JPH07255471A - キノン依存性グルコース脱水素酵素 - Google Patents

キノン依存性グルコース脱水素酵素

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JPH07255471A
JPH07255471A JP5088894A JP5088894A JPH07255471A JP H07255471 A JPH07255471 A JP H07255471A JP 5088894 A JP5088894 A JP 5088894A JP 5088894 A JP5088894 A JP 5088894A JP H07255471 A JPH07255471 A JP H07255471A
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electron acceptor
enzyme
glucose
quinone
glucose dehydrogenase
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JP5088894A
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English (en)
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Hiroaki Ebisuya
廣昭 恵美須屋
Masahiro Fukaya
正裕 深谷
Kazuyo Kajino
和代 梶野
Sumio Akita
澄男 秋田
Kichiya Kawamura
吉也 川村
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Nakano Vinegar Co Ltd
Original Assignee
Nakano Vinegar Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 以下の理化学的性質を有するキノン依存性グ
ルコース脱水素酵素及びその製造方法。 作用:グルコースを酸化してグルコノデルタラクトンを
生成する酵素反応を触媒する。基質特異性:グルコース
に対して作用する。最適pH及び安定pH範囲::ヘキ
サシアノ鉄(III) 酸カリウムを電子受容体としたときは
それぞれpH3.0、pH5.0〜7.0である。作用適温の
範囲:10〜30℃。熱安定性:30℃、10分間の処理で約90
%の酵素活性を保持する。阻害剤:重金属により阻害さ
れる。分子量:約88,000である。 【効果】 本発明により、新規キノン依存性グルコース
脱水素酵素及びその製法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、キノン依存性グルコー
ス脱水素酵素及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】グルコース脱水素酵素には種々の生物起
源のものが知られており、従来よりグルコースの定量等
に広く利用されている。従来のグルコースの定量に利用
されるグルコース脱水素酵素としては、NADを補酵素
とするものが挙げられ、これ以外にも、NADPを補酵
素とするするものが報告されている( "Methods in Enzy
mology”、89巻、 159頁〜163頁、1982年) 。
【0003】近年、上述のNADやNADP等の補酵素
を電子受容体とするグルコース脱水素酵素に加えて、新
たにフェナジンメソサルフェートやジクロロフェノール
インドフェノールなどを電子受容体とする(いわゆる人
工電子受容体と呼ばれる)第3のタイプのグルコース脱
水素酵素が見いだされた(“Principles and Applicati
ons of Quinoproteins" Marcel Dekker, Inc. 47頁〜63
頁、1993年)。この酵素は、シュウドモナス属やアシネ
トバクター属やクレブシエラ属に属する微生物の産物か
ら見いだされており、大腸菌由来においてもアポ酵素の
形で存在することが知られている。
【0004】この第3のタイプの酵素は、補酵素として
ピロロキノリンキノン(PQQ)を持っており、シュウ
ドモナス属由来の酵素ではユビキノン類を電子受容体と
することができる酵素である(Agric. Biol. Chem., 44
巻、1505頁〜1512頁、1981年、"Methods in Enzymolog
y"、89巻、149頁〜154頁、1982年)。上記のPQQを補
酵素とするグルコース脱水素酵素(以下、「キノン依存
性グルコース脱水素酵素」と称する)は、反応の最適p
Hが酸性側にあり、また、反応が不可逆的に進行するこ
とから、定量用酵素として好適な酵素であると考えられ
る。即ち、前記PQQを補酵素とするグルコース脱水素
酵素を定量用酵素として利用する場合、反応液中に試料
とグルコース脱水素酵素および人工電子受容体を加えた
結果、試料中にグルコースが存在すれば、グルコースか
らグルコノデルタラクトンへの酸化反応がおこり、この
反応と共役してPQQの還元がおこり、さらにPQQか
ら上記の電子受容体に電子が伝達される。この電子受容
体の酸化反応を、通常、電子受容体由来の人工色素によ
る色調変化を吸光度で測定し、得られた値をグルコース
量に換算することによって定量することが可能となる。
【0005】しかし、グルコース脱水素酵素は、補酵素
であるPQQと酵素蛋白の結合がマグネシウムなどの金
属イオンを介した結合で弱く、透析などの操作で容易に
脱離し、アポ化するため実用的には利用が困難である。
また、従来からグルコース脱水素酵素の電子受容体とし
て知られている人工色素は、自動酸化を受けやすかった
り、光で分解されたりするため不安定であり、電子受容
体としては適当でない。
【0006】一方、天然の電子伝達物質であるユビキノ
ンについては、比較的安定な物質であるが、側鎖のイソ
プレノイド単位の長さが9という長い脂肪族側鎖のため
水に不溶であり、電子受容体としては適当でない。この
ため、短鎖であるユビキノン−1やユビキノン−2につ
いても電子受容体としての使用可能について検討されて
いるが、シュウドモナス属に属する微生物由来の酵素で
は、フェナジンメソサルフェートの1/10程度の速度でし
か反応できず、ほとんど電子受容体とはならない(“Me
thods in Enzymology"、89巻、 149頁〜154頁、1982
年)。
【0007】更に、グルコノバクター属に属する微生物
由来のグルコース脱水素酵素では、ユビキノン−1との
反応はないことが報告されている(Agric. Biol. Che
m., 45巻、 851頁〜861頁、1981年)。従って、上記P
QQ及びユビキノンのいずれの場合にもグルコース脱水
素酵素の電子受容体として実用的に利用することは、実
際は困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記諸問題
を解決した実用的な化合物を電子受容体とするグルコー
ス脱水素酵素及びその製法を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、同一のP
QQを補酵素とするアルコール脱水素酵素であっても、
該アルコール脱水素酵素を産生する微生物の属や種によ
って酵素の安定性や基質特異性などに違いがあることを
見いだし、実用的な酵素の開発に成功した(特開昭63
−12278号公報)。
【0010】本発明者らは、前記公開公報記載の発明に
着目し、同一のPQQを補酵素とするグルコース脱水素
酵素であっても、該グルコース脱水素酵素を産生する微
生物の属や種によって上記のPQQの保持性や電子受容
体について違いがあり、しかも、上記の問題点を解決で
きるグルコース脱水素酵素が存在するとの期待から種々
の微生物について鋭意検討した。
【0011】その結果、アセトバクター属由来のグルコ
ース脱水素酵素であって、PQQを補酵素とするグルコ
ース脱水素酵素が、従来報告されているグルコース脱水
素酵素とは異なり、透析等の操作によっても容易にPQ
Qが離脱せず、きわめて安定な酵素であることを見いだ
した。さらに、前記アセトバクター属に属する微生物由
来のグルコース脱水素酵素の電子受容体として有効な物
質を鋭意検索した結果、従来その酵素では全く、あるい
はほとんど電子受容体にならなかった、イソプレン側鎖
の無い又は短い水溶性のユビキノン、即ち、ユビキノン
−0、ユビキノン−1又はユビキノン−2が電子受容体
としてきわめて有効であることを見いだし、本発明を完
成した。
【0012】即ち、本発明は、以下の内容を包含する。 (1):以下の理化学的性質を有するキノン依存性グル
コース脱水素酵素。 (a)作用:グルコースを酸化してグルコノデルタラク
トンを生成する下記の酵素反応を触媒する。
【0013】グルコース+電子受容体 → グルコノデ
ルタラクトン+還元型電子受容体 〔電子受容体は、CoQn(ユビキノン;nは0〜10
の整数を表す)、ベンゾキノン、フェナジンメソサルフ
ェート、2, 6−ジクロロフェノールインドフェノー
ル、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを表す。〕 (b)基質特異性:グルコースに対するKm値(ミカエ
リス定数)は、30℃、pH3.0(マクイルベイン氏緩衝
液)で3.3 ×10-3Mである。 (c)最適pH:最適pHは、グルコースを基質にした
場合、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを電子受容体と
したときはpH3.0、フェナジンメソサルフェート−
2, 6−ジクロロフェノールインドフェノールを電子受
容体とした場合は、pH6.5である。 (d)安定pH範囲:安定pH範囲は、ヘキサシアノ鉄
(III) カリウムを電子受容体とした場合はpH5.0から
7.0である。 (e)作用適温の範囲:10〜30℃の範囲にある。 (f)熱安定性:30℃、10分間の処理で約90%の酵素活
性を保持し、37℃、10分間の処理でも約50%の残存活性
を示す。 (g)阻害剤:銅、ニッケル、亜鉛などの重金属により
阻害される。 (h)分子量:SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法
で測定した結果、約88,000である。 (2):キノン依存性グルコース脱水素酵素を産生する
アセトバクター属に属する微生物を培地に培養し、培養
物から前記キノン依存性グルコース脱水素酵素を採取す
ることを特徴とするキノン依存性グルコース脱水素酵素
の製造方法。
【0014】以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本
発明の精製酵素であるキノン依存性グルコース脱水素酵
素(以下「本酵素」とする)の理化学的性質を説明する
と、以下の通りである。 (1)作用 本酵素は、グルコースを酸化してグルコノデルタラクト
ンを生成する下記の酵素反応を触媒する。
【0015】グルコース+電子受容体 → グルコノデ
ルタラクトン+還元型電子受容体 〔電子受容体は、CoQn(ユビキノン;nは0〜10
の整数を表す)、ベンゾキノン、フェナジンメソサルフ
ェート、2, 6−ジクロロフェノールインドフェノー
ル、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを表す。〕 (2)基質特異性 本酵素の基質特異性を調べるために以下の反応条件で調
べた。
【0016】本酵素と、150nmolのユビキノン−0(以
下「CoQ0」と言う)を含む50mMクエン酸バッファ
ー0.9mlに1Mの各基質溶液を0.1ml加えて30℃でインキ
ュベートする。反応に伴って減少するユビキノンの量を
CoQ0の吸収極大である268nmの吸光度の経時変化を分
光光度計で測定する。本酵素の基質特異性の例を第1表
に示す。本酵素は、グルコースを良好な基質として作用
する。また、単糖でキシロース、ガラクトース及びマン
ノース、2糖類ではマルトースなどを酸化する。
【0017】
【表1】
【0018】グルコースに対するKm値(ミカエリス定
数)は、30℃、pH3.0(マクイルベイン氏緩衝液)で
3.3 ×10-3Mである。 (3)最適pH 本酵素の最適pHは、グルコースを基質にした場合、第
1図に示すようにヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを電
子受容体としたときはpH3.0、フェナジンメソサルフ
ェート−2, 6−ジクロロフェノールインドフェノール
を電子受容体とした場合は、pH6.5である。 (4)安定pH範囲 第2図に示すように、本酵素はpH5.0から7.0で25
℃、16時間放置後もほぼ100%の残存活性〔ヘキサシア
ノ鉄(III) カリウムを電子受容体とし、活性をpH3.0
で測定〕を示す。 (5)作用適温の範囲 第3図に示すように、作用温度範囲は10〜30℃である。 (6)熱安定性 第4図に示すように、pH6.0で各温度10分間処理する
と、30℃までの温度では失活せず、37℃で約50%の残存
活性がある。 (7)阻害剤 第2表に示すように、1mMの銅、ニッケル、亜鉛などの
重金属により阻害される。
【0019】
【表2】
【0020】(8)分子量 SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法において、分子
量標準蛋白質としてホスホリラーゼb(分子量 94,00
0)、アルブミン(分子量 67,000)、オボアルブミン(分
子量 43,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量 3
0,000)、トリプシンインヒビター(分子量 20,100)及び
α−ラクトアルブミン(分子量 14,400)を使用し、これ
ら標準蛋白質と本酵素との相対的泳動度により測定した
結果、本酵素の分子量は約88,000である。 (9)電子受容体 ユビキノン(CoQ0 、CoQ1 、CoQ2 、Co
8 、CoQ9 、CoQ10など)、ベンゾキノン、フェ
ナジンメソサルフェート(以下「PMS」とする)、
2, 6−ジクロロフェノールインドフェノール(以下
「DCIP」とする)、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウ
ム、などが本酵素の電子受容体になりうる。NAD、N
ADPおよび酸素は、本酵素の電子受容体にならない。 (10)力価の測定法 第3表に示した通り、本酵素、CoQ0 若しくはユビキ
ノン−1(CoQ1 )及び基質であるグルコースを含む
組成の反応液を30℃でインキュベートし、反応に伴って
減少するユビキノンの量をCoQ0 またはCoQ1 の吸
収極大である268nm または275nm の吸光度の経時変化量
を分光光度計で測定することにより、力価を測定する。
1μmoleのグルコースを1分間に酸化する酵素量を1単
位とする。比活性は、酵素蛋白質1mg当たりの単位数で
表す。
【0021】
【表3】
【0022】ユビキノン誘導体を電子受容体として酵素
力価を測定する場合以外にも、本酵素の力価を測定する
こともできる。PMSを電子受容体とする場合を例示す
ると、第4表に示した組成の溶液中に本酵素を添加して
30℃でインキュベートした後、反応に伴って増加するD
CIPの経時的変化量を、吸収極大である600nm の吸光
度を指標として測定することにより、力価を測定するこ
ともできる。
【0023】酵素活性の単位は、30℃で1μmoleのDC
IPを1分間に還元する酵素量を1単位と定義する。比
活性は、酵素蛋白質1mg当たりの単位数で表す。
【0024】
【表4】
【0025】更に、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを
電子受容体としても本酵素の力価を測定することが可能
である。第5表の反応溶液を用いて、本酵素0.01mlを第
5表に記載した組成の溶液1.0mlに添加して30℃、5分
間反応させた後、Ferricsulfate-Dupanol 試薬(W.A. W
ood 他、"Method in enzymology" 5巻、287頁(1962)
0.5mlを加えて反応を停止させる。直ちに水を加えて
全量を5mlとし、37℃で30分放置後、660nm の吸光度を
測定する。この場合、1μmoleのグルコースを1分間に
酸化する酸素量を1単位とする。比活性は、酵素蛋白質
1mg当たりの単位数で表す。
【0026】
【表5】
【0027】次に、本酵素の製造法について説明する。
本発明において使用される微生物は、本酵素を生産でき
る微生物であれば特に限定はないが、アセトバクター属
に属する微生物が好適に使用される。菌株としては、ア
セトバクター・アセチ IFO3284、アセトバクター・パス
ツリアヌス IFO3222、アセトバクター・キシリナム IFO
13772 、ATCC 10245などが使用できる。
【0028】次に、本発明で使用する培地としては、通
常の微生物を培養する培地であればよい。即ち、炭素
源、窒素源、無機塩、その他の栄養素を適宜混ぜていれ
ば、合成培地、天然培地のいずれでも可能である。炭素
源としては、資化可能な糖、例えばグルコース、フラク
トース、シュクロース、マンニトール等を用いることが
でき、グルコースが好適に使用される。
【0029】窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウ
ム、塩化アンモニウム等の無機窒素源やグルタミン酸、
酵母エキス、ポリペプトン等を用いることができる。無
機塩としては、リン酸塩、マグネシウム塩等の塩類が使
用できる。本発明においては、炭素源としてグルコー
ス、又はグルコースを構成糖とするシュクロースを含有
する培地で培養したときにキノン依存性グルコース脱水
素酵素が最も収量良く得られる。該培養培地の好適な例
としては、例えば、グルコースを3.0%、酵母エキスを
0.5%、ポリペプトンを0.2%、リン酸塩を0.1%含む組
成であり、pH6.5の培地例が挙げられる。
【0030】培養は、通常20〜35℃の範囲内で行い、30
℃が好ましい。培養開始のpHは3.0〜7.0の範囲で、3.
0付近が好ましい。このような条件下で6〜72時間振盪
培養又は通気攪拌培養を行えば培養物中に本酵素が効率
良く蓄積される。本酵素を生産することのできる微生物
を培養するにあたっては、固体培地を使用することもで
きるが、多量の菌体を得るには液体培地を用いて振盪培
養または通気攪拌培養を行うのが好ましい。大量培養に
おいては、まず小規模な前培養を行い、得られた培養物
を本培地に接種することが好ましい。
【0031】本酵素は、培養時間を長くすると菌が溶菌
して培地中に溶出されるようにもなるが、通常は菌体内
に蓄積されるため、培養物を遠心分離又は濾過等によっ
て集菌し、適量の緩衝液中で菌体を破砕(超音波破砕、
溶菌酵素を用いる方法、機械的破砕、化学的破砕等)し
て酵素を可溶化することによって溶液中に遊離させる。
【0032】本酵素の細胞内の局在性は細胞質膜画分で
あるため、このようにして得られた菌体破砕液より、膜
成分と菌体内成分を常法により濾過又は遠心分離によっ
て分離し、得られた膜成分に適当な界面活性剤、たとえ
ばトリトンX-100などの非イオン界面活性剤を加えるこ
とにより該画分から可溶化する。このようにしてキノン
依存性グルコース脱水素酵素を得る。
【0033】そして、本酵素は、必要により酵素の単離
精製の常法に従って、例えば、界面活性剤存在下でジエ
チルアミノエチル−トヨパール(株式会社東ソー製、以
下、「DEAE−トヨパール」とする)などのイオン交
換材を用いたクロマトグラフィーやヒドロキシアパタイ
トを用いたクロマトグラフィー、あるいは、ゲル濾過ク
ロマトグラフィーなどの手段により精製され、本酵素を
得ることができる。
【0034】本酵素の精製の具体例を示すと次のとおり
である。菌体の破砕を機械的処理で行う場合は、フレン
チプレスで20,000psi程度の圧力をかけることによって
ほぼ完全に菌体に破砕される。また、膜画分からの界面
活性剤による可溶化において使用する界面活性剤の濃度
は0.1〜1%の範囲が通常である。可溶化された酵素は
既に50%以上の高純度の標品となっているが、更に純度
の高い標品を取得する場合は、特にイオン交換クロマト
グラフィーが有効であり、例えば、前記のDEAE−ト
ヨパールは有効である。クロマトグラフィーでは、使用
する緩衝液に0.01〜0.2%程度の界面活性剤を含有させ
ておく必要がある。これは、界面活性剤がないか、ある
いは低い濃度で精製すると酵素タンパク質の凝集がおこ
り、不活性化するのを防止するためである。
【0035】本酵素と従来から知られている可溶性キノ
ン依存性酵素("Principles and Applications of Quin
oproteins" Marcel Dekker, Inc. 47頁〜63頁、1993
年)とを、分子量、細胞内局在性、酸化活性、ヘキサシ
アノ鉄(III)酸カリウムを電子受容体としたときの最適
pHについて比較すると、下記の第6表から明らかなと
おり、顕著な相違が認められる。
【0036】
【表6】
【0037】また、本酵素と類縁のグルコノバクター属
に属する微生物由来の酵素とを、キシロース、ガラクト
ース若しくはリボースの酸化能力及び界面活性剤に対す
る影響について比較すると、本酵素は、キシロース、ガ
ラクトース、リボースのいずれの糖も酸化することがで
きる点で、前記糖を酸化できないグルコノバクター属に
属する微生物由来の酵素と相違する。
【0038】更に、本酵素とグルコノバクター属に属す
る微生物〔グルコノバクター・サブオキシダンス(Gluc
onobacter suboxydans) IFO 12528〕由来の酵素とを、
電子受容体の利用について酵素の比活性と反応速度(V
max)を指標として比較すると、本酵素は界面活性剤に
よって比活性や反応速度(Vmax)があまり影響されな
い点で、比活性やVmaxが大きく影響されるグルコノバ
クター属に属する微生物由来の酵素と相違する(第7表
参照)。
【0039】
【表7】
【0040】以上の結果から、本発明の酵素は、新規な
酵素と判断される。本酵素は、細胞膜に局在しているた
め、界面活性在で可溶化することにより、容易にかつ高
純度の酵素が取得可能なこと、透析などの操作によって
簡単にアポ化しないため酵素の安定性が高いこと、可溶
化のために使用する界面活性剤の種類による活性の影響
が少ないという特徴を有している。
【0041】特に界面活性剤の種類によって影響を受け
にくいことは、一定品質の酵素を製造する上で界面活性
剤の濃度を考慮する必要がないため、本酵素を利用する
上で大きな利点である。また、界面活性剤の種類にかか
わりなくキノンと高い反応性を示すことは、酵素反応を
利用したグルコースの定量を行う際の再現性が高くなる
有用な酵素である。
【0042】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説
明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されない。 〔実施例1〕 グルコース脱水素酵素の精製 シュクロース3%、酵母エキス0.5%及び、ポリペプト
ン0.2%の液体培地を30ml容の試験管に5mlずつ分注
し、オートクレーブ中で 120℃、15分間滅菌した。この
培地にアセトバクター・キシリナムATCC 10245を一白金
耳接種し、往復振とう機上で30℃にて24時間培養した。
同じ組成の培地100ml を500ml 容の坂口フラスコで作製
し、前記の培養液5mlを接種して往復振とう機上で30℃
にて24時間培養した。同じ組成の培地3Lを6L容のジ
ャーファーメンターに分注し、前記の培養液150ml を接
種して0.9L/分で通気し、攪拌しながら30℃にて16時
間培養した。培養終了後、培養液を4℃にて遠心分離す
ることにより湿重量約4.5gの菌体を得た。
【0043】この菌体を0.05Mリン酸カリウム緩衝液
(pH6.5) に懸濁し、20,000 psiでフレンチプレスを
通し菌体を破砕した後、68,000×gで60分間超遠心分離
し、膜画分を沈澱として得た。この沈澱を0.01Mリン酸
カリウム緩衝液(pH6.0) に懸濁した後、20%トリト
ン X-100を最終濃度が0.2%となるように加え、30分間
攪拌した。この液を68,000×gで60分間超遠心分離を行
い沈澱画分を得た。この沈澱を0.2M KCl を含む0.0
5Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.5) に懸濁し、20%
トリトン X-100を最終濃度が1.0%となるように加え、
30分間攪拌した。この液を再度68,000×gで60分間超遠
心分離を行い、本酵素が可溶化された上清を得た。この
溶液を0.1%トリトン X-100水溶液に対して透析をし
た。この透析液を0.1%Triton X-100の水溶液で平衡化
したDEAE−トヨパールを充填したカラムに注入し、
本酵素を吸着したのち、0Mから0.05Mまでのリン酸カ
リウム緩衝液で傾斜溶出した。0.03〜0.04M付近のリン
酸カリウム緩衝液で溶出する活性画分を集めて濃縮し、
本酵素の精製標品8.5mgを収率50.4%で得た。精製酵素
標品の力価はPMS−DCIPを電子受容体として測定
した場合、 200単位/mg蛋白質であった。また、本酵素
は前記性質を有していた。
【0044】〔参考例1〕グルコースの定量は、第5図
に概略を示す電池セル1を用いて行った。ただし、電池
セルの両極間に外部電源からの電圧を印加せずに使用し
た。第5図(a)に電池セル全体の概略を示し、第5図
(b)にその断面を示すように、電池セル1は、隔膜と
して用いるイオン交換膜(旭硝子製陽イオン交換膜CM
V)6によって分離された作用極2と対極4を備え、作
用極2及び対極4には各々カーボンフェルト(日本カー
ボン製GF-20-5F)3,5が挿入されている。また、作用
極2及び対極4は白金線7を介して電流積算計8に接続
されている。
【0045】第5図の装置を用い、作用極液としてpH
5.0の0.4Mリン酸緩衝液を用い、対極液として
0.45Mヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム溶液
(0.04Mリン酸緩衝液pH7.3)を用いて、1〜
20mMの各濃度のユビキノール誘導体CoQ22溶液
の測定を行った。第6図に、各試料5μlに対しての測
定結果を示す。第6図の横軸はCoQ22濃度(単位m
M)であり、縦軸は電流積算計8による測定電気量(m
C)である。第6図から明らかなように、CoQ22
度と電流積算計による測定電気量との間には良好な直線
関係が得られ、かつ、理論電気量とも一致し、絶対定量
が可能であることが示された。繰り返し再現性について
はいずれの試料の場合も、10回繰り返したときの変動
係数(以下、CV値とする)は3%以内であり優れた再
現性を示した。
【0046】CoQ22の代わりにCoQ02又はCo
12を使用して、上記と同様な試験を行ったところ、
いずれの場合もCoQ22と同様な結果が得られた。 〔参考例2〕 グルコース脱水素酵素の触媒により生成
するCoQ02量を指標としたグルコース量の定量 アセトバクター・キリシナム(Acetobacter xylinum) A
TCC 10245から実施例1記載の方法で調製したグルコー
ス脱水素酵素を用いて、本発明の方法によるグルコース
の定量を行った。
【0047】本酵素の反応は以下の通りである。 すなわち、グルコース脱水素酵素含有溶液(60U/m
l,0.1%トライトンX−100を含む40mMリン
酸緩衝液pH6.5)5μl、250mMのCoQ0
液8μl、基質として各種濃度のグルコース溶液(50
mMリン酸緩衝液pH6.5)87μlを混合し、室温
で15分放置した溶液5μlを調製した。
【0048】第5図の装置を用い、作用極液としてpH
5.0の0.4Mリン酸緩衝液を用い、対極液として
0.45Mヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム溶液
(0.04Mリン酸緩衝液pH7.3)を用いて、1〜
20mMの各濃度のユビキノール誘導体C022溶液
の測定を行った。第7図に結果を示す。グルコースの濃
度と電流積算計の測定電気量との間には良好な直線関係
が得られた。また、同じ試料を10回繰り返し測定した
ときのCV値は2.4%以下と良好であった。
【0049】〔参考例3〕 各種市販食品中のグルコー
スの測定 参考例2と同じ条件で各種市販食品中のグルコースの測
定を行った。同じ試料について高速液体クロマトグラフ
法〔(株)島津製作所製液体クロマトグラフ装置LC−
6A使用、検出器:昭和電工(株)製ShodexRI
SE−51、カラム:旭化成工業(株)製アサヒパック
NH2 P−50,4.6mmI.D.×250mm、移
動層:70%アセトニトリル溶液、流速:0.8ml/
分、カラム温度:室温、注入量:20μl〕と酵素キッ
ト法(ベーリンガー社製F−キット製品番号71626
0)による測定を行い比較した。
【0050】その結果、第8表に示すように良く一致し
た測定結果が得られた。
【0051】
【表8】
【0052】
【発明の効果】本発明により、新規キノン依存性グルコ
ース脱水素酵素及びその製法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本酵素の最適pHを示す図である。
【図2】本酵素の安定pH範囲を示す図である。
【図3】本酵素の作用温度範囲を示す図である。
【図4】本酵素の熱安定性を示す図である。
【図5】電池セルの概略図である。
【図6】CoQ22に対する測定結果を示す図である。
【図7】グルコースに対する測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1…電池セル、2…作用極、3,5…カーボンフェル
ト、4…対極、6…隔膜、7…白金線、8…電流積算計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 秋田 澄男 愛知県名古屋市端穂区高田町1丁目23番地 の3 (72)発明者 川村 吉也 愛知県江南市古知野町古渡132

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の理化学的性質を有するキノン依存
    性グルコース脱水素酵素。 (a)作用:グルコースを酸化してグルコノデルタラク
    トンを生成する下記の酵素反応を触媒する。 グルコース+電子受容体 → グルコノデルタラクトン
    +還元型電子受容体 〔電子受容体は、CoQn(ユビキノン;nは0〜10
    の整数を表す)、ベンゾキノン、フェナジンメソサルフ
    ェート、2, 6−ジクロロフェノールインドフェノー
    ル、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを表す。〕 (b)基質特異性:グルコースに対するKm値(ミカエ
    リス定数)は、30℃、pH3.0 (マクイルベイン氏緩衝
    液)で3.3 ×10-3Mである。 (c)最適pH:最適pHは、グルコースを基質にした
    場合、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウムを電子受容体と
    したときはpH3.0、フェナジンメソサルフェート−
    2, 6−ジクロロフェノールインドフェノールを電子受
    容体とした場合は、pH6.5である。 (d)安定pH範囲:安定pH範囲は、ヘキサシアノ鉄
    (III) カリウムを電子受容体とした場合はpH5.0から
    7.0である。 (e)作用適温の範囲:10〜30℃の範囲にある。 (f)熱安定性:30℃、10分間の処理で約90%の酵素活
    性を保持し、37℃、10分間の処理でも約50%の残存活性
    を示す。 (g)阻害剤:銅、ニッケル、亜鉛などの重金属により
    阻害される。 (h)分子量:SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法
    で測定した結果、約88,000である。
  2. 【請求項2】 アセトバクター属に属し、請求項1記載
    のキノン依存性グルコース脱水素酵素を産生する能力を
    有する微生物を培地に培養し、培養物から前記キノン依
    存性グルコース脱水素酵素を採取することを特徴とする
    キノン依存性グルコース脱水素酵素の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10752934B2 (en) 2015-10-29 2020-08-25 Leadway (Hk) Limited PQQ-sGDH mutant, polynucleotide and glucose detection biosensor

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