JP5118651B2 - 新規のリパーゼおよびその使用 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
[発明の分野]
本発明は、新規の脂肪分解酵素をコードする遺伝子を含む新規に同定されたポリヌクレオチド配列に関する。酵素は、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae、イネいもち病菌)から単離することができる。本発明は、新規の遺伝子の全長コード配列、および全長機能性タンパク質のアミノ酸配列、ならびにこの遺伝子またはアミノ酸配列の機能性等価物を特徴とする。また本発明は、工業的過程において、例えばベーキング工業においてこれらのタンパク質を使用する方法にも関する。また、これらのタンパク質および細胞を産生するのに適した本発明に従うポリヌクレオチドで形質転換された細胞も本発明に含まれ、本発明に従うタンパク質は、その活性および/または発現レベルを増強または低減するために遺伝子改変されている。
[発明の背景]
生地(dough)の取扱い特性および/または焼成製品の最終特性を改善するために、改善特性を有する加工助剤を開発する絶え間ない努力が行われている。加工助剤は、本明細書では、生地の取扱い特性および/または焼成製品の最終特性を改善する化合物と定義される。改善され得る生地の特性には、安定性、機械加工性、気体保持能力、低減した気泡形成(blistering)、低減した粘着性、弾力性、伸展性、成形性などが含まれる。改善され得る焼成製品の特性には、ローフ体積、クラストのクリスピー性、クラム組織、クラム構造、クラム柔軟性、風味、相対老化および貯蔵期間が含まれる。これらの生地および/または焼成製品を改善する加工助剤は、化学添加剤および酵素(ベーキング酵素(baking enzyme)とも称される)の2つのグループに分けることができる。
改善特性を有する化学添加剤には、アスコルビン酸、ブロメートおよびアゾジカルボネートなどの酸化剤、L−システインおよびグルタチオンなどの還元剤、モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ステアロイルラクチル酸ナトリウム(SSL)またはステアロイルラクチル酸カルシウム(CSL)などの生地調整剤の役割を果たす乳化剤、またはモノステアリン酸グリセロール(GMS)などのクラム柔軟剤の役割を果たす乳化剤、トリグリセリド(脂肪)またはレシチンなどの脂肪材料などが含まれる。
化学添加剤の代わりにより天然の製品を用いることに対する消費者による要求の結果として、生地および/または焼成製品を改善する特性を有し、特定のベーキング用途の条件に応じて全ての可能な組み合わせにおいて使用されるいくつかのベーキング酵素が開発されてきた。
ベーキング工業において適用される乳化剤は、クラム軟化剤あるいは生地強化剤に大別することができる。蒸留モノグリセリドは、主に、クラム軟化のために使用される。モノグリセリドとデンプンとの複合体の形成によって、デンプンの完全な再結晶が防止され、その結果初期のクラム柔軟性が得られ、および/または焼成製品の貯蔵期間中にクラムの堅くなる速度が低下する。生地強化のためには、DATEM、CSLおよびSSLなどの極性脂質の数個の異なる合成類似体が適用される。製パンにおけるこれらの効果は、生地の安定性を改善し、ローフ体積を増大させ、そして微細で均一なクラム構造を生じさせることである。この後者の態様に関して、これらの乳化剤が適用される場合にはクラムの軟化も生じることに注意すべきである。また、生地の粘着性の低下、生地の機械加工性の改善、焼成製品のローフ体積の増大、クラム構造の改善、クラム柔軟性の改善、クラストのクリスピー性の改善を得ることができる。
乳化剤は、その極性および無極性部分のために、油−水および気体−水の界面に濃縮することができる。製パンにおいて、気泡(gas cell)は最初にグルテン−デンプンマトリックス内に封入されるが、発酵中に気泡は体積が増大し、気泡の間の界面には表面活性材料の液膜だけが含まれる。小麦粉の内在性の極性脂質は、これらの液膜および添加された乳化剤中に存在する。ジアシルグリセロールから製造されるレシチンまたはDATEMなどの極性ジアシルグリセロールは、そのモノアシルグリセロール対応物と比較したときに、製パンにおいて限られた効果しかないことが知られている。
例えば、L.クリスティアンセン(Chirstiansen)らによってProceedings of the Third Symposium on Enzymes in Grain Processing、25−27 2002年9月、269−274頁に開示されているように、DATEM代替物として特定の脂肪分解酵素を使用できることは当該技術分野において知られている。
脂肪分解酵素は、脂質基質におけるエステル結合の加水分解を触媒する酵素である。脂肪分解酵素は、グリセリド(例えば、トリグリセリド)からリン脂質、スフィンゴ脂質(sphingoplipid)またはガラクト脂質などの糖脂質に及ぶいくつかの種類の脂質に作用することができる。
グリセリドは、グリセロールおよび脂肪酸のエステルである。トリグリセリド(トリアシルグリセロールまたはトリアシルグリセリドとしても知られている)は、大部分は植物油および動物性脂肪中に存在する。リパーゼ(EC3.1.1.3)は、本明細書では、脂質からの脂肪酸のうちの1つまたは複数を加水分解する酵素と定義され、より具体的には、これらは脂肪酸とグリセロールのヒドロキシル基との間のエステル結合を加水分解する。
ガラクト脂質は外側(sn−1)および中央(sn−2)位置に2つのエステル化脂肪酸を有するグリセロール骨格からなるが、第3のヒドロキシル基は、例えばモノガラクトシル(monogalacosyl)ジグリセリドまたはジガラクトシルジグリセリドのようにガラクトースなどの糖残基に結合されている。ガラクトリパーゼ(EC3.1.1.26)は、ガラクトシルジグリセリドからのそれぞれsn−1およびsn−2位置の一方または両方の脂肪族アシル基の加水分解を触媒する。
リン脂質は外側(sn−1)および中央(sn−2)位置に2つのエステル化脂肪酸を有するグリセロール骨格からなるが、グリセロールの第3のヒドロキシル基はリン酸でエステル化されている。リン酸は次に、例えば、エタノールアミン(ホスファチジルエタノールアミン)、コリン(ホスファチジルコリン)のようなアミノアルコールにエステル化され得る。ホスホリパーゼは、本明細書では、リン脂質内の1つまたは複数の結合の加水分解に関与する酵素と定義される。
脂肪分解酵素は、作用を与える基質に応じて、例えばリパーゼ、ガラクトリパーゼおよびホスホリパーゼ(例えば、ホスホリパーゼA1、A2およびリゾホスホリパーゼなど)を含む。
パンの製造においてDATEM、CSLおよびSSLなどの化学乳化剤の代替物として使用することができる改善された脂肪分解酵素が絶えず必要とされている。
[発明の目的]
本発明の目的は、化学乳化剤の酵素代用品として使用するのに適した新規の脂肪分解酵素を提供することである。さらに、本発明の目的は、新規の脂肪分解酵素をコードする新規のポリヌクレオチドを提供することである。更なる目的は、天然および組換えで産生された脂肪分解酵素ならびにこれらを産生する組換え菌株を提供することである。また、融合ポリペプチドも、本発明に従うポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造および使用方法と同様に本発明の一部である。
[発明の概要]
本発明は、化学乳化剤の酵素代用品として使用するのに適した新規の脂肪分解酵素を提供する。意外にも、新規の脂肪分解酵素は、生地の中で使用したときに酵素がその場で以下の特性のうちの少なくとも1つを有するので、化学乳化剤の代用品として使用するために極めて適切である。
・ 無極性脂質に対する比較的低い活性
・ 極性ジアシル−脂質、少なくともジアシルガラクト脂質に対する比較的高い活性
・ 極性モノアシル化合物に対する比較的低い活性
例えば、本発明に従う酵素は、その場で、比較的低いリゾホスホリパーゼ活性および比較的低いリパーゼ活性を示すことができる。これらの予想外の特性は全て、生地の中で化学乳化剤の代替物として使用するときに有利であることが分かった。
新規の脂肪分解酵素は、本明細書において使用される場合、増大した生地の強度、増大した生地の弾力性、増大した生地の安定性、低減した生地の粘着性、改善された生地の伸展性、改善された生地の機械加工性、増大した焼成製品の体積、改善された焼成製品のクラム構造、低減した焼成製品の気泡形成、改善された焼成製品の柔軟性、改善された焼成製品の老化防止(anti−staling)、改善された焼成製品のクラストの群から選択される1つまたは複数の改善された生地および/または焼成製品の特性をもたらすか、あるいは広範な基質特異性を有する。
本発明はさらに、新規の脂肪分解酵素をコードする新規のポリヌクレオチドを提供する。
特に、本発明は、好ましくは高ストリンジェント条件下で、配列番号2、配列番号3または配列番号4(以下、「配列番号2〜4」と称する)のいずれか1つに従う配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを提供する。その結果として、本発明は、配列番号2、配列番号3または配列番号4に従う配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%相同である核酸を提供する。
1つの実施形態では、本発明は、糸状菌から得られるこのような単離ポリヌクレオチドを提供し、特にマグナポルテ(Magnaporthe)が好ましく、さらにより好ましくはマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)である。
さらなる実施形態では、このような単離ポリヌクレオチドは、当業者に知られている方法によって合成で得ることができる。
さらにもう1つの実施形態では、本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14(以下、「配列番号5〜14」と称する)において示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはこれらのいずれかの機能性等価物をコードする核酸配列を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号5〜14のいずれか1つに従うポリペプチドまたはこれらの機能性等価物の少なくとも1つの機能性ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
もう1つの実施形態では、本発明は、配列番号2〜4のいずれか1つに従う脂肪分解酵素遺伝子、あるいは活性酵素をまだコードしているその変異形または断片を提供する。
本発明は、本発明に従うポリヌクレオチド配列を含むベクター、ならびに本発明に従うDNAを増幅または検出するために使用することができるプライマー、プローブおよび断片にも関する。
さらに好ましい実施形態では、アスペルギルス(Aspergillus)、より具体的にはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger、クロコウジカビ)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)などの適切な宿主細胞においてコード化アミノ酸配列を発現させるのに適した少なくとも1つの制御配列に、本発明に従うポリヌクレオチド配列が機能性に連結されているベクターが提供される。好ましくは、宿主細胞はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である。また本発明は、本発明に従うポリヌクレオチドおよびベクターを調製するための方法も提供する。
また本発明は、本発明に従う異種または相同ポリヌクレオチドを含有する組換えで産生された宿主細胞にも関する。
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明に従う脂肪分解酵素の発現が著しく増大されるか、あるいは脂肪分解酵素の活性が増大された組換え宿主細胞を提供する。
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明に従う異種または相同DNAを含有する組換えで産生された宿主細胞を提供し、この細胞は本発明に従う機能性脂肪分解酵素を産生することができ、好ましくは、本発明に従う脂肪分解酵素を過剰発現することができる細胞、例えば、本発明に従う遺伝子の増大したコピー数を含むアスペルギルス(Aspergillus)株である。
本発明のさらにもう1つの態様では、精製ポリペプチドが提供される。本発明に従うポリペプチドは、本発明に従うポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドを含む。特に好ましいのは、配列番号5〜14のいずれか1つに従うポリペプチドまたはこれらのいずれかの機能性等価物である。
本発明に従うポリペプチドを含む融合タンパク質も本発明の範囲内である。本発明は、本発明に従うポリペプチドの製造方法も提供する。
また本発明は、本発明に従う脂肪分解酵素の、本明細書において記載されるような工業的過程における使用にも関する。
[発明の詳細な説明]
[ポリヌクレオチド]
1つの実施形態では、本発明は、配列番号5、配列番号6、配列番号7(以下、「配列番号5〜7」と称する)のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有し、暫定的にLIP01と呼ばれる脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチドまたはこれらのいずれかの機能性等価物を提供する。もう1つの実施形態では、本発明は、配列番号8、配列番号9(以下、「配列番号8〜9」と称する)のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有し、暫定的にLIP02と呼ばれる脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチド、またはこれらのいずれかの機能性等価物を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14(以下、「配列番号10〜14」と称する)のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有し、暫定的にLIP03と呼ばれる脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチド、またはこれらのいずれかの機能性等価物を提供する。
LIP01をコードする遺伝子の配列は、配列番号1に従うマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)から得られたゲノムクローンを配列決定することによって決定した。LIP02およびLIP03をコードする遺伝子の配列は、配列番号1に従うマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)から得られたゲノムクローンを変異させることによって得た。LIP02は、LIP01に関する点変異で構成される。本発明は、LIP01〜LIP03脂肪分解酵素をコードする遺伝子およびそのコード配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。従って、本発明は、配列番号2〜4のいずれか1つに従うヌクレオチド配列またはその機能性等価物を含む単離ポリヌクレオチドに関する。
特に、本発明は、ストリンジェント条件下、好ましくは高ストリンジェント条件下で配列番号2〜4に従うポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる単離ポリヌクレオチドに関する。
有利に、このような単離ポリヌクレオチドは、糸状菌、特にマグナポルテ(Magnaporthe)、例えばグリセア(grisae)、オリゼー(oryzae)、ポア(poae)、リゾフィラ(rhizophila)、サルビニー(salvinii)などのマグナポルテ科(Magnaporthaceae)、好ましくはマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)から得ることができる。さらに具体的には、本発明は、配列番号2に従うヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチドに関する。
本発明に従うもう1つの実施形態では、本発明は、ストリンジェント条件下、好ましくは高ストリンジェント条件下で配列番号3または配列番号4に従うポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる単離ポリヌクレオチドに関する。このような単離ポリヌクレオチドは、当業者に知られている方法により合成で得ることもできる。さらにより有利に、このような単離ポリヌクレオチドは、糸状菌、特にマグナポルテ(Magnaporthe)、例えばグリセア(grisae)、オリゼー(oryzae)、ポア(poae)、リゾフィラ(rhizophila)、サルビニー(salvinii)などのマグナポルテ科(Magnaporthaceae)、好ましくはマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)から得られるポリヌクレオチド、そして最も好ましくは配列番号1または配列番号2に従うヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを変異させることによって得ることもできる。
また本発明は、配列番号5〜14のいずれか1つに従うポリペプチドまたはこれらのいずれかの機能性等価物の少なくとも1つの機能性ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドにも関する。
本明細書において使用される場合、「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、染色体DNAから単離され得る核酸分子を指し、タンパク質、例えばマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)脂肪分解酵素をコードするオープンリーディングフレームが含まれる。遺伝子は、コード配列、非コード配列、イントロンおよび制御配列を含むことができる。さらに、遺伝子は、本明細書において定義される単離核酸分子を指す。
配列番号2〜4のいずれか1つのヌクレオチド配列またはその機能性等価物を有する核酸分子などの本発明の核酸分子は、標準的な分子生物学技法、および本明細書において提供される配列情報を用いて単離することができる。例えば、配列番号2〜4のいずれか1つの核酸配列の全てまたは一部をハイブリダイゼーションプローブとして用いると、本発明に従う核酸分子は、標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニング技法を用いて単離することができる(例えば、J.サムブルック(Sambrook)、E.F.フリッチェ(Fritsh)、およびT.マニアティス(Maniatis)、分子クローニング、実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1989年に開示される)。
さらに、配列番号2〜4のいずれか1つの全てまたは一部を包含する核酸分子は、配列番号2〜4のいずれか1つに含有される配列情報に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離することができる。
本発明の核酸は、テンプレートとしてcDNA、mRNA、あるいはゲノムDNA、そして適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、標準PCR増幅技法に従って増幅することができる。そのようにして増幅された核酸は、適切なベクター中にクローン化してDNA配列解析によって特徴付けることができる。
さらに、本発明に従うヌクレオチド配列に相当するオリゴヌクレオチド、あるいは本発明に従うヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドは、標準合成技法によって、例えば自動DNA合成機を用いて調製することができる。
好ましい実施形態では、本発明の単離核酸分子は、配列番号2〜4のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む。配列番号2の配列は、配列番号1に従うゲノムDNAに基づく脂肪分解酵素cDNAのコード領域に相当する。このcDNAは、配列番号5〜7のいずれか1つに従うマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)LIP01をコードする配列を含む。
もう1つの好ましい実施形態では、本発明の単離核酸分子は、配列番号2〜4に示されるヌクレオチド配列の補体またはこれらのヌクレオチド配列の機能性等価物である核酸分子を含む。
他のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、他のヌクレオチド配列とハイブリダイズし、それにより安定な二重鎖を形成することができるように他のヌクレオチド配列に対して十分に相補的なものである。
本発明の1つの態様は、本発明のポリペプチドあるいは生物学的に活性な断片またはドメインなどのその機能性等価物をコードする単離核酸分子、ならびに本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を同定するためにハイブリダイゼーションプローブとしての使用に十分な核酸分子、そして核酸分子の増幅または変異のためのPCRプライマーとしての使用に適したこのような核酸分子の断片に関する。
「単離ポリヌクレオチド」または「単離核酸」は、それが由来する生物体の天然に存在するゲノムにおいて直接隣接するコード配列(5’端部に1つ、そして3’端部に1つ)の両方と直接隣接しないDNAまたはRNAである。従って、1つの実施形態では、単離核酸は、コード配列に直接隣接する5’非コード(例えば、プロモーター)配列のいくつかまたは全てを含む。そのためこの用語は、例えば、ベクター内、自己複製プラスミドまたはウィルス内、あるいは原核生物または真核生物のゲノムDNA内に取り込まれた組換えDNA、あるいは他の配列とは独立して別個の分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されたcDNAまたはゲノムDNA断片)として存在する組換えDNAを含む。細胞材料、ウィルス材料、または培地(組換えDNA技法により産生される場合)、あるいは化学前駆体または他の化学物質(化学合成される場合)を実質的に含まない追加のポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。さらに、「単離核酸断片」は、断片として天然に存在せず、自然な状態では見出され得ない核酸断片である。
本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)ならびにヌクレオチド類似体を用いて生成されたDNAまたはRNAの類似体を含むことが意図される。核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体または誘導体(例えば、イノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を用いて合成することができる。このようなオリゴヌクレオチドを用いて、例えば、塩基対形成能力が変更されるかあるいはヌクレアーゼ耐性が増大された核酸を調製することができる。
本発明のもう1つの実施形態は、LIP01〜LIP03核酸分子、例えばLIP01〜LIP03核酸分子のコード鎖に対してアンチセンスである単離核酸分子を提供する。また、本明細書に記載される核酸分子の補体鎖も本発明の範囲内に含まれる。
[配列決定エラー]
本明細書において提供される配列情報は、誤って同定された塩基の包含が要求されるように、あまり狭義に解釈されてはならない。本明細書で開示される特定の配列を容易に使用して、糸状菌、特にマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)から完全遺伝子を単離することができ、これは次に、さらなる配列解析を容易に受けることができ、それにより配列決定エラーが同定される。
他に指示されない限り、本明細書においてDNA分子を配列決定することによって決定された全てのヌクレオチド配列は自動DNA配列決定装置を用いて決定したものであり、本明細書において決定されたDNA分子によってコードされるポリペプチドの全てのアミノ酸配列は、上記のように決定されたDNA配列の翻訳によって予測したものである。従って、この自動アプローチにより決定されるDNA配列について当該技術分野において知られているように、本明細書において決定されたヌクレオチド配列はどれもいくらかのエラーを含有し得る。自動で決定されたヌクレオチド配列は、一般には、配列決定されるDNA分子の実際のヌクレオチド配列と少なくとも約90%同一であり、より一般的には少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、当該技術分野においてよく知られている手動DNA配列決定法を含む他のアプローチによってより正確に決定することができる。当該技術分野において同様に知られているように、実際の配列と比較して、決定されたヌクレオチド配列における単一の挿入または欠失はヌクレオチド配列の翻訳におけるフレームシフトを引き起こすので、決定されたヌクレオチド配列によりコードされる予測アミノ酸配列は、このような挿入または欠失点から始まって、配列決定されたDNA分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは完全に異なるであろう。
当業者はこのように誤って同定された塩基を同定することができ、このようなエラーを補正する方法が分かる。
[核酸断片、プローブおよびプライマー]
本発明に従う核酸分子は、配列番号2〜4のいずれか1つに従う核酸配列の一部だけまたは断片、例えばプローブまたはプライマーとして使用することができる断片、あるいはLIP01〜LIP03タンパク質の一部をコードする断片を含み得る。LIP01〜LIP03遺伝子およびcDNAのクローニングから決定されたヌクレオチド配列は、他のLIP01〜LIP03ファミリーメンバー、および他の種からのLIP01〜LIP03相同体の同定および/またはクローニングにおいて使用するために設計されたプローブおよびプライマーの生成を可能にする。プローブ/プライマーは通常実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含み、これは通常、好ましくは高ストリンジェント条件下で、配列番号2〜4のいずれか1つに従うヌクレオチド配列またはその機能性等価物の少なくとも約12または15、好ましくは約18または20、好ましくは約22または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、または75あるいはそれ以上の連続したヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
LIP01〜LIP03ヌクレオチド配列に基づくプローブを用いて、例えば他の生物体において同一または相同のタンパク質をコードする転写物またはゲノムLIP01〜LIP03配列を検出することができる。好ましい実施形態では、プローブはこれに付着した標識基をさらに含み、例えば、標識基は放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る。このようなプローブは、LIP01〜LIP03タンパク質を発現する細胞を同定するための診断テストキットの一部として使用することもできる。
[同一性および相同性]
「相同性」または「%同一性」という用語は、本明細書では同義的に使用される。本発明の目的では、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の%同一性を決定するために、最適な比較を目的として配列が整列されると本明細書では定義される(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアライメントのために、第1のアミノ酸または核酸配列の配列内にギャップが導入され得る)。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが次に比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応の位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、分子はその位置において同一である。2つの配列間の%同一性は、配列により共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数(すなわち、重複位置)×100)。好ましくは、2つの配列は同じ長さである。
当業者は、2つの配列間の相同性を決定するためにいくつかの異なるコンピュータプログラムが利用可能であるという事実を知っているであろう。例えば、2つの配列間の配列の比較および%同一性の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の%同一性は、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で入手可能)のGAPプログラムに組み込まれたニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)(J.Mol.Biol.(48)444−453頁(1970年))アルゴリズムを使用し、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重量および1、2、3、4、5、または6の長さ重量を用いて決定される。当業者は、これらの全ての異なるパラメータはわずかに異なる結果をもたらし得るが、異なるアルゴリズムを用いたときに、2つの配列の全体の%同一性はあまり変化しないことを認識するであろう。
さらにもう1つの実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の%同一性は、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で入手可能)のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または80のギャップ重量および1、2、3、4、5、または6の長さ重量を用いて決定される。もう1つの実施形態では、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の%同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)(GenestreamサーバーIGH Montpeller France http://vega.igh.cnrs.fr/bin/align−guess.cgiの配列データを用いてALIGN Queryで入手可能)に組み込まれたE.マイヤーズ(Meyers)およびW.ミラー(Miller)のアルゴリズム(CABIOS、4:11−17(1989年)を使用し、PAM120重量残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを用いて決定される。
本発明の核酸およびタンパク質配列はさらに「問い合わせ配列」として使用して、公共データベースに対する検索を実行し、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。このような検索は、アルトシュール(Altschul)ら(1990年)J.Mol.Biol.215:403−10頁のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実行することができる。BLASTヌクレオチド検索はNBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行することができ、本発明のLIP01〜LIP03核酸分子に相同であるヌクレオチド配列が得られる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施することができ、本発明のLIP01〜LIP03タンパク質分子に相同であるアミノ酸配列が得られる。アルトシュール(Altschul)ら、(1997年)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402頁に記載されるように、比較のためのギャップ化アライメントを得るためにギャップ化BLASTを用いることができる。BLASTおよびギャップ化BLASTプログラムを用いる場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/の国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のホームページを参照されたい。
[ハイブリダイゼーション]
本明細書において使用される場合、「ハイブリダイズする」という用語は、互いに少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも95%相同であるヌクレオチド配列が通常互いにハイブリダイズされたままであるようなハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記述することが意図される。
このようなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、約45℃における6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、それに続く50℃、好ましくは55℃、好ましくは60℃、さらにより好ましくは65℃における1×SSC、0.1%SDS中での1回または複数回の洗浄である。
高ストリンジェント条件には、例えば、5×SSC/5×デンハート液/1.0%SDS中での68℃におけるハイブリダイゼーション、そして室温における0.2×SSC/0.1%SDS中での洗浄が含まれる。あるいは、洗浄は42℃で実行されてもよい。
当業者は、ストリンジェントおよび高ストリンジェントのハイブリダイゼーション条件のために適用する条件が分かるであろう。このような条件に関する更なるガイダンスは、例えばサムブルック(Sambrook)ら、1989年、分子クローニング、実験室マニュアル、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、およびオースベル(Ausubel)ら(編)、1995年、分子生物学におけるカレント・プロトコル(John Wiley&Sons、ニューヨーク)において、当該技術分野で容易に入手することができる。
当然ながら、ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)領域など)またはT(またはU)残基の相補的なストレッチのみとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、本発明の核酸の一部と特異的にハイブリダイズさせるために使用される本発明のポリヌクレオチドには含まれないであろう。何故なら、このようなポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチを含有する任意の核酸分子またはその補体(例えば、実際には任意の二本鎖cDNAクローン)とハイブリダイズし得るからである。
[他の生物体からの全長DNAの取得]
典型的なアプローチにおいて、他の生物体、例えば糸状菌、特にマグナポルテ(Magnaporthe)種から構築されたcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。
例えば、マグナポルテ(Magnaporthe)株は、ノーザンブロット分析により相同のLIP01〜LIP03ポリヌクレオチドについてスクリーニングすることができる。本発明に従うポリヌクレオチドに相同の転写物が検出されたら、当業者に良く知られている標準技法を用いて、適切な菌株から単離されたRNAからcDNAライブラリーを構築することができる。あるいは、全ゲノムDNAライブラリーを、本発明に従うLIP01〜LIP03ポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なプローブを用いてスクリーニングすることもできる。
相同の遺伝子配列は、例えば、本明細書において教示されるヌクレオチド配列に基づいて設計された2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを実行することによって単離することができる。
反応のためのテンプレートは、本発明に従うポリヌクレオチドを発現することが分かっているかまたは推測される菌株から調製されるmRNAの逆転写によって得られるcDNAであり得る。PCR産物をサブクローニングおよび配列決定して、増幅された配列が新しいLIP01〜LIP03核酸配列またはその機能性等価物の配列を表すことを保証することができる。
次にPCR断片を使用して、様々な既知の方法によって全長cDNAクローンを単離することができる。例えば、増幅された断片は標識化され、バクテリオファージまたはコスミドcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。あるいは、標識断片は、ゲノムライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。
またPCR技法は、他の生物体から全長cDNA配列を単離するために使用することもできる。例えば、RNAは、標準手順に従って適切な細胞または組織源から単離することができる。第1の鎖の合成の予備刺激のために、増幅断片の5’最端部に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、RNAにおいて逆転写反応を実行することができる。
次に、得られたRNA/DNAハイブリッドを、標準末端トランスフェラーゼ反応を用いて「テーリング」する(例えば、グアニンによる)ことができ、リボヌクレアーゼHによりハイブリッドを消化し、そして第2の鎖の合成を予備刺激する(例えば、ポリ−Cプライマーによる)ことができる。従って、増幅断片の上流のcDNA配列は、容易に単離することができる。有用なクローニング戦略の概説としては、例えば、上記のサムブルック(Sambrook)ら、および上記のオースベル(Ausubel)らを参照されたい。
[ベクター]
本発明のもう1つの態様は、LIP01〜LIP03タンパク質またはその機能性等価物をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、そこに連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、プラスミドは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループを指す。もう1つのタイプのベクターはウィルスベクターであり、ウィルスゲノム内にはさらなるDNAセグメントが連結され得る。特定のベクターは、導入された宿主細胞内で自律的に複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、特定のベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることが多い。プラスミドはベクターの最も一般に使用される形態なので、「プラスミド」および「ベクター」という用語は、本明細書では同義的に使用することができる。しかしながら、本発明は、等価の機能を果たすウィルスベクター(例えば、複製欠損レトロウィルス、アデノウィルスおよびアデノ関連ウィルス)などの他の形態の発現ベクターも含むことが意図される。
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適切な形態の本発明の核酸を含み、これは、組換え発現ベクターが、発現すべき核酸配列に作動可能に連結されて発現に使用すべき宿主細胞に基づいて選択される1つまたは複数の制御配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内で、「作動可能に連結された」とは、対象とするヌクレオチド配列が、このヌクレオチド配列の発現(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、あるいはベクターが宿主細胞内に導入される場合には宿主細胞において)を可能にするような形で制御配列に連結されることを意味するものである。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような制御配列は、例えば、ゴーデル(Goeddel)、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990年)において記載されている。制御配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の恒常的発現を指示するもの、そして特定の宿主細胞のみにおいてヌクレオチド配列の発現指示するもの(例えば、組織特異的制御配列)が含まれる。発現ベクターの設計が形質転換すべき宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得ることは、当業者によって認識されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞内に導入し、それによって本明細書に記載される核酸によってコードされるタンパク質またはペプチド(例えば、LIP01〜LIP03タンパク質、LIP01〜LIP03タンパク質の変異形態、これらの断片、変異形または機能性等価物、融合タンパク質など)を産生することができる。
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞のまたは真核細胞におけるLIP01〜LIP03タンパク質の発現のために設計することができる。例えば、LIP01〜LIP03タンパク質は、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウィルス発現ベクターを用いる)、酵母細胞または哺乳類細胞において発現させることができる。適切な宿主細胞は、ゴーデル(Goeddel)、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990年)においてさらに議論されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写および翻訳することができる。
本発明において有用な発現ベクターには、染色体、エピソームおよびウィルス由来のベクターが含まれ、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素、ウィルス(例えば、バキュロウィルス、パポバウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、仮性狂犬病ウィルスおよびレトロウィルスなど)に由来するベクター、ならびにプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素(コスミドおよびファージミドなど)に由来するベクターなどのこれらの組み合わせに由来するベクターが含まれる。
DNA挿入片は、数例を挙げると、ファージλPLプロモーター、大腸菌(E.coli)lac、trpおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウィルスLTRのプロモーターなどの適切なプロモーターに作動可能に連結されなければならない。その他の適切なプロモーターは当業者には分かるであろう。特定の実施形態では、糸状菌において脂肪分解酵素の高発現レベルを指示することができるプロモーターが好ましい。このようなプロモーターは当該技術分野において知られている。発現構築物は、転写開始、終了のための部位を含有し、そして転写領域には翻訳のためのリボソーム結合部位を含有することができる。構築物によって発現される成熟転写物のコード部分は、最初の翻訳開始AUGと、翻訳すべきポリペプチドの端部に適切に配置された終止コドンとを含むであろう。
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法によって原核細胞または真核細胞内に導入することができる。本明細書において使用される場合、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈(co−percipitation)、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、形質導入、感染、リポフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、外来性の核酸(例えば、DNA)を宿主細胞内に導入するための技術的に認識された様々な技法を指すことが意図される。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするために適切な方法は、サムブルック(Sambrook)ら(分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1989年)、ディビス(Davis)ら、Basic Methods in Molecular Biology(1986年)および他の実験室マニュアルにおいて見出すことができる。
哺乳類細胞の適切なトランスフェクションについて、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技法に依存して、ほんのわずかの細胞だけが外来性のDNAをそのゲノム内に組み込むことができることが知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、通常、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子が対象とする遺伝子と一緒に宿主細胞内に導入される。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサート(methatrexate)などの薬物に対する耐性を付与するものが含まれる。選択可能なマーカーをコードする核酸は、LIP01〜LIP03タンパク質をコードする核酸と同じベクターで宿主細胞内に導入することもできるし、別のベクターで導入することもできる。導入された核酸で安定的にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子が導入された細胞は生存するが、他の細胞は死滅するであろう)。
原核生物におけるタンパク質の発現は、大腸菌(E.coli)において、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指示する恒常的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実行されることが多い。融合ベクターは、その中にコードされたタンパク質、例えば組換えタンパク質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは通常、1)組換えタンパク質の発現を増大させること、2)組換えタンパク質の溶解度を増大させること、そして3)アフィニティ精製におけるリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製に役立つことの3つの目的を果たす。多くの場合、融合発現ベクターには、融合部分と組換えタンパク質の接合部にタンパク質分解性の切断部位が導入され、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離が可能になる。
記載したように、発現ベクターは、好ましくは選択可能なマーカーを含有するであろう。このようなマーカーには、真核(eukarotic)細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性と、大腸菌(E.coli)および他の細菌における培養のためのテトラサイクリン(tetracyline)またはアンピシリン(ampicilling)耐性とが含まれる。適切な宿主の代表例としては、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびサルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ドロソフィラ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞、CHO、COSおよびボウズ(Bowes)メラノーマなどの動物細胞、ならびに植物細胞が挙げられる。上記の宿主細胞のための適切な培地および条件は当該技術分野において知られている。
細菌での使用に好ましいベクターは、例えば、参照によって本明細書に援用される国際公開第2004/074468A1号パンフレットにおいて開示されている。その他の適切なベクターは、当業者には容易に明らかであろう。
本発明における使用に適した既知の細菌プロモーターには、参照によって本明細書に援用される国際公開第2004/074468A1号パンフレットに開示されるプロモーターが含まれる。
より高等の真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクター内に挿入することによって増大することができる。エンハンサーは通常約10〜300bpのDNAのシス作用性要素であり、所与の宿主細胞タイプにおいてプロモーターの転写活性を増大させる作用をする。エンハンサーの例としては、bp100〜270の複製起点の後期側に位置するSV40エンハンサー、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウィルスエンハンサーが挙げられる。
小胞体の内腔、周辺質空間または細胞外環境の中に翻訳されたタンパク質の分泌のために、発現されるポリペプチドに適切な分泌シグナルが取り込まれてもよい。シグナルはポリペプチドに対して内在性でもよいし、あるいはこれらは異種シグナルでもよい。
LIP01〜LIP03ポリペプチドは、融合タンパク質などの改変された形態で発現されてもよく、分泌シグナルだけでなく追加の異種機能領域も含むことができる。従って、例えば、ポリペプチドのN−末端に追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域を付加して、精製中またはその後の処理および貯蔵中の宿主細胞における安定性および残留性を改善することができる。また、ペプチド部分をポリペプチドに付加して、精製を容易にすることができる。
[本発明に従うポリペプチド]
本発明は、配列番号5〜14のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド、およびに配列番号2〜4のいずれか1つのポリヌクレオチドを適切な宿主において発現させることによって得られるアミノ酸配列を提供する。また、上記のポリペプチドの機能性等価物を含むペプチドまたはポリペプチドも本発明の範囲に含まれる。
当業者には知られているように、成熟中の加工エラーのために配列番号5〜14のN末端は、配列番号5〜14のC末端と同様に異種であることが可能である。特に、このような加工エラーは、ポリペプチドの過剰発現の際に生じ得る。さらに、エキソプロテアーゼ活性は、不均一性を引き起こし得る。不均一性が生じる程度は、使用される宿主および発酵手順にも依存する。このようなC末端加工アーチファクトは、配列番号5〜14で示されるように、より短いポリペプチドまたはより長いポリペプチドを導き得る。このようなエラーの結果としてN末端も異種であり得る。
さらなる実施形態では、本発明は、追加の残基を含有し、位置1または位置2または位置3などで開始する、配列番号5〜14のいずれか1つに従うポリペプチドの少なくとも1つの機能性ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。あるいは、特定の残基を欠いており、結果として位置2または位置3または位置4などで開始してもよい。
LIP01についてより具体的には、本発明の1つの実施形態において、配列番号5は、配列番号2で示されるようなcDNAから直接翻訳されるようなタンパク質を開示する。通常、このようなタンパク質は成熟したタンパク質をもたらす前に加工され、例えばシグナル配列を解放し、好ましくはそれによって配列番号6または7が得られるであろう。配列番号6および配列番号7で示されるようなアミノ酸配列について、追加の残基を含有する場合のN末端は、それぞれ位置1、位置2または位置3におけるN末端の開始に相当して、以下の追加のアミノ酸配列R、GRまたはEGRを含有し得る。類似のC末端加工アーチファクトは、より短いポリペプチドまたはより長いポリペプチドを導き得る。配列番号7の特定の場合には、追加の残基を含有する場合のC末端は好ましくは、それぞれ位置310+1、+2または+3における延長C末端に相当して、以下の追加のアミノ酸配列R、RRまたはRRDを含有する。
LIP02についてより具体的には、さらにもう1つの実施形態において、本発明は、配列番号9に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはこれらのいずれかの機能性等価物をコードする核酸配列を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。配列番号8は、配列番号3で示されるようなcDNAから直接翻訳されるようなタンパク質を開示する。通常、このようなタンパク質は成熟タンパク質が得られる前に加工され、例えばシグナル配列を解放して、好ましくはそれによって配列番号9が得られるであろう。得られるタンパク質のC末端およびN末端は、例えば、加工アーチファクトのために異種であるかもしれない。
LIP03についてより具体的には、さらにもう1つの実施形態において、配列番号10は、配列番号4で示されるようなcDNAから直接翻訳されるようなタンパク質を開示する。通常、このようなタンパク質は成熟タンパク質が得られる前に加工され、例えばシグナル配列を解放して、好ましくはそれによって配列番号11、12、13または14が得られるであろう。
上記のポリペプチドは、「本発明に従うポリペプチド」という用語に集合的に含まれる。
「ペプチド」および「オリゴペプチド」という用語は同義である(一般に認識されるように)と考えられ、ペプチジル結合によって結合された少なくとも2つのアミノ酸の鎖を示すことが文脈で必要とされるのでそれぞれの用語は同義的に使用することができる。「ポリペプチド」という語は、本明細書では、7つよりも多いアミノ酸残基を含有する鎖ために使用される。本明細書における全てのオリゴペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、左から右に、そしてアミノ末端からカルボキシ末端への方向に書かれている。本明細書で使用されるアミノ酸の1文字コードは当該技術分野において一般に知られており、サムブルック(Sambrook)ら(分子クローニング、実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1989年)において見出すことができる。
「単離」ポリペプチドまたはタンパク質とは、その天然環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞において発現された組換え産生ポリペプチドおよびタンパク質は、本発明の目的のために、例えばスミス(Smith)およびジョンソン(Johnson)、Gene 67:31−40頁(1988年)に開示される一段階精製法などの適切な技法によって実質的に精製された未変性または組換えポリペプチドであるように単離されると考えられる。
本発明に従うLIP01〜LIP03脂肪分解酵素は、当該技術分野において既知の方法(ポール・カトラー(Paul Cutler)によるProtein Purification Protocols、Methods in Molecular Biologyシリーズ、Humana Press、2004年)によって組換え細胞培養物から回収および精製することができる。
本発明のポリペプチドには、天然精製された産物、化学合成手順の産物、および組換え技法により原核宿主または真核宿主(例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳類細胞を含む)から産生された産物が含まれる。組換え産生手順において使用される宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化されてもよいし、グリコシル化されなくてもよい。さらに、本発明のポリペプチドは、場合によっては宿主媒介プロセスの結果として、最初の改変メチオニン残基を含んでもよい。
[タンパク質断片]
本発明は、本発明に従うポリペプチドの生物学的に活性な断片も特徴とする。
本発明のポリペプチドの生物学的に活性な断片には、LIP01〜LIP03タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号5〜14のアミノ酸配列)と十分に同一であるか、あるいはこれらに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれ、これらは、全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含むが、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの生物活性を示す。通常、生物学的に活性な断片は、LIP01〜LIP03タンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。本発明のタンパク質の生物学的に活性な断片は、例えば、長さが10、25、50、100またはそれ以上のアミノ酸であるポリペプチドでよい。さらに、タンパク質の他の領域が欠失された他の生物学的に活性な部分を組換え技法によって調製することができ、本発明のポリペプチドの天然形態の生物学的活性の1つまたは複数について評価することができる。
また本発明は、LIP01〜LIP03タンパク質の上記の生物学的に活性な断片をコードする核酸断片も特徴とする。
[融合タンパク質]
本発明のタンパク質またはその機能性等価物、例えばその生物学的に活性な部分はLIP01〜LIP03ではないポリペプチド(例えば、異種アミノ酸配列)に作動可能に連結されて、融合タンパク質を形成することができる。「LIP01〜LIP03でないポリペプチド」は、LIP01〜LIP03タンパク質に対して実質的に相同でないタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。このような「LIP01〜LIP03でないポリペプチド」は、同じまたは異なる生物体に由来することができる。LIP01〜LIP03融合タンパク質内で、LIP01〜LIP03ポリペプチドは、LIP01〜LIP03タンパク質の全てまたは生物学的に活性な断片に相当することができる。好ましい実施形態では、LIP01〜LIP03融合タンパク質は、LIP01〜LIP03タンパク質の少なくとも2つの生物学的に活性な部分を含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、LIP01〜LIP03ポリペプチドおよびLIP01〜LIP03でないポリペプチドが互いにインフレームで融合されることを示すものとする。LIP01〜LIP03でないポリペプチドは、LIP01〜LIP03ポリペプチドのN末端またはC末端に融合させることができる。
例えば、1つの実施形態では、融合タンパク質はGST−LIP01〜LIP03融合タンパク質であり、LIP01〜LIP03配列がGST配列のC末端に融合されている。このような融合タンパク質は、組換えLIP01〜LIP03の精製を容易にすることができる。もう1つの実施形態では、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含有するLIP01〜LIP03タンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳類および酵母宿主細胞)では、LIP01〜LIP03の発現および/または分泌は、異種シグナル配列の使用によって増大させることができる。
もう1つの例では、バキュロウィルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列を異種シグナル配列として使用することができる(分子生物学におけるカレント・プロトコル、オースベル(Ausubel)ら編、John Wiley & Sons、1992年)。真核生物異種シグナル配列のその他の例には、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼ(Stratagene、カリフォルニア州ラ・ホヤ)の分泌配列が含まれる。さらにもう1つの例では、有用な原核生物異種シグナル配列は、phoA分泌シグナル(上記のサムブルック(Sambrook)ら)およびタンパク質A分泌シグナル(Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を含む。
シグナル配列は、本発明のタンパク質またはポリペプチドの分泌および単離を容易にするために使用することができる。通常、シグナル配列は、一般に1つまたは複数の切断事象における分泌中に成熟タンパク質から切断される疎水性アミノ酸のコアによって特徴付けられる。このようなシグナルペプチドは、分泌経路を通過する際に成熟タンパク質からのシグナル配列の切断を可能にする加工部位を含有する。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換されている真核宿主などからタンパク質の分泌を指示し、続いてあるいは同時に、シグナル配列は切断される。次に、タンパク質は、既知の方法によって細胞外培地から容易に精製することができる。あるいは、シグナル配列は、GSTドメインなどの精製を容易にする配列を用いて、対象とするタンパク質に結合させることができる。従って、たとえば、ポリペプチドをコードする配列は、融合ポリペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列などのマーカー配列と融合され得る。本発明のこの態様の特定の好ましい実施形態では、マーカー配列は、とりわけpQEベクター(Qiagen、Inc.)において提供されるタグなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、その多くは市販されている。例えばゲンツ(Gentz)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824頁(1989年)において記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製を提供する。HAタグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する精製に有用なもう1つのペプチドであり、例えばウィルソン(Wilson)ら、Cell 37:767頁(1984年)によって記載されている。
好ましくは、本発明のLIP01〜LIP03融合タンパク質は、標準組換えDNA技法によって産生される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片は、従来の技法に従って、例えば連結のための平滑末端またはねじれ末端の使用、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合の付着末端の充填、望ましくない連結を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素連結によって、インフレームで一緒に連結される。もう1つの実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技法によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片の間の相補的なオーバーハングを引き起こすアンカープライマーを用いて実行することができ、続いてアニーリングおよび再増幅して、キメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、分子生物学におけるカレント・プロトコル、オースベル(Ausubel)ら編、John Wiley & Sons、1992年を参照されたい)。さらに、既に融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をコードする多くの発現ベクターが市販されている。LIP01〜LIP03をコードする核酸は、融合部分がLIP01〜LIP03タンパク質にインフレームで連結されるように、このような発現ベクター内にクローニングすることができる。
[機能性等価物]
「機能性等価物」および「機能性変異形」という用語は、本明細書では同義的に使用される。LIP01〜LIP03DNAの機能性等価物は、本明細書において定義されるようなLIP01〜LIP03脂肪分解酵素の特定の機能を示すポリペプチドをコードする単離DNA断片である。本発明に従うLIP01〜LIP03ポリペプチドの機能性等価物は、本明細書において定義されるようなマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)脂肪分解酵素の少なくとも1つの機能を示すポリペプチドである。従って、機能性等価物は生物学的に活性な断片も包含する。
機能性タンパク質またはポリペプチド等価物は、配列番号5〜14の1つまたは複数のアミノ酸の保存的置換のみ、あるいは非必須アミノ酸の置換、挿入または欠失を含有し得る。従って、非必須アミノ酸は、生物学的機能を実質的に変更することなく配列番号5〜14において変更することができる残基である。例えば、本発明のLIP01〜LIP03タンパク質の中で保存されるアミノ酸残基は特に変更を受け難いことが予想される。さらに、本発明に従うLIP01〜LIP03タンパク質および他の脂肪分解酵素の中で保存されるアミノ酸も変更を受ける可能性が低い。
「保存的置換」という用語は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換を示すことが意図される。これらのファミリーは当該技術分野において知られており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
機能性核酸等価物は、通常、サイレント変異、すなわちコード化ポリペプチドの生物学的機能を変更しない変異を含有し得る。従って、本発明は、特定の生物活性にとって必須でないアミノ酸残基の変化を含有するLIP01〜LIP03タンパク質をコードする核酸分子を提供する。このようなLIP01〜LIP03タンパク質は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6とはアミノ酸配列が異なるが、その少なくとも1つの生物活性を保持する。1つの実施形態では、単離核酸分子はタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該タンパク質は、配列番号5〜14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約60%、好ましくは65%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の実質的に相同のアミノ酸配列、またはそれ以上に相同のアミノ酸配列を含む。
例えば、表現型的にサイレントなアミノ酸置換をどのようにして行うかについてのガイダンスは、ボウイ(Bowie)、J.U.ら、Science 247:1306−1310頁(1990年)およびそこに引用される参考文献において提供される。著者らが述べているように、これらの研究によって、意外にもタンパク質はアミノ酸置換に寛容性であることが明らかにされた。さらに著者らは、タンパク質の特定の位置においてどの変化が許容的な可能性があるかを示している。
それぞれ、配列番号5〜7、配列番号8〜9、配列番号10〜14のいずれか1つに従うタンパク質に相同であるLIP01〜LIP03タンパク質をコードする単離核酸分子は、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または挿入がコード化タンパク質内に導入されるように、それぞれ配列番号2〜4のいずれか1つに従うコードヌクレオチド配列内に1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入することによって作成することができる。このような変異は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介の変異誘発などの標準的な技法によって導入することができる。
「機能性等価物」という用語は、LIP01〜LIP03タンパク質のオルソログも包含する。LIP01〜LIP03タンパク質のオルソログは他の菌株または種から単離することができるタンパク質であり、類似または同一の生物活性を有する。このようなオルソログは、配列番号5〜14に対して実質的に相同のアミノ酸配列を含むとして容易に同定することができる。
本明細書において定義されるように、「実質的に相同」という用語は、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列が共通ドメインを有するように、第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列が、第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対して十分または最低限の数の同一または等価(例えば、同様の側鎖を有する)のアミノ酸またはヌクレオチドを含有することを指す。例えば、約60%、好ましくは65%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性あるいはそれ以上を有する共通ドメインを含有するアミノ酸またはヌクレオチド配列は、本明細書では十分に同一であると定義される。
また、他のLIP01〜LIP03ファミリーメンバーをコードし、従って配列番号2〜4とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸も本発明の範囲内に含まれる。さらに、異なる種からのLIP01−LIP03タンパク質をコードし、配列番号2〜4とは異なるヌクレオチド配列を有することができる核酸も本発明の範囲内に含まれる。
本発明のLIP01−LIP03DNAの変異形(例えば、天然の対立遺伝子変異形)および相同体に相当する核酸分子は、標準ハイブリダイゼーション技法に従って、好ましくは高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に開示されるcDNAまたはその適切な断片をハイブリダイゼーションプローブとして用いて、本明細書に開示されるLIP01−LIP03核酸に対するその相同性に基づいて単離することができる。
LIP01〜LIP03配列の天然に存在する対立遺伝子変異形に加えて、配列番号2〜4のヌクレオチド配列への変異によって変化を導入でき、それによって、LIP01〜LIP03タンパク質の機能を実質的に変更することなくLIP01〜LIP03タンパク質のアミノ酸配列の変化が生じることを当業者は認識するであろう。
本発明のもう1つの態様では、改善されたLIP01〜LIP03タンパク質が提供される。改善されたLIP01〜LIP03タンパク質は、少なくとも1つの生物活性が改善されたタンパク質である。このようなタンパク質は、飽和変異誘発などによって、LIP01〜LIP03コード配列の全てまたは一部に沿ってランダムに変異を導入することによって得られ、得られた変異体を組換えで発現させ、生物活性についてスクリーニングすることができる。例えば、当該技術では脂肪分解酵素の酵素活性を測定するための標準アッセイが提供され、従って、改善されたタンパク質を容易に選択することができる。
好ましい実施形態では、LIP01〜LIP03タンパク質は、それぞれ配列番号5〜7、配列番号8〜9、配列番号10〜14に従うアミノ酸配列を有する。もう1つの実施形態では、LIP01〜UP03ポリペプチドは、配列番号5〜14に従うアミノ酸配列に対して実質的に相同であり、配列番号5〜14に従うポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を保持するが、上記のように自然変異または変異誘発のためにアミノ酸配列が異なる。
さらに好ましい実施形態では、LIP01〜LIP03タンパク質は、好ましくは高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、それぞれ配列番号2〜4のいずれか1つに従う核酸とハイブリダイズすることができる単離核酸断片によってコードされるアミノ酸配列を有する。
従って、LIP01〜LIP03タンパク質は、好ましくは、配列番号5〜14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を含み、配列番号5〜14に従うポリペプチドの少なくとも1つの機能活性を保持するタンパク質である。
本発明に従うタンパク質機能性等価物は、例えば、本発明のタンパク質の変異体、例えば切断変異体のコンビナトリアルライブラリーを脂肪分解酵素活性についてスクリーニングすることによって同定することもできる。1つの実施形態では、核酸レベルにおけるコンビナトリアル変異誘発によって、変異形の多様化ライブラリーが作成される。変異形の多様化ライブラリーは、例えば、可能性のあるタンパク質配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、あるいはより大きい融合タンパク質のセットとして発現可能である(例えば、ファージディスプレイのために)ように合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列内に酵素により連結することによって生成することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から本発明のポリペプチドの可能性のある変異形のライブラリーを生成するために使用することができる様々な方法が存在する。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該技術分野において既知である(例えば、ナラン(Narang)(1983年)Tetrahedron 39:3、イタクラ(Itakura)ら(1984年)Annu.Rev.Biochem.53:323、イタクラ(Itakura)ら(1984年)Science 198:1056、イケ(Ike)ら(1983年)Nucleic Acid Res.11:477を参照されたい)。
さらに、本発明のポリペプチドのコード配列の断片のライブラリーを使用して、その後の変異形の選択をスクリーニングするためのポリペプチドの多様化集団を作成することができる。例えば、ニッキングが分子につきほぼ1回しか起こらない条件下で、対象とするコード配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性し、DNAを再生して種々のニックの入った産物からセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼの処理によって再形成された二重鎖から一本鎖部分を除去し、得られた断片ライブラリーを発現ベクター内に連結することによって、コード配列断片のライブラリーを作成することができる。この方法によって、対象とするタンパク質の様々なサイズのN末端および内部の断片をコードする発現ライブラリーを誘導することができる。
切断の点変異によって作られたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、そして選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするために、いくつかの技法が当該技術分野において知られている。大きい遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために高処理分析に適した最も広く使用される技法は、一般に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター内にクローニングし、得られたベクターのライブラリーにより適切な細胞を形質転換し、そして所望の活性の検出によってその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離が容易になる条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させることを含む。ライブラリー内の機能性変異体の頻度を高める技法である再帰的アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis、REM)はスクリーニングアッセイと組み合わせて使用して、本発明のタンパク質の変異形を同定することができる(アーキン(Arkin)およびユアヴァン(Yourvan)(1992年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815頁、デルグレイブ(Delgrave)ら(1993年)Protein Engineering 6(3):327−331頁)。
それぞれ配列番号2〜4で示されるLIP01〜LIP03遺伝子配列に加えて、LIP01〜LIP03タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらし得るDNA配列多形性が所与の集団内に存在し得ることは当業者には明らかであろう。このような遺伝子多形性は、異なる集団からの細胞内、あるいは天然の対立遺伝子変異のために集団内にも在し得る。対立遺伝子変異形も機能性等価物を含み得る。
本発明に従うポリヌクレオチドの断片は、機能性ポリペプチドをコードしないポリヌクレオチドも含み得る。このようなポリヌクレオチドは、PCR反応のためのプローブまたはプライマーとしての役割を果たすことができる。
本発明に従う核酸は、機能性または非機能性ポリペプチドのいずれをコードするかに関係なく、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして使用することができる。LIP01〜LIP03活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用には、とりわけ、(1)LIP01〜LIP03タンパク質をコードする遺伝子、またはその対立遺伝子変異形を、例えばマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)以外の生物体からのcDNAライブラリーから単離することと、(2)ベルマ(Verma)ら、Human Chromosomes:a Manual of Basic Techniques、Pergamon Press、ニューヨーク(1988年)に記載されるように、LIP01〜LIP03遺伝子の正確な染色***置を提供するための中期の染色体の広がりへのインサイチューハイブリダイゼーション(例えば、FISH)と、(3)特定の組織および/または細胞におけるLIP01〜LIP03mRNAの発現を検出するためのノーザンブロット分析と、4)所与の生物学的(例えば、組織)サンプルにおいてLIP01〜LIP03プローブとハイブリダイズ可能な核酸の存在を分析するための診断ツールとして使用することができるプローブおよびプライマーとが含まれる。
また、LIP01〜LIP03遺伝子の機能性等価物を取得する方法も本発明によって包含される。このような方法は、配列番号5〜14に従うタンパク質配列またはこれらのいずれかの変異形の全てまたは一部をコードする単離核酸を含む標識プローブを取得することと、ライブラリー内の核酸断片へのプローブのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で標識プローブを用いて核酸断片ライブラリーをスクリーニングし、それによって核酸二重鎖を形成することと、任意の標識二重鎖内の核酸断片から全長遺伝子配列を調製して、LIP01〜LIP03遺伝子に関連する遺伝子を取得することとを必要とする。
1つの実施形態では、本発明のLIP01〜LIP03核酸は、それぞれ配列番号2〜4のいずれか1つに示される核酸配列またはその補体に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相同である。
[宿主細胞]
もう1つの実施形態では、本発明は、本発明によって包含される核酸を含有する細胞、例えば形質転換宿主細胞、または組換え宿主細胞を特徴とする。「形質転換細胞」または「組換え細胞」は、組換えDNA技法によって本発明に従う核酸がその中に(あるいはその祖先の中に)導入された細胞である。原核細胞および真核細胞の両方、例えば細菌、真菌、酵母などが含まれ、特に好ましいのは、糸状菌、特にマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)またはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはオリゼー(oryzae)などのアスペルギルス(Aspergillus)種からの細胞である。
挿入された配列の発現を調節する、あるいは特定の所望される形で遺伝子産物を改変および加工する宿主細胞を選択することができる。タンパク質産物のこのような改変(例えば、グリコシル化)および加工(例えば、切断)は、タンパク質の最適な機能を容易にすることができる。
様々な宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後加工および改変のために特徴的および特異的なメカニズムを有する。分子生物学および/または微生物学の当業者によく知られた適切な細胞株または宿主系を選択して、発現される外来性タンパク質の所望の正確な改変および加工を保証することができる。この目的のために、一次転写物の適切な加工、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。このような宿主細胞は当該技術分野においてよく知られている。
また、宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38、および脈絡叢細胞株などの哺乳類細胞株も含まれるが、これらに限定されない。
必要に応じて、安定にトランスフェクトされた細胞株は、本発明に従うポリペプチドを産生することができる。哺乳類細胞の安定なトランスフェクションに適した多数のベクターは公に入手可能であり、このような細胞株の構築方法も、例えばオースベル(Ausubel)ら(上記)において公に知られている。
[LIP01〜LIP03脂肪分解酵素の工業的過程における使用]
意外にも、本発明に従う脂肪分解酵素はただ1つの特異的基質の加水分解に限定されるのではなく、異なるタイプの脂肪分解活性(ホスホリパーゼ、リパーゼおよびガラクトリパーゼ活性である)を有することができる。生地の組成、反応時間、pH、温度、含水量に応じて、本発明に従う脂肪分解酵素はこれらの活性を同時に示してもよいし、1つの活性との狭い特異性を有し、他の活性はあまりまたは全く持たなくてもよいし、あるいは1つの優勢活性とのより広い特異性を有し、より少ない他の活性を有してもよい。
その多様性のために、本発明に従う脂肪分解酵素は、ジガラクトシルジグリセリド含有源からのジガラクトシルモノグリセリドの産生またはリン脂質乳化剤の改変を含む多様な工業用途で使用され得る。リン脂質乳化剤の一例はレシチンであり、これは極性脂質および中性脂質の両方の混合物であり、極性脂質の含量は少なくとも60%である。リン脂質乳化剤は多くの食品および非食品用途を有し、例えばエッグレシチンは、例えば乳製品、特にマヨネーズ、ドレッシング、ペストリーなどにおける乳化剤として使用され、例えばダイズレシチンは、例えば(低カロリー)ソース、パン、マーガリン、化粧品などにおける乳化剤として使用され、他のレシチンは例えばチョコレート、子牛の飼料において使用される。本発明に従う脂肪分解酵素によるリン脂質乳化剤の改変は、油/水混合物の乳化の増大を生じることができる。本発明に従う脂肪分解酵素によるリン脂質乳化剤の改変は、より広いまたは異なるpHおよび/または温度範囲について、改変されたリン脂質乳化剤の添加から得られるエマルジョンの安定性を増大することができる。本発明に従う脂肪分解酵素によるリン脂質乳化剤の改変は、Ca2+またはMg2+イオンの存在下で、改変されたリン脂質乳化剤の添加から得られるエマルジョンの安定性を増大することができる。
本発明に従う脂肪分解酵素の工業用途のもう1つの例は、植物油の脱ガムのためにこれらの油の加工において使用できることである。典型的な脱ガム過程では、とりわけ植物油の安定性を増大させるために、レシチンは、油相を水で洗浄することによって植物油、例えば大豆油、菜種(キャノーラ)油、アマニ油、ヒマワリ油から除去される。ここで、高せん断条件下での水と油の混合は、レシチンの大部分を水相内に追い込み、これは次にセパレータにおいて除去される。このいわゆる水脱ガム相中に、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルエタノールアミンなどの急速に水和可能なリン脂質だけが容易に除去される。50%までのマグネシウムおよび/またはカルシウム塩からなる水和できないリン脂質/ホスファチド、主にリン脂質は、水脱ガムステップにおいて容易に除去することができない。水和できないリン脂質/ホスファチドを本発明に従う脂肪分解酵素にさらすと、これらのリン脂質はより水溶性になり、そのため水脱ガム相中に抽出するのが容易になる。
本発明に従う脂肪分解酵素の工業用途のもう1つの例は、グルコースシロップを製造するための小麦グルテンまたは小麦デンプンの糖化(α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼを用いる)中に生じる沈殿物を除去することである。沈殿物の除去によって、次に行われる、得られたグルコースシロップのろ過がかなり加速される。
食品における本発明に従う脂肪分解酵素の工業用途のさらにもう1つの例は、生地または焼成製品の品質を改善するためのベーキング用途におけるその使用である。
意外にも、本発明に従うリパーゼは、生地中で使用される際(および言及した他の工業的過程においても)にその場で以下の特性の少なくとも1つを示す。
・ 無極性脂質に対する比較的低い活性
・ 極性ジアシル−脂質、少なくともジアシルガラクト脂質に対する比較的高い活性
・ 極性モノアシル化合物に対する比較的低い活性
例えば、本発明に従う酵素は、比較的低いリゾホスホリパーゼ活性および比較的低いリパーゼ活性をその場で示すことができる。これらの予想外の特性は全て、生地中の化学乳化剤の代替物として使用される場合に極めて有利であることが分かっている。
脂肪族アシル部分をグリセロール骨格に連結するエステル結合を加水分解するいくつかのタイプのホスホリパーゼ活性を識別することができる。
・ ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)およびA2(EC3.1.1.4)は、ジアシルグリセロリン脂質から、それぞれsn−1およびsn−2位置における1つの脂肪族アシル基の脱アシル化を触媒してリゾリン脂質を産生する。これは、乳化剤の置換のために望ましい活性である。
・ リゾホスホリパーゼ(EC3.1.1.5、Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology(酵素の命名法(Enzyme Nomenclature)、Academic Press、ニューヨーク、1992年)によってホスホリパーゼBとも呼ばれる)は、リゾリン脂質内に残存する脂肪族アシル基の加水分解を触媒する。ホスホリパーゼBは、ペニシリウム・ノタータム(Penicillium notatum)(サイトー(Saito)ら、1991年、Methods in Enzymology 197:446−456頁)から報告されており、ジアシルグリセロリン脂質からの両方の脂肪酸の脱アシル化を触媒し、本質的にリゾホスホリパーゼ活性を有する。乳化剤置換のためにリゾホスホリパーゼ活性はあまり望ましくない。何故なら、これは極性ヘッドおよび無極性テールの組み合わせの欠失をもたらし、得られた産物が表面特性に影響できないようにするからである。意外にも、本発明に従うリパーゼは生地中で比較的低いリゾホスホリパーゼ活性を示すことが示された。
小麦粉は約2.2〜2.9%の脂質を含有する。小麦粉脂質は、デンプン脂質(0.8〜0.9%)および非デンプン脂質(1.4〜2.0%)に分けることができる。デンプン脂質は主に極性リゾリン脂質からなるが、非デンプン脂質は、約40%の中性トリグリセリドおよび40%の極性リン脂質および糖脂質からなる。小麦粉脂質の割合の最適化のために、本発明に従うリパーゼは、本発明に従うリパーゼを添加することによって生地中で極性脂質(リン脂質および糖脂質であり、より具体的にはガラクト脂質である)をその場で加水分解することができる。
国際公開第04/104193号パンフレットは、ベーキング用途におけるマグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisae)からのホスホリパーゼCの使用を開示する。しかしながら、ホスホリパーゼC活性は十分な表面活性化合物をもたらさないので、化学乳化剤の代替として使用される酵素のために望ましくない。さらに、配列番号3、4または5に対して非相同のホスホリパーゼCは、国際公開第04/104193号パンフレットに開示される。
国際公開第98/45453号パンフレットは、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)に由来するリパーゼ活性を有するポリペプチドを開示しており、これは、ジガラクトシルジグリセリドに対する加水分解活性も示す。しかしながら、この酵素は、パンの中のその場で、ガラクトシルジグリセリドに対して比較的低い比活性であり、トリグリセリドに対しては比較的高い活性である(実施例10)ことが欠点であり、これにより、この酵素は化学乳化剤の完全な代替品として使用するために適切でないとされる。
ベーキング酵素は多様な焼成製品において使用することができる。「焼成製品」という用語は、本明細書では、型焼きパン、一塊のパン、フランスパンおよびロールなどのパン製品、ケーキ、パイ、マフィン、酵母で膨らませたドーナツおよびケーキドーナツなどを含むと定義される。
本発明に従う脂肪分解酵素は、例えば、焼成製品において使用することができる。パンなどの焼成製品は、通常は基本原料((小麦)粉、水、そして任意で塩)から作られる生地から調製される。焼成製品によって添加される他の原料は、砂糖、風味などであり得る。発酵製品については、酸(発生化合物)および重炭酸塩の組み合わせなどの化学膨張系の次に、主としてパン酵母が使用される。
酵母、酵素および化学添加剤は通常別々に生地に添加される。
酵素は乾燥形態、例えば顆粒形態で添加されても液体形態で添加されてもよい。化学添加剤はほとんどの場合粉末形態で添加される。また、特定のベーキング用途に合わせた加工助剤組成物は、化学添加剤および酵素の専用混合物で構成され得る。
上記の原料および加工助剤からの生地の調製は当該技術分野においてよく知られており、前記原料および加工助剤を混合するステップ、ならびに1回または複数回の成形および発酵ステップを含む。
このような生地からの焼成製品の調製も当該技術分野においてよく知られており、生地の成形および整形、そしてさらに発酵の後に、要求温度およびベーキング時間のベーキングを含むことができる。
本発明は、上記の問題の全てではなくても少なくとも1つに対処する。
本発明は、本発明に従う脂肪分解酵素の多数の工業的過程における使用にも関する。これらの過程で得られた長期にわたる経験にもかかわらず、本発明に従う脂肪分解酵素は、現在使用されている酵素を越えた多数の大きな利点を特徴とする。特定の用途に応じて、これらの利点は、より低い製造コスト、基質に対するより高い特異性、より低い抗原性、より少ない望ましくない副活性、適切な微生物で産生されるときのより高い収率、より適切なpHおよび温度範囲、最終製品のより優れた味覚、ならびに食品グレードおよび清浄性のような態様を含むことができる。
また本発明は、ポリペプチドが取り込まれていない生地または焼成製品に対して、生地または生地から得られる焼成製品の1つまたは複数の特性を改善する有効量の本発明の脂肪分解酵素を生地中に取り込むことを含む、生地または焼成製品の調製方法にも関する。
「生地中に取り込む」という用語は、本明細書では、生地、生地を作る原料、および/または生地を作る生地原料の混合物に本発明に従う脂肪分解酵素を添加することと定義される。換言すれば、本発明に従う脂肪分解酵素は、生地の調製のどのステップで添加されてもよく、1つ、2つまたはそれ以上のステップで添加されてもよい。本発明に従う脂肪分解酵素は、当該技術分野においてよく知られた方法を用いて焼成製品を製造するために混練および焼成される生地の原料に添加される。例えば、米国特許第4,567,046号明細書、EP−A−426,211号明細書、特開昭60−078529号公報、特開昭62−111629号公報、および特開昭63−258528号公報を参照されたい。
「有効量」という用語は、本明細書では、生地および/または焼成製品の対象とする少なくとも1つの特性に対する測定可能な効果を提供するのに十分な本発明に従う脂肪分解酵素の量と定義される。
「改善された特性」という用語は、本明細書では、本発明に従う脂肪分解酵素の作用によって、本発明に従う脂肪分解酵素が取り込まれていない生地または製品に対して改善された、生地および/または生地から得られる製品、特に焼成製品の任意の特性と定義される。改善された特性としては、増大した生地の強度、増大した生地の弾力性、増大した生地の安定性、低減した生地の粘着性、改善された生地の伸展性、改善された生地の機械加工性、増大した焼成製品の体積、改善された焼成製品の風味、改善された焼成製品のクラム構造、改善された焼成製品のクラム柔軟性、低減した焼成製品の気泡形成および/または改善された焼成製品の老化防止が挙げられるが、これらに限定されない。
改善された特性は、以下で実施例において記載される本発明の方法に従って、本発明のポリペプチドを添加して調製した生地および/または焼成製品と、添加せずに調製した生地および/または焼成製品とを比較することによって決定され得る。官能品質(organoleptic quality)は、ベーキング工業において十分に確立された手順を用いて評価することができ、例えば、訓練された味覚試験者集団の使用が含まれる。
「増大した生地の強度」という用語は、本明細書では、概してより弾力特性を有し、および/または成形および整形するためにより多くの仕事量を必要とする生地の特性と定義される。
「増大した生地の弾力性」という用語は、本明細書では、特定の物理的な歪みを受けた後にその初めの形状を回復する傾向がより高い生地の特性と定義される。
「増大した生地の安定性」という用語は、本明細書では、機械的に乱暴に扱われることによる影響がより少なく、従ってその形状および体積をよりよく保持する生地の特性と定義され、標準および/または延長した試験の後にローフ断面の高さ:幅の比によって評価される。
「低減した生地の粘着性」という用語は、本明細書では、例えば生地の製造機械内で、表面に付着する傾向がより低い生地の特性と定義され、熟練したテストベーカーによって実験的に評価されるか、当該技術分野において知られている組織アナライザー(例えば、TAXT2)の使用によって測定されるかのいずれかである。
「改善された生地の伸展性」という用語は、本明細書では、破裂することなく増大した歪みまたは伸展にさらされることが可能な生地の特性と定義される。
「改善された生地の機械加工性」という用語は、本明細書では、概して粘着性が低く、および/またはより固く、および/またはより弾力性である生地の特性と定義される。
「増大した焼成製品の体積」という用語は、当該技術分野において既知の超音波またはレーザー検出を用いて、自動パン体積アナライザー(例えば、BVM−3、TexVol Instruments AB、スウェーデン国ヴィーケン)によって決定される所与の一塊(ローフ)のパンの体積として測定される。
「低減した焼成製品の気泡形成」という用語は、本明細書では、視覚的に決定した、焼いたパンのクラストにおける気泡形成の低下と定義される。
「改善された焼成製品のクラム構造」という用語は、本明細書では、クラム内のより細かい気泡および/またはより薄い気泡の壁、ならびに/あるいはクラム内の気泡のより均一/均質な分布を有する焼成製品の特性と定義され、通常、ベーカーによって視覚的に、あるいは当該技術分野において既知のデジタル画像解析(例えば、C−cell、Calibre Control International Ltd、英国ウォリントンのアップルトン)によって評価される。
「改善された焼成製品の柔軟性」という用語は「堅さ」の反対であり、本明細書では、より容易に圧縮される焼成製品の特性と定義され、熟練したテストベーカーによって実験的に評価されるか、当該技術分野において知られている組織アナライザー(例えば、TAXT2)の使用によって測定されるかのいずれかである。
「改善された焼成製品の風味」という用語は、訓練された試験集団によって評価される。
「改善された焼成製品の老化防止」という用語は、本明細書では、貯蔵中の品質パラメータ、例えば柔軟性および/または弾力性の劣化速度が低減した焼成製品の特性と定義される。
「生地」という用語は、本明細書では、混練または圧延するのに十分堅い小麦粉および他の原料の混合物と定義される。生地は、生でも冷凍でも、調理されていても、あるいは予め焼いてあってもよい。冷凍生地の調製は、カルプ(Kulp)およびローレンツ(Lorenz)によってFrozen and Refrigerated Doughs and Battersで記載されている。
「焼成製品」という用語は、本明細書では、柔らかいまたはクリスピーな(パリパリした)特性のいずれかを有する、生地から調製された任意の製品と定義される。本発明によって有利に製造され得る白色、薄色または濃色タイプのいずれかの焼成製品の例は、通常はローフまたはロール形態のパン(特に、白パン、全粒パンまたはライ麦パン)、バゲット型のフランスパン、パスタ、めん類(ゆでるかまたは(強火で)炒めた)、ピタパン、トルティーヤ、タコス、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ベーグル(bagle)、パイの皮、蒸しパン、およびクリスプブレッドなどである。
本発明の方法で使用される本発明の脂肪分解酵素および/または追加の酵素は、問題となっている使用に適切な任意の形態、例えば、乾燥粉末、凝集粉末、または顆粒、特に非発塵性顆粒、液体、特に安定化液体、または国際公開第01/11974号パンフレットおよび国際公開第02/26044号パンフレットに記載されるような保護酵素の形態であり得る。顆粒および凝集粉末は、従来の方法、例えば流動床造粒機において本発明に従う脂肪分解酵素をキャリア上に噴霧することによって調製され得る。キャリアは、適切な粒径を有する微粒子コアからなることができる。キャリアは可溶性でも不溶性でもよく、例えば、塩(NaClまたは硫酸ナトリウムなど)、糖(スクロースまたはラクトースなど)、糖アルコール(ソルビトールなど)、デンプン、米、コーングリット、または大豆である。本発明に従う脂肪分解酵素および/または追加の酵素は、遅延放出性の製剤に含有されてもよい。遅延放出性製剤の調製方法は当該技術分野においてよく知られている。糖、糖アルコールまたは別のポリオール、および/または乳酸または別の有機酸などの栄養的に許容可能な安定剤を確立された方法に従って添加すると、例えば、液体酵素調製物を安定化することができる。
本発明に従う脂肪分解酵素は、EP−A−0619947号明細書、EP−A−0659344号明細書および国際公開第02/49441号パンフレットに開示されるような酵母含有組成物中に取り込まれてもよい。
小麦粉のプレミックス中に含有させるためには、本発明に従うポリペプチドは、乾燥製品、例えば非発塵性顆粒の形態であることが有利であるが、液体と一緒に含有させるためには液体形態であるのが有利である。
1つまたは複数の追加の酵素が生地中に取り込まれてもよい。追加の酵素は哺乳類および植物を含む任意の起源、好ましくは微生物(細菌、酵母または真菌)起源を有することができ、当該技術分野において従来使用されている技法によって得ることができる。
好ましい実施形態では、追加の酵素は、アミラーゼ(α−アミラーゼ(酵母により発酵可能な糖を提供し、老化を遅延させるために有用)、β−アミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼまたは非マルトジェニックアミラーゼなど)、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、ペプチダーゼ、特にエキソペプチダーゼ(風味の増強において有用)、トランスグルタミナーゼ、リパーゼ(生地または生地原料中に存在する脂質を、生地を柔らかくするように改変するために有用)、ガラクトリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、特にキシラナーゼなどのペントサナーゼ(生地の伸展性を増大するペントサン、より具体的にはアラビノキシランの部分的な加水分解のために有用)、プロテアーゼ(特に強力粉を用いたときに、グルテンを弱めるために有用)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、例えば国際公開第95/00636号パンフレットに開示されるようなタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ(生地粘稠度を改善するために有用)、ラッカーゼ、またはオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、リポキシゲナーゼまたはL−アミノ酸オキシダーゼ(生地粘稠度の改善において有用)でよい。
1つまたは複数の追加の酵素活性を本発明の方法に従って添加すべき場合、これらの活性は別々に添加されてもよいし、本発明に従うポリペプチドと一緒に添加されてもよく、任意で、パン改善および/または生地改善組成物の成分として添加されてもよい。他の酵素活性は上記の酵素のいずれでもよく、確立されたベーキングの実施に従って投与することができる。
また本発明は、本発明の方法によって得ることができる生地を焼いて焼成製品を製造することを含む、焼成製品の調製方法にも関する。焼成製品を製造するための生地のベーキングは、当該技術分野においてよく知られた方法を用いて実施することができる。
また本発明は、本発明の方法によってそれぞれ製造される生地および焼成製品にも関する。
本発明はさらに、生地および/または生地から製造される焼成製品のためのプレミックス(例えば、小麦粉組成物の形態)に関し、該プレミックスは本発明のポリペプチドを含む。「プレミックス」という用語は、本明細書では、その従来の意味で理解されるように、すなわち通常小麦粉を含むベーキング剤の混合物と定義され、これは、工業的な製パン工場/施設だけでなく小売ベーカリーにおいても使用することができる。プレミックスは、ポリペプチドまたはポリペプチドを含む本発明のパン改善および/または生地改善組成物と、小麦粉、デンプン、糖、または塩などの適切なキャリアとを混合することによって調製することができる。プレミックスは、他の生地改善および/またはパン改善添加剤、例えば上記の酵素を含む添加剤のいずれかを含有してもよい。
本発明はさらに、本発明のポリペプチドを含む顆粒または凝集粉末の形態のベーキング添加剤に関する。ベーキング添加剤は好ましくは狭い粒径分布を有し、粒子の95%(重量による)よりも多くが25〜500μmの範囲内にある。
生地およびパンの製造において、本発明は、酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、還元剤(例えば、L−システイン)、および/または乳化剤(例えば、DATEM、SSLおよび/またはCSL)のような化学加工助剤、ならびに/あるいは酸化還元酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)、多糖類改変酵素(例えば、α−アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、分枝酵素など)および/またはタンパク質改変酵素(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ、分枝酵素など)などの酵素加工助剤などの上記で定義した加工助剤と組み合わせて使用されてもよい。
上記した本発明に従う脂肪分解酵素の工業用途は数例を含むだけであり、このリストは限定的であることは意味しない。
LIP01〜LIP03脂肪分解酵素は、微生物において便利に(conviently)産生することができる。上記の過程では、組換えDNA技法によって得られる脂肪分解酵素を使用することが有利である。このような組換え酵素は、伝統的に精製されたその対応物を越える多数の利点を有する。組換え酵素は低コスト、高収率で産生させることができ、細菌またはウィルスのような作用物質の汚染がなく、細菌毒素または他の酵素活性の汚染もない。
以下において、本発明は、以下の非限定的な例によって説明される。
[実施例]
[実施例1]
[アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の発酵]
本明細書において提供されるヌクレオチド配列、配列番号2、配列番号3および配列番号4によってコードされる脂肪分解酵素は、DNA配列を含有する発現プラスミドを構築し、このようなプラスミドでA.ニガー(niger)株を形質転換し、そしてアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)株を以下の方法で成長させることによって得た。
A.ニガー(niger)株の新しい胞子(10〜10)を20mlのCSL培地(100mlフラスコ、バッフル)中に接種し、34℃および170rpmで20〜24時間成長させた。5〜10mlのCSL前培養物を100mlのCSM培地(500mlフラスコ、バッフル)中に接種した後、34℃および170rpmで3〜5日間菌株を発酵させた。
50mlのグライナー(Greiner)チューブにおける遠心分離(30分、5000rpm)によって無細胞の上澄みを得た。GF/A Whatman Glassマイクロファイバーフィルタ(150mm)に対して上澄みを予備ろ過してより大きい粒子を除去し、4NのKOHを用いてpH5に調整し(必要であれば)、0.2μmの(ボトルトップ)フィルタに対して吸引して無菌ろ過して、真菌材料を除去した。上澄みは、4℃(または−20℃)で貯蔵した。
CSL培地は、100gのCorn Steep Solids(Roquette)、1gのNaHPO4O、0.5gのMgSO 7HO、10gのグルコースOおよび0.25gのバシルドン(Basildon)(消泡剤)で構成された(1リットルあたりの量)。原料を脱塩水中に溶解し、NaOHまたはHSOを用いてpHをpH5.8に調整し、バッフルおよびフォームボールを有する100mlのフラスコに20mlの発酵ブロスを充填し、120℃で20分間滅菌し、その後室温まで冷却してから5000IU/mlのペニシリンおよび5mg/mlのストレプトマイシンを含有する200μlの溶液を各フラスコに添加した。
CSM培地は、150gのマルトースH2O、60gのSoytone(pepton)、1gのNaHPO4O、15gのMgSO 7HO、0.08gのトウィーン(Tween)80、0.02gのバシルドン(消泡剤)、20gのMES、1gのL−アルギニンで構成された(1リットルあたりの量)。原料を脱塩水中に溶解し、NaOHまたはHSOを用いてpHをpH6.2に調整し、バッフルおよびフォームボールを有する500mlフラスコに100mlの発酵ブロスを充填し、120℃で20分間滅菌し、その後室温まで冷却してから、5000IU/mlのペニシリンおよび5mg/mlのストレプトマイシンを含有する1mlの溶液を各フラスコに添加した。
[実施例2]
[本発明の脂肪分解酵素の精製]
[ステップ1−限外ろ過液の調製]
実施例1で得られた培養物の上澄みを限外ろ過して、酵素活性の決定およびベーキング試験を妨害し得る低分子汚染物を除去した。10kDaのカットオフを有するフィルタを備えたMillipore Labscale TFF系において30mlの上澄みの限外ろ過を実施した。
その色に応じて、0.5mMのCaClを含む40ml体積の100mMの冷リン酸緩衝液pH6.0でサンプルを3〜5回洗浄した。酵素溶液の最終体積は30mlであった。これはさらに「限外ろ過液」と称される。
ブラッドフォード(Bradford)法を用いてサンプルの全タンパク質含有量を決定した(The Protein Protocols Handbook、第2版、J.M.ウォーカー(Walker)編、Humana Press Inc、Totowa 2002年、15−21頁)。
[ステップ2−A280およびHPSECによる脂肪分解酵素濃度の決定]
脂肪分解酵素に帰属する280nmにおける吸光度(A280)および算出した脂肪分解酵素の分子吸光係数から限外ろ過液中の脂肪分解酵素の濃度を算出した。A280の測定は、Uvikon XL Secomam分光光度計(Beun de Ronde、オランダ国アブコーデ)において実行した。
酵素の分子吸光係数は、酵素分子あたりのチロシン、トリプトファンおよびシステイン残基の数から算出することができる(S.C.ギル(Gill)およびP.H.フォン・ヒッペル(von Hippel)、Anal.Biochem.182、319−326頁(1989年))。これらのアミノ酸の分子吸光係数はそれぞれ1280、5690および120M−1.cm−1である。本発明の脂肪分解酵素中のチロシン、トリプトファンおよびシステイン残基の数は、配列番号5〜14からなる群から選択されるタンパク質配列から推定することができる。算出された吸光係数は表1に示される。
Figure 0005118651
脂肪分解酵素に帰属する280nmにおける限外ろ過液の吸光度(A280)は、酵素サンプルの純度に依存する。この純度は、TSK SW−XLカラム(3007,8mm、MW範囲10〜300kDa)によるHPSEC(高性能サイズ排除クロマトグラフィ)を用いて決定した。溶出緩衝液は25mMのナトリウムリン酸緩衝液pH6.0からなり、1ml/分の流量で使用した。5〜100μlのサンプルを注入した。280nmにおける吸光度を測定した。
本発明の脂肪分解酵素に帰属する限外ろ過液のA280は、クロマトグラム中のそれぞれの脂肪分解酵素ピークのピーク表面と、280nmで吸収するピークの総表面との比率から得た。次に、限外ろ過液のA280に上記の比率を乗じ、そして脂肪分解酵素の算出吸光係数(1mg/ml溶液−表1の最も右側の列)で割ることによって、限外ろ過液中の脂肪分解酵素の濃度を算出した。
[実施例3]
[活性測定]
脂肪分解酵素の特異性を確立するために、実施例2で得られた限外ろ過液に以下の酵素活性測定を受けさせることができる。
・ リパーゼ
・ ホスホリパーゼAまたはA
・ リゾホスホリパーゼ
・ ガラクトリパーゼ活性
リパーゼ活性は、色素生産性基質p−ニトロフェニルパルミテート(pNPP)を用いることにより分光光度的に決定した。このアッセイでは、色素生産性基質p−ニトロフェニルパルミテート(pNPP)は2−プロパノール中に溶解され、0.1%のアラビアゴムおよび0.25%のデオキシコール酸ナトリウムの存在下でリン酸緩衝液pH7.4中に懸濁される。リパーゼはこの基質溶液と共に37℃でインキュベートされ、形成されたp−ニトロフェニル(pNP)は、405nmで2.6分間測定される。このアッセイは、リパーゼのpH依存性を決定するために、異なるpH値で適用させることもできる。異なるpH値では異なる緩衝液が必要とされ得ること、あるいは基質を乳化させるために異なる洗剤が必要であり得ることは理解されるべきである。例えばpH=4において、1.0%のTriton X−100を有する100mMの酢酸緩衝液が使用される。1リパーゼ単位は、規定の反応条件で1分につき1マイクロモルのp−ニトロフェノールを遊離する酵素の量と定義される。異なるアッセイで決定された既知の活性を有する標準較正酵素溶液を用いて、所与のアッセイの活性を較正アッセイにおいて決定され得る単位と相関させることは、ルーチン分析において珍しい実施でないことは理解されるべきである。
あるいは、リパーゼ活性は、2,3−メルカプト−1−プロパノール−トリブチレート(TBDMP)を基質として用いることにより決定することができる。リパーゼはTBDMPのチオエステル結合を加水分解し、それによってブタン酸および2,3−メルカプト−1−プロパノール−ジブチレート、2,3−メルカプト−1−プロパノール−モノブチレートまたは2,3−メルカプト−1−プロパノールを遊離する。遊離したチオール基は次の反応で4,4,−ジチオジピリジン(DTDP)により滴定され、4−チオピリドンが形成される。後者は、334nmで吸収する4−メルカプトピリジンと互変異性平衡状態にある。反応は、37℃において0.2%のTriton−X100、0.65mMのTBDMPおよび0.2mMのDTDPを含有する0.1Mの酢酸緩衝液pH5.0中で実行される。1リパーゼ単位は、規定の反応条件で1分につき1マイクロモルの4−チオピリドンを遊離する酵素の量と定義される。
ホスホリパーゼA活性は、1,2−ジメルカプトジオクタノイル−ホスファチジルコリンを基質として用いることにより分光光度的に決定した。ホスホリパーゼAは、1位置(PLA1)または2位置(PLA2)のチオエステル結合を加水分解し、それによってオクタン酸(octamoic acid)および1,2−ジメルカプト−モノ−オクタノイル−ホスファチジルコリンまたは1,2−ジメルカプト−ホスファチジルコリンを遊離する。遊離したチオール基は次の反応で4,4’−ジチオジピリジンにより滴定され、4−チオピリドンが形成される。後者は、334nmで吸収する4−メルカプトピリジンと互変異性平衡状態にある。反応は、37℃において0.1M酢酸緩衝液pH4.0+0.2%Triton−X100中で実行される。1ホスホリパーゼA単位(APLU)は、規定の反応条件で1分につき1マイクロモルの4−チオピリドンを遊離する酵素の量と定義される。
リゾホスホリパーゼ活性は、リゾホスファチジル−コリンを基質として用いて31P−NMR分光法により決定することができる。リゾホスホリパーゼはエステル結合を加水分解し、それによりグリセロール部分から脂肪酸を遊離させる。そのように形成されたグリセロールホスホコリンは、NMRを用いて定量される。反応は、1mg/mlのリゾホスファチジルコリンおよび5mMのCaClをさらに含有する50mM酢酸緩衝液pH4.5中、55℃で30分間実行される。1リゾホスホリパーゼ単位(LPC)は、規定の反応条件で1分につき1マイクロモルのグリセロールホスホコリンを形成する酵素の量と定義される。
ガラクトリパーゼ活性は、ヒラヤマ(Hirayama)およびマツダ(Matsuda)(1972年)Agric.Biol.Chem.36、1831頁によって記載される方法に従って、ジガラクトシルジグリセリドを基質として用いてH−NMR分光法により決定した。ガラクトリパーゼは脂肪酸とグリセロール骨格とのの間のエステル結合を加水分解し、それによって、一方または両方の脂肪酸を遊離させる。反応は、4mMのCaCl、0.2%のTriton X−100および1mg/mlのジガラクトシルジグリセリド(脂質産物)をさらに含有する50mM酢酸緩衝液pH4.5中、30℃で30分間実行される。1ガラクトリパーゼ単位は、規定の反応条件で1分につき1マイクロモルの脂肪酸を形成する酵素の量と定義される。
分光光度的な測定に加えて、リパーゼ活性は、滴定による測定を用いて決定することもできる。例えば、脂肪分解酵素のエステラーゼ活性は、Food Chemical Codex、第4版、National Academy Press、1996年、803頁に従って、基質としてのトリブチリンにおいて測定され得る。リパーゼ活性は、好ましくは、より長い脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸を有するトリアシルグリセリド基質を用いて決定される。多くの場合、このようなアッセイではオリーブ油が適用される。ホスホリパーゼ、リゾホスホリパーゼおよびガラクトリパーゼも、原則として、滴定による方法を用いて分析することができる。
言及した脂肪分解活性に加えて、サンプルには非脂肪分解性の副活性、例えばα−アミラーゼ活性も存在し得る。真菌α−アミラーゼの活性は、ファデバス(Phadebas)アミラーゼテスト錠剤(Pharmacia)を用いて測定することができる。ファデバス錠剤は、水に溶けないデンプン基質と、基質への架橋によって結合された青色染料とを含有する。基質は真菌アミラーゼによって加水分解され、染色された可溶性のマルトデキストリン(溶液中に入る)を遊離させる。較正曲線は、基準の真菌αアミラーゼ活性を含有する溶液を用いて作成した。
基準サンプルおよび未知のサンプルから、50mMリンゴ酸緩衝液pH5.5中の適切な希釈物を調製した。5mlのサンプルを30℃で5分間インキュベートし、ファデバス錠剤を添加し、そして15分後に1.0mlの0.5N水酸化ナトリウムの添加によって反応を停止させた。混合物を5分間室温まで冷却させ、その後、4.0mlの水を添加し、手で振とうさせ、そして15分後にサンプルを4700rpmで10分間遠心分離させた。上層の吸光度を620nmで測定した。OD620nmは真菌αアミラーゼ活性の尺度である。
1真菌アミラーゼ単位(FAU)は、本明細書では、規定の反応条件で1時間につき1グラムのデンプン(100%乾燥物質)を、ヨウ素溶液との反応後に既知の強度の620nmの透過率を有する産物に転化する酵素の量と定義される。
言及した活性に加えて、グルコアミラーゼ、プロテアーゼおよびキシラナーゼの微量の活性も存在したが、非常に少量なのでこれらの酵素は以下の実施例で記載されるベーキング実験において妨害しなかった。表2に要約されるように、実施例1で得られた無細胞限外ろ過液にリパーゼ、ホスホリパーゼおよびガラクトリパーゼアッセイを受けさせた。
Figure 0005118651
種々のアッセイにおいてただ1つの基質のみが存在すること、そして種々の脂質(lipoidic)基質の混合物あるいは生地などの工業用途において活性数が実際の活性を予測しないことに注意すべきである。このような場合、基質に対する親和性または特異性が重要になる。
[酵素の特徴付け]
SDS−PAGE分子量推定は、限外ろ過液サンプルにおいてNuPage4〜12%MES Simply Blue Safe Stainを用いて実施した。LIP01については推定Mw=33kDである。LIP02については、推定Mw=33kDである。LIP03については、Mw=33kDおよびMw=41kDに相当する2つの主要なバンドを観察した。
[等電点電気泳動実験]
成熟LIP01の275アミノ酸タンパク質の算出pI:5。LIP01の翻訳遺伝子の算出pI:5.4。LIP02の翻訳遺伝子の算出pI:5.4。成熟276アミノ酸LIP02タンパク質の算出pI:5.5。LIP02のpIは、ゲル電気泳動および両性電解質範囲3〜10を用いて実験的に決定した。IEF実験は4〜5の範囲の多数のバンドを示し、主要なバンドはpI=4.7およびpI=4.3である。成熟276アミノ酸LIP03タンパク質の算出pI:5.1(配列1を用いる)。348アミノ酸の翻訳LIP03遺伝子の算出pI:5.1(配列10を用いる)。314アミノ酸の翻訳LIP03遺伝子の算出pI:4.8(配列14を用いる)。A.ニガー(niger)で産生されたLIP03リパーゼの等電点電気泳動は、pI=4からpI=5.0までの範囲の多数のバンドを示し、主要なバンドはおよそpI=4.7およびpI=4.4であった。
[グリコシル化の決定]
グリコシル化はPAA−SDSゲルにおける観察分子量に影響を与え得る。通常、分子量は過剰評価される。LIP01〜03タンパク質がグリコシル化されているかどうかを検証するため、そしてタンパク質の分子量を有効に決定するために、タンパク質サンプルをPNGASE−Fグリコシダーゼで処理して、タンパク質を脱グリコシル化した。続いて、処理サンプルおよび未処理サンプルの両方にPAA−SDSゲル電気泳動を受けさせた。2つの可能性のあるN−グリコシル化部位が、成熟275LIP01アミノ酸タンパク質に存在する:126NLTFおよび264NYTF。1つの可能性のあるグリコシル化部位が、成熟276アミノ酸LIP02タンパク質に存在する:264NYTF。未処理のLIP02はおよそ33kDのバンドを示すが、脱グリコシル化の後、バンドはおよそ30kDで観察される。1つの可能性のあるN−グリコシル化部位は、成熟276アミノ酸タンパク質に存在する:264NYTF。未処理のLIP03は2つのバンドを示し、1つはおよそ33kDであり、1つはおよそ41kDである。脱グリコシル化の後、再度2つのバンドが観察され、1つはおよそ30kDであり、1つはおよそ38kDである。これらの結果は、いずれも同程度にグリコシル化された2つの形態のLIP03が生じることを示唆する。
糖タンパク質の特徴付けおよび取扱いは、The Protein Protocols Handbook、第2版、J.M.ウォーカー(Walker)編、Humana Press Inc、Totowa 2002年、第VI章に広範囲にわたって記載されている。
産生された脂肪分解酵素のそのままの質量(intact mass)は、以下の手順に従ってLC/MSを用いて決定することができる。
Figure 0005118651
13000rpm、4℃で15分間の遠心分離により10kDa遠心分離機フィルタ(Pall)に対してろ過することによって、タンパク質サンプルを脱塩した。ペプチド−N−グリコシダーゼF(PNGase、Roche Diagnostics GmbH、独国マンハイム)を用いる酵素脱グリコシル化によって脱グリコシル化を行った。LIP01〜LIP03のろ液を100mMの重炭酸アンモニウム中に溶解し、95℃で10分間のインキュベーションによって変性させた。PNGASE−F(20単位)をサンプルに添加し、37℃で一晩のインキュベーションによって脱グリコシル化を実行した。脱グリコシル化の後、13000rpmで15分間の遠心分離により10kDa遠心分離機フィルタ(Pall)に対してサンプルをもう一度ろ過して糖を除去した。脱塩からのろ液および脱グリコシル化後のろ液を50/50/5のAcN/MQ/FA中に溶解し、最終濃度を約1mg/mLにした。サンプルを直接注入によりQTOFII質量分析計に注入し、Masslynxソフトウェア(バージョン4sp2、Waters)においてMaxEnt1対数を用いてそのままの質量を算出した。
LIP02に対して、そのままのLIP02サンプルのMSスペクトルの逆重畳積分によって32265の分子量が算出された。脱グリコシル化LIP02に対して、29905Daのそのままの質量が算出され、これは、理論上のアミノ酸配列(配列番号2)の残基35〜310に相当する。脱グリコシル化の前後に観察されたそのままの質量の違いは、おそらくタンパク質に付着した12個のマンノース基および2個のGlcNAC基に相当する。
脱グリコシル化LIP03に対して、そのままの質量が2つ以上観察された。C末端ペプチドを有するおよび有さないLIP03のそのままの質量を両方とも算出し、それぞれMW=29835(配列3、35〜310)およびMW=34100(配列6、35〜348)であった。さらに、残基35〜309(配列4)および35〜308(配列5)の質量も観察されたが、特に残基35〜309は残基35〜310と比べてかなり大きいので、MW=29835(配列3)断片のC末端は不規則である。これは、LIP03のC末端の切断が完全に特異的ではないことを示す。
[pH最適条件]
脂肪分解酵素のpH最適条件依存性は、特定のタイプの脂肪分解活性を種々のpH値で測定するアッセイを実行することによって決定することができる。最大活性が観察されるpHが特定の酵素のpH最適条件である。pH最適条件は基質のタイプおよび適用されるアッセイ条件に依存し得るので、異なる基質が使用される場合、またはアッセイ条件が大幅に変化する場合には再確認されなければならない。
[温度最適条件]
脂肪分解酵素の温度最適条件は、所与のアッセイを種々の温度で実行することによって決定される。活性を温度の関数としてプロットすることによって、酵素の温度最適条件を決定することができる。
[熱安定性]
脂肪分解酵素の熱安定性は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。代案として、熱安定性はT50決定によって分析されてもよい。T50は、脂肪分解酵素を所与の条件で20分間加熱したときに活性の50%が損失される温度と定義される。
貯蔵安定性は、特定の温度において特定の条件下で脂肪分解酵素を貯蔵することによって決定することができる。種々の期間の後、サンプルを取り、標準アッセイ条件下でこれらのサンプル中の残留活性が決定される。
[実施例4]
[ベーキング実験−ミニバタール]
200gの小麦粉(KolibriTM)、4.6gの圧縮酵母、4gの塩、68ppmのアスコルビン酸、1ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌α−アミラーゼ)、5ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)、および114mlの水を混合することによって得られた150グラムの生地片からミニバタールを焼いた。ピンミキサー内で6分15秒間混合した後、生地を150gの2つの片に分割し、丸めて、周囲温度および90%の相対湿度で25分間発酵させた。次に、生地片を成形して形作り、32℃および85%相対湿度で100分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切込みを入れ、初めに水蒸気を添加して、240℃のオーブンで20分間焼いた。
異なる用量における脂肪分解酵素LIP01〜LIP03の様々な効果を、ブランクの余分な添加物を含有しないローフ、および0.3%のDATEM(Panodan(登録商標)80CP)を含有する対照ローフと比較した。ローフを冷却した後、自動パン体積アナライザー(BVM−3、TexVol Instruments AB、スウェーデン国ヴィーケン)によってローフ体積を決定した。表3に描かれるスケールに従って熟練したベーカーによりその他の効果を評価した。
Figure 0005118651
Figure 0005118651
Figure 0005118651
[実施例5]
[ベーキング実験−フルスケールバタール]
脂肪分解酵素LIP01〜LIP02のベーキング性能はフルスケールバタールでも試験した。Diosnaミキサー内で、3000gの小麦粉(KolibriTM)、70gの圧縮酵母、60gの塩、50ppmのアスコルビン酸、2ppmのBakezyme(登録商標)P500(真菌α−アミラーゼ)、15ppmのBakezyme(登録商標)HSP6000(真菌ヘミセルラーゼ)および1740mlの水を速度1で2分間混合し、速度2において100Whで27℃の最終生地温度にした。生地を350gの6片に分割し、丸めて、32℃および90%相対湿度で20分間発酵させた。その後、生地片を成形して形作り、34℃、90%相対湿度で100分間発酵させた。完全に発酵した生地片に切込みを入れ、初めに水蒸気を添加して、240℃のオーブンで30分間焼いた。
生地および最終焼成製品の両方において、異なる用量における脂肪分解酵素の様々な効果を、ブランクの余分な添加物を含有しないローフ、および0.3%のDATEM(Panodan(登録商標)80CP)を含有する対照ローフと比較した。室温まで冷却した後、自動パン体積アナライザー(BVM−3、RI Cards Instruments AB、スウェーデン国ヴィーケン)によってローフ体積を決定した。表6に描かれるスケールに従って熟練したベーカーにより、その他の効果を手動で視覚的に評価した。結果は表7および表8に示される。
Figure 0005118651
Figure 0005118651
Figure 0005118651
[実施例6]
[ミニバタールの生地における脂質の転化の決定]
[極性脂質]
凍結乾燥および粉砕した完全発酵生地(実施例3を参照)を水飽和したブタノールと激しく振とうさせることによって脂質を抽出した。遠心分離の後、LiChrospher 100DIOL5μm(250×4.0mm)におけるHPLCで透明な上澄みが分析され、Evaporative Light Scattering(Alltech ELSD2000ES)によって1.5l/分の窒素流量、80℃の温度、インパクターオンで、脂質(lipoidic)成分を検出した。1.0ml/分の流量で2つの移動相を勾配プログラムで用いて溶出を行った。
A:ヘプタン/イソプロパノール/ブタノール/テトラヒドロフラン/イソオクタン/水(64.5/17.5/7/5/5/1)
B:イソプロパノール/ブタノール/テトラヒドロフラン/イソオクタン/水(73/7/5/5/10)
両方の溶出溶液に、1リットルあたり77μlのアンモニア性溶液および77μlのトリフルオロ酢酸が添加される。
勾配プログラム:20μlの注入体積および80℃のカラム温度において、25分間で100%Aから100%Bまで直線的、そして100%Bで5分間、次に0.5分間で100%Bから100%Aまで直線的勾配、そして最後に100%Aで5分間。
ガラクト脂質、リン脂質、トリ−、ジ−およびモノグリセリド、例えばモノガラクトシルジグリセリド、モノガラクトシルモノグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ジガラクトシルモノグリセリド、ホスファチジルコリンおよびリゾホスファチジルコリンのリファレンスを用いて様々な化合物の溶出順序を示し、その応答因子および生地中の存在量を算出した。
表9および表10には、様々な量のLIP01〜LIP02を含有する完全発酵生地中の主な極性脂質の量が示される。これらの結果から、モノガラクトシルジグリセリドと比較して、そしてホスファチジルコリンとも比較してジガラクトシルジグリセリドを参照すると、LIP01〜LIP02が比較的低い用量でガラクトシルジグリセリドをガラクトシルモノグリセリドに効率的に転化させることは明らかである。
さらに、2.4ppmの用量(ブラッドフォードタンパク質)では、実施例4の最適なベーキング結果は、最も高レベルのジガラクトシルモノグリセリドと一致することも明らかである。
Figure 0005118651
Figure 0005118651
[無極性脂質]
凍結乾燥および粉砕した完全発酵生地(ベーキング実施例1を参照)を、1%酢酸を含有するヘプタンと激しく振とうさせることによって無極性脂質を抽出した。遠心分離の後、Spherisorb S3CN(Phenomenex OOD−0097−EO、100×4.6mm)におけるHPLCで透明な上澄みが分析され、Evaporative Light Scattering(Alltech ELSD2000ES)によって1.5l/分の窒素流量、40℃の温度、インパクターオフで、脂質(lipoidic)成分が検出される。1.0ml/分の流量、20μlの注入体積および周囲カラム温度で2つの移動相(A:ヘプタン、およびB:1%酢酸を含有するtert−ブチルーメチルエーテル)を以下の直線的な勾配プログラムで用いて溶出を行った。
Figure 0005118651
トリ−、ジ−、モノグリセリドおよび脂肪酸のリファレンスを用いて、様々な化合物の溶出順序を示し、その応答因子および生地中の存在量を算出した。

Claims (20)

  1. (a)配列番号2の単離ポリヌクレオチド、
    (b)配列番号2の単離ポリヌクレオチドと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズ可能であり、脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、
    (c)配列番号5〜7のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、および
    (d)配列番号5〜7のいずれかのアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは挿入されたアミノ酸配列からなり、脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、
    からなる群から選択される単離ポリヌクレオチド。
  2. (a)配列番号3の単離ポリヌクレオチド、および
    (b)配列番号8又は9のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、
    からなる群から選択される単離ポリヌクレオチド。
  3. 合成的に製造された、請求項1又は2に記載の単離ポリヌクレオチド。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドが、適切な宿主細胞における前記ポリヌクレオチドの発現に適した制御配列と作動可能に連結された請求項4に記載のベクター。
  6. 前記適切な宿主細胞が糸状菌である請求項5に記載のベクター。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4〜6のいずれか一項に記載のベクターを製造するための方法であって、
    前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップと、
    前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターを前記宿主細胞から単離するステップと
    を含む方法。
  8. (a)配列番号5〜7のいずれかのアミノ酸配列からなる単離ポリペプチド、
    (b)配列番号5〜7のいずれかのアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは挿入されたアミノ酸配列からなり、脂肪分解酵素活性を有する単離ポリペプチド、
    (c)適切な宿主細胞において請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4〜6のいずれか一項に記載のベクターを発現させることによって得られる単離ポリペプチド、および
    (d)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、脂肪分解活性を有し、94番目の位置にアスパラギン酸残基を有し、前記位置は配列番号9のアミノ酸配列に基づいて定義される、単離ポリペプチド、
    からなる群から選択される単離ポリペプチド。
  9. 配列番号8又は9のアミノ酸配列からなる単離ポリペプチド。
  10. 請求項8又は9に記載のポリペプチドを製造するための方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離ポリヌクレオチドまたは請求項4〜6のいずれか一項に記載のベクターで適切な宿主細胞を形質転換するステップと、
    前記ポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で前記細胞を培養するステップと、
    任意で、前記細胞または培地からコード化ポリペプチドを精製するステップと
    を含む方法。
  11. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4〜6のいずれか一項に記載のベクターを含む組換え宿主細胞。
  12. 請求項8又は9に記載のポリペプチドを発現する組換え宿主細胞。
  13. 請求項8又は9に記載の単離ポリペプチドの、生地の調製における使用。
  14. 請求項8又は9に記載のポリペプチドを生地原料の少なくとも1つに添加するステップを含む、生地の調製法。
  15. 請求項8又は9に記載のポリペプチドを含む生地。
  16. 請求項15に記載の生地を焼くステップを含む、焼成製品の調製法。
  17. 請求項16に従って得ることができる焼成製品。
  18. パンである、請求項17に記載の焼成製品。
  19. 増大した体積、改善されたクラム構造、改善されたクラム柔軟性、低減した気泡形成および改善された老化防止からなる群から選択される、請求項8又は9に記載のポリペプチドを加える前と後とを比較することによって少なくとも1つの改善された特性を有する、請求項17又は18に記載の焼成製品。
  20. a.焼成製品の調製、
    b.ジガラクトシルジグリセリド含有源からのジガラクトシルモノグリセリドの製造、
    c.小麦グルテンからのグルコースシロップの製造、
    d.植物油の脱ガム、および
    e.リン脂質乳化剤の改変
    からなる群から選択される工業的過程の1つにおける、請求項8又は9に記載の単離ポリペプチドの使用。
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