JPH0726164Y2 - タイヤ空気圧調整装置用シール装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、自動車のタイヤ空気圧を運転席から調整す
るためのタイヤ空気圧調整装置に使用されるシール装置
に関する。

［従来の技術］ 自動車のタイヤの空気圧は、制動や操向などの安全性に
大きな影響を及ぼすばかりでなく、タイヤの寿命や乗り
心地性にも関係する。このため、近年においては、タイ
ヤの空気圧を走行条件に応じて車室内から適正に調整で
きるようにしたタイヤ空気圧調整装置が開発されてい
る。

従来のタイヤ空気圧調整装置は、空気供給源からの圧縮
空気を、空気パイプを通じて車軸ケースの通気路に導
き、この通気路から車軸内の通気路を通して再び空気パ
イプによりタイヤ内に導いていた。車軸ケースは非回転
であり、車軸は回転するので、両者間の相対回転部分に
おける通気路を通じての空気の授受には、空気洩れを防
ぐためのシール装置がどうしても必要になる。

従来のこの種のシール装置としては、例えば実開昭62−
151104号公報に開示されたものが知られている。このシ
ール装置は、第６図に示すように、車軸ケース１の内部
にシール装着部２を形成するとともに、車軸ケース１に
形成された空気穴３に連通する空気穴４を有するスペー
サー５を介して一対の耐圧オイルシール6,7を向かい合
わせ、これらを止め輪８により車軸ケース１に固定した
構造を備えている。各オイルシール6,7のリツプ先端部6
a,7aは車軸９の外周面に圧接しており、その間に車軸９
内の通気路10の一端部が開口している。したがつて、矢
印Ａ方向から供給された圧縮空気は、車軸ケース１の空
気穴３およびスペーサー５の空気穴４を通つて、一対の
オイルシール6,7とスペーサー５および車軸９とによつ
て形成された密閉空間に入り、ここから車軸９の通気路
10を通つて矢印Ｂ方向からタイヤに向けて送られる。

［考案が解決しようとする課題］ しかしながら、従来のこのようなシール装置において
は、各オイルシール6,7のリツプ先端部6a,7aが車軸９の
外周面に線接触しているため、圧縮空気を供給した加圧
時に接触圧が高くなり、リツプ先端部6a,7aの摩耗が促
進されて長期にわたつて密封性が維持できない問題点が
ある。また、一対のオイルシール6,7とスペーサー５お
よび車軸９によつて形成された空間は常に空気穴3,4及
び通気路10に連通しているために、この空間内にグリー
スを封入することができず、したがつて密封対象が空気
だけとなるため空気が洩れやすく、また潤滑不足により
リツプ先端部6a,7aの摩耗が促進されて、同様に長期に
わたつて密封性が維持できない問題点がある。

そこでこの考案の目的は、リツプ先端部をグリースで潤
滑できるとともに密封性を長期にわたつて維持すること
のできるタイヤ空気圧調整装置用のシール装置を提供す
ることにある。

［課題を解決するための手段］ 上記目的を達成するため、この考案によるシール装置
は、それぞれ半径方向内側にリツプ先端部を有する主シ
ールおよび副シールを組み合わせて両者間にグリース充
填用の密閉空間を形成し、さらに副シールに主シールと
の間の密閉空間に対し吸排気を行なう弁手段を設けると
ともに、主シールのリツプ先端部のリツプ摺動面に緩傾
斜部とこれに連続する急傾斜部を設け、このリツプ摺動
面に自己潤滑性薄板を貼着したシールリングを備えてい
る。

［作用］ シールリング内の密閉空間内に充填されたグリースは、
空気通路から弁手段を介して密閉空間内に導入された空
気の圧力により押圧されて主シールのリツプ先端部を相
手部材に押圧するとともに、主シールおよび副シールの
リツプ先端部を潤滑する。また、圧縮空気導入時に主シ
ールのリツプ先端部が相手部材に強く押圧されると、リ
ツプが撓んでその摺動面の自己潤滑性薄板が相手部材に
面接触し、それによつてリツプ先端部の不必要な摩耗を
防止する。

［実施例］ 以下、この考案の一実施例を説明するが、まず第４図を
参照してこの考案によるシール装置を使用したタイヤ空
気圧調整装置の概略を説明する。空気供給源に接続され
た空気パイプ11は、車軸ケース12の壁内に形成された通
気路13の一端に接続され、通気路13の他端は、シール装
置30を介して、ハブ14に形成された通気路15の一端に接
続されている。通気路15の他端は空気パイプ16の一端に
接続され、空気パイプ16の他端は、タイヤ17の内部に開
口している。車軸ケース12内には車軸18が回転可能に収
容され、ハブ14は車軸18にボルト19により固定され、タ
イヤ17はホイールデイスク20を介してハブナツト21によ
りハブ14に固定されている。またハブ14の内周面と車軸
ケース12の外周面との間には、アウタベアリング22およ
びインナベアリング23が介装されている。したがつて、
非回転の車軸ケース12に対し、車軸18の回転はハブ14か
らホイールデイスク20、タイヤ17へと伝えられ、ハブ14
は車軸ケース12に対し相対運動する。符号24はブレーキ
ドラムを示している。

シール装置30は、ハブ14の内周面に固着されており、ハ
ブ14とともに一体に回転する。したがつて車軸ケース12
の外周面に対して摺動することになり、高い気密性と潤
滑性とが要求される。

第１図には、このシール装置30の詳細が示されている。
このシール装置30はリング状になつているので、その軸
方向の断面は図において上下対称に表われ、第１図はそ
の上側の断面部分を示している。

シール装置30は、一側部の端板31をハブ14の内周面に形
成されたシール装置装着段部25に当てがい、他側部を、
端板32を介して止め輪26をハブ14の内周面に形成された
係止溝27に嵌め込むことにより、ハブ14に固定される。

シール装置30は、二つのシールリング33,34をその中央
で一つのスペーサーリング35により結合した構成を備え
ている。二つのシールリング33,34は同じものを左右逆
向きに配置しただけなので、以下には一方のシールリン
グ34についてのみ、その構成を説明する。また軸方向に
ついて言うときは、スペーサーリング35側を内側とし、
その反対側を外側とする。

シールリング34は、主シール36および副シール37からな
り、例えばフツ素ゴム製の主シール36は、半径方向内側
に向いたリツプ38と半径方向外側に向いた延長部39とか
らなり、延長部39の軸方向外側には、周囲に軸方向内側
に向いたフランジ40を有する金属製の補強環41が固着さ
れている。主シール36のリツプ38の先端部は、軸方向内
側の傾斜部38aと反対側の緩傾斜部38bとからなり、この
緩傾斜部38bは同方向にこれに連続する急傾斜部38cとと
もにリツプ摺動面42を形成している。そしてこのリツプ
摺動面42には、四弗化エチレン樹脂などの自己潤滑性を
有する薄板43が貼着され、この薄板43と補強環41との間
の断面三角形の部分には樹脂製のバツクアツプリング44
が装着されている。

一方、アクリルゴム製の副シール37は、半径方向内側に
向いたリツプ45と、周囲に軸方向外側に向いたフランジ
46を有する半径方向外側に向いた延長部47とからなり、
延長部47には、そのフランジ46内に埋まるフランジ48を
有する金属製の補強環49が一体にインサート成形されて
いる。リツプ45の先端部は、軸方向内側に向いた傾斜部
45aと反対側に向いた傾斜部45bとからなり、リツプ45の
すぐ上の延長部47および補強環49は、軸方向外側に凹ん
で、そこに凹段部50が形成されている。

主シール36は、その補強環41のフランジ40が副シール37
のフランジ46の半径方向内側に圧入されて組み合わさ
れ、両者の間にグリース充填用の密閉空間51が形成され
る。また、角リツプ38および45は、ガータースプリング
52,53により半径方向内側へ押圧付勢されている。そし
て、副シール37の延長部47には、チエツクバルブである
スリツト型の吸気弁54が設けられ、密閉空間51の内部に
空気を導入できるようになつている。またこの実施例で
は、副シール37のリツプ45が、密閉空間51内の空気を外
部に排除する排気弁を兼ねている。

このようにして主シール36と副シール37との組み合わせ
からなるシールリング34は、これを軸方向において左右
逆向きにすると、他方のシールリング33になる。そして
両方のシールリング33,34は、その中央にスペーサーリ
ング35を介して結合される。金属製のスペーサーリング
35は、軸方向両側に張り出したフランジ55を半径方向内
側に有し、このフランジ55に、両方のシールリング33,3
4の副シール37の凹段部50を圧入することにより、両シ
ールリング33,34がスペーサーリング35に一体的に結合
される。スペーサーリング35は、円周方向の数箇所に半
径方向に貫通する通気穴56を有し、その両側面にはこれ
ら通気穴56に連通する環状溝57,58が形成されている。
各環状溝57,58は、各シールリング33,34の吸気弁54,54
に連通しており、各シールリング33,34をスペーサーリ
ング35に組み付ける際に、吸気弁54,54がどの位置にあ
つても環状溝57,58を通じて通気穴56に連通できるよう
になつている。

このようにして組み立てられたシールリング組立体は、
それぞれの密閉空間51内にグリースを充填した後、その
両側面に端板31,32を当てがい、端板31を介してハブ14
の内周面に形成されたシール装置装着段部25に位置決め
するとともに、他方の端板32を介して止め輪26をハブ14
の内周面に形成された係止溝27に嵌め込むことにより、
ハブ14に固定される。そしてこのようなシールリング組
立体の内周部を車軸ケース12の外周部に嵌め込むことに
より、各リツプ38,45の先端部が車軸ケース12の外周面
に線接触状態で圧接する。これにより、スペーサーリン
グ35の半径方向外側部は、両方の副シール37とハブ14と
で密閉されるとともに、ハブ14の通気穴15に連通する。
またスペーサーリング35の半径方向内側部は、両方のリ
ツプ45と車軸ケース12とで密閉されるとともに、車軸ケ
ース12の通気路13に連通する。そしてグリースが充填さ
れた両方の密閉空間51は、両方のリツプ38,45と車軸ケ
ース12とで密閉される。

次にこのシール装置の作用について説明する。タイヤの
空気圧を上げるときには、車軸ケース12の通気路13を通
じて圧縮空気が導入される。この圧縮空気は、スペーサ
ーリング35の通気穴56を通つてハブ14の通気路15から、
第４図に示すように空気パイプ16を通つてタイヤ17の内
部に供給される。スペーサーリング35の通気穴56を通る
圧縮空気の一部は、吸気弁54から密閉空間51内に入り、
そこに充填されたグリースを介して主シール36のリツプ
38先端部を車軸ケース12の外周面に押圧する。これによ
り、リツプ38が撓んでその摺動面42上の自己潤滑性薄板
43が車軸ケース12の外周面に面接触して面圧を下げ、リ
ツプ38先端部の不必要な摩耗を回避するとともに、リツ
プ38先端部からの空気洩れを防止する。また、圧縮空気
により押圧されたグリースが各リツプ38,45の先端部と
車軸ケース12の外周面との間に介在してその部分の潤滑
を行ない、各リツプ38,45の先端部の摩耗を防止する。
一方、タイヤの空気圧を下げるために通気路15、通気穴
56及び通気路13を通してタイヤから圧縮空気を排出させ
ていくと、密閉空間51内の圧力の高い空気は、排気弁を
兼ねる副シール37のリツプ45先端部からスペーサーリン
グ35側に排除されて両者間の空気圧力が、タイヤの空気
圧と同一の低い圧力で均衡する。これにより、主シール
36のリツプ38先端部が元の線接触状態に戻り、リツプ38
に対する過負荷が軽減されるとともに、リツプ38先端部
からの空気洩れが防止される。

第２図には、この考案の別の実施例が示されている。上
記実施例と異なるのは、スペーサーリング351が、吸気
弁541より半径方向外側に位置しており、その外周面に
環状溝352を有するとともに、この環状溝352に連通して
半径方向に貫通する通気穴353が、円周方向に１ケ所ま
たは数ケ所設けられていることである。二つのシールリ
ング331,341とスペーサーリング351との結合は、図示さ
れない突起と溝等による公知の結合手段または接着等に
より行なわれる。この実施例には、スペーサーリング35
1を小型軽量化し、形状を単純化できる利点がある。

第３図に示すこの考案のさらに別の実施例においては、
二つのシールリング332,342の互いに対向する各副シー
ル372の延長部472が厚肉に形成され、その側面に半径方
向の溝473が円周方向に１ケ所または数ケ所設けられて
いる。溝473のうちの少なくとも二つは吸気弁542に対向
していなければならない。二つのシールリング332,342
は、その副シール372が互いに図示されない突起と溝等
の公知の結合手段または接着等により結合される。この
実施例では、スペーサーリングが不必要になるので、部
品点数および作業工数を減らすことができ、構造が簡単
になつてコストを低減できる利点がある。

第１図に示す実施例においては、副シール37の半径方向
内側に主シール36を嵌合させてあるが、逆に主シール36
の半径方向内側に副シール37を嵌合させるようにしても
よい。また、主シール36の補強環41を樹脂製としてバツ
クアツプリング44と一体化してもよい。さらに、副シー
ル37のリツプ45が排気弁を兼ねているが、吸気弁54を両
方向弁としてこれに吸排気機能を持たせてもよい。この
場合、グリース保持のためのリツプ45をダブルリツプと
して、密閉空間51内のグリースおよび空気に対する密封
性をさらに高めることができる。また、密閉空間51内の
吸排気を行なう手段としては、スリツト型の他にポペツ
ト型、ボール型、ニードル型、スプール型等、種々の弁
が使用できる。

これらの変形は、第２図および第３図に示すこの考案の
他の実施例に対しても適用できるばかりでなく、この考
案をさらに種々に変形することができる。

第５図には、第１図に示すものと同様なシール装置130
を別のタイプのタイヤ空気圧調整装置に適用した例が示
されている。このシール装置130は、車軸ケース121の内
周面に固着されており、その主シール136および副シー
ル137のリツプ先端部が車軸181の外周面に接触してい
る。車軸181の内部には通気路182が形成され、軸181の
端部にハブ141が一体に形成されている。ハブ141は、ハ
ブナツト211によつてデイスクホイール201に固定されて
いる。車軸ケース121には、シール装置130のスペーサー
リング135に対向する通気穴131が形成され、スペーサー
リング135はまた、車軸181の通気路182の一端部に対向
している。

通気穴131に接続された空気パイプ111から供給された圧
縮空気は、シール装置130を通つて車軸181内の通気路18
2から空気パイプ161を通じてタイヤ171に供給される。

なお、上述の実施例においては、二つのシールリングを
組合わせて一体的に用いたが、予め一体に成形しても良
いことは勿論である。

［考案の効果］ 以上のように、この考案によるタイヤ空気圧調整装置用
シール装置は、それぞれ半径方向内側にリツプ先端部を
有する主シールおよび副シールを組み合わせて両者間に
グリース充填用の密閉空間が形成され、さらに副シール
に主シールとの間の密閉空間に対し吸排気を行なう弁手
段を設けられるとともに、主シールのリツプ先端部のリ
ツプ摺動面に緩傾斜部とこれに連続する急傾斜部が設け
られ、このリツプ摺動面に自己潤滑性薄板が貼着される
シールリングを備えているので、タイヤに圧縮空気を供
給した加圧時には、圧縮空気の一部が弁手段を通じて密
閉空間内に導入され、密閉空間内部に充填されたグリー
スを介して主シールのリツプを押圧する。この結果、リ
ツプが撓んでその摺動面に貼着した自己潤滑性薄板が相
手部材に面接触して面圧を下げるので、リツプ先端部の
不必要な摩耗が防止されて、シール装置の密封性を長期
にわたつて維持することができる。また、圧縮空気によ
つて密閉空間内のグリースが押圧されるので、グリース
をリツプ先端部で保持することができ、潤滑不足による
摩耗を防止して、シール装置の密封性を長期にわたつて
確実に維持することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案の一実施例を示すタイヤ空気圧調整
装置用シール装置の部分断面図、第２図および第３図
は、それぞれこの考案の他の実施例を示す同様な部分断
面図、第４図は、この考案によるシール装置を適用した
タイヤ空気圧調整装置の一例を示す概略断面図、第５図
は、この考案によるシール装置を適用した他のタイヤ空
気圧調整装置の例を示す概略断面図、第６図は、従来の
タイヤ空気圧調整装置用シール装置の一例を示す部分断
面図である。 30…シール装置、31,32…端板、33,34…シールリング、
35…スペーサーリング、36…主シール、37…副シール、
38…リツプ、39…延長部、38b…緩傾斜部、38c…急傾斜
部、41…補強環、42…リツプ摺動面、43…自己潤滑性薄
板、44…バツクアツプリング、45…リツプ、47…延長
部、49…補強環、51…グリース充填用の密閉空間、52,5
3…ガータースプリング、54…吸気弁、56…通気穴（空
気通路）、57,58…環状溝。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 松井 規真 神奈川県川崎市中原区井田1293―５

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】タイヤ空気圧を調整するためのタイヤ空気
   圧調整装置の相対回転部分に使用されるシール装置であ
   つて、先端部のリツプ摺動面が緩傾斜部とこれに連続す
   る急傾斜部とからなる半径方向内側に向いたリツプを有
   するとともに、前記リツプ摺動面に自己潤滑性薄板が固
   着される主シールと、半径方向内側にリツプを有し、前
   記主シールと組み合わせられることにより両者間にグリ
   ース充填用の密閉空間を形成する副シールと、前記副シ
   ールに設けられて前記密閉空間に対し吸排気を行なう弁
   手段とを有するシールリングを備えたことを特徴とする
   タイヤ空気圧調整装置用シール装置。