JPH0724569Y2 - 内燃機関における動弁系の潤滑装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、主として頭上弁形内燃機関における弁腕部
等の動弁系の潤滑装置に関するものである。

従来の技術 従来、この種の頭上弁形内燃機関において、クランク室
内の回転部等によって跳上げられた潤滑油を、シリンダ
ボディに形成した通路を介して弁腕室側に供給するよう
にしたものがある。この場合、前記通路のクランク室側
の入口は、クランク軸を正回転させた場合に適切な量の
潤滑油がその通路側に供給されるような位置に設けられ
ている。そのため、クランク軸を逆方向に回転させる所
謂逆回転仕様のエンジンの場合、正回転の場合よりも多
量の潤滑油がこの入口側に供給されるものがあり、これ
により、この入口部に潤滑油が充満してクランク室内圧
が上昇し、そのクランクケースに軸支されたクランク軸
やカム軸のオイルシール部分或いはガバナヨーク軸部分
からオイル洩れを生じるという欠点がある。また、この
通路は、シリンダヘッド部分に大量の油が溜まった場合
にも、その油をクランク室側に戻す作用をなすが、上記
のように入口部で油が充満するとそのような作用がなさ
れず、シリンダヘッドに潤滑油が大量に充満してしまう
という不都合がある。そこで、このような問題を解消す
る手段として、シリンダボディに２本の通路を形成し
て、その一方を弁腕室側への供給側とし、他方を戻り側
として、これらの通路を介して常に潤滑油を循環させる
ことが考えられ、例えば、実公昭61-41932号公報や、同
62-15451号公報には、そのようなものが記載されてい
る。

考案が解決しようとする課題 しかしながら、上記のようにシリンダボディ２本の通路
を設けるためには、それだけシリンダボディの形状を大
きくしなければならず、全体が大型化するとともに、こ
のようなシリンダボディをダイキャストで製作すると、
そのような通路のための長い穴を形成することが困難で
あるという製造上の問題がある。この考案は、シリンダ
ボディに２本の通路を形成することなく、上記の不都合
を解消することを目的とするものである。

課題を解決するための手段 上記の課題を解決するため、この考案では、シリンダ中
心線が斜め方向に傾斜した傾斜型エンジンであって、ク
ランク室内の回転部によって跳上げられた潤滑油をシリ
ンダボディに形成した通路を介してシリンダヘッド上部
側の弁腕室へ供給するようにしたものにおいて、前記通
路のクランク室側の入口周辺部に、その入口に連通し、
かつ、この入口よりもクランク軸の回転方向の一方に偏
心して、クランク軸の逆回転の場合に油の一部を逃がす
凹部を形成したことを特徴とする。

実施例 第３図は、エンジン全体をプッシュロッド挿入穴を通る
垂直面で縦断した断面図であり、この図で示すように、
この実施例のエンジンは、シリンダ中心線が斜め方向に
傾斜した傾斜型のエンジンである。図において（１）
は、クランク室（２）を一体に備えたシリンダボディ、
（３）は、シリンダボディ（１）の上部側に取付けられ
たシリンダヘッド、（４）は、シリンダヘッド（３）上
部の弁腕室（５）を覆う弁腕室ケースである。（７）
は、シリンダボディ（１）へ挿入されたシリンダライ
ナ、（８）はピストン、（９）はクランク軸、（10）
は、クランク軸（９）とピストン（８）を結ぶ連接棒を
示している。シリンダライナ（７）と平行に、かつその
シリンダライナ（７）の下側に形成されたプッシュロッ
ド挿入穴（11）に、プッシュロッド（12）とタペット
（13）が挿入され、タペット（13）の下端が、クランク
室（２）内に軸支されたカム軸（14）上のカム（15）へ
当接している。プッシュロッド（12）は、弁腕室（５）
内の弁腕（16）へ当接され、この弁腕（16）を介して、
吸・排気弁（17）（17）を駆動するようにしている。そ
して、吸・排気弁（17）（17）用の一対のプッシュロッ
ド挿入穴（11）（11）の間に、これらプッシュロッド挿
入穴（11）（11）と平行に、潤滑油供給通路（18）が、
クランク室（２）側からシリンダヘッド（３）を貫通し
て弁腕室（５）側へ向けて形成されている。クランク軸
（９）上に取付けた跳上げ板（19）によって跳ね上げら
れた潤滑油は直接に、又は、そのクランク軸（９）或い
はカム軸（14）等の他の回転部に当たり、それらの回転
部によって飛散されて、前記通路（18）の入口側へ供給
される。そして、この通路（18）を通って前記弁腕室
（５）側へ供給されて、弁腕（16）とプッシュロッド
（12）との当接部や、その他の摺動部分を潤滑する。ま
た、クランク室（２）内のオイルミストやブローバイガ
スが、ピストン（８）下降時の内圧上昇によって、通路
（18）より弁腕室（５）側に入る。この弁腕室（５）に
は、前記ケース（４）部分に、第４図のように逆止弁
（20）を備えたブリーザ（21）が取付けられており、そ
れらのオイルミストやブローバイガスが、このブリーザ
（21）からキャブレータ（22）手前の吸気通路側へ供給
されて、燃焼ガスとして再利用するようにしている。

上記エンジンは、クランク軸（９）が第１図の矢印Ｂ方
向に回転する場合が正回転であって、この場合には、前
記跳上げ板（19）の回転方向も通路（18）の入口と離れ
る方向に回転するため、大量の潤滑油がこの通路（18）
側に供給されることはないが、逆回転仕様の場合には、
跳上げ板（19）が通路（18）の入口側へ向かって回転す
ることから、この入口部分に潤滑油が大量に充満する不
都合を生ずる。そこで、この実施例では、第１図及び第
２図のように、通路（18）の入口部周辺の一個所に、そ
の入口（18）に連通し、かつこの入口を有するクランク
室内壁（23）の側面側に開放された溝状の凹部（25）
を、入口（18）に対してクランク軸（９）の回転方向の
一方、即ち、正回転の場合の手前に偏心させて形成し、
逆回転仕様の場合に大量の潤滑油が通路（18）の入口側
に飛散した場合でも、この凹部（25）側に潤滑油を逃が
すことによって、その入口部分に潤滑油が充満するのを
防止するようにしている。これにより、逆回転仕様の場
合であっても、通路（18）の入口に潤滑油が充満して、
クランク室（２）内圧の上昇によるオイル洩れや、シリ
ンダヘッド（３）部分の潤滑油の充満を防止することで
きたものである。

考案の効果 以上のように、この考案によれば、通路入口周辺部の凹
部により、その入口への潤滑油の充満を防止できて、オ
イル洩れやシリンダヘッド部の潤滑油の充満を防止する
ことができたものであり、凹部をクランク軸回転方向の
一方に偏心させて形成するのみの単純な構成であり、従
来のように２本の通路を設けて供給側と戻り側とに区別
するものに比較して、全体にコンパクトでかつダイキャ
ストによる生産の場合にも容易に形成できるという効果
がある。

【図面の簡単な説明】 第１図は、この発明の実施例を示すシリンダボディの要
部側面図、第２図は第１図のＡ方向から見た場合の正面
図、第３図はエンジン全体の縦断面図、第４図は第３図
のＡ−Ａ線で切断した要部横断面図である。 （１）……シリンダボディ、（２）……クランク室、
（３）……シリンダヘッド、（５）……弁腕室、（18）
……通路、（25）……凹部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダ中心線が斜め方向に傾斜した傾斜
   型エンジンであって、クランク室内の回転部によって跳
   上げられた潤滑油をシリンダボディに形成した通路を介
   してシリンダヘッド上部側の弁腕室へ供給するようにし
   たものにおいて、前記通路のクランク室側の入口周辺部
   に、その入口に連通し、かつ、この入口よりもクランク
   軸の回転方向の一方に偏心して、クランク軸の逆回転の
   場合に油の一部を逃がす凹部を形成したことを特徴とす
   る内燃機関における動弁系の潤滑装置。