JPH08177950A - 防振装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 強度が向上された樹脂製のブラケットを得
る。 【構成】 合成樹脂により一体的に成形された外筒一体
型のブラケット１２の内側に内筒金具１４が配置され、
内筒金具１４とブラケット１２との間に、弾性体１６が
配設される。オリフィス３６が主液室３４と副液室３８
との間を連通し、副液室３８の隔壁の一部をダイヤフラ
ム２６が構成する。弾性体１６に樹脂流れ込み防止カバ
ー３０が嵌装され、樹脂流れ込み防止カバー３０の外周
面側に補強板４０が嵌合されて、ブラケット１２に埋設
される。補強板４０は、直線状に延びアーム部４０Ｂを
有すると共に、円環状に湾曲させて形成された環状部４
０Ａを有している。従って、補強板４０が、樹脂製のブ
ラケット１２内に埋設されているので、ブラケット１２
の強度が向上することになる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば自動車、一般産
業用機械等に適用され振動発生部からの振動を吸収する
防振装置に関し、特に外筒及びブラケットを一体的な樹
脂成形品とした防振装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、車両の振動発生部となるエンジ
ンと振動受部となる車体との間には、エンジンマウント
としての防振装置が配設されていて、エンジンが発生す
る振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるの
を阻止するような構造となっている。

【０００３】この種の防振装置では、内筒の外周にゴム
材による弾性体を加硫接着すると共にこれを外筒内に挿
入し、外筒からの抜け止めのために、外筒の端部を絞り
加工するようになっている。

【０００４】そして、内筒及び弾性体を取り付けた後の
外筒をブラケットに圧入し、さらにブラケットから突出
して形成されたアーム部を自動車の車体にねじ止め等に
より連結して、この防振装置を車体側に取り付けてい
る。

【０００５】しかし、部品点数の削減、組立工数の低減
によるコストダウン及び、軽量化等の要請が近年強くな
り、部品の樹脂化が検討されるようになるのに伴って、
内筒を有した弾性体の外周側に樹脂を射出成形して、弾
性体の周囲に外筒一体形のブラケットを配置した構造
が、考えられるようになった。

【０００６】但し、ブラケットが樹脂製であるため、エ
ンジン側より衝撃的な大入力の振動を受けた場合等にお
いて、ブラケットの内筒及び弾性体が取り付けられた部
分と、アーム部の車体が連結された部分との間の強度
が、不十分となる虞を有していた。

【０００７】尚、樹脂製のブラケットの強度を向上する
為に、リブ等をブラケットに形成し、リブ等による形状
変更の効果を期待することが考えられるが、このような
手段では、十分な強度を得ることは出来なかった。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事実を考
慮し、強度が向上された樹脂製のブラケットを有する防
振装置を提供することが目的である。

【０００９】

【課題を解決するための手段】請求項１に係る防振装置
は、振動発生部及び振動受部の一方へ連結され且つ樹脂
で一体的に成形されるブラケットと、振動発生部及び振
動受部の他方へ連結され且つ前記ブラケットの内側に配
置される内筒と、前記ブラケットと前記内筒との間を繋
ぐように前記ブラケットと前記内筒との間に配設される
弾性体とを有する防振装置であって、前記ブラケット
は、前記内筒及び前記弾性体が内側に配置されている本
体部及び、この本体部から突出されて振動発生部及び振
動受部の一方へ連結される取付部を有し、前記本体部及
び前記取付部にわたって連続して形成された金属製の補
強材が、前記ブラケットに埋設された、ことを特徴とす
る。

【００１０】

【作用】請求項１に係る防振装置の作用を以下に説明す
る。

【００１１】振動発生部及び振動受部の一方にブラケッ
トが連結され、振動発生部及び振動受部の他方に内筒が
連結され、これらブラケットと内筒との間が弾性体を介
して連結される。

【００１２】以上より、振動発生部が振動を発生させた
場合、ブラケットあるいは内筒を介して振動が弾性体に
伝達され、弾性体の変形により振動が吸収されて内筒あ
るいはブラケットに連結された振動受部側に振動が伝達
され難くなる。

【００１３】また、本発明に係る防振装置の製造に際し
て、ブラケットが樹脂で一体的に成形されるので、防振
装置の軽量化が図れると共に、ブラケット及び外筒をプ
レス加工等で加工する必要がなくなって、部品点数の削
減、組立工数の低減によるコストダウンが図れることに
なった。

【００１４】さらに、内筒及び弾性体が内側に配置され
るブラケットの本体部と、振動発生部及び振動受部の一
方へ連結される取付部と、の間にわたって連続して形成
された金属製の補強材が、このブラケット内に埋設され
ている。

【００１５】つまり、樹脂製のブラケット内に金属製の
補強材が入ったことで、大きな力が加わった場合でも、
金属の塑性変形に近い形にブラケットが変形するのみ
で、ブラケットが破損したりする虞がなくなり、ブラケ
ットの強度が向上することになる。

【００１６】

【実施例】本発明の一実施例に係る防振装置を図１乃至
図５に示し、これらの図に基づき本実施例を説明する。

【００１７】図１に示すように、本実施例の防振装置１
０は、合成樹脂により一体的に成形された外筒一体型の
ブラケット１２を備えており、振動受部としての自動車
等の車両の車体（図示せず）側に、ブラケット１２の円
環状に形成された本体部１２Ａから取付部１２Ｂが一方
に突出して形成されており、この取付部１２Ｂに固定さ
れた埋込みナット１３を用いて、このブラケット１２が
ねじ止めらている。従って、ブラケット１２が車体に連
結されることになる。

【００１８】図１及び図２に示すように、このブラケッ
ト１２の本体部１２Ａの内側には、円管状に形成された
内筒金具１４がブラケット１２の軸線と平行となるよう
に配置されており、内筒金具１４に図示しないボルトが
ねじ込まれることにより、内筒金具１４と振動発生部と
なるエンジン（図示せず）とが連結されることとなる。

【００１９】また、これら内筒金具１４とブラケット１
２の本体部１２Ａとの間には、内筒金具１４とブラケッ
ト１２との間を繋ぐように、ゴム製の弾性体１６が配設
されており、内筒金具１４の外周面にこの弾性体１６が
加硫接着されている。そして、弾性体１６が内筒金具１
４を覆うと共に、補強用の一対のリング３２が弾性体１
６の外周側に埋設されている。

【００２０】これら一対のリング３２間の位置となる弾
性体１６の軸方向中間部であって、内筒金具１４の下側
には、凹部１８が形成されている。また、同じく弾性体
１６の軸方向中間部であって内筒金具１４の左右斜め上
側寄りには、凹部１８より小さい一対の凹部２４がそれ
ぞれ形成されている。

【００２１】弾性体１６の外周側の軸方向中間部には、
周方向に沿って延びる一対の溝２２がそれぞれ形成され
ている。これら溝２２の一端はそれぞれ凹部１８に連結
され、他端は一対の凹部２４にそれぞれ連結されてい
る。

【００２２】さらに、図３に示すように、弾性体１６に
は、弾性体１６の軸方向に沿って延びるストッパ部材１
７が連結されており、同じく弾性体１６からは、凹部２
４を形成する一対の薄肉の弾性膜であるダイヤフラム２
６が、ストッパ部材１７を挟んで延びている。

【００２３】また、以上のような構成から、弾性体１６
と一対のダイヤフラム２６との間には、弾性体１６の軸
方向に貫通する貫通孔２０が形成される形となってお
り、この防振装置１０の主振動方向である上下方向に内
筒金具１４が変位し易くなっている。

【００２４】さらに、図３に示すように、弾性体１６の
軸方向中間部には、弾性体１６の周方向に沿って延びる
幅広で浅い浅溝２８が形成されている。この浅溝２８に
は、凹部１８、溝２２及び凹部２４を弾性体１６の外周
面に沿って覆う、図３に示すような円管状のカバー材と
しての樹脂流れ込み防止カバー３０が、嵌装される。こ
の樹脂流れ込み防止カバー３０は、金属の丸パイプを所
定長さに切断して形成したものであり、軸線に沿った割
り３１が形成されており、内側から押し広げることによ
って軸方向から弾性体１６を挿入し易くしている。な
お、挿入後には、樹脂流れ込み防止カバー３０は弾性復
帰して弾性体１６に密着し、ブラケット１２と弾性体１
６との間の接合部分に介在されて配置されることにな
る。

【００２５】そして、樹脂流れ込み防止カバー３０の外
周面側には、例えば鋼等の金属製の補強材である補強板
４０が、嵌合されて配置されている。この補強板４０
は、一枚の板材の端部を相互に合わせて直線状に延びる
ように形成されたアーム部４０Ｂを有すると共に、樹脂
流れ込み防止カバー３０の外径とほぼ同一或いはこの外
径より若干小さい内径を有する円環状に板材の中央部を
湾曲させて形成された環状部４０Ａを有している。さら
に、この補強板４０のアーム部４０Ｂには、貫通孔４２
が穿設されていて、埋込みナット１３が入るようにされ
ている。

【００２６】尚、補強板４０は、一枚の板材の端部を相
互に合わせたアーム部４０Ｂを内側から押し広げること
によって環状部４０Ａ内への樹脂流れ込み防止カバー３
０の挿入を容易にしている。そして、挿入後の補強板４
０は、樹脂流れ込み防止カバー３０と同様に弾性復帰し
て樹脂流れ込み防止カバー３０に密着し、ブラケット１
２と樹脂流れ込み防止カバー３０との間の接合部分に介
在されて配置されることになる。

【００２７】すなわち、このように樹脂流れ込み防止カ
バー３０及び補強板４０が、弾性体１６の外周面側に配
置されているので、補強板４０の環状部４０Ａの外周
面、樹脂流れ込み防止カバー３０の外周面及び、これら
部材で覆われていない部分の弾性体１６の外周面が、ブ
ラケット１２の本体部１２Ａの内周面に接着されること
になる。そして、補強板４０のアーム部４０Ｂの周囲
が、ブラケット１２の取付部１２Ｂに接着されることに
なる。

【００２８】一方、樹脂流れ込み防止カバー３０が浅溝
２８に嵌装されると、図１及び図２に示すように、凹部
１８は樹脂流れ込み防止カバー３０に閉塞されて受圧液
室としての主液室３４を構成し、溝状の隙間である溝２
２は樹脂流れ込み防止カバー３０に閉塞されて制限通路
としてのオリフィス３６を構成し、一対の凹部２４は樹
脂流れ込み防止カバー３０にそれぞれ閉塞されて一対の
副液室３８を構成する。従って、このオリフィス３６
が、主液室３４と副液室３８との間を連通することとな
ると共に、一対の副液室３８の隔壁の一部を一対のダイ
ヤフラム２６がそれぞれ構成する。

【００２９】尚、これら主液室３４、オリフィス３６及
び副液室３８の内部には、例えば水、オイル等の液体が
封入されている。

【００３０】次に本実施例に係る防振装置１０の組立を
説明する。この防振装置１０の組立に際しては、弾性体
１６を内筒金具１４の周りに加硫接着して、図３に示す
ような状態にした後、樹脂流れ込み防止カバー３０に軸
方向からこの弾性体１６を挿入して、弾性体１６の浅溝
２８に樹脂流れ込み防止カバー３０を嵌合する。そし
て、樹脂流れ込み防止カバー３０に補強板４０の環状部
４０Ａを嵌合させる。

【００３１】次に、図４及び図５に示すように樹脂流れ
込み防止カバー３０及び補強板４０を嵌装した状態の弾
性体１６と、埋込みナット１３とを、図示しないブラケ
ット成形用のモールド内の所定位置に装填し、溶融した
合成樹脂をモールド内に射出する。これにより、合成樹
脂が、埋込みナット１３、弾性体１６、樹脂流れ込み防
止カバー３０及び補強板４０の外周部に接着され、埋込
みナット１３、弾性体１６、樹脂流れ込み防止カバー３
０及び補強板４０と一体化したブラケット１２が成形さ
れる。

【００３２】この際、モールドには、弾性体１６、樹脂
流れ込み防止カバー３０及び補強板４０と、モールドと
の間の隙間へ、合成樹脂を注入する為の樹脂注入口であ
るゲート（図示せず）が、設けられているが、補強板４
０の外周面に対向してゲートを設けることにより、補強
板４０に樹脂注入の際の樹脂の高い注入圧が加わること
になるので、弾性体１６には高い注入圧が加わることが
なくなる。従って、注入圧によって、弾性体１６が押さ
れて捲れたり、弾性体１６の端部から樹脂が弾性体１６
側に入り込むことがなくなる。

【００３３】以上より、ブラケット１２を成形する際の
成形条件を調整をする必要がなくなり、防振装置１０の
加工性が向上して製造コストの低減が図れる。

【００３４】さらにこの際、注入圧に押されて樹脂流れ
込み防止カバー３０が弾性体１６の外周に密着し、凹部
１８、溝２２及び凹部２４への樹脂材料の侵入が防がれ
るので、ブラケット１２と弾性体１６との間に、容易に
主液室３４、副液室３８及びオリフィス３６を作ること
ができる。

【００３５】その後、ブラケット１２をモールドから取
り出し、ブラケット１２に形成される図示しない液体注
入口より内部に所定の液体を注入し、図示しないリベッ
トにて封止して防振装置１０の組立が完了する。

【００３６】このようにして完成された防振装置１０の
ブラケット１２を自動車の車体側にねじ止めして連結
し、また、内筒金具１４をボルトを介してエンジンに連
結する。そして、この防振装置１０の車体への組み込み
に際して、エンジンの荷重による力が内筒金具１４に加
わる為、内筒金具１４は、ブラケット１２とほぼ同軸と
なる。

【００３７】次に本実施例の作用を説明する。内筒金具
１４に搭載されるエンジンが作動すると、エンジンの振
動が内筒金具１４を介して弾性体１６に伝達される。弾
性体１６は吸振主体として作用し、弾性体１６の内部摩
擦に基づく制振機能によって振動を吸収し、車体側に振
動が伝達され難くなる。

【００３８】また、弾性体１６の変形に伴って主液室３
４が拡縮し、これに合わせて一対のオリフィス３６を介
して繋がる一対の副液室３８がそれぞれダイヤフラム２
６により拡縮するので、オリフィス３６内を液体が流通
して、液体流動の粘性抵抗及び液柱共振に基づく減衰作
用で、防振効果を向上することができる。

【００３９】さらに、内筒金具１４及び弾性体１６が内
側に配置されているブラケット１２の本体部１２Ａと、
車体に連結される取付部１２Ｂと、の間にわたって連続
して形成された金属製の補強板４０が、樹脂製のブラケ
ット１２内に埋設されているので、防振装置１０に大き
な力が加わった場合でも、金属の塑性変形に近い形にブ
ラケット１２が変形するのみで、例えばブラケット１２
の本体部１２Ａと取付部１２Ｂとの間で破損したりする
虞がなくなり、ブラケット１２の強度が向上することに
なる。

【００４０】また、本実施例に係る防振装置１０の製造
に際して、ブラケット１２が樹脂で一体的に成形される
ので、防振装置１０の軽量化が図れると共に、ブラケッ
ト及び外筒をプレス加工等で加工する必要がなくなっ
て、部品点数の削減、組立工数の低減によるコストダウ
ンが図れることになる。

【００４１】尚、上記実施例において、振動受部となる
車体側にブラケット１２を連結し、振動発生部となるエ
ンジン側に内筒金具１４を連結するような構成とした
が、この逆の構成としても良い。

【００４２】また、上記実施例において、内筒を金属製
の金具としたが樹脂製としてもよく、さらに、上記実施
例で用いられる樹脂材料の種類としては、ＡＢＳ、ポリ
アセタール等が考えられるがこれらに制限されるもので
はない。

【００４３】一方、液体注入口は、予め樹脂流れ込み防
止カバー３０及び補強板４０に設けておくこととしても
良く、或いはブラケット１２の成形後に液体注入口を穿
設し、穿設後に、液体を注入してリベットで封止するよ
うにしても良い。

【００４４】さらに、上記実施例では液室を有した防振
装置を例として説明したが、液室が無いタイプの防振装
置に本発明を適用できることは言うまでもなく、副液室
を一つ有するタイプであってもよい。そして、本実施例
では、補強材を補強板４０としたが、必ずしも板状の材
料に限定されるものではなく、補強材のブラケットへの
埋設も、本実施例のように補強板４０を完全にブラケッ
ト１２に埋設した状態とする必要はなく、部分的に補強
材がブラケットから出ている状態としてもよい。

【００４５】他方、実施例において、自動車に搭載され
るエンジンの防振を目的としたが、本発明の防振装置は
例えば自動車のボディマウント等、あるいは自動車以外
の他の用途にも用いられることはいうまでもなく、ま
た、弾性体等の形状及び寸法なども実施例のものに限定
されるものではない。

【００４６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の防振装置
は上記構成としたので、強度が向上された樹脂製のブラ
ケットを有するという優れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る防振装置を示す軸線に
直角な断面図である。

【図２】図１の２−２矢視線断面図である。

【図３】本発明の一実施例に係る防振装置に適用される
弾性体、樹脂流れ込み防止カバー及び補強板の分解斜視
図である。

【図４】本発明の一実施例に係る防振装置に適用される
補強板等と嵌合された状態の弾性体を示す軸線に直角な
断面図である。

【図５】本発明の一実施例に係る防振装置に適用される
補強板等と嵌合された状態の弾性体を示す側面図であ
る。

【符号の説明】

１０ 防振装置 １２ ブラケット １２Ａ 本体部 １２Ｂ 取付部 １４ 内筒金具 １６ 弾性体 ４０ 補強板（補強材）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 振動発生部及び振動受部の一方へ連結さ
   れ且つ樹脂で一体的に成形されるブラケットと、振動発
   生部及び振動受部の他方へ連結され且つ前記ブラケット
   の内側に配置される内筒と、前記ブラケットと前記内筒
   との間を繋ぐように前記ブラケットと前記内筒との間に
   配設される弾性体とを有する防振装置であって、 前記ブラケットは、前記内筒及び前記弾性体が内側に配
   置されている本体部及び、この本体部から突出されて振
   動発生部及び振動受部の一方へ連結される取付部を有
   し、 前記本体部及び前記取付部にわたって連続して形成され
   た金属製の補強材が、前記ブラケットに埋設された、 ことを特徴とする防振装置。