JPH0722669B2 - ろ過エレメント - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （発明の利用分野） 本発明は内燃機関用エアクリーナのろ過エレメントに関
し、より詳しくは、エアクリーナのケースとキヤツプと
により保持される外周リングと、この外周リングの内方
に位置する内筒と、前記外周リングと内筒との間に配設
された波形断面形状のろ材から成るろ過部分とを有し、
吸入空気を前記外周リングの軸方向に前記ろ過部分を通
過させるようになつている軸流型ろ過エレメントに関す
る。

（従来の技術） 内燃機関（以下「エンジン」と呼ぶ）が運転状態から停
止したとき、キヤブレターから蒸発した燃料蒸気がエア
クリーナ内に充満し、エンジンの再始動時にエンジンに
吸入される吸気が過濃となり再始動が困難になるという
問題や、エアクリーナ内に充満した蒸発燃料がエアクリ
ーナの空気取り入れ管を通つて大気中へ放出され、環境
汚染の原因となるという問題を防止するため、エアクリ
ーナには種々の対策が施されている。かかる対策を施さ
れたエアクリーナの一例が実開昭59−54740号公報に示
されている。この公報に記載されているエアクリーナに
おいては、ダストろ過専用の軸流型ろ過エレメントの下
方に、すなわち、キヤブレター側に、活性炭素繊維を含
むろ材から成る蒸発燃料吸着エレメントが配設されてい
る。

（発明が解決しようとする問題点） 前記公報に記載されているエアクリーナにおいては、前
述のように、ダストろ過専用のろ過エレメントの他に蒸
発燃料吸着用のエレメントを両者が直列になるように配
置されているから、エアクリーナ全体の寸法、特に、軸
方向の寸法、が大きくなり、車両の狭いエンジンルーム
内に収納出来ない場合が生じるという問題がある。ま
た、２個のエレメントを用いているので、その分だけ製
造コストが高くなるばかりでなく、吸入空気流に対する
抵抗が大となり、エンジンの加速性能が低下するという
問題もある。本発明はこれらの問題を解消せんとするも
のである。

（問題点を解決する手段） 本発明は、エアクリーナのケースとキャップとにより保
持される外周リングと、この外周リングの内方に位置す
る内筒と、前記外周リングと前記内筒との間に配設され
た波形断面形状のろ材から成るろ過部分とを有し、吸入
空気を前記外周リングの軸方向に前記ろ過部分を通過さ
せるようになっている軸流型ろ過エレメントであって、
前記ろ過部分は前記外周リングから前記内筒の方へ次第
に高く盛り上がる形状を備えており、また、前記ろ過部
分には蒸発燃料を吸着するための活性炭含有材料が少な
くとも前記外周リングに隣接する区域に配設されている
とともに、活性炭含有材料が配設された区域以外の前記
ろ過部分の区域はダストろ過を行なうための活性炭非含
有材料で作られていることを特徴とする。

（作用） キヤブレターから蒸発してエアクリーナに入つた燃料蒸
気はろ過エレメントに配置された蒸発燃料吸着材料に吸
着され、エンジンが再始動されたときには、この吸着さ
れた蒸発燃料がろ過エレメントから離脱されてキヤブレ
ターを経てエンジン内へ吸入される。

（実施例） 第１図−第６図は本発明の第１実施例のろ過エレメント
１を示す。ろ過エレメント１は内筒２、外周リング３、
及び内筒２と外周リング３との間に配設された概略環状
のろ過部分４とを有する。ろ過部分４は内筒２を中心と
して同心円状に配置された多数のひだを有し、これらの
ひだは、ろ過エレメントを軸方向に断面すると、第１図
に示すように、波形に見える。ろ過部分４はダストろ過
部分4bと蒸発燃料吸着部分5bとから成る。

ダストろ過部分4bは第２図に示す扇形のろ材4aを第３図
に示すように多数の同心状のひだを有するリング状に成
形して作られたものである。同様に、蒸発燃料吸着部分
5bは第２図に示す扇形のろ材4aの外周側の円弧の長さに
等しい長さの内周側円弧を有する扇形の活性炭素繊維ろ
紙5aを、第５図に示すように同心的な複数の環状のひだ
を有するリング形に成形することによつて作られたもの
である。

ダストろ過部分4bの外周縁は蒸発燃料吸着部分5bの内周
縁に例えば樹脂等で一体に固着されかつリング状のリブ
６で一体に連結保持される。また、ダストろ過部分4bの
内周縁は内筒２の外周面にシール性を保つて取り付けら
れ、同様に、蒸発燃料吸着部分5bの外周縁は外周リング
３の円筒部分3bの内周面にシール性を保つて取り付けら
れる。また、第６図に示すように、内筒２と外周リング
３とは複数の半径方向リブ７で連結され、ろ材4aと5aと
をリング状に曲げ成形した時に互いに継ぎ合わされる縁
部（第２図及び第４図に示す扇形の両側端）は半径方向
リブ７内に収納され、継ぎ合わせ部のシール性が保たれ
る。かくして成るろ過エレメント１は、内筒２とダスト
ろ過部分4bとが蒸発燃料吸着部分5bと外周リング３より
も幾分高く盛り上がつた形状を呈する。尚、外周リング
３は外周フランジ3aを有する。

次に、上述のろ過エレメントを組み込んだエアクリーナ
の構造について第７図を参照して説明する。

エアクリーナはケース８とキヤツプ16とを有し、ろ過エ
レメント１の外周リング３の外周フランジ3aがケース８
の外周フランジとキヤツプ16の外周フランジとの間にガ
スケツト9aを介して挟持されており、この場合に、内筒
２の頂壁とキヤツプ16の頂壁の中央部の内面との間に第
２のガスケツト9bが介装されている。かくして、ケース
８とろ過エレメント１との間に第１の空間13が形成さ
れ、また、キヤツプ16とろ過エレメント１との間に第２
の空間14が形成される。キヤツプ16の周壁には空気取り
入れ管15が突設されている。

ケース８の底壁の中央部に空気出口8aが突設され、空気
出口8aの下縁が第３のガスケツト9cを介してキヤブレタ
ー10に接続され、この場合に、キヤブレターから突出す
るスタツドボルト11がケース８の空気出口8a、ろ過エレ
メント１の内筒２の中央の穴、第２のガスケツト9b、及
びキヤツプ16の中央部の***を貫通してエアクリーナの
キヤツプの外まで突出し、スタツドボルト11のこの突出
した端部に蝶ナツト12を螺合させることにより、エアク
リーナがキヤブレターに対して取り外し自在に取り付け
られる。

次に作動について説明する。

エンジン運転中は、外気は空気取り入れ管15を通りエア
クリーナ内の空間14へ流入し、ろ過エレメント１のダス
トろ過部分4bと蒸発燃料吸着部分5bとを通過することに
よつてろ過され、清浄な空気が空間13から空気出口8aを
通りキヤブレター10を経てエンジンへ吸入される。

エンジンが運転状態から停止したとき、キヤブレターか
ら蒸発した燃料蒸気がエアクリーナ内へ入るが、ろ過エ
レメント１の外周寄りに位置して設けられた蒸発燃料吸
着部分5bに吸着され、エアクリーナの外部へは放出され
ない。すなわち、燃料蒸気はキヤブレター10の内部から
上昇したものではあつても、エアクリーナ内に入つた時
点ではエアクリーナ内の空気に比較すると特に軽いとい
うものではないから、燃料蒸気はエアクリーナ内のうち
でも低い位置に淀む傾向があるので、ろ過エレメント１
の低い区域に位置する蒸発燃料吸着部分5bによつて吸着
され、ダストろ過部分4bは燃料で濡れない。そして、エ
ンジンが再始動されると、ろ過エレメントに吸着されて
いた燃料はろ過エレメントから脱離されてキヤブレター
を経てエンジン内へ吸入されるので、省資源に寄与す
る。

上述の実施例ではダストろ過部分4bと蒸発燃料吸着部分
5bはそれぞれ独立して準備されてからリブ６で一体に連
結保持されているが、第８図に示すような扇形のろ材4a
の１部に例えば網目状の加熱溶融型繊維状接着剤を介し
て第９図で5aで示す活性炭素繊維ろ紙を第９図及び第9A
図に示すように張り合わせてから、第10図に示すよう
に、リング状波形に折り曲げ成形して、これに内筒２と
外周リング３とを取り付けてもよい。従つて、この場合
には、第１の実施例で用いているリブ６は不要である。

また、第11図に示すように、第８図に示したごときダス
トろ過用のろ材4aの外周寄りの部分とこの部分に向き合
つて配置された別のろ材18との間に形成される波形の空
間に粒状活性炭素17を収納配置して蒸発燃料吸着部分4b
を構成してもよい。この場合、ろ材18の半径方向最内端
とこれに隣接するろ材4aのひだとがリブ６で連結保持さ
れ、このリブ６よりも半径方向内方に位置するろ材4aの
部分5bがダストろ過部分を構成する。また、ろ材18はダ
ストろ過用ろ材でも活性炭素繊維ろ紙でもよく、要する
に、粒状活性炭素17が吸入空気流の下流側、すなわち、
空間13側へ落下しないように保持しかつ空気の流れに対
してろ材4aよりも大きな抵抗を与えないものであれば良
い。

更に、第11図に示す実施例におけるろ材18が波形断面の
ものである必要はなく、第12図に示すように、平板状の
もの18′でも良い。この場合、活性炭素17は波形に折り
曲げ形成されたろ材4aと平板状のろ材18′との間の空間
に収納配置される。

本発明のろ過エレメントは必ずしも環状または円形リン
グ状である必要はなく、第13図に示すように、楕円形ま
たは長円形のものでも良い。

また、本発明において、蒸発燃料吸着部分5bは、ろ過エ
レメント１の外周リング３に隣接する区域の全域（第６
図）に設ける必要はなく、第14図および第15図のように
その区域の一部に設けてもよい。

（発明の効果） 本発明のろ過エレメントは活性炭含有材料を配設された
蒸発燃料吸着作用を行なう区域と、それ以外の活性炭非
含有材料で作られたダストろ過作用を行なう区域とを有
するので、エアクリーナは単一のろ過エレメントを備え
れば十分であるから、エアクリーナの薄型化に寄与しか
つ製造コスト低減に貢献する。しかも、活性炭含有区域
のほかにダストろ過のための活性炭非含有区域を有して
いるので、吸入空気流に対する抵抗が小さいから、エン
ジンの加速性能を良好にする。更に、燃料蒸気はエアク
リーナ内のうちでも低い位置に淀む傾向があるから、低
い区域に位置する蒸発燃料吸着作用を行なう区域によっ
て有効に吸着され、ダストろ過作用を行なう区域は燃料
で濡れる惧れは少なく、吸入空気流に対する抵抗を大と
してしまうことはない。加えて、エンジンが再始動され
ると、ろ過エレメントに吸着されていた燃料はろ過エレ
メントから離脱されてキャブレターを経てエンジン内へ
吸入されるので、省資源に寄与する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例によるろ過エレメントの１部
を破断して示す１部断面斜視図、 第２図はダストろ過用のろ材の平面図、 第３図は第２図のろ材を折り曲げ成形して成るダストろ
過部分の斜視図、 第４図は活性炭素繊維ろ紙の平面図、 第５図は第４図のろ紙を折り曲げ成形して成る蒸発燃料
吸着部分の斜視図、 第６図は第１図のろ過エレメントの底面図、 第７図は第１図〜第６図に示すろ過エレメントを組み込
んだエアクリーナの略概縦断面図、 第８図は別の実施例に用いるダストろ過用のろ材の平面
図、 第９図は第８図のろ材に蒸発燃料吸着用の活性炭素繊維
ろ紙を張り付けた状態を示す平面図、 第9A図は第９図の矢印Ｂ方向から見た側面図、 第10図は第９図及び第9A図に示すろ材を折り曲げ成形し
て成るろ過部分を用いたろ過エレメントの一部断面斜視
図、 第11図は更に別の実施例を示す要部断面図、 第12図は第11図に類似の図にして、更に別の実施例を示
す図、 第13図は楕円形または長円形のろ過エレメントの一部破
断斜視図、 第14図および第15図はろ過エレメントの他の実施例を示
す底面図、 １……ろ過エレメント、２……内筒、３……外周リン
グ、４……ろ過部分、4a……ダスト用のろ材、4b……ダ
ストろ過部分、5a……活性炭素繊維ろ紙、5b……蒸発燃
料吸着部分。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−101224（ＪＰ，Ａ) 実公 昭58−49409（ＪＰ，Ｙ２) 実公 昭58−30571（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エアクリーナのケースとキャップとにより
   保持される外周リングと、この外周リングの内方に位置
   する内筒と、前記外周リングと前記内筒との間に配設さ
   れた波形断面形状のろ材から成るろ過部分とを有し、吸
   入空気を前記外周リングの軸方向に前記ろ過部分を通過
   させるようになっている軸流型ろ過エレメントであっ
   て、前記ろ過部分は前記外周リングから前記内筒の方へ
   次第に高く盛り上がる形状を備えており、また、前記ろ
   過部分には蒸発燃料を吸着するための活性炭含有材料が
   少なくとも前記外周リングに隣接する区域に配設されて
   いるとともに、活性炭含有材料が配設された区域以外の
   前記ろ過部分の区域はダストろ過を行なうための活性炭
   非含有材料で作られていることを特徴とするろ過エレメ
   ント。