JPH06248281A

JPH06248281A - 潤滑剤とそれを用いた磁気記録媒体

Info

Publication number: JPH06248281A
Application number: JP3965993A
Authority: JP
Inventors: Yuko Murakami; 祐子村上; Takayuki Nakakawaji; 中川路孝行; Saburo Shoji; 三良庄司; Juichi Arai; 寿一新井; Yutaka Ito; 伊藤　　豊
Original assignee: Hitachi Ltd
Current assignee: Hitachi Ltd
Priority date: 1993-03-01
Filing date: 1993-03-01
Publication date: 1994-09-06
Also published as: US5456980A

Abstract

(57)【要約】【目的】長期に亘って潤滑効果を保持できる低蒸発揮散
性の潤滑剤と、これを用いた走行安定性、耐摺動性に優
れた磁気記録媒体の提供。【構成】一般式〔１〕（但し、ｎは２〜４の整数、Ｒｆ
は平均分子量３０００〜１００００のパーフルオロポリ
エーテル鎖、Ｒ¹，Ｒ²は水素またはアルキル基、Ｒは芳
香族環を１個以上含む２〜４価の有機基を示す。）で表
される多官能型カルボン酸アンモニウム塩を含む潤滑剤
と、これを非磁性支持体上に磁性層を有し、その最外層
に保護膜を形成してなる磁気記録媒体上に塗布して潤滑
膜を設けたことを特徴とする磁気記録媒体。【化２３】

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、フッ素系潤滑剤とそれ
を表面に形成した低摩擦係数で耐久性に優れた磁気記録
媒体に関する。

【０００２】

【従来の技術】磁気記録媒体は磁気ヘッドとの接触や摺
動による摩耗、破壊、吸着等を防ぐため、表面に種々の
潤滑剤を塗布することが従来より提案されている。こう
した潤滑剤としては高級脂肪酸やそのエステルをはじ
め、パーフロロアルキル型化合物やパーフロロポリオキ
シアルキルまたはパーフロロポリオキシアルキレン型化
合物等のフッ素系潤滑剤である。

【０００３】一般に、フッ素系化合物は低表面エネルギ
ーでしかも化学的に不活性であるため固体表面の汚染防
止または固体表面の撥水・撥油化剤としてよく用いられ
ている。

【０００４】近年、磁気記録媒体の高記録密度化に伴い
磁気ヘッドとの摺動条件はますます苛酷になっており、
潤滑膜としてはより高い潤滑特性が要求されている。即
ち、薄膜でしかも摺動耐久性に優れ、長期にわたり撥水
・撥油性にも優れ、さらに幅広い環境条件下で安定した
耐久性を有するなどである。しかし、これらを満足させ
ることは非常に困難である。例えば、パーフロロアルキ
ル型潤滑剤の場合、フッ化炭素鎖長が短いため撥水・撥
油性には優れているが潤滑性が劣る。また、パーフロロ
ポリオキシアルキルまたはパーフロロポリオキシアルキ
レン型潤滑剤の場合、フッ化炭素の鎖長が長いため潤滑
性は良好であるが吸着性が低い。潤滑剤の吸着性を改善
するための方法としては多数の提案があり、特開昭６４
−９９６１号公報、特開平４−９５２１７号公報、特開
平３−２２２１１４号公報、特開昭６３−２５８９９２
号公報等には極性基を持つ潤滑剤が開示されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記のように、磁気記
録媒体用の潤滑剤には厳しい条件が要求されており、従
来の潤滑剤はこれらの条件を満足するに至っていない。
特開昭６４−９９６１号公報では、パーフロロアルキル
カルボン酸アミン塩を用いたフッ素系潤滑剤が各種使用
条件下において有効なことが述べられている。しかし、
上記潤滑剤はフッ化炭素の鎖長が短いために潤滑性の点
で十分とは云いがたい。磁気ディスク装置は、稼働時、
装置内が５０〜６０℃になるので、高信頼性の走行性を
得るため潤滑剤は、特に、低蒸発性，低揮散性のもので
なければならない。

【０００６】本発明の目的は、低蒸発揮散性で、長期に
わたって潤滑効果を有する新規なフッ素系化合物を含む
潤滑剤を提供することにある。

【０００７】本発明の他の目的は、上記潤滑剤を適用
し、耐摺動性に優れた磁気記録媒体を提供することにあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、芳香族環を１
個以上含有したカルボン酸アンモニウム塩に２本から４
本のパーフルオロポリエーテル鎖を結合した多官能カル
ボン酸アンモニウム塩含む潤滑剤および該潤滑剤を塗布
することによって潤滑膜を形成した磁気記録媒体にあ
り、その要旨は次のとおりである。

【０００９】（１）一般式〔１〕

【００１０】

【化１１】

【００１１】（但し、ｎは２〜４の整数、Ｒｆは平均分
子量３０００〜１００００のパーフルオロポリエーテル
鎖、Ｒ¹，Ｒ²は水素またはアルキル基、Ｒは芳香族環を
１個以上含む２〜４価の有機基を示す。）で表される多
官能型カルボン酸アンモニウム塩を含むことを特徴とす
る潤滑剤。

【００１２】（２）非磁性支持体上に磁性層を有し、
その最外層に保護膜を形成してなる磁気記録媒体であっ
て、前記保護膜上に前記一般式〔１〕で表される多官能
型カルボン酸アンモニウム塩を含む潤滑膜が設けられて
いることを特徴とする磁気記録媒体。

【００１３】上記一般式〔１〕の多官能型カルボン酸ア
ンモニウム塩は、Ｒｆ−ＣＯＯＨで表されるパーフルオ
ロポリエーテルカルボン酸と、式〔６〕

【００１４】

【化１２】

【００１５】で表されるアミンとから合成される。ｎが
２の場合、パーフルオロポリエーテルカルボン酸２分子
とアミン１分子とから合成される。ｎが３の場合、パー
フルオロポリエーテルカルボン酸３分子とアミン１分子
とから合成される。さらに、ｎが４の場合、パーフルオ
ロポリエーテルカルボン酸４分子とアミン１分子とから
合成される。

【００１６】上記式〔１〕において、Ｒ¹、Ｒ²は水素ま
たはアルキル基を表す。アルキル基としてはメチル基ま
たはエチル基が好ましい。また、Ｒを芳香族環を１個以
上含有した２〜４価の有機基とするのは十分な吸着能を
得るためである。

【００１７】上記式〔１〕においてＲｆは、

【００１８】

【化１３】Ｆ(Ｃ₃Ｆ₆Ｏ)m−Ｃ₂Ｆ₄− …〔５〕（但し、ｍは整数）で表される分枝のない直鎖状のパー
フルオロポリエーテル鎖が望ましい。実用的な平均分子
量の範囲は３０００〜１００００で、３０００未満では
耐蒸発揮散性が不十分であり、１００００を超えると磁
気ヘッドと粘着を起こし易い。

【００１９】本発明の多官能カルボン酸アンモニウム塩
の具体例を次に示すがこれに限定されるものではない。

【００２０】

【化１４】

【００２１】

【化１５】

【００２２】

【化１６】

【００２３】

【化１７】

【００２４】

【作用】本発明の多官能カルボン酸アンモニウム塩は、
カルボン酸アンモニウム塩にパーフルオロポリエーテル
鎖が２〜４個結合した多鎖体構造となっているため、パ
ーフルオロポリエーテル鎖の鎖長を長くすることなしに
分子量を大きくすることが容易である。そのため、摩擦
係数が低く、低蒸発揮散性である。

【００２５】また、カルボン酸アンモニウム基が大きく
分極しているため磁気記録媒体のカーボン系保護膜にも
強固に吸着する。カルボン酸アンモニウム基に結合した
芳香族環のπ電子がカーボン膜と相互作用し、吸着力を
高めるものと推定される。そして、磁気記録媒体の表面
を覆っているパーフルオロポリエーテルによって表面エ
ネルギーが低くなり、優れた撥水、撥油性と潤滑性が得
られる。これによって磁気記録媒体の耐摩擦摩耗特性、
耐摺動等が優れ、より高信頼性となるものと考える。

【００２６】

【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。

【００２７】〔実施例１〕ダイキン社製品である下式
に示したデムナムＳＨ−２（分子量３５００）１４.０
ｇをトリフロロトリクロロエタン８０ｍｌに溶解し十分
に撹拌する。

【００２８】

【化１８】Ｆ(ＣＦ₂ＣＦ₂ＣＦ₂−Ｏ)n−ＣＦ₂ＣＦ₂−ＣＯＯＨ …〔７〕この溶液中に４,４'−ジアミノジフェニルエ−テル０.
４ｇを加えて約２４時間十分に撹拌を続ける。静置後、
白い沈殿が生成したら上澄み液を除去し、窒素ガスでバ
ブリングする。さらに、水流ポンプで減圧にして溶剤を
除去すると下記構造の淡褐色の粘稠な液体の多官能型カ
ルボン酸アンモニウム塩（合成物１）を得た。

【００２９】

【化１９】

【００３０】（但し式中、ＲｆはＦ(Ｃ₃Ｆ₆Ｏ)n−Ｃ₂Ｆ
₄−である）図１は上記多官能型カルボン酸アンモニウム塩の赤外吸
収スペクトルを示す。３３００〜２７５０ｃｍ~¹にアン
モニウム塩に帰属する吸収が観測される。また、カルボ
ン酸の伸縮振動が１６７０ｃｍ~¹にシフトしていること
から合成物１の化学構造が確認された。

【００３１】上記合成例に従い、表１に示す多官能型カ
ルボン酸アンモニウム塩を合成した。使用したアミン
は、４,４'−ジアミノジフェニルメタン（合成物２）、
４,４'−ジアミノベンゾフェノン（合成物３）、２,２
−ビス(４−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン
（合成物４）、１,４−ビス(４−アミノフェノキシ)ベ
ンゼン（合成物５）、１,５−ジアミノナフタリン（合
成物６）、２,６−ジアミノアントラキノン（合成物
７）、メラミン（合成物８）、３,３'−ジアミノベンジ
ジン（合成物９）である。合成物２〜９についても赤外
吸収スペクトルにより多官能型カルボン酸アンモニウム
塩の構造を確認した。

【００３２】

【表１】

【００３３】〔実施例２〕合成物１を磁気記録媒体に
塗布して潤滑剤の性能を調べた。図２は本発明を適用し
た磁気記録媒体の一構成例を示す部分拡大断面図であ
る。

【００３４】以下の工程で磁気記録媒体を作成した。始
めに、５.２５インチのＡｌ合金基板６の表面に硬質下
地層５としてＮｉ−Ｐ層とその上にＣｒ層４を設け、こ
の上にＣｏ系磁性膜３をスパッタ蒸着し、更に、その上
にカーボン系保護膜２を形成したディスクを準備する。
次に、合成物１をフロリナートＦＣ３２５２に所定の濃
度で溶解した溶液を作成し、この溶液に上記ディスクを
浸漬して潤滑膜を形成した。潤滑膜厚は１５±２ｎｍと
した。また、塗布条件は、浸入速度１０ｍｍ／秒、滞留
時間１８０秒、引上げ速度２.５ｍｍ／秒とした。

【００３５】先ず、カーボン膜への吸着能力を蒸発揮散
特性で評価した。即ち、加熱による潤滑膜厚の減少率を
測定した。その結果、１２０℃雰囲気中における潤滑膜
厚の減少率は７００時間後でも１０％未満であり、極め
て少ないことが分かった。

【００３６】次に、初期の粘着性を評価した。粘着性
は、小野田セメント（株）製ＣＳＳ（コンタクト・スタ
ート・アンド・ストップ）試験機を用いて測定した。ヘ
ッド荷重１０ｇで低速摺動させ、その時の動摩擦力を測
定したところ潤滑膜厚が１５ｎｍ以上となっても動摩擦
係数は０.２３と小さい値であることが分かった。さら
に、潤滑性能をＣＳＳ試験によりＣＳＳ３０００回実施
後の１ｒｐｍにおける摩擦力を測定し評価したところ、
最大２６.５ｍＮと小さく、１００００回後もクラッシ
ュすることはなかった。

【００３７】合成物２〜９についても同様の評価試験を
行った結果を表２に示す。

【００３８】

【表２】

【００３９】〔比較例１〕下記のフッ素系化合物を塗
布して実施例２と同様の評価試験を行った。

【００４０】

【化２０】

【００４１】〔比較例２〕下記構造の芳香族環を持た
ないカルボン酸アンモニウム塩を塗布し、実施例２と同
様の評価を行った。

【００４２】

【化２１】

【００４３】〔比較例３〕芳香族環を有するカルボン
酸アンモニウム塩の一方の末端にのみパーフルオロポリ
エーテル鎖を結合した下記構造の潤滑剤を塗布し、実施
例２と同様の評価を行った。

【００４４】

【化２２】

【００４５】〔比較例４〕実施例１において、ダイキ
ン社製のデナムＳＨ−１を用いてＲｆの平均分子量が２
１００のフッ素系化合物を合成し、実施例と同様の評価
を行った。

【００４６】前記比較例１〜４の評価結果を表２に示
す。

【００４７】表２から明らかなように、本発明の潤滑剤
は蒸発揮散量が少なく、また摩擦係数、及びＣＳＳ３０
００回後の摩擦力もかなり小さく優れた特性を有してい
ることが分かった。

【００４８】

【発明の効果】本発明の多官能型カルボン酸アンモニウ
ム塩からなる潤滑剤は優れた潤滑特性を有する膜を磁気
記録媒体の表面に形成することができるので、高温環境
下においても優れた潤滑性能を保持することができ、摺
動耐久性、信頼性の優れた高密度磁気記録媒体を提供す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本実施例の合成物１の赤外吸収スペクトル図で
ある。

【図２】本発明の磁気記録媒体の一構成例を示す部分断
面模式図である。

【符号の説明】

１…フッ素系潤滑膜、２…カーボン系保護膜、３…Ｃｏ
系磁性膜、４…Ｃｒ層、５…硬質下地層、６…Ａｌ合金
基板。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者新井寿一茨城県日立市大みか町七丁目１番１号株式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者伊藤豊茨城県日立市大みか町七丁目１番１号株式会社日立製作所日立研究所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】一般式〔１〕【化１】（但し、ｎは２〜４の整数、Ｒｆは平均分子量３０００
〜１００００のパーフルオロポリエーテル鎖、Ｒ¹，Ｒ²
は水素またはアルキル基、Ｒは芳香族環を１個以上含む
２〜４価の有機基を示す。）で表される多官能型カルボ
ン酸アンモニウム塩を含むことを特徴とする潤滑剤。
【請求項２】前記一般式〔１〕において、Ｒがフェニ
ルエーテル系有機基である請求項１に記載の潤滑剤。
【請求項３】前記一般式〔１〕において、Ｒが式
〔２〕で示される請求項１に記載の潤滑剤。【化２】
【請求項４】前記一般式〔１〕において、Ｒが式
〔３〕で示される請求項１に記載の潤滑剤。【化３】
【請求項５】前記一般式〔１〕において、Ｒが式
〔４〕【化４】（但し、Ｘ¹，Ｘ²は水素またはメチル基、Ｙは直結また
は−Ｏ−、−Ｓ−、−Ｓ−Ｓ−、−ＳＯ₂−、−ＣＨ
₂−、−ＣＨ₂ＣＨ₂−、−ＣＯ−、−Ｃ(ＣＨ₃)₂−、−
Ｃ(ＣＦ₃)₂−、−ＣＯ−ＣＯ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−、
−Ｃ(ＣＨ₃)₂−Ｃ₆Ｈ₄−Ｃ(ＣＨ₃)₂−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−
ＳＯ₂−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−Ｃ(ＣＨ₃)₂−Ｃ₆
Ｈ₄−Ｏ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ
₄−Ｃ(ＣＦ₃)₂−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−を示す。）で示される請
求項１に記載の潤滑剤。
【請求項６】前記一般式〔１〕において、Ｒｆが式
〔５〕【化５】Ｆ(Ｃ₃Ｆ₆Ｏ)m−Ｃ₂Ｆ₄− …〔５〕（但し、ｍは整数）で示される請求項１〜５のいずれか
に記載の潤滑剤。
【請求項７】非磁性支持体上に磁性層を有し、その最
外層に保護膜を形成してなる磁気記録媒体であって、前
記保護膜上に一般式〔１〕【化６】（但し、ｎは２〜４の整数、Ｒｆは平均分子量３０００
〜１００００のパーフルオロポリエーテル鎖、Ｒ¹，Ｒ²
は水素またはアルキル基、Ｒは芳香族環を１個以上含む
２〜４価の有機基を示す。）で表される多官能型カルボ
ン酸アンモニウム塩を含む潤滑膜が設けられていること
を特徴とする磁気記録媒体。
【請求項８】前記保護膜がカーボン系保護膜である請
求項７に記載の磁気記録媒体。
【請求項９】前記一般式〔１〕において、Ｒがフェニ
ルエーテル系有機基である請求項７または８に記載の磁
気記録媒体。
【請求項１０】前記一般式〔１〕において、Ｒが式
〔２〕で示される請求項７または８に記載の磁気記録媒
体。【化７】
【請求項１１】前記一般式〔１〕において、Ｒが式
〔３〕で示される請求項７または８に記載の磁気記録媒
体。【化８】
【請求項１２】前記一般式〔１〕において、Ｒが式
〔４〕【化９】（但し、Ｘ¹，Ｘ²は水素またはメチル基、Ｙは直結また
は−Ｏ−、−Ｓ−、−Ｓ−Ｓ−、−ＳＯ₂−、−ＣＨ
₂−、−ＣＨ₂ＣＨ₂−、−ＣＯ−、−Ｃ(ＣＨ₃)₂−、−
Ｃ(ＣＦ₃)₂−、−ＣＯ−ＣＯ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−、
−Ｃ(ＣＨ₃)₂−Ｃ₆Ｈ₄−Ｃ(ＣＨ₃)₂−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−
ＳＯ₂−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−Ｃ(ＣＨ₃)₂−Ｃ₆
Ｈ₄−Ｏ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ₄−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−、−Ｏ−Ｃ₆Ｈ
₄−Ｃ(ＣＦ₃)₂−Ｃ₆Ｈ₄−Ｏ−を示す。）で示される請
求項７または８に記載の磁気記録媒体。
【請求項１３】前記一般式〔１〕において、Ｒｆが式
〔５〕【化１０】Ｆ(Ｃ₃Ｆ₆Ｏ)m−Ｃ₂Ｆ₄− …〔５〕（但し、ｍは整数）で示される請求項７〜１２のいずれ
かに記載の磁気記録媒体。
【請求項１４】前記一般式〔１〕で表される多官能型
カルボン酸アンモニウム塩を含む潤滑膜の膜厚が３〜２
０ｎｍである請求項７〜１３のいずれかに記載の磁気記
録媒体。