JP3050372B2 - エステラーゼ遺伝子及びその取得方法、並びに醸造用酵母及びそれを用いたアルコール飲料の製造方法 - Google Patents

エステラーゼ遺伝子及びその取得方法、並びに醸造用酵母及びそれを用いたアルコール飲料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵母サッカロマイ
セス・セレビシエが産生するようなエステラーゼ、エス
テラーゼの生物工学的産生能を有するDNA鎖、及びこ
の遺伝子が破壊されたことによりエステル蓄積量が増加
している酵母に関する。また本発明は、この遺伝子破壊
酵母を用いて、エステル香味の高蓄積されたアルコール
飲料を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】清酒、ビール、ワイン、焼酎などのアル
コール飲料に於て、各種のエステル成分の量がその品質
を大きく左右することは良く知られている。これらのエ
ステルのうちでも酢酸イソアミルは果実様の香りのエス
テルであり、この酢酸イソアミル及びその前駆体である
イソアミルアルコールの含量比は香りの官能評価との相
関が深いことが知られている。清酒ではこの含量比が高
いほど吟醸香が高いものとして珍重されてきた(例えば
醸試報告No.145, p26(1973)参照)。
【0003】また、既に報告されているように、酢酸イ
ソアミルは酵母のアルコールアセチルトランスフェラー
ゼにより、イソアミルアルコールとアセチルCoAとか
ら産生される(Agric. Biol. Chem. 45, 2183(1981)
参照)。一方、発酵過程に於て、酢酸イソアミルは酵母
のエステラーゼにより分解されるため、酢酸イソアミル
の蓄積にはエステラーゼが深く関与していることも報告
されている(柳内ら、発酵工学、67、159、(1989)参
照)。
【0004】従って、アルコール飲料を製造する際に酢
酸イソアミルなどのエステル類の含有量を増やす方法と
しては、アルコールアセチルトランスフェラーゼの活性
を高める方法(例えば特開平6−62849号公報参
照)が提案されている。また、別の方法として、使用す
る酵母のエステラーゼ活性を欠損させる方法が考えられ
る。しかしながら、実際には酵母のエステラーゼそのも
のに関する報告は少なく、特にエステラーゼを産生する
DNA鎖に関する報告は、全く見当らない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記したよう
な従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その主
な目的は、エステラーゼ活性のみを欠損させた酵母によ
りアルコール飲料を製造することにある。より詳細に言
えば、本発明の目的は、酵母のエステラーゼ遺伝子を明
らかにし、もってエステラーゼ産生能が破壊された酵母
を得ること、及びこの酵母によりエステル香味を高蓄積
したアルコール飲料を製造可能とすることにある。
【0006】ここで、通常、清酒、ワイン、ビール、焼
酎などの製造に用いられている実用醸造酵母は倍数性が
2倍体(若しくはそれ以上の高次倍数体)であるため、
それぞれ各種アルコール飲料の製造で要求される性質、
例えば、清酒や焼酎でのアルコール耐性、ワインでの亜
硫酸耐性、ビールでの低温発酵特性などを備えている。
従って、実験室株の場合と異なり、醸造用酵母を育種す
る上で実用醸造酵母に人工突然変異を与えて遺伝子を破
壊するのは、目的以外の遺伝子にも変異が生じ、優れた
醸造特性までも変化させる虞があることからあまり望ま
しくない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のエステラーゼ産
生能を有するDNA鎖の取得方法は、サッカロマイセス
属酵母よりエステラーゼ欠損株を取得し、その機能を相
補するDNA鎖を、酵母染色体遺伝子ライブラリーより
クローニングする工程からなることを特徴とする。この
ように本発明によれば、酵母サッカロマイセス・セルビ
シエのエステラーゼをコードするDNA断片をクローニ
ングすることによって、図1乃至図2の配列表に示すエ
ステラーゼ(EST2)の塩基配列及び構造を明らかに
することができる。尚、本明細書及び添付図面中では、
図1乃至図2の配列表に示すエステラーゼ遺伝子を、本
願発明者らが一般に使用している「EST2」と表記し
ているが、EMBL(European Molecu
lar BiologyLaboratory)Nuc
leotide Sequence Database
には、この表記を「IAHI」に変更して登録され、各
遺伝子データベースにおいても同様に表記されている。
【0008】実用醸造酵母の目的の遺伝子を破壊するに
は、2本又はそれ以上の染色体上の同一遺伝子を破壊す
る必要があり、選択マーカーの遺伝子を連結した複数個
の破壊用プラスミドの作製が必要となる。本発明によれ
ば、上述したようにエステラーゼ遺伝子(EST2)又
はDNA鎖が明らかになったことにより、エステラーゼ
遺伝子(EST2)の翻訳領域内に欠失を持つエステラ
ーゼ遺伝子破壊用プラスミドを作製することができる。
2倍体の実用醸造酵母を形質変換する方法として、破壊
用プラスミド1と破壊用プラスミド2とを用いて2段階
で形質転換する方法を採用することにより、実用醸造酵
母の2つの染色体上に存在するエステラーゼ遺伝子(E
ST2)のみを破壊した、即ちエステラーゼ産生能のみ
を破壊した形質転換体が得られることを、本願発明者は
見い出した。
【0009】即ち、本発明によれば、サッカロマイセス
属に属し、エステラーゼの発現に係わる遺伝子のみが破
壊されていることを特徴とする醸造用酵母が提供され
る。ここで、エステラーゼの発現に係わる遺伝子には、
図1及び図2の配列表に示す塩基配列を有するエステラ
ーゼ遺伝子(EST2)がある。また本発明によれば、
このようにして得られた形質転換酵母を用いてアルコー
ル飲料を醸造することにより、エステル香味の高蓄積さ
れたアルコール飲料を製造可能な方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明によるエステラーゼ遺伝子
は、次のようにして選択する。先ず、実験室酵母より公
知のジアゾ活性染色法を用いてスクリーニングすること
によりエステラーゼ欠損株を取得する。この菌株をホス
ト酵母として、その活性を相補するDNA鎖を酵母染色
体遺伝子ライブラリーよりクローニングする。その結果
得られたエステラーゼ活性を持つDNA鎖の塩基配列
を、公知の方法を用いて決定する。図1及び図2に、本
発明によるエステラーゼ遺伝子(EST2)の塩基配列
の好適な実施例を示す。ここで、図1及び図2の下線部
は、TATAシグナル、活性中心サイト及びポリアデニ
レーション配列を示す。
【0011】エステラーゼ遺伝子(EST2)又はDN
A鎖が明らかになったことにより、エステラーゼ遺伝子
(EST2)の翻訳領域内に欠失を持つエステラーゼ遺
伝子破壊用プラスミドを作製することができる。作製し
た破壊用プラスミド1と破壊用プラスミド2とを用いて
2倍体の実用醸造酵母を2段階で形質転換する方法によ
り、実用醸造酵母の2つの染色体上にあるエステラーゼ
遺伝子(EST2)のみが破壊された、即ちエステラー
ゼ産生能のみが破壊された形質転換体を得る。
【0012】このようにエステラーゼ遺伝子(EST
2)の塩基配列が明らかになったことによって、本発明
のエステラーゼ遺伝子(EST2)は、そのエステラー
ゼを産生する能力を有するDNA鎖の一部、例えば比較
的短い鎖長のDNA鎖をプローブとして酵母染色体ライ
ブラリーなどから、プラークハイブリダイゼーション、
コロニーハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ・チェ
イン・リアクション(PCR)などの当業者に周知のク
ローニング手段を用いて、その活性を相補するDNA鎖
を容易に取得できる。
【0013】ここで、本発明によるエステラーゼを産生
するDNA配列、DNA鎖又は遺伝子とは、エステラー
ゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列又
はDNA鎖のことであり、それがコードするポリペプチ
ド即ちエステラーゼのアミノ酸配列で示せば、実質的に
図1乃至図2に示すものである。ここで、DNA鎖と
は、図1乃至図2に示すDNA配列又はその相補体にハ
イブリダイズし、かつエステラーゼ活性を有するポリペ
プチドを産生し得るDNA鎖のことである。尚、本明細
書において、DNA配列、DNA鎖、遺伝子は実質的に
同義に解する。
【0014】また、ポリペプチドの生理活性がいくつか
のアミノ酸の付加、挿入、削除、欠失又は置換によって
も変化しないことがあることは、遺伝子工学、蛋白工学
において良く知られるところである。従って、本発明の
DNA配列がコードするポリペプチドの上記定義におけ
る「実質的に」の意味は、図1乃至図2に示すアミノ酸
配列と全く同じものに限定するのではなく、エステラー
ゼ産生能がコードされるポリペプチドに保存される限
り、アミノ酸の付加、挿入、削除、欠失又は置換などの
改変によるものを包含するという意味である。DNA配
列も、それがコードするポリペプチドの変動に対応して
変動するが、この「ポリペプチドをコードするDNA配
列」という表現もまた、所謂遺伝暗号に関する知見に従
って最も広い意味に解するものとする。従って、縮退
(degeneracy)によって所与のアミノ酸をコードする核
酸のトリプレットは複数種類考えられるし、アミノ酸の
付加、挿入、削除、欠失又は置換に対応してトリプレッ
トのいくつか及び/又はその構成核酸のいくつかが変化
しても良い。尚、本明細書において「コードする」と
は、コードする能力を有することと同義に解する。
【0015】本発明で対象とするDNA配列は、天然物
由来のものでも、全合成したものでも、又は天然物由来
のものの一部を利用して合成を行ったもの即ち半合成の
ものでも良い。このDNA配列は、エステラーゼにちょ
うど対応する長さのものや、その上流側及び/又は下流
側にDNA配列が結合した構造のものであっても良い。
後者の具体例は、適当なベクターに組み込まれたプラス
ミドの形状のものである。図1乃至図2には、特定のD
NA配列が示されているが、これは実験室酵母から得ら
れたエステラーゼからのものであり、本発明によるDN
A配列の好ましい具体例の1つである。
【0016】また、エステラーゼ産生能を有するDNA
鎖を取得するための遺伝子源として有用なものとして
は、細菌、酵母、植物などが考えられ、特に酒、醤油な
どの発酵食品の製造に使用されている酵母類は上記の条
件に当てはまるDNA鎖を有している可能性が高い。し
かし、このことより、スクリーニングを行うライブラリ
ーの遺伝子源が限定されるものではない。
【0017】クローニングに用いる宿主としてはエシェ
リシア・コリ(Escherichia coli)Q359(Molecula
r Cloning, Cold Spring Harbor, New York, p.504-506
(1982)参照)など、ベクターとしては酵母用として知ら
れているもの、例えばYRp系(酵母染色体のARS配
列を複製起点とする酵母用マルチコピーベクター)、Y
Ep系(酵母の2μmDNAの複製起点を持つ酵母用マ
ルチコピーベクター)、YCp系(酵母染色体のARS
配列を複製起点として有し、かつ酵母セントロメアDN
A配列を有する酵母用シングルコピーベクター)、YI
p系(酵母の複数の起点を有しない酵母染色体組み込み
用ベクター)など(朝倉書店刊、日本農芸化学ABCシ
リーズ「物質生産のための遺伝子工学」p.68参照)、従
来から知られているもの全てを用いることができる。更
に本発明のクローニングの目的を達成するものであれ
ば、上記以外の宿主及びベクターも用いることができ
る。
【0018】また、破壊用プラスミド作製のためには、
pUC18、pUC19(Gene 33p.103-119 (1985)参
照)などの大腸菌のベクターや、上記酵母のベクター等
を適宜使用することができる。また、形質転換体の作製
のための手順又は方法として、例えば酵母などについて
公知の形質転換法、プロトプラスト法、電気融合法、又
はリチウムなどのアルカリ金属の存在下での形質転換法
などは、遺伝子工学の分野に於て慣用されているもので
あり、これらを適宜用いることができる。本発明に於て
も、下記のもの以外については慣用基準(例えば、ANAL
YTICAL BIOCHEMISTRY 163 p.391(1987)など参照)に
準じて実施すれば良い。
【0019】本発明に於けるホスト酵母即ち形質転換す
べき酵母は、市販の酵母(例えば清酒酵母、ビール酵
母、ワイン酵母、焼酎酵母など)或いは自然界から分離
された酵母など、分類学上、酵母の範疇に入りうる任意
のものである。しかし、本発明の目的からすれば、サッ
カロマイセス・セレビシエに属する酒類製造用酵母、具
体的には清酒酵母、ビール酵母、ワイン酵母などが望ま
しい。例えば、清酒酵母:ATCC4134、ATCC
26421及びIFO2347、ビール酵母:ATCC
26292、ATCC2704及びATCC3263
4、ワイン酵母:ATCC38637、ATCC386
38及びIFO2260を例示することができる。ホス
ト酵母として好ましい他の一群は、パン酵母である。具
体的には、ATCC32120を例示することができ
る。
【0020】上記のようにして得た、エステラーゼ産生
能の破壊された形質転換酵母は、破壊された形質に加え
てホスト酵母固有の形質を具備しているから、その固有
の形質に着目した各種の用途に利用することができる。
即ち、ここで使用される形質転換酵母は、サッカロマイ
セス属に属し、例えば図1乃至図2に示すエステラーゼ
遺伝子のみが破壊された酵母であり、上述したようない
ずれの種類の酵母をホストとして用いても良い。
【0021】ホスト酵母が酒類製造用酵母である場合
は、その形質転換酵母も糖類を発酵させてアルコールを
産生する能力を有するから、この形質転換されてエステ
ラーゼ産生能が破壊された酵母を使用すれば、エステル
香味の高蓄積されたアルコール飲料を製造することがで
きる。アルコール飲料としては、清酒、ビール、ワイ
ン、及び焼酎が代表的であるが、本発明はこれら以外の
アルコール飲料についても同様に適用できる。また、こ
れらアルコール飲料の製造方法は周知であることからそ
の詳細な説明は省略する。
【0022】
【実施例】本発明の好適実施例について添付の図面を参
照して、 (1)実験室酵母からのエステラーゼ欠損株の取得 (2)エステラーゼを産生するDNA鎖のクローニング (3)エステラーゼ遺伝子破壊のためのプラスミドの構
築 (4)エステラーゼ遺伝子破壊株の取得 (5)形質転換体によるアルコール飲料の製造 の順に詳しく説明する。
【0023】(1)実験室酵母からのエステラーゼ欠損
株の取得 実験室株IFO10480株を10mlYPD培地で一
晩振とう培養し、集菌洗浄後、常法通りにEMS変異処
理を行い、適宜希釈して、SD培地(0.67%イース
トナイトロゲンベース(アミノ酸不含有)、2%グルコ
ース、2%寒天)に塗沫後、30℃、3日間培養した。
その後、出現したコロニーを公知のジアゾ活性染色法
(柳内ら、発酵工学、67、159、(1989))を用いて
色調の差をもってスクリーニングし、親株(S1)が赤
く染色されるのに対し、ピンク色を示すエステラーゼを
欠損しているIAH−1株(S2)を得た。親株と取得
した欠損株とのコロニーをジアゾ活性染色した結果を図
3(a)に示した。同図は、白黒表示のため、赤色の親
株(S1)が濃い灰色の丸い点で表されるのに対し、ピ
ンク色の欠損株(S2)は白色の丸い点で表されている
が、両者間の色彩の相違は容易に判別される。また、親
株と取得した欠損株との酵母無細胞抽出液を調製し、ポ
リアクリルアミド電気泳動後にジアゾ活性染色した結果
を図3(b)に示す。同図において、親株(S1)に
は、EST1とEST2との2種のエステラーゼが検出
されているが、欠損株(S2)には、主に酢酸イソアミ
ルなどのエステルの分解に関与するエステラーゼ遺伝子
(EST2)が欠損している。
【0024】(2)エステラーゼを産生するDNA鎖の
クローニング サッカロマイセス・セレビシエの染色体ライブラリー
(ATCC37324)と取得した上記欠損株とを用い
てエステラーゼ活性の相補性を利用し、クローンの選択
を行った。約15000個の形質転換体の中からエステ
ラーゼ活性を相補する1個のクローンを選択できた。こ
のクローンの中のプラスミドpIAH118に挿入され
ているサッカロマイセス・セレビシエのDNA断片のP
stI−HindIII 、約2.4kb中にエステラーゼ
活性が見い出され、この断片をバクテリアファージベク
ターM13mp18とM13mp19とに連結した。そ
の後、キロシーケンスデリーションキット(宝酒造株式
会社製)を用いてオーバーラッピングデリーションシリ
ーズを構築し、塩基配列の決定をDNAシークエンサー
(ABI 373A DNAシークエンスシステム、アプ
ライドバイオシステム社製)を用いてジデオキシ法によ
り行った。図1乃至図2に示す塩基配列がエステラーゼ
をコードする部分である。
【0025】尚、本実施例に用いたサッカロマイセス・
セレビシエの染色体ライブラリーは、市販品(ATCC
37324)であるが、酒類製造などに一般に用いられ
ているサッカロマイセス・セレビシエは本発明によるエ
ステラーゼ遺伝子(EST2)を含んでいる可能性が高
い。従って、それらのサッカロマイセス・セレビシエか
ら染色体DNAを抽出し、染色体遺伝子ライブラリーを
作製して用いても同様な結果が得られることが予想され
るから、ライブラリーは上記実施例のものに限定されな
い。
【0026】(3)エステラーゼ遺伝子破壊のためのプ
ラスミドの構築 実用醸造酵母の目的の遺伝子を破壊又は置換するには、
2本又はそれ以上の染色体上の同一遺伝子を破壊又は置
換する必要があり、複数個の破壊又は置換用プラスミド
の構築が必要となる。次に、その破壊用プラスミドの構
築方法を説明する。
【0027】プラスミド1は、エステラーゼ遺伝子由来
の2.4kbpのPstI−HindIII フラグメント
を組み込んだプラスミドpUC19PHのHincIIサ
イトに、pYEUra3ベクターより切り出したURA
3遺伝子を含むEcoRI−HindIII フラグメント
をブランチングした後に連結してpUC19PH−UR
A3を構築することにより作製した(図4)。
【0028】また、プラスミド2は、エステラーゼ遺伝
子由来の2.4kbpのPstI−HindIII フラグ
メントを組み込んだプラスミドpUC19HPのHin
cIIサイトに、YRp7ベクターより切り出したTRP
1遺伝子を含むEcoRIフラグメントをブランチング
した後に連結してpUC19PH−TRP1を構築する
ことにより作製した(図5)。
【0029】(4)エステラーゼ遺伝子破壊株の取得 清酒酵母協会701号由来のUT−1(ura3/ur
a3 trp1/trp1)を上記エステラーゼ遺伝子
破壊用プラスミド1及び2を用いて2段階の形質転換を
行い、ウラシルとトリプトファン要求性のなくなった形
質転換体UT−1EをSD培地により取得した。この形
質転換体は、サザン解析により2本の染色体上のエステ
ラーゼ遺伝子がともに破壊されていることを確認でき
た。
【0030】(5)形質転換体によるアルコール飲料の
製造 上記形質転換体UT−1E及び親株協会701号を用
い、表1に示す仕込配合で総米170gの清酒製造試験
を行った。この結果、表2に示すように、形質転換体U
T−1Eでは、発酵速度及び一般成分は親株と変わらな
いが、エステル類の含有量が著しく高くなっており(酢
酸イソアミルで親株の17倍、酢酸イソブチルで親株の
10倍)、官能的評価に優れた清酒の製造が可能となっ
た。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発
明によれば、酵母エステラーゼ遺伝子(EST2)の構
造又は塩基配列を明らかにした。このことにより、遺伝
子工学的手法によって酵母のエステラーゼ遺伝子(ES
T2)のみを破壊することが可能となり、エステラーゼ
産生能のみを破壊することができる。このエステラーゼ
産生能のみを破壊した形質転換酵母を用いて糖類を発酵
させることにより、エステル香味の高蓄積されたアルコ
ール飲料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2と共に本発明に基づくエステラーゼ遺伝子
(EST2)の塩基配列及びアミノ酸配列の前半を示す
配列図。
【図2】図1と共に本発明に基づくエステラーゼ遺伝子
(EST2)の塩基配列及びアミノ酸配列の後半を示す
配列図。
【図3】(a)は、親株IFO10480(S1)及び
エステラーゼ欠損株IAH−1(S2)のコロニーをジ
アゾ活性染色した結果、(b)は、親株S1及びエステ
ラーゼ欠損株S2の酵母無細胞抽出液を調製し、ポリア
クリルアミド電気泳動後にジアゾ活性染色した結果を示
す図。
【図4】エステラーゼ遺伝子破壊のためのプラスミド1
の構築の過程を示す説明図。
【図5】エステラーゼ遺伝子破壊のためのプラスミド2
の構築の過程を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:865) (72)発明者 柳内 敏靖 京都市伏見区塩屋町223番地 黄桜酒造 株式会社内 (72)発明者 若井 芳則 京都市伏見区塩屋町223番地 黄桜酒造 株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 C12G 3/00 - 3/14 C12N 1/00 - 1/38 C12N 9/00 - 9/99 BIOSIS(DIALOG) GenBank/EMBL/DDBJ(G ENETYX) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 図1乃至図2の塩基配列、又はこの配列
    において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しく
    は付加されたアミノ酸配列を有し、エステラーゼ産生能
    を有するエステラーゼ遺伝子。
  2. 【請求項2】 サッカロマイセス属に属し、請求項1に
    記載の遺伝子のみが破壊されていることを特徴とする醸
    造用酵母。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の酵母を用いて醸造する
    ことを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
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