JP2009055819A - ステロールエステル合成酵素およびその製造方法 - Google Patents

ステロールエステル合成酵素およびその製造方法 Download PDF

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Akio Sugihara
杉原耿雄
Atsushi Maeda
前田淳史
Takayuki Mizuno
水野貴之
Masanori Fumitani
文谷政憲
Seiichi Nakai
仲井誠一
Masunori Hirota
広田益教
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Abstract

【課題】広範囲の脂肪酸ステロールエステルに対して高い分解活性を示し、かつ各種ステロールエステルを効率よく合成する能力を有するコレステロールエステラーゼ、及びその製造方法の提供。
【解決手段】次の性質を有するステロールエステル合成酵素(コレステロールエステラーゼ)。(1)作用:補酵素を必要とせず、ステロールと遊離脂肪酸またはその誘導体に直接作用して、ステロールエステル生成反応を触媒する。(2)基質特異性:遊離脂肪酸とステロールまたはその誘導体を基質として作用する。(3)分子量:ゲルろ過法およびSDS-PAGE法による分子量が53kDa〜58kDaである。(4)作用pHおよび最適pH:作用pHは2.5〜9.5、最適pHは6〜7.5に認められる。(5)pH安定性:各pHの緩衝液中に本酵素を溶解して30℃で18時間静置した場合、pH3.5〜7.5では75%以上の酵素活性を維持している。
【選択図】図3

Description

本発明は新規なステロールエステル合成酵素に関するものであり、さらにはトリコデルマ属に属するステロールエステル合成酵素生産菌を培養し、ステロールエステル合成酵素(コレステロールエステラーゼ)を含む培養液をそのまま、あるいはその酵素を精製したものを用いてステロールエステルを製造する方法に関するものである。
ステロール(動物ではコレステロール、植物ではスティグマステロール、β―シトステロール、カンペステロールなど)は生体膜の硬さや流動性に関与し、ホルモンの原料となるなど生体には重要な物質である。ステロールと脂肪酸とのエステルはコレステリック液晶や化粧品基材として広く利用されてきた。また、コレステロールを多く含む動物性食品は摂取しすぎると高脂血症、動脈硬化症などを引き起こすが、植物ステロールが共存すると、小腸からの吸収が顕著に抑制されることが明らかにされ、植物ステロールを添加したマーガリンなどが市販されるようになった。しかしながら、ステロールは水には勿論のこと、植物油脂にもせいぜい1%程度しか溶解しないため使用しにくい。そこで、これに脂肪酸を結合させてエステル化すると溶解度が10%以上あがるため、これが利用されている。
これらのエステルは従来、有機合成法により製造されてきたが、副反応、着色、着臭、煩雑な精製工程、副生物の処理などを必要とする。一方、酵素を用いるエステル化は一般に室温、中性pHで進み、副反応が極めて少ない、大掛かりな設備を必要としないなどの特長がある。しかしながら、酵素法によるエステル化反応はエステル加水分解反応の逆反応であるため、エステル化反応過程で生成してくる水分を絶えず除去しながら反応させなければ、ある程度エステルができると逆に分解反応が優勢となり、合成収率が上がらないという欠点があった。
微生物起源のコレステロールエステラーゼは現在までにシュードモナス属、カンディダ属、ストレプトミセス属ほかいくつかの微生物由来のものが開示されている。また、これらの酵素を用いたステロールエステル製造技術も開示されている(特許文献1参照)。また、これらの合成系では各種の有機溶媒の添加が合成速度や収率の向上にしばしば有効であることが示されているが、植物ステロールエステルの合成においては特許で提案されているほとんどの有機溶媒が食品添加物として許可されていないため、実際には利用できない。
また、本発明者は既に、糸状菌トリコデルマはその好気的液体培養液の中に脂肪酸特異性を示さない特異なコレステロールエステラーゼを分泌生産することを明らかにしている(特許文献2)。しかし、本発明により、当該糸状菌トリコデルマが、これとはまったく異なるステロールエステラーゼ(ステロールエステル合成酵素)を分泌生産することを明らかにした。
特開平05−33712号公報 特開2004−236585号公報
本発明者は、この新しいステロールエステラーゼ(ステロールエステル合成酵素)について、鋭意研究を続けた結果、広範囲の脂肪酸ステロールエステルに対して高い分解活性を示し、かつ各種ステロールエステルを効率よく合成する能力を有するコレステロールエステラーゼ(ステロールエステル合成酵素)を提供するとともに、その製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明は以下の理化学的性質を有するコレステロールエステラーゼ(ステロールエステル合成酵素)に関する。
(1)作用:補酵素を必要とせず、ステロールと遊離脂肪酸またはその誘導体に直接作用して、ステロールエステル生成反応を触媒する。
(2)基質特異性:遊離脂肪酸とステロールまたはその誘導体を基質として作用する。
(3)分子量:ゲルろ過法およびSDS-PAGE法による分子量が53kDa〜58kDaである。
(4)作用pHおよび最適pH:作用pHは2.5〜9.5、最適pHは6.0〜7.5に認められる。
(5)pH安定性:各pHの緩衝液中に本酵素を溶解して30℃で18時間静置した場合、pH3.5〜7.5では約75%の酵素活性を維持している。
(6)作用温度および最適温度:5〜60oCの範囲で作用するが、最適温度は35〜40oCである。
(7)熱安定性:燐酸緩衝液(pH7.0)中で18時間熱処理した場合、20℃以上では部分的な失活が認められ、60℃以上ではほぼ完全に失活する。
(8)阻害剤:PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)により活性が阻害される。

また、本発明のコレステロールエステラーゼ(ステロールエステル合成酵素)はトリコデルマ属に属するコレステロールエステラーゼ生産菌を15℃〜35℃、pHは4.0−9.5で1〜20日間、培養した培養液から本酵素を採取することにより製造できる。
本発明において、培養は、小麦衾などの培養基を用いる固体培養、望ましくは、振とう、または通気攪拌を伴う液体培養とすることができる。なお、ここでいう液体培養は「炭素源、窒素源および無機塩類などを水に溶解した栄養源をフラスコ、ジャーファーメンターなどの発酵容器にいれ、加熱滅菌したものに微生物を接種して適切な温度に保ちながら、発酵容器を振とうするか、あるいは通気攪拌を行って、好気的に培養する方法」を指す。また、固体培養は「小麦衾などの固体培養基に水、無機塩などを加えた後、加熱殺菌したものに微生物を接種して適当な温度に保ちながら、時折、培養物を切り返して、好気的に培養する方法」を指す。
本発明によるステロールエステル合成酵素(コレステロールエステラーゼ)は、室温(20℃)で1日以内の反応時間で、中鎖および長鎖脂肪酸のコレステロールエステルおよび植物ステロールエステルを大量かつ安価に製造することができる。本酵素を用いたステロールエステル、特にオレイン酸などの不飽和脂肪酸の植物ステロールエステルは結晶化温度が低く、市販食用油脂に添加することによって、食用油脂製品にしばしば見られる白濁、結晶化などの防止に役立つ。また、植物ステロールエステルは植物ステロール自体に比べ、油脂に対する溶解度が1桁高いため、動植物油脂に添加しやすく、これによりコレステロールの小腸からの吸収を抑制し、結果として血中コレステロール値を低下させる効果があり、人類の健康の向上に資するものである。本発明はまた、ビタミンE製造時の副産物としてその一部しか利用されておらず、大部分が廃棄処分されているステロールケーキの有効利用への道を拓くものである。なお、本酵素を用いる植物ステロールのエステル化ではコレステロールのエステル化に比べて収率が低いため、ヘキサンの添加を必要とするが、ヘキサンは食品添加物として製造時の使用が認められている有機溶媒であり、製品化までに減圧処理などによって除去すれば問題はない。
本発明によるトリコデルマ属に属するステロールエステル合成酵素生産菌を培養するには、通常の栄養培地を使用することができ、炭素源、窒素源、無機塩類などを適当に含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれも使用することができる。
炭素源としては、グルコース、澱粉、糖蜜、アルコール、オリーブ油、大豆油などの油脂、およびこれらの組み合わせを用いることができる。窒素源としてはコーンスティープリカー、大豆粉、小麦衾、ペプトン、肉エキス、酵母エキスなどの有機窒素化合物、硫安、硝安、尿素などの無機窒素化合物を用いることができる。無機塩類としては食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、第一燐酸カリウム、第二燐酸カリウムなどを使用できる。これらの炭素源、窒素源および無機塩類は使用する微生物にあわせて適宜選択することができる。さらに、コレステロールエステラーゼ生産を促す各種コレステロールエステルを培地に添加してもよい。培養は液体培養では、このような成分を含む液体培地をフラスコに入れ、加熱殺菌後、本菌を接種し、振とうする。また、ジャーファーメンターを用いる場合は、菌を接種後、通気しながら攪拌を行って好気的に培養することができる。培養温度は15−50℃が好ましく、20−40℃がより好ましい。培養のpHは4−9.5が好ましく、5−8がより好ましい。培養期間は温度によっても異なるが、1−20日であり、好ましくは2−6日間、より好ましくは3−5日間がより好ましい。また、固体培養を採用することも可能であり、その場合は小麦衾などの固体栄養基に少量の水を加えたものを加熱殺菌後、本菌を接種し、適切な温度で静置して培養する。培養温度は15−50℃が好ましく、20−40℃がより好ましい。培養のpHは4−9.5が好ましく、5−8がより好ましい。培養期間は温度によっても異なるが、1−20日であり、好ましくは2−6日間である。
液体培養物から本酵素を採取するには、ろ過または遠心分離により菌体を除去し、ろ液または上清液から硫安塩析、限外ろ過による濃縮などの公知の方法で酵素標品を得ることができる。また、固体培養物から本酵素を採取するには、水を加えて、菌体表面に分泌された本酵素を水抽出し、ろ過または遠心分離により菌体および小麦衾などの固体培養基を除去して得られるろ液、または上清液から硫安塩析、限外ろ過による濃縮などの公知の方法で酵素標品を得ることができる。さらに、高度に精製された酵素標品を得るには、ゲルろ過、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの従来から用いられている精製法を用いればよい。
本発明のコレステロールエステラーゼは、以下の性質を有する。
(1)加水分解反応における脂肪酸特異性:酢酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、酪酸コレステロール、カプロン酸コレステロール、カプリル酸コレステロール、カプリン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、リノール酸コレステロールに対して高い加水分解活性を示すが、安息香酸コレステロールにはほとんど加水分解活性を示さない。
(2)最適pHおよびpH安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適pHは6.0〜7.5、ブリットン−ロビンソン広域緩衝液を用いた場合、30℃、18時間後の残存活性はpH3.5〜7.5で約75%。
(3)最適温度および温度安定性:リノール酸コレステロールを基質としたときの加水分解の最適温度は0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で35〜40℃、同緩衝液中、20℃で18時間後の残存活性は約85%。
(4)等電点:蔗糖密度勾配等電点電気泳動でpH4.3付近。
(5)分子量:53〜58kDa。
これらの理化学的性質は、たとえば下記の方法により測定することができる。
<コレステロールエステラーゼ活性測定法>
コレステロールエステラーゼ活性の測定は、コレステロールエステルを基質とするコレステロールエステラーゼ反応により遊離させたコレステロールをコレステロールオキシダーゼで酸化したのち、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼにより4−アミノアンチピリンと反応させ、生成したキノン色素を分光光度計により定量する方法を用いた。たとえば、コレステロールエステラーゼ活性はリノール酸コレステロール(シグマーアルドリッチ社製)を基質として用い、0.03Mの同基質溶液(イソプロパノールに溶解したもの)2mlを72〜74℃の1%トリトンX−100水溶液100mlと混和して30分間この温度に保ったのち、室温まで冷却する。これに0.2Mリン酸カリウム緩衝液150ml、1.76%の4−アミノアンチピリン水溶液5ml、6%のフェノール水溶液10ml、および西洋わさび由来のペルオキシダーゼ水溶液(150プルプロガリン単位を0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解したもの)10mlを混和する。この反応混合液2.75mlを試験管にとり37℃で5分間加温し、コレステロールオキシダーゼ水溶液(300単位/ml)0.1mlを加えてさらに2分間加温する。ついで、コレステロールエステラーゼを含む試料液0.1mlを加えて混和したのち、水を対照として、37℃に温度制御された分光光度計で500nmの吸光度変化を1分間記録し、その初期勾配から1分間あたりの吸光度変化(ΔA)を求める。盲検値として試料液の代わりに5分間煮沸して完全失活させた酵素を0.1ml加え、前記と同様の操作を行ない1分間あたりの吸光度変化(ΔA)を求める。両吸光度の差を(ΔA−ΔA)とすると、試料液のコレステロールエステラーゼ活性は次式で求められる。ただし、コレステロールエステラーゼ活性は前記条件で、1分間に1μモルのコレステロールを生成する酵素量を1単位と定義する。
活性(単位/ml)=(ΔA−ΔA)×4.281
<最適pH測定法>
本酵素の各pHにおける活性を、基質としてリノール酸コレステロールを用いて測定する。0.2Mブリットン−ロビンソンの広域緩衝液を用いて、0.2mMの基質溶液を調製する。各pHの基質溶液(コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを含まない)2.75mlに、本発明により採取精製したコレステロールエステラーゼ溶液(以下、精製酵素液と称する)50μlを加え、30℃で10分間保温したのち、0.2Mフェニルメタンスルフォニルフルオライド水溶液を50μl加えて、酵素を失活させる。これに、コレステロールオキシダーゼ(300単位/ml)、ペルオキシダーゼ(150単位/ml)、および0.5Mリン酸緩衝液(pH7.0)を1:1.2:8.25の割合で混合したものを1.045ml加えて、500nmの吸光度を測定し、生成コレステロールを定量する。盲検値として、精製コレステロールエステラーゼの代わりに、水を用いて同様の操作を行なって求める。
<最適温度測定法>
0.2Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を用いる以外は前記最適pH測定法と同様の操作を10〜60℃で行ない、最適温度を求める。

<安定pH域測定法>
ブリットン−ロビンソン広域緩衝液(pH2.0〜10.0)50μlと精製酵素液50μlを混和し、30℃で18時間保温した。その後、その溶液のpHを測定するとともに、前記コレステロールエステラーゼ活性測定法と同様にして残存活性を測定する。残存活性75%以上を安定とし、安定pH域を求める。

<安定温度測定法>
0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50μlと精製酵素液50μlを混和し、10〜60℃で18時間保温する。ついで、その混和液を氷冷し、前記コレステロールエステラーゼ活性測定法と同様にして残存活性を測定する。

<等電点測定法>
蔗糖密度勾配等電点電気泳動装置(日本泳動(株)製)と両性電解質としてファルマライト(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)を用いて、400Vで2日間泳動した後、1.2mlずつ分画し、pHと活性を測定する。
<脂肪酸特異性測定法>
表1の各種酸のコレステロールエステル(リノール酸コレステロールのみシグマーアルドリッチ社製で、その他は東京化成(株)製)に対する加水分解活性を前記コレステロールエステラーゼ活性測定法と同様にして測定し、脂肪酸特異性を決定する。

<ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動>
9%の分離用アクリルアミドゲルの上に3%の濃縮用アクリルアミドゲルを乗せ、pH8.3の泳動用緩衝液を用いて100Vの電圧で泳動させる。泳動後、和光純薬工業株式会社製のクイックCBB液で染色する。分子量マーカーとして、バイオラド社の標準たんぱく質混合キットを用いる。

<ゲルろ過法>
GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製のスーパデックス200のカラム(1x30cm)を用いてゲルろ過を行った。すなわち、0.15M食塩水で平衡化した本カラムに本発明の精製酵素標品を0.1ml加え、0.4ml/分の流速で溶出した。本酵素の溶出位置は酵素活性で検出した。まったく同じ方法で、バイオラド社の販売する分子量既知のたんぱく質混合物のゲルろ過を行い、その結果をもとに検量線を作成して本発明酵素の分子量を測定した。

つぎに、実施例により本発明によるコレステロールエステル合成酵素を採取する方法をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
<コレステロールエステル合成酵素の採取法>
ペプトン2%(W/V)、酵母エキス1%(W/V)、食塩0.1%(W/V)、第一リン酸カリウム0.1%(W/V)および水道水からなる培地(pH5.0)150mlを500ml用の振とうフラスコに入れて、120℃で15分間殺菌した。この培地にトリコデルマ属
スギハラ菌株(Trichoderma
sugihara;受託番号 FERM BP−8273)を接種し、これを26℃で約3日間振とう培養した。培養終了後、培養液をろ過して菌体を除去し、ろ液に粉末硫安を終濃度70%飽和になるまで加え、15℃で1日放置した。これを遠心分離して生じた沈殿を集め、15mlの水に溶解し、2mMのリン酸緩衝液(pH7.0)(以下緩衝液Aという)に対して透析した。つぎに、硫安を終濃度20%飽和になるように加え、GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製のスーパーデックス200(2.6x60cm)カラムを用いてゲルろ過を行った。溶出液は試験管1本あたり3mlずつ分画し、酵素活性を測定した。活性画分を集め、最終濃度20%飽和となるよう硫酸アンモニウムを加えた。これを20%飽和の硫酸アンモニウムで平衡化したバイオーラド社製のマクロープレップ メチル充填カラムに添加した後、硫酸アンモニウム濃度を徐々に0%まで下げ、吸着蛋白を溶出した。活性画分を集め、限外ろ過膜を用いて濃縮した後、この濃縮酵素を蔗糖密度勾配等電点電気泳動装置(日本泳動(株)製)にファルマライト(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)と共に入れ、400Vの電圧を40時間かけて電気泳動を行った。電気泳動終了後、試験管1本当たり1mlずつ分画し、酵素活性とpHを測定した。活性のある画分はドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一のバンドを与えたので精製酵素標品と判定した。
<加水分解反応における脂肪酸特異性>
前記加水分解反応における脂肪酸特異性測定法と同様の方法で、下記の表1記載の酸のうち、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸および安息香酸のコレステロールエステルについて相対加水分解活性を測定した。得られた結果を下記の表2に示す。表2において、基質であるコレステロールエステルは、該エステルを構成する酸で示し、該酸が脂肪酸である場合は、炭素数および不飽和度で示す。本酵素は脂肪酸の結合したすべてのコレステロールエステルに対して加水分解活性を示したが、芳香族の酸である安息香酸のコレステロールエステルにはほとんど加水分解活性を示さなかった。
<最適pH>
前記最適測定法と同様にして測定を行なった結果を図1に示す。最適pHは6.0〜7.5であった。
<pH安定性>
前記安定pH域測定法と同様にして測定を行なった結果を図1に示す。本酵素はpH3.5〜7.5の間では18時間後も約75%の活性を維持していた。
<最適温度>
前記最適温度測定法と同様にして測定を行なった結果を図2に示す。本酵素の最適温度は35℃〜40℃であった。
<温度安定性>
前記温度安定性測定法と同様にして測定を行なった結果を図2に示す。本酵素はpH7.0、20℃では18時間後も約85%の活性を維持していたが、60℃では活性が消失した。
<等電点>
前記等電点測定法と同様にして測定を行なった結果、等電点は4.3であった。

<分子量>
前記ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法と同様にして測定を行なった結果を図3(A)に示す。これより本酵素のサブユニットは約54、000の分子量を有することが判明した。また、ゲルろ過法の結果を図3(B)に示す。これより、本酵素の分子量は約50,000である。これら2つの結果より、本酵素は単量体酵素であることが判明した。

これら本酵素の理化学的性質を従来知られているコレステロールエステラーゼの理化学的性質と比較したものを表1に示す。本酵素は既知のコレステロールエステラーゼと異なるものであることが明らかである。
Figure 2009055819
<実施例1で得られたコレステロールエステル合成酵素(精製酵素標品)を用いるステロールエステル製造>
(オレイン酸コレステロールエステルの製造)
コレステロール20mg(52μl)、オレイン酸30〜120mg、脱イオン水20μl、実施例1で得られた酵素20μl(コレステロールリノレート加水分解活性11U)を入れ、手でかき混ぜたものとそこにヘキサンを250μl加えたものを作り、それぞれ20℃で1日反応させた。その結果を表2に示す。
Figure 2009055819
(オレイン酸スティグマステロールエステルの製造)
スティグマステロール20mg(48μmol)、各種脂肪酸30mg、実施例1で得られた(精製酵素標品)酵素20μl(リノレート加水分解活性11U)を入れてよく混合したもの、ならびにそれらの混合物にヘキサン250μlを加えたものを作り、それぞれ20℃で1日静置して反応させた。その結果を表3に示す。
Figure 2009055819
本願発明のステロールエステル合成酵素(コレステロールエステラーゼ)を用いるオレイン酸スティグマステロールエステル合成において、ヘキサン添加が有効であることがわかる。
本発明によるステロールエステル合成酵素(コレステロールエステラーゼ)を用いると、中鎖および長鎖脂肪酸のコレステロールエステルおよび植物ステロールエステルを大量かつ安価に製造することができる。特に、植物ステロールのオレイン酸エステルは結晶化温度が低く、市販食用油に添加すると白濁、結晶化を抑制する。さらに、このエステルは油脂に対する溶解度が植物ステロール自体よりも桁違いに高いため動物油脂に添加しやすく、これによりコレステロールの小腸からの吸収を抑制し、結果として血中コレステロール値を低下させる効果があり、食品添加剤として有望で、産業上の利用価値が高いものである。
本発明によるコレステロールエステラーゼのpH−加水分解活性曲線(●)、およびpH−安定性曲線(○)を示すグラフである。 本発明によるコレステロールエステラーゼの温度−加水分解活性曲線(●)、および温度−安定性曲線(○)を示すグラフである。 本発明によるコレステロールエステラーゼのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果(A)およびゲルろ過の結果(B)である。A図において、レーン1は分子量既知の標準蛋白質を、レーン2は本発明によるコレステロールエステラーゼを示す。B図において、○は分子量既知の標準蛋白質を、●は本特許記載のコレステロールエステル合成酵素を示す。

Claims (3)

  1. 次の性質を有するステロールエステル合成酵素(コレステロールエステラーゼ)
    (1)作用
    補酵素を必要とせず、ステロールと遊離脂肪酸またはその誘導体に直接作用して、ステロールエステル生成反応を触媒する。
    (2)基質特異性
    遊離脂肪酸とステロールまたはその誘導体を基質として作用する。
    (3)分子量
    ゲルろ過法およびSDS-PAGE法による分子量が53kDa〜58kDaである。
    (4)作用pHおよび最適pH
    作用pHは2.5〜9.5、最適pHは6.0〜7.5に認められる。
    (5)pH安定性
    各pHの緩衝液中に本酵素を溶解して30℃で18時間静置した場合、pH3.5〜7.5では75%以上の酵素活性を維持している。
    (6)作用温度および最適温度
    5〜60℃の範囲で作用するが、最適温度は35〜40℃である。
    (7)熱安定性
    燐酸緩衝液(pH7.0)中で18時間熱処理した場合、20℃以上では部分的な失活が認められ、60℃以上ではほぼ完全に失活する。
    (8)阻害剤
    PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)により活性が阻害される。
  2. 糸状菌トリコデルマ属スギハラ菌株(Trichoderma sugihara; 受託番号FERM BP-8273)を10℃〜50℃、pHは4.0−9.5で1〜20日間、培養により得られる培養液からステロールエステル合成酵素を採取することを特徴とするステロールエステル合成酵素の製造方法。
  3. 培養が、固体培養、望ましくは振とう、または通気攪拌を伴う液体培養である請求項2に記載したステロールエステル合成酵素の製造方法。
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JP (1) JP2009055819A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012219196A (ja) * 2011-04-08 2012-11-12 Okamura Seiyu Kk 飽和脂肪酸ステロールエステル

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