JPH07222592A - ホスホリパーゼa1によるリゾリン脂質の製造法 - Google Patents

ホスホリパーゼa1によるリゾリン脂質の製造法

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JPH07222592A
JPH07222592A JP30849094A JP30849094A JPH07222592A JP H07222592 A JPH07222592 A JP H07222592A JP 30849094 A JP30849094 A JP 30849094A JP 30849094 A JP30849094 A JP 30849094A JP H07222592 A JPH07222592 A JP H07222592A
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phospholipase
enzyme
lysophospholipid
reaction
phospholipid
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JP30849094A
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Noriyoshi Uchida
典芳 内田
Atsushi Hattori
惇 服部
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Sankyo Co Ltd
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Sankyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 リン脂質を、酸性ホスホリパーゼA1で処理
することを特徴とするリゾリン脂質の製造法。 【効果】 本発明の製造法は、酵素作用時にpHの調整
を必要とせず、温和な加熱処理により残存酵素を失活さ
せることができ、リゾ化率が高く、品質が良いリゾリン
脂質を製造するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の目的】
【0002】
【産業上の利用分野】本発明は、リン脂質を、酸性ホス
ホリパーゼA1で処理して、リゾリン脂質を製造する方
法に関する。
【0003】
【従来の技術】リゾリン脂質とはリン脂質のグリセリン
残基に結合した脂肪酸の一部を加水分解して得られる部
分分解リン脂質である。このようなリゾ型リン脂質は、
もとのリン脂質に比べて水溶性が増加してO/W型の乳
化性が強くなり、pHや温度変化に対してより安定なエ
マルジョンを形成し、また、カルシウムやマグネシウム
等のイオンが高濃度に共存しても乳化力が低下しない
等、優れた特性が付与されることが報告されている。こ
のため、リゾリン脂質は食品、化粧品、医薬品等の分野
においてリン脂質に比べてその応用範囲が広い。また、
リン脂質含有物中リン脂質のリゾ化は、その現象単独で
又は他の共存物質との相乗効果等により食品物性の向上
に結びつくことがある。
【0004】リン脂質を分解する酵素としてはホスホリ
パーゼが知られており、その作用部位によって更に細分
類されている。このうちリン脂質をリゾリン脂質と脂肪
酸に分解するものとしては、ホスホリパーゼA1又はホ
スホリパーゼA2が知られているが、いずれもリン脂質
のリゾ化を目的とした用途に使用され得る。
【0005】現在、リン脂質からリゾリン脂質を製造す
る工業的方法には、専ら豚膵臓のホスホリパーゼA2が
使用されているが、以下に示す問題点がある。第一点
は、一般に、ホスホリパーゼA作用時には、pHの調整
が必要とされる点である。ホスホリパーゼA作用時に
は、遊離する脂肪酸により反応系のpHは低下するが、
豚膵臓ホスホリパーゼA2の至適pHは、中性乃至弱ア
ルカリ性である。そのため、酵素作用時にはpHの調整
が必要であり、酵素反応後にはpH調整のために添加し
た物質の除去工程等が必要となる。
【0006】この問題を解決するために、溶剤分別(米
国特許第3,652,397 号等)、非イオン性無極性有機溶媒
中で酵素反応させる方法(特開平3-98590 号公報)又は
遊離脂肪酸と金属セッケンを作るような化合物を反応中
に添加する方法(特開昭62-14790 号公報、特公平4-814
31 号公報)等が提案されている。しかし、これらの方
法は、操作が煩雑であり、製品の安全性が問題とされる
場合もある。
【0007】第二点は、酵素反応後、得られた生成物中
に、加熱や有機溶媒等に対して極めて高い安定性を持つ
豚膵臓ホスホリパーゼA2が残存する点である。最終製
品中に加水分解を受けていないリン脂質が存在すると、
ホスホリパーゼA2によりリン脂質から新たに脂肪酸が
遊離し、その商品価値を著しく損ねることがある。その
ため、熱処理により残存酵素を失活させる方法が考えら
れるが、酵素反応生成物を95℃で、30分程度の加熱
処理をするだけでは、豚膵臓ホスホリパーゼA2は十分
には失活せず、また120℃位の加熱処理をして、失活
させると、リン脂質又は遊離脂肪酸の劣化を引き起こす
等の問題が生じる。
【0008】また、ホスホリパーゼA2の残存活性を実
質的に有さないリゾリン脂質含有物を得るために、種々
の方法が試みられている。例えば、その製造工程におい
て各種の溶剤を用いた溶剤分別及びシリカゲル等を用い
たカラム処理等を組み合わせた方法、ホスホリパーゼA
2で処理したリン脂質を乾燥させた後、極性溶媒を用い
て分別する方法(特開昭62-262998 号公報)又は酵素処
理した後、反応生成物中のホスホリパーゼA2をプロテ
アーゼで処理し、ついで該プロテアーゼを加熱失活させ
る方法(特開昭63-233750 号公報)等である。しかし、
それらの操作には、時間や費用がかかり、しかも収率も
低下するなど種々の問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、長年に
亘り、ホスホリパーゼを用いて、リン脂質からリゾリン
脂質を製造する方法について、鋭意検討を行い、リン脂
質を、酸性ホスホリパーゼA1生産菌の酵素抽出液に水
性有機溶媒を添加することにより得られた酸性ホスホリ
パーゼA1で処理することにより、酵素作用時にpHの
調整を必要とせず、温和な加熱処理により残存酵素を失
活させることができ、リゾ化率が高く、品質が良いリゾ
リン脂質を製造する方法を見出して、本発明を完成させ
た。
【0010】
【発明の構成】
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の製造法は、リン
脂質を酸性ホスホリパーゼA1で処理することにより達
成される。
【0012】使用される酸性ホスホリパーゼA1は、好
適には、pH2.5乃至6(好適には、pH3乃至5.
5)の活性領域を有するホスホリパーゼA1であり、更
に好適には、45℃乃至90℃(好適には、50℃乃至
80℃)の安定上限温度を有するホスホリパーゼA1で
あり、更により好適には、pH3.2乃至5の作用最適
pH、pH3乃至8.5のpH安定性及び55℃以下の
温度安定性を有するホスホリパーゼA1であり、特に好
適には、上記特性を有し、アスペルギルス(Aspergillu
s) 属の糸状菌が生産するホスホリパーゼA1である。
【0013】酸性ホスホリパーゼA1を生産する生産菌
としては、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergill
us oryzae:例えば、SANK-11870、IFO-30102 等) 、アス
ペルギルス・ニガー(Aspergillus niger:例えば、IF
O-4407、ATCC-9642 等) 、アスペルギルス・ウサミイ
Aspergillus usamii:例えば、IFO-6082、IAM-2414
等)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamor
i : 例えば、IFO-4033、IAM-2112等) 、アスペルギルス
・フミガトウス(Aspergillus fumigatus : 例えば、IA
M-2034等) 、アスペルギルス・ソージャ(Aspergillus
sojae : 例えば、IAM-2666等) 、アスペルギルス・フォ
エニシス(Aspergillus phoenisis : 例えば、IAM-2215
等) 、アスペルギルス・ウェンティ(Aspergillus went
ii :例えば、IAM-2133等) のようなアスペルギルス属に
属する糸状菌があげられ、好適には、アスペルギルス・
オリゼである。上記糸状菌は、いずれも、公知菌(例え
ば、特公昭46-32792号公報、J. Gen. Appl. Microbio
l., 17, 281(1971)、 Biochem. Z., 261 275(1933) 等)
であり、財団法人発酵研究所(Institute for Fermentat
ion Osaka:IFO)、アメリカン・タイプカルチャー・コレ
クション(American TypeCulture Collection:ATCC)、
応用微生物研究所(Institute of Applied Microbiolog
y:IAM )等の保存機関にそれぞれの番号で保存され、自
由に分譲を受けることができる。また、SANK-11870は、
微工研菌寄第3887号(FERM BP-3887)として工業技術院微
生物工業技術研究所に寄託されている。また、これらの
菌株は、天然の元株のほか、その人工変異株をも含む。
【0014】酸性ホスホリパーゼA1は、麹式培養法、
液体培養法いずれによっても生産可能であり、いずれの
場合においてもその培地組成、培養条件を適当に選択す
ることにより、リン脂質から脂肪酸を遊離せしめる活性
を有する酵素としてホスホリパーゼA1のみを含有し、
しかもリパーゼ活性を伴わないホスホリパーゼA1を選
択的に生産することができる。
【0015】例えば、本発明のホスホリパーゼA1は以
下の方法で製造される。即ち、菌株の培養は、ふすま
に、水を0.5乃至2倍重量(好適には、等量)加え
て、蒸煮して得た固体培地に種菌を接種して、麹式培養
法で行う。培地原料としては、ふすまの他に、穀類(例
えば、米、麦等)、各種雑穀類(例えば、とうもろこ
し、大豆、ごま等)、綿実かす等を単独または組み合わ
せて用いることもできる。
【0016】培養温度は、10℃乃至40℃(好適に
は、15℃乃至35℃)であり、培養時間は、培地組
成、培養温度等により異なるが、通常3日乃至20日間
(好適には、4日乃至8日間)である。培養終了後、麹
に水又は適当な緩衝液(例えば、酢酸塩緩衝液、リン酸
塩緩衝液等)を1乃至20倍重量加え、良く攪拌した
後、圧搾濾過して、酵素液を得ることができる。
【0017】酵素液からの酵素の採取には常法、例え
ば、塩析法、有機溶媒沈殿法、イオン交換体等を吸着体
として用いる吸着法、限外濾過法、真空乾燥法等を単独
又は適宜組み合わせて用いることにより、目的とする品
質の酵素が調製できる。本発明においては、最も一般的
な酵素の採取法である有機溶媒沈殿法が適している。
【0018】酵素反応における酸性ホスホリパーゼA1
の添加量は、反応温度、反応時間、反応時のpH、基質
の性状や品質、夾雑する物質、要求される効果の程度等
により異なるが、好適には、1000単位/g の酵素を
用いて、リン脂質(例えば、大豆リン脂質)に対して、
0.05重量%乃至10重量%(特に好適には、0.2
重量%乃至2重量%)である。
【0019】使用される基質は、リン脂質自身又はリン
脂質含有物質であり、その給源、含有率、性状を問わな
い。それらは、例えば、大豆、小麦、大麦、トウモロコ
シ、ナタネ、サフラワー、ヒマワリ、落花生、綿実等の
植物性リン脂質、卵黄、動物の脳(ウシ、ヒツジ、ブ
タ、ニワトリ等)等の動物性リン脂質、クロレラ細胞、
糸状菌菌体等の微生物菌体リン脂質等であり得、好適に
は、大豆、小麦または卵黄のリン脂質である。
【0020】本酵素とリン脂質を処理する酵素反応は、
酵素と基質を、水性媒体中又は湿潤状態で接触させるこ
とにより行われ、場合によっては非イオン性無極性有機
溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサンのような
エーテル類、ヘキサン、ベンゼン、トルエンのような炭
化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類
等)共存下で酵素反応させることも可能である。
【0021】水性又は湿潤媒体は、例えば、イオン交換
水、蒸留水、井水、水道水等であり得、必要に応じて、
酸(例えば、酢酸等)、アルカリ(例えば、水酸化ナト
リウム等)又は緩衝液(例えば酢酸緩衝液)を加えて、
pH2.5 乃至6.5 (好適には、3.5 乃至5.5 )に調整す
ることもできる。また、イオン交換水、蒸留水等の軟質
の水を用いる場合には、塩化カルシウム等を添加するほ
うが好ましいことがある。
【0022】酵素反応温度は、10℃乃至70℃(好適
には、20℃乃至65℃、特に好適には、30℃乃至6
0℃)であり、反応に要する時間は、反応温度、pH等
により異なるが、通常10分乃至10日間(好適には、
1時間乃至2日間)である。また、得られるリゾリン脂
質中にホスホリパーゼA1活性が残存することは、通常
好ましくなく、酵素反応を行った後、必要に応じて、簡
便な操作、即ち、温和な加熱処理によって、酵素反応生
成物中の残存ホスホリパーゼA1活性を容易に失活させ
ることができる。この加熱処理は、45℃乃至90℃
(好適には、50℃乃至80℃)で、5分乃至5時間
(好適には、10分乃至2時間)加熱することにより行
われる。
【0023】また、加熱処理の他に、酵素を失活させる
ための常法、例えば、加圧処理、pH処理等を単独で又
は適宜組み合わせて用いても、残存ホスホリパーゼA1
活性を失活させることができる。
【0024】本酵素反応により、反応生成物は、そのま
ま使用することが可能であるが、更に必要に応じて、薄
層濃縮等の濃縮機による濃縮、又は精製、更には、噴霧
乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段、等の常法を施して、濃
縮、精製、又は乾燥製品とすることもできる。
【0025】また、本酵素は、パン、麺等の小麦粉製品
の物性改良を目的として生地に直接添加するような場合
にも使用できる。この際、さらに必要に応じて、ホスホ
リパーゼD、乳化剤(例えば、モノグリセライド、カル
シウムステアリルラクチレート等)を添加することがで
きる。また、本酵素使用による効果は、生地物性及び製
品物性に現われ、生地は、本酵素添加により、適度の弾
力性と伸展性を有するようになり、また粘着性も抑制さ
れて、各作業工程での操作が容易となる。
【0026】
【発明の効果】本発明の酸性ホスホリパーゼA1を用い
るリゾリン脂質の製造法は、酵素作用時にpHの調整を
必要とせず、高純度のリゾリン脂質を製造できるという
効果を有するばかりでなく、温和な加熱処理により残存
酵素を失活させることができるため、簡便な操作で、生
成したリゾリン脂質の品質劣化を防ぎ、エネルギーも節
約できる効果を有する。
【0027】
【実施例】以下に本発明の実施例及び製造例を示すが、
本発明は、これらによってなんら限定されるものではな
い。
【0028】[実施例1]リゾリン脂質の製造 水45ml中に SLP- ホワイト(ツルーレシチン 社製)5gを
懸濁した10%(w/w)懸濁液および0.2g塩化カ
ルシウムを100ml 容ビーカーに入れ、超音波ホモ
ジナイザーで十分に分散させた。37℃で予備加温した
後、ホスホリパーゼA1−a〜−cを各865単位添加
し、撹拌子で撹拌しながら37℃で、反応中の水分が蒸
発しないようにビーカーにはシーロンフィルム(富士フ
ィルム社製)をかぶせて、酵素反応を進行させた。反応
開始時、1時間後、2時間後及び3時間後に反応液を採
取し、サンプル中の遊離脂肪酸を遊離脂肪酸定量試薬デ
タミナーNEFAを用いて定量した。見かけのリン脂質リゾ
化率は、SLP-ホワイト中のリン脂質の平均分子量を76
5であると仮定して、式 A/B x 100 A:リゾリン脂質のモル数(酵素反応により遊離した脂
肪酸のモル数) B:基質リン脂質のモル数 を用いて、求めた。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】 ──────────────────────────────────── 実験 添加酵素 見かけのリン脂質リゾ化率(%) 番号 (pH値) 反応時間 0時間 1時間 2時間 3 時間 ──────────────────────────────────── 1.ホスホリパーゼA1−a 0 70 84 89 (6.4) (4.7) (4.6) (4.6) 比較例 2.ホスホリパーゼA1−b 0 65 83 90 (6.4) (4.7) (4.6) (4.7) 3 ホスホリパーゼA1−c 0 68 86 90 (6.4) (4.7) (4.6) (4.6) ──────────────────────────────────── 本発明のホスホリパーゼA1−aは、比較例として示し
た、ホスホリパーゼA1−b(ホスホリパーゼA1−a
を更に精製したもの)及びホスホリパーゼA1−c(As
pergillus niger 由来)と殆ど同様の優れたリン脂質リ
ゾ化率を示した。
【0030】[実施例2]熱処理による残存する酵素の失活 基質[10(w/w) % SLP-ホワイト(ツルーレシチン 社製)]
50ml および0.2g塩化カルシウムを100ml 容
ビーカーに入れ、超音波ホモジナイザーで十分に分散さ
せた。37℃で予備加温した後、ホスホリパーゼA1−
a〜−cを各2160単位添加し、撹拌子で撹拌しなが
ら、37℃で5時間酵素反応を進行させた。なお、緩衝
液として、5mM酢酸緩衝液(pH 4.5) を用いた。ま
た、5時間後の見かけのリン脂質リゾ化率は90%以上
であった。酵素反応後、各々の反応液約7gずつを数本
のソモギー(Somogyi )試験管に分注し、水分が蒸発し
ないようにシーロンフィルムをかぶせて、50〜80℃
で30分間放置した。各反応液中に残存するホスホリパ
ーゼA1活性は、後述する方法で測定し、熱処理しない
反応液中のホスホリパーゼA1活性に対する百分率で表
した。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】 ──────────────────────────────────── 実験 添加酵素 残存する酵素活性(%) 番号 処理温度 未処理 50℃ 60℃ 70℃ 80℃ ──────────────────────────────────── 1 ホスホリパーゼA1−a 100 77 68 0 0 比較例 2 ホスホリパーゼA1−b 100 80 70 0 0 3 ホスホリパーゼA1−c 100 78 73 19 0 ──────────────────────────────────── 本発明のホスホリパーゼA1−aは、比較例として示し
たホスホリパーゼA1−b(ホスホリパーゼA1−aを
更に精製したもの)及びホスホリパーゼA1−c(Aspe
rgillus niger 由来)と同様に、温和な加熱処理により
完全に失活させることができた。
【0032】[製造例] ホスホリパーゼA1−a アスペルギルス・ オリゼ(Aspergillus oryzae)SANK11
870 株を、ふすまと水の等量混合物からなる培地12g
で、30℃にて6日間培養た。次いで、ふすまと水の混
合物600gを金属皿(42×24×7( 深さ) cm)
に入れ120℃にて30分間加圧蒸煮した培地に先の培
養物を植菌し、30℃にて15時間、更に19℃にて5
日間培養した。こうして形成されたふすまこうじに、水
3lを加え、よく混合し、37℃にて2時間放置した
後、濾過して、ホスホリパーゼA1力価5.9単位/m
lの酵素抽出液2.87lを得た。この酵素抽出液に酢
酸を加え、pHを4.0に調整し、冷却したアセトンを
3倍量加え、冷所に一夜放置した。その後上澄を捨て、
沈殿部をアセトンでよく洗い、真空乾燥して、ホスホリ
パーゼA1−aを11.1gを得た。
【0033】本サンプル1g当りの主な酵素活性を表3
に示す。なお、各酵素活性は、後述する方法により測定
した。
【0034】
【表3】
単位 ──────────────────────────────────── ホスホリパーゼA1 1, 170単位 リパーゼ 測定下限( 10単位)以下 アミラーゼ 8, 740単位 酸性プロテアーゼ 38, 800単位 中性・アルカリ性プロテアーゼ 230, 000単位 ──────────────────────────────────── [比較例1] ホスホリパーゼA1−b 製造例で得られたホスホリパーゼA1−a 10gを水
約100ml に溶かし、1N酢酸を加えて、pH4.0 に
調整し、水を加えて200ml とした後、200ml の
冷アセトンを加えて混合し、1時間放置した。その後、
混合液を遠心分離して、第1沈殿を得た。上澄に600
ml の冷アセトンを加えて混合し、1時間放置した。そ
の後、混合液を遠心分離して、第2沈殿を5g得た。こ
の5gの沈殿を、50mM酢酸緩衝液(pH5.5)5
00ml に溶かし、硫酸アンモニウム300gを加えて
塩析した。遠心分離して得た沈殿を1M硫酸アンモニウ
ムを、含む50mM酢酸緩衝液(pH5.5)に溶か
し、不純物を濾別した後、カラムクロマトグラフィー
[カラム: ブチルトヨパールパック650S(Butyl Toy
opearl pak 650S)、東ソー社製、流出溶剤:硫酸アンモ
ニウム含有50mM酢酸緩衝液( pH5.5) 、硫酸ア
ンモニウム濃度、1〜0Mグラジェント溶出]を実施し
た。溶出したホスホリパーゼA1活性画分に、硫酸アン
モニウムを添加して塩析し、1夜放置の後、遠心分離し
て得た沈殿を、カラムクロマトグラフィー[カラム:ス
ーパーロース12(Superose 12)ファルマシア社製、
溶出溶剤:脱イオン水]により脱塩した。溶出したホス
ホリパーゼA1活性画分を凍結乾燥してホスホリパーゼ
A1−bを0.034g得た。なお、本サンプルに含ま
れる2種類のホスホリパーゼA1の分子量は、SDS−
ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定し、それぞ
れ37,000又は35,000であり、等電点はそれ
ぞれ3.9又は4.3であった。
【0035】本サンプル1g当りの主な酵素活性を表4
に示す。なお、各酵素活性は、後述する方法により測定
した。
【0036】
【表4】 ─────────────────────────────────── ホスホリパーゼA 72, 100単位 リパーゼ 100単位以下 アミラーゼ 3,990単位 酸性プロテアーゼ 50, 500単位 中性・アルカリ性プロテアーゼ 49, 000単位 ─────────────────────────────────── [比較例2] ホスホリパーゼA1−c アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )ATCC96
42株を、ふすまと水の等量混合物からなる培地12g
で、30℃にて6日間培養し、次いで、前培養した全菌
株を、ふすまと水の混合物600gを金属皿(42×2
4×7(深さ)cm)に入れ、120℃にて30分間蒸
煮した培地に植菌し、30℃にて15時間、更に19℃
にて5日間培養した。こうして調製したふすまに、水3
lを加え、よく混合し、37℃にて2時間放置した後、
濾過して酵素抽出液を得た。この酵素抽出液に酢酸を加
え、pHを4.0に調整し、冷却したアセトンを3倍量
加え、冷所に一夜放置した。その後上澄を捨て、沈殿部
をアセトンでよく洗い、真空乾燥して、リン脂質から脂
肪酸遊離せしめる活性119単位/gの酵素サンプルを
19.2gを得た。この酵素サンプル10gを水約100m
lに溶かし、1N酢酸を加えて、pH4.0に調整し、
水を加えて200mlとした後、200mlの冷アセト
ンを加えて混合し、1時間放置した。その後、混合液を
遠心分離して、第1沈殿を得た。上澄に600mlの冷
アセトンを加えて混合し、1時間放置した。その後、混
合液を遠心分離して、第2沈殿を得た。この沈殿を、5
0mM酢酸緩衝液(pH5.5 )500mlに溶かし、硫
酸アンモニウム300gを加えて塩析した。遠心分離し
て得た沈殿を1M硫酸アンモニウムを含む50mM酢酸
緩衝液(pH5.5 )に溶かし、不溶物を濾別した後、ブ
チルトヨパールパック650S(Butyl Toyopearl pak
650S、東ソー社製)、Q−セファロース(Q-Sepharose
、ファルマシア社製)、及びスーパーロース12(Sup
erose 12 、ファルマシア社製)をー 用いたカラムクロ
マトグラフィーにより精製し、ホスホリパーゼA1力価
2,100単位/gのホスホリパーゼA1−c 0.0
15gを得た。なお、本サンプルに含まれるホスホリパ
ーゼA1の分子量は、スーパーロース12を用いたゲル
濾過法による推定により32,000と推定され、等電
点は、3.0であった。
【0037】本サンプル1g当りの主な酵素活性を表5
に示す。なお、各酵素活性は、後述する方法により測定
した。
【0038】
【表5】 ─────────────────────────────────── ホスホリパーゼA 2, 100単位 リパーゼ 測定下限( 10単位) 以下 アミラーゼ 17単位 酸性プロテアーゼ 280単位 中性・アルカリ性プロテアーゼ 700単位 ─────────────────────────────────── 次に、製造例及び比較例1〜2でえられたホスホリパー
ゼA1−a〜−cをそれぞれ2位のパルミトイル基が14
C標識されたL- α- ジパルミトイルホスファチジルコ
リン(L- α-di-palmitoyl-phosphatidylcholine 、NE
N 社 NEC764 )及び1と2位のパルミトイル基が14C標
識されたL- α- ジパルミトイルホスファチジルコリン
(NEN 社 NEC 682)に作用させた。その結果、1と2位
のパルミトイル基が14C標識されたホスファチジルコリ
ンからのみ14C標識されたパルミチン酸が遊離した。こ
の結果から、ホスホリパーゼA1−a〜−cに含まれる
リン脂質からの脂肪酸遊離活性は1- アシル基からの脂
肪酸の遊離に由来するものであることを確認した。ま
た、ホスホリパーゼA1−a〜−cは、いずれもリパー
ゼ活性をほとんど伴わないこと(ホスホリパーゼA1活
性の約0.1%以下)を確認した。
【0039】以下に本発明のホスホリパーゼA1−aの
特性を比較例1及び2に示したホスホリパーゼA1−b
及び−cと比較して示す。 (1)作用最適pH 作用最適pHは、図1に示すようにpH3.2乃至5で
ある。なお、ホスホリパーゼA1活性は、後述する方法
で測定し、pH4における活性を100%とした。
【0040】(2)作用最適温度 作用最適温度は、図2に示すように50℃乃至60℃で
あった。なお、ホスホリパーゼA1活性は、後述する方
法で測定し、37℃における活性を100%とした。 (3)pH安定性 pH安定性は、図3に示すようにpH3乃至8.5であ
る。なお、ホスホリパーゼA1活性は、0.2M酢酸緩
衝液(pH3.2〜6.5)及び0.01Mトリス- 塩
酸緩衝液(pH3.2〜9.0)を用いて、ホスホリパ
ーゼA1約10単位/mlの酵素液を調製し、37℃
で、60分間加温処理した後、後述する方法で測定し、
37℃で、60分間の加温処理した場合の残存活性の最
大値を100%とした。
【0041】(4)温度安定性 pH4における温度安定性は、図4に示すように30℃
乃至55℃である。なお、ホスホリパーゼA1活性は、
酵素液を、30〜70℃で30分間で、加温処理した
後、後述する方法で測定し、加温処理しない場合の活性
を100%とした。
【0042】なお、各酵素活性は、以下の方法により測
定した。
【0043】(i) ホスホリパーゼA1活性及びリン脂質
からの脂肪酸遊離活性試験 2.0(w /v )% SLP- ホワイト(ツルーレシチン工
業社製)及び4(v/v)%トライトン(Triton)X-100
水溶液0.5ml に0.1 M 塩化カルシウム0.05m
l 0.2M酢酸緩衝液(pH4.0)0.25ml を
加えた。ついで、酵素液0.1mlを加えて、撹拌して
均一にして、37℃で静置し、10分間酵素反応を行っ
た。その後、1N塩酸0.1mlを加えて、酵素反応を
停止させた。反応液0.02mlを採り、遊離脂肪酸定
量試薬デタミナーNEFA(協和メデックス社製)を用い
て、遊離脂肪酸を定量した。酵素反応1分当たり脂肪酸
1μモルを生成させる酵素活性を1単位と定義した。
【0044】(ii)リパーゼ活性試験 2.0(w /v )%オリーブ油(和光純薬工業社製)エ
マルジョン[オリーブ油0.2gに0.5(w /w )%
アラビアゴム水溶液10ml を加え、超音波ホモジナイ
ザーで5分間分散させたもの]0.5mlに0.1M塩
化カルシウム0.05mlと0.02M酢酸緩衝液(p
H6)を加えた。ついで、酵素液0.1mlを加えて、
撹拌して均一にして、37℃で静置し、10分間酵素反
応を行った。その後、1N塩酸0.1ml を加えて、酵素反
応を停止させた。反応液 0.02 ml を採り、遊離脂肪酸
定量試薬デタミナーNEFAを用いて、遊離脂肪酸を定量し
た。酵素反応1分当たり脂肪酸1μモルを生成させる酵
素活性を1単位と定義した。
【0045】(iii) アミラーゼ(糖化型)活性試験 試験管に、基質[可溶性デンプン2gに水20ml(適当
量) を加えて加熱溶解し、冷却した後、0.2M酢酸緩
衝液 (pH4.5) を20ml 加え、さらに水を加えて
50ml に調製したもの]0.5mlを入れ、37℃恒
温水槽にて予備加温した後、酵素液0.25mlを添加
した。30分間の酵素反応の後、0.5N水酸化ナトリ
ウム0.25mlを加えて反応停止させた。これを酵素
反応液とし、ソモギーネルソン(Somogyi −Nelson)還
元糖測定法(J. Biol. Chem., 160, 61-68(1945)、J. B
iol. Chem., 153, 375-380(1944))を用いて、酵素反応
によって生じた還元糖を定量した。酵素反応1分当たり
グルコース1μモル相当量の還元糖を生成させる酵素活
性を1単位と定義した。
【0046】(iv)プロテアーゼ活性試験 萩原の方法(酵素研究法2 朝倉書店,237-246(1956)
)により測定した。なお、基質のpHは3.0(酸性
プロテアーゼ) 又は7.0( 中性・ アルカリ性プロテア
ーゼ) とした。酵素活性の単位は、ノースロプ(Nothro
p )やアンソン(Anson )に準じて基準条件下で1分間
にチロシン(tyrosine)1μg相当量の275nmにお
ける吸収を示す非蛋白性物質を生成する酵素活性を1単
位と定義した。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例のホスホリパーゼA1−a及び比較例
1、2のホスホリパーゼA1−b〜−cの作用最適pH
【図2】製造例のホスホリパーゼA1−a及び比較例
1、2のホスホリパーゼA1−b〜−cの作用最適温度
【図3】製造例のホスホリパーゼA1−a及び比較例
1、2のホスホリパーゼA1−b〜−cのpH安定性
【図4】製造例のホスホリパーゼA1−a及び比較例
1、2のホスホリパーゼA1−b〜−cの温度安定性

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン脂質を、酸性ホスホリパーゼA1で
    処理することを特徴とするリゾリン脂質の製造法。
  2. 【請求項2】 酸性ホスホリパーゼA1が、酸性ホスホ
    リパーゼA1生産菌の酵素抽出液に水性有機溶媒を添加
    することにより得られたホスホリパーゼA1である請求
    項1のリゾリン脂質の製造法。
  3. 【請求項3】 酸性ホスホリパーゼA1が、アスペルギ
    ルス(Aspergillus)属の糸状菌が生産するホスホリパー
    ゼA1である請求項1又は請求項2のリゾリン脂質の製
    造法。
  4. 【請求項4】 酸性ホスホリパーゼA1が、アスペルギ
    ルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)が生産するホスホリ
    パーゼA1である請求項1、請求項2又は請求項3のリ
    ゾリン脂質の製造法。
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