JPH08246828A - シリンダヘッドの潤滑油戻り通路 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 シリンダヘッドに対して容易に形成すること
ができ、しかも潤滑油を迅速且つ円滑に循環させうる潤
滑油戻り通路の提供。 【構成】 シリンダヘッド１内の一端側にカムチェーン
トンネル４を備え、他端側に下方のクランクケース側に
連通する戻りトンネル５を備えており、カムチェーント
ンネル４の気筒側内面に、上方から落下する潤滑油をカ
ムチェーントンネル４の外方壁１１の内面に振りかける
ためのガイド部材１３が配設されており、カムチェーン
トンネル４の内面および戻りトンネル５の内面に冷却用
内部フィン９、１０が形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は内燃エンジンのシリンダ
ヘッドにおける潤滑油戻り通路に関する。さらに詳しく
は、自動二輪車用、四輪車用または汎用エンジン等のシ
リンダヘッドにおけるカムシャフト、カムおよび吸排気
弁のタペット等の潤滑のために送られてきた潤滑油を、
迅速且つ効率的にクランクケース側に戻すための潤滑油
戻り通路に関する。

【０００２】

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、自動二輪車のエンジンでは、その下部に配設された
オイルパンから潤滑油をオイルポンプによってシリンダ
ヘッドを始めとした各潤滑部位へ送るように構成されて
おり、また、再度オイルパンへ戻すための潤滑油の戻り
通路が形成されている。

【０００３】このうちで、オーバーヘッドカムシャフト
式エンジンのシリンダヘッドへの潤滑油供給は、一般に
中空カムシャフトの端部軸受けに送られてカムシャフト
の空洞からカムシャフト用スペースに振りまかれたり、
カムシャフト上方に潤滑油供給管を配設して供給したり
している。そして、カムシャフト用スペース中の潤滑油
は、カムチェーントンネルを通して下方のクランクシャ
フト側へ自然落下によって戻される。一方、高速回転す
るカムシャフトや吸排気弁のタペットに摺接するカムの
潤滑には大量の潤滑油を送り込む必要がある。そのため
には、潤滑油を迅速に戻すことによって円滑な循環を実
現するのが望ましい。

【０００４】しかし、エンジンは直立状態の自動二輪車
への搭載状態では、通常そのカムシャフトがほぼ水平と
なるように設計製造されているため、潤滑油をカムチェ
ーントンネルを通して下方に落下させることができる
が、たとえば右サイドカムチェーン式エンジンであれ
ば、自動二輪車をサイドスタンドをかけて立てたときに
は左方に傾斜し、エンジンはカムチェーントンネル側が
上がりその反対側が下がった状態に傾斜する。したがっ
て、カムシャフト用のスペース等における上記下がった
側には潤滑油が滞り、迅速な戻し、すなわち迅速な循環
が期待できない。

【０００５】なお、従来技術として実開昭６１−４７４
１６号公報に記載された潤滑装置があるが、とくに潤滑
油の迅速循環のための構成は開示はおろか示唆すらもさ
れていない。

【０００６】本発明はかかる課題を解決するためになさ
れたものであり、シリンダヘッドに対して複雑な加工や
特別な部品を必要とせず、容易に形成できるシリンダヘ
ッドからの潤滑油戻り通路を提供することを目的とす
る。

【０００７】さらに、戻り通路を通過する過程において
潤滑油を好適に冷却しうる潤滑油戻り通路の提供をも目
的としている。

【０００８】なお、上記「左方」とは、当該エンジンを
自動二輪車に搭載したときに車体前方を見た場合の左方
を意味する。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明の第一態様に係る
潤滑油戻り通路は、端部にカムチェーントンネルを備え
たエンジンにおけるシリンダヘッドの潤滑油戻り通路で
あって、シリンダヘッド内部における、カムチェーント
ンネルと反対側の端部に、カムシャフト用スペースから
下方のクランクケース側に連通する戻りトンネルを備え
ていることを特徴としている。

【００１０】そして、前記カムチェーントンネルの気筒
側内面および戻りトンネルの気筒側内面のうち、少なく
ともカムチェーントンネルの気筒側内面に、上方から落
下する潤滑油をカムチェーントンネルの外方側内面に振
りかけるためのガイド部材を配設するのが潤滑油の冷却
効果を向上せしめる点で好ましい。

【００１１】本発明の第二態様に係る潤滑油戻り通路
は、複数個の気筒を有すると共に、ほぼ中央部にカムチ
ェーントンネルを備えたエンジンにおけるシリンダヘッ
ドの潤滑油戻り通路であって、シリンダヘッド内部にお
ける、カムシャフト軸方向の両端部のうち少なくとも一
方の端部に、カムシャフト用スペースから下方のクラン
クケース側に連通する戻りトンネルを備えていることを
特徴としている。

【００１２】そして、前記戻りトンネルの気筒側内面
に、上方から落下する潤滑油を戻りトンネルの外方側内
面に振りかけるためのガイド部材を配設するのが、潤滑
油の冷却効果を向上せしめる点で好ましい。

【００１３】前記第一態様または第二態様に係る潤滑油
戻り通路において、前記カムチェーントンネルの内面お
よび戻りトンネルの内面のうち、少なくともカムチェー
ントンネルの内面に冷却用フィンを形成するのが、同様
に潤滑油の冷却効果を向上せしめる点で好ましい。

【００１４】また、前記冷却用フィンを、前記内面に沿
って上下方向に形成された突条から構成するのが、シリ
ンダヘッドの鋳造時にフィンを一体に形成しうる点で好
ましい。

【００１５】さらに、タペット潤滑用に各バルブリフタ
を連通するように形成された潤滑油通路を、前記カムチ
ェーントンネルおよび戻りトンネルに連通させるのが潤
滑油の循環効率向上の点で好ましい。

【００１６】なお、特許請求の範囲において連通管およ
び通路に関していう「上方」「下方」とは、本シリンダ
ヘッドを備えたエンジンを自動二輪車等の車体に搭載し
たときの相対的上下に基づいて特定している。

【００１７】

【作用】本発明の潤滑油戻り通路によれば、従来のカム
チェーントンネルに加えてシリンダヘッドの端部に潤滑
油を下方へ戻すための戻りトンネルを備えているため、
戻り通路のトータル断面積が大きくなり、通常シリンダ
ヘッドに大量に送り込まれる潤滑油も迅速に下方へ戻さ
れる。しかも、前記戻りトンネルはシリンダヘッドの端
部に形成されているため、自動二輪車のサイドスタンド
の使用等によってエンジンがカムチェーントンネル側と
反対側に傾斜させられたとしても、潤滑油はカムシャフ
ト用スペースに滞ることなく円滑に循環させられる。

【００１８】さらに、戻りトンネルの形成は、特別な加
工を必要とせずカムチェーントンネルと同様にシリンダ
ヘッドの鋳造時に一体に形成しうるため容易である。

【００１９】

【実施例】つぎに、図面を参照しつつ本発明の潤滑油戻
り通路の実施例を説明する。

【００２０】図１は本発明の潤滑油戻り通路の一実施例
が適用されたシリンダヘッドであって、シリンダヘッド
カバーが装着された状態を示す一部切欠き平面図、図２
は図１のシリンダヘッドの矢印Ａ−Ａ方向に見た一部切
欠き正面図、図３は図１のシリンダヘッドの矢印Ｂ−Ｂ
方向に見た側面図、図４は図１のシリンダヘッドのＣ−
Ｃ線断面図、図５は図１のシリンダヘッドのＤ−Ｄ線断
面図、図６は図１のシリンダヘッドのＥ−Ｅ線断面図、
図７は図１のシリンダヘッドのＦ−Ｆ線断面図である。

【００２１】図１には、主にシリンダヘッド１上部に装
着されたシリンダヘッドカバー２が表されている。３は
吸気口、４はカムチェーントンネル、５は戻りトンネル
（図２および図７も併せて参照）、６は冷却用フィン
（図３も併せて参照）である。

【００２２】図示のシリンダヘッド１は、前記カムチェ
ーントンネル４がそのカムシャフト軸方向の一端側に形
成された、いわゆるサイドカムチェーン式となってい
る。そして、前記戻りトンネル５はシリンダヘッド１の
他端側、すなわちカムチェーントンネル４と反対側の端
部に形成されている。

【００２３】戻りトンネル５は吸気側５ａと排気側５ｂ
との二本が形成されている。そして、図７に示すように
シリンダブロック７に至って一本の戻りトンネル５ｃに
合流し、図示されていないクランクケース側に連通して
いる。本実施例では一本に合流しているが、本発明では
とくにそのように限定されることはなく、クランクケー
ス側まで二本形成してもよい。また、本実施例では吸気
側カムシャフト用スペース８ａ（図４〜７参照）と排気
側カムシャフト用スペース８ｂ（図４〜７参照）とがそ
れぞれ独立しているが、本発明は、たとえばロッカーア
ームを装備したエンジン等のように吸気側および排気側
のカムシャフト用スペースが互いに連通しているものに
あっては、シリンダヘッドにおいても一本の戻りトンネ
ルとすることができる。

【００２４】本実施例では前述のごとくサイドカムチェ
ーン式を例にとっているが、本発明はいわゆるセンター
カムチェーン式エンジンにも適用することができる。セ
ンターカムチェーン式とは、複数気筒エンジンにおける
カムシャフト軸方向のほぼ中央部にカムチェーントンネ
ルを形成する方式である。したがって、センターカムチ
ェーン式の場合、図示されてはいないが、その戻りトン
ネルをシリンダヘッドにおけるカムシャフト軸方向の両
端部に形成するか、または、いずれか一端部に形成する
ことができる。

【００２５】戻りトンネル５にはその内面に冷却用内部
フィン９が形成されている（図２および図７も併せて参
照）。この冷却用内部フィン９は戻りトンネル５のほぼ
長手方向に沿う複数本の突条から構成されている。これ
ら突条はシリンダヘッド１の鋳造後に機械加工によって
形成したり、別途棒材を取り付けることにより形成して
もよいが、金型の離型が可能であるため突条を金型に形
成しておけばシリンダヘッドの鋳造時に冷却用内部フィ
ン９を同時に一体に形成することができる。

【００２６】一方、カムチェーントンネル４の内面にも
冷却用内部フィン１０が形成されている（図２も併せて
参照）。この冷却用内部フィン１０もカムチェーントン
ネル４の長手方向に沿う複数本の突条から構成されてい
る。したがって、容易に形成することができる。

【００２７】このように、カムチェーントンネル４およ
び戻りトンネル５ともに、その内面に冷却用内部フィン
９、１０が形成されているので、これらトンネル４、５
を通って下方へ戻る潤滑油は、広い接触面積でもって壁
に接触しつつ下降し、効率よく冷却されることとなる。

【００２８】なお、本発明では、冷却用内部フィンをト
ンネル長手方向に沿う突条に限定されるものではなく、
突起やトンネルを横切る方向の突条等であってもよい。

【００２９】なお、本実施例ではカムチェーントンネル
４および戻りトンネル５ともに、その気筒側壁の内面お
よび外方壁の内面の両方に冷却用内部フィン９、１０を
形成しているが、一方の面にのみ形成してもよい。その
場合、外気に近いためにより低温となっている外方壁
（図１および図２における１１、１２）の内面に形成す
るほうが冷却効率は向上する。

【００３０】もちろん、トンネル内部に冷却用内部フィ
ンを形成していない場合でも、図示の空冷エンジンでは
外面に前記冷却用フィン６が形成されているので冷却作
用は発揮されるが、トンネル内部の冷却用内部フィン
９、１０を形成することによってさらに冷却効率が向上
するというものである。

【００３１】図１および図２に示すようにカムチェーン
トンネル４の気筒側内面にはガイド板１３が取り付けら
れている。このガイド板１３はカムシャフト用スペース
８ａ、８ｂから流れ落ちる潤滑油をより低温である外方
壁１１の内面にできるだけ多く接触させる目的で設けた
ものであり、アルミ合金等からなる金属板をネジや溶接
等の公知の固定方法によって取り付けたものである。ま
た、ガイド板１３は図示されていないスプロケットホイ
ールやカムチェーンと干渉しないように、カムシャフト
端部の下方でループ状のカムチェーンの内側に取り付け
られている。

【００３２】なお、本実施例ではガイド板１３はカムチ
ェーントンネル４にのみ設けられているが、本発明では
そのように限定されることはなく、前記戻りトンネル５
内にも設けることができる。

【００３３】図４〜７において１４ａで示されるのは吸
気弁用タペットの潤滑油通路であり、１４ｂで示される
のは排気弁用タペットの潤滑油通路である。吸気弁用タ
ペットの潤滑油通路１４ａは各吸気弁用バルブリフタ内
部に連通し、排気弁用タペットの潤滑油通路１４ｂは各
排気弁用バルブリフタ内部に連通している。そして、い
ずれの潤滑油通路１４ａ、１４ｂもカムチェーントンネ
ル４および戻りトンネル５の両方に連通している。した
がって、これら潤滑油通路１４ａ、１４ｂを通過する潤
滑油も、エンジンが傾斜させられようとも迅速且つ円滑
に循環される。

【００３４】叙上の実施例では空冷の二気筒エンジンを
例にとったが、本発明ではとくに二気筒には限定される
ことはなく、四気筒またはそれ以上の気筒を備えたエン
ジンにも適用でき、また水冷エンジンにも適用しうるの
はもちろんである。

【００３５】

【発明の効果】本発明によれば、特別な加工を必要とせ
ず、シリンダヘッド鋳造時に潤滑油戻り通路を容易に形
成することができる。したがって、製造コストの低減が
可能となる。しかも、カムチェーントンネルに加えて戻
りトンネルを備えているため、トータルの戻り通路断面
積が大きくなり、大量に送り込まれる潤滑油も迅速に下
方へ戻される。しかも、前記戻りトンネルはシリンダヘ
ッドの端部に形成されているため、エンジンが傾斜させ
られたとしても、潤滑油はカムシャフト用スペースに滞
ることなく円滑に循環させられる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の潤滑油戻り通路の一実施例が適用され
たシリンダヘッドであって、シリンダヘッドカバーが装
着された状態を示す一部切欠き平面図である。

【図２】図１のシリンダヘッドの矢印Ａ−Ａ方向に見た
一部切欠き正面図である。

【図３】図１のシリンダヘッドの矢印Ｂ−Ｂ方向に見た
側面図である。

【図４】図１のシリンダヘッドのＣ−Ｃ線断面図であ
る。

【図５】図１のシリンダヘッドのＤ−Ｄ線断面図であ
る。

【図６】図１のシリンダヘッドのＥ−Ｅ線断面図であ
る。

【図７】図１のシリンダヘッドのＦ−Ｆ線断面図であ
る。

【符号の説明】

１・・・シリンダヘッド ４・・・カムチェーントンネル ５、５ａ、 ５ｂ、５ｃ・・・戻りトンネル ９、１０・・・冷却用内部フィン １３・・・ガイド板 １４ａ・・・潤滑油通路（吸気弁タペット用） １４ｂ・・・潤滑油通路（排気弁タペット用）

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 端部にカムチェーントンネルを備えたエ
   ンジンにおけるシリンダヘッドの潤滑油戻り通路であっ
   て、シリンダヘッド内部における、カムチェーントンネ
   ルと反対側の端部に、カムシャフト用スペースから下方
   のクランクケース側に連通する戻りトンネルを備えてな
   るシリンダヘッドの潤滑油戻り通路。
2. 【請求項２】 前記カムチェーントンネルの気筒側内面
   および戻りトンネルの気筒側内面のうち、少なくともカ
   ムチェーントンネルの気筒側内面に、上方から落下する
   潤滑油をカムチェーントンネルの外方側内面に振りかけ
   るためのガイド部材が配設されてなる請求項１記載のシ
   リンダヘッドの潤滑油戻り通路。
3. 【請求項３】 複数個の気筒を有すると共に、ほぼ中央
   部にカムチェーントンネルを備えたエンジンにおけるシ
   リンダヘッドの潤滑油戻り通路であって、シリンダヘッ
   ド内部における、カムシャフト軸方向の両端部のうち少
   なくとも一方の端部に、カムシャフト用スペースから下
   方のクランクケース側に連通する戻りトンネルを備えて
   なるシリンダヘッドの潤滑油戻り通路。
4. 【請求項４】 前記戻りトンネルの気筒側内面に、上方
   から落下する潤滑油を戻りトンネルの外方側内面に振り
   かけるためのガイド部材が配設されてなる請求項３記載
   のシリンダヘッドの潤滑油戻り通路。
5. 【請求項５】 前記カムチェーントンネルの内面および
   戻りトンネルの内面のうち、少なくともカムチェーント
   ンネルの内面に冷却用フィンが形成されてなる請求項１
   または３記載のシリンダヘッドの潤滑油戻り通路。
6. 【請求項６】 前記冷却用フィンが前記内面に沿って上
   下方向に形成された突条からなる請求項５記載のシリン
   ダヘッドの潤滑油戻り通路。
7. 【請求項７】 各バルブリフタを連通するタペット潤滑
   用の潤滑油通路が形成されており、該潤滑油通路が前記
   カムチェーントンネルおよび戻りトンネルに連通してな
   る請求項１または３記載のシリンダヘッドの潤滑油戻り
   通路。