JPH06287318A - 繊維複合シートの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】幅方向に肉厚が均一で、外観及び強度に優れた
繊維複合シートの製造方法を提供する。 【構成】強化繊維束１２本を横一列に並べ、樹脂粉体を
充填した流動槽２内に導き、流動槽２内にて、バー２２
に押圧状態にして摺動し、バー２２、２２間を通過する
強化繊維束Ｆ１に振動バー２３１にて、振幅１ｍｍ、振
動数３０Ｈｚの振動を直接与え、強化繊維束Ｆ１をモノ
フィラメント状に充分且つ均一に開繊する。開繊した強
化繊維Ｆ２を、テンション調整バー３を経て、緊張状態
にて樹脂粉体を充填した容器４内に導き、幅方向に均一
な厚さになるように樹脂粉体を付着する。これを２００
℃に加熱した加熱ロール５に導き、シート化し、冷却ロ
ール６を経て、巻取機７にて巻き取り、繊維複合シート
８を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、プラスチックやエンジ
ニアリングプラスチックの補強材料として用いられるプ
レプリグシートや、スタンパブルシート等の繊維複合シ
ートの製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、繊維強化熱可塑性樹脂シートの製
造方法としては、例えば、特開平３─１９３４１５公報
に記載の如く、ロービング繊維を流動床に導入して熱可
塑性樹脂粉を含浸させるに際し、流動床中のロービング
繊維の張力を、流動床から導出されたロービング繊維を
振動カイドロール又はバーに通しその振動ガイドロール
又はバーを上下に繰り返し振動させて、強弱に繰り返し
変化させることにより、ロービング繊維に熱可塑性樹脂
粉を含浸させる方法が提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、この場合、熱
可塑性樹脂粉が含浸したロービング繊維は、振動ガイド
ロールバーの振動条件次第では、幅方向のロービング繊
維の帯状の広がり状態が不均一になったり、流動床から
導出されたロービング繊維から、振動ガイドロール又は
バーの繰り返し振動により、熱可塑性樹脂粉が必要以上
に落下してしまって、ロービング繊維の幅方向に付着樹
脂の不足する部分が発生するおそれがあり、幅方向に肉
厚が均一なシートを得るような振動条件の設定が難しい
という問題点がある。

【０００４】本発明は上記の如き従来の問題点を解消
し、幅方向に肉厚が均一で、外観及び強度に優れた繊維
複合シートの簡便な製造方法を提供することを目的とし
てなされたものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明においては、ま
ず、多数の連続モノフィラメントよりなる強化繊維束
を、ガスが流動している流動槽内にて、流動槽内に設け
られたバーに押圧状態にて摺動させつつ緊張状態と緩和
状態を繰り返すことにより、モノフィラメント状に開繊
させる工程を有する。

【０００６】強化繊維束（ロービング）としては、樹脂
粉体の溶融温度において熱的に安定なものが好適に使用
され、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック
繊維等の無機繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維
等の有機繊維等が挙げられる。

【０００７】強化繊維束は、モノフィラメントの集合を
通常ポリ酢酸ビニル、デンプン、ポリエステル等の収束
剤により結束して繊維束とされているが、強化繊維に樹
脂粉体を均一に含浸するためには、モノフィラメント状
への開繊が容易である必要があり、収束剤は少量の方が
よく、その量は通常０．１〜５％が好ましい。

【０００８】強化繊維のモノフィラメントの直径は、１
〜５０μｍが好ましく、２〜３０μｍが特に好ましい。
直径が１μｍ未満の場合には、加熱溶融工程までの引き
取りや振動で生じる張力に耐え得る強度が得られず、
又、得られる繊維複合シートの強度が充分でなく、逆
に、５０μｍを超える場合には、容器内で樹脂粉体を付
着させるのに充分な開繊状態とすることができず、付着
不足となり、繊維複合シートとして要求される強度を得
ることが難しくなる。

【０００９】流動槽内にてガスの流動状態にする方法と
しては、流動槽の底面より流動ガスを吹き上げる方法等
が挙げられる。尚、流動ガスとしては、空気、窒素ガス
等の中性ガスが望ましい。

【００１０】強化繊維束を流動槽内にてバーに押圧状態
にて摺動させつつ緊張状態と緩和状態を繰り返す方法と
しては、例えば、強化繊維束をバーに押圧状態にて摺動
させつつ、強化繊維束に直接振動を与えるか、流動槽自
体を振動させる方法等が挙げられる。

【００１１】強化繊維束を流動槽内でバーに押圧状態に
て摺動させる際の強化繊維の緊張状態におけるバーに対
する押圧力としては、強化繊維のモノフィラメントの直
径により最適値は異なるが、０．１〜５ｋｇｆ／ｃｍが
好ましい。押圧力が０．１ｋｇｆ／ｃｍ未満の場合に
は、強化繊維束が開繊しにくく、逆に、５ｋｇｆ／ｃｍ
を超える場合には、強化繊維が加熱溶融工程までの引き
取りや振動に耐えることができず破断するおそれがあ
る。

【００１２】上記押圧力を付与するには強化繊維束にテ
ンションをかけるのが好ましく、一般に緊張状態のとき
に０．５〜３ｋｇｆ／本となるようなテンションをかけ
ればよい。

【００１３】本発明においては、開繊した強化繊維を樹
脂粉体が充填された容器内を緊張状態にて通過させるこ
とにより、その強化繊維に樹脂粉体を付着させる工程を
有する。開繊した強化繊維を緊張状態にて粉体樹脂が充
填された容器内に導くには、例えば、流動槽と容器間に
テンション調整バーを設け、開繊した強化繊維をこのテ
ンション調整バーを通し、そのテンション調整バーによ
り強化繊維に一定の緊張状態を付与して容器内に導く方
法等が採用される。容器内における、強化繊維の緊張状
態としては、一般に緊張状態のときに０．５〜３ｋｇｆ
／本のテンションをかければよい。

【００１４】樹脂粉体としては、例えば、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹
脂、アクリル樹脂、ポリスチレン及びスチレンと他の単
量体との共重合体、ポリエーテルサルフォン、ポリフェ
ニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチッ
ク、これらの熱可塑性樹脂の混合樹脂、熱硬化性樹脂と
の混合樹脂からなる粉体等が挙げられる。

【００１５】樹脂粉体の粒子径は、１０〜３００μｍが
好ましい。粒子径が、１０μｍ未満の場合には、容器内
における樹脂粉体の飛散が激しくなり易く、逆に、３０
０μｍを超える場合には、モノフィラメントが樹脂粉体
の粒子径以上に開繊しにくくなり、又、容器内でのモノ
フィラメント間への樹脂粉体の付着が悪くなる。

【００１６】本発明においては、樹脂粉体が付着し強化
繊維を加熱装置に導いてシート化する工程を有する。強
化繊維に付着した樹脂粉体を加熱溶融する加熱装置とし
ては、加熱ロール、熱風、遠赤外線等の凡用加熱手段が
使用できる。加熱温度は、樹脂粉体の種類、加熱時間、
繊維複合シートの用途等により適宜選択される。

【００１７】本発明において、加熱溶融した樹脂粉体が
付着した強化繊維をシート化する方法としては、加熱手
段が加熱ロールの場合には、樹脂粉体が付着した強化繊
維を加熱ロールに通すことによりシート化することがで
き、この場合には、連続製造することができるので便利
であるが、加熱手段が熱風、遠赤外等の場合には、カレ
ンダー加工等によりシート化する方法等が適宜採用され
る。加熱溶融してシート化したものを冷却する方法とし
ては、冷却ロール、ブロア等が使用できる。

【００１８】以下、本発明を図面を参照して説明する。
図１は、本発明の繊維複合シートの製造方法の例の工程
を説明する側面図である。

【００１９】まず、最初の工程において、ボビン１１、
１１、１１より繰り出した多数の連続モノフィラメント
よりなる強化繊維束Ｆ１を流動槽２に導く。流動槽２に
は、容器２１の底部に、多数の通気孔が設けられてお
り、気体供給路から送られた空気や窒素ガス等の気体Ｇ
が通気孔を通って容器２１内に供給されるようになって
いる。

【００２０】容器２１の内部には強化繊維束Ｆ１を押圧
状態にて摺動させるバー２２、２２と、バー２２、２２
間を通過する強化繊維束Ｆ１に振動バー２３１にて直接
振動を与える振動装置２３が設けられている。又、容器
２１の側壁部上部付近の入口側に、強化繊維束Ｆ１を案
内するための案内バー２４が設けられている。

【００２１】強化繊維束Ｆ１を流動槽２内のバー２２、
２２に緊張状態にて押圧して摺動させる際の強化繊維束
Ｆ１のバーに対する押圧力は、巻取機７による引っ張り
力、バー２２、２２、案内バー２４等と強化繊維束との
摩擦力、強化繊維束の各バーに対する角度、振動バー２
３１の振動条件、ボビン１１、１１、１１のブレーキ等
の諸因子により異なるが、その押圧力の調節はそれらの
諸因子を調整することにより行う。

【００２２】振動バー２３１の振動条件としては、振幅
が１ｍｍ以上で効果があり、振動数は強化繊維束Ｆ１が
流動槽２内に設けられたバー２２、２２間を通過する間
に１回以上の振動を与えれば効果がある。

【００２３】尚、流動槽２内にて、強化繊維束Ｆ１の開
繊を促進させるために、流動槽２中又は流動槽２に入る
手前で強化繊維束Ｆ１に振動を与えたり、流動槽２に入
る手前で強化繊維束Ｆ１にエアーを吹き付ける等の補助
手段を講じても構わない。

【００２４】次の工程において、モノフィラメント状に
開繊した強化繊維Ｆ２を、テンション調整バー３を経て
樹脂粉体が充填された容器４内に導く。テンション調整
バー３は、バネ等により上下動自在とされており、開繊
した強化繊維Ｆ２に一定のテンションをかけ、緊張状態
になるように調節することができるようになっている。

【００２５】容器４内には、底部近傍にターンバー４
１、４１が設けられ、そのターンバー４１、４１を覆う
ように樹脂粉体が充填されている。容器４の側壁部上部
に案内バー４２、４２が設けられている。

【００２６】流動槽２にて開繊し、テンション調節バー
３にて緊張状態にした強化繊維Ｆ２を容器４の案内バー
４２、バー４１、４１、案内バー４２を経由する如く通
過させて、強化繊維Ｆ２に粉体樹脂が幅方向に均一な厚
さになるように付着させる。

【００２７】次の工程にて、樹脂粉体が付着した強化繊
維Ｆ３を加熱ロール５、５、５に導き、シート化する。
このシートを冷却ロール６、６、６を経て、巻取機７に
て巻き取り、図２に示す如く、樹脂層８１中に強化繊維
８２が均一に分散埋設され、幅方向に均一な厚さを有す
る繊維複合シート８を得る。

【００２８】

【作用】本発明の繊維複合シートの製造方法は、多数の
連続モノフィラメントよりなる強化繊維束を、ガスが流
動している流動槽内にて、流動槽内に設けられたバーに
押圧状態にて摺動させつつ緊張状態と緩和状態を繰り返
すことにより、強化繊維束をモノフィラメント状に充分
且つ均一に開繊させることができ、このような状態で予
め樹脂粉体付着工程に先行して開繊工程にて開繊した強
化繊維を、樹脂粉体が充填された容器内を緊張状態にて
通過させることにより、その強化繊維に樹脂粉体を幅方
向に均一な厚さになるように付着させることができ、こ
の樹脂粉体が付着した強化繊維を加熱装置に導いてシー
ト化することにより、幅方向に肉厚が均一で、外観及び
強度に優れた繊維複合シートを得ることができる。

【００２９】

【実施例】実施例１ 図１を参照して説明した工程により、図２に示す如き幅
４００ｍｍの繊維複合シート８の製造を行った。強化繊
維束として、ガラスロービング（日東紡社製、商品名
「＃４４００」、繊維直径２３μｍ、モノフィラメント
４０００本の束）１２本を用いた。樹脂粉体としては、
塩化ビニル樹脂粉体（信越化学社製、商品名「ＭＡ８０
０Ｓ」、平均粒径１５０μｍ）１００重量部に、ジブチ
ル錫ジマレエート１．５重量部と、ポリエチレンワック
ス０．５重量部を添加し、スーパーミキサーにて混合し
たものを用いた。

【００３０】強化繊維束１２本を横一列に並べ０１５ｋ
ｇｆ／本のテンションをかけながら、樹脂粉体を充填し
た流動槽２内に導き、流動槽２内にて、バー２２、２２
に押圧状態にして摺動させるとともに、バー２２、２２
間を通過する強化繊維束Ｆ１に振動バー２３１にて、振
幅１ｍｍ、振動数３０Ｈｚの振動を直接与えて、強化繊
維束Ｆ１をモノフィラメント状に充分且つ均一に開繊さ
せた。

【００３１】次に、流動槽２にて開繊した強化繊維Ｆ２
を、テンション調整バー３を経て、緊張状態にて樹脂粉
体を充填した容器４内に導き、ターンバー４１、４１に
緊張状態にて摺動するようにして、開繊した強化繊維に
幅方向に均一な厚さになるように樹脂粉体を付着させ
た。

【００３２】樹脂粉体が幅方向に均一な厚さに付着した
強化繊維Ｆ３を、２００℃に加熱した加熱ロール５、
５、５に導き、シート化し、冷却ロール６、６、６を経
て、巻取機７にて２．０ｍ／ｍｉｎの速度にて巻き取
り、平均肉厚０．５ｍｍの繊維複合シート８を得た。得
られた繊維複合シートについて、肉厚ＣＶ値、繊維重量
ＣＶ値を測定した。その結果、肉厚ＣＶ値は５．６％、
繊維重量ＣＶ値は６．２％であった。

【００３３】尚、肉厚ＣＶ値は、得られた繊維複合シー
トから、幅方向に４０分割し、マイクロメーターを用い
て肉厚を測定し算出した。繊維重量ＣＶ値は、幅方向に
４０分割したものを長さ５０ｍｍに切断して、サンプル
を作製し、このサンプルを電気炉にて樹脂分を燃焼分離
し、ガラスのみの重量を測定し算出した。

【００３４】比較例１ 強化繊維束Ｆ１を、流動槽２内及びテンション調整バー
３を通過させることなく、直接容器４内に導いたこと以
外は、実施例１と同様にして、実施例１と同様の繊維複
合シート８を得た。得られた繊維複合シートについて、
実施例１と同様にして、肉厚ＣＶ値、繊維重量ＣＶ値の
測定を行った。その結果、肉厚ＣＶ値は９．２％、繊維
重量ＣＶ値は１０．３％であった。

【００３５】

【発明の効果】本発明の繊維複合シートの製造方法は、
上記の如き構成とされているので、幅方向に肉厚が均一
で、外観及び強度に優れた繊維複合シートを得ることが
できる。

【００３６】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の繊維複合シートの製造方法の一例の工
程を説明する側面図である。

【図２】本発明により得られた繊維複合シートの一例を
示す断面図である。

【符号の説明】

Ｆ１ 強化繊維束 ２ 流動槽 ３ テンション調整バー ４ 容器 ５ 加熱ロール ６ 冷却ロール ８ 繊維複合シート ２２ バー ２３ 振動装置 ４１ ターンバー ２３１ 振動バー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多数の連続モノフィラメントよりなる強
   化繊維束を、ガスが流動している流動槽内にて、流動槽
   内に設けられたバーに押圧状態にて摺動させつつ緊張状
   態と緩和状態を繰り返すことにより、モノフィラメント
   状に開繊させる工程と、開繊した強化繊維を樹脂粉体が
   充填された容器内を緊張状態にて通過させることによ
   り、その強化繊維に樹脂粉体を付着させる工程と、樹脂
   粉体が付着した強化繊維を加熱装置に導いてシート化す
   る工程からなることを特徴とする繊維複合シートの製造
   方法。