JPH0638505A - 渦電流式減速装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 強磁性板の断面形状を変えることにより、強
磁性板の前端部における磁束の集中を抑え、制動効率を
高める。 【構成】 制動ドラム７の内側に断面長方形の内空部を
有する固定筒１０を配設する。固定筒１０の内空部に、
制動ドラム７の内周面に対向して極性が周方向に交互に
異なるよう多数の永久磁石２４を配設した磁石支持筒１
４を回動可能に支持する。固定筒１０の外周壁１０ａに
磁石支持筒１４の各永久磁石２４に対向する強磁性板１
５を埋設する。強磁性板１５は制動ドラム７の回転方向
後端部１５ｂの外周側部分を、制動ドラム７の回転方向
後方へ突出する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は主として大型車両の摩擦
ブレーキを補助する渦電流式減速装置、特に制動ドラム
の内周面と磁石支持筒に周方向等間隔に並設した多数の
永久磁石（以下単に磁石という）との間に介在する強磁
性板の回転位相を変えるか、磁石支持筒を軸方向へ移動
することにより、制動と非制動の切換えを行う渦電流式
減速装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】特開平1-298948号公報に開示される渦電
流式減速装置では、制動ドラムの内部に非磁性体からな
る断面箱形の固定筒を配設し、固定筒の外周壁に周方向
等間隔に多数の強磁性板（ポールピース）を結合し、固
定筒の内空部に回動可能に支持した磁石支持筒に、各強
磁性板に対向する磁石を結合し、磁石支持筒の回転位相
を強磁性板の半配列ピツチだけ変えることにより、制動
と非制動の切換えを行うようにしている。

【０００３】図５に示すように、上述の渦電流式減速装
置では、磁石支持筒１４の磁石２４は、強磁性板１５と
同じ配列ピツチで、強磁性板１５に対する極性が周方向
に交互に異なるように並設される。外部の熱、水、埃な
どの環境から磁石２４を保護するために、磁石２４は非
磁性体からなる固定筒１０の断面長方形の内空部に密封
されている。制動時、磁石２４は固定筒１０の外周壁１
０ａの強磁性板１５を経て、回転する制動ドラム７との
間に磁気回路（線２６で示す）を形成し、制動ドラム７
に制動力を及ぼす。制動ドラム７が回転していると、磁
石２４から発生する多量の磁束が強磁性板１５を経て制
動ドラム７へ達する時、制動ドラム７の内部に発生する
渦電流に基づく反抗磁界により、磁気回路は制動ドラム
７の回転方向（矢印ｘ方向）へ引きずられた形に歪曲す
る。上述の磁気回路の歪曲は制動ドラム７の回転数が高
くなるほど強くなる。すなわち、制動ドラム７が矢印ｘ
方向へ回転している時、磁石２４からの磁束密度が強磁
性板１５の前端部（制動ドラム７の回転方向前端部）で
蜜になり、磁束の一部は強磁性板１５を結合する固定筒
１０の外周壁１０ａを経て制動ドラム７へ達する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述のように、磁束の
強磁性板の前端部への集中は、磁気飽和をもたらし、制
動ドラムへ達する磁界を弱めるので、制動力の低下をも
たらす。本発明の目的は上述の問題に鑑み、強磁性板の
断面形状を変えることにより、強磁性板の前端部におけ
る磁束の集中を抑え、制動効率を高める、渦電流式減速
装置を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の構成は制動ドラムの内側に断面長方形の内
空部を有する固定筒を配設し、固定筒の内空部に固定筒
の外周壁に対向する極性が周方向に交互に異なるよう多
数の永久磁石を配列した磁石支持筒を回動可能に支持
し、固定筒の外周壁に磁石支持筒の各永久磁石に対向す
る強磁性板を埋設し、強磁性板は制動ドラムの回転方向
後端部の外周側部分を、制動ドラムの回転方向後方へ突
出したものである。

【０００６】

【作用】本発明では強磁性板の後端部の外周側部分を、
制動ドラムの回転方向後方へ突出する。したがつて、強
磁性板の前端側で磁化された制動ドラムは回転に伴つ
て、前隣りの磁石の後端部に磁界を及ぼすことになり、
それだけ磁気回路が強磁性板の後端部即ち制動ドラムの
回転方向後方へ偏倚されることになり、強磁性板の前端
部への磁束集中が抑えられる。換言すれば、強磁性板の
前端部における磁気（磁束密度）の飽和が抑えられるの
で、磁石支持筒と制動ドラムとの間に磁気飽和のない効
率的な磁気回路が生じ、制動効率が高められる。

【０００７】

【実施例】図１は本発明による渦電流式減速装置の側面
断面図、図２は同正面断面図である。本発明による渦電
流式減速装置は、例えば車両用変速機の出力回転軸１に
結合される導体からなる制動ドラム７と、制動ドラム７
の内部に配設される非磁性体からなる固定筒１０と、固
定筒１０の断面長方形の内空部に回動可能に支持した磁
石支持筒１４とを備えている。制動ドラム７はボス５の
フランジ部５ａを、駐車ブレーキの制動ドラム３の端壁
部と一緒に、回転軸１にスプライン嵌合固定した取付フ
ランジ２に重ね合され、かつ複数のボルト４とナツトに
より締結される。ボス５から放射状に延びる多数のスポ
ーク６に、冷却フイン８を備えた制動ドラム７の一端が
結合される。

【０００８】断面箱形の固定筒１０は例えば断面Ｃ字形
の筒体に、環状の蓋板１１を結合して構成される。固定
筒１０は適当な手段により例えば変速機の歯車箱に固定
される。固定筒１０の外周壁１０ａに多数の強磁性板１
５が周方向等間隔に結合される。好ましくは、強磁性板
１５は固定筒１０の成形時鋳ぐるまれる。強磁性板１５
は長方形の板状のものであつて、板面は円弧状に湾曲さ
れる。強磁性板１５の周壁は突条２５を一体に形成さ
れ、固定筒１０の外周壁１０ａと強磁性板１５との鋳造
による結合度を高める。磁石支持筒１４は固定筒１０の
内空部、詳しくは内周壁１０ｂに軸受１２により回動可
能に支持される。

【０００９】固定筒１０の左端壁に、好ましくは３つの
流体圧アクチユエータ２０が周方向等間隔に結合され
る。流体圧アクチユエータ２０はシリンダ１８にピスト
ン１７を嵌装してなり、ピストン１７から外部へ突出す
るロツドは、磁石支持筒１４から固定筒１０の左端壁の
円弧状のスリツト１８ａを経て突出する腕１６に連結さ
れる。

【００１０】図２に示すように、磁石支持筒１４は各強
磁性板１５に１つずつ対応する磁石２４を結合される。
磁石支持筒１４は磁性体からなり、各強磁性板１５に対
向する磁石２４は、極性が周方向に交互に異なるように
配設される。

【００１１】本発明によれば、強磁性板１５は内周面の
周方向長さＬを磁石２４の外周面の周方向長さと同寸と
し、後端部１５ｂの外周側部分を制動ドラム７の回転方
向後方（矢印ｘと反対方向）へ突出させる。図２に示す
実施例では、後端部１５ｂは強磁性板１５の径方向線に
対し傾斜した面として構成される。強磁性板１５の前端
部１５ａは、図３に示すように、軽量化のために外周側
部分を後端部１５ｂとほぼ平行にカツトしてもよい。

【００１２】次に、本発明による渦電流式減速装置の作
動について説明する。非制動時、図３に示すように、極
性が異なる２つの磁石２４が部分的に共通の強磁性板１
５に対向する。各強磁性板１５と磁石支持筒１４との間
に、線２７で示す短絡的磁気回路が生じ、磁石２４は磁
界を制動ドラム７に及ぼさない。

【００１３】制動時、流体圧アクチユエータ２０により
磁石支持筒１４を強磁性板１５の半配列ピツチ分だけ回
動すると、図２に示すように、各磁石２４は各強磁性板
１５に全面的に対向し、強磁性板１５を経て制動ドラム
７に磁界を及ぼす。回転する制動ドラム７が磁界を横切
る時、制動ドラム７に渦電流が流れ、制動ドラム７は制
動トルクを受ける。

【００１４】制動時、制動ドラム７が回転していると、
磁石２４から強磁性板１５を経て制動ドラム７へ及ぶ磁
界は、制動ドラム７の回転方向へ引きずられた格好に歪
曲される。しかし、本発明によれば、強磁性板１５の後
端部１５ｂの外周側部分が後方へ突出しているので、磁
石２４を挟んで制動ドラム７と磁石支持筒１４とに形成
される磁気回路（線２６ａで示す）は、制動ドラム７の
回転方向前方の強磁性板１５の後端部１５ｂで、前隣り
の磁石２４との間の円滑な磁気回路を形成し、磁気回路
の制動ドラム７の回転方向へのずれないし歪曲が抑えら
れる。つまり、強磁性板１５を通過する磁束分布が、従
来よりも回転方向後方側へ引き寄せられた格好になり、
強磁性板１５の前端部１５ａでの磁束密度の集中が回避
される。したがつて、強磁性板１５の前端部１５ａでの
磁気飽和が起らないから、磁石２４と制動ドラム７との
間に効率的な磁気回路が形成され（各強磁性板１５を通
過する磁束数が増加する）、制動能力が増大する。

【００１５】本発明は上述した形式の減速装置に限定さ
れるものではなく、図４に示す形式の渦電流式減速装置
にも適用できる。図４に示す減速装置では、磁石２３ａ
を支持する磁石支持筒１３と磁石２４ａを支持する磁石
支持筒１４とが、固定筒１０の内空部に収容される。磁
石支持筒１３は内周壁１０ｂに軸受１２により磁石の配
列ピツチ分だけ回動可能に支持される一方、磁石支持筒
１４は内周壁１０ｂに嵌合され、かつボルト２１により
右端壁１１に固定される。磁石支持筒１３の外周面に周
方向等間隔に多数の磁石２３ａが結合される。磁石支持
筒１４の外周面にも同間隔で多数の磁石２４ａが結合さ
れる。各磁石２３ａ，２４ａは磁石支持筒１３，１４に
接合する内面と、強磁性板１５に対向する外面とが磁極
となつており、外面の極性が周方向に交互に異なるよう
に配列される。強磁性板１５は非磁性体からなる外周壁
１０ａの開口に嵌合支持され、磁石２３ａ，２４ａと同
配列ピツチで並ぶように配列される。他の構成について
は図１のものと同様である。

【００１６】上述の実施例では、非制動時、磁石支持筒
１４の磁石２４ａと磁石支持筒１３の磁石２３ａとは、
図４のように磁石の配列ピツチ分だけずれ、強磁性板１
５に対向する極性が互いに反対になつている。この時、
図４に矢印で示すように、短絡的磁気回路２７ａが形成
されるので、各磁石２３ａ，２４ａから制動ドラム７の
内周面へ垂直に作用する磁界は極めて微弱なものとな
り、制動ドラム７に制動トルクを及ぼさない。

【００１７】制動時、流体圧アクチユエータ２０により
磁石支持筒１３を磁石の配列ピツチ分だけ回動すると、
磁石支持筒１３の磁石２３ａと磁石支持筒１４の磁石２
４ａとは極性が同じく横に並び、図２の場合と同様に、
各磁石２３ａ，２４ａが制動ドラム７と磁石支持筒１
３，１４の間で磁気回路を形成する。

【００１８】また、本発明は軸方向に長い固定筒の内部
で磁石支持筒を軸方向に移動し、磁石が強磁性板に対向
する制動位置と、磁石が制動ドラムから軸方向に引退し
て強磁性板に対向しない非制動時とに、切り換えられる
形式の減速装置にも適用できる。

【００１９】

【発明の効果】本発明は上述のように、制動ドラムの内
側に断面長方形の内空部を有する固定筒を配設し、固定
筒の内空部に固定筒の外周壁に対向する極性が周方向に
交互に異なるよう多数の永久磁石を配列した磁石支持筒
を回動可能に支持し、固定筒の外周壁に磁石支持筒の各
永久磁石に対向する強磁性板を埋設し、強磁性板は制動
ドラムの回転方向後端部の外周側部分を、制動ドラムの
回転方向後方へ突出したものであるから、各強磁性板の
後端側で磁化された制動ドラムは回転に伴つて、前隣り
の強磁性板の後端部を介して前隣りの磁石に対向し、そ
れだけ磁束が強磁性板の後端部（制動ドラムの回転方向
後側）へ偏倚されることとなり、強磁性板の前端部への
磁束集中が抑えられる。換言すれば、強磁性板の前端部
における磁気の飽和が抑えられるので、制動ドラムへ達
する磁束が増加し、磁石支持筒と制動ドラムとの間に効
率的な磁気回路が生じ、制動効率ないし制動能力が高め
られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る渦電流式減速装置の側面断面図で
ある。

【図２】図１の線２Ａ−２Ａによる減速装置の制動時の
正面断面図である。

【図３】本発明の変更実施例に係る強磁性板を備えた減
速装置の非制動時の正面断面図である。

【図４】本発明に係る他の形式の渦電流式減速装置の側
面断面図である。

【図５】従来の渦電流式減速装置の正面断面図である。

【符号の説明】

７：制動ドラム １０：固定筒 １３，１４：磁石支持
筒 １５：強磁性板 １５ｂ：後端部 ２４，２３ａ，
２４ａ：磁石

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】制動ドラムの内側に断面長方形の内空部を
   有する固定筒を配設し、固定筒の内空部に固定筒の外周
   壁に対向する極性が周方向に交互に異なるよう多数の永
   久磁石を配列した磁石支持筒を回動可能に支持し、固定
   筒の外周壁に磁石支持筒の各永久磁石に対向する強磁性
   板を埋設し、強磁性板は制動ドラムの回転方向後端部の
   外周側部分を、制動ドラムの回転方向後方へ突出したこ
   とを特徴とする渦電流式減速装置。
2. 【請求項２】制動ドラムの内側に断面長方形の内空部を
   有する固定筒を配設し、固定筒の内空部に固定筒の外周
   壁に対向する極性が周方向に交互に異なるよう多数の永
   久磁石を配列した磁石支持筒を軸方向移動可能に支持
   し、固定筒の外周壁に磁石支持筒の各永久磁石に対向す
   る強磁性板を埋設し、強磁性板は制動ドラムの回転方向
   後端部の外周側部分を、制動ドラムの回転方向後方へ突
   出したことを特徴とする渦電流式減速装置。