JPH0747226B2 - 強度及び靭性に優れた溶接継手部の熱処理方法 - Google Patents

強度及び靭性に優れた溶接継手部の熱処理方法

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JPH0747226B2
JPH0747226B2 JP62221426A JP22142687A JPH0747226B2 JP H0747226 B2 JPH0747226 B2 JP H0747226B2 JP 62221426 A JP62221426 A JP 62221426A JP 22142687 A JP22142687 A JP 22142687A JP H0747226 B2 JPH0747226 B2 JP H0747226B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、フラッシュバット溶接等により突合せ抵抗
溶接された鋼管等の溶接継手部の強度及び靱性を改善す
る強度及び靱性に優れた溶接継手部の熱処理方法に関す
る。
[従来の技術] 石油輸送又はガス輸送用のパイプラインを敷設する場合
は、工場製作された所定長の鋼管を現地に搬送し、鋼管
の端面同士を現地にて突合せ溶接する。この現場溶接作
業は、好条件の工場内溶接と異なり、その作業環境が劣
悪であることから苛酷な重労働となる。また、固定管の
円周溶接においては、上向き、立向き、下向き等の全姿
勢溶接となるので、通常、高度のテクニックを要すると
共に、開先精度を比較的高くする必要がある。従来、パ
イプラインの突合せ円周溶接には、作業性に比較的優れ
ているという理由から、手溶接(被覆アーク溶接)、フ
ラックス入りワイヤ半自動溶接(Flux cored arc weldi
ng;FCAW)、MAG溶接(Metal active gas welding)等が
採用されている。しかしながら、これらの溶接プロセス
は生産性が低く、パイプライン敷設工事の進捗速度を高
めることができないので、溶接プロセスの機械化が検討
されている。
近時、長距離パイプラインの敷設工事において、納期短
縮及びコストダウンの要請から溶接プロセスを高能率化
する要望が高まり、フラッシュバット溶接が好適な溶接
プロセスとして注目されている。フラッシュバット溶接
は、上記従来の各溶接プロセスよりも高能率であり、開
先精度も高いものが要求されないという利点を有するた
め、パイプライン用鋼管の突合せ溶接に実用化が検討さ
れている。
一方、パイプライン用鋼管材料においては、経済性向上
の要求を満たすために高張力化すると共に、寒冷地等の
使用環境の苛酷化を考慮して高靱性化する傾向にある。
また、現地溶接性の向上を図るために、鋼材の炭素等量
値Ceqを可能な限り低くするように成分設計されてい
る。従って、パイプライン用鋼管材料を製造する場合
は、強度補償合金元素の添加量が制限されるので、低温
域にて強圧下した後に加速冷却するThermo−Mechanical
−Control−Process(以下、TMCPという)が採用され
る。このようなTMCP鋼は、その製造工程にて鋼材に内部
歪が付与されるので、高強度となる。
ところで、TMCP鋼管をフラッシュバット溶接すると、フ
ラッシング過程において継手中央領域が比較的長時間高
温に保持されるため、結晶粒が著しく粗大化し、継手部
の靱性が大幅に低下する。
従って、従来の熱処理方法では、フラッシュバット溶接
継手部の靱性向上のために、継手部を約950℃に約1分
間だけ加熱保持した後に空冷するという所謂焼ならし処
理を実施する。
[発明が解決しようとする問題点] しかしながら、従来の熱処理方法においては、TMCP鋼材
に付与された内部歪みが焼ならしにより解放され、その
継手強度が溶接まま(as welded)の強度より約10kgf/m
m2も低下するので、TMCP鋼の高張力効果が損われるとい
う問題点がある。
この発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであっ
て、溶接継手部の強度及び靱性を向上させることができ
る強度及び靱性に優れた溶接継手部の熱処理方法を提供
することを目的とする。
[問題点を解決するための手段] この発明に係る強度及び靱性に優れた溶接継手部の熱処
理方法は、重量%でC:0.08%以下、Si:0.50%以下、Mn:
0.05〜2.50%、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.100%以下、
固溶Al:0.005〜0.100%、窒素0.0015〜0.0100%、残部
が実質的にFe及び不可避的不純物からなり、制御圧延後
に水冷または空冷して製造された鋼材を突き合わせてフ
ラッシュバット溶接し、その後、溶接継手部を鋼材のAc
3変態点以上に加熱し、1分間以内の時間これを保持
し、引続き毎秒5℃以上の冷却速度で溶接継手部を急冷
することを特徴とする。この場合に、さらに鋼材が、重
量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr1.0%以下、M
o:0.5%以下、V:0.15%以下の1種又は2種以上を含有
してもよい。
[作用] この発明に係る強度及び靱性に優れた溶接継手部の熱処
理方法においては、制御圧延後に水冷又は空冷して製造
された鋼材を突合せ抵抗溶接すると、溶接熱影響部の母
材側にて組織が粗大化し、軟化域を生じて継手強度が若
干低下する。一方、溶接継手中央領域においては、加圧
前の溶融過程で比較的長時間に亘り高温状態に保持され
るため、オーステナイト結晶粒が著しく粗大化し、冷却
後に、旧オーステナイト粒界に粗大な初析フェライトが
析出すると共に、粒内にマルテンサイト及びオーステナ
イトを多量に含む上部ベイナイト組織が形成され、この
領域の靱性が他の領域よりも著しく劣化する。しかしな
がら、溶接後に、継手部を鋼材のAc3変態点以上に加熱
保持するので、加熱領域がオーステナイト単相となり、
継手中央領域の粗大化した組織及び熱影響部の粗大化し
た組織が消失する。そして、加熱保持後、引続き毎秒5
℃以上の冷却速度で継手部を急冷するので、マルテンサ
イト及びオーステナイトを多量に含む上部ベイナイト組
織が微細なフェライトを主体とする組織に改善され、継
手中央部の靱性が向上する。また、軟化域が消失して熱
影響部全体が微細な組織になるので、継手強度が向上す
る。とくに、炭素含有量が0.08重量%以下の低炭素鋼で
は、溶接継手部をAc3変態点以上の温度域に加熱保持
し、これを急冷するというただ1回の熱処理によって溶
接ままの組織(旧オーステナイト粒界に粗大な初析フェ
ライトが析出したマルテンサイト及び残留オーステナイ
トを多量に含む上部ベイナイト組織)が微細のフェライ
ト組織に改善される。すなわち、鋼材中の炭素含有量が
0.08重量%以下の場合は、先ずAc3変態点以上への加熱
保持によって組織をオーステナイト単相とし、次にこれ
を毎秒5℃以上の冷却速度で焼入れると、オーステナイ
ト相から、パーライト相およびベイナイト相を析出させ
ることなく、フェライト相のみを析出させることができ
る。このようにして得られたフェライト組織は、均一か
つ微細なものであり、母材と同等か又はそれ以上の靱性
を有する。また、溶接熱影響部は結晶粒の粗大化によっ
て軟化しているが、上述の熱処理によってこのような軟
化組織が消失し、継手部の強度レベルも母材と同様以上
に向上する。
[実施例] 近時、パイプライン用鋼に体する需要家の要望が高度化
する状況にあり、溶接性及び耐食性等の特性に対する要
求を満たす一方で、高強度かつ高靱性を有する鋼材が多
く用いられるようになった。このような要望に応えるた
めに、鋼板を制御圧延した後に水冷又は空冷する所謂Th
ermo−mechanical−contorol−process(以下、TMCP法
という)が開発され、高強度・高靱性のパイプライン用
鋼管が製造され、実用に供されている。TMCP法において
は、圧延されるべき鋼材を950℃以上に加熱し、未再結
晶域又はオーステナイト・フェライトの二相混合域にて
総圧下率が20%以上になるように熱間仕上げ圧延し、圧
延終了直後に水冷又は空冷する。このため、TMCP鋼の組
織が微細化すると共に、内部歪みが増加し、高強度かつ
高靱性の性質がTMCP鋼に付与される。
TMCP鋼の一例として、下記の第1表に示すような組成の
API規格グレードX80(以下、X80という)がある。X80に
おいては、その母材の降伏強さが約55.3kgf/mm2、引張
り強さが約63.4kgf/mm2という優れた機械的性質を有し
ている。
ところで、X80の溶接継手部の溶接まま(as welded)の
引張り強さは、母材強度より若干低下して約60.7kgf/mm
2になる。これは、溶接熱影響部に粗大粒組織からなる
軟化域が生じることによる。また、X80の溶接継手部の
溶接まま(as welded)の靱性値は、例えば、2mmVノッ
チシャルピー衝撃試験において試験温度が0℃のときに
1.0kgf・m、試験温度が−20℃のときには僅か0.7kgf・
mに過ぎず、著しく低くなる。従って、従来において
は、溶接後、靱性回復のために溶接部を約950℃に加熱
後空冷する焼ならし(Normalizad)処理し、試験温度が
0℃のときに15.0kgf・m、試験温度が−20℃のときに
7.4kgf・mの程度まで靱性を回復させているが、焼なら
し処理すると、溶接継手部の引張り強度が約60.7kgf/mm
2(溶接まま)から約53.0kgf/mm2(焼ならし後)に低下
する。これは母材の引張り強さより約10kgf/mm2も低
い。
発明者等は、X80のフラッシュバット溶接継手の強度及
び靱性につき種々検討を重ねた結果、(1)軟化域の消
去(2)靱性向上、の二点について以下の知見を得た。
第6図は、フラッシュバット溶接装置を示す模式図であ
る。相互に端面が対面するように鋼管10及び12が、図示
しない支持架台上に載置されている。鋼管10は固定され
ているが、鋼管12は軸方向に移動可能に支持されてい
る。鋼管10,12の端面は平らに機械加工されている。電
極14,16が鋼管10,12にそれぞれ取付けられ、トランス18
及び制御装置20を介して電源から鋼管10,12に電流が供
給されるようになっている。
このような装置により鋼管10,12をフラッシュバット溶
接する場合は、鋼管10の端面と鋼管12の端面とを僅かな
間隙をもたせて対面させ、両者に所定のフラッシング電
流を流し、端面相互を加熱する。そして、鋼管12を鋼管
10に押付けて両者の端面同士を軽く接触させ、そのまま
通電し続ける。接触面は電気火花が発生して加熱溶融す
る。やがて、溶接面が金属蒸気と溶融金属とで覆われた
状態になると、鋼管12を鋼管10にアップセットしつつ大
電流を数秒間だけ流し、通電を停止する。その後、溶接
継手部をガス炎又は抵抗発熱体等により鋼材Ac3変態点
以上に加熱し、所定時間保持した後に水冷する。なお、
溶接後、継手部の温度がAc3変態点以下に降下しないう
ちに、直ちに継手部を急冷してもよい。いずれの場合も
継手部の温度を迅速かつ正確に把握するようにし、溶接
後熱処理の温度管理を厳重に行なう。
第7図は、X80鋼管のフラッシュバット溶接継手部の断
面マクロ組織を示す図である。通常、フラッシュバット
溶接の場合は、アップセット過程の加圧により図示のよ
うに継手部が盛上がり、ばりが生じる。ばりは、グライ
ンダ研削等により除去される。
第8図は、X80鋼管のフラッシュバット溶接継手部の溶
接ままのミクロ組織を示す図である。フラッシング過程
において継手部は比較的長時間に亘り高温に保持される
ので、オーステナイト結晶粒が著しく粗大化し、旧オー
ステナイト粒界に粗大な初析フェライトが析出した組織
を呈する。また、粒内の組織は、マルテンサイト及び残
留オーステナイトを多量に含む上部ベイナイト組織を呈
する。
次に、このようにして溶接された鋼管の継手部に生じる
軟化域の消去について説明する。第1表に示す組成のTM
CP鋼管をフラッシュバット溶接により突合せ溶接する
と、その熱影響部の母材側に軟化域が生じ、継手強度が
低下する。軟化域の硬さは、ビッカース硬さ換算値で母
材のそれより約50も低下する。硬さと継手強度との間に
はほぼ相関があり、硬さが上昇すると継手強度も高くな
る。従って、溶接継手部の軟化域を消去することは継手
部の強度を高めることになる。
第2表に、フラッシュバット溶接継手部の強度等の検討
に用いた各供試材(鋼種A〜F)の組成をそれぞれ示
す。各供試材はTMCP処理により製造された鋼材である。
第3図(a)乃至(d)は、横軸に溶接中央部からの距
離をとり、縦軸に測定荷重が10kgのときのビッカース硬
さをとって、炭素量の異なる二種の鋼種A及びB(管厚
が17.5mm)をそれぞれフラッシュバット溶接したときの
溶接継手部断面の硬さ分布について調査したグラフ図で
ある。第3図(a)及び(c)は、第2表の鋼種Aにお
ける溶接まま及び熱処理後のものをそれぞれ示す。ま
た、第3図(b)及び(d)は、第2表の鋼種Bにおけ
る溶接まま及び熱処理後のものをそれぞれ示す。なお、
鋼種A,Bの熱処理条件は、加熱温度が約950℃、保持時間
が約1分間、加熱後の冷却速度が毎秒約15℃である。
第3図(a)及び(b)にそれぞれ示すように、溶接ま
まのものでは溶接部中央から約10mmのところに軟化域が
存在するが、蒸気の熱処理条件で溶接継手部を焼入れす
ると、第3図(c)及び(d)にそれぞれ示すように、
母材、熱影響部並びに溶接金属の硬さがほぼ平均化し、
軟化域が消失する。
なお、表中の各数値は重量%を示すと共に、炭素等量値
Ceqには、下記(1)式に示す日本溶接協会(WES)の推
奨式を用いた。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40 +Cr/5+Mo/4+V/14 ……(1) 第1図は横軸に冷却速度をとり、縦軸に継手強度をとっ
て、上記鋼種A,Bのそれぞれの溶接継手部を約950℃に加
熱後に種々の冷却速度で急冷した場合においてそれぞれ
の継手強度について調べたグラフ図、第2図は横軸に加
熱温度をとり、縦軸に継手強度をとって、上記鋼種A,B
のそれぞれの溶接継手部を700乃至1100℃の範囲で所定
温度に種々加熱した後に毎分約20℃の冷却速度で急冷し
た場合においてそれぞれの継手強度について調べたグラ
フ図である。図中、黒丸は鋼種Aの結果を示し、白丸は
鋼種Bの結果を示す。
第1図から明らかなように、冷却速度を毎秒5℃以上に
すると、継手強度が急激に上昇する。また、第2図から
明らかなように、加熱温度をAc3変態点以上にすると、
継手強度が急激に上昇し、高温加熱においては継手強度
が母材強度を越えるようになる。なお、Ac3変態点は下
記(2)式により求めた。
次に、組織改善による継手部の靱性向上について述べ
る。鋼管をフラッシュバット溶接すると、加圧前のフラ
ッシング過程において継手中央部が高温に長時間保持さ
れるため、オーステナイト粒が著しく粗大化し、この粒
界に粗大な初析フェライトが析出すると共に、粒内にマ
ルテンサイト及びオーステナイトを多量に含む上部ベイ
ナイト組織が形成され、継手中央部の靱性が著しく低下
する(第8図の組織写真参照)。このような溶接ままの
金属組織は、母材の化学組成及び溶接による熱履歴に依
存する。従って、母材の化学組成を適正範囲とすること
及び適正な溶接後熱処理を施すことによりフラッシュバ
ット溶接継手部の靱性向上を図ることができる。
鋼材中の各成分元素が溶接継手部の靱性に及ぼす影響に
ついて以下に述べ、フラッシュバット溶接により接合さ
れるべきTMCP鋼の好ましい成分範囲について説明する。
第4図は、横軸に鋼中の炭素量をとり、縦軸に衝撃試験
値をとって、第2表に示す各鋼種を溶接後に、溶接まま
の継手部(図中の黒丸で表示)及び950℃に約1分間加
熱保持した後に毎秒約30℃の冷却速度で焼入れた継手部
(図中の白丸で表示)の衝撃試験結果を示すグラフ図で
ある。図から明らかなように、溶接ままの継手部の靱性
は著しく低いが、焼入れ処理した継手部においては炭素
含有量が約0.08重量%以下の低炭素鋼になると、靱性が
向上する。
更に、第9図(鋼種B(炭素含有量0.038重量%)の溶
接継手部を950℃に加熱後、冷却速度30℃/秒で急冷し
た組織)及び第10図(鋼種C(炭素含有量0.120重量
%)の溶接継手部を950℃に加熱後、冷却速度30℃/秒
で急冷した組織)からも明らかなように、炭素含有量が
異なる鋼種の金属組織を相互に比較すると、低炭素鋼
(炭素含有量0.038重量%)では微細なフェライトを主
体とした組織を呈するのに対して、炭素含有量が0.120
重量%に増加するとマルテンサイト及び下部ベイナイト
を主体とした組織を呈するので靱性が著しく低下する。
従って、焼入れによりフラッシュバット溶接継手部の靱
性を向上させるには、鋼材の炭素含有量の上限値を0.08
重量%にする必要がある。
なお、第5図に示すように、鋼中炭素量が減少するに従
って継手強度が低下するが、約950℃に約1分間加熱保
持した後に毎秒約30℃の冷却速度で焼入れた継手部(図
中の白丸で表示)のほうが、溶接ままの継手部(図中の
黒丸で表示)よりも高強度となるので、低炭素化した場
合であっても母材程度の強度レベルを十分に確保するこ
とができる。
鋼材の化学組成において、炭素以外の他の成分元素につ
いては下記に示す範囲内であることが好ましい。
Siは、脱酸のために必要であるが、過剰に添加すると靱
性が低下するので、上限値を0.50重量%とする。
Mnは、脱酸のために0.05重量%以上の添加が必要である
が、2.5重量%を超えると溶接性を劣化させるので、上
限値を2.5重量%とする。
Nbは、溶接部を加熱急冷する際に、加熱時のオーステナ
イト粒の粗大化を防止すると共に溶接継手部の軟化を防
止するために有効であるので、下限値を0.005重量%と
する。しかし、Nbを過剰に添加すると、溶接部の靱性が
低下するので、上限値を0.10重量%とする。
Tiは、窒素を固定することによって溶接部の靱性を向上
させると共に、結晶粒を微細化させることにより母材の
靱性も向上させるが、多量に添加するときは逆に靱性を
低下させるので、上限値を0.10重量%とする。
固溶Alは、脱酸のために添加する必要があるが、過剰に
添加すると非金属介在物が増加してシャルピー試験の吸
収エネルギ値が低下するので、下限値を0.005重量%と
し、上限値を0.10重量%とする。
窒素は、窒化物として結晶粒を微細化し、材料の靱性を
向上させる効果を有する。この効果を得るためには0.00
15重量%以上の窒素を添加する必要があるが、添加量が
0.010重量%を超えると溶接熱影響部の靱性が低下する
ので、上限値を0.010重量%とする。
更に、上記元素の他に、Cu、Ni、Cr、Mo、Vのうちから
少なくとも一種を選択して添加することができる。
Cuは、強度補償元素として強度の向上に有効であるが、
過剰に添加すると母材及び熱影響部の靱性が低下するの
で、上限値を1.0重量%とする。
Niは、母材の強度及び靱性の向上に寄与するが、添加量
が増加するとコスト高になるので、上限値を3.0重量%
とする。
Cr及びMoは、両者ともに母材強度の向上に寄与するが、
過剰の添加は溶接性を損うので、Crの上限値を1.0重量
%とし、Moの上限値を0.5重量%とする。
Vも、母材強度の向上に寄与するが、添加量が0.15重量
%を超えるとその効果が飽和すると共に、靱性が低下す
るので、上限値を0.15重量%とする。
実施例1 第3表に示す組成の鋼種Gを用いて、フラッシュバット
溶接後に、同表中に示す各熱処理条件で焼入れた。鋼種
GのTMCP条件は、加熱温度が1150℃、未再結晶域及び二
相域での累積圧下率が70%、冷却方法が空冷である。
本発明の熱処理条件を満たす条件1及び4の場合は、そ
の継手強度が58kgf/mm2以上を示し、母材と同等かそれ
以上の強度となる。また、衝撃試験(試験温度がマイナ
ス20℃)においても8.4kgf・m以上の値を示し、良好な
結果となった。これに対して、比較例として掲げた条件
2の場合は冷却速度が遅いので、継手強度が50kgf/mm2
にも満たない。また、比較例の条件3の場合は加熱温度
がAc3変態点以下であるので、継手強度が母材よりも低
くなる。
実施例2 第4表に示すようなTMCP条件で製造された鋼種H〜Tを
用いて、鋼管をフラッシュバット溶接した。鋼種H〜T
の組成は、第5表に示す通りである。フラッシュバット
溶接後、第6表に示す熱処理条件(950℃に加熱保持
後、毎秒20℃の冷却速度で急冷)で溶接継手部を焼入れ
た。
本発明の好ましい組成条件を満たす鋼種H,I,L,M,N,O,P
並びにTにおいては、第6表に示すように、溶接継手部
の強度及び靱性がそれぞれ良好な値となる。これに対し
て比較例の鋼種Jは、その炭素含有量が0.09重量%と高
いので、衝撃試験値が3.2kgf・mと低い。また、比較例
の鋼種Kは、その炭素含有量が0.1重量%とさらに高い
ので、靱性値が2.1kgf・mに低下する。また、比較例の
鋼種Q,R,Sにおいては、それぞれNb,Ti,Nの含有量が適正
範囲内にないので、その靱性値がいずれも著しく低い。
上記実施例によれば、フラッシュバット溶接継手部を焼
入れして微細な組織に改善するので、TMCP鋼管が有する
高強度・高靱性の特性を十分に活かすことができる。特
に、炭素含有量が0.08重量%以下の鋼材では顕著な効果
が認められ、ただ1回の熱処理操作で溶接継手部の靱性
及び強度をともに十分なレベルまで向上させることがで
きるので、フラッシュバット溶接をパイプライン敷設工
事の溶接プロセスに採用する機会を増やすことができ
た。
なお、上記実施例では、鋼管の溶接継手部について説明
したが、これに限ることなく丸棒等の溶接継手部に本発
明を用いてもよい。
また、上記実施例では、フラッシュバット溶接により突
合せ溶接された継手部について説明したが、これに限る
ことなく他の突合せ抵抗溶接の継手部に本発明を用いて
もよい。
[発明の効果] この発明によれば、突合せ抵抗溶接後に継手部を熱処理
することにより、その強度及び靱性を向上させることが
できるので、高強度・高靱性が要求される長距離パイプ
ラインの敷設工事に高能率のラッシュバット溶接法を適
用することができる。とくに、本発明によれば加熱急冷
の熱処理操作を短時間で完了させることができる。この
ため、TMCP鋼管を高能率に接合することができ、従来の
アーク溶接法によるよりも大幅にコストを低減すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は溶接継手部の冷却速度及び継手強度の関係を示
すグラフ図、第2図は溶接継手部の加熱温度及び継手強
度の関係を示すグラフ図、第3図(a)乃至(d)は溶
接まま及び熱処理後のそれぞれの溶接継手部の硬さ分布
を示すグラフ図、第4図は鋼中の炭素量と継手部の衝撃
試験値との関係を示すグラフ図、第5図は鋼中の炭素量
と継手強度との関係を示すグラフ図、第6図はフラッシ
ュバット溶接装置を示す模式図、第7図はフラッシュバ
ット溶接継手部の金属組織を示す写真、第8図はフラッ
シュバット溶接継手部の溶接ままの金属組織を示す顕微
鏡写真、第9図は炭素含有量が0.038重量%のフラッシ
ュバット溶接継手部の熱処理後の金属組織を示す顕微鏡
写真、第10図は炭素含有量が0.120重量%のフラッシュ
バット溶接継手部の熱処理後の金属組織を示す顕微鏡写
真である。 10,12;鋼管、14,16;電極、18;トランス、20;制御装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森重 英治 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−43826(JP,A) 特開 昭58−19438(JP,A) 特公 昭51−43985(JP,B2)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%でC:0.08%以下、Si:0.50%以下、M
    n0.05〜2.50%、Nb:0.005〜0.100%、Ti:0.100%以下、
    固溶Al:0.005〜0.100%、窒素0.0015〜0.0100%、残部
    が実質的にFe及び不可避的不純物からなり、制御圧延後
    に水冷または空冷して製造された鋼材を突き合わせてフ
    ラッシュバット溶接し、その後、溶接継手部を鋼材のAc
    3変態点以上に加熱し、1分間以内の時間これを保持
    し、引続き毎秒5℃以上の冷却速度で溶接継手部を急冷
    することを特徴とする強度及び靱性に優れた溶接継手部
    の熱処理方法。
  2. 【請求項2】さらに鋼材が、重量%で、Cu:1.0%以下、
    Ni:1.0%以下、Cr1.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.15%
    以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項
    1記載の強度及び靱性に優れた溶接継手部の熱処理方
    法。
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