後述の
エンジントラクション制御の制御プログラムやテーブル
やマップ等が予め格納され、RAMには種々のワークメ
モリが設けられている。
【0023】次に、前記トラクション制御ユニット50
で実行されるエンジントラクション制御について、図2
以降の図面を参照しつつ説明するが、最初に、このエン
ジントラクション制御(スリップ制御)の概要について
説明しておく。車両の走行状態や路面摩擦状態に応じた
駆動輪3,4の目標スリップ量を設定し、駆動輪3,4
のスリップ量を4輪の車輪速を用いて算出し、車両の発
進時や加速走行時等において、前記スリップ量がエンジ
ン制御用目標スリップ量以下となるように、燃料カット
及び/又は点火時期リタード制御を行う。
【0024】特に、このエンジントラクション制御は、
低摩擦路面における発進時や走行時にトラクション制御
開始したとき、自動変速機6の変速段を1速から2速に
シフトアップさせ、2速にシフトアップした場合のエン
ジン回転数がエンジンストールガード回転数(1500rp
m)未満になるときには、2速へのシフトアップを禁止
することを特徴とするものである(図20参照)。次
に、このエンジントラクション制御について、図2以降
の図面を参照しつつ説明する。図2のフローチャート
は、エンジントラクション制御のメインルーチンのフロ
ーチャートであり、このルーチンは、所定微小時間(例
えば、8ms)毎に実行される。尚、フローチャート中
の符号Si(i=1,2,3,・・・)は、各ステップ
を示すものである。
【0025】図2において、エンジンの起動により制御
が開始されると、スリップ量検知処理が実行され(S
1)、次に目標スリップ量設定処理が実行され(S
2)、次にスリップ判定処理が実行され(S3)、次に
エンジン制御用目標制御量演算処理が実行され(S
4)、次に、エンジン制御用スリップフラグFe=1を
条件として、エンジン制御用制御信号がエンジン制御ユ
ニット60に出力され(S5)、その後リターンする。
【0026】次に、前記S1〜S4の各サブルーチンに
ついて説明する。 スリップ量検知処理・・・図3参照 このスリップ量検知処理のサブルーチンが開始される
と、最初に、車輪速センサ51〜54から左右の前輪
1,2と後輪3,4の車輪速V1〜V4が読み込まれ
(S10)、次に車体速である車速Vが、左右の従動輪
速V1,V2の平均値として演算され、また、最大駆動
輪速Vmが左右の駆動輪速V3,V4の最大値として演
算される(S11)。次に、S12において、エンジン
制御用スリップ量Seが、図示のように(Vm−V)と
して演算され、このスリップ量Seのデータはワークメ
モリに更新しつつ格納される。
【0027】目標スリップ量設定処理・・・図4参照 この目標スリップ量設定処理のサブルーチンが開始され
ると、以下の演算に必要な各種信号(路面摩擦係数μ、
車速V、アクセル踏込量(アクセル開度)、検出舵角
θ、モードスイッチ64からのモード信号、等)が読み
込まれる(S20)。ここで、路面摩擦係数μは、図示
外の割り込み処理ルーチンにより、車速Vとその加速度
Vgとに基いて次のようにして演算され、時々刻々更新
される。
【0028】この路面摩擦係数μの演算には、100m
sカウントのタイマと、500msカウントのタイマと
を用い、スリップ制御開始から車体加速度Vgが十分に
大きくならない500ms経過までは100ms毎に1
00ms間の車速Vの変化から次の(1)式により車体
加速度Vgを求め、また、車体加速度Vgが十分に大き
くなった500ms経過後は、100ms毎に500m
s間の車速Vの変化から次の(2)式により車体加速度
Vgを求める。尚、V(i)は現時点、V(i−10
0)は100ms前、V(i−500)は500ms前
の各車速でありK1、K2は夫々所定の定数である。
尚、msは、msecのことである。
【0029】 Vg=K1×〔V(i)−V(i−100)〕 (1) Vg=K2×〔V(i)−V(i−500)〕 (2) 前記路面摩擦係数μは、前記のように求めた車速Vと、
車体加速度Vgとを用いて表1に示したμテーブルから
3次元補完により演算され、ワークメモリに更新しつつ
格納される。
【0030】
【表1】
【0031】次に、S21において、図6のマップM0
に路面摩擦係数μを適用して、エンジン制御用目標スリ
ップ量基本値SETo が演算される。次に、前記基本値S
EToを、車両の走行状態等に応じて補正する為の係数k
1〜k4がS22において演算される。このS22にお
いて、図7のマップM1に車速Vを適用して係数k1が
演算され、図8のマップM2にアクセル踏込量を適用し
て係数k2が演算され、図9のマップM3に舵角θを適
用して係数k3が演算され、図10のマップM4とモー
ド信号とから係数k4が演算される。次に、S23で
は、係数k1〜k4を乗算した係数KDが演算され、次
に、S24において、エンジン制御用目標スリップ量S
ETが、SET=基本値SETo ×KDとして演算され、ワー
クメモリに格納される。
【0032】スリップ判定処理・・・図5参照 スリップ判定処理は、スリップ判定、つまり、トラクシ
ョン制御の要否を識別する為のスリップフラグFeと、
初回フラグFiとを設定する為の処理であり、この処理
が開始されると、各種信号(スリップ量Se,目標スリ
ップ量SET、前回のスリップフラグFe(k-1) 、フラグ
Fi、フラグFt、等のデータ)が読み込まれ(S3
0)、次に、スリップ量Seが目標スリップ量SETより
も大きいか否か判定し(S31)、その判定が No のと
きはS35へ移行し、また、その判定がYes のときは、
スリップフラグFeが1にセットされ(S32)、次に
前回のスリップフラグFe(k-1) が0か否か、つまり、
今回新たに一連のトラクション制御に入るのか否か判定
する(S33)。S33の判定がYes のときは初回フラ
グFiが1にセットされ(S34)(図22参照)、そ
の後S4へ移行する。
【0033】S31の判定が No の場合には、初回フラ
グFiが1か否か判定し(S35)、初回フラグFiが
1のときにはそのフラグFiが0にリセットされ(S3
6)、次に、タイマフラグFtが1にセットされていな
いときには(S37: No )、例えば0から3000msま
でカウントするカウントアップ型のタイマT(その計時
時間をTとする)がリセット後スタートされ(S3
8)、次にフラグFtをセット(S39)後に、S4へ
移行する。
【0034】一方、フラグFtが1のとき(S37:Ye
s )には、タイマTの計時時間Tが所定値T0(例え
ば、T0=2000ms)以上か否か判定し(S40)、その
判定がNo のときはS4へ移行するが、その判定がYes
のとき、つまり、スリップ量Se≦目標スリップ量SE
T、の状態が所定時間T0継続したときには、スリップ
フラグFeが0にリセットされ(S41)、次にフラグ
Ftが0にリセットされ(S42)、その後S4へ移行
する。以上のようにして、フラグFe,Fiの設定が実
行される。
【0035】エンジン制御用目標制御量演算処理・・・
図11、図12参照 この演算処理は、エンジントラクション制御(これを、
TCSと略称することもある)実行中に、つまり、スリ
ップフラグFe=1のときに、実行される処理であり、
この演算処理が開始されると、各種信号(スリップ量S
e、アクセル開度Aco、エンジン回転数Ne、低スリッ
プ識別フラグF、車速V、路面摩擦係数μ、前回の制御
レベルFC(k -1)、前回の目標TVO(k -1)、最大駆動
輪速Vm等のデータ)が読み込まれる(S50)。但
し、添字(k-1) は前回の値、添字(k) は今回の値を示
し、「TVO」は、スロットル開度を示す。
【0036】次に、S51において、低スリップ識別フ
ラグFが0か否か判定するが、このフラグFは初期設定
において0に設定されるため、最初はS51からS61
へ移行し、タイマTMの計時時間TMが1.0 秒以下か否
か判定する。S57においてタイマTMがスタートされ
ないうちは、S61の判定が No となるため、S61か
らS52へ移行する。S52では、フラグFが1か否か
判定するが、最初は No と判定されてS53へ移行す
る。次に、S53において、駆動輪速が従動輪速に接近
していて駆動輪3,4のスリップ量Seが小さく、かつ
駆動輪速の変化率が小さいか否か判定するため、最大駆
動輪速Vm≦(V+2.0 Km/H)で、且つ、ΔDVm≦0.
3 Gか否か判定する。尚、ΔDVmは最大駆動輪速Vm
の加減速度の絶対値である。
【0037】そして、走行中の路面が高摩擦路面に変化
したときには、S53の判定がYesとなるが、走行中の
路面が低摩擦路面であっても、過度の制動を実行した
り、また、エンジントラクション制御によってエンジン
駆動力を過度に抑制したような場合には、S53の判定
がYes となる。S53の判定がYes のときには、S54
においてフラグFを1に設定してからS59へ移行し、
また、S53の判定が No の場合には、S54をスキッ
プしてS59へ移行する。S59とS60は、通常のエ
ンジントラクション制御における目標TVOを設定する
ステップであり、S59においては、下記の表2〜表4
から、目標TVOの変化量が演算される。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【表4】
【0040】表2のテーブルにおいて、ZOは目標TV
Oの保持を示し、Nは目標TVOの減少、Pは目標TV
Oの増加を示し、また、添字S,M,Bは、目標TVO
の変化量の大きさを示すもので、Sは「変化量小」、M
は「変化量中」、Bは「変化量大」を示す。表3のテー
ブルは、表2のテーブルにおける変化量の記号を数値化
したものであり、その単位はTVOの単位の%である。
表2のテーブルは、スリップ量Seと目標スリップ量S
ETの偏差であるスリップ量偏差ENと、その偏差変化率
DENをパラメータとして設定してあり、今回のスリッ
プ量偏差EN(k) =(Se−SET)として演算され、今
回の偏差変化率DEN(k) =今回の偏差EN(k) −前回
の偏差EN(k−1)として演算され、今回のスリップ量
偏差EN(k) と、今回の偏差変化率DEN(k) を演算
し、それらを表2のテーブルに適用して、目標TVOの
変化量ΔTVOが演算され、その変化量ΔTVOを表3
に適用して目標TVOの変化量ΔTVOが数値化され
る。
【0041】そして、エンジンの運転状態に応じて、目
標TVOの変化量ΔTVOを補正する為に、検出エンジ
ン回転数Neと、検出TVOを、表4のテーブルに適用
して、補正係数Keが演算され、最終的な目標TVOの
変化量ΔTVOは、ΔTVO=ΔTVO×Keとして演
算される。次に、S60において、今回の目標TVO
が、前回の目標TVO(k-1) に変化量ΔTVOを加算す
ることで、目標TVO=前回の目標TVO(k-1) +ΔT
VO、として演算され、その後S64へ移行する。
【0042】次に、S64においては、図14のマップ
M6に、検出エンジン回転数Neと、今回の目標TVO
を適用して、TCS実行時の目標エンジントルクTmtcs
が演算される。次に、S65において、図15のマップ
M7に、検出エンジン回転数Neと、検出アクセル開度
Acoを適用して、TCS非実行時のエンジントルクTnt
csが演算される。尚、マップM6は、マップM7に比較
して、エンジン駆動力を格段に抑制した特性に設定して
ある。
【0043】次に、S66では、エンジントルク出力比
率ETRが、ETR=100×Tmtcs/Tntcs、として
演算され、次にS67では、フラグFが1か否か判定さ
れるが、フラグFが0のときには、S69へ移行し、ま
た、フラグFが1のときには、駆動力3,4のスリップ
量Seが小さいため、エンジン駆動力の増加補正の為
に、S68において、エンジントルク出力比率ETRが
所定値(例えば、5%)だけ大きく変更されてから、S
69へ移行する。
【0044】次に、S69において、図16のマップM
8に、エンジントルク出力比率ETRを適用して、今回
の制御レベルFCが演算される。次に、S70におい
て、今回の制御レベルFCを、図17のマップM9と、
図18の点火リタード量の最大値を設定したマップM1
0とに適用して、点火リタード量が演算され、次に、S
71において、今回の制御レベルFCを、図19の燃料
カット禁止領域を設定したマップM11と、表5の燃料
カットテーブルに適用して、燃料カットパターンが演算
され、その後、図2のS5へ移行する。尚、下記の表5
における燃料カットパターンの番号は、制御レベルFC
に相当するものである。
【0045】
【表5】
【0046】以上のように、駆動輪3,4のスリップ量
Seが大きく、S53の判定が Noのうちは、S59と
S60を経由する通常のエンジントラクション制御が実
行されるが、走行路面が実際に高摩擦路面に変化して駆
動輪3,4のスリップ量Seが小さくなったり、依然と
して低摩擦路面であるが駆動輪3,4のスリップ量Se
が小さくなったりして、低スリップ識別フラグFが1に
セットされた後は、S51とS52を経てS55へ移行
し、S55において、最大駆動輪速Vmが、Vm>(V
+3.0Km/H )か否か、つまり、駆動輪3,4のスリップ
量Seが増加し始めたか否か判定し、その判定がYes の
ときには、フラグFが0にリセットされ(S56)、次
に、0から例えば5.0 秒までカウントするカウントアッ
プ型のタイマTM(その計時時間をTMとする)が、リ
セット後スタートされ(S57)、S57からS59へ
移行し、S59以降が前記と同様に実行される。
【0047】実際に高摩擦路面に移行した場合等には、
駆動輪3,4のスリップ量Seが増加傾向を示さず、S
55の判定が No となるが、この場合には、S55から
S58へ移行して、前回の制御レベルFC(k-1) が0か
否か判定される。そして、最初のうちは、その判定が N
o であるため、S58からS59へ移行し、S59以降
が前記と同様に実行され、制御レベルFCが徐々に減少
していく。その結果、燃料カット状態から全面的に復帰
した全復帰状態になり、前回の制御レベルFC(k-1) が
0になると、S58の判定がYes となるので、S58か
らS56へ移行し、S56以降が前記と同様に実行され
る。
【0048】前記S56にてフラグFを0にリセット後
においては、S51からS61へ移行し、S61におい
て、タイマTMの計時時間TMが、1.0 秒以下か否か判
定され、1.0 秒以下の場合には、S62へ移行し、S6
2において、駆動輪3,4のスリップ量Seが、設定値
Co(例えば、20Km/H)以上か否か判定する。路面が実
際に高摩擦路面である場合には、その判定は No となる
ため、S62からS59へ移行し、S59以降が前記と
同様に実行される。
【0049】これに対して、路面が依然として低摩擦路
面であるが、高摩擦路面として誤制御されている場合に
は、フラグFを1に設定する前からエンジン駆動力の増
強が実行されているため、フラグFを0にリセット後1.
0 秒以内の間に、駆動輪3,4のスリップ量Seが急増
していくので、S62の判定がYes となる。この場合、
S62からS63へ移行し、S63において、エンジン
駆動力を急減させてトルク抑制を図る為に、図13のマ
ップM5に、車速Vと、路面摩擦係数μを適用して、S
59とS60で設定される値よりも格段に小さな目標T
VOが演算され、その後S64へ移行する。
【0050】このように、目標TVOを小さく設定する
と、TCS実行時の目標エンジントルクTmtcsが格段に
小さくなって、エンジントルク出力比率ETRが小さく
設定され、その結果、制御レベルFCが大きく設定さ
れ、エンジン駆動力が急減するような制御が実行され
る。フラグFが0で、TM≦1.0 秒の間は、繰り返しマ
ップM5から目標TVOが設定されるので、繰り返し制
御レベルFCが大きく設定され、エンジン駆動力が急減
し、駆動輪3,4のスリップが抑制されることになる。
尚、TM≦1.0 秒の間に1回だけマップM5から目標T
VOを設定するように構成してもよい。
【0051】次に、トラクション制御開始時に駆動輪の
トルクを低下させるための自動変速機6に対するシフト
アップ指令処理について、図20のフローチャートを参
照しつつ説明するが、このシフトアップ指令処理は、ト
ラクション制御に含まれるものであり、図2のメインル
ーチンと並行的に、所定の微小時間(例えば、8ms)
おきに実行されるものである。但し、このシフトアップ
指令処理は、図2のメインルーチンにおいて実行しても
よい。最初に、各種信号(例えば、前回のフラグFi(k
-1) 、今回のフラグFi(k)、路面摩擦係数μ、車速
V、検出スロットル開度、駆動輪の目標スリップ量SE
T、4輪の検出車輪速、変速機制御ユニット70から供
給される現在の変速段を示す信号等のデータ)が読み込
まれる(S80)。
【0052】次に、前回のフラグFi(k-1) =0で、か
つ今回のフラグFi(k)=1か否か、つまり、今回新た
にトラクション制御に入ったか否か判定し(S81)、
その判定がYes のときには、路面が低摩擦路面か否か判
定し(S82)、その判定がYes のときには、現在の変
速段が1速か否か判定し(S83)、その判定がYesの
ときには、車速Vとスロットル開度とを、トラクション
制御ユニット50に格納されている図21のマップM1
2に適用して、車速Vとスロットル開度とで決まる運転
状態が、マップM12の領域Z内か否か判定し(S8
4)、その判定がYes のときには、S85へ移行する。
尚、S82〜S84の何れかの判定が Noのときには、
リターンする。
【0053】尚、図21のマップM12は、領域Zを設
定してあれば十分であるが、理解促進の為に、変速機制
御ユニット70に格納している変速マップを含めて図示
してあり、図中の「n」(n=1,2,3,4)は、変
速段を示すものである。
【0054】次に、S85において、自動変速機6の変
速段を2速にシフトアップした場合のエンジン回転数N
e2u が、次のように演算される。2速の変速段のギヤ比
を2.78、差動装置8のギヤ比を4.1 、後輪3,4の1周
分の長さを2mとすると、後輪3,4の平均車輪速Vd
(Km/H)と、エンジン回転数Ne(rpm)の関係は、
Vd=0.0105×Neとなるが、平均車輪速Vd=(V3
+V4)/2であるから、現在の走行状態において2速
にシフトアップした場合のエンジン回転数Ne2u は、0.
0105×Ne2u =(V3+V4)/2の関係式から、Ne2
u =(V3+V4)/(2×0.0105)となる。但し、駆
動輪速は、少なくとも、(従動輪速+目標スリップ量S
ET)まで低下する可能性があることから、前記平均車輪
速Vdとして、(車速V+目標スリップ量SET)を用い
て、2速にシフトアップした場合のエンジン回転数Ne2
u を求めてもよい。
【0055】S85の次のS86では、前記エンジン回
転数Ne2u が、エンジンストールガード回転数として予
め設定された1500rpm以上か否か判定され、その判定
がYes のときには、S87において、変速機6を2速へ
シフトアップする指令信号を変速機制御ユニット70へ
出力して、変速機6を2速にシフトアップさせ、その後
リターンする。つまり、低摩擦路面を1速で走行中にト
ラクション制御実行状態に入ったときには、駆動輪3,
4の駆動トルクを小さくして、スリップを抑制する為
に、強制的に2速にシフトアップさせ、次にS88にお
いては、例えば、1000msまでカウントアップするカウ
ントアップ型のタイマTm(その計時時間をTmとす
る)がリセット後スタートされ、その後リターンする。
【0056】しかし、S86の判定が No で、2速にシ
フトアップした場合のエンジン回転数Ne2u が1500rp
m未満のときには、2速へのシフトアップによりエンジ
ン回転数Neが1500rpmよりも小さい値まで低下し
て、エンジンストールが発生する虞があり、それを防止
する為に、2速へのシフトアップを禁止すべくS87が
スキップされてそのままリターンする。
【0057】S81の判定が No のときには、フラグF
i(k) が1か否か判定し(S89)、その判定がYes の
ときは、タイマTmの計時時間Tmが所定値T1(例え
ば、500 ms)以下か否か判定し、その判定がYes のと
きには、S91において、マップM12に、車速Vと検
出スロットル開度とを適用して、現在の運転状態がマッ
プM12の領域Zに入っているか否か判定し(S9
1)、その判定がYes のときには、変速段を2速に保持
する指令信号を変速機制御ユニット70に出力し(S9
2)、その後リターンする。それ故、トラクション制御
実行開始後にも、領域Zにある限り、変速段が2速に保
持されることになる。
【0058】但し、変速マップが図21に示す通りであ
るので、運転状態が領域Zに入っていても、2速から1
速へのシフトダウンラインを低車速側へ超えない限り、
2速に維持されることから、変速機制御ユニット70に
おける変速制御の制御プログラムの構成如何では、S8
8、S89〜S92のステップを省略することも可能で
ある。
【0059】以上説明したエンジントラクション制御の
作用について説明する。図22に示すように、加速時に
エンジン駆動力が増加していくと、低摩擦路面を走行中
においては、駆動輪3,4のスリップ量Seが目標スリ
ップ量SET以上に増加し、エンジントラクション制御
が、時刻t0において開始され、エンジントラクション
制御実行状態になり、初回のスリップ発生状態のときに
はフラグFiが1に保持され、一連のトラクション制御
実行中は、フラグFeが1に保持される。このトラクシ
ョン制御の実行開始時には、前記の説明では説明を省略
したが、実際には、制御レベルFCが初回補正により+
3〜5程度増加補正されるため、エンジン駆動力が急減
され、その後、前記S59とS60で得られる目標TV
Oを用いた通常のエンジントラクション制御が継続的に
実行され、燃料カットと点火時期リタードを介して、エ
ンジン駆動力が減少していき、駆動力3,4のスリップ
が減少していく。
【0060】そして、スリップ量Seが収束していって
目標スリップ量SET以下に近づく頃、時刻t1以降、エ
ンジン駆動力は逓増され、スリップ量Seが目標スリッ
プ量SET以下の状態が所定時間(S40に記載の所定時
間T0で、例えば、2.0 秒)継続しない間は、エンジン
トラクション制御が継続される。時刻t2の付近におい
て、走行中の路面が低摩擦路面から実際に高摩擦路面に
移行した場合には、エンジン駆動力が低下しているた
め、スリップ量Seが非常に低い低スリップ状態になる
が、その後のエンジン駆動力の復帰に応じてスリップ量
Seが、鎖線Bで示すように、多少増加するものの、目
標スリップ量SET以下の状態を継続し、所定時間継続す
るとエンジントラクション制御が終了する。
【0061】ところで、走行中の路面が、依然として低
摩擦路面であっても、エンジン駆動力の極度の低下やブ
レーキ操作等に応じて、低スリップ状態になることがあ
る。この場合高摩擦路面の場合と同様に、エンジン駆動
力を復帰させると、低摩擦路面故に、点線Cで示すよう
に、スリップ量Seが急増してスピンを起こす可能性が
ある。
【0062】そこで、時刻t3においてスリップ量Se
の増加傾向が発生した時点で、フラグFをリセットして
S68の駆動力増加補正を中止し、このフラグFをリセ
ット後1.0 秒以内に、スリップ量Seが設定値Co以上
まで増加した場合には、依然として低摩擦路面が継続し
ていると判断し、スリップの急増を防止する為に、マッ
プM5から目標TVOを設定することで、時刻t4にお
いてエンジン駆動力を急減少させ、その後、時刻t3か
ら1.0 秒間の間は、スリップ量Seが設定値Co以上で
ある限り、マップM5から目標TVOを設定し、エンジ
ン駆動力を小さく維持し、その後、通常のエンジントラ
クション制御に移行するようにした。これにより、実線
Aで示すように、スリップ量Seが急増するのを確実に
防止することができる。
【0063】ところで、このトラクション制御は、図2
0のシフトアップ指令処理を特徴とするものであり、こ
の処理により、低摩擦路面を1速で走行中にトラクショ
ン制御実行状態に入り、車速Vとスロットル開度とをパ
ラメータとする運転状態が、マップM12の領域Zに入
っている場合であって、2速にシフトアップしても、エ
ンジン回転数Neが、エンジンストールガード回転数
(1500rpm)未満に低下しないことを条件として、強
制的に2速にシフトアップさせることにより、駆動輪
3,4に伝達される駆動トルクを小さくしてスリップを
抑制し、スリップ収束を促進することができる。
【0064】尚、今回のフラグFi(k) =1であると
き、マップM12の領域Z内にあるときには、変速段を
2速に保持するので、前記のスリップ抑制作用を持続さ
せることができる。特に、2速においては、1速の場合
と比較して、トラクション制御による駆動トルクの変化
幅も小さくなることから、トラクション制御を滑らかに
行うことが可能になる。
【0065】そして、前記運転状態がマップM12の領
域Z内であっても、2速へシフトアップした場合に、エ
ンジン回転数Neがエンジンストールガード回転数(15
00rpm)未満になる場合には、2速へのシフトアップ
を禁止するので、シフトアップに伴うエンジン回転数の
低下によってエンジンストールが発生したり、エンジン
ストールが発生しないまでもエンジン回転数の低下でエ
ンジンの制御性が低下するのを確実に防止することがで
きる。更に、3速や4速の高速段へは強制的にシフトア
ップしないため、駆動輪3,4の車輪速の急増により、
駆動輪3,4のスリップ量が過渡的に急増して、スリッ
プ抑制作用が損なわれることもない。しかも、高摩擦路
面を走行中には、前記2速へのシフトアップを実行しな
いので、高摩擦路面における加速性が低下することもな
い。
【0066】次に、前記実施例の一部を変更した変更態
様について説明する。 1〕 前記図11、図12における数値、S61の「1.
0sec」、S53における「2.0Km/H 」及び「0.3G」、S
55における「3.0Km/H 」等は一例を示すものに過ぎ
ず、夫々異なる値に変更してもよい。また、マップM5
〜マップM12も一例を示すものに過ぎず、これらに限
定されるものではない。また、図20のエンジンストー
ルガード回転数(1500rpm)も一例に過ぎず、これに
限定されるものではない。
【0067】2〕 自動変速機に対してLow レンジホー
ルドモードやLow レンジが設定されている場合には、図
20のS87の指令信号にも係わらず、1速に保持する
ように構成することが望ましい。
【0068】3〕 変速機制御ユニット70に通常の変
速マップ(例えば、図21のラインL12を除いた変速
マップ)と、シフトアップ指令処理用の変速マップであ
って、図20のラインL12により、1速から2速への
シフトアップを行うシフトアップ指令処理用変速マップ
を格納しておき、図20のS87では、所定時間(例え
ば、500 ms)の間、そのシフトアップ指令処理用変速
マップに基づいて変速制御する指令信号を出力するよう
に構成してもよい。
【0069】4〕 前記図20のシフトシップ指令処理
の代わりに、図23のシフトシップ指令処理を適用して
もよい。図23において、S100〜S102のステッ
プは、前記S80〜S82のステップと同様であるの
で、説明を省略する。S103では、現在の変速段n速
を(n+1)速にシフトアップした場合のエンジン回転
数Neuが、駆動輪の平均車輪速Vdと(n+1)速のギ
ヤ比等を用いて前記実施例と同様にして演算され、次
に、S104において、(n+1)速にシフトアップし
た場合のエンジン回転数Neuが、1500rpm(エンジン
ストールガード回転数)以上か否か判定し、その判定が
Yes のときには、変速段を(n+1)速にシフトアップ
し、所定時間(例えば、500 ms)の間継続させる指令
信号を、変速機制御ユニット70に出力するように構成
してもよい。
【0070】以上のように、トラクション制御開始時
に、次段の変速段へシフトアップすることにより、駆動
輪の駆動トルクを小さくして駆動輪のスリップ抑制を促
進することができ、S104のステップにより、前記実
施例と同様に、シフトアップに伴うエンジン回転数の低
下でエンジンストールが発生したり、エンジン回転数の
低下でエンジンの制御性が低下するのを確実に防止する
ことができる。
【0071】5〕 前記実施例における図2のエンジン
トラクション制御のメインルーチンは、一例を示すもの
に過ぎず、これの代わりに、既存の種々のエンジントラ
クション制御を適用してもよい。例えば、燃料カットの
みを介して行うエンジントラクション制御、燃料噴射量
制御を介して行うトラクション制御、点火時期リタード
を介して行うエンジントラクション制御、サブスロット
ルを介して吸気量を制御するエンジントラクション制御
にも同様に、本発明を、同様に適用することができ、ま
た、ディーゼルエンジンにおいて、燃料噴射量量又は燃
料噴射量時期を介して、トラクション制御を行うものに
も、本発明を適用でき、また、エンジンの代わりの電動
モータで駆動する場合におけるトラクション制御にも、
本発明を適用可能である。更に、本発明の趣旨を逸脱し
ない範囲において、前記実施例の一部に種々の変更を付
加して実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る車両のトラクションコントロール
装置の構成図である。
【図2】エンジントラクション制御のメインルーチンの
フローチャートである。
【図3】スリップ量検知処理のサブルーチンのフローチ
ャートである。
【図4】目標スリップ量設定処理のサブルーチンのフロ
ーチャートである。
【図5】スリップ判定処理のサブルーチンのフローチャ
ートである。
【図6】基本スリップ量基本値を設定したマップM0を
示した線図である。
【図7】係数k1を設定したマップM1を示す線図であ
る。
【図8】係数k2を設定したマップM2を示す線図であ
る。
【図9】係数k3を設定したマップM3を示す線図であ
る。
【図10】係数k4を設定したマップM4を示す図表で
ある。
【図11】エンジン制御用目標制御量演算処理のサブル
ーチンのフローチャートの一部である。
【図12】図11に続くフローチャートである。
【図13】目標TVOを設定したマップM5を示す線図
である。
【図14】TCS実行時の目標エンジントルクを設定し
たマップM6を示す線図である。
【図15】TCS非実行時のエンジントルクを設定した
マップM7を示す線図である。
【図16】制御レベルFCを設定したマップM8を示す
線図である。
【図17】点火リタード量を設定したマップM9を示す
線図である。
【図18】点火リタード量の最大値を設定したマップM
10を示す線図である。
【図19】燃料カット禁止領域を設定したマップM11
を示す線図である。
【図20】シフトアップ指令処理のフローチャートであ
る。
【図21】マップM12を示す線図である。
【図22】車輪速、エンジン駆動力、フラグ等のタイム
チャートである。
【図23】変更態様に係るシフトアップ処理のフローチ
ャートである。
【符号の説明】
1,2 前輪(従動輪) 3,4 後輪(駆動輪) 5 エンジン 6 自動変速機 14 インジェクタ 17 ディストリビュータ 50 トラクション制御ユニット 60 エンジン制御ユニット 70 変速機制御ユニット 51〜54 車輪速センサ 58 舵角センサ 61 エンジン回転数センサ 62 アクセルセンサ 63 スロットル開度センサ 64 モードスイッチ
フロントページの続き (72)発明者 平尾 知之 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 駆動輪の路面に対するスリップ抑制の為
    にエンジンの駆動力を制御するエンジントラクション制
    御を行うトラクション制御手段を備えた車両のトラクシ
    ョンコントロール装置において、 4輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、 前記トラクション制御手段によるエンジントラクション
    制御と併せて、自動変速機を次変速段へシフトアップさ
    せるように変速機制御手段に指令するシフトアップ指令
    手段と、 前記車輪速検出手段で検出された駆動輪の車輪速を受
    け、前記シフトアップ指令手段によりシフトアップした
    場合のエンジン回転数を推定し、そのエンジン回転数が
    所定回転数未満の場合には、シフトアップ手指令手段に
    対して、シフトアップを禁止するシフトアップ禁止手段
    と、 を備えたことを特徴とする車両のトラクションコントロ
    ール装置。
  2. 【請求項2】 駆動輪の路面に対するスリップ抑制の為
    にエンジンの駆動力を制御するエンジントラクション制
    御を行うトラクション制御手段を備えた車両のトラクシ
    ョンコントロール装置において、 4輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、 前記トラクション制御手段によるエンジントラクション
    制御と併せて、自動変速の変速段が1速であって変速マ
    ップの所定運転領域にあるとき、自動変速機を1速から
    2速へシフトアップさせるように変速機制御手段に指令
    するシフトアップ指令手段と、 前記車輪速検出手段で検出された駆動輪の車輪速を受
    け、2速へシフトアップした場合のエンジン回転数を推
    定し、そのエンジン回転数が所定回転数未満の場合に
    は、シフトアップ手指令手段に対して、シフトアップを
    禁止するシフトアップ禁止手段と、 を備えたことを特徴とする車両のトラクションコントロ
    ール装置。
  3. 【請求項3】 前記所定回転数は、エンジンストール防
    止の為に予め設定されたエンジンストールガード回転数
    であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
    車両のトラクションコントロール装置。
  4. 【請求項4】 前記トラクション制御手段は、燃焼カッ
    ト及び/又は点火時期リタードを介して、エンジンの駆
    動力を制御するように構成されたことを特徴とする請求
    項1又は請求項2に記載の車両のトラクションコントロ
    ール装置。
  5. 【請求項5】 前記トラクション制御手段は、駆動輪の
    スリップ量が目標値となるようにエンジンの駆動力を制
    御するように構成されたことを特徴とする請求項1又は
    請求項2に記載の車両のトラクションコントロール装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6330927B1 (en) 1999-08-09 2001-12-18 Kawasaki Jukogyo Kabushiki Kaisha Tire slip control device
WO2016158115A1 (ja) * 2015-03-31 2016-10-06 株式会社アドヴィックス 車両の運転支援装置
WO2018221747A1 (ja) * 2017-06-01 2018-12-06 三菱自動車工業株式会社 走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラム

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