JPH0762461B2 - 内燃機関用ノッキング検出装置 - Google Patents

内燃機関用ノッキング検出装置

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JPH0762461B2
JPH0762461B2 JP26698985A JP26698985A JPH0762461B2 JP H0762461 B2 JPH0762461 B2 JP H0762461B2 JP 26698985 A JP26698985 A JP 26698985A JP 26698985 A JP26698985 A JP 26698985A JP H0762461 B2 JPH0762461 B2 JP H0762461B2
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寛 原口
浩二 ▲榊▼原
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日本電装株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はエンジンに発生するノッキング(以下ノックと
記す)の発生状態を検出する装置に関し、主にこの装置
はノック状態を検出し、点火時期あるいは空燃比,吸気
圧力等のノック制御要因を制御するノック制御装置(以
下、ノックコントロールシステムと記す)に用いられる
ものである。
〔従来の技術〕
一般に、ノックコントロールシステムとは、ノックによ
って発生するエンジン本体の振動をノックセンサにより
検出し、この検出結果に応じて、点火時期を進角・遅角
させることにより、点火時期を常にノック限界付近に制
御し、エンジンの出力、燃費を向上させるものである。
このようなノックコントロールシステムにおいては、例
えば特開昭58−7538号公報に示されるように、ノックセ
ンサからいかに精度良くノックを検出するかが非常に重
要である。
現在、量産化されているノックコントロールシステムに
おいては、コスト、信頼性の面から主としてエンジン本
体の振動を検出するタイプのノックセンサが用いられて
いる。このようなタイプのノックセンサは、エンジンの
機械振動ノイズの影響を受けるため、振動ノイズが大き
くなる高速回転域でSN比が悪化し、従って高速ノックの
検出が非常にむずかしくなる。
さらに、ノックセンサの製作公差およびその経時変化等
によりセンサ出力特性が変化するとともに、エンジンの
個体差およびその経時変化等によりエンジンの振動伝達
特性が変化し、その結果センサ出力が大きくばらついて
しまう。
従って、エンジンあるいはセンサのばらつき及びそれら
の経時変化を考慮すると、高速ノックを検出することは
困難であり、実質的に高速域でノックコントロールをカ
ットしているのが現状である。
また低中速域では、エンジンに損傷を与えるような非常
に大きなノックは検出できても、上に述べたようなばら
つき及び経時変化による制御時のノック音が大きくばら
つくため、運転者に不快感を与えるような大きなノック
音が発生する場合もしばしばあった。
上記問題を解決するために、たとえば筒内圧センサ、燃
焼光センサ等の高SN比を目指したセンサが、実験室レベ
ルで検討されていることは周知の事実である。このよう
なセンサは現在では非常にコストが高くつき、信頼性的
にまだ多くの問題を残しているのも事実である。しか
し、仮にコスト、信頼性の問題が解決されたとしても、
センサ製作公差および経時変化の問題が残る。
また、確かにこのようなセンサは原理的にエンジンの機
械振動ノイズを受けないため、高速域のSN比が改善され
ると予想されるが、エンジンの発生する振動ノイズは機
械ノイズだけではなく、燃焼に起因する圧力振動ノイ
ズ、燃焼光ノイズも多い。
これらの燃焼ノイズは、当然エンジンの個体差により変
化するものであるから、基本的にエンジンのばらつき、
経時変化の影響を免れない。すなわち、上記問題点はこ
のようなセンサを使用しても根本的には対策できない。
〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明は上記問題点に鑑み、ノックセンサあるいはエン
ジンのバラツキ、経時変化等に左右されることなくノッ
クを精度良く検出する装置の提供的とするものである。
〔問題点を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本発明の第1番目の発明
は、エンジンのノックを検出するためのノックセンサ
と、このノックセンサの信号からこの信号の最大波高値
に対応する例えば整流積分値等のノック強度値Vを取り
出すノック強度値検出手段と、このノック強度値Vを多
燃焼サイクルサンプリングした時に得られる前記ノック
強度値Vの頻度分布が、前記ノック強度値Vの頻度の所
定の累積%点VL〜VHの範囲内で略対応正規分布か否かを
判別する判別手段、および前記略対数正規分布か否かを
判別するための前記所定の累積%点VL〜VHの範囲でエン
ジン条件に応じて変更する分布形状変更手段とを含み、
前記判別手段の判別結果に応じて複数サイクルに渡る平
均的なノック状態を検出するノック状態検出手段とを備
えている。
〔作用〕
以下、本発明の概要および本発明の技術的な根拠を詳細
に説明する。
上記問題点を解決するために、本発明者らは先に、特願
昭59−99898号においていくつかの方法及び装置を提案
した。この特願昭59−99898号では、ノックセンサの所
定区間における最大波高値VMAXがノックなしの状態で多
数個サンプリングした場合にはひとつの略対数正規分布
を形成し、ノックありの状態でサンプリングした場合に
は互いに分散の異なる2つの略対数正規分布の組合せ分
布になることに着目したものである。
ここで、上記発明では、センサ信号の最大波高値VMAX
必要とし、最大波高値VMAXを検出するためには、ピーク
ホールド回路もしくはそれに変わってピークを検出する
ためのマイクロコンピュータ(以下マイコンと記す)の
ソフトウェア等が必要となる。現在、量産ないし研究開
発中のノックコントロールシステム中には、最大波高値
VMAXを直接検出していないタイプのシステムも多いた
め、そのようなシステムにおいては、別途VMAX検出用の
回路もしくはマイコンのソフトウェア等を追加する必要
がある。
この点に鑑み、本発明者らはその後詳細な実験及び考案
を行うことによって、必ずしも最大波高値VMAXを検出す
る必要はなく、ノック特有の周波数成分(一般的には6
〜9KHzくらいであるが、エンジンの構造によっては、よ
り低周波側に存在する場合も、10KHz以上のより高周波
側に存在する場合もある。)を含んだ最大波高値に対応
するノック振動部分の強さを示す量、例えば、ノック振
動出力を積分した値、もしくはノック振動出力と所定レ
ベルとを比較した場合に得られるパルス列のパルス数、
またはその積算値、あるいはノック振動出力の実効値
(以下ノック強度値Vと呼ぶ)を検出すれば良いという
ことを発見した。
さらに、これらのノック強度値の分布的性質を比較検討
することにより、これらのノック強度値に共通するより
一般的な性質を見い出した。本発明はこのノック強度値
に共通する性質を利用して、ノックセンサの種類、ノッ
ク強度値の取り出し方法にかかわらず、常に正確なノッ
ク状態を検出する装置を提供するものであり、これらの
ノック強度値Vおよびその性質について説明する前に、
まずその発見の基になった最大波高値VMAXの性質につい
て簡単に説明する。
第1図において、(1)図はエンジン本体の振動のうち
6〜9KHzの周波数成分のみを取り出した時のノックセン
サ信号である。この信号のエンジン燃焼区間内(たとえ
ば10゜〜90゜ATDC)における最大波高値VMAXを多燃焼サ
イクルサンプリングすると、(2)図のような頻度分布
が得られる。このVMAXを対数変換し、再度、頻度分布を
描かせると、ノックが全くない状態でサンプリングした
場合には、(3)図のようにおよそ正規分布に近い分布
になり、ノックがある程度発生した状態でサンプリング
した場合には、(4)図のように高い出力側で正規分布
からはずれてくる。
このことをより明確に示すために、対数正規確率紙とい
うものを用いて説明する。一般に頻度分布が正規分布な
らば、その累積度数分布は、第2図の(1)図のように
累積50%点を変曲点とするS字型のカーブになる。この
正規分布特有のS字型のカーブが、プロットした時にち
ょうど一直線上に並ぶように累積度数の目盛りを細工し
た用紙が同図の(2)図に示されるような正規確率紙で
ある。このような正規確率紙(特性値が対数値になって
いる場合には対数正規確率紙と呼ばれる)自体は統計解
析の分野で既に知られているため、用紙のくわしい説明
は省略するが、後の説明に直接関係する用紙の性質につ
いてのみここで記述する。
正規確率紙の縦軸すなわち累積度数の目盛りは、50%点
に対して両端の目盛りに向かえば向かうほど50%点から
の離れ方が大きくなる(たとえば70%と60%の目盛りの
間隔は60%と50%の目盛りの間隔よりも長い)が、50%
の目盛りに対して上下対称の目盛りになっている。(た
とえば、10%の目盛りと90%の目盛りとは50%の目盛り
に対して等距離にあり、一般にα%の目盛りと(100−
α)%の目盛りとは50%の目盛りに対して等距離にあ
る。)もうひとつの正規確率紙の重要な性質は、この用
紙にプロットしたときの直線の傾きが標準偏差σの逆数
(すなわち1/σ)に一致することである。従って直線が
横に寝れば寝るほど分散の大きな分布であることを意味
する。
さて、この対数正規確率紙にノックなしの状態での最大
波高値VMAXの分布をプロットすると、第2図の(2)図
の「ノックなし」で示されるように一本の直線になる。
このことは、ノックなしの最大波高値VMAXがひとつの対
数正規分布を形成することを意味する。
これに対して、ノックがある頻度で発生しているノック
ありの状態(すなわちノックサイクルと非ノックセイク
ルとがある割合で混在している状態)の分布は、同
(2)図の「ノックあり」で示されるように途中で傾き
が変わる折れ線になる。
すなわち、比較的低い出力側で形成される分散の小さい
対数正規分布と、比較的高い出力側で形成される分散の
大きな対数正規分布が重なった形になっている。
さて、最大波高値VMAX以外のノック強度値Vが、ノック
なしの状態でおよそひとつの対数正規分布に近似できる
性質を有するノック強度値の例を列挙すると、以下のよ
うになる。
第1は、所定区間(たとえば10゜〜90゜ATDC)の振動出
力を整流・積分した値である。この値は、積分器の時定
数を変えることにより、そのサイクルの平均振動出力、
あるいはそのサイクルの振動出力の積算値を表すことに
なるが、いずれの場合もそのサイクルの振動の強度に対
応した値となる。
第2は、所定区間の振動出力をあるしきい値(たとえば
振動中心によりやや上のレベル)と比較した場合に発生
するパルス列の数、あるいはパルス列の積算値である。
この値もそのサイクルの振動強度に対した値である。こ
の強度値は、最大波高値VMAXのとり得る範囲に比べてそ
の変化する範囲が限られているため、精神的にやや劣る
が、その取り扱いが簡単だというメリットを持ってい
る。
第3の例は、所定区間の振動出力の実効値(RMS)であ
る。このRMSは時刻tの振動レベルをX(t)、所定時
間の特定長をTとして で表されるが、この値もまたそのサイクルの振動の強さ
に対応している。
以上3つの例から、一般に振動強さに対応する強度値V
について、ノックなしの状態での分布が略対数分布にな
ると考えるのは自然で合理的である。たとえば、ある強
度値Vが、同じ強度値の仲間である最大波高値VMAXに対
しておよそ V=a・(VMAX(a,nは任意の実数) の関係で近似できるならば、 log V=log a+n log VMAXとなって、 log VMAXと同様、log Vも正規分布(すなわちVが対数
正規分布)になることは明らかである。
本発明者らは、次に、ノックあり、なしの状態で強度値
Vがどのような分布的な差を有するかを調べた。
第3図は、エンジンのひとつの気筒に筒内圧センサを取
りつけ、この信号から前記第1の例として挙げた積分値
∫Vを取りだしたときの分布の例である。筒内圧センサ
の信号のうちノック特有の周波数成分(6〜9KHz)のみ
バンドパスフィルタで取り出し、これを半波整流後10゜
ATDCから5msecの時定数で積分し、90゜ATDCのタイミン
グで取り込んだ値である。第3図から判るように、ノッ
クなしの状態で分布は、対数正規確率紙上で1本の直線
で表されている。すなわちひとつの対数正規分布を形成
している。これに対して、ノックありの状態での分布
は、値の低い側で確かに直線になっているが、ある点で
急激に折れ曲がった曲線になっている。この分布上の差
をエンジン本体の振動の最大波高値VMAX分布上の差と比
較する。
第4図は、第3図と同じ条件下でエンジン本体の振動の
最大波高値VMAXをサンプリングしたときの分布である。
すなわちエンジンのブロックに取りつけた圧電型ノック
センサの信号を中心周波数7.5MHz、帯域幅Q=20dBのバ
ンドパスフィルタでフィルタリングし、この信号の10゜
〜90゜ATDC間の最大波高値VMAXを前述の筒内圧センサを
取りつけた気筒についてのみサンプリングしたときの分
布である。データのサンプリングは筒内圧センサと振動
センサとで同時に行っているため、全くノック状態は同
一である。
第3図と第4図を比較すると、次のようなことが判る。
まず第1に、第3図の筒内圧センサ積分値∫Vの方が、
第4図の振動センサの最大波高値VMAXより折れ曲がり方
が明瞭であること、第2の筒内圧センサの積分値∫Vの
方は出力の高い側で曲線的に折れ曲がっているのに対
し、振動センサの最大波高値VMAXの方がほぼ直線的に折
れ曲がっている点である。後に詳しく説明するが、この
現象は筒内圧センサの方がノイズとノックを識別する能
力が高い、すなわちSN比が高いことを意味しているので
ある。
しかしながら、第3図と第4図の比較において最も重要
な点は、それぞれの折れ曲がり方に前述のような差があ
るものの、折れ曲がりの発生する累積%が∫VでもVMAX
でもほとんど変わっていない(この例では約70%)とい
うことである。これは、折れ曲がり点に相当する累積%
がノック状態を識別するための非常に有効で普遍的な指
標になり得ることを示している。なぜならば、全く種類
の異なるノックセンサでしかも異なるノック強度値を取
り出したのにもかかわらず、折れ曲がり点の累積%がほ
ぼ等しいからである。
実は、後述するように、この折れ曲がり点に相当する累
積%は、全サイクル中の非ノックサイクル(ノイズサイ
クル)の割合、言い換えれば、残りの%(この例では10
0−70=30%)がノックサイクルの割合を示しているの
である。
これを第5図を用いて詳細に説明する。第5図の(1)
図は、ノック検出のSN比が非常に高く、ノックサイクル
と非ノックサイクル(ノイズサイクル)のノック強度値
Vが完全に分離できると仮定したときに、大小2つのノ
ック状態に対応する頻度分布(上段に図示)と、正規確
率紙上にそれぞれに対応する累積度数分布(下段に図
示)とを描いたものである。横軸は、対数スケールにな
っている。上段の頻度分布において、実線はノイズとノ
ックの割合が90:10、すなわち全体の10%がノックサイ
クルであるような比較的小さなノック状態の分布、破線
は全体の40%がノックサイクルであるような比較的大き
なノック状態の分布である。実際のエンジンのノック
は、ノックが大きくなるにつれてノックの発生頻度が増
すと共に、ノック強度値自体も大きくなるため、破線の
分布のうちノックサイクルに対応する分布は、実際に
は、より値の大きい方へずれる。しかし、ノック状態が
大きくなるとノックの発生頻度も必ず増えるため、ノッ
ク頻度だけで議論しても本質を全く失わない。
上段の各ノック状態に対応する累積度数分布(すなわ
ち、ノイズの分布とノックの分布をひとつの集団と見な
して値の小さい方から累積していったときの分布)を対
数正規確率紙にプロットすると下段のようになる。この
図から判るように、それぞれ低い値の方から見るとある
点までほぼ直線でその点から急激に折れ曲がるような下
に凸の曲線になっている。そして、その折れ曲がりが発
生する点の累積%は、いずれの場合にもノイズの発生割
合を示している。すなわち残りの%がノックの発生割合
を示しているのである。
次に同じノックの状態で、ノックとノイズの識別が非常
に悪くなった状態、すなわち、SN比の低いセンサを使用
した場合あるいはSN比の悪いノック強度値を選択した場
合を想定してみる。第5図の(2)図の実線はノックの
発生頻度が10%(ノイズとノックき比率が90:10)のと
きにSN比の良いセンサでサンプリングした分布を表し、
破線は同じノック状態で、SN比の悪いセンサ、もしくは
SN比の悪いノック強度値を選択した場合の分布である。
さらに対応する累積分布が下段に示されている。この図
より、SN比の良いセンサの分布にある点から曲線的に折
れ曲がるが、SN比の比較的悪い場合には、途中から折れ
曲がる2つの直線で近似できることが判る。そしてどち
らの場合も折れ曲がりの発生する累積%はほぼ同じであ
ることが判る。この累積%はやはりノイズの発生割合を
示しており、従って残りの%はノイズの発生割合を示し
ているのである。
すなわち、多少SN比が悪いセンサもしくはノック強度値
を選択しても、SN比の比較的高いセンサもしくはノック
強度値を選択しても、いずれの場合にも折れ曲がりの発
生する累積%は正確にノックの発生率、従ってノック状
態を示すことができるのである。
たとえば、第5図の(2)図の破線の頻度の分布のよう
に、ノイズの分布とノックの分布が重なり合った状態
(すなわちSN比の悪い状態)では、重なった部分のひと
つひとつのノック強度値について、これがノイズなのか
ノックなのかを個別に識別するは不可能である。すなわ
ち、従来のようにあるノック強度値のしきい値をきめ
て、これ以上の出力がでたらノック、これ以下がノイズ
というような方法では、全く識別できないのである。し
かしながら、ここで述べたような折れ曲がりの点の累積
%に着目すれば、このような場合でもノック状態を正確
に検出することができる。
以上、述べてきたように、対数正規確率紙上での折れ曲
がりの累積%に着目すれば正確にノック状態を検出する
ことができる。そして、これまで述べてきた性質をよく
考察すれば、これをより一般的な性質としてとらえるこ
とができる。
すなわち、ノックありの状態での分布が対数正規確率紙
上で急に折れ曲がるという事実の本質は、比較的低い出
力値を持ち、そのほとんどがノイズ集団と見なせるよう
なデータだけから推定したひとつの分布に対して、高出
力側のデータがその分布の母集団に属さないような形
で、推定値からはずれてくるということである。そして
その分布がどの点からデータがはずれてきたかを知るこ
とにより、ノックの状態と正確に検出することができ
る。つまり、本質的には、分布が略対数分布として近似
できなくても良いのである。
もちろん、サンプリングしたデータのすべてがノックで
ある状態、すなわち、全サイクルがノックしているよう
な特大のノック状態は、先に述べた方法では識別できな
い。しかしながら、そのような特大のノック状態は従来
の方法(たとえばノック強度値があるしきい値を超えた
らノックと判定するような方法)でも充分識別可能であ
るため、このような方法と並用すれば全く問題にならな
い。また、このような特大のノック状態ではデータの分
散が極端に大きくなるため、分散をモニタする方法を追
加すれば、従来の方法を並用する必要もなくなる。
さて、以上、述べてきた方法を実験室用装置(たとえば
ノックモニタ計測器)として実現することはいとも簡単
である。データをサンプリングする機能、これを対数変
換する機能、さらに累積度数分布になおして折れ曲がり
の累積%を求める機能が、マイコン利用することにより
実現できることは説明を要しない。
しかしながら、本発明を実際のノックコントロールシス
テムに適用するためには、さらに工夫する必要がある。
すなわち、実際のエンジンでは、より早くノック状態を
検出する必要があるし、しかも車載用マイコンの限られ
たROMとRAMの中に制御アルゴリズムを入れ込む必要があ
る。そのためには、わざわざ多数のデータサンプリング
せずに、しかも対数変換せずに、より簡単に折れ曲がり
の発生する累積%を求めるようにすることが望まれる。
以下に述べるのは、そのような方式の一例である。もち
ろん、その他の方式についても様々考えることができ
る。
では、以下その方式について第6図を用いて説明する。
第6図の(1)図は、制御目標よりノックが小さい状態
におけるlog Vの累積分布(上段の対数正規確率紙上に
図示)とそのときの頻度分布(下段に図示)を示したも
のである。同図の(2)図は、逆に制御目標より大きな
ノック状態での累積分布と頻度分布を示したものであ
る。今、全サイクル中10%の頻度でノックが発生してい
る状態(従って残りの90%が非ノックサイクル)を制御
目標のノック状態とする。このとき、目標より小さいノ
ック状態での累積度数の分布は(1)図の上段のように
対数正規確率紙上で累積90%点より高い出力側で折れ曲
がる。従って90%点より低い出力側では1本の直線(す
なわち、ひとつの対数正規分布)と見なせる。
そこで今、対数正規確率紙上の累積50%点、すなわち頻
度分布のメディアン値Mを想定し、このMに対して対数
軸上で上下等距離にある2つのしきい値VL、VHを考え
る。対数軸上で等距離ということは実軸上で等比関係に
ある(log VH−log M=log M−−log VL、すなわちVH/M
=M/VL)。このとき、制御目標のノック発生頻度10%と
同じ数値の頻度だけノック強度値がVLを下回るように下
側のしきい値VLを設定したとする。すなわち累積10%点
にVLを設定したとする。すると、第6図の(1)図のよ
うにノック状態が目標値よりも小さい場合には、対数正
規確率紙の性質によって上側のしきい値VHは累積90%点
に一致する。従って、ノックが目標より小さい場合に
は、ノック強度値Vが下側のしきい値VLを下まわる頻度
と、上側のしきい値VHを上まわる頻度が度しくなる。
(この場合は10%) ところが、同図の(2)図のように目標より大きなノッ
ク状態では、累積90%よりも低い%のところで折れ曲が
るため、上側のしきい値VHは累積90%に一致せず、より
低い累積%に対応する。すなわち、この上側のしきい値
VHをこえる頻度が増える。(2)図の上段の図で示せば
両矢印の分だけ頻度が増えるわけである。従って、ノッ
クが目標より大きい場合には、ノック頻度値Vが上側の
しきい値VHを超える頻度の方が、下側のしきい値VLを下
まわり頻度よりも大きくなる。
以上に述べたことから、ノック強度値Vを所定サイクル
の間モニタし、下側のしきい値VLと上側のしきい値VH
の関係を等比な関係(M/VL≒VH/M)に選定して、このV
が下側のしきい値VLを下まわった回数NLと上側のしきい
値VHを上まわった回数NHとを比較することにより、ノッ
ク強度値Vの頻度分布が所定の累積%点VL〜VHの範囲内
で略対数正規分布であるか否かを判別することで、(ノ
ック強度値Vの頻度分布が所定の累積%点VL〜VHの範囲
内で略対数正規分布である時には、前述した第6図
(1)に示すごとく、ノック状態が目標値より小さい
が、ノック強度値Vの頻度分布が所定の累積%点VL〜VH
の範囲内で略対数正規分布を外れた時には、前述した第
6図(2)に示すごとく、ノック状態が目標値より大き
くなることから)、ノック状態が目標より大きいか小さ
いかと判断することができる。
残された課題は、VLとVHを設定することである。以下そ
の設定方法について述べる。
今、累積50%点Mをデータサンプリングすることなし
に、その近似値VMを求めることを考える。累積50%点M
はノック強度値VがそのMを超える確率と、逆に下まわ
る確率とが等しいような点である。そこで、ノック強度
値Vが入力される毎に、そのVとある値VMとを比較し、
Vの方が大きかったら、VMをΔVMだけ増加させ、逆に小
さかったら、VMを同じ量ΔVMだけ減少させるようにVM
逐次更新していけばVMは累積50%点Mに収束する。すな
わち、わざわざデータをサンプリングして分布を求めな
くても累積50%点Mを求めることができる。
次に下側のしきい値VLを求めることを考える。VLは累積
10%の点であるから、ノック強度値VがVLを下まわる確
率が1/10、逆にVLを上まわる確率が9/10の点である。す
なわち、それぞれの確率が1:9になる点である。そこ
で、累積50%点Mを求めたのと同じような方法で求める
ことを考える。ノック強度値Vが入力される毎に、その
Vとある値VLとを比較し、Vの方が大きかったらVLをΔ
VLだけ増加させ、逆に小さかったからVLをΔVLの9倍の
量9・ΔVLだけ減少させるようにVLを逐次更新していけ
ば、VLは累積10%点に収束する。なぜなら、実際の累積
10%点においてのみVLを増加・減少させる期待値が0に
なるからである(9/10×ΔVL−1/10×9・ΔVL=0)。
すなわち、増加量と減少量の比率を換えることにより、
原理的には任意の累積%点にその値を収束させることが
できる。
しかしながら、累積50%点のように増加量と減少量がほ
ぼ等しいような累積%点を求める場合には問題にならな
いが、累積50%点から遠く離れた累積%点(たとえば10
%あるいは90%点)を求める場合には、増加量と減少量
の比率が大きくなりすぎ、収束値付近でのハンチングが
心配される。従って本発明ではVLを求める他の方法を提
案しておく。
いま、ノック強度値Vとある値VLと所定サイクル数Cの
間だけ連続的に比較する。そしてノック強度値Vがその
間で1回でもVLを下まわったならば、VLをΔVLだけ減少
させ、その間ずっとVの方がVLを上まわり続けた場合に
限りVLをΔVLだけ増加させることにより、所定サイクル
数C毎にVLを逐次更新していくことを考える。増加・減
少の量が同じであるから、VLは次のような確率関係の点
に収束する。すなわち、ノック強度値VがVLの収束値を
下まわる確率をPとして、(1−P)=1−(1−
P)の関係で示される点に収束する。累積10%点にVL
を収束させるためには、P=0.1としてサイクル数cを
約7サイクルにすれば良い。この方法により、累積50%
点から遠く離れた累積%点の値を精度よく逐次的に求め
ることができる。
こうして累積50%点VM及び下側のしきい値VLを求めるこ
とができたので、上側のしきい値VHは、VM/VL=Aとし
てVH=VM・A(=VM 2/VL)で簡単に求めることができ
る。
以上述べてきた方式により、データサンプリングせず
に、しかも対数変換せずに簡単に折れ曲がりの累積%点
を求めることが可能になる。
〔実施例〕
以下実施例に従い、本発明装置およびその動作について
詳細説明する。
第7図は本発明の一実施例を示す構成図である。図にお
いて、1は4気筒4サイクルエンジン、2はエンジンの
基準クランク角度位置(たとえば上死点)を検出するた
めの基準角センサとエンジンの一定クランク角度毎に出
力信号を発生するクランク角センサとを内蔵したディス
トリビュータ、3は制御回路10から出力される点火時期
制御信号を受けてイグニッションコイルへの通電遮断を
行うイグナイタ及びコイルである。
4はエンジンのノック現象に対応するエンジンゴロック
の振動を圧電素子等によって検出するためのノックセン
サ、5はエンジンの吸入空気量を検出し、これに応じた
信号を出力するエアフローメータ、6はスロットル角度
センサに連結されたスロットル弁、7は制御回路10で決
定された燃料噴射時期及び燃料噴射時期に基づいて吸気
マニホールドに燃料を噴射するためのインジェクタ、8
は過給を行うためのターボチャージャ、9は排気ガスの
空燃比が理論空燃比に比べ濃い(リッチ)が薄い(リー
ン)かに応じて出力信号を発生するO2センサ、10は前記
各センサからの入力信号状態に応じてエンジンの点火時
期及び空燃比を制御するための制御回路である。
次に制御回路10の詳細構成及び動作を第8図に従って説
明する。第8図において10−1は点火時期及び燃料噴射
量を演算するための中央処理ユニット(CPU)で8ビッ
ト構成のマイクロプロセッサを用いている。10−2は制
御プログラム及び演算に必要な制御定数を記憶しておく
ための読出し専用の記憶ユニット(ROM)、10−3はCPU
10−1がプログラムに従って動作中演算データを一時記
憶するための一時記憶ユニット(RAM)である。10−4
及び10−5はディストリビュータ2に内蔵された基準角
センサ2−1及びクランク角度センサ2−2の出力信号
(本実施例ではマグネットピックアップを用いている)
を波形整形するための波形整形回路である。
10−6は外部信号あるいは内部信号によってCPUに割込
処理を行わせるための割込制御部、10−7はCPU動作の
基本周期となるクロック周期毎にひとつずつカウント値
が上がるように構成された16ビットのタイマである。こ
のタイマ10−7と割込制御部10−6によってエンジン回
転数及びクランク角度位置が次のようにしてCPUに取り
込まれる。すなわち基準角センサ2−1の出力信号によ
り割込みが発生する毎にCPUはタイマのカウント値を読
み出す。タイマのカウント値はクロック周期(たとえば
1μs)毎に上がっていくため、今回の割込時のカウン
ト値と旋回の割込時のカウント値との差を計算すること
により、基準角センサ信号の時期間隔すなわちエンジン
1回転に要する時間が計測できる。こうしてエンジン回
転数が求められる。
またクランク角度位置は、クランク角センサ2−2の信
号が一定クランク角度(たとえば30゜CA)毎に出力され
るので基準角センサ2−1の上死点信号を基準にしてそ
のときのクランク角度を30゜CA単位で知ることができ
る。この30゜CA毎のクランク角度信号は点火時期制御信
号発生のための基準点に使用される。
10−8は複数のアナログ信号を適時切替えてアナログ−
デジタル変換器(A/D変換器)10−9に導くためのマル
チプレクサであり、切替時期は出力ポート10−12から出
力される制御信号により制御される。本実施例において
は、アナログ信号としてエアフローメータ5からの吸入
空気量信号、ノック強度検出回路10−10からのノック強
度値信号等が入力される。(その他に水温センサ信号、
バッテリ電圧等が入力される。) 10−9はアナログ信号をデジタル信号に変換するためA/
D変換器である。10−10はノックセンサ4の信号を受け
てサイクル毎のノック強度値Vを取り出すためのノック
強度値検出信号をなすノック強度値検出回路である。10
−11はデジタル信号のための入力ポートであり、このポ
ートにはO2センサ9からのリンチリーン信号、スロット
ルセンサ6からのアイドル信号及びパワー信号等が入力
される。
10−12はデジタル信号を出力するための出力ポートであ
る。この出力ポートからはグナイタ3に対する点火時期
制御信号、インジェクタ7に対する燃料噴射制御信号、
マルチプレクサ10−8に対する制御信号、ノック強度値
検出回路10−10に対する制御信号が出力される。10−13
はCPUバスであり、CPUはこのバス信号線に制御信号及び
データ信号を乗せ、周辺回路の制御及びデータの送受を
行う。
次ちノック強度値検出回路10−10について第9図を用い
て説明する。第9図において、10−10−1はノックセン
サ4の出力信号からノック周波数成分のみ選別して取り
出すためのバンドパス、ハイパス等のフィルタ、10−10
−2はこのフィルタの出力を半波整流あるいは全波整流
するための整流器、10−10−3は整流器の出力を積分し
てサイクル毎のノック強度値を取り出すための積分器、
10−10−4は積分器の積分区間を制御するためのゲート
回路である。
このノック強度値検出回路の動作を第10図を用いて説明
する。第10図の(1)図は、フィルタ通過後のノックセ
ンサ出力、(2)図はこれを整流器10−10−2で半波整
流した出力である。(3)図は、制御回路10内の出力ポ
ート10−12から出力される制御信号に従って動作するゲ
ート回路10−10−4の出力信号である。すなわち、約10
゜ATDCで立上がり、約90゜ATDCでノック強度がCPU10−
1取り込まれた直後に立下がる信号であり、これが積分
器10−10−3の積分区間を決定する。(4)図はゲート
回路によってセット・リセットされる積分器10−10−3
の出力信号である。
積分器は本実施例の場合には、時定数が約5msecに調整
されている。ゲート回路の立上がりによって、半波整流
後の信号((2)図)の積分を開始し、立下がりによっ
て積分値がリセットされる。ゲート回路は、CPU10−1
がマルチプレクサ10−8及びA/D変換器10−9を通して
この積分値を取り込んだ直後に立下がるので、サイクル
毎の積分値すなわちノック強度値が次々とCPUに取込ま
れていく。
次に、第11図〜第15図のフローチャートを用いてノック
の検出、及びノックコントロールシステムの動作を詳細
説明する。
第11図は点火時期及び燃焼噴射時間をマイコンのタイマ
にセットするための割込みルーチンである。割込み100
がかかると、ステップ200においてまず基本点火時期θ
BSE及び基本噴射時間τBSEが計算される。この基本点火
時期θBSEと基本噴射時間τBSEは、エンジン回転数Nと
エンジン付加Q/N(エアフロメータにより計測された吸
入空気量Qをエンジン回転数Nで割った値がエンジン負
荷に比例する)の2次元マップとしてマイコンのROMに
ストアされている。そしてこのステップ200では同時
に、ノックセンサ以外の各種センサ信号による点火時期
及び噴射時間の修正を行う。たとえば水温による点火時
期、噴射時間の修正、あるいはバッテリー電圧による噴
射時間の修正(無効噴射時間の考慮)等である。
次にステップ300において現在の運転条件がノックコン
トロール実行条件下であるかどうかを判別する。たとえ
ば、エンジンの負荷が軽い場合にはほとんどノックおこ
り得ず、しかもこの軽負荷で無理にノックコントロール
すればかえって出力、燃費等が低下してしまうのは一般
的に知られていることである。そこで、本実施例におい
てはエンジンの負荷(Q/Nが判断できる)が所定値以上
の場合のみノックコントロールを実行することにシテイ
ル。(その他にエンジン回転数による制限を設けること
も考えられる。) ノックコントロール実行条件下であると判断された場合
には、ステップ400においてノックコントロールによる
点火時期及び噴射時間の修正を行う。ノックコントロー
ルによる点火時期の修正量(本実施例では、基本点火時
期θBSEからの遅角量Rとする)は後述する別のルーチ
ンで算出されるが、最終点火時期θはこのステップ400
でθ=θBSE−Rとして求められる。
また燃料噴射時間の修正量はこの遅角量Rを基に決めら
れる。すなわち遅角量Rが大きいときには点火時期が遅
角しているため排気温が高くなり過ぎることがある。従
って、この場合には空燃比をリッチにするように噴射時
間を長目にとってやる必要がある。たとえば遅角量Rに
比例するように噴射時間の修正量を決めてやれば良い。
こうして決められた最終点火時期θおよび最終噴射時間
τがステップ500においてマイコンのタイマにセットさ
れる。セットされたあとプログラムはメインルーチンへ
リターンする(ステップ600)。
第12図は本発明の主眼となるノック状態検出、及びノッ
クコントロールルーチンである。この割込みルーチンは
本実施例の場合、エンジンの上死点(TDC)付近で、点
火サイクル毎に実行される。
ステップ700において割込みルーチンに入ってくると、
発明の作用で述べたような方法で、比較的多サイクルに
渡った平均的ノック状態を検出するためのノック状態検
出手段をなすステップ800を実行する。このステップ800
の詳細は後述する。次にステップ900において現在がノ
ックコントロール実行条件下であるかどうかを判別し、
実行条件下でなければステップ1400においてそのままリ
ターンする。
もし、ノックコントロール実行条件下であるならばステ
ップ1000において、ノックの有無をサイクル毎に判定す
るためのノック判定レベルVrefを算出する。本発明の方
式によりノック状態は別途検出できるのであるが、検出
するために比較的多サイクルの期間を必要とするため、
エンジンの急加速時のように非常に短い時間内でノック
が多発する場合を考慮して、サイクル毎にノック判定し
て点火時期をサイクル毎に遅角させるという従来のノッ
クコントロールシステムの方法を並用したわけである。
このノック判定レベルVrefはステップ800において気筒
毎に求められたVM(頻度分布の中央値に収束する値であ
り、詳細は後述する)と、同じく気筒毎に設定された定
数K(ただし、この値も後述のステップにおいて適切な
方向へ適宜修正されていく。)とを用いてVref=K・VM
の関係で作成される。従ってノック判定レベルは気筒毎
に異なるが、この方がすべての気筒のノックを精度良く
検出できる。なおKの初期値はエンジン回転数Nと気筒
の2次元マップとしてROM内にストアされている。
次にステップ1100において、直前の点火サイクルの値と
して取りこまれたノック強度値Vと、前記ノック判定レ
ベルVrefとを大小比較し、点火毎のノック判定をおこな
う。その結果に応じて点火時期の遅角量Rを計算するス
テップ1200である(詳細後述)。次にステップ1300にお
いて現在のノック判定レベルの適否を判断して、これを
常に適切な方向へ修正していく(詳細後述)。この後、
ステップ1400においてリターンする。
次に、ノック状態を検出する前記ステップ800について
第13図を用いて詳細説明する。ステップ801において、
今回取りこまれたノック強度値Vをその気筒に対応する
前記の上側のしきい値VHと比較し、V>VHの場合には、
その超えた回数NHを1つだけ増す(ステップ802)。そ
れ以外の場合はステップ803に移り、今度はノック強度
値Vと下側のしきい値VLとを比較する。V<VLの場合に
はその下まわった回数を1つだけ増し(ステップ80
4)、ステップ805に移る。それ以外の場合にはそのまま
ステップ805にいく。次にステップ805において、累積50
%点の値VMを更新する。更新の方法はすでに述べたとお
りである。すなわち、ノッンク強度値Vがその気筒に対
応する現在のVMを超えたら(V>VM)、VMをΔVMだけ増
加させ、逆にV<VMならばVMと同じΔVMの量だけ減少さ
せる。こうすることにより、VMは常に累積50%点に追従
するように逐次更新される。
次に分布形状変更手段をなすステップ806において、ノ
ック状態を検出すべき時期に達したかどうかを調べる。
すなわちノック状態の検出は所定のインターバル毎に実
行される。本実施例ではこのインターバルを約0.7secに
している。インターバルをサイクル数にせずに時間間隔
にしている理由は2つある。第1の理由は、ノック状態
を極力、人間の官能評価に近い形で検出するためであ
る。一般に、人間がノック状態を評価する場合は、ある
時間内にどれだけノックが多発したかによって決めてい
る。すなわちエンジンのサイクル経過は、車のドライバ
ーにとってみれば無縁の概念であり、その間の時間のみ
がドライバーの知りえる評価基準になる。こうして時間
単位でノック状態を検出することにより、車のドライバ
ーに不快感を与えることなく、最良の出力、燃費を引き
出すことができる。
第2の理由は、この後に実行されるしきい値VL,VHの更
新に関係する。上述したように、ノック状態が目標値よ
りも大きいか小さいかを調べるためには、下側のしきい
値VLを目標のノック状態におけるノック発生頻度と同じ
%の累積%点に設定する必要がある。ところが一般に目
標ノック状態はエンジン回転数が高くなるほど小さく設
定されるのが普通である。エンジンの低速域ではノック
が比較的多く発生してもエンジンの損傷には到らず、か
えって出力、燃費が改善される。ところが、高速域にな
ると、比較的頻度の少ないノック状態でも、プレイグニ
ッションを誘発し、エンジンに損傷を与える場合があ
る。このために高速域では比較的小さなノック状態に抑
える必要がある。従って高速になるほど下側のしきい値
VLは小さな%の累積点に設定することが望ましい。この
VLを小さな%に設定するためには、すでに作用で述べた
とおり、VLの更新サイクル数Cを大きくしてやればよ
い。VLの更新を時間毎に実行すれば,その間のサイクル
数Cは高速になるほど大きくなり、従って前述の目的が
達成できる。
次にステップ807において、検出インターバルの間にエ
ンジン条件が急変しているかどうかを調べる。すなわ
ち、0.7secの間にエンジン回転数、およびエンジン負荷
が所定値以上変化しているかどうかをチェックするわけ
である。本実施例ではエンジン回転数の許容変化を±30
0rpm、エンジン負荷の許容変化を圧力換算で±150mmHg
に設定している。このステップ807において準定常と見
なされた場合には判別手段をなすステップ808において
ノック状態の検出を行う。
このノック状態の検出は、前記回数NHとNLを気筒毎に比
較することより実施される。すなわちNHとNLがほぼ等し
ければ、その気筒のノック状態は目標値よりも小さいと
判断され、NHとNLに比べて誤差分を考慮してもなおかつ
大きいならば、目標値よりも大きなノック状態と判断さ
れる。この検出されたノック状態は気筒毎にフラグとし
て記憶されるとともに、ノック状態を検出したというノ
ック状態検出完了フラグをセットする。
次にステップ809において上側のしきい値VHと下側のし
きい値VLを更新する。更新の方法は以下のとおりであ
る。まずVHとVLは作用で述べたとおり、VH/VM=VM/VL
関係にある。この等比数をAとして(VH/VM=VM/VL
A)、Aを更新することによりVHとVLを更新することが
できる。VL=VM/Aであるから、この検出インターバルの
間にノック強度値VがVLを一回でも下まわった場合(す
なわちステップ804においてカウンおされたNLが1以上
の場合)にはAをΔAだけ増加させることによりVLをΔ
VLだけ減少させ、NL=0の場合はAをΔAだけ減少させ
ることによりVLをΔVLだけ増大させる。こうすることに
より、VLを必要な累積%点に設定することができる。そ
して上側のしきい値VHはVH=A・VMで作ることができ
る。こうして気筒毎にVH,VLが更新される。
次にステップ810においてNH,NLをクリア(NH=0、NL
0)したのち、検出インターバル0.7secを作り出してい
るカウンタをクリア(ステップ811)する。
次に第14図を用いて、第12図のステップ1200における点
火時期の遅角量Rの計算方法について詳細説明する。
まず、ステップ1201においてノック強度値Vがノック判
定レベルK・VMを超えたならば、このサイクルがノック
サイクルであると見なして基本点火時期からの遅角量R
をΔR1だけ増加させる(ステップ1202)。このΔR1は一
般のノックコントロールでも使用されるもので、普通0.
5゜〜2゜CA程度であるが、本実施例では1゜CAとして
おく。次にステップ1203において、ノック判定回数のカ
ウンタとインクリメントする。これは、ノックサイクル
と見なされた回数をカウントするもので、後述のノック
判定レベル修正の判断材料として使用される。
ステップ1201において、V≦K・VMの場合には非ノック
サイクルと見なされ、ステップ1204に移る。ステップ12
04では、非ノックサイクルと見なされた場合が所定時間
(一般的には1sec程度)だけ継続した場合に限り、Rを
ΔR1だけ減少させることにより点火時期を進角方向に修
正する。その他の場合は現在の遅角量Rをそのまま保持
する。
次にステップ1205において、前述の平均的なノック状態
が検出されたかどうかを第13図のステップ808のノック
状態検出完了フラグによりチェックする。まだ検出され
ていない場合(すなわち前述の検出インターバルの間)
にはステップ1213に移るが、検出完了フラグが立ってい
る場合には、ステップ1206においてノック状態の大小を
調べる。即ち、ノック状態が目標値よりも大きいという
フラグが立っていたならばステップ1207において、遅角
量RをΔR2だけ大きくする。このΔR2は、前述のサイク
ル毎にノック判定して遅角させるΔR1とはちがい、ノッ
クの平均的状態によって点火時期を修正するための修正
量であるから、ΔR1より小さめの値、たとえば0.5゜CA
程度が良い。その結果、遅角量Rは、平均的ノック状態
に応じてゆっくり修正されると共に、これを中心にして
サイクル毎のノック発生有無によってすばやくノックを
回避するよう小さぎみに修正されていく。
遅角量Rが気筒毎に設定されている場合(すなわち気筒
別点火時期制御の場合)には、前述のように、その気筒
のノック状態に従ってその気筒の遅角量Rを増減すれば
良いが、全気筒一律の点火時期制御の場合には、遅角量
Rはひとつしかなく、このときには各気筒のノック状態
を総合的に判断してを増減すれば良い。たとえば4気筒
のエンジンならば2つ以上の気筒でノック状態が大のと
きに全体のノック状態が大きいと判断することもでき
る。あるいは前述のNL,NHを気筒別にもたず、ひとつのN
L,NHで数をカウントすることにより全体のノック状態を
直接知ることもできる。
この場合でも2つのしきい値VL,VHは気筒毎に持ち、比
較も気筒毎に行って比較結果のみ(すなわちNL,NH
み)全気筒共通に使用することが望ましいが、ノック状
態の検出精度を多少犠牲にするならば、VL,VHを全気筒
に共通にすることも可能である。
次にステップ1208において遅角量Rを最大遅角量制限Rm
axと比較する。一般に遅角量Rはノックコントロールに
よる過大な点火時期変動をさけるため、及び排気温上昇
をさけるために制限をつけるのが普通であるが、従来、
この制限値Rmaxは予め定められた固定値であった。しか
しながら、本例ではこれを平均的ノック状態により学習
いていくようにしている。すなわち、遅角量Rを最小遅
角量制限Rminと最大遅角量制限Rmaxの範囲におさえ、点
火時期が不必要に進角したり逆に不必要に遅角したりし
ないようにする。そしてこれを季節の変化、ガソリン性
状のちがい、エンジンのバラツキ等を吸収するように学
習してゆくわけである。点火時期が遅角しすギると(す
なわちRが大きくなり過ぎると)、排気温が上昇して問
題になるが、実際にノックが多発している場合にはさら
に遅角させないと、エンジンが損傷する恐れがある。こ
の場合には、エンジン保護を優先させるわけである。ま
たこの状態を検出して異常ランプを点灯させることも可
能である。
ステップ1208は、遅角量Rの制御範囲をより遅角方向に
修正させるべきかどうかを判断するためのステップであ
る。すなわち、Rが最大遅角量Rmaxより大きい値を要求
され、しかも平均的ノック状態が大きい場合にはステッ
プ1209においてRmaxをΔRmax(たとえば0.2゜CA程度)
だけ増し、同時にRminをΔRmin(これもたとえば0.2゜C
A程度)だけ増すことにより、Rの制限範囲をより遅角
方向に修正する。この制御範囲は例えば5゜〜7゜CA程
度が良い(Rmax−Rmin≒5゜CA〜7゜CA)。
さて、ステップ1206によってノック状態が目標よりも小
さいと判断された場合には、前述の逆の操作をする。す
なわちステップ1210によってノック状態によるRの減少
(すなわち進角方向への修正)を行い、ステップ1211,1
212において遅角量Rの制御範囲を進角方向に修正す
る。
こうしてステップ1213に移り、ここで最終的に遅角量R
の制限を行う。すなわちR>Rmaxの場合にはR=Rmaxで
おきかえ、R<Rminの場合にはR=minでおきかえる。
次に第15図をもちいてい、第12図のステップ1300におけ
るサイクル毎のノック判定に使用されるノック判定レベ
ルを常に適切な方向へ自動修正していく過程について説
明する。
まずステップ1301において、前記ノック状態検出完了フ
ラグによりノック状態が検出されたかどうかをチェック
する。検出されていた場合にはステップ1302においてノ
ック状態の大小をチェックする。ノック状態が目標より
も大きいと判断された場合には、ステップ1303において
これまでのサイクル毎のノックの判定回数を調べる(こ
の判定回数は第14図のステップ1203においてカウントさ
れている)。
このノック判定回数が所定値以下の場合にはノック判定
れべるが高すぎると判断してノック判定レベルを下げる
べくKをΔKだけ減少させ(ステップ1304)。すなわ
ち、ノック状態が大きくて、しかもノック判定回数が少
ない場合には、ノック判定レベルが高すぎて、ノック判
定を誤っているわけである。この場合、ノック判定回数
が比較的多いならば、正常にノック判定しているためK
をそのまま保持する。
ステップ1302において、ノック状態が目標よりも小さい
と判断された場合には、ステップ1305においてノック判
定回数が多すぎないかどうかをチェックする。ノック判
定回数が多すぎる場合には、ノック判定レベルを高目に
修正すべくKをΔKだけ大きくする(ステップ1306)。
すなわちノック状態が小さくて、ノック判定回数が多す
ぎる場合はノック判定レベルが低すぎて、ノイズサイク
ルをノックと誤判定しているわけである。ノック判定回
数が少ないならば、これは実際にエンジンにノックが発
生していないだけであるから、ノック判定レベルの適否
は不明である(適切か、もしくは高すぎる場合が考えら
れる)。従ってこの場合にはKはそのまま保持する。
このノック判定レベルの修正は気筒毎におこなわれる。
すなわち気筒毎のノック状態と、気筒毎のノック判定回
数に基にして、それぞれの気筒に対応するKをそれぞれ
適切な方向に修正していく。もちろん、遅角量Rの計算
方法のところで述べたものと同じような考え方で、Kを
気筒毎に持たずひとつの共通Kとして修正していくこと
も同様に可能である。また、ノック判定回数の大小判断
(ステップ1303と1305)はその間にノック判定があった
か、なかったかのように「0」、「1」的に判断しても
良い。
次にステップ1307においてノック判定回数がクリアさ
れ、続いてノック状態検出完了フラグもクリアされる
(ステップ1308)。
以上述べてきたように、ノックコントロールが実行され
る。
上記実施例においては、平均的ノック状態を検出し、こ
れによって、点火時期の操作、点火時期制御範囲の修
正、サイクル毎にノック判定するためのノック判定レベ
ルの修正を各々行っているが、これらはすべて単独でも
効果を発揮することができる。たとえば、ノック状態の
検出については、これをそのままノックモニタ装置、あ
るいはガソリンオクタン価検出装置に適用できる。実際
の自動車に適用する例として、ガソリン性状あるいは何
らかの原因によってノックが異常に発生しやすくなった
場合の警告灯表示に使うこともできる。
点火時期の操作に関しては、上記実施例ではサイクル毎
のノック判定結果に応じて点火毎に点火時期を操作する
ことと、平均的ノック状態に応じてそれよりも長い周期
で点火時期を操作することとのダブルループを採用して
いる。これは急激なノック状態変化が予想されるエンジ
ンの過渡状態を考慮したためである。しかしながら、平
均的ノック状態は本実施例のように、例えば1sec以内に
算出することができるので、特に点火毎に点火時期を修
正せずともノック状態によってのみこれを修正すること
も可能である。この場合にはノックの有無をサイクル毎
に判定するためのノック判定レベルは不要にある。
また、ノック状態をもっと長時間に渡って検出し、これ
によって点火時期特性を複数のマップを用いて2段階も
しくはそれ以上の多段階に切り替えるような簡易的なノ
ック回避システムを構成することもできる。
また、上記実施例ではノックを制御するための要因とし
て点火時期を扱っているが、これは空燃比、吸気圧力
(たとえばターボ等の過給圧)、EGR、アンチノック剤
等のノック制御要因に広く適用することができる。この
場合には、サイクル毎のノック判定結果に応じて点火時
期等の即効性のあるノック制御要因を制御し、平均的ノ
ック状態の検出結果に応じて、過給圧等の平均的なノッ
ク発生状態を左右する要因を制御するというような種々
のアレンジも可能になる。もちろん、点火時期、空燃
比、吸気圧、EGR、アンチノック剤等のうち、どれかひ
とつのみを制御しても良い。
また点火時期等のノック制御要因の制御範囲をう修正す
ることに関しては、これのみをノック状態に応じて行う
ことも可能である。すなわち、制御はサイクル毎のノッ
ク判定結果に応じてのみ行い、制御範囲の修正のみを平
均的なノック状態に応じて修正することもできる。
またノック判定レベルの修正に関しては、サイクル毎に
ノック判定される被判定信号とノック状態を検出ための
ノック強度値とを共通使用(すなわち実施例では信号積
分値)する必要は必ずしもない。たとえば、ノック判定
される被判定信号として信号の最大波高値VMAXを使用
し、平均的ノック状態を検出するために積分値∫Vを使
用しても良い。この場合、被判定信号になるVMAXの値は
直接知る必要はない。すなわち比較回路等を用いてVMAX
がノック判定レベルより大きいか小さいかの情報だけが
必要である。しかしながら、上記実施例のように共通使
用した方が効率的である。
また上記実施例においては、ふたつのしきい値VL,VH
関係を分布の中央値M(累積分布の50%点)に対して略
等比な関係に設定することにより、ノック強度値Vの頻
度分布が所定の累積%点VL〜VHの範囲内で略対数正規分
布であるか否かを判別するようにしているが、中央値M
に収束すべき近似値VMに多少の誤差が発生することがあ
るため、VL=VM/A、VH=(A+D)・VMのように多少の
オフセットDをつけた方がノック強度値Vの頻度分布が
所定の累積%点VL〜VHの範囲内で略対数正規分布である
か否かを判別するのに都合が良い場合もある。このオフ
セットDは目標ノック音を微調整するための要素として
利用できるためプラス、マイナスどちらの符号もとり得
るが、本質的にDはプラスの値が望ましい。なぜなら
ば、VMを求めるためにノック強度値Vに応じて、同じ量
ΔVMだけ増減して中央値Mに収束させるが、収束しても
中央値Mを中心として同じ量だけ変動する。従ってこれ
を対数軸上でながめると、どうしても低い側にはずれる
量が多くなる。従ってこれを補正する意味でDをプラス
にすることが望ましい。あるいはこれを初めから補正す
る意味でVMを累積50%より少しだけ高め(たとえば累積
55%)の位置を目指して収束させることもできる。この
場合にはVMの増減量の比を、例えば55:45にすれば良
い。
また上記実施例においては、下側のしきい値VLを目標の
ノック状態におけるノック発生頻度と同じ値の累積%点
になるようにフィードバックをかけて修正しているが、
ノック強度値の分布がある程度予測できる場合、あるい
はそれほどの精度でノック状態を検出する必要がない場
合には、固定値でも良い。従ってこの場合にはVHも固定
値で、特に分布の中央値Mを求める必要もない。しかし
ながら、上記実施例の方が格段にすぐれていることは明
白である。
また上記実施例では、上側のしきい値VHをこえた回数
と、下側のしきい値VLと下まった回数と比較によって平
均的なノック状態を検出しているが、次のようにしてノ
ック状態を検出することもできる。
すなわち、値の低い方から、累積していったときの累積
α%点、Lα、値の高い方から累積していたときの累積
α%点、Hα、および分布の中央値VMを算出し、 VM/LαとHα/VHの大小関係を調べることにより、目標
ノック発生頻度α%よりノック状態が大きいか小さいか
が判別できる。
つまり、α%よりノック発生頻度が少ないような小ノッ
ク状態では、対数正規確率紙上で、Lα、VM、Hαは一
直線上に並ぶ。従って、この場合には、LαとHαはVM
に対して等比関係になるから、VM/LαとHα/VMはほぼ
等しい。
逆に、α%よりノック発生頻度が多いような大ノック状
態では、この等比関係がくずれ、Hα/VHの方がVM/Lα
より大きくなる。なお、Hα、Lαの求め方は、発明の
作用の部分の開示から明らかなように、所定のサイクル
数Cの間でノック強度値VとLαおよびHαとを比較
し、VがLαを所定回数以上下まわった場合にはLαを
ΔLαだけ減少させ、所定回数未満の場合にはLαをΔ
Lαだけ増大させ、同時に、VがHαを上記所定回数以
上上まわった場合にはHαをΔHαだけ増大させ、所定
回数未満の場合にはHαをΔHαだけ減少させることに
より、LαおよびHαを所望の累積%点に収束させる。
また、上記実施例では、対数変換器を用いない方法及び
装置を示したが、対数変換器もしくはそれに替って対数
変換するソフトウエアの使用が、コスト等の制約条件を
考慮して許容されるならば、さらに種々の方法及び装置
を考えることができる。たとえば、ノック強度値Vの対
数変換値log Vの平均値と同中央値との大小関係によっ
てノック状態を検出することも可能である。すなわち、
ノック状態が小さい場合には、log Vの分布はほぼ正規
分布になるため、正規分布の中央値と平均値は一致す
る。しかしノック状態が大きくなると、中央値よりも平
均値の方が大きくなるため、ノック状態の識別が可能に
なる。
また、上記実施例では、ノック強度値Vとしてセンサ信
号の所定区間における整流、積分値∫Vを用いたが、こ
れは最大波高値に対応する他のものを用いても良い。こ
れについては、すでに発明の作用で詳細説明した。
また、上記実施例では、ノックセンサとしてエンジンブ
ロックの振動を検出するタイプのセンサを使用したが、
これについてもすでに詳細説明したごとく、マイクロフ
ォン、筒内圧センサ、燃焼光センサ等を使うことができ
る。
また、すでに説明したごとく、想定する分布は対数正規
分布とは限らなく、2項分布、ガンマー分布等、適当な
変換をほどこすことによって、おおよそ対数正規分布と
してあつかっても、実用上さしつかえないような分布に
ついては、上記実施例をそのまま適用できる。
〔発明の効果〕
以上述べたように本発明においては、最大波高値に対応
するノック強度Vを多サイクルサンプリングした時の頻
度分布が、所定の累積%点VL〜VHの範囲内で略対数正規
分布であるか否かを判別して平均的なノック状態を検出
しているから、従来困難であったノックセンサあるいは
エンジンのバラツキ、経時変化等に左右されることな
く、非常に精度よく真のノック状態を検出することがで
きるのみならず、略対数正規分布であるか否かを判別す
る所定の累積%点VL〜VHの範囲をエンジン条件に応じて
変更することによって、エンジン条件に適応したノック
状態を検出することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ノック信号の最大値及びその分布状態を示す
図、第2図はノック信号の最大値の累積分布及びこの分
布を対数正規確率紙上に示した図、第3図はノック信号
の積分値の累積分布を対数正規確率紙上に示した図、第
4図は第3図と同一のノック状態でノック信号の最大値
の累積分布を対数正規確率紙上に示した図、第5図はノ
ック強度値のノックサイクルと非ノックサイクルの分布
状態を示す図、第6図は目標よりもノックが小さい場合
と大きい場合のノック強度値の分布を比較するための
図、第7図は本発明の一実施例を示す構成図、第8図は
第7図中の制御回路の詳細構成図、第9図は第8図中の
ノック強度値検出回路の詳細構成図、第10図はノック強
度値検出回路の作動説明に供する信号波形図、第11図乃
至第15図は制御回路におけるノックの検出及び制御の手
順を示すフローチャートである。 1……エンジン,3……イグナイタ,点火コイル,4……ノ
ックセンサ、7……インジェクタ,8……ターボチャージ
ャ,9……O2センサ,10……制御回路、10−1……CPU,10
−2……ROM,10−3……RAM,10−10……ノック強度値検
出回路,10−10−2……整流器,10−10−3……積分器。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジンのノックを検出するためのノック
    センサと、 このノックセンサの信号からこの信号の最大波高値に対
    応するノック強度値Vを取り出すノック強度値検出手段
    と、 このノック強度値Vを多サイクルサンプリングした時に
    得られる、前記ノック強度値Vの頻度分布が、前記ノッ
    ク強度値Vの頻度の所定の累積%点VL〜VHの範囲内で略
    対数正規分布か否かを判別する判別手段、および前記略
    対数正規分布か否かを判別するための前記所定の累積%
    点VL〜VHの範囲でエンジン条件に応じて変更する分布形
    状変更手段とを含み、前記判別手段の判別結果に応じて
    複数サイクルに渡る平均的なノック状態を検出するノッ
    ク状態検出手段とを備えることを特徴とする内燃機関用
    ノッキング検出装置。
  2. 【請求項2】前記ノック強度値は、ノック特有の周波数
    成分を含んだノック振動出力を所定区間内において整
    流、積分した値、もしくは所定区間内でノック振動出力
    と所定レベルとを比較した場合に得られるパルス列のパ
    ルス数、あるいはそのパルス列の積算値、またはノック
    振動出力の実効値であることを特徴とする特許請求の範
    囲第1項記載のノッキング検出装置。
  3. 【請求項3】前記略対数正規分布は、対数正規分布であ
    ることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項記
    載のノッキング検出装置。
  4. 【請求項4】前記判別手段は、前記ノック強度値Vが取
    り得る値の範囲内で、比較的低い側に設定された第1の
    しきい値VLと、比較的高い側に設定された第2のしきい
    値VHとを持ち、複数サイクルに渡って前記ノック強度値
    Vと前記各しきい値VL、VHとを比較し、ノック強度値V
    が前記第1のしきい値VLを下まわる回数とノック強度値
    Vが前記第2のしきい値VHを上まわる回数とを計数し、
    この各計数値の大小関係によって実質的に前記頻度分布
    の判別を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項乃
    至第3項のいずれかに記載のノッキング検出装置。
  5. 【請求項5】前記ノック強度値Vを多サイクルサンプリ
    ングした場合に得られる前記頻度分布の累積50%点Mに
    対して、前記第1のしきい値VLが前記累積50%点Mより
    も小さい側に設定されていると共に、前記第2のしきい
    値VHがこの点Mよりも大きい側に設定されていることを
    特徴とする特許請求の範囲第4項記載のノッキング検出
    装置。
  6. 【請求項6】前記判別手段は、前記累積50%M点を、次
    々と入力される前記ノック強度値Vの値によって推定す
    る手段を有し、この点Mの推定値VMに対して、前記第1
    のしきい値VLと第2のしきい値VHとがほぼ等比な関係
    (VM/VL+D≒VH/VM)、もしくは等比よりやや大きい側
    にVHが設定される関係(VM/VL+D=VH/VM、D>0)に
    あることを特徴とする特許請求の範囲第5項記載のノッ
    キング検出装置。
  7. 【請求項7】前記推定値VMをサイクル毎に逐次更新され
    ていく変数とし、ノック強度値Vが入力される毎にVと
    VMとを比較してノック強度値Vの方が大きかったらVM
    ΔVMだけ増加させ、逆に小さかったらVMをΔVMだけ減少
    させることにより、VMを前記累積50%点Mに収束するよ
    うに逐次変更し、このVMの値と所定の等比数Aを用いた
    前記第1のしきい値VLをVL=VM/A、前記第2のしきい値
    VHをVH=VM・AもしくはVH=VM・(A+D)(D>0)
    の関係で設定することを特徴とする特許請求の範囲第5
    項または第6項記載のノッキング検出装置。
  8. 【請求項8】前記等比数Aを所定のサイクル数C毎に更
    新されていく変数とし、このサイクル数Cの間で前記ノ
    ック強度値Vと第1しきい値VL(=VM/A)とを比較し、
    ノック強度値VがVLを所定回数以上下まわっていた場合
    には、VLを低い方へ修正すべく前記等比数Aを少しだけ
    増大させ、所定回数未満の場合にはVLを高い方向へ修正
    すべく等比数Aを少しだけ減少させるようにし、実質的
    に、ノック強度値Vが第1のしきい値VLを下まわる確率
    が所望の確率にほぼ等しくなるように等比数Aを調整し
    ていくことを特徴とする特許請求の範囲第7項記載のノ
    ッキング検出装置。
  9. 【請求項9】前記分布形状変更手段は、前記サイクル数
    Cを、エンジン条件に応じて変化させることにより、実
    質的に前記ノック強度値Vが前記第1のしきい値VLを下
    まわる確率がエンジン条件によって変わるように構成し
    たことを特徴とする特許請求の範囲第8項記載のノッキ
    ング検出装置。
  10. 【請求項10】前記サイクル数Cは、エンジン回転速度
    が高くなるほど大きな値をとり、これによって実質的に
    前記ノック強度値が第1のしきい値VLを下まわる確率
    が、エンジン回転速度が高くなくにつれ次第に減ってく
    るようにしたことを特徴とする特許請求の範囲第9項記
    載のノッキング検出装置。
  11. 【請求項11】前記サイクル数Cは、そのサイクル経過
    時間が略一定になるように定められていることを特徴と
    する特許請求の範囲第10項記載のノッキング検出装置。
  12. 【請求項12】前記判別手段は、前記ノック強度値Vを
    多サイクルサンプリングした場合に得られる頻度分布の
    累積50%点Mの値VMを次々と入力されるノック強度値V
    を使って求める手段と、同じくノック強度値Vを使っ
    て、値の低い方から累積していったときの所望の累積α
    %に相当する累積α%点Lαを求める手段と、同じくノ
    ック強度値Vを値の高い方から累積していったときの累
    積%点Hαを推定する手段とを有し、VM/LαとHα/VM
    との大小関係によって実質的に頻度分布を判別すること
    を特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれ
    かに記載のノッキング検出装置。
  13. 【請求項13】前記累積%点Lα、Hαは、所定サイク
    ル数C毎に更新されるものであって、所定サイクル数C
    の間で前記ノック強度値VとLαおよびHαとを比較
    し、VがLαを所定回数以上下まわった場合にはLαを
    ΔLαだけ減少させ、所定回数未満の場合にはLαをΔ
    Lαだけ増大させ、同時に、ノック強度値VがHαを前
    記所定回数以上上まわった場合にはHαをΔHαだけ増
    大させ、所定回数未満の場合にはHαをΔHαだけ減少
    させることにより所望の累積%点に収束させられること
    を特徴とする特許請求の範囲第12項記載のノッキング検
    出装置。
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