JPH0723528Y2 - エンジン構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、エンジン構造に関するものである。

（従来の技術） トラック等の車両用ディーゼルエンジンにおいては、ク
ランクケースの側部に吸気弁及び排気弁を開閉するため
の吸気カム及び排気カム、上記各カムに協働するタペッ
ト及びプッシュロッドからなる動弁機構を収蔵したオー
バヘッドバルブ式エンジンが広く採用されている。この
種のエンジンにおいては、通常シリンダヘッド上に設け
られたロッカアーム等の摺動面を潤滑したオイルが、シ
リンダヘッドからクランクケース側部に設けられたオイ
ル通路を経てオイルパン内に流下し、再びオイルポンプ
により汲み上げられてエンジン各部に圧送され循環する
ようになっているが、上記クランクケース側部のオイル
通路には、従来、上記吸気カム及び排気カムと吸気側及
び排気側タペットとの摺接面を積極的に潤滑するための
通路形状及び配置に関する特別の工夫が施されていな
い。

（考案が解決しようとする問題点） 近年、エンジンの排気ガス浄化対策の一環として広く採
用されているEGR等のために、オイル中のスラッジが増
加して潤滑性能が低下する傾向があり、このため吸気弁
及び排気弁を駆動する吸気カム及び排気カム、並びにこ
れらのカムに摺接して往復動する吸気側タペット及び排
気側タペットの摩耗が懸念されている。

本考案は、上記吸気カム及び排気カムのノーズ部分に従
来より多量のオイルを供給することによって、吸気カム
及び排気カム、並びにこれらのカムに摺接する吸気側タ
ペット及び排気側タペットの摩耗を低減しカム及びタペ
ットの耐久性を確保することができ、しかも製造コスト
が安く、エンジンの運転騒音が小さいこの種のエンジン
構造を提供することを目的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 本考案に係るエンジン装置は、上記目的を達成するため
に創案されたもので、クランクケースの側部に、各シリ
ンダの吸気弁及び排気弁を開閉制御する複数組の吸気カ
ム及び排気カムを有するカム軸と、上記吸気カム及び排
気カムに従動する複数組の吸気側タペット及び排気側タ
ペットとを収蔵してなるものにおいて、動弁機構を潤滑
したオイルをシリンダヘッドからオイルパンに向い流下
させるため、上記吸気側タペット及び排気側タペットを
夫々収容しかつ上記シリンダ側で連結される一対のタペ
ット室相互間に凹入して形成された脚部と、上記一対の
タペット室のシリンダから遠い側の壁面及び同壁面に対
し間隔を存し配設されたクランクケース外壁により囲ま
れた辺部とからなり、下端に開口を有する略Ｔ字状のオ
イル通路をクランクケース内に形成し、同オイル通路の
上記辺部内に上記吸気カム及び排気カムのカムノーズ部
分を臨ませたことを特徴とするものである。

（作用） 本考案によれば、オイルをシリンダヘッドからオイルパ
ンに流下させるためのオイル通路が、吸気側及び排気側
タペットを夫々収容するタペット室の外壁に沿って形成
された辺部と両タペット室間に凹入する脚部とからなる
断面略Ｔ字状をなす通路として構成され、このオイル通
路内に吸気カム及び排気カムのカムノーズ部分が臨んで
いるので、オイル通路内を流下するオイルが直接カムノ
ーズ部分に付着してタペット底面の摺接面に多量に供給
される。また、上記断面形状が略Ｔ字状をなすオイル通
路は、クランクケースの鋳造時に鋳抜きにより形成する
ことができる。

（実施例） 以下本考案の実施例を添付図面について具体的に説明す
る。図中符号10はトラック用のオーバヘッドバルブ式デ
ィーゼルエンジンを総括的に示し、同エンジンは複数の
シリンダ12を列設したクランクケース14及び同クランク
ケースの下端に装着されたオイルパン16を具えている。
上記シリンダ12内にピストン18が摺動自在に嵌装され、
同ピストンはコネクティングロッド20を介してクランク
軸22に連結されている。

上記クランクケース14の一側部分に、各シリンダの吸気
弁及び排気弁を開閉するための吸気カム及び排気カムを
具えたカム軸24に収蔵され、同カム軸24は上記クランク
軸22に連動して回転する。上記吸気カム及び排気カムに
は夫々有底円筒体状をなす吸気側及び排気側のタペット
26が摺接し、各タペットはクランクケース14内に形成さ
れたタペット室28内に摺動自在に嵌装されている。各シ
リンダ12に対して夫々２個設けられた上記タペット室28
の外壁に沿ってシリンダヘッド（図示せず）上のロッカ
アーム等を潤滑したオイルをオイルパン16に戻すための
オイル通路30が形成され、上記タペット室28及びオイル
通路30を限界する外壁はクランクケース14の鋳造時に一
体的に形成される。

上記オイル通路30は、第２図に示されているように、タ
ペット室28の部分では大体Ｔ字状の断面形状をなし、ク
ランク軸に実質的に平行に延在した辺部32と、吸気側及
び排気側のタペット室28相互間に凹入して形成された脚
部34とから構成されている。そして上記辺部32の両端部
分は、前記カム軸24の回転によって吸気カム及び排気カ
ムのカムノーズ部分36が掃過して形成する回転体と交差
するように形成され、換言すれば上記カムノーズ部分36
がオイル通路30の辺部32にの臨むように形成されてい
る。

上記構成によれば、エンジン10の運転中に、シリンダヘ
ッド上のロッカアーム等を潤滑したオイルがオイル通路
30を経てオイルパン16に流下する際に、タペット室28の
部分で断面形状がＴ字状をなす通路部分を流下する。特
にオイル通路の上記辺部32の両端付近を流下するオイル
は、カム軸24上に形成された吸気カム及び排気カムのカ
ムノーズ部分36の回転軌跡を横切るので、吸気カム及び
排気カムのカムノーズ部分36に多量のオイルが付着して
周辺に飛散するため、カムの作用面及び協働するタペッ
ト26の底面の摺接面に十分な量のオイルが供給されるこ
ととなる。従って、排気ガス対策のためのEGRの採用或
いは熱負荷が大きい過給機付エンジン等一般にオイルの
性情が劣化し易い苛酷な条件下でも、従来より多量のオ
イルが吸気カム及び排気カムとこれらに協働するタペッ
トとの摺動面に供給されるので、各カム及びタペット底
面の摩耗を低減し得る利点がある。また、当然のことな
がら上記オイル通路30内を流下するオイルは同時にタペ
ット室28の外壁を冷却するので、タペット26の外周円筒
面とタペット室内壁面との間の潤滑を改善しタペット26
の外周面の摩耗を低減し得る利点もある。さらに、上記
断面形状が略Ｔ字状をなすオイル通路が、クランクケー
スの鋳造時に、鋳抜きにより一体的に同時に形成される
ので、製造コストが安い利点がある。なおまた、上記オ
イル通路が十分な面積の閉断面構造を形成しているの
で、クランクケースの剛性が増大し、エンジンの運転騒
音が低減される利点がある。

（考案の効果） 叙上のように、本考案に係るエンジン構造は、クランク
ケースの側部に、各シリンダの吸気弁及び排気弁を開閉
制御する複数組の吸気カム及び排気カムを有するカム軸
と、上記吸気カム及び排気カムに従動する複数組の吸気
側タペット及び排気側タペットとを収蔵してなるものに
おいて、動弁機構を潤滑したオイルをシリンダヘッドか
らオイルパンに向い流下させるため、上記吸気側タペッ
ト及び排気側タペットを夫々収容しかつ上記シリンダ側
で連結される一対のタペット室相互間に凹入して形成さ
れた脚部と、上記一対のタペット室のシリンダから遠い
側の壁面及び同壁面に対し間隔を存し配設されたクラン
クケース外壁により囲まれた辺部とからなり、下端に開
口を有する略Ｔ字状のオイル通路をクランクケース内に
形成し、同オイル通路の上記辺部内に上記吸気カム及び
排気カムのカムノーズ部分を臨ませたことを特徴とし、
オーバヘッドバルブ式エンジンの吸気カム及び排気カム
とこれらに協働するタペットとの摺動部の摩耗を低減し
てカム軸及びタペットの耐久性を向上することができる
ので、実用上有益である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す横断面図、第２図は第
１図のII-II線に沿う断面図である。 10……エンジン、12……シリンダ、14……クランクケー
ス、16……オイルパン、18……ピストン、24……カム
軸、26……タペット、28……タペット室、30……オイル
通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】クランクケースの側部に、各シリンダの吸
   気弁及び排気弁を開閉制御する複数組の吸気カム及び排
   気カムを有するカム軸と、上記吸気カム及び排気カムに
   従動する複数組の吸気側タペット及び排気側タペットと
   を収蔵してなるものにおいて、動弁機構を潤滑したオイ
   ルをシリンダヘッドからオイルパンに向い流下させるた
   め、上記吸気側タペット及び排気側タペットを夫々収容
   しかつ上記シリンダ側で連結される一対のタペット室相
   互間に凹入して形成された脚部と、上記一対のタペット
   室のシリンダから遠い側の壁面及び同壁面に対し間隔を
   存し配設されたクランクケース外壁により囲まれた辺部
   とからなり、下端に開口を有する断面略Ｔ字状のオイル
   通路をクランクケース内に形成し、同オイル通路の上記
   辺部内に上記吸気カム及び排気カムのカムノーズ部分を
   臨ませたことを特徴とするエンジン構造