JPH0697993B2 - アルギナーゼ遺伝子欠損株選択培地とそれを利用した尿素非生産性酵母の育種及びそれを用いる酒類の製造法 - Google Patents

アルギナーゼ遺伝子欠損株選択培地とそれを利用した尿素非生産性酵母の育種及びそれを用いる酒類の製造法

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JPH0697993B2
JPH0697993B2 JP12303590A JP12303590A JPH0697993B2 JP H0697993 B2 JPH0697993 B2 JP H0697993B2 JP 12303590 A JP12303590 A JP 12303590A JP 12303590 A JP12303590 A JP 12303590A JP H0697993 B2 JPH0697993 B2 JP H0697993B2
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佳緒子 小田
勝也 五味
知栄子 熊谷
昌道 原
學造 田村
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国税庁長官
株式会社醸造資源研究所
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、実験室株酵母(1倍体)ではなく、実際の飲
食品の醸造に用いられている酵母(実用醸造酵母:2倍
体、もしくはそれ以上の高次倍数体)のアルギナーゼ遺
伝子(CAR1)の突然変異処理による欠損、あるいは、異
種遺伝子を含まないDNAを用いた形質転換による破壊、
のいずれかによる尿素非生産性酵母、その選択用培地、
それを用いる育種法及び当該酵母の利用に関するもので
ある。
本発明による変異処理あるいは形質転換法により育種さ
れる尿素非生産性実用醸造酵母は、アルギニンをオルニ
チンと尿素に分解する酵素であるアルギナーゼ(EC3.5.
3.1)を欠失しているため尿素を生成しない。従って、
尿素から誘導される発癌物質カルバミン酸エチルの生成
を抑えることが可能である。
つまり、本発明の突然変異株あるいは遺伝子破壊株を用
いることによって、アルコール発酵速度及び品質は親株
と変らず、しかも、アルバミン酸エチルを全く含まない
安全な酒類等を製造することができる。従って、本発明
に酒類、アルコール、その他の醸造食品の製造に大きく
貢献するものである。
(発明の背景及び従来技術とその問題点) 一般に、各種醸造飲食品(清酒、焼酎、果実種、ビー
ル、ウィスキー、ブランデー、醤油、味噌、老酒等)の
製造醪中には、含量にはかなり差があるが、尿素が存在
し、それがエタノールと反応して発癌性物質であるカル
バミン酸エチル(ウレタン)を生成させるため世界中で
問題になっている。
従来、尿素を減少させる方法としては、アルギニンの酵
母菌体への取り込みに関与するアルギニン透過酵素の欠
失した変異株を用いる方法、または、尿素をアンモニア
と炭酸ガスに分解するウレアアミドリアーゼ作用の脱抑
制変異株を用いる方法がとられてきたが、これらの菌株
を用いても従来の約半量までしか尿素量を減らすことは
できない。しかも、これらの変異株は親株に比べ一般に
発酵が鋭いため、他の酵母に汚染され易く確実な効果が
得られにくいという問題があった。
本発明者らは、特願平1-207874で、アルギナーゼ遺伝子
破壊により尿素非生産性実用醸造酵母を育種したが、酒
種についての組換え体利用ガイドラインが未制定のため
当該遺伝子破壊株は現在のところ酒造場で使用できない
状況にある。また、当該遺伝子破壊株は酵母以外の異種
遺伝子、つまり、大腸菌のDNA配列を有しており、飲食
品の実際の製造における面からはそのような異種生物の
また、本発明者らは、先に、特願昭63−268097(特開平
2−117385)で、アルギナーゼ遺伝子破壊又は置換によ
り尿素非生産性酵母を育種したが、宿主の酵母には、形
質転換体を選択するためのマーカーを付与し易い実験室
株(1培体)を用いており、かつ、1倍体のため、実用
的には発酵速度が遅いなどの問題がある。
通常、清酒、焼酎、果実酒、ビール、ウイスキー、ブラ
ンデー、老酒等の製造に用いられている実用醸造酵母
(サッカロマイセス・セレビシアエ)は倍数性が2倍体
(もしくはそれ以上の高次倍数体)である他、各酒類の
製造で要求される性質、例えば、清酒や焼酎でのアルコ
ール耐性、果実酒での亜硫酸耐性、ビールでの低温発酵
性等を備えており、実験室株とは大きく異なっている。
また、形質転換体の選択のためのマーカーを付与するに
当り、1倍体である実験室株に対しては、人工突然変異
による栄養要求性マーカーを付与することができる。
しかしながら、実用醸造酵母は、倍数性が2倍体(もし
くはそれ以上の高次倍数体)であるので、その醸造特性
を損なうことなく劣性変異であるこのような栄養要求性
を取得することはできなかった。
更にまた、実用醸造酵母においては、その倍数性が2倍
体(もしくはそれ以上の高次倍数体)であるため、目的
とする遺伝子を破壊又は置換するには、2本(又はそれ
以上)の染色体上の同一遺伝子を破壊又は置換する必要
があり、上記選択マーカーの遺伝子を連結した複数個の
破壊又は置換用プラスミドの構築が必要となる。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、上記したように各種の点において実験室
株とは全く異なる実用醸造酵母において、尿素非生産性
を有するすぐれた実用醸造酵母を創製する総合的システ
ムを開発するためになされたものである。
以上の観点から、現時点において酒造場で実用可能な尿
素非生産性醸造酵母である人工突然変異によるアルギナ
ーゼ遺伝子欠損変異株の開発を目的として研究を行っ
た。また、酒類についての組換え体利用ガイドライン制
定次第、即時、酒造場での実用化が可能と思われる、酵
母以外の異種遺伝子を含まないアルギナーゼ遺伝子破壊
株の開発を目的として鋭意研究を行った。
そこで目的とする変異株を検索するために、常法にした
がってスクリーニングを鋭意実行した。すなわち、アル
ギナーゼ遺伝子欠損株はアルギナーゼを持たないため窒
素源としてアルギニンのみを含む培地では生育できない
ので、このような欠損株を選択するときの常法であるレ
プリカ法と呼ばれる方法を用いた。しかし、このレプリ
カ法では1枚のプレートで約100株しか調べることがで
きない。すなわち108に1株の割合で起こる変異株の取
得頻度では100万枚ものプレートを使用しなければなら
ず、現実には不可能であった。
このように、目的とする変異株を選択するのに偶然性に
期待しなければならない点に鑑み、目的とする変異株を
取得するためには従来の発想を転換する必要があり、む
しろスクリーニングの手法を変えて新しい手法を開発す
ることの方が重要であるとの着想を得た。そして、目的
とする変異株を選択するのに好適な培地を作製すること
とした。
そこで、本発明者が特願平1-207874により育種したアル
ギナーゼ遺伝子破壊株FERM P-10903及び親株である清酒
酵母協会9号(サッカロマイセス・セレビシアエ)を用
いて、遺伝子破壊株のみ生育可能で、親株は生育できな
い培地を種々検討した。
その結果、このアルギナーゼ遺伝子破壊株のみをポジテ
ィブに選択するのに特に適した培地、アルギナーゼ遺伝
子欠損株のみが選択的に生育可能な培地(以下、CAO培
地ともいう)を作成するのにはじめて成功し、しかもこ
の培地を使用すれば1枚のプレートで500万株もの調査
が可能である点をも確認した。
次に、当該培地を使用することにより、実用醸造酵母に
人工突然変異処理を施したアルギナーゼ遺伝子欠損変異
株が得られることを見いだした。
また、サッカロイマイセス・セレビシアエのアルギナー
ゼ遺伝子をコードするDNA断片をクローン化し、コーデ
ィングリージョンの一部を欠失させたプラスミドAある
いはプラスミドBを構築した。これらのプラスミドのい
ずれかを用い、さらに、CAO培地を使用すれば酵母以外
の異種遺伝子を含まないアルギナーゼ遺伝子欠損形質転
換株が得られることも見いだした。
そして、得られた突然変異変株及び形質転換株を用いて
酒類の製造を行つたところ、尿素の生成は全く認めず、
従って、有害なカルバミン酸エチルの生成がなく、か
つ、アルコール発酵速度及び酒質も親株と変らないこと
を認め、本発明を完成するに至った。
(詳細な説明) 本発明者らは、特に特願平1-207874でアルギナーゼ遺伝
子破壊により尿素非生産性醸造酵母AL-1株(FERM P-109
03)を育種しているが、当該酵母を用いて種々の条件検
討を行った結果、アルギナーゼ遺伝子欠損株のみが選択
的に生育可能な培地の作製に成功した。
本発明に係る変異株選択用培地は、少なくともカナバニ
ン、アルギニン、オルニチンを含有するものであり、好
適な例としては、これらの成分に更にイーストナイトロ
ジェンベース(アミノ酸フリー)及び糖類(グルコー
ス、フラクトース、マルトース、ラクトース、オリゴ
糖、澱粉、デキストリン等)等を配合すればよい。また
更に必要あれば、常用される選択培地用成分を配合して
もよい。
これらの配合量としては、カナバニン0.1〜20ppm、アル
ギニン0.05〜50mM、オルニチン0.25〜250mMであり、イ
ーストナイトロジェンベース及び糖としてグルコースを
使用する場合には、前者を0.05〜0.7%、後者を5.5〜10
%の範囲内で培地中に含有させればよい。
このようにして調製した選択培地(CAO培地)は、1枚
のプレートで約500万株もの調査が可能であるので、き
わめて低頻度で出現する目的変異株を見逃すことなく正
確に且つ短時間で検出することができる。したがって、
本CAO培地を使用することによって、アルギナーゼ遺伝
子欠損変異株及び形質転換による酵母以外の異種遺伝子
を含まないアルギナーゼ遺伝子破壊株を効率よく得るこ
とができる。
突然変異株については、例えば小田ら(日本醸造協会誌
83、614(1988))に準じた方法で行われる。すなわ
ち、実用醸造酵母にエチルメタンスルフォネイトを用い
て変異処理を施し、当該CAO培地上に塗布する。生育し
た変異株のうち、アルギニン単一窒素源培地では生育で
きず、オルニチン単一窒素源培地で生育可能な株を目的
とするアルギナーゼ欠損変異株として得る。
形質転換による酵母以外の異種遺伝子を含まない遺伝子
破壊株については、用いたゲノムDNA供与体は、サッカ
ロマイセス・セレビシアエであり、具体的には協会酵母
7号(市販品)である。
本菌体からの染色体DNAの抽出法及び染色体ジーンライ
ブラリーの作製法は、例えばAgric.Biol.Chem.,Vol.53,
431〜436(1989)に記載された方法に準じて行われる。
上記で得られた染色体ジーンライブラリーからの当該遺
伝子の単離にあたってはサッカロマイセス・セレビシア
エのアルギナーゼ遺伝子のDNA配列(J.Bacteriol.,Vol.
160,1078〜1087(1984))に基づいて合成したDNAオリ
ゴマーを作製し、それをプローブに用いてプラークハイ
ブリダイゼイションを行い、サッカロマイセス・セレビ
シアエのアルギナーゼ遺伝子のDNAをクローニングす
る。
遺伝子破壊のためのプラスミドAあるいはプラスミドB
の作製は次のようにして行う。
プラスミドAの作製は、アルギナーゼ遺伝子由来の0.87
KbpのHind III−Pst IフラグメントをpUC119に組み込ん
だプラスミドpHP-1をSal Iで切断し、クレナウフラグメ
ント処理しセルフライゲーションしたプラスミドpHP−1
SからHinc II-Hinc II(0.15Kbp)断片を除いたプラス
ミドA(pHP-1SH)を作製する(第1図)。
また、プラスミドBの作製は、アルギナーゼ遺伝子を含
む約5.5KbpのBamH I-BamH IフラグメントをpUC119に組
み込んだプラスミドpCAR112からBgl II-Bgl II(0.74Kp
b)断片を除いたプラスミドB(pCAR112-GG)を作製す
る(第2図)。
形質転換においては、実用醸造酵母は2倍体(もしくは
高次倍数体)であるが、アルギナーゼ遺伝子欠損株選択
倍地(CAO倍地)を使用するので、2本の染色体上の2
つの当該遺伝子を同時に破壊した株が本CAO培地により
選択することができる。また、染色体上の当該遺伝子の
うち1つだけが破壊され、破壊されたアルギナーゼ遺伝
子が残りの健全なアルギナーゼ遺伝子とジーンコンバー
ジョンを起こすことによって生ずる2つのアルギナーゼ
遺伝子がともに破壊されたアルギナーゼ遺伝子欠損株も
取得することができる。従って、これまでの実用醸造酵
母における遺伝子破壊では遺伝子破壊用プラスミドは少
なくとも2種類必要であったのに対し、本CAO培地を使
用すれば遺伝子破壊用プラスミドは1種類で良いことに
なる。すなわち、上記により作製したプラスミドAある
いはBのいずれか1つを使用して遺伝子破壊を行うこと
により効率良く目的とする遺伝子破壊株を取得すること
ができる。
つまり、Hind III及びPst Iサイトで切断したプラスミ
ドAもしくはBamH Iサイトで切断したプラスミドBを用
いて形質転換し、CAO培地上に塗布し目的とする形質転
換体を得る。なお、親株のアルギナーゼ遺伝子とリアレ
ンジメントするプラスミドAのHind III-Pst Iフラグメ
ント(0.72Kbp)あるいはプラスミドBのBamH I-BamH I
フラグメント(4.8Kbp)は、大腸菌等の異種遺伝子の配
列は含まず、酵母由来の配列のみからなる。
なお、アルギナーゼ遺伝子が突然変異処理により欠損を
受けたかどうか、もしくは、形質転換により破壊された
かどうかの判定は次の方法でアルギナーゼ活性を測定
し、活性の有無を調べるとともに、形質転換体について
サザンブロッティングにより遺伝子の破壊を確認する。
なお、アルギナーゼ遺伝子欠損のキイとなるアルギナー
ゼ活性の測定は次のようにして行う。
すなわち、変異株、形質転換株及び親株をアルギナーゼ
誘導培地(イーストナイトロジェンベース(窒素源フリ
ー)0.17%、アルギニン塩酸塩10mM、グルコース2%、
硫酸アンモニウム5mM)に4×104セル/mlとなるように
植菌し、30℃、1晩振とう培養後集菌洗浄する。この菌
体を10mMトリス・塩酸バッファー(pH7.0)にけん濁し
ガラスビースで破壊する。このホモジネートの15,000rp
m、10分間の遠心上清を酵素液とし、アルギニンを基質
として反応させ生成する尿素を東洋醸造(株)製尿素キ
ットで定量し、アルギナーゼ活性とする。
次に、この変異株及び形質転換株を用いて常法どおり、
清酒や果実酒、ビール、焼酎、ウィスキー、ブランデ
ー、老酒等の酒類を製造することにより、尿素を全く含
まない酒類の製造ができ、ひいてはアルバミン酸エチル
の生成しない発ガン性の心配のない安全な酒類、しかも
風味は全く従来法によるものと変らない美味な酒類の製
造がはじめて可能となるのである。
次に、本発明の実施例を示す。
実施例1 アルギナーゼ遺伝子欠損株選択倍地の検索; アルギナーゼ遺伝子欠損株はアルギナーゼを持たないた
め窒素源としてアルギニンのみを含む培地では生育でき
ない。このような欠損株を選択するときには、通常レプ
リカ法と呼ばれる方法が用いられる。しかし、このレプ
リカ法では1枚のプレートで約100株しか調べることが
できない。すなわち108に1株の割合で起こる変異株の
取得頻度では100万枚ものプレートを使用しなければな
らず、現実には不可能である。
そこで、本発明者が特願平1-207874により育種したアル
ギナーゼ遺伝子破壊株FERM P-10903及び親株である清酒
酵母協会9号(サッカロマイセス・セレビシアエ)を用
いて、遺伝子破壊株のみ生育可能で、親株は生育できな
い培地を種々検討した。
その結果、このアルギナーゼ遺伝子破壊株のみをポジテ
ィブに選択するためにはイーストナイトロジェンベース
(アミノ酸フリー)0.17%、カナバニン10ppm、アルギ
ニン1mM、オルニチン5mM、グルコース2%の培地が最適
であることを発見し、この組成を含む選択用培地をCAO
培地と命名した。
CAO培地の配合例は、第1表に示される。
本CAO培地を使用することにより、1枚のプレートで約5
00万株を調べることが可能であり、低頻度に含まれる目
的とする株を効率よく選択することが可能である。
実施例2 突然変異によるアルギナーゼを生産しないサッカロマイ
セス・セレビシアエの育種; 清酒酵母(協会9号・10号)、ワイン酵母(ガイゼンハ
イム74・エパーネイ)をYEPD培地(イーストエクストラ
クト1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)10mlに
4×104セル/mlとなるよう植菌し、30℃で1晩振とう培
養後集菌洗浄した。この菌体を0.1mMリン酸バッファー
(pH7.0)10mlにけん濁、エチルメタンスルフォネイト
0.3mlを添加し、30℃、45分間ゆるやかに振とうして変
異処理を施した。遠心により集菌した菌体を5%チオ硫
酸ナトリウム溶液10mlで1回、殺菌水10mlで2回洗浄
後、殺菌水10mlにけん濁し、その40μをCAO培地上に
塗布した。
30℃で1週間培養後、出現したコロニーをCAO培地上で
シングルコロニーとして単離し、アルギニン単一窒素源
培地では生育できず、オルニチン単一窒素源培地で生育
可能な株を目的とするアルギナーゼ遺伝子欠損株として
取得した(第2表)。このようにして協会9号から得た
ALM-9はFERM P-11169として微工研に寄託されている。
実施例3 アルギナーゼ遺伝子破壊のためのプラスミドの作製; プラスミドAの作製法:第2図記載のpCAR112(特願平1
-207874)から制限酵素Hind IIIとPst Iで切り出される
アルギナーゼ遺伝子由来の0.87KbpのDNA断片をpUC119に
T4DNAリガーゼを用いて連結し、プラスミドpHP-1を作製
した。これをSal Iで切断し、クレナウフラグメント処
理した後、T4DNAリガーゼを用いてセルフライゲージョ
ンを行い、得られたプラスミドpHP-1SのHinc II-Hinc I
Iフラグメント(0.15Kbp)を制限酵素で切り出した後に
T4DNAリガーゼを用いて再連結し、アルギナーゼ遺伝子
破壊用プラスミド(pHP-1SH)を作製した(第1図)。
プラスミドBの作製法:pCAR112からBgl II-Bgl IIフラ
グメント(0.74Kbp)を制限酵素で切り出した後、T4DNA
リガーゼを用いて再連結し、アルギナーゼ遺伝子破壊用
プラスミドB(pCAR112-GG)を作製した(第2図)。
実施例4 形質転換によるアルギナーゼを生産しないサッカロマイ
セス・セレビシアエの作製; アルギナーゼ遺伝子破壊用プラスミドAあるいはBを用
い、サッカロマイセス・セレビシアエ清酒酵母協会9号
(2培体、市販品)の形質転換をItoらの方法(J.Bacte
riol.,Vol.153,163(1983))に準じて行った。
すなわち、清酒酵母(協会9号)をYEPD培地10mlに4×
104セル/mlとなるように植菌し、30℃で1晩振とう培養
後、対数増殖期の細胞を遠心により集菌した。TEバッフ
ァーで洗浄後、TEバッファー0.5mlにけん濁し、等容量
の0.2M酢酸リチウム溶液を添加し、1時間、30℃で振と
うした。この中から0.1mlを1.5ml容のエッペンドルフチ
ューブに移し、DNA溶液(0.5μg/μ)0μを加え、
30℃、30分間静置した。
なお、ここで使用したDNA溶液は次のようにして調製し
た。
プラスミドAを用いて形質転換を行う場合:プラスミド
A(pHP-1SH)を制限酵素Hind III及びPst Iで処理し、
生じた2つの断片(0.72Kbp、3.2Kbp)のうち、0.72Kbp
のフラグメントをジーンクリーン法により精製した後、
TEバッファーに溶解し、DNA溶液を調製した。なお、0.7
2KbpのHind III-Pst I断片は酵母由来の遺伝子のみから
なり、大腸菌等の異種遺伝子は含まない。
プラスミドBを用いて形質転換を行う場合:プラスミド
B(pCAR112-GG)を制限酵素BamH Iで処理し、生じた2
つの断片(4.8Kbp、3.2Kbp)のうち4.8Kbpのフラグメン
トをジーンクリーン法により精製した後、TEバッファー
に溶解し、DNA溶液を調製した。なお、4.8KbpのBamH I-
BamH I断片は酵母由来の遺伝子のみからなる。
次に、殺菌した70%PEG-4000 150μを加えよく混合
し、30℃で1時間静置した後、エッペンドルフチューブ
を42℃の恒温槽中に10分間静置し、菌体を直ちに室温ま
で冷却してから、殺菌水で洗浄、CAO培地上に塗布し
た。30℃で1週間培養し、プラスミドA(pHP-1SH)で
9菌体(9個/100μg DNA)、プラスミドB(pCAR112-G
G)で16菌株(16個/100μg DNA)の目的とする酵母以外
の異種遺伝子を含まない形質転換体を得た。
プラスミドAで作成したALK-9株は FERM p-11168として微工研に寄託されている。
実施例5 アルギナーゼ遺伝子の変異による損傷、あるいは、形質
転換による破壊の確認; こうようにして得られたアルギナーゼ欠損株と親株とア
ルギナーゼ活性を第3表に示したが、アルギニンによる
誘導培養においても変異株及び形質転換株はアルギナー
ゼ活性が認められないことから、2本の染色体上のアル
ギナーゼ遺伝子が共に欠損を起こした、あるいは、破壊
された株であることが確認された。
さらに、形質転換株についてはサザンブロッティングで
もアルギナーゼ遺伝子が破壊されていることを確認し
た。
実施例7 突然変異株及び遺伝子破壊株による酒類の醸造; 親株(協会9号)、突然変異株、遺伝子破壊株を麹エキ
ス培地で30℃、3日間静置培養後集菌洗浄し、第4表に
示す仕込配合及び製造条件で総米200gの清酒仕込を行っ
た。
アルコール発酵経過をCO2の発生による重量の減少で測
定し、第3図に示した。また、製成酒の尿素含量及び各
種成分を第5表に示した。この結果、変異株及び形質転
換株の使用によりアルコール発酵速度、一般成分及び官
能評価は親株とほとんど変わらず、しかも尿素及びアル
バミン酸エチルを全く含まない清酒の製造が可能であっ
た。
(発明の効果) 本発明によれば、アルギナーゼ遺伝子欠損株を効率よく
選択しうる選択培地が提供され、この培地を用いること
によって、アルギナーゼを産生せずしたがって尿素を産
生することのない尿素非生産性酵母を育種することがで
きる。このようにして得た酵母を利用すれば、発ガン性
を有するエチルカーバメートを含まない安全な酒類を醸
造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はアルギナーゼ遺伝子の遺伝子破壊のためのプラ
スミドAの作製説明図、第2図は同様のプラスミドBの
作製説明図、第3図は親株と変異株及び形質転換株のア
ルコール発酵の経過図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 15/81 //(C12N 1/16 C12R 1:865) (C12N 1/19 C12R 1:865) (72)発明者 五味 勝也 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税庁 醸造試験所内 (72)発明者 熊谷 知栄子 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税庁 醸造試験所内 (72)発明者 原 昌道 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税庁 醸造試験所内 (72)発明者 田村 學造 東京都北区滝野川1丁目54番18号 株式会 社醸造資源研究所内 (56)参考文献 特開 平2−117385(JP,A)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくともカナバニン、アルギニン及びオ
    ルニチンを含有することを特徴とするアルギナーゼ遺伝
    子欠損株選択培地。
  2. 【請求項2】カナバニン含有量が0.1〜20ppm、アルギニ
    ン含有量が0.05〜50mM、オルニチン含有量が0.25〜250m
    Mであることを特徴とする請求項1に記載の選択培地。
  3. 【請求項3】2倍体もしくは2以上の倍数性を持つ実用
    醸造酵母から、請求項1又は2に記載の選択培地を用い
    て取得したことを特徴とする突然変異処理によりアルギ
    ナーゼ遺伝子が欠損をおこしたサツカロミセス セレビ
    シエに属する尿素非生産性酵母。
  4. 【請求項4】2倍体もしくは2以上の倍数性をもつ実用
    醸造酵母から、請求項1又は2に記載の選択培地を用い
    て取得したことを特徴とする、下記に示す、プラスミド
    pHP−1SHもしくはpCAR112−GGを使用して遺伝子破壊す
    ることによりアルギナーゼ遺伝子が破壊され且つ酵母以
    外の異種遺伝子を含まない尿素非生産性酵母。
  5. 【請求項5】実用醸造酵母の2ないしそれ以上あるアル
    ギナーゼ遺伝子の全てについて突然変異により欠損をお
    こさせた株を、請求項1又は2に記載の選択培地を利用
    して取得することを特徴とする尿素非生産性酵母の育種
    法。
  6. 【請求項6】実用醸造酵母の2ないしそれ以上あるアル
    ギナーゼ遺伝子の全てについて異種遺伝子を含まないDN
    Aを用いた形質転換により当該遺伝子の全てを破壊した
    株を、請求項1又は2に記載の選択培地を利用して取得
    することを特徴とする尿素非生産性酵母の育種法。
  7. 【請求項7】請求項3に記載の尿素非生産性酵母を用い
    ることを特徴とする酒類、アルコール等の製造法。
  8. 【請求項8】請求項4に記載の尿素非生産性酵母を用い
    ることを特徴とする酒類、アルコール等の製造法。
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