JP2004218081A - 高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 表層部における靭性の優れた570MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板を製造することができる。
【解決手段】 C:0.06〜0.18%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.5〜1.6%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、を主成分とし、所定式で定義されるPcm値が0.30%以下である鋼を、1000〜1300℃の温度範囲に加熱し、熱間圧延した後、引続きAr3変態点以上から直接焼入れして400℃以下の温度域で冷却を停止した後、圧延機と同一の製造ライン上に設置された誘導加熱装置を用いて、鋼板表面の最高到達温度を500℃〜720℃に、鋼板表面の昇温速度が25℃/sec以上、となるように急速加熱して、焼戻し処理を施す。
【選択図】 なし
【解決手段】 C:0.06〜0.18%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.5〜1.6%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、を主成分とし、所定式で定義されるPcm値が0.30%以下である鋼を、1000〜1300℃の温度範囲に加熱し、熱間圧延した後、引続きAr3変態点以上から直接焼入れして400℃以下の温度域で冷却を停止した後、圧延機と同一の製造ライン上に設置された誘導加熱装置を用いて、鋼板表面の最高到達温度を500℃〜720℃に、鋼板表面の昇温速度が25℃/sec以上、となるように急速加熱して、焼戻し処理を施す。
【選択図】 なし
Description
この発明は、高張力鋼板の製造方法、特に、焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度、昇温速度および加熱回数を規定することによって、表面温度の過度の上昇に基づく表層部の靭性および強度等の劣化を生じず、板厚全体、特に、表層部における靭性の優れた570MPa級以上の引張強度を有する高張力鋼板の製造方法に関するものである。
近年、鋼構造の大型化に伴い、より強靭な鋼の開発が求められている。通常、引張強度が約570MPa以上の鋼は、焼入れによりマルテンサイトもしくはベイナイト変態を生じさせ、その後の焼戻し処理によって過飽和固溶炭素や合金元素を炭化物として析出させることによって、主に靭性の改善を図って実用に供する。このような焼入れ・焼戻し鋼板の製造方法は、製造に多大な時間を要し、生産性が悪く、製造費用が多大であることが問題とされていた。
そのため、焼入れ方法として、圧延後そのまま焼入れを行う直接焼入れ技術が開発され、製造費用の低減等の面で効果を奏している。このような製造法として、例えば、特公昭55−49131号公報(特許文献1)、特公昭58−3011号公報(特許文献2)等に記載がある。
しかし、これらの技術の焼戻し工程に関しては、加熱・保持の熱処理に多大な時間を消費し、そのため、熱処理工程を圧延および直接焼入れの製造ラインとは別の製造ラインで行わざるを得ず、その際の鋼板の搬送等に時間を消費するという問題を抱えており、生産性、製造費用の観点で改善の余地があった。
このような問題点を解決する方法として、特許第3015923号公報(特許文献3)、特許第3015924号公報(特許文献4)等に記載の方法が考案されている。これは、圧延および直接焼入れと同一の製造ライン上に直結して設置した焼戻し処理装置を用いて、鋼板の焼戻し処理時の加熱を従来技術と比較して急速加熱とすることによって、焼入れ・焼戻し鋼板の生産性を著しく高めることを可能とするものである。
しかし、急速加熱時における鋼板の温度履歴は、図1に示すように、鋼板表面と板厚中心部で実質的に異なり、昇温速度・焼戻し温度・板厚等によってその差は変化するものの、何れの場合においても表面の最高到達温度は、板厚中心部の最高到達温度を上回る。
このときの表面の最高到達温度と脆性・延性破面遷移温度との関係を表1の鋼種Aを用いて調査した。この結果を図2に示す。脆性・延性破面遷移温度は、表層部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって求めた。
図2より明らかなように、表面の温度がある温度(本試験条件の場合720℃)を超えると、表層部の脆性・延性破面遷移温度が目標範囲を外れ、靭性が劣化する。
更に、鋼板表面の昇温速度と脆性・延性破面遷移温度の関係を表1の鋼種Aを用いて調査した。この結果を図3に示す。脆性・延性破面遷移温度は、表層部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって求めた。
図3より明らかなように、表面の昇温速度が大きくなる程、表層部の靭性が向上する。
更に、鋼板表面の連続的な加熱回数(各加熱時における昇温速度:25℃/sec以上)と脆性・延性破面遷移温度との関係を表1の鋼種Aを用いて調査した。この結果を図4に示す。脆性・延性破面遷移温度は、表層部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって求めた。
図4より明らかなように、加熱回数が多い程、表層部の靭性が向上する。
上記のように、急速加熱の場合、鋼板の板厚方向での温度履歴が異なり、表層部の材質は、加熱条件により大きく変化するが、上記従来技術には、加熱条件の開示も示唆もないので、実機への適用は困難である。
従って、この発明の目的は、急速加熱焼戻し時における加熱条件を詳細に検討することにより、板厚全体、特に、表層部における靭性の優れた570MPa級以上の引張強度を有する高張力鋼板の製造方法を提供することにある。
この発明は、従来技術の上記問題点を克服すべく、焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度、昇温速度および加熱回数を規定することによって、表面温度の過度の上昇に基づく表層部の靭性および強度等の劣化を生じず、板厚全体、特に、表層部における靭性の優れた570MPa級以上の引張強度を有する高張力鋼板を製造するものであり、下記を特徴とする。
請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.06〜0.18%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.5〜1.6%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.008%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPcm値が0.30%以下である鋼を、1000〜1300℃の温度範囲に加熱し、所定の板厚に熱間圧延した後、引続きAr3変態点以上から直接焼入れして400℃以下の温度域で冷却を停止した後、圧延機および直接焼入れ装置と同一の製造ライン上に設置されたソレノイド型誘導加熱装置を用いて、焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度を500℃〜720℃、板厚中心部の最高到達温度を500〜700℃の範囲に、鋼板表面の昇温速度が25℃/sec以上、板厚中心部の昇温速度が1℃/sec以上となるように急速加熱して、焼戻し処理を施すことに特徴を有するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明における焼戻し処理過程おいて、板厚中心部の温度が500℃から最高到達温度に到達するまでの鋼板の滞留時間を50sec以内とし、板厚中心部の最高到達温度を550℃から600℃未満の温度範囲として焼戻し処理することに特徴を有するものである。
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の発明における焼戻し処理過程おいて、板厚中心部の温度が500℃以上、600℃以下の温度範囲に鋼板が滞留する時間を50sec以内とし、板厚中心部の最高到達温度を600℃以上として焼戻し処理することに特徴を有するものである。
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、焼戻し時における鋼板表面の急速加熱を、25℃/sec以上の昇温速度で少なくとも2回以上行うことに特徴を有するものである。
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか1つに記載の発明において、質量%で、さらに、Cu:1%以下、Ni:4%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下の1種または2種以上を含有することに特徴を有するものである。
請求項6記載の発明は、請求項1から5の何れか1つに記載の発明において、質量%で、さらに、Nb:0.05%以下、V:0.5%以下、Ti:0.03%以下の1種または2種以上を含有することに特徴を有するものである。
請求項7記載の発明は、請求項1から6の何れか1つに記載の発明において、質量%で、さらに、B:0.0030%以下、Ca:0.01%以下の1種または2種を含有することに特徴を有するものである。
請求項8記載の発明は、請求項1から7の何れか1つに記載の発明において、焼戻し処理過程において、周波数:2000Hz以下のソレノイド型誘導加熱装置を用いて、電力密度:500W/cm2以下の条件で、加熱して焼戻し処理を施すことに特徴を有するものである。
以上説明したように、この発明によれば、表層部および板厚中心部の靭性が優れており、板厚全体、特に、表層部における靭性の優れた570MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板を製造することができるといった有用な効果がもらたされる。
先ず、この発明における限定理由について述べる。なお、化学成分組成割合を示す%は、何れも質量%である。
(C:0.06〜0.18%)
Cは、強度を確保するために含有させるが、0.06%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.18%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化すると共に、溶接性が著しく劣化する。従って、C含有量は、0.06〜0.18%の範囲内に限定する。
Cは、強度を確保するために含有させるが、0.06%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.18%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化すると共に、溶接性が著しく劣化する。従って、C含有量は、0.06〜0.18%の範囲内に限定する。
(Si:0.05〜0.6%)
Siは、製鋼段階の脱酸材および強度向上元素として含有させるが、0.05%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.6%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化すると共に、溶接性が著しく劣化する。従って、Si含有量は、0.05〜0.6%の範囲内に限定する。
Siは、製鋼段階の脱酸材および強度向上元素として含有させるが、0.05%未満ではその効果が不十分であり、一方、0.6%を超えると母材および溶接熱影響部の靭性が劣化すると共に、溶接性が著しく劣化する。従って、Si含有量は、0.05〜0.6%の範囲内に限定する。
(Mn:0.5〜1.6%)
Mnは、強度を確保するために含有させるが、0.5%未満ではその効果が不十分であり、一方、1.6%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化すると共に、溶接性が著しく劣化する。従って、Mn含有量は、0.5〜1.6%の範囲内に限定する。
Mnは、強度を確保するために含有させるが、0.5%未満ではその効果が不十分であり、一方、1.6%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化すると共に、溶接性が著しく劣化する。従って、Mn含有量は、0.5〜1.6%の範囲内に限定する。
(Al:0.005〜0.1%)
Alは、脱酸のために添加するが、0.005%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。従って、A1含有量は、0.005〜0.1%の範囲内に限定する。
Alは、脱酸のために添加するが、0.005%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、0.1%を超えて含有すると、鋼板の表面疵が発生し易くなる。従って、A1含有量は、0.005〜0.1%の範囲内に限定する。
(N:0.0005〜0.008)
Nは、AlやNb等と析出物を形成して組織を微細化し、母材靭性を向上させる効果を有すること、および、焼戻し時にNbやV等と析出物を形成して析出強化による強度確保の効果を有するために添加する。しかしながら、0.0005%未満の添加では組織の微細化および強度確保に必要な析出物が形成されず、一方、0.008%を超える添加は母材および溶接継手の靭性を損なう。従って、N含有量は、0.0005〜0.008%の範囲内に限定する。
Nは、AlやNb等と析出物を形成して組織を微細化し、母材靭性を向上させる効果を有すること、および、焼戻し時にNbやV等と析出物を形成して析出強化による強度確保の効果を有するために添加する。しかしながら、0.0005%未満の添加では組織の微細化および強度確保に必要な析出物が形成されず、一方、0.008%を超える添加は母材および溶接継手の靭性を損なう。従って、N含有量は、0.0005〜0.008%の範囲内に限定する。
(P、S:0.03%以下)
P、Sは、何れも不純物元素であり、0.03%を超えると健全な母材および溶接継手を得ることができなくなる。従って、P、S含有量は、0.03%以下に限定する。
P、Sは、何れも不純物元素であり、0.03%を超えると健全な母材および溶接継手を得ることができなくなる。従って、P、S含有量は、0.03%以下に限定する。
(Cu:1%以下)
Cuは、固溶強化および析出強化により強度を向上する作用を有している。しかしながら、Cu含有量が1%を超えると、靭性が低下する。従って、Cuを添加する場合には、その含有量を1%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
Cuは、固溶強化および析出強化により強度を向上する作用を有している。しかしながら、Cu含有量が1%を超えると、靭性が低下する。従って、Cuを添加する場合には、その含有量を1%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
(Ni:4%以下)
Niは、靭性および焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、Ni含有量が4%を超えると、経済性が劣る。従って、Niを添加する場合には、その含有量を4%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
Niは、靭性および焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、Ni含有量が4%を超えると、経済性が劣る。従って、Niを添加する場合には、その含有量を4%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
(Cr:1%以下)
Crは、強度および靭性を向上する作用を有している。しかしながら、Cr含有量が1%を超えると、溶接性が劣化する。従って、Crを添加する場合には、その含有量を1%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
Crは、強度および靭性を向上する作用を有している。しかしながら、Cr含有量が1%を超えると、溶接性が劣化する。従って、Crを添加する場合には、その含有量を1%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
(Mo:1%以下)
Moは、焼入れ性および強度を向上する作用を有している。しかしながら、Mo含有量が1%を超えると、経済性が劣る。従って、Moを添加する場合には、その含有量を1%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
Moは、焼入れ性および強度を向上する作用を有している。しかしながら、Mo含有量が1%を超えると、経済性が劣る。従って、Moを添加する場合には、その含有量を1%以下、好ましくは、0.50%以下に限定する。
(Nb:0.05%以下)
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加する。しかしながら、0.05%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Nbを添加する場合には、その含有量を0.05%以下に限定する。
Nbは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加する。しかしながら、0.05%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Nbを添加する場合には、その含有量を0.05%以下に限定する。
(V:0.5%以下)
Vは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加する。しかしながら、0.5%を超えると溶接熱影響部の靭性を著しく劣化させる。従って、Vを添加する場合には、その含有量を0.5%以下、好ましくは、0.1%以下に限定する。
Vは、マイクロアロイング元素として強度を向上させるために添加する。しかしながら、0.5%を超えると溶接熱影響部の靭性を著しく劣化させる。従って、Vを添加する場合には、その含有量を0.5%以下、好ましくは、0.1%以下に限定する。
(Ti:0.03%以下)
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト粒を微細化し、母材靭性ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる。しかしながら、その含有量が0.03%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Tiを添加する場合には、その含有量を、0.03%以下に限定する。
Tiは、圧延加熱時あるいは溶接時にTiNを生成し、オーステナイト粒を微細化し、母材靭性ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる。しかしながら、その含有量が0.03%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させる。従って、Tiを添加する場合には、その含有量を、0.03%以下に限定する。
(B:0.0030%以下)
Bは、焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、0.0030%を超えると、靭性を劣化させる。従って、Bを添加する場合には、その含有量を0.0030%以下に限定する。
Bは、焼入れ性を向上する作用を有している。しかしながら、0.0030%を超えると、靭性を劣化させる。従って、Bを添加する場合には、その含有量を0.0030%以下に限定する。
(Ca:0.01%以下)
Caは、硫化物系介在物の形態制御に不可欠な元素である。しかしながら、0.01%を超える添加は、清純度の低下を招く。従って、Caを添加する場合には、その含有量を0.01%以下に限定する。
Caは、硫化物系介在物の形態制御に不可欠な元素である。しかしながら、0.01%を超える添加は、清純度の低下を招く。従って、Caを添加する場合には、その含有量を0.01%以下に限定する。
(Pcm:0.30%以下)
Pcmは、溶接割れ感受性を表す指数であり、この値が高いほど引張強度が高くなるが、通常の環境における溶接施工において、予熱工程を省略、または予熱温度を低減させるため、Pcm値は、0.30%以下に限定する。なお、引張強度が570MPa級の場合には、Pcm値は、0.25%以下にすることが望ましい。
Pcmは、溶接割れ感受性を表す指数であり、この値が高いほど引張強度が高くなるが、通常の環境における溶接施工において、予熱工程を省略、または予熱温度を低減させるため、Pcm値は、0.30%以下に限定する。なお、引張強度が570MPa級の場合には、Pcm値は、0.25%以下にすることが望ましい。
(熱間圧延前の加熱温度:1000〜1300℃)
合金元素の均質化と未再結晶域を拡大させるのに有効なNbの固溶を図るため、加熱温度は1000℃以上に設定する必要がある。しかしながら、加熱温度が1300℃を超えると組織の粗大化により、母材の靭性が確保されなくなる。従って、熱間圧延前の加熱温度は、1000〜1300℃の範囲内に限定する。
合金元素の均質化と未再結晶域を拡大させるのに有効なNbの固溶を図るため、加熱温度は1000℃以上に設定する必要がある。しかしながら、加熱温度が1300℃を超えると組織の粗大化により、母材の靭性が確保されなくなる。従って、熱間圧延前の加熱温度は、1000〜1300℃の範囲内に限定する。
(直接焼入れ)
熱間圧延終了後、母材強度および母材靭性を確保するため、Ar3変態点以上の温度の鋼板を強制冷却により焼入れ処理を施すことが必要である。400℃以下に到達するまで直接焼入れする理由は、オーステナイトからマルテンサイトもしくはベイナイトヘの変態を完了させ、母材の強度を保つためである。
熱間圧延終了後、母材強度および母材靭性を確保するため、Ar3変態点以上の温度の鋼板を強制冷却により焼入れ処理を施すことが必要である。400℃以下に到達するまで直接焼入れする理由は、オーステナイトからマルテンサイトもしくはベイナイトヘの変態を完了させ、母材の強度を保つためである。
(焼戻し)
焼戻しは、圧延機および直接焼入れ装置と同一の製造ライン上に直結して設置されたソレノイド型誘導加熱装置で行うものとした。これは、直結化により圧延・直接焼入れと焼戻しの間の搬送、その他による付加的な所要時間を排除することが可能となり、生産性を著しく向上することが可能となるためである。
焼戻しは、圧延機および直接焼入れ装置と同一の製造ライン上に直結して設置されたソレノイド型誘導加熱装置で行うものとした。これは、直結化により圧延・直接焼入れと焼戻しの間の搬送、その他による付加的な所要時間を排除することが可能となり、生産性を著しく向上することが可能となるためである。
(焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度)
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度が500℃未満では、加熱温度が低すぎるため直接焼入れによって劣化した靭性の回復が不十分である。一方、鋼板表面の最高到達温度が720℃を超えると、逆変態などに起因して、表層部の靭性および強度などが著しく劣化してしまう。よって、再加熱時の鋼板表面の最高到達温度は、500〜720℃の範囲内に限定する。
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度が500℃未満では、加熱温度が低すぎるため直接焼入れによって劣化した靭性の回復が不十分である。一方、鋼板表面の最高到達温度が720℃を超えると、逆変態などに起因して、表層部の靭性および強度などが著しく劣化してしまう。よって、再加熱時の鋼板表面の最高到達温度は、500〜720℃の範囲内に限定する。
(焼戻し時の板厚中心部の最高到達温度)
焼戻し時の板厚中心部の最高到達温度が500℃未満では、加熱温度が低すぎるため直接焼入れによって劣化した靭性の回復が不十分である。粒内に微細な炭化物を析出させて靭性をより向上させるためには、550℃以上が望ましい。一方、鋼板中心部の最高到達温度が700℃を超えると、鋼板表面の最高到達温度の上限を上記のごとく限定しているため、所定の温度に昇温するまで著しく時間を要し、鋼板の生産効率が著しく低下する。望ましくは、650℃以下である。従って、再加熱時の板厚中心部の最高到達温度は、500〜700℃の範囲内に限定する。望ましくは、550から650℃の範囲内である。
焼戻し時の板厚中心部の最高到達温度が500℃未満では、加熱温度が低すぎるため直接焼入れによって劣化した靭性の回復が不十分である。粒内に微細な炭化物を析出させて靭性をより向上させるためには、550℃以上が望ましい。一方、鋼板中心部の最高到達温度が700℃を超えると、鋼板表面の最高到達温度の上限を上記のごとく限定しているため、所定の温度に昇温するまで著しく時間を要し、鋼板の生産効率が著しく低下する。望ましくは、650℃以下である。従って、再加熱時の板厚中心部の最高到達温度は、500〜700℃の範囲内に限定する。望ましくは、550から650℃の範囲内である。
(焼戻し時の鋼板表面の昇温速度)
焼戻し時における鋼板表面の昇温速度は、25℃/sec以上とした。これは25℃/secとすることによって、焼戻し時に析出する炭化物が微細化され、表層部の靭性が大きく向上するためである。
焼戻し時における鋼板表面の昇温速度は、25℃/sec以上とした。これは25℃/secとすることによって、焼戻し時に析出する炭化物が微細化され、表層部の靭性が大きく向上するためである。
(焼戻し時の板厚中心部の昇温速度)
焼戻し時における板厚中心部の昇温速度は、1℃/sec以上、好ましくは3℃/sec以上とした。これは、1℃/sec未満では、生産の能率が低下するばかりでなく、昇温中に析出した炭化物の過度の粗大化等に起因して、靭性および強度の劣化が生じるためである。
焼戻し時における板厚中心部の昇温速度は、1℃/sec以上、好ましくは3℃/sec以上とした。これは、1℃/sec未満では、生産の能率が低下するばかりでなく、昇温中に析出した炭化物の過度の粗大化等に起因して、靭性および強度の劣化が生じるためである。
(焼戻し時に板厚中心部の温度が500℃から最高到達温度に到達するまでの滞留時間)
焼戻し時における板厚中心部の温度が500℃から最高到達温度に到達するまでの鋼板の滞留時間を50sec以内とする。550℃から600℃未満で焼戻しする場合、500℃から焼戻し温度までの滞留時間によって、この発明の重要な因子である炭化物の析出形態が異なり、靭性に大きく影響するため、その滞留時間を規定する。すなわち、加熱速度が遅い場合には、粒界析出によって炭素が消費されて、粒内炭化物の析出量が少なくなり靭性に劣る。一方、加熱速度が速く滞留時間が50sec以内の場合には、粒内における核生成数が多くなって、粒内に炭化物がより均一に微細分散し、これによって靭性のさらなる向上がもたらされる。
焼戻し時における板厚中心部の温度が500℃から最高到達温度に到達するまでの鋼板の滞留時間を50sec以内とする。550℃から600℃未満で焼戻しする場合、500℃から焼戻し温度までの滞留時間によって、この発明の重要な因子である炭化物の析出形態が異なり、靭性に大きく影響するため、その滞留時間を規定する。すなわち、加熱速度が遅い場合には、粒界析出によって炭素が消費されて、粒内炭化物の析出量が少なくなり靭性に劣る。一方、加熱速度が速く滞留時間が50sec以内の場合には、粒内における核生成数が多くなって、粒内に炭化物がより均一に微細分散し、これによって靭性のさらなる向上がもたらされる。
ここで、500℃以上での温度の滞留時間としたのは、500℃未満では、温度が低すぎて焼入れ・焼戻し鋼板の靭性を支配する、特に重要な因子の一つである炭化物の析出が生じないからである。
また、滞留時間とは、500℃から焼戻し温度まで直線的に加熱する場合の他に、500℃から焼戻し温度までの途中の温度に一定時間保持される場合も含むものとする。
(焼戻し時に板厚中心部の温度が500℃以上、600℃以下の温度範囲の滞留時間)
600℃以上の温度で焼戻しする場合、500℃から600℃までの滞留時間によってこの発明の重要な因子である炭化物の析出形態が異なり靭性に大きく影響する理由により、焼戻し時における板厚中心部の温度が500℃以上、600℃以下の温度範囲に滞留する時間は、50sec以内とする。
600℃以上の温度で焼戻しする場合、500℃から600℃までの滞留時間によってこの発明の重要な因子である炭化物の析出形態が異なり靭性に大きく影響する理由により、焼戻し時における板厚中心部の温度が500℃以上、600℃以下の温度範囲に滞留する時間は、50sec以内とする。
ここで、500℃から600℃の温度の滞留時間としたのは、500℃未満では、温度が低すぎて焼入れ・焼戻し鋼板の靭性を支配する、特に重要な因子の一つである炭化物の析出が生じず、一方、600℃を超えると、炭化物の析出が完了するためである。
また、滞留時間とは、500℃から600℃まで直線的に加熱する場合の他に、500℃から600℃までの途中の温度に一定時間保持される場合も含むものとする。
(焼戻し時の複数回加熱)
焼戻し時における鋼板表面の急速加熱を、少なくとも2回以上行う。これは、2回以上行うことによって、表層部の靭性か大きく向上するからである。
焼戻し時における鋼板表面の急速加熱を、少なくとも2回以上行う。これは、2回以上行うことによって、表層部の靭性か大きく向上するからである。
誘導加熱時の周波数や電流密度等の条件は、鋼板のサイズや焼戻し温度または作業効率等を考慮して任意に設定できるが、高効率でかつ鋼板表面の著しい過加熱を避け、鋼板中心部まで十分に焼戻し処理を行い、表層部の靭性を向上させるためには、周波数:2000Hz以下のソレノイド型誘導加熱装置を複数台直列に並べて、電力密度:500W/cm2以下の条件で加熱を行うべきである。以下に、この誘導加熱条件の説明を行う。
(周波数)
ソレノイド型の誘導加熱装置を用いた鋼板の加熱は、主として、表層部近傍に集中する渦電流の発生に起因する。この渦電流の集中する領域の深さは、誘導加熱装置の周波数を選択することによってコントロール可能である。すなわち、周波数を低くすると、誘導加熱時の発熱する領域の深さが深くなり、周波数を高くすると、発熱領域の深さが浅くなる。周波数が2000Hzを超える場合、発熱する領域の深さが著しく浅くなり、鋼板表層が過度に加熱されて、直接焼入れによって生じたベイナイトまたはマルテンサイト組織が逆変態することに伴って、表層部の靭性および強度が著しく低下する。従って、誘導加熱の周波数は、2000Hz以下に限定する。
ソレノイド型の誘導加熱装置を用いた鋼板の加熱は、主として、表層部近傍に集中する渦電流の発生に起因する。この渦電流の集中する領域の深さは、誘導加熱装置の周波数を選択することによってコントロール可能である。すなわち、周波数を低くすると、誘導加熱時の発熱する領域の深さが深くなり、周波数を高くすると、発熱領域の深さが浅くなる。周波数が2000Hzを超える場合、発熱する領域の深さが著しく浅くなり、鋼板表層が過度に加熱されて、直接焼入れによって生じたベイナイトまたはマルテンサイト組織が逆変態することに伴って、表層部の靭性および強度が著しく低下する。従って、誘導加熱の周波数は、2000Hz以下に限定する。
(電力密度)
誘導加熱での電力密度とは、加熱時の投入電力を加熱帯の鋼板表面積で除した値であり、電力密度が大きいほど、鋼板を高温までより短時間に加熱することが可能となり、熱処理効率が高くなる。しかしながら、電力密度が500W/cm2を超えると、表面の加熱が過度となり、直接焼入れによって生じたベイナイトまたはマルテンサイト組織が逆変態し、それに伴って、表層部の靭性および強度が著しく低下する。従って、誘導加熱時の電力密度は、500W/cm2以下に限定する。
誘導加熱での電力密度とは、加熱時の投入電力を加熱帯の鋼板表面積で除した値であり、電力密度が大きいほど、鋼板を高温までより短時間に加熱することが可能となり、熱処理効率が高くなる。しかしながら、電力密度が500W/cm2を超えると、表面の加熱が過度となり、直接焼入れによって生じたベイナイトまたはマルテンサイト組織が逆変態し、それに伴って、表層部の靭性および強度が著しく低下する。従って、誘導加熱時の電力密度は、500W/cm2以下に限定する。
鋼板の製造においては、転炉法、電気炉法等の鋼の溶製方法や、連続鋳造、造塊法等のスラブの製造方法について適宜選択できる。
均一に加熱された本発明鋼を所定の板厚まで熱間圧延する工程は、通常の条件に依って差し支えない。
圧延仕上げ温度は、Ar3変態点を上回らなければならない。これは、Ar3変態点を下回る温度で圧延を終了すると、後の直接焼入れにて、焼入れが不完全なものとなり良好な母材特性が確保できないためである。
誘導加熱装置による焼戻しを行う場合、誘導コイルの容量やサイズ、誘導コイルを鋼板が通過する際の通板速度、電力設定は、加熱する鋼板のサイズや焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度、板厚中心部の最高到達温度または作業効率等を考慮して、任意に設定することができる。なお、誘導加熱コイルは、磁束が鋼板の板面に平行となるように配置することが望ましい。
焼戻し時における表面および板厚中心部の温度管理は、板厚・周波数・電力密度・通板速度・加熱回数等から、経験的に行うことが可能である。
焼戻し後の冷却速度については、冷却中における析出物の過度の粗大化に起因する靭性の劣化、または焼戻し不足による靭性の劣化を防止すべく、0.05〜20℃/secの範囲内とすることが望ましい。
次に、この発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示す化学成分の鋼A〜Fを溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行った。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、2台または3台のソレノイド型誘導加熱装置を用いて、連続的に焼戻し処理を行った。なお、本実施例では、引張強度570MPa級を目標特性とするために、Pcm≦0.25%とした。以上の鋼板製造条件を表2に示す。
表1に示す化学成分の鋼A〜Fを溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行った。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、2台または3台のソレノイド型誘導加熱装置を用いて、連続的に焼戻し処理を行った。なお、本実施例では、引張強度570MPa級を目標特性とするために、Pcm≦0.25%とした。以上の鋼板製造条件を表2に示す。
表2において、例えば、第1台目の誘導加熱時の電力密度とは、直列に配置した2台または3台のソレノイド型誘導加熱装置のうち、第1台目の加熱装置を鋼板が通過する際の電力密度を示す。また、例えば、第1台目の誘導加熱時における表面の昇温速度とは、直列に配置した2台または3台のソレノイド型誘導加熱装置のうち、第1台目の加熱装置を鋼板が通過する際の昇温速度を示す。更に、板厚中心部の昇温速度は、焼戻し処理開始から最高到達温度に達するまでの平均値とした。表2に、これらの製造条件で製造した鋼板の引張強度、表層部および板厚中心部の脆性・延性破面遷移温度(vTrs)を併せて示す。
なお、引張強度は、全厚引張試験片により測定し、靭性は、表層部および板厚中心部より採取した試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって得られるvTrsで評価した。材料特性の目標値は、引張強度:570MPa以上、表層部および板厚中心部のvTrs:−50℃以下とした。
表2から明らかなように、本発明範囲内で製造した鋼板No.1〜14(本発明例)の引張強度、表層部および板厚中心部vTrsは、何れも、目標値を満足している。また、板厚中心部の温度が500〜600℃の範囲内に滞留する時間のみが異なる本発明例No.13とNo.14とを比較すると、滞留時間が50sec以内であるNo.14の鋼板の表層部vTrsおよび板厚中心部vTrsは、滞留時間が50secを超えているNo.13の鋼板より優れている。
これに対して、比較鋼板No.15〜26(比較例)は、引張強度、表層部vTrs、板厚中心部vTrsの内、少なくとも一つが上記目標範囲を外れている。以下、これらの比較例を個別に説明する。
直接焼入れ開始温度が本発明範囲から外れている鋼板No.15は、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度が本発明範囲を外れている鋼板No.16、24は、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
加熱温度が本発明範囲から外れている鋼板No.17は、表層部および板厚中心部のvTrsが目標値に達していない。
焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度が本発明範囲を外れている鋼板No.18は、表層部vTrsが目標値に達していない。
直接焼入れ停止温度が本発明範囲から外れている鋼板No.19は、引張強度が目標値に達していない。
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度および板厚中心部の最高到達温度が本発明範囲よりも高い鋼板No.20、21は、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度および板厚中心部の最高到達温度が本発明の範囲よりも低い鋼板No.22、25は、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
表面および板厚中心部における昇温速度が本発明範囲から外れている鋼板No23、26は、生産の能率が低く、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
(実施例2)
次に、表3に示す化学成分の鋼A1〜F1を溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行った。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、2台または3台のソレノイド型誘導加熱装置を用いて、連続的に焼戻し処理を行った。なお、本実施例では、引張強度780MPa級を目標特性とするために、Pcm値を実施例1より大きな値とした。以上の鋼板製造条件を表4に示す。表4において、電力密度、表面の昇温速度および板厚中心部の昇温速度の定義は、上記実施例1と同様であり、引張強度の測定方法および靭性の評価方法も上記実施例1と同様である。但し、材料特性の目標値は、引張強度:780MPa以上、表層部および板厚中心部のvTrs:−40℃以下とした。
次に、表3に示す化学成分の鋼A1〜F1を溶製してスラブに鋳造し、加熱炉で加熱後、圧延を行った。圧延後、引続き直接焼入れし、次いで、2台または3台のソレノイド型誘導加熱装置を用いて、連続的に焼戻し処理を行った。なお、本実施例では、引張強度780MPa級を目標特性とするために、Pcm値を実施例1より大きな値とした。以上の鋼板製造条件を表4に示す。表4において、電力密度、表面の昇温速度および板厚中心部の昇温速度の定義は、上記実施例1と同様であり、引張強度の測定方法および靭性の評価方法も上記実施例1と同様である。但し、材料特性の目標値は、引張強度:780MPa以上、表層部および板厚中心部のvTrs:−40℃以下とした。
表4から明らかなように、本発明範囲内で製造した鋼板No.1〜14(本発明例)の引張強度、表層部vTrsおよび板厚中心部vTrsは、何れも、目標値を満足している。また、板厚中心部の温度が500〜600℃の範囲内に滞留する時間のみが異なる本発明例No.13とNo.14とを比較すると、滞留時間が50sec以内であるNo.14の鋼板の表層部vTrsおよび板厚中心部vTrsは、滞留時間が50secを超えているNo.13の鋼板より優れている。
これに対して、比較鋼板No.15〜26(比較例)は、引張強度、表層部vTrs、板厚中心部vTrsの内、少なくとも一つが上記目標範囲を外れている。以下、これらの比較例を個別に説明する。
直接焼入れ開始温度が本発明範囲から外れている鋼板No.15は、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度が本発明範囲を外れている鋼板No.16は、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
加熱温度が本発明範囲から外れている鋼板No.17は、表層部および板厚中心部のvTrsが目標値に達していない。
焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度が本発明範囲を外れている鋼板No.18は、表層部vTrsが目標値に達していない。
直接焼入れ停止温度が本発明範囲から外れている鋼板No.19は、引張強度が目標値に達していない。
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度および板厚中心部の最高到達温度が本発明範囲よりも高い鋼板No.20は、引張強度、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度および板厚中心部の最高到達温度が本発明範囲よりも高い鋼板No.21は、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
焼戻し時の鋼板表面の最高到達温度および板厚中心部の最高到達温度が本発明の範囲よりも低い鋼板No.22、25は、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
表面および板厚中心部における昇温速度が本発明範囲から外れている鋼板No23、26は、生産の能率が低く、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度が本発明範囲を外れている鋼板No.24は、表層部および板厚中心部のvTrsが何れも目標値に達していない。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.06〜0.18%、
Si:0.05〜0.6%、
Mn:0.5〜1.6%、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.0005〜0.008%、
P:0.03%以下、
S:0.03%以下、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
で定義されるPcm値が0.30%以下である鋼を、1000〜1300℃の温度範囲に加熱し、所定の板厚に熱間圧延した後、引続きAr3変態点以上から直接焼入れして400℃以下の温度域で冷却を停止した後、圧延機および直接焼入れ装置と同一の製造ライン上に設置されたソレノイド型誘導加熱装置を用いて、焼戻し時における鋼板表面の最高到達温度を500℃〜720℃、板厚中心部の最高到達温度を500〜700℃の範囲に、鋼板表面の昇温速度が25℃/sec以上、板厚中心部の昇温速度が1℃/sec以上となるように急速加熱して、焼戻し処理を施すことを特徴とする高張力鋼板の製造方法。 - 焼戻し処理過程において、板厚中心部の温度が500℃から最高到達温度に到達するまでの鋼板の滞留時間を50sec以内とし、板厚中心部の最高到達温度を550℃から600℃未満の温度範囲として焼戻し処理することを特徴とする、請求項1記載の高張力鋼板の製造方法。
- 焼戻し処理過程おいて、板厚中心部の温度が500℃以上、600℃以下の温度範囲における鋼板の滞留時間を50sec以内とし、板厚中心部の最高到達温度を600℃以上として焼戻し処理することを特徴とする、請求項1記載の高張力鋼板の製造方法。
- 焼戻し時における鋼板表面の急速加熱を、25℃/sec以上の昇温速度で少なくとも2回以上行うことを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の高張力鋼板の製造方法。
- 質量%で、さらに、
Cu:1%以下、
Ni:4%以下、
Cr:1%以下、
Mo:1%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載の高張力鋼板の製造方法。 - 質量%で、さらに、
Nb:0.05%以下、
V:0.5%以下、
Ti:0.03%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から5の何れか1つに記載の高張力鋼板の製造方法。 - 質量%で、さらに、
B:0.0030%以下、
Ca:0.01%以下
の1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1から6の何れか1つに記載の高張力鋼板の製造方法。 - 焼戻し処理過程において、周波数:2000Hz以下のソレノイド型誘導加熱装置を用いて、電力密度:500W/cm2以下の条件で、加熱して焼戻し処理を施すことを特徴とする、請求項1から7の何れか1つに記載の高張力鋼板の製造方法。
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