JP3651255B2 - 渦電流減速装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は多数の永久磁石（以下、これを単に磁石という）が磁極を制動ドラムの周方向に向けて配され、各磁極から延びる強磁性部材（ポールピース）の先端面が制動ドラムの内周面へ対向し、制動時磁石と制動ドラムとの間に効率的な磁気回路が形成されるようにした渦電流減速装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
特公平3-86,060号公報などに開示される磁石式渦電流減速装置は、磁石支持筒を軸方向へ往復動させることにより、制動と非制動の切換えを行うものであるので、磁石支持筒の移動空間分だけ軸方向寸法が長くなるという難点がある。
【０００３】
特公平7-118901号公報などに開示される磁石式渦電流減速装置では、制動時可動の磁石支持筒を回動して、可動の磁石支持筒の磁石の極性と不動の磁石支持筒の磁石の極性とが同じになるようにすると、磁石から強磁性板（ポールピース）、制動ドラム、磁石支持筒、磁石へと磁気回路が形成され、回転する制動ドラムが磁石支持筒の磁石からの磁束を横切る時、制動ドラムに渦電流に基づく制動力が発生する。
【０００４】
しかし、上述の各渦電流減速装置では、磁石のＮ極とＳ極は制動ドラムの径方向に向いており、磁石から強磁性板を経て制動ドラムへ有効に磁束が入るように、磁石の外面と内面を円弧面に加工する必要があり、非常に加工経費が嵩む。また、磁石からの磁束を洩らさず制動ドラムへ入れるためには、強磁性板は磁石を覆う大きなものとなり、強磁性板により磁束密度を有効に高めることができず、制動力を十分に発生させることができない。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題に鑑み、全体の形状が小さく、ブロツク（直方体など）形の磁石と強磁性部材の組合体により、制動ドラムとの間に効率的な磁気回路が形成されるようにした渦電流減速装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は回転軸に結合された制動ドラムの内部に、軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒とを前記制動ドラムと同軸に配設し、各磁石支持筒の外周壁に多数の永久磁石を周方向等間隔に支持し、前記各永久磁石の周方向の両端部の磁極面に強磁性部材の基端面を結合し、該強磁性部材の先端面を前記制動ドラムの内周面に対向させ、前記可動の磁石支持筒を正逆回動するアクチユエータを備えたことを特徴とする。
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明では磁石支持筒に対し磁石を両端の磁極が周方向に向くように支持し、磁石の両端の磁極面に、磁石の端面から周方向かつ径外方へ延びる強磁性部材（ポールピース）を結合した構造にする。軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒の外周面は、非磁性体からなる極く薄い外筒部により覆われ、埃や泥水から保護される。
【０００８】
制動時、可動の磁石支持筒と不動の磁石支持筒の各磁石は軸方向に並び、各磁石から磁束が制動ドラムへ入る。回転する制動ドラムが各磁石支持筒の磁石からの磁束を横切る時、制動ドラムに渦電流に基づく制動力が発生する。非制動時、可動の磁石支持筒を不動の磁石支持筒に対し磁石の半配列ピツチ分だけ周方向へずらすと、両方の磁石支持筒の磁石と強磁性部材との間に、磁石支持筒を周回する短絡的磁気回路が形成され、制動ドラムに磁束を及ぼさず、制動力は発生しない。
【０００９】
【実施例】
図１，２は本発明が適用される渦電流減速装置の正面断面図、図３は同側面断面図である。渦電流減速装置は制動ドラム１３を回転軸４に結合される。このため、変速機の歯車箱２の端壁に軸受３により支持されかつ端壁から突出する出力回転軸４に、スプライン孔５ａを有する取付フランジ５が嵌合され、かつ抜け出ないようにナツト６により締結される。取付フランジ５に駐車ブレーキの制動ドラム７の端壁と、渦電流減速装置の制動ドラム１３を支持するホイール９と一体のフランジ部９ａとが重ね合され、複数のボルト１０とナツト１０ａにより締結される。
【００１０】
制動ドラム１３は鉄などの透磁率の大なる材料からなり、外周壁に多数の冷却フイン１３ａが周方向等間隔に備えられる。後述するように、制動ドラム１３の基端部は、ホイール９に嵌合されかつホイール９から放射方向へ延びる多数の支持腕（スポーク）１２に結合される。制動ドラム１３の内部に、断面箱形の内空部２３（図２）を有する案内筒１８が同軸に配設される。アルミニウムなどの非磁性体からなる不動の案内筒１８は、歯車箱２の突壁２ａに外嵌固定した枠板３１に、図示してないボルトにより固定される。案内筒１８は外筒部１８ａと内筒部１８ｂとの両端に環状の端壁板１８ｃ，１８ｄを結合して構成される。図示の実施例では、端壁板１８ｃと内筒部１８ｂとは断面逆Ｌ字形をなす筒体として一体に構成され、該筒体に端壁板１８ｄがボルトにより結合され、外筒部１８ａは薄いステンレス鋼板などの非磁性体からなる。
【００１１】
案内筒１８の内空部２３に、軸方向に並ぶ可動の磁石支持筒１９と不動の磁石支持筒１９Ａとが収容される。磁石支持筒１９は軸受２２により内筒部１８ｂに正逆回動可能に支持され、磁石支持筒１９Ａは外筒部１８ａと内筒部１８ｂに結合される。各磁石支持筒１９，１９Ａの外周壁に多数の磁石２０，２０Ａが周方向等間隔に支持される。
【００１２】
図３に示すように、磁石支持筒１９の各磁石２０は、例えばＮ極が反時計方向へ向くように配列される。磁石２０，２０Ａの周方向の両端部の磁極面に、円弧状の強磁性部材（ポールピース）２１，２１Ａの基端面が結合される。強磁性部材２１，２１Ａは径外方へ湾曲され、先端面を制動ドラム１３の内周面１３ｃへ対向される。磁石２０と１対の強磁性部材２１とはほぼ馬蹄形をなす。図示の実施例では、強磁性部材２１，２１Ａの幅（制動ドラム１３の軸方向の寸法）は磁石２０，２０Ａのそれよりも幾分広く、強磁性部材２１，２１Ａの先端部の幅はさらに広くされる。好ましくは、図２に示すように、各強磁性部材２１，２１Ａの先端部には、互いに接近するように軸方向の突部２１ａが形成される。
【００１３】
補強リブ３１ａを有する枠板３１に、周方向等間隔に複数のアクチユエータ３３（図２）が支持される。アクチユエータ３３はシリンダ３４にピストン３５を嵌合して１対の流体圧室を区画し、ピストンロツドから案内筒１８のスリツトを経て内空部２３へ突出する腕３６が可動の磁石支持筒１９に連結される。
【００１４】
図３に示すように、制動時、磁石支持筒１９の磁石２０は、磁石支持筒１９Ａの磁石２０Ａと軸方向に並ぶ。回転する制動ドラム１３が磁石２０，２０Ａから強磁性部材２１，２１Ａを経て制動ドラム１３の内周面１３ｃへ及ぶ磁束を横切る時、制動ドラム１３に渦電流が発生し、制動ドラム１３に制動トルクが発生する。この時、図３に示すように、各磁石２０と制動ドラム１３との間に磁気回路４０が形成される。
【００１５】
非制動時、アクチユエータ３３により磁石支持筒１９を磁石２０の半配列ピツチ分だけ回動すると、図４に示す状態になり、磁石２０，２０Ａは制動ドラム１３へ磁束を及ぼさなくなり、制動ドラム１３に制動トルクは発生しない。つまり、図２，４に示すように、磁石２０のＳ極から延びる強磁性部材２１が、磁石２０ＡのＮ極から延びる強磁性部材２１Ａの横に並び、磁石２０のＮ極から延びる強磁性部材２１が、磁石２０ＡのＳ極から延びる強磁性部材２１Ａの横に並ぶ。この時、磁石２０のＮ極から強磁性部材２１，強磁性部材２１Ａ，磁石２０ＡのＳ極、磁石２０ＡのＮ極，強磁性部材２１Ａ，強磁性部材２１，磁石２０のＳ極へと、短絡的磁気回路４０ａが形成される。
【００１６】
図５，６に示す実施例では、可動の磁石支持筒１９と磁石２０と強磁性部材２１とを一緒に、アルミニウムなどの非磁性材料へ鋳込むなどして一体化し、断面長方形の筒体とする。同様に、不動の磁石支持筒１９Ａも磁石２０Ａと強磁性部材２１Ａと案内筒１８の端壁板１８ｄと一体化してもよい。また、外筒部１８ａを廃し、案内筒１８の端壁板１８ｃと可動の磁石支持筒１９との間に環状のシール部材３０を、可動の磁石支持筒１９と不動の磁石支持筒１９Ａとの間にシール部材３０ａをそれぞれ介装して埃や泥水などの浸入を防止し、可動の磁石支持筒１９の動きの円滑さを確保する。しかし、図１〜４に示す実施例と同様に、非磁性体の薄板からなる外筒部１８ａを案内筒１８に結合し、埃や泥水の浸入を防ぐようにしてもよい。
【００１７】
上述の実施例では、制動ドラムの内部に不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒を配設し、可動の磁石支持筒を回動させて、両方の磁石支持筒の磁石が軸方向に並ぶ制動位置と、両方の磁石支持筒の磁石が半配列ピツチだけ周方向に偏倚する非制動位置とに切り換える形式の渦電流減速装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特公平3-86,060号公報に開示されるような制動ドラムに対し磁石支持筒を軸方向に往復移動させて、磁石が制動ドラムの内周面に対向する制動位置と、磁石が制動ドラムの内周面に対向しない非制動位置とに切り換える形式の渦電流減速装置にも適用できる。
【００１８】
【発明の効果】
本発明は上述のように、回転軸に結合された制動ドラムの内部に、軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒とを前記制動ドラムと同軸に配設し、各磁石支持筒の外周壁に多数の永久磁石を周方向等間隔に支持し、前記各永久磁石の周方向の両端部の磁極面に強磁性部材の基端面を結合し、該強磁性部材の先端面を前記制動ドラムの内周面に対向させ、前記可動の磁石支持筒を正逆回動するアクチユエータを備えたものであり、制動と非制動の切換えを行うために、磁石支持筒を軸方向でなく周方向へ往復移動させることにより、軸方向寸法を短縮し、装置全体の小形化を図ることができる。
【００１９】
ブロツク状の磁石の両端に円弧状の強磁性部材を結合したほぼ馬蹄形の組合体を磁石支持筒の外周壁に支持し、磁石支持筒を案内筒の内空部に収容するものであるから、従来の渦電流減速装置よりも磁石と磁石支持筒の構成が簡単になり、磁石支持筒が軽量になる。
【００２０】
ブロツク状の磁石と強磁性部材との組合体がほぼ馬蹄形をなすので、磁束の洩れが少く、制動ドラムとの間に効率的な磁気回路が形成され。大きな制動力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る渦電流減速装置の正面断面図である。
【図２】同渦電流減速装置の要部を示す正面断面図である。
【図３】同渦電流減速装置の制動状態を示す側面断面図である。
【図４】同渦電流減速装置の非制動状態を示す側面断面図である。
【図５】本発明の変更実施例に係る渦電流減速装置の要部を示す正面断面図である。
【図６】同渦電流減速装置の磁石支持筒の斜視図である。
【符号の説明】
４：回転軸 ５：取付フランジ ７：制動ドラム １２：支持腕 １３：制動ドラム １３ａ：冷却フイン １３ｃ：内周面 １８：案内筒 １８ａ：外筒部 １８ｂ：内筒部 １８ｃ，１８ｄ：端壁板 １９，１９Ａ：磁石支持筒 ２０，２０Ａ：永久磁石 ２１，２１Ａ：強磁性部材 ２１ａ：突部 ２２：軸受 ２３：内空部 ３０，３０ａ：シール部材 ３１：枠板 ３３：アクチユエータ
【発明の属する技術分野】
本発明は多数の永久磁石（以下、これを単に磁石という）が磁極を制動ドラムの周方向に向けて配され、各磁極から延びる強磁性部材（ポールピース）の先端面が制動ドラムの内周面へ対向し、制動時磁石と制動ドラムとの間に効率的な磁気回路が形成されるようにした渦電流減速装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
特公平3-86,060号公報などに開示される磁石式渦電流減速装置は、磁石支持筒を軸方向へ往復動させることにより、制動と非制動の切換えを行うものであるので、磁石支持筒の移動空間分だけ軸方向寸法が長くなるという難点がある。
【０００３】
特公平7-118901号公報などに開示される磁石式渦電流減速装置では、制動時可動の磁石支持筒を回動して、可動の磁石支持筒の磁石の極性と不動の磁石支持筒の磁石の極性とが同じになるようにすると、磁石から強磁性板（ポールピース）、制動ドラム、磁石支持筒、磁石へと磁気回路が形成され、回転する制動ドラムが磁石支持筒の磁石からの磁束を横切る時、制動ドラムに渦電流に基づく制動力が発生する。
【０００４】
しかし、上述の各渦電流減速装置では、磁石のＮ極とＳ極は制動ドラムの径方向に向いており、磁石から強磁性板を経て制動ドラムへ有効に磁束が入るように、磁石の外面と内面を円弧面に加工する必要があり、非常に加工経費が嵩む。また、磁石からの磁束を洩らさず制動ドラムへ入れるためには、強磁性板は磁石を覆う大きなものとなり、強磁性板により磁束密度を有効に高めることができず、制動力を十分に発生させることができない。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題に鑑み、全体の形状が小さく、ブロツク（直方体など）形の磁石と強磁性部材の組合体により、制動ドラムとの間に効率的な磁気回路が形成されるようにした渦電流減速装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は回転軸に結合された制動ドラムの内部に、軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒とを前記制動ドラムと同軸に配設し、各磁石支持筒の外周壁に多数の永久磁石を周方向等間隔に支持し、前記各永久磁石の周方向の両端部の磁極面に強磁性部材の基端面を結合し、該強磁性部材の先端面を前記制動ドラムの内周面に対向させ、前記可動の磁石支持筒を正逆回動するアクチユエータを備えたことを特徴とする。
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明では磁石支持筒に対し磁石を両端の磁極が周方向に向くように支持し、磁石の両端の磁極面に、磁石の端面から周方向かつ径外方へ延びる強磁性部材（ポールピース）を結合した構造にする。軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒の外周面は、非磁性体からなる極く薄い外筒部により覆われ、埃や泥水から保護される。
【０００８】
制動時、可動の磁石支持筒と不動の磁石支持筒の各磁石は軸方向に並び、各磁石から磁束が制動ドラムへ入る。回転する制動ドラムが各磁石支持筒の磁石からの磁束を横切る時、制動ドラムに渦電流に基づく制動力が発生する。非制動時、可動の磁石支持筒を不動の磁石支持筒に対し磁石の半配列ピツチ分だけ周方向へずらすと、両方の磁石支持筒の磁石と強磁性部材との間に、磁石支持筒を周回する短絡的磁気回路が形成され、制動ドラムに磁束を及ぼさず、制動力は発生しない。
【０００９】
【実施例】
図１，２は本発明が適用される渦電流減速装置の正面断面図、図３は同側面断面図である。渦電流減速装置は制動ドラム１３を回転軸４に結合される。このため、変速機の歯車箱２の端壁に軸受３により支持されかつ端壁から突出する出力回転軸４に、スプライン孔５ａを有する取付フランジ５が嵌合され、かつ抜け出ないようにナツト６により締結される。取付フランジ５に駐車ブレーキの制動ドラム７の端壁と、渦電流減速装置の制動ドラム１３を支持するホイール９と一体のフランジ部９ａとが重ね合され、複数のボルト１０とナツト１０ａにより締結される。
【００１０】
制動ドラム１３は鉄などの透磁率の大なる材料からなり、外周壁に多数の冷却フイン１３ａが周方向等間隔に備えられる。後述するように、制動ドラム１３の基端部は、ホイール９に嵌合されかつホイール９から放射方向へ延びる多数の支持腕（スポーク）１２に結合される。制動ドラム１３の内部に、断面箱形の内空部２３（図２）を有する案内筒１８が同軸に配設される。アルミニウムなどの非磁性体からなる不動の案内筒１８は、歯車箱２の突壁２ａに外嵌固定した枠板３１に、図示してないボルトにより固定される。案内筒１８は外筒部１８ａと内筒部１８ｂとの両端に環状の端壁板１８ｃ，１８ｄを結合して構成される。図示の実施例では、端壁板１８ｃと内筒部１８ｂとは断面逆Ｌ字形をなす筒体として一体に構成され、該筒体に端壁板１８ｄがボルトにより結合され、外筒部１８ａは薄いステンレス鋼板などの非磁性体からなる。
【００１１】
案内筒１８の内空部２３に、軸方向に並ぶ可動の磁石支持筒１９と不動の磁石支持筒１９Ａとが収容される。磁石支持筒１９は軸受２２により内筒部１８ｂに正逆回動可能に支持され、磁石支持筒１９Ａは外筒部１８ａと内筒部１８ｂに結合される。各磁石支持筒１９，１９Ａの外周壁に多数の磁石２０，２０Ａが周方向等間隔に支持される。
【００１２】
図３に示すように、磁石支持筒１９の各磁石２０は、例えばＮ極が反時計方向へ向くように配列される。磁石２０，２０Ａの周方向の両端部の磁極面に、円弧状の強磁性部材（ポールピース）２１，２１Ａの基端面が結合される。強磁性部材２１，２１Ａは径外方へ湾曲され、先端面を制動ドラム１３の内周面１３ｃへ対向される。磁石２０と１対の強磁性部材２１とはほぼ馬蹄形をなす。図示の実施例では、強磁性部材２１，２１Ａの幅（制動ドラム１３の軸方向の寸法）は磁石２０，２０Ａのそれよりも幾分広く、強磁性部材２１，２１Ａの先端部の幅はさらに広くされる。好ましくは、図２に示すように、各強磁性部材２１，２１Ａの先端部には、互いに接近するように軸方向の突部２１ａが形成される。
【００１３】
補強リブ３１ａを有する枠板３１に、周方向等間隔に複数のアクチユエータ３３（図２）が支持される。アクチユエータ３３はシリンダ３４にピストン３５を嵌合して１対の流体圧室を区画し、ピストンロツドから案内筒１８のスリツトを経て内空部２３へ突出する腕３６が可動の磁石支持筒１９に連結される。
【００１４】
図３に示すように、制動時、磁石支持筒１９の磁石２０は、磁石支持筒１９Ａの磁石２０Ａと軸方向に並ぶ。回転する制動ドラム１３が磁石２０，２０Ａから強磁性部材２１，２１Ａを経て制動ドラム１３の内周面１３ｃへ及ぶ磁束を横切る時、制動ドラム１３に渦電流が発生し、制動ドラム１３に制動トルクが発生する。この時、図３に示すように、各磁石２０と制動ドラム１３との間に磁気回路４０が形成される。
【００１５】
非制動時、アクチユエータ３３により磁石支持筒１９を磁石２０の半配列ピツチ分だけ回動すると、図４に示す状態になり、磁石２０，２０Ａは制動ドラム１３へ磁束を及ぼさなくなり、制動ドラム１３に制動トルクは発生しない。つまり、図２，４に示すように、磁石２０のＳ極から延びる強磁性部材２１が、磁石２０ＡのＮ極から延びる強磁性部材２１Ａの横に並び、磁石２０のＮ極から延びる強磁性部材２１が、磁石２０ＡのＳ極から延びる強磁性部材２１Ａの横に並ぶ。この時、磁石２０のＮ極から強磁性部材２１，強磁性部材２１Ａ，磁石２０ＡのＳ極、磁石２０ＡのＮ極，強磁性部材２１Ａ，強磁性部材２１，磁石２０のＳ極へと、短絡的磁気回路４０ａが形成される。
【００１６】
図５，６に示す実施例では、可動の磁石支持筒１９と磁石２０と強磁性部材２１とを一緒に、アルミニウムなどの非磁性材料へ鋳込むなどして一体化し、断面長方形の筒体とする。同様に、不動の磁石支持筒１９Ａも磁石２０Ａと強磁性部材２１Ａと案内筒１８の端壁板１８ｄと一体化してもよい。また、外筒部１８ａを廃し、案内筒１８の端壁板１８ｃと可動の磁石支持筒１９との間に環状のシール部材３０を、可動の磁石支持筒１９と不動の磁石支持筒１９Ａとの間にシール部材３０ａをそれぞれ介装して埃や泥水などの浸入を防止し、可動の磁石支持筒１９の動きの円滑さを確保する。しかし、図１〜４に示す実施例と同様に、非磁性体の薄板からなる外筒部１８ａを案内筒１８に結合し、埃や泥水の浸入を防ぐようにしてもよい。
【００１７】
上述の実施例では、制動ドラムの内部に不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒を配設し、可動の磁石支持筒を回動させて、両方の磁石支持筒の磁石が軸方向に並ぶ制動位置と、両方の磁石支持筒の磁石が半配列ピツチだけ周方向に偏倚する非制動位置とに切り換える形式の渦電流減速装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特公平3-86,060号公報に開示されるような制動ドラムに対し磁石支持筒を軸方向に往復移動させて、磁石が制動ドラムの内周面に対向する制動位置と、磁石が制動ドラムの内周面に対向しない非制動位置とに切り換える形式の渦電流減速装置にも適用できる。
【００１８】
【発明の効果】
本発明は上述のように、回転軸に結合された制動ドラムの内部に、軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒とを前記制動ドラムと同軸に配設し、各磁石支持筒の外周壁に多数の永久磁石を周方向等間隔に支持し、前記各永久磁石の周方向の両端部の磁極面に強磁性部材の基端面を結合し、該強磁性部材の先端面を前記制動ドラムの内周面に対向させ、前記可動の磁石支持筒を正逆回動するアクチユエータを備えたものであり、制動と非制動の切換えを行うために、磁石支持筒を軸方向でなく周方向へ往復移動させることにより、軸方向寸法を短縮し、装置全体の小形化を図ることができる。
【００１９】
ブロツク状の磁石の両端に円弧状の強磁性部材を結合したほぼ馬蹄形の組合体を磁石支持筒の外周壁に支持し、磁石支持筒を案内筒の内空部に収容するものであるから、従来の渦電流減速装置よりも磁石と磁石支持筒の構成が簡単になり、磁石支持筒が軽量になる。
【００２０】
ブロツク状の磁石と強磁性部材との組合体がほぼ馬蹄形をなすので、磁束の洩れが少く、制動ドラムとの間に効率的な磁気回路が形成され。大きな制動力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る渦電流減速装置の正面断面図である。
【図２】同渦電流減速装置の要部を示す正面断面図である。
【図３】同渦電流減速装置の制動状態を示す側面断面図である。
【図４】同渦電流減速装置の非制動状態を示す側面断面図である。
【図５】本発明の変更実施例に係る渦電流減速装置の要部を示す正面断面図である。
【図６】同渦電流減速装置の磁石支持筒の斜視図である。
【符号の説明】
４：回転軸 ５：取付フランジ ７：制動ドラム １２：支持腕 １３：制動ドラム １３ａ：冷却フイン １３ｃ：内周面 １８：案内筒 １８ａ：外筒部 １８ｂ：内筒部 １８ｃ，１８ｄ：端壁板 １９，１９Ａ：磁石支持筒 ２０，２０Ａ：永久磁石 ２１，２１Ａ：強磁性部材 ２１ａ：突部 ２２：軸受 ２３：内空部 ３０，３０ａ：シール部材 ３１：枠板 ３３：アクチユエータ
Claims (2)
- 回転軸に結合された制動ドラムの内部に、軸方向に並ぶ不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒とを前記制動ドラムと同軸に配設し、各磁石支持筒の外周壁に多数の永久磁石を周方向等間隔に支持し、前記各永久磁石の周方向の両端部の磁極面に強磁性部材の基端面を結合し、該強磁性部材の先端面を前記制動ドラムの内周面に対向させ、前記可動の磁石支持筒を正逆回動するアクチユエータを備えたことを特徴とする渦電流減速装置。
- 前記不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒とは、非磁性体からなる案内筒の断面長方形をなす環状の内空部に収容される、請求項１に記載の渦電流減速装置。
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